JP2006296303A - シス−1,2−ジクロロエチレン分解微生物群の培養方法、該培養方法によって得られた培養液、並びに地下水及び/又は土壌の浄化方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の培養方法は、塩素化エチレンにより汚染された地下水及び/又は土壌を含む植種源を、塩化ビニルを含有する液体培地で嫌気的条件下で培養することを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
上述した、嫌気性微生物を用いた塩素化エチレンで汚染された土壌、地下水の浄化方法としては、土着のDehalococcoides属微生物に栄養源を供給し、塩素化エチレンを分解させるバイオスティミュレーション法が知られており、既に実用化されている。
また、本発明の目的は、上記培養方法によって得られた培養液を用いる、地下水及び/又は土壌の浄化方法を提供することにある。
また、本発明は、塩素化エチレンにより汚染された地下水及び/又は土壌を含む植種源を、シス−1,2−ジクロロエチレンを含有する液体培地で、該液体培地内のシス−1,2−ジクロロエチレンが検出されなくなるまで培養し、得られた培養液を、塩化ビニルを含有する液体培地に移植し、嫌気的条件下で培養を行うことを特徴とする、シス−1,2−ジクロロエチレン分解微生物群の培養方法を提供する。
また、本発明は、上記培養方法によって得られた、シス−1,2−ジクロロエチレン分解微生物群を含有する培養液を提供する。
また、本発明は、上記培養液を、塩素化エチレンによって汚染された地下水及び/又は土壌中に注入することを特徴とする、地下水及び/又は土壌の浄化方法を提供する。
また、本発明の地下水及び/又は土壌の浄化方法は、本発明の微生物群の培養方法によって得られた培養液を用いており、シス−1,2−ジクロロエチレンの分解活性が安定化され、地下水及び/又は土壌中のシス−1,2−ジクロロエチレンの分解効率が向上したものとなる。
本発明のシス−1,2−ジクロロエチレン分解微生物群の培養方法においては、塩素化エチレンにより汚染された地下水及び/又は土壌を含む植種源を用いる。本明細書において、「塩素化エチレン」とは、エチレンの水素原子のうち少なくとも1個が塩素原子に置換されている化合物を意味するものとし、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン及び塩化ビニルを含む。
なお、上述した培地成分の濃度は、培養を行う際の濃度であり、植種源である地下水を加えた際には、希釈されて濃度が低下するので、それを考慮し、地下水を加える前の培地としては、最終濃度が適正な濃度となるように、高濃度のものを作製して用いることが好ましい。
培養時間には特に制限はないが、培地内に含まれるシス−1,2−ジクロロエチレンが、全てエチレンにまで分解されるまで、すなわちシス−1,2−ジクロロエチレンが検出されなくなるまで培養を行うことが好ましい。シス−1,2,−ジクロロエチレンの分解は、例えば、培養容器10中の培養液を少量サンプリングし、ガスクロマトグラフィーにより、シス−1,2,−ジクロロエチレン、塩化ビニル及びエチレンの分析を行うことによって調べることができる。すなわち、シス−1,2−ジクロロエチレン及び塩化ビニルが検出されなくなるまで培養を行うことが好ましい。
培養容器12における培養は、培養容器10と同様に、液体培地内に含まれる塩化ビニルが、全てエチレンにまで分解されるまで培養を行うことが好ましい。塩化ビニルの分解は、例えば、培養容器12中の培養液を少量サンプリングし、ガスクロマトグラフィーにより、塩化ビニル及びエチレンの分析を行うことによって調べることができる。すなわち、塩化ビニルが検出されなくなるまで培養を行うことが好ましい。このように、培地中の塩化ビニルが検出されなくなるまで培養を行うことにより、本発明の培養液が得られる。該培養液には、塩化ビニルを蓄積することなく、シス−1,2−ジクロロエチレンをエチレンにまで分解する能力を有する微生物群が含まれている。すなわち本発明は、シス−1,2−ジクロロエチレン分解微生物群をスクリーニングするための方法として用いることができる。
バイオオーギュメンテーションとは、有害物質(例えば、塩素化エチレン)の分解活性を有する微生物を大量培養し、この微生物を、有害物質に汚染された地下水及び/又は土壌に注入して、有害物質の分解を行わせる方法のことである。本発明の培養液は、原位置バイオオーギュメンテーションに用いることができるのみならず、汚染現場から揚水された地下水、掘削された土壌を浄化するためにも用いることができる。
地下水又は土壌に注入される培養液の量、注入速度等については、汚染された地下水及び/又は土壌の汚染状況によって異なり、適宜選択することが可能である。
本発明の地下水及び/又は土壌の浄化方法は、上記培養液を、塩素化エチレンによって汚染された地下水及び/又は土壌中に注入することを特徴とする。
具体的には、本発明の地下水及び/又は土壌の浄化方法は、地下水及び/又は土壌のバイオオーギュメンテーションによって行なうことができる。バイオオーギュメンテーションについては上述した通りであり、本発明の地下水及び/又は土壌の浄化方法は、上記培養液を、塩素化エチレンによって汚染された地下水及び又は土壌中に注入することを特徴とし、すなわち原位置バイオオーギュメンテーションで行なうことができる。しかし、本発明の地下水及び/又は土壌の浄化方法は、原位置バイオオーギュメンテーションのみならず、汚染現場から揚水された地下水、掘削された土壌を浄化するためにも用いることができる。なお、地下水及び/又は土壌に注入する培養液の量、注入速度等については、汚染された地下水の汚染状況によって異なり、適宜選択することができる。
参考例1
バイオスティミュレーションによる塩素化エチレン汚染土壌・地下水の浄化処理を行っている現場より、地下水を採取し、図2に示すような手順に従い、培養を行った。なお、3カ所の現場より3個の地下水を採取し、それぞれの現場を、現場A、現場B及び現場Cとした。採取した地下水100mLを、155mL容のガラス製バイアル(培養容器)10に入れ、下記成分を、下記濃度になるように加えた。
C3H4(OH)(COOH)3 500mg/L
(NH4)2HPO4 6mg/L
酵母エキス 100mg/L
Na2S・9H2O 50mg/L
FeCl2・4H2O 50mg/L
なお、シス−1,2−ジクロロエチレン及び塩化ビニルについてはガスクロマトグラフィー(GC17A)により、エチレンについてはガスクロマトグラフィー(GC9A)により測定を行った。以下の実施例においても同様である。
下記成分からなる培地を、培養容器12に入れ、またシス−1,2−ジクロロエチレンを約60μMの濃度となるように添加した。上述のように、培養容器10から採取した培養液1mLを、培養容器12に移植した。
酵母エキス 100mg/L
CaCl2・2H2O 15mg/L
NaHCO3 2520mg/L
Tris 2290mg/L
MgCl2・6H2O 500mg/L
NaCl 500mg/L
KH2PO4 200mg/L
NH4Cl 300mg/L
KCl 300mg/L
Na2S・9H2O 480mg/L
FeCl2・4H2O 200mg/L
MnCl2・4H2O 1mg/L
CoCl2・2H2O 1.9mg/L
ZnCl2 0.7mg/L
CuSO4・5H2O 0.04mg/L
H3BO3 0.06mg/L
NiCl2・6H2O 0.25mg/L
Na2MoO4・2H2O 0.44mg/L
濃塩酸 1μL/L
レサズリン 1mg/L
培養容器15については、ガスクロマトグラフィーによる測定の結果、培養容器12から得られた培養液中に含まれる微生物が塩化ビニルの分解能を有していることが確認された。測定後、培養容器15内の培地は廃棄した。
参考例1における培養容器20の培養開始から定期的に気相をサンプリングし、シス−1,2−ジクロロエチレン、塩化ビニル及びエチレンの測定を行った。その結果を図3(現場Aから採取した地下水を植種源として用いた場合)、図4(現場Bから採取した地下水を植種源として用いた場合)、及び図5(現場Cから採取した地下水を植種源として用いた場合)に示す。図3〜図5は、培養容器20内の気相のシス−1,2−ジクロロエチレン、塩化ビニル及びエチレンの濃度を測定した結果を表すグラフであり、横軸は培養開始後の経過日数を表し、縦軸は、シス−1,2−ジクロロエチレン、塩化ビニル及びエチレンの濃度を表す。図3、図4及び図5のいずれにおいても、培養開始後、シス−1,2−ジクロロエチレンが分解されるに従い、塩化ビニルの濃度が上昇し、塩化ビニルの濃度は約60μMまで上昇し、その後、徐々に塩化ビニルの濃度が低下し、エチレンの濃度が上昇することがわかる。このことは、上述した培養方法により得られた培養液を用いてシス−1,2−ジクロロエチレンの分解を行った場合、先ず、シス−1,2−ジクロロエチレンが塩化ビニルに分解され、その後、エチレンへの分解が始まることがわかる。
参考例1における、培養容器12、14、16、18及び20に塩化ビニルを、培養容器15、17、19及び21にシス−1,2−ジクロロエチレンを、それぞれ濃度が60μMになるように添加した以外は、参考例1と同様に微生物群の集積培養を行った。いずれの培養容器においても、塩化ビニル又はシス−1,2−ジクロロエチレンが全てエチレンに分解されるまで培養を行った。すなわち、培養容器12、14、16、18及び20においては、塩化ビニルが検出されなくなるまで、培養容器15、17、19及び21においては、シス−1,2−ジクロロエチレン及び塩化ビニルが検出されなくなるまで培養を行った。
参考例1における培養容器20の培養液1mLを、参考例1と同様に植え継ぎを行った。すなわち、参考例1の培養容器20の培養液(現場Cから得られら地下水を受け継いだもの)1mLを、シス−1,2−ジクロロエチレンを約60μMの濃度で含有する培地に植え継ぎ、この操作を更に3回繰り返し、合計8回の植え継ぎを行った。
実施例1における培養容器20の培養液1mLを、参考例1と同様に植え継ぎを行った。すなわち、実施例1の培養容器20の培養液(現場Cから得られら地下水を受け継いだもの)1mLを、塩化ビニルを約60μMの濃度で含有する培地に植え継ぎ、この操作を更に3回繰り返し、合計8回の植え継ぎを行った。
14 培養容器 15 培養容器
16 培養容器 17 培養容器
18 培養容器 19 培養容器
20 培養容器 21 培養容器
Claims (7)
- 塩素化エチレンにより汚染された地下水及び/又は土壌を含む植種源を、塩化ビニルを含有する液体培地で嫌気的条件下で培養することを特徴とする、シス−1,2−ジクロロエチレン分解微生物群の培養方法。
- 上記植種源が、塩素化エチレンにより汚染された地下水及び/又は土壌を、シス−1,2−ジクロロエチレンを含有する液体培地で、該液体培地内のシス−1,2−ジクロロエチレンが検出されなくるまで培養した培養液である、請求項1に記載のシス−1,2−ジクロロエチレン分解微生物群の培養方法。
- 塩化ビニルを含有する液体培地における培養を、塩化ビニルが検出されなくなるまで行う、請求項1又は2に記載のシス−1,2−ジクロロエチレン分解微生物群の培養方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の培養方法により得られた培養液を、更に、塩化ビニルを含有する液体培地で嫌気的条件下で培養を行う、シス−1,2−ジクロロエチレン分解微生物群の培養方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の培養方法によって得られた、シス−1,2−ジクロロエチレン分解微生物群を含有する培養液。
- 塩素化エチレンにより汚染された地下水及び/又は土壌のバイオオーギュメンテーションに用いられる、請求項5に記載の培養液。
- 請求項5又は6に記載の培養液を、塩素化エチレンによって汚染された地下水及び/又は土壌中に注入することを特徴とする、地下水及び/又は土壌の浄化方法。
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