以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。尚、本明細書では、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート」はヒドロキシアルキルアクリレート又はヒドロキシアルキルメタクリレートを意味し、また「アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート」はアルキレングリコールジアクリレート又はアルキレングリコールジメタクリレートを意味する。
また、「重量」は「質量」と同義語として扱い、「重量%」は「質量%」と同義語として扱う。また、範囲を示す「A〜B」は、A以上B以下であることを示す。
本発明に係るヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法は、触媒の存在下、アルキレンオキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法であり、反応液中の酸成分量の推移から、反応停止時機を予測し、反応を停止させる。
上記反応停止時機の予測方法としては、特には限定されないが、例えば、反応液中の酸成分量を3点以上測定し、その酸成分量から最小二乗法や指数近似曲線などにより、反応終点を外挿して求める方法などを用いることができる。
上記終点(反応の停止時機)とする酸成分量の値は、反応の諸条件、冷却効率等により適宜設定することができる。目標とする最終的な酸成分量の値は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの用途に応じて適宜設定され、通常は、反応液中、1重量%以下とすることが好ましく、0.1重量%以下とすることがより好ましい。
上記反応の停止は、反応液若しくは反応容器(反応器)の冷却や、原料の反応系からの除去等の様々な手段により行うことができる。
以下、反応液中の酸成分量の測定等についてより詳細に説明する。
(I)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造システム
本発明に係るヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造システムは、後述する自動分析装置と、該自動分析装置が分析した酸成分量の推移から、反応停止時機を予測し、反応を自動停止させる自動反応停止装置とを備える。
自動反応停止装置は、例えばコンピュータ等により、自動分析装置が分析した酸成分量の変化に基づいて反応の停止時機を決定し、自動的に反応を停止させる構成である。
反応の停止時機の決定は、具体的には、例えば、コンピュータ等により、自動分析装置が分析した酸成分量から、最小二乗法や指数近似曲線などにより、反応終点を自動的に求めることにより行うことができる。
反応の停止時機とする酸成分量の値は、後述するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法と同様に、反応の諸条件、冷却効率等により適宜設定することができ、目標とする最終的な酸成分量の値は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの用途に応じて適宜設定され、通常は、反応液中、1重量%以下とすることが好ましく、0.1重量%以下とすることがより好ましい。
上記反応の自動停止の方法は、自動反応停止装置により反応液若しくは反応容器の冷却や、原料の反応系からの除去等の様々な手段により行うことができれば特に限定されない。例えば、反応液を反応器から全部、あるいは一部抜き出し、外部熱交換器から構成される自動反応停止装置に反応液を通液させることで冷却し、再度、反応器へ循環する方法は、反応液の冷却効率が高くなり、短時間で所定の温度まで反応液を冷却することができる点で好ましい。反応を停止するための冷却温度としては、好ましくは50℃以下、より好ましくは45℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
また、本発明に係る製造システムは、触媒の存在下における脂肪族アルコール、芳香族アルコール又は多価アルコールと(メタ)アクリル酸との反応による(メタ)アクリル酸エステルの製造にも適用することができる。
(II)自動分析装置
図1は、本実施の形態に係る自動分析装置の概略構成を示す模式図である。また、図2は、本実施の他の形態に係る自動分析装置の概略構成を示す模式図である。
本実施の形態に係る自動分析装置は、触媒の存在下、アルキレンオキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造に用いられる自動分析装置であって、図1に示すように、反応容器1中のアルキレンオキシド含有反応液(以下、単に「反応液」と記す場合がある)9を自動的にサンプリングし、サンプリングされた反応液9を自動的に分析する自動分析手段2と、循環ライン(サンプリング用ライン)10内に不活性ガスを導入する不活性ガス導入手段3と、不活性ガス導入手段3により循環ライン10内を加圧した状態で、自動分析手段2が反応液9のサンプリングを行なうように制御するサンプリング制御手段(図示せず)とを備えている。本実施の形態に係る自動分析装置は、言い換えれば、後述するアルキレンオキシド含有反応液のサンプリング方法を自動的に行い、自動的に分析を行なう装置である。
尚、上記「ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造」は、後述する「(IV)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法」に記載の製造方法による製造を意味する。
本実施の形態では、上記反応容器1には、反応容器1から反応液9の一部を取り出し、該反応液9を反応容器1に再度戻す循環ライン10が設けられており、自動分析手段2は、循環ライン10と接続されている。また、循環ライン10における自動分析手段2との接続位置の上流側及び下流側に、それぞれ反応液9の流量を調節する第一のバルブ4及び第二のバルブ5を備えている。更には、循環ライン10における反応容器1よりも上流側には、反応液9を循環ライン10に流入させるためのポンプ6と、自動分析手段2に異物が混入することを防止するためのストレーナ7とを備えている。つまり、循環ライン10には、上流側から下流側へ、ポンプ6、ストレーナ7、第一のバルブ4、自動分析手段2、不活性ガス導入手段3、第二のバルブ5がこの順に接続されている。
自動分析手段2としては、反応液9を自動的にサンプリングし、サンプリングされた反応液9を自動的に分析することができれば、特には限定されない。例えば、ガスクロマトグラフ分析装置や、電位差自動滴定装置や、分光光度計や、水分計やpH計等を、自動的にサンプリング及び分析する構成とした装置等が挙げられる。ガスクロマトグラフ分析装置では分析時間が長いため、また、分光光度計ではセルの強度などが低い等の理由のためプラント等に使用することが困難であるため、電位差自動滴定装置がより好ましい。また、電位差自動滴定装置により測定する物性としては、特には限定されず、例えば、酸成分量、アルカリ成分量、水酸基価等が挙げられる。この中でも、上記自動分析手段が、電位差自動滴定装置により酸成分量を測定する手段であることがより好ましい。
不活性ガス導入手段3としては、循環ライン(サンプリング用ライン)10内に不活性ガスを導入することができれば、特には限定されず、どのような構成であってもかまわない。本実施の形態では、不活性ガス導入手段3は、不活性ガスが充填されたガスタンクを用いている。不活性ガス導入手段3は、第一のバルブ4と第二のバルブ5との間に設けられ、バルブ3aによって不活性ガスの流量を調整することにより、循環ライン10を加圧することができる構成となっている。
尚、不活性ガス導入手段3で用いられる不活性ガスとしては、後述する「(III)アルキレンオキシド含有反応液のサンプリング方法」で例示するものと同様のものが挙げられる。
本実施の形態では、サンプリング制御手段は、第一のバルブ4と第二のバルブ5とを閉じ、不活性ガス導入手段3により上記第一のバルブ4と第二のバルブ5との間の循環ライン10内を加圧した状態で、自動分析手段2が反応液9のサンプリングを行うように制御する。これにより、サンプリングされた反応液9には気泡が発生し難いため、自動分析手段2により測定される値には誤差が少ない。更には、自動分析手段2により測定された値の推移から、反応停止時機を予測し、反応を自動停止させる制御手段(自動反応停止装置)を更に設けることにより、反応の大部分を自動化させることが可能となり、製造コストを大幅に低減させることができる。
サンプリング制御手段としては、循環ライン(サンプリング用ライン)10内を加圧した状態で、自動分析手段2が反応液9のサンプリングを行なうように制御することができれば、特には限定されず、例えば、コンピュータ等により各装置等を自動的に制御する構成が挙げられる。
尚、上述の説明では、サンプリング用ラインが循環ライン10である場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、図2に示すような、自動分析手段2が直接反応容器1に接続されている構成であってもよい。サンプリングされる反応液9の入ったサンプリング用ラインを加圧することができれば、本実施形態と同様の効果が得られる。
但し、本実施形態のように、サンプリング用ラインが循環ライン10である場合は、より均一な反応液をサンプリングすることができるため、より正確に分析を行なうことができ、特に効果が大きい。
尚、図2に示す上記構成の場合、反応液9をサンプリング用ラインに流入させた後、第一のバルブ4を閉じ、不活性ガス導入手段3によりサンプリング用ライン内を加圧した状態で、自動分析手段2が反応液9のサンプリングを行うように、サンプリング制御手段を制御するように設定すればよい。
(III)アルキレンオキシド含有反応液のサンプリング方法
本発明に係るアルキレンオキシド含有反応液(以下、単に「反応液」と記す場合がある)のサンプリング方法としては、触媒の存在下、アルキレンオキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造におけるアルキレンオキシド含有反応液のサンプリング方法であり、サンプリング用ライン内のアルキレンオキシド含有反応液を、不活性ガスにより加圧した状態でサンプリングする方法が好ましく挙げられる。
これにより、反応液中のアルキレンオキシドが気化し難いため、サンプリングした反応液に気泡が発生することを抑制することができる。
上記アルキレンオキシド含有反応液のサンプリング方法では、上記サンプリング用ラインは、反応容器から反応液の一部を取り出し該反応液を反応容器に再度戻す循環ラインであり、サンプリング用ラインに流入した反応液を、不活性ガスによりサンプリング用ライン内を加圧した状態でサンプリングする構成であってもよい。
上記サンプリング用ラインを加圧する方法としては、例えば、サンプリング用ラインにバルブを設け、バルブ操作によりサンプリング箇所を含む領域を密閉し、該領域に不活性ガスを導入することにより加圧する方法が挙げられる。
加圧により到達する圧力は、標準気圧(1気圧)よりも高ければ特には限定されず、設備の耐圧強度等により適宜設定すればよい。例えば、ゲージ圧で0.03〜0.1MPaの範囲内に設定することができる。
上記不活性ガスとしては、特には限定されないが、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
アルキレンオキシドとしては、特には限定されないが、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2〜6のアルキレンオキシドが挙げられる。
尚、上記「ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造」は、後述する「(IV)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法」に記載の製造方法による製造を意味する。
(IV)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法
本発明に係るヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法(以下、単に「本発明に係る製造方法」と記する場合がある)は、触媒の存在下、アルキレンオキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法であり、好ましくは本発明に係る製造システムにより反応を自動停止させる工程を含む。
また、本発明に係る製造方法では、後述する蒸留残渣を次の反応に再利用する場合には、更に、反応液中の触媒量に対し酸成分量が、計算上、モル比で0.01以上となる状態を維持することが好ましい。
本発明に係るヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法では、上述した反応液中の酸成分量の推移から、反応停止時機を予測し、反応を停止させること以外については、特に限定されるものではなく、例えば、国際公開第2006/013971号パンフレットや特開2004−182634号公報に記載されている従来公知の方法と同様の方法により行うことができる。以下、具体的に説明する。
本発明に係る製造方法で用いられる上記アルキレンオキシドとしては、「(III)アルキレンオキシド含有反応液のサンプリング方法」において例示した化合物と同様のものが挙げられる。
本発明に係る製造方法において、(メタ)アクリル酸の全供給量とアルキレンオキシドの全供給量との関係は、(メタ)アクリル酸1モルに対して、アルキレンオキシドが1.0〜10モルの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1.0〜5.0モルの範囲内、さらに好ましくは1.0〜3.0モルの範囲内、特に好ましくは1.0〜2.0モルの範囲内である。(メタ)アクリル酸1モルに対して、アルキレンオキシドが1.0モル未満であると、反応が進行し難くなる傾向があり、一方、アルキレンオキシドが10モルを超えると、アルキレンオキシドの回収工程等が必要となり製造コストが増大する傾向がある。
本発明に係る製造方法において、原料である(メタ)アクリル酸及びアルキレンオキシドの仕込み方法(順序)については、通常は、反応容器に(メタ)アクリル酸の一部若しくは全量を初期仕込みしておき、そこにアルキレンオキシド若しくはアルキレンオキシドと(メタ)アクリル酸の残部とを供給する方法が一般的であるが、これに限定されるものではない。例えば、アルキレンオキシドの一部もしくは全量を初期仕込みするようにしてもかまわない。
また、上記(メタ)アクリル酸及びアルキレンオキシドの供給は、一括投入及び逐次投入(連続的な投入及び/又は間欠的な投入)の何れであってもよいが、好ましくは、初期仕込み分は一括投入し、その後に供給する分は逐次投入することがより好ましい。尚、連続的な投入とは、少しずつ連続的に投入する形態を意味し、間欠的な投入とは、パルス的又は断続的に、任意の回数に分けて投入する形態を意味する。また、連続的に投入をする場合は、投入速度を投入終了まで一定としてもよいし、途中で少なくとも1回投入速度を変化させてもよいし、投入速度自体を連続的に任意に変化させてもよい。
また、(メタ)アクリル酸及びアルキレンオキシドを投入する際には、常温で投入してもよいし、その時点での系内の温度を変化させないように所望の温度にまで予め加温してから投入してもよい。
また、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキシドとの両方を同時に投入する場合には、それぞれ別々の投入ラインから投入してもよいし、反応容器に投入する前に、配管、ラインミキサー、ミキシングタンク等で予め混合してから投入してもよい。それぞれ別々の投入ラインから添加した場合には、系内におけるアルキレンオキシドと(メタ)アクリル酸とのモル比に偏りが生じるおそれがあるので、反応容器へ投入する前に予め混合してから供給することがより好ましい。尚、それぞれ別々の投入ラインから投入する場合、投入の形態(一括投入、逐次投入)、投入する原料の温度、投入速度等については、各原料で必ずしも同じである必要はない。
尚、本発明に係る製造方法において、(メタ)アクリル酸及びアルキレンオキシドの全供給量を仕込み終えるまでに要する時間は、特に制限されるものではなく、反応の進行具合や生産性等を考慮して、適宜設定すればよい。
反応に使用する触媒は特には限定されず、この種の反応に一般に用いられている従来公知の触媒を使用することができる。反応に使用する上記触媒として、具体的には、(メタ)アクリル酸及びアルキレンオキシドを含む反応液に可溶な全ての均一系触媒が挙げられる。より具体的には、クロム(Cr)化合物、鉄(Fe)化合物、イットリウム(Y)化合物、ランタン(La)化合物、セリウム(Ce)化合物、タングステン(W)化合物、ジルコニウム(Zr)化合物、チタン(Ti)化合物、バナジウム(V)化合物、リン(P)化合物、アルミニウム(Al)化合物及びモリブデン(Mo)化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、上記反応液に可溶な均一系触媒が挙げられる。この中でも、クロム(Cr)化合物及び/又は鉄(Fe)化合物を含む上記反応液に可溶な均一系触媒がより好ましく、クロム(Cr)化合物を含む上記反応液に可溶な均一系触媒が更に好ましく、クロム(Cr)化合物からなる上記反応液に可溶な均一系触媒が最も好ましい。特に、後述する反応液中の触媒量に対する酸成分量を調整するとともに、蒸留残渣を次の反応液に用いる実施形態の場合においては、触媒として、クロム(Cr)化合物を含み上記反応液に可溶な均一系触媒を用いることにより、より一層顕著な効果が得られるため好ましく、クロム(Cr)化合物からなり上記反応液に可溶な均一系触媒を用いることがより好ましい。
クロム(Cr)化合物としては、特には限定されず、クロム(Cr)原子を分子内に有し、かつ、上記反応液に可溶な化合物が挙げられる。具体的には、塩化クロム、アセチルアセトンクロム、蟻酸クロム、酢酸クロム、オクタン酸クロム、イソオクタン酸クロム、アクリル酸クロム、メタクリル酸クロム、重クロム酸ソーダ、ジブチルジチオカルバミン酸クロム等が挙げられる。
鉄(Fe)化合物としては、特には限定されず、鉄(Fe)原子を分子内に有し、かつ、上記反応液に可溶な化合物が挙げられる。具体的には、鉄粉、塩化鉄、蟻酸鉄、酢酸鉄、アクリル酸鉄、メタクリル酸鉄等が挙げられる。
イットリウム(Y)化合物としては、特には限定されず、イットリウム(Y)原子を分子内に有し、かつ、上記反応液に可溶な化合物が挙げられる。具体的には、アセチルアセトンイットリウム、塩化イットリウム、酢酸イットリウム、硝酸イットリウム、硫酸イットリウム、アクリル酸イットリウム、メタクリル酸イットリウム等が挙げられる。
ランタン(La)化合物としては、特には限定されず、ランタン(La)原子を分子内に有し、かつ、上記反応液に可溶な化合物が挙げられる。具体的には、アセチルアセトンランタン、塩化ランタン、酢酸ランタン、硝酸ランタン、硫酸ランタン、アクリル酸ランタン、メタクリル酸ランタン等が挙げられる。
セリウム(Ce)化合物としては、特には限定されず、セリウム(Ce)原子を分子内に有し、かつ、上記反応液に可溶な化合物が挙げられる。具体的には、アセチルアセトンセリウム、塩化セリウム、酢酸セリウム、硝酸セリウム、硫酸セリウム、アクリル酸セリウム、メタクリル酸セリウム等が挙げられる。
タングステン(W)化合物としては、特には限定されず、タングステン(W)原子を分子内に有し、かつ、上記反応液に可溶な化合物が挙げられる。具体的には、塩化タングステン、アクリル酸タングステン、メタクリル酸タングステン等が挙げられる。
ジルコニウム(Zr)化合物としては、特には限定されず、ジルコニウム(Zr)原子を分子内に有し、かつ、上記反応液に可溶な化合物が挙げられる。具体的には、アセチルアセトンジルコニウム、塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、アクリル酸ジルコニウム、メタクリル酸ジルコニウム、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムプロポキシド、塩化ジルコニル、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、アクリル酸ジルコニル、メタクリル酸ジルコニル等が挙げられる。
チタン(Ti)化合物としては、特には限定されず、チタン(Ti)原子を分子内に有し、かつ、上記反応液に可溶な化合物が挙げられる。具体的には、塩化チタン、硝酸チタン、硫酸チタン、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンイソプロポキシド、アクリル酸チタン、メタクリル酸チタン等が挙げられる。
バナジウム(V)化合物としては、特には限定されず、バナジウム(V)原子を分子内に有し、かつ、上記反応液に可溶な化合物が挙げられる。具体的には、アセチルアセトンバナジウム、塩化バナジウム、ナフテン酸バナジウム、アクリル酸バナジウム、メタクリル酸バナジウム等が挙げられる。
リン(P)化合物としては、特には限定されず、リン(P)原子を分子内に有し、かつ、上記反応液に可溶な化合物が挙げられる。具体的には、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリトルイルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィン)エタン等のアルキルホスフィン類及びその(メタ)アクリル酸等の4級ホスホニウム塩等が挙げられる。
アルミニウム(Al)化合物としては、特には限定されず、アルミニウム(Al)原子を分子内に有し、かつ、上記反応液に可溶な化合物が挙げられる。具体的には、アセチルアセトンアルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アクリル酸アルミニウム、メタクリル酸アルミニウム等が挙げられる。
モリブデン(Mo)化合物としては、特には限定されず、モリブデン(Mo)原子を分子内に有し、かつ、上記反応液に可溶な化合物が挙げられる。具体的には、塩化モリブデン、酢酸モリブデン、アクリル酸モリブデン、メタクリル酸モリブデン等が挙げられる。
また、本実施の形態に係る製造方法に用い得る触媒として、上述したクロム(Cr)化合物、鉄(Fe)化合物、イットリウム(Y)化合物、ランタン(La)化合物、セリウム(Ce)化合物、タングステン(W)化合物、ジルコニウム(Zr)化合物、チタン(Ti)化合物、バナジウム(V)化合物、リン(P)化合物、アルミニウム(Al)化合物及びモリブデン(Mo)化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、上記反応液に可溶な均一系触媒とアミン化合物とを含む触媒(アミン化合物併用タイプ)が好ましく挙げられる。
上記アミン化合物としては、アミン官能基を分子内に有する化合物であれば、特には限定はされず、具体的には、トリアルキルアミン類、ピリジン等の環状アミン類及びその4級塩等の均一系アミン化合物が挙げられる。上記アミン化合物を併用することにより、相乗的に触媒活性を向上させることができ、反応転化率及び反応選択率の両方を高くすることができる。
本実施の形態に係る製造方法における触媒の使用量は、特には限定はされないが、例えば、上述したクロム(Cr)化合物等からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、上記反応液に可溶な均一系触媒(アミン化合物を併用しないタイプ)を用いる場合は、(メタ)アクリル酸に対して0.01〜10モル%の範囲内であることが好ましく、0.02〜5モル%の範囲内であることがより好ましく、0.04〜3モル%の範囲内であることが更に好ましい。上記使用量が0.01モル%未満であると、反応速度が遅くなるため反応時間が長くなり、生産コストが増大する傾向がある。上記使用量が10モル%を超えると、副生物の反応選択性が高くなる傾向がある。
また、上述したアミン化合物併用タイプの触媒を用いる場合、アミン化合物の使用量は、(メタ)アクリル酸に対し0.01〜10モル%の範囲内であることが好ましく、0.02〜5モル%の範囲内であることがより好ましく、0.04〜3モル%の範囲内であることが更に好ましい。クロム(Cr)化合物等からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、上記反応液に可溶な均一系触媒の使用量は、0.01〜5モル%の範囲内であることが好ましく、0.02〜5モル%の範囲内であることがより好ましく、0.04〜3モル%の範囲内であることが更に好ましい。上記使用量が0.01モル%未満であると、アミン化合物と触媒との相乗効果が得られないおそれがあり、5モル%を超えると、生産コストが増大する傾向がある。
本発明に係る製造方法において、上記触媒は、その全使用量を反応容器に予め仕込んでおくことが一般的であるが、これに限定はされず、例えば、全使用量の一部を反応容器に初期仕込みし、その後、反応の進行途中で残部を追加して供給するようにしてもよい。また、上記触媒が均一系触媒の場合は、両原料の何れかに予め溶解させてから、反応容器に仕込んだり、供給したりしてもよい。例えば、初期仕込みする場合には、反応容器とは別の溶解槽で、初期仕込みする原料に予め溶解させておいて、反応容器に仕込むようにしてもよい。
本発明に係る製造方法においては、必要に応じて、反応の際に系内に重合防止剤を添加してもよい。重合防止剤としては、特には限定はされず、一般に工業的に用いられるものであれば使用可能であり、具体的には、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール化合物;N−イソプロピル−N’−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−パラ−フェニレンジアミン等のパラフェニレンジアミン類;チオジフェニルアミン、フェノチアジン等のアミン化合物;ジブチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅等のジアルキルジチオカルバミン酸銅塩類;2,2,4,4−テトラメチルアゼチジン−1−オキシル、2,2−ジメチル−4,4−ジプロピルアゼチジン−1−オキシル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル、2,2,5,5−テトラメチル−3−オキソピロリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、6−アザ−7,7−ジメチル−スピロ(4,5)デカン−6−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−アセトキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ベンゾイルオキシピペリジン−1−オキシル、4,4’,4’’−トリス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)ホスファイト、4,4’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)セバケート等のN−オキシル化合物;等が挙げられる。これら重合防止剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記重合防止剤を用いる場合、その添加量は、(メタ)アクリル酸の全供給量に対して、0.0001〜1重量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.5重量%の範囲内である。また、重合防止剤の添加時機については、特に限定はされないが、好ましくは初期仕込みする成分と共に初めに反応系に添加しておくことが好ましい。
本発明に係る製造方法においては、反応を温和に進行させること等を目的として、本発明の効果を損なわない範囲で、反応系に溶媒を存在させて反応を行ってもよい。溶媒としては、具体的には、例えば、トルエン、キシレン、ヘプタン、オクタン等の一般的な溶媒が挙げられ、これらの1種、又は2種以上を併用して用いることができる。
本発明に係る製造方法において、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキシドとの反応温度は、通常は、40〜130℃の範囲内が好ましく、50〜120℃の範囲内がより好ましく、50〜110℃の範囲内が更に好ましい。反応温度が40℃未満であると、反応速度の低下が著しく、反応時間が長くなり生産性が低下する傾向がある。一方、反応温度が130℃を超えると、ジエステル体や二付加体が副生し易くなる傾向がある。
本発明の製造方法において、反応時の系内圧力は、使用する原料の種類やその使用割合にもよるが、一般には標準気圧(1気圧)よりも高いことが好ましく、反応は、通常、加圧下、液状で行われる。
本発明に係る製造方法においては、ジエステル抑制剤を添加することが好ましい。これにより、反応停止後に進行するジエステル体の副生を効果的に抑制し、ジエステル体を低減させることができる。
ジエステル抑制剤としては、例えば、シュウ酸、無水シュウ酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、サリチル酸、オクタン酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラデカンジカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、1,6,7,12−ドデカンテトラカルボン酸、安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,3,5,7−ナフタレンテトラカルボン酸、ポリアクリル酸等のカルボン酸及びその無水物;グリセリン、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、クレゾール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、2,3,4,5−テトラヒドロキシヘキサン、キシリトール、マンニトール、カテコール、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシトルエン、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、2,4−ビス(ヒドロキシメチル)フェノール、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、2,4,6−トリス(ヒドロキシメチル)フェノール、1,2,4,5−テトラヒドロキシベンゼン等の多価アルコール;エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四プロピオン酸、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸、アセチルアセトン、クペロン、オキシン、ベンジジン、ジエチルジチオカルバミン酸等の金属キレート剤;等が挙げられる。これらジエステル抑制剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記ジエステル抑制剤を用いる場合、その添加量は、上記触媒1モルあたり0.1〜10モルの範囲内が好ましく、より好ましくは0.5〜5モルの範囲内である。触媒1モルあたり0.1モル未満であると、ジエステルの副生を抑制する効果が充分に発揮されないおそれがあり、一方、10モルを超えると、添加したジエステル抑制剤が製品純度を低下させるおそれがあり、特にカルボン酸類を用いた場合には得られる製品に含まれる酸成分の含有量が増加するおそれがある。また、ジエステル抑制剤の添加時機については、特に限定されず、例えば、反応開始前(原料初期仕込み時)、反応停止(冷却開始)直後、蒸留開始時、蒸留中等の際に、1回で、もしくは複数回に分割して添加するようにすればよい。反応停止直後に添加することが好ましい。
本発明に係る製造方法では、更に、アルキレンオキシドと(メタ)アクリル酸との反応液を蒸留する工程(蒸留工程)を含むことが好ましい。
上記蒸留工程は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの蒸留に一般に用いられている条件下で行うことができる。具体的には、1〜15hPaの範囲内、より好ましくは2〜10hPaの範囲内の圧力下、50〜120℃の範囲内、より好ましくは60〜100℃の範囲内の温度で蒸留を行なう。尚、通常、残存する未反応アルキレンオキシドを減圧下に除去した後に蒸留を行なうことがより好ましい。
蒸留工程の際に、反応時に使用したジエステル抑制剤との合計量が触媒1モル当り0.1〜10モルの範囲内、より好ましくは0.5〜5モルの範囲内となる量のジエステル抑制剤を更に追加添加してもよい。この場合、ジエステル抑制剤は、反応工程で使用したものと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
本実施の形態では、上記蒸留工程における蒸留残渣を次の反応に用いる工程を含むことが好ましい。
上記蒸留残渣としては特には限定されず、例えば、原料化合物である(メタ)アクリル酸をアルキレンオキシドと完全に反応させ、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの留去を行なった後の蒸留残渣を用いてもよいし、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキシドとの反応途中の任意の段階で反応を終了させ、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの留去を行なった後の蒸留残渣を用いてもよく、触媒のリサイクル効率や目的生成物の収率等がより向上するように適宜調製すればよい。
尚、蒸留残渣においては、目的生成物であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが完全に留去されていてもよいし、一部留去されずに残存してもよい。また、各種副生物や原料化合物等のその他の成分は、上記蒸留残渣に残存していてもよいし、目的生成物と共に留去されていてもよい。
また、副生物であるアルキレンオキシドの二付加体(ジアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート)を残存させた状態で蒸留残渣を次の反応に用いるようにすれば、次の反応において該二付加体の副生を効果的に抑制することができるためより好ましい。
上記蒸留残渣は、その全量を次の反応に用いることが好ましいが、特には限定はされず、その一部のみを用いたり、分割して複数の反応に分けて用いてもよい。
また、本実施の形態では、上記のように、蒸留残渣を次の反応に使用する場合、反応液中の触媒量に対する反応液中の酸成分量が、該反応液中の触媒の量に対して、計算上、モル比で0.01以上となる状態を維持することが好ましい。上記モル比は0.03以上であることがより好ましく、0.05以上であることが更に好ましい。上記モル比が0.01未満となると、反応液中の触媒が不活性化してしまい、蒸留残渣を次の反応に用いても、蒸留残渣に含まれる触媒の活性が十分に発揮されないおそれがある。尚、上記モル比の値は、モル濃度(モル%)の比、すなわち、反応液中の触媒のモル濃度(モル%)に対する反応液中の酸成分のモル濃度(モル%)の比の値と同じである。
上記「反応液中の酸成分量」とは、反応液中における全ての酸成分の量を意味し、具体的には、原料化合物である(メタ)アクリル酸のほか、反応液中に含まれ得るその他の酸等も含まれる。
反応液中での上記モル比を維持するようにするとは、具体的には、少なくとも、触媒を反応液中に供給した時点から、該反応液より得られた蒸留残渣を次の反応に用い、次の反応を実際に開始させるまでの全ての間(以下、維持期間と称する場合がある)、常に上記モル比を維持することを意味する。従って、反応時のみならず、反応を終了させるための冷却時や、目的生成物を留去するまでの待機時や、目的生成物の留去時及び留去後の全ての工程において、常に、上記モル比を維持させることが好ましい。
ここで、上記「計算上」とは、上記「反応液中の触媒の量」が、上記維持期間内の任意の時点における反応液中に存在している触媒の量であることを意味する。より具体的には、バッチ反応の場合、所定の時点までに反応液中に供給した触媒の総量を意味する。
尚、反応液中の触媒量の算出には、反応に使用されることにより本来有する触媒性能が低下したか、又は消失してしまったか否かは勘案せずに行なう。一方、「反応液中の酸成分量」は、上記任意の時点において、反応容器内の反応液中に存在している(メタ)アクリル酸等の酸成分の量を意味する。
反応液中の上記モル比を維持する手段としては、特には限定されないが、例えば、(i)上記モル比が維持される程度に、原料化合物である(メタ)アクリル酸を反応液中に供給する手段や、(ii)原料化合物である(メタ)アクリル酸より反応性の低い酸等を反応液中に供給する手段や、(iii)反応終了と同時に未反応アルキレンオキシドを反応液より除く手段(例えば、ガスパージや放散等)や、(iv)反応終了間際の反応温度を設定温度より5℃以上低くしたり、反応終了時の冷却時間を短くしたりする手段等が挙げられる。上記(i)や(ii)の手段における供給に関しては、反応の進行と共に反応液中の酸成分量等を随時管理しながら逐次的に行ってもよい。
上記の反応性の低い酸としては、例えば、オクタン酸、イソオクタン酸、デカン酸、ドデカン酸等の、炭素数が6以上の飽和カルボン酸等のカルボン酸が挙げられる。
本実施の形態では、反応液中の酸成分量を、本発明に係る自動分析装置により分析するため、反応液中の酸成分量を容易に管理することができる。つまり、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造装置を、上記反応液中のモル比を維持する手段(i)〜(iv)を本発明に係る自動分析装置により得られる酸成分量の値に基づいて自動的に行なう構成とすれば、自動的に反応液中の上記モル比を維持することが可能となる。
上述した、反応液中の触媒量に対する酸成分量を調整する方法は、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキシドとの反応によるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの従来公知の全ての製造方法に適用することができる。例えば、初期仕込みした(メタ)アクリル酸に対するアルキレンオキシドのモル比が1以上となる条件で行なう製造方法に対しても好ましく適用することができる。この製造方法においては、上記初期仕込み時の(メタ)アクリル酸に対するアルキレンオキシドのモル比が例えば1.4以上である場合、触媒の不活性化が顕著となることが問題となっていた。しかしながら、反応液中の触媒に対する酸成分のモル比を上述した範囲内となるように維持すれば、該問題を容易に解消することができる。これは、上記初期仕込み時の(メタ)アクリル酸に対するアルキレンオキシドのモル比が大きいと、反応途中において、反応液中の触媒に対する酸成分のモル比が上述した範囲を下回ることがあるためと考えられる。
尚、上述の説明では、反応液中の酸成分量の推移を自動分析装置で測定する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、サンプリング用ラインを加圧状態に維持してサンプリングを行えば、手動(マニュアル)で、つまり人力(手動操作)で分析を行ってもよい。反応液中の酸成分量の推移から、反応停止時機を予測し、反応を停止することができれば、本実施形態と同様の効果が得られる。但し、本実施形態のように、自動分析装置で測定する場合は、特に効果が大きい。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
〔実施例〕
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔酸成分量の測定方法〕
実施例における酸成分量の測定は、電位差自動滴定装置(実施例1、実施例2)、若しくはビュレットによる手分析(実施例3)により、反応液中の酸成分量を中和滴定することにより行なった。尚、酸成分量(重量%)並びに冷却後の反応液中の触媒量に対する酸成分量のモル比は、酸成分を、使用する原料酸(本実施例ではアクリル酸(実施例1)若しくはメタクリル酸(実施例2、実施例3))に換算して求めた。
〔製造例1〕
容量2000Lの攪拌装置を備えた反応器(SUS316製)に、アクリル酸466kg、触媒として酢酸クロム2.81kg及び重合防止剤としてフェノチアジン0.26kgを仕込んだ。反応器内を60℃に昇温させた後、その内部を窒素ガスで置換し、酸素濃度3容積%、内部圧を0.05MPa(G)とした。
その後、上記反応器内に、エチレンオキシド309kgを等速で3時間かけて供給した。この間、反応温度は60℃に維持した。エチレンオキシド供給後、反応温度を80℃に昇温し、反応を継続させた。3時間反応を継続させることで、反応液中のアクリル酸濃度が0.1重量%となったので、反応液を50℃以下に冷却し、反応を終了させた。
引き続き、上記反応で得られた反応液750kgを、容量1000Lの加熱装置を備えたパイロットスケールの蒸留釜(SUS316製)に仕込み、重合防止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.14kgを添加した。蒸留釜を蒸気で加熱し、バッチ蒸留を行なった。蒸留は、蒸留釜内圧を3〜5hPa、蒸留釜内温度を65〜80℃の範囲内とし、280L/時で空気を蒸留釜に導入しながら実施した。蒸留により、目的精製物であるヒドロキシエチルアクリレートの精製品650kgと、蒸留残渣(残存反応液)(A−1)96kgとが得られた。尚、蒸留残渣(残存反応液)(A−1)の酸成分量は0.04重量%(触媒量に対する酸成分量のモル比:0.05)であった。
上記反応及び蒸留操作を2回繰り返し、蒸留残渣(残存反応液)(A−1)として、192kgを得た。
〔実施例1〕
図1に示す装置において、反応容器として容量2000Lの攪拌装置を備えた反応器(SUS316製)、自動分析装置として電位差自動滴定装置、不活性ガス導入装置として窒素ボンベをそれぞれ使用したものを以下の操作に用いた。
反応器に、アクリル酸の全供給量396.6kgのうち27.7kg、触媒として酢酸クロム1.3kg、製造例1で得られた蒸留残渣(A−1)126.4kg及び重合防止剤としてフェノチアジン0.60kgを仕込んだ。反応器内を85℃に昇温させた後、その内部を窒素ガスで置換し、酸素濃度3容積%、内部圧を0.05MPa(G)とした。
上記反応器内に、126.7kg/時でエチレンオキシドを0.15時間供給し(18.7kg)、その後、199.2kg/時でアクリル酸(368.9kg)を、126.7kg/時でエチレンオキシド(234.6kg)を1.85時間供給した。この間、反応温度は85℃に維持した。原料アクリル酸及び原料エチレンオキシドの供給終了後も、反応温度を85℃に維持して反応を継続した。
原料供給が終了した時点を起点にして30分後に、反応液中の酸成分量の自動測定を開始するため、反応液の抜き出しを開始した。
酸成分量の測定は、以下のようにして行った。
反応器底部からポンプを用いて反応液を抜き出し、循環ライン内を反応液で満たした。その後、バルブ4及びバルブ5を閉じ、バルブ3aを開けることにより窒素ボンベから窒素を循環ラインに吹き込み、循環ライン内圧力を0.07MPaまで昇圧した。その後バルブ2aを開け、エチレンオキシド含有反応液を電位差自動滴定装置に導入した。そして、酸成分量の測定開始と同時に、バルブ2a・3aを閉じ、バルブ4・5を開け、反応液を循環させた(図1参照)。
上記自動サンプリング操作、自動分析操作を、反応液の抜き出し開始(原料供給が終了した時点から30分後)から4〜10分間隔で行い、反応液中の酸成分量を3回測定した。反応液中の酸成分量の測定後、酸成分量の推移から指数近似曲線を求め、外挿することにより、反応液中の酸成分量が0.1重量%となる時点を予測して、反応液の冷却を開始し、反応を停止させた。
反応液の上記冷却は、反応器から反応液を抜き出し、外部熱交換器に通液させ、冷却された反応液を再度反応器に戻すことにより行った。この操作を反応液温度が50℃以下となるまで行った。
50℃以下に冷却した反応液は、製造例1に記載した方法と同様の蒸留方法により蒸留を行なうことにより、ヒドロキシエチルアクリレートの精製品と、蒸留残渣とが得られた。
ここで得られた蒸留残渣を、更に、次の反応に仕込むことにより、以上の反応及び蒸留操作を更に4回繰り返し、反応及び蒸留操作を計5回行なった。各回において得られた反応液(B−1〜B−5)について、ガスクロマトグラフィーにより、反応停止後の反応液中の未反応のアクリル酸(AA)濃度、ジエステル体であるエチレングリコールジアクリレート(EGDA)濃度、二付加体であるジエチレングリコールモノアクリレート(DEGMA)濃度をそれぞれ測定した。その結果を、電位差自動滴定の測定結果の推移、冷却開始時間(酸成分量の推移から求めた冷却時機)及び冷却後の反応液中の触媒量に対する酸成分量のモル比(反応液中の触媒量に対する酸成分量の計算上のモル比)と共に表1に示す。また、それぞれの測定値について、5回の平均値及び振れ幅(5回のうちの最大値と最小値との差)についても併せて示す。
尚、表1における「サンプリング開始(min)」は、原料供給が終了した時点を起点にして、それぞれのサンプリング開始までの時間を示す。また、「冷却開始(min)」についても、原料供給が終了した時点を起点にした時間で示す。
〔比較例1〕
原料供給が終了した時点から30分後に、反応液を電位差自動滴定装置に導入する操作を開始する替わりに、反応液中の酸成分量が0.1重量%以下となったことを電位差滴定装置により確認した後に、冷却を開始したこと以外は実施例1と同様にして、反応および蒸留操作を行った。
1回目の反応において、原料供給が終了した時点から、実施例1と同じ67分経過後に反応液をサンプリングし、同様に、電位差自動測定装置により酸成分量を測定したところ、0.08重量%であったので、冷却を開始した。酸成分量の測定値が0.1重量%以下となったことを確認した後に冷却を開始したため、約20分のタイムラグが生じ、実際の冷却開始時期は、原料供給が終了した時点から85分後であった。
冷却後の反応液組成は、AA濃度0.001重量%、EGDA濃度0.50重量%、DEGMA濃度9.8重量%であった。また、反応液中の触媒量に対する酸成分量のモル比は0.006であった。
上記反応に引き続き、製造例1に記載した方法と同様の操作により、蒸留を行い、ヒドロキシエチルアクリレートの精製品と蒸留残渣とを得た。
ここで得られた蒸留残渣を更に次の反応(2回目)に仕込んで、反応を実施した。反応1回目と同じ、原料供給が終了した時点から67分経過後に反応液のサンプリングを行い、酸成分量を測定したところ0.97重量%であったので、さらに反応を継続した。85分経過後に反応液をサンプリングし、再度酸成分量を測定したが0.75重量%であった。結局、反応液中の酸成分量は0.1重量%まで低下せず、触媒の失活が認められた。
〔実施例2〕
図1に示す装置において、反応容器として容量2000Lの攪拌装置を備えた反応器(SUS316製)、自動分析装置として電位差自動滴定装置、不活性ガス導入装置として窒素ボンベをそれぞれ使用したものを以下の操作に用いた。
反応器に、メタクリル酸の全供給量448kgのうち112kg、触媒として酢酸クロム0.45kg、及び重合防止剤としてフェノチアジン0.45kgを仕込んだ。反応器内を80℃に昇温させた後、その内部を窒素ガスで置換し、酸素濃度1容積%、内部圧を0.1MPa(G)とした。
上記反応器内に、120.4kg/時でエチレンオキシドを0.5時間供給し(60.2kg)、その後、224kg/時でメタクリル酸(336kg)を、120.4kg/時でエチレンオキシド(180.5kg)を1.5時間供給した。この間、反応温度は80℃に維持した。原料メタクリル酸及び原料エチレンオキシドの供給終了後、反応温度を90℃に昇温して反応を継続した。
原料供給が終了した時点を起点にして40分後に、反応液中の酸成分量の自動測定を開始するため、反応液の抜き出しを開始した。
酸成分量の測定は、以下のようにして行った。
反応器底部からポンプを用いて反応液を抜き出し、循環ライン内を反応液で満たした。その後、バルブ4及びバルブ5を閉じ、バルブ3aを開けることにより窒素ボンベから窒素を循環ラインに吹き込み、循環ライン内圧力を0.07MPaまで昇圧した。その後バルブ2aを開け、エチレンオキシド含有反応液を電位差自動滴定装置に導入した。そして、酸成分量の測定開始と同時に、バルブ2a・3aを閉じ、バルブ4・5を開け、反応液を循環させた(図1参照)。
上記自動サンプリング操作、自動分析操作を、反応液の抜き出し開始(原料供給が終了した時点から40分後)から4〜11分間隔で行い、反応液中の酸成分量を3回測定した。反応液中の酸成分量の測定後、酸成分量の推移から指数近似曲線を求め、外挿することにより、反応液中の酸成分量が0.1重量%となる時点を予測して、反応液の冷却を開始し、反応を停止させた。
反応液の上記冷却は、反応器から反応液を抜き出し、外部熱交換器に通液させ、冷却された反応液を再度反応器に戻すことにより行った。この操作を反応液温度が50℃以下となるまで行った。
以上の反応操作を計5回行った。各回に得られた反応液について、ガスクロマトグラフィーにより、反応停止後の反応液中の未反応メタクリル酸(MAA)濃度、ジエステル体であるエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)濃度、二付加体であるジエチレングリコールモノメタクリレート(DEGMMA)濃度をそれぞれ測定した。その結果を、電位差自動滴定の測定結果の推移、及び冷却開始時間(酸成分量の推移から求めた冷却時機)と共に表2に示す。また、それぞれの測定値について、5回の平均値及び振れ幅(5回のうちの最大値と最小値との差)についても併せて示す。
〔比較例2〕
電位差自動滴定装置に反応液を導入する際、窒素で加圧しなかったこと以外は、実施例2と同様にして反応操作を5回繰り返した。各回において得られた反応液について、反応停止後の反応液のMAA濃度、EGDMA濃度、DEGMMA濃度をそれぞれ測定した。その結果を、電位差自動滴定の測定結果の推移、及び冷却開始時間と共に表3に示す。また、それぞれの測定値について、5回の平均値及び振れ幅(5回のうちの最大値と最小値との差)についても併せて示す。
〔実施例3〕
反応容器として容量2000Lの攪拌装置を備えた反応器(SUS316製)、手動分析装置としてビュレット、不活性ガス導入装置として窒素ボンベをそれぞれ使用したものを以下の操作に用いた。
反応器に、メタクリル酸の全供給量448kgのうち112kg、触媒として酢酸クロム0.45kg、及び重合防止剤としてフェノチアジン0.45kgを仕込んだ。反応器内を80℃に昇温させた後、その内部を窒素ガスで置換し、酸素濃度1容積%、内部圧を0.1MPa(G)とした。
上記反応器内に、120.4kg/時でエチレンオキシドを0.5時間供給し(60.2kg)、その後、224kg/時でメタクリル酸(336kg)を、120.4kg/時でエチレンオキシド(180.5kg)を1.5時間供給した。この間、反応温度は80℃に維持した。原料メタクリル酸及び原料エチレンオキシドの供給終了後、反応温度を90℃に昇温して反応を継続した。
原料供給が終了した時点を起点にして40分後に、反応液中の酸成分量の測定を開始した。
酸成分量の測定は、以下のようにして行った。
反応器底部からポンプを用いて反応液を抜き出し、循環ライン内を反応液で満たした。その後、窒素ボンベから窒素を循環ラインに吹き込み、循環ライン内圧力を0.07MPaまで昇圧した。その後、循環ライン内のエチレンオキシド含有反応液をサンプリングし、ビュレットを用いて酸成分量を測定した。
この操作を、反応液の抜き出し開始(原料供給が終了した時点から40分後)から4〜11分間隔で行い、反応液中の酸成分量を3回測定した。反応液中の酸成分量の測定後、酸成分量の推移から指数近似曲線を求め、外挿することにより、反応液中の酸成分量が0.1重量%となる時点を予測して、反応液の冷却を開始し、反応を停止させた。
反応液の上記冷却は、反応器から反応液を抜き出し、外部熱交換器に通液させ、冷却された反応液を再度反応器に戻すことにより行った。この操作を反応液温度が50℃以下となるまで行った。
以上の反応操作を計5回行った。各回に得られた反応液について、ガスクロマトグラフィーにより、反応停止後の反応液中の未反応メタクリル酸(MAA)濃度、ジエステル体であるエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)濃度、二付加体であるジエチレングリコールモノメタクリレート(DEGMMA)濃度をそれぞれ測定した。その結果を、ビュレットによる滴定の測定結果の推移、及び冷却開始時間(酸成分量の推移から求めた冷却時機)と共に表4に示す。また、それぞれの測定値について、5回の平均値及び振れ幅(5回のうちの最大値と最小値との差)についても併せて示す。
〔比較例3〕
原料供給が終了した時点から40分後に、反応液中の酸成分量の測定を開始する替わりに、反応液中の酸成分量が0.1重量%以下となったことを手動による分析操作により確認した後に冷却を開始したこと以外は実施例3と同様にして反応操作を5回繰り返した。
原料供給が終了した時点から、実施例3と同じ68分経過後に反応液をサンプリングし、同様にビュレットによる手分析で酸成分量を測定したところ、0.07重量%であったので、冷却を開始した。酸成分量の測定値が0.1重量%以下となったことを確認した後に冷却を開始したため、約20分のタイムラグが生じ、実際の冷却開始時期は、原料供給が終了した時点から90分後であった。
各回に得られた反応液について、ガスクロマトグラフィーにより、反応停止後の反応液中の未反応メタクリル酸(MAA)濃度、ジエステル体であるエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)濃度、二付加体であるジエチレングリコールモノメタクリレート(DEGMMA)濃度をそれぞれ測定した。その結果を、ビュレットによる手分析での測定結果の推移、及び冷却開始時間と共に表5に示す。また、それぞれの測定値について、5回の平均値及び振れ幅(5回のうちの最大値と最小値との差)についても併せて示す。
表1に示す実施例1の結果、表2に示す実施例2の結果、及び表4に示す実施例3の結果では、得られたヒドロキシエチルアクリレート及びヒドロキシエチルメタクリレートに含まれるアクリル酸(実施例1)若しくはメタクリル酸(実施例2及び実施例3)、ジエステル体及び二付加体の量は、1回目から5回目まで一定であり、安定した品質の製品が得られた。
これに対して、比較例1の結果では、1回目の反応で触媒が失活し、2回目以降の反応では、製品を得ることができなかった。また、表3に示す比較例2の結果では、得られたヒドロキシエチルメタクリレートに含まれるメタクリル酸、ジエステル体及び二付加体の量は、1回目から5回目までバラツキが大きく、製品品質は不安定であった。更に、表5に示す比較例3の結果では、反応液中の酸成分量の測定後に反応液の冷却を開始しているため、ジエステル体や二付加体といった副生成物の生成量が多くなり、製品品質の低下を招いた。
具体的には、比較例1の結果では、反応液中の酸成分量の測定後に反応液の冷却を開始しているため、反応液中の触媒量に対する酸成分量が、計算上モル比で0.01以下となり、次の反応に使用する蒸留残渣中の触媒が失活していた。その影響により、2回目の反応の反応速度は遅くなり、同じタイミングで冷却を開始すると反応液中の酸成分濃度が高くなった。
また、上記比較例1及び比較例3の結果に示されるように、反応液中の酸成分量の測定後に反応液の冷却を開始しているため、反応液のサンプリングから当該反応液の冷却開始まで1〜20分程度のタイムラグが生じる場合がある。このような場合では、最終的に得られる酸成分量の分析値が、反応液の冷却開始時における反応液の酸成分量とは異なる場合が多くなり、最終的に得られる酸成分量の分析値が反応終点の範囲であったとしても、反応液の冷却開始時における反応液の酸成分量が反応終点の範囲から外れる場合が生じる。このため、得られる生成物中の不純物が多くなったり、得られる生成物の組成が安定しない等の製造上の問題が生じ易い。
しかし、実施例で示すように、反応液中の酸成分量の推移から反応終点を予測することで、反応を最適ポイントで停止させることができ、上記問題を解消することができる。
また、上記実施例で採用した、自動停止方法とは、熱交換器で反応を冷却する際に、熱交換器に導入していた熱媒を冷水媒に変更することにより熱交換を行う形態である。この場合には、冷却用の余分な熱交換器を設置することなく、速やかに反応を停止することができ、本発明の目的を達成することができる。
上記自動停止は、例えば、自動酸成分量測定装置からの停止信号をシーケンス制御で受け、熱交換器に設置されている熱媒体と冷却用媒体の配管を弁操作で切り替えるなどの操作を自動制御することにより行うことができる。
また、表3に示す比較例2の結果では、サンプリング時に加圧を行っていないため、サンプリング時に加圧を行った実施例2の結果と比べてサンプリング量に誤差が生じやすく、その結果酸成分量の誤差が大きくなり、分析値の推移に基づく冷却開始時機の誤差が大きくなる傾向を示した。
尚、本実施例では、特に記載はしていないが、特開2002−226427号公報に記載の、熱媒体と冷却媒体とを切り替えて使用する熱交換器を使用して、冷却を行い反応を停止させている。この熱交換器を用いることにより、酸成分自動分析手段からの信号により冷却を開始する時機を自動的に制御させ、速やかに反応液を冷却することが可能である。従って、適切な時機で反応を停止することが可能となる。よって、ヒーターとして使用している熱交換器の熱媒体を切り替えてクーラーとして使用する、上記公報に記載の方法は、本発明が採用し得る反応停止手段の好ましい具体例である。