JP2008126305A - 冷間タンデム圧延における板厚制御方法 - Google Patents

冷間タンデム圧延における板厚制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】最小の投資で最大の効果を得られると共に、高精度で板厚制御を行うことができる冷間タンデム圧延における板厚制御方法を提供する。
【解決手段】最終スタンド15で圧延荷重およびロールベンディング力を測定し、これら測定値に基づいてミルストレッチ式により最終スタンド出側板厚を絶対値で推定し、最終スタンド出側板厚の目標値と前記推定値の偏差に基づいて圧下位置を変更して板厚を制御すると共に、圧下位置を変更する前に任意の一定周期毎に当該スタンド出側の張力を測定しておき、最終スタンド15の出側板厚偏差が特定の範囲内の定常圧延条件であるときの張力を一定の目標値として当該スタンド出側の張力を制御する。
【選択図】図2

Description

本発明は、圧延工程で例えば同一コイル内の変形抵抗差等の荷重変動を引き起こす外乱を有する圧延材を圧延する際の、絶対値ゲージメーターAGCを適用するためのミルストレッチモデルを用いた冷間タンデム圧延における形状制御方法に関するものである。
ここで、AGCは「オート・ゲージ・コントロール」の略である。
冷間タンデム圧延ではコイルどうしを接合し、連続的に圧延する方法が一般的である。板厚の高精度化の要求は上昇の一途をたどっており、圧延の安定する定常部だけでなく、接合部等の非定常部の板厚精度向上の要求も大きくなっている。冷間タンデム圧延における制御系はそれを組んだ当時のミルの思想によって様々であるが、第1スタンドでは後段のいずれかのスタンド出側に設置された板厚計出力を元にして圧下制御または圧下制御に加えて張力制御を行い、第2スタンド以降のスタンドではロール周速度を変化させる張力制御を行うことが多い。これは第1スタンド以外では圧下による板厚制御が難しいという経験的な知見とそれを裏付ける解析例(非特許文献1)による。第1スタンドについてはBISRA AGCのような相対値ゲージメーターAGCやマスフローAGCが主として用いられており、絶対値ゲージメーターAGCは用いられていないが、最終スタンドもしくは第1スタンドと最終スタンドに絶対値ゲージメーターAGCを用いる方法(特許文献1)等が技術的には開示されている。非定常部の板厚精度向上策としては中間スタンドから最終スタンドにかけての張力や圧下位置を変更することによって板厚を高精度化する方法(特許文献2〜6)や、セットアップ学習を最適化する方法(特許文献7)が開示されている。
これまで、熱延仕上げスタンド等では絶対値ゲージメーターAGCによる板厚制御が行われてきた。絶対値ゲージメーターAGCを適用するにはミルストレッチと呼ばれる圧延機の弾性変形による上下ワークロール間ギャップの増分を正確に把握するための高精度ミルストレッチモデルが必要であり、特許文献8にはモデルの基本構成や基本的な使用方法に関する技術が開示されている。また、特許文献9にはこのモデルを熱延で使用する際に限定して本モデルから圧延荷重とロールベンディング力の影響係数を算出して、影響係数を用いた板厚制御方法に関する技術が開示されている。
また、特許文献10には板厚およびクラウン量に及ぼす荷重とベンディング力の影響係数を用いた板厚・形状非干渉制御技術が開示されている。ミルストレッチ量をAGC周期毎に直接算出できれば良いが、絶対値ゲージメーターAGCのような高応答性が要求される制御ではストレッチ量をリアルタイムに計算しAGCに反映させるのは計算時間の観点から難しいため、影響係数を用いた技術が一般的に適用されている。
特開2003−164904号公報 特開平5−123725号公報 特開平5−123726号公報 特開平5−123727号公報 特開平5−123728号公報 特開平6−126312号公報 特開平6−15318号公報 特開昭60−30508号公報 特開平6−285525号公報 特開昭57−177818号公報 「圧延百話」鈴木弘著 養賢堂2000年3月30日発行 (p497) 「板圧延の理論と実際」日本鉄鋼協会共同研究会圧延理論部会編、 社団法人日本鉄鋼協会、昭和59年9月1日発行(p295〜 302)
近年、自動車用鋼板において高強度化・薄肉化の要求が高まっており、ハイテンや超ハイテンと言われる高強度鋼板の需要が高まっている。これは衝突安全性や地球環境保全の観点から要求されているもので、今後も益々需要が増加することが予想される。ハイテンや超ハイテンの圧延(加熱・巻き取りを含む)については鋼板の強度が高いことや添加元素が多いこと等これまでに無かった条件での圧延が増加したことにより、新たな問題が発生している。その一つとしてハイテンに特有のコイル長手方向の変形抵抗の不均一性の問題がある。これは数m程度毎に数〜十mm程度の幅の高変形抵抗帯が生じる現象で、圧延機の圧下位置を一定にしている状態で変形抵抗が高い部分が圧延機を通過すると、荷重が高くなってミルストレッチが増加し、その分当該圧延機出側の板厚が増加するという問題が生じている。
特許文献1に開示されているように最終スタンドで製品厚を造り込むという考え方から、最終スタンドで絶対値ゲージメーターAGCによって高精度板厚制御を行うことは有効である。また、第1スタンドと最終スタンドに絶対値ゲージメーターAGCを適用することは、第1スタンドで板厚外乱を消去することによる通板安定性と最終スタンドで製品厚の高精度化ができることから有効な方法である。両者とも最終スタンドの絶対値ゲージメーターAGC化が必須として開示されているが、最終スタンド入側の板厚変動が大きい場合には、板厚変動に伴う張力変動が誘起されるので最終スタンドでその板厚変動を除去しきれない場合もあり、問題となっている。
特許文献2から6には接合部近傍のような変形抵抗変動がある材料を圧延する際に、中間スタンドでの板厚変動を最終スタンドや最終スタンドから1つ目、2つ目のスタンドを使用して修正する方法が開示されている。この方法は最終スタンド出側の板厚に注目して制御を行っている点に特徴があり、最終製品板厚が最重要であるために視点は評価されるが、前述のように最終スタンド入側の板厚変動量によっては最終スタンドで板厚変動を取り除くことが難しく、改良の余地がある。
特許文献7にはセットアップに学習を取り入れる方法が開示されている。冷間タンデム圧延では走間でセットアップされるため本方法は有効であるが、セットアップでも尚目標との偏差が残ることが多く、高精度制御のためにはセットアップ後の制御を考える必要がある。
非特許文献1に開示されているように第1スタンドの圧下位置の変更は最終スタンド出側板厚に大きな影響を及ぼす。また、近年冷間タンデム圧延機の第1スタンドには高応答な油圧圧下が多く取り入れられており、高精度制御可能な環境が整いつつある。現状、第1スタンドに適用されている圧下制御は従来技術で挙げたようなAGCがあるが、各AGCには次のような問題がある。
マスフローAGCでは入側板厚計と入出側速度計、もしくはそれに準じる測定器が備わっていればマスフロー一定則から第1スタンド出側板厚を推定することが可能である。しかし、ミルに設置されている板厚計のデータはフィルター等の影響も含まれており、急激な板厚変化が生じている場合にはその急峻な変化を捉えることは難しい。また、板厚が急峻に変化することから張力変動も生じており、例えばパルスジェネレーター等の板速計の場合正確な速度を測定できるかどうかは疑問がある。もし、推定板厚が正確であったとしてもトラッキングが正確でないとミル直下に当該部分が来たときに圧下位置を変化させることが難しくなる。以上のような状況から、マスフローAGCでは制御ゲインをあまり高く設定することが難しいという問題がある。
BISRA AGCは予めミル定数を求めておき、ある圧延条件でロックオンし、その圧延条件からの荷重変化に応じて圧下位置を補償する方法である(例えば、非特許文献2参照)。板厚の絶対値を推定できるわけではないので、ロックオン板厚が目標板厚とずれている場合、目標板厚に制御することはできない。そこで、圧延機出側の板厚計を用いたモニターAGCとの併用が不可欠である。そのためBISRA AGCでは制御ゲインをあまり高く設定することが難しいという問題がある。
次にモニターAGCについてはスタンド出側に設置されている板厚計の出力を用いた制御なので、短周期な板厚変動に対しては制御することはできないという問題がある。
いずれも出側板厚の推定値が十分に高精度とは言えない状況から制御ゲインをあげることができずに高精度な板厚制御が難しいという問題を抱えている。
特許文献8〜10に開示されている絶対値ゲージメーターAGCについては、高精度ミルストレッチモデルについては技術的には開示されているものの、どのスタンドに適用すれば最小の投資で最大の効果が得られるのか検討されてはいなかった。それらを考慮して適切な配置でこれらの発明を利用するところに本発明の意義がある。
上記の従来技術をまとめると次のような課題があることが判った。
・ 単に絶対値ゲージメーターAGCを導入すると張力変化の問題がある
・ 変形抵抗変動がある場合、1スタンド目で生じた板厚変動を、最終スタンドやその 前のスタンドで取り除くことが難しい。
・ 変形抵抗変動がある場合、セットアップ技術を向上させてもセットアップ後の制御 の必要がある。
・ 変形抵抗変動がある場合、マスフローAGC、BISRA AGC、モニターAG Cでは精度と応答速度が不充分であるので、変形抵抗変動によって生じる板厚変動 を制御できない。
・ 変形抵抗変動がある場合、変形抵抗変動によって生じる板厚変動を制御するために 絶対値AGCをどのスタンドで使用したらよいのか等の検討がなされていなかっ た。
本発明はこのような点を考慮して最小の投資で最大の効果を得られると共に、高精度で板厚制御を行うことができる冷間タンデム圧延における板厚制御方法を提供することを課題としている。
本発明は上記したような従来法の問題点を解決するためのものであり、要旨は下記の通りである。
(1)本発明の冷間タンデム圧延における板厚制御方法は、最終スタンドでワークロールに圧下力とベンディング力を付与し、最終スタンド出側から張力を付与する冷間タンデム圧延における板厚制御方法において、最終スタンドで圧延荷重およびロールベンディング力を測定し、これら測定値に基づいてミルストレッチ式により最終スタンド出側板厚を絶対値で推定し、最終スタンド出側板厚の目標値と前記推定値の偏差に基づいて圧下位置を変更して板厚を制御すると共に、圧下位置を変更する前に任意の一定周期毎に当該スタンド出側の張力を測定しておき、当該最終スタンドの出側板厚偏差が特定の範囲内の定常圧延条件であるときの張力を一定の目標値として当該スタンド出側の張力を制御することを特徴としている。
(2)本発明の冷間タンデム圧延における板厚制御方法は、(1)に記載の板厚制御方法において、最終スタンド出側から張力を付与する手段として、ブライドルロールまたは巻取りリールを用い、前記ブライドルロールまたは前記巻取りリールの周速を調整して前記最終スタンド出側張力を制御することを特徴としている。
(3)本発明の冷間タンデム圧延における板厚制御方法は、最終および最終から2スタンド目でワークロールに圧下力とベンディング力を付与し、最終スタンド出側から張力を付与する冷間タンデム圧延における板厚制御方法において、最終および最終から2スタンド目で圧延荷重およびロールベンディング力を測定し、これら測定値に基づいてミルストレッチ式によりそれぞれのスタンドの出側板厚を絶対値で推定し、それぞれのスタンドの出側板厚の目標値と前記推定値の偏差に基づいて圧下位置を変更して板厚を制御すると共に、圧下位置を変更する前に任意の一定周期毎に最終スタンド入出側張力を測定しておき、当該両スタンド出側板厚偏差が特定の範囲内の定常圧延条件であるときの最終スタンド入出側張力を一定の目標値として当該両張力を制御することを特徴としている。
(4)本発明の冷間タンデム圧延における板厚制御方法は、(3)に記載の板厚制御方法において、最終スタンド出側から張力を付与する手段として、ブライドルロールまたは巻取りリールを用い、最終スタンドのワークロール周速並びに前記ブライドルロールまたは前記巻取りリールの周速を調整して前記最終スタンド入出側張力を制御することを特徴としている。
(5)本発明の冷間タンデム圧延における板厚制御方法は、全スタンドに圧下力とベンディング力を付与し、最終スタンド出側から張力を付与する冷間タンデム圧延における板厚制御方法において、全スタンドで圧延荷重およびロールベンディング力を測定し、これら測定値に基づいてミルストレッチ式によりそれぞれのスタンドの出側板厚を絶対値で推定し、それぞれのスタンドの出側板厚の目標値と前記推定値の偏差に基づいて圧下位置を変更して板厚を制御すると共に、圧下位置を変更する前に任意の一定周期毎に全スタンド出側張力を測定しておき、全スタンド出側板厚偏差が特定の範囲内の定常圧延条件であるときの全スタンド出側張力を一定の目標値として全スタンド出側張力を制御することを特徴としている。
(6)本発明の冷間タンデム圧延における板厚制御方法は、(5)に記載の板厚制御方法において、最終スタンド出側から張力を付与する手段として、ブライドルロールまたは巻取りリールを用い、第一スタンド以外の全スタンドでワークロール周速を調整すると共に、前記ブライドルロールまたは前記巻取りリールの周速を調整して前記スタンド出側張力を制御することを特徴としている。
(7)本発明の冷間タンデム圧延における板厚制御方法は、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の板厚制御方法において、前記ミルストレッチ式により最終スタンド出側板厚を絶対値で推定する方法は、圧下制御対象スタンドでキスロール締め込みから得られるミルの変形特性からロール系の変形成分とそれ以外の変形成分を分離抽出し、前記キスロール締め込み時のロール系の変形成分を通板時のロール系の変形成分に置き換えて当該負荷時のミルストレッチを計算し、無負荷時のロールギャップと該ミルストレッチから圧下制御対象スタンドの出側板厚を絶対値で推定する方法であることを特徴としている。
(8)本発明の冷間タンデム圧延における板厚制御方法は、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の板厚制御方法において、前記ミルストレッチ式により最終スタンド出側板厚を絶対値で推定する板厚制御方法において、圧延荷重およびベンディング力の圧下制御対象スタンドの出側板厚に及ぼす影響係数、基準圧延荷重時のミルストレッチ、並びに、任意のクラウン定義点における圧延荷重およびベンディング力の圧下制御対象スタンドの出側クラウンに及ぼす影響係数を予め算出しておき、板厚目標値および目標クラウンとなるように前記影響係数を用いて圧下制御対象スタンドの出側板厚およびクラウンを制御することを特徴としている。
(9)本発明の冷間タンデム圧延における板厚制御方法は、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の板厚制御方法において、定常状態において制御周期毎に圧下制御対象スタンドの出側板厚を推定および測定し、これら板厚の推定値および測定値との間に差がある場合に、次回の計算で板厚の推定値に該差分を加算して板厚を推定することを特徴としている。
(10)本発明の冷間タンデム圧延における板厚制御方法は、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の板厚制御方法において、前記ミルストレッチ式によって求められたミルストレッチは、予め基準圧延荷重および基準ベンディング力時のミルストレッチ、並びに、これら基準圧延荷重および基準ベンディング力近傍のミルストレッチに及ぼす圧延荷重およびベンディング力の影響係数をそれぞれ求め、圧延荷重およびベンディング力の前記基準値からの変化量に基づいて求められることを特徴としている。
本発明の(1)または(2)の板厚制御方法によれば、最終スタンドで絶対値ゲージメーターAGCによる圧下制御と張力制御とにより板厚制御を行うので、ハイテンのようなコイル長手方向に変形抵抗差がある材料に対して、圧延条件によらず、定常部だけでなく非定常部においても高精度な板厚制御が可能であり、張力変動に起因した圧延トラブルも回避し高生産性を実現できると共に、歩留向上・コスト削減が可能となる。
本発明の(3)または(4)の板厚制御方法によれば、最終および最終から2スタンドで圧下制御および張力制御を行うので、(1)の板厚制御方法に比べ更に高精度の板厚制御が可能となる。
本発明の(5)または(6)の板厚制御方法によれば、全スタンドで圧下制御および張力制御を行うので、(1)および(2)の板厚制御方法に比べ更に高精度の板厚制御が可能となる。
本発明の(7)の板厚制御方法によれば、ミルストレッチを高精度で求めることができるので、スタンド出側板厚の推定精度を高めることができる。
本発明の(8)の板厚制御方法によれば、高精度の板厚および板形状制御が可能となる。
本発明の(9)の板厚制御方法によれば、ワークロールのサーマルクラウン成長および摩耗に追従して板厚制御が行われるので、板厚精度を高めることができる。
本発明の(10)の板厚制御方法によれば、ミルストレッチの計算が簡単となり、制御コンピューターの能力に制限されることなく、また板厚精度を落とすことなく板厚制御が可能となる。
現状の冷間タンデム圧延機では第1スタンドで圧下制御、それ以降のスタンドでは張力制御によって板厚を所望の値に制御する方法が一般的である。第2スタンド以降の張力制御の場合、圧下位置を変化させないため上記のように変形抵抗の異なる部分が圧延機に咬込むと荷重が増加して板厚が大きくなる現象が生じる。ハイテンでは高変形抵抗部分が数〜十mm程度ある場合があるので、圧延荷重が高くなってミルが伸びることが原因であり、張力制御の制御端であるワークロール周速度を変化させるまでの応答遅れによりそのような狭い範囲の制御が不可能なので板厚を高精度に制御することが難しい。冷間圧延の張力制御では必ずロール周速を制御端とするので、出側の板厚を正確に推定できたとしてもこのような高変形抵抗部分の板厚を高精度に制御することは原理上不可能である。一方、ロードセルはほとんど時間遅れなく荷重変化を捉えることができるので、この高変形抵抗部分が圧延機を通過した際の荷重変動も捉えることが可能である。荷重変化を捉えることができれば、上述のミルストレッチモデルから瞬時に板厚を推定することができる。高変形抵抗部分のように狭い幅の部分を制御するには応答性のよい制御端が必要なのは言うまでもなく、圧下位置を油圧によって変化させることが最良の方法と言える。
また、冷延において圧下制御を行う場合、熱延と異なり、例えば圧下を締め込んだことによってスタンド出側張力が低下し、そのために締め込んだスタンドの荷重が増加して板厚が増加し、結果的に圧下を締め込んだ効果が無くなってしまうという現象があると言われている。張力が変化することによって効果が無くなっているので、圧下位置を変化させると同時にスタンド出側張力を制御して、圧下位置変更前の張力を保つことができれば、圧下位置変化の効果がそのまま板厚変化として表れることになり、圧下制御による上記問題は解決される。
ハイテン特有の高変形抵抗部分の問題についてはミルストレッチモデルによる高応答・高精度な板厚推定能力と高応答な制御端が必要であり、油圧圧下による板厚制御が最良であることが判明したので、次にその圧下制御をタンデム圧延機のどのスタンドに配置すべきかを検討した。
5スタンドの冷間タンデム圧延機を想定し、ダイナミックシミュレーションモデルを構築して、各スタンドに張力制御もしくは圧下制御を配置して板厚制御性能を比較した。圧下制御においては、上記張力変化の問題があるので、圧下制御のみの場合と圧下制御と同時に張力一定制御を適用する場合の2種類のシミュレーションを行った。モーターや圧下の応答性等はシミュレーション上に反映しており、圧下は制御の部分は油圧圧下として応答性を増加させた。変形抵抗変動として、実際の変形抵抗変動を参考に周期と振幅を変えた2つのSIN(正弦波)の複合カーブとしてモデル化した。
表1に圧下制御・張力制御の各スタンドへの配置と計算結果を示す。ここで、圧下制御は高精度ミルストレッチモデルを用いて板厚を推定し、油圧圧下にて制御している。現状の制御を計算No.1で示している。今回のシミュレーションではSINカーブを連続的に導入した定常部のシミュレーションとなっている。
Figure 2008126305
板厚が要求される板厚精度を越えていればオフゲージとなってしまうので、板厚が要求板厚精度内に収まっている必要がある。第1スタンドと最終スタンドに圧下制御を適用する(No.2−1)と、今回の計算では最終スタンドに張力制御を適用する場合よりも30μm程度良くなる。スタンド出側に張力一定制御を適用すれば、更に10μm程度の効果が得られることが新しく知見された(No.2−2)。最終スタンドに加えて最終スタンドの1つ前スタンドに圧下制御を適用した場合(No.3−1)と、第2スタンドに圧下制御を適用した場合(No.4−1)もシミュレーションした。このハイテンの変形抵抗変動がある材料に関しては後段に圧下制御を適用した方が良いことが確認された。これは前段に圧下制御を適用しても変形抵抗変動がある場合には、後段の張力制御スタンドで板厚偏差を再び造り込んでしまうために、効果が小さいと思われる。後段2スタンドを圧下制御にすれば、最終スタンドだけではとりきれない板厚変動を取り除くことができることが分かった。また、その際に出側張力制御を適用すべきこともシミュレーションで確認された。現状、電動圧下のミルに対して油圧圧下を適用する箇所を選定する上で、ハイテンを主力商品とすることを前提とすれば、後段に投資をすべきであると言える。ここで、スタンド間であれば張力制御は前後スタンドのワークロール周速度変化によって可能であり、最終スタンド出側についてはブライドルロールまたは巻取りリールが張力制御端となる。
更に最終スタンドに加えて前段側から中間スタンドにも圧下制御を適用した場合(No.5−1)についてもシミュレーションしたが、前段からであると1スタンド圧下制御を増加させる毎に数μm程度板厚精度が向上することが確認された。全スタンドに圧下制御を適用する(No.6−1)と板厚の振幅は40μm以下となり、圧倒的な効果が期待できる。張力制御が1スタンドでも含まれていると、(1)張力制御では圧下位置は変化させないのが原則なので、前段で平坦な板を造り込めても、変形抵抗変動があった場合にはそのスタンドで板厚変動を造り込んでしまう、(2)応答性の問題から板厚変動を除去することは難しいという2点の問題から板厚変動を誘発することになる。いずれかのスタンドに張力制御を適用した時の変動は最終スタンドの圧下制御だけでは除去しきれないため、このような板厚変動が残っていると思われる。一方、圧下制御では変形抵抗変動は荷重変動としてロードセルによって検出されるので、油圧圧下によって即座に補償すれば、板厚変動を変化させることができる。No.3〜6において張力一定制御を加えると、No.2−2と同様に各条件ともさらに板厚変動を小さくすることができる。油圧圧下ではなく、電動圧下の場合も想定してシミュレーションしても、傾向は同じであった。変形抵抗変動がある場合、全スタンドで圧下制御を適用すべきことが確認された。また、板厚変動が減少することにより張力変動も減少することも確認された。
板厚制御方法を張力制御から圧下制御に変更すると、荷重変動が大きくなるので形状変動が大きくなる。形状変動を抑えるために荷重変動分をワークロールベンダーにて補償し、メカニカル板クラウン一定にする制御方法(板厚・形状非干渉制御)を適用する場合をシミュレーションした。その結果、表2に示すように、非干渉制御を適用するとメカニカル板クラウン変動は半減し、効果があることが確認された。形状が安定化されたための板厚変動への効果は数μmあった。
Figure 2008126305
変形抵抗変動に対して圧下制御が板厚精度に有効であることが確認されたので、圧下制御方法としていずれの制御法が最適かを検討する。圧下制御を行うには板厚を推定するか測定して目標板厚との差を算出して圧下位置を変更する。圧下制御を正確に行うには如何に高応答速度・高精度に板厚を推定もしくは測定するかにかかっている。上記の板厚を推定もしくは測定する方法としては以下の方法が考えられる。
1)入側板厚、入側板速度および出側板速度を用いるマスフローによる推定法。
2)ミル伸びをミル定数で考慮する相対値ゲージメーター板厚推定法。
3)ミル伸びの非線形性を考慮した絶対値ゲージメーター板厚推定法。
4)板厚計による測定法。
マスフロー推定値は入側板厚H、入側板速度Vin、出側板速度Vout、出側板厚hとするとh=H×Vin/Voutで表される。板厚計ではノイズ等の影響を防止するために一般にローパスフィルターを使用する。そのため急峻な板厚変動を捉えることは難しくなる。また板速度計については冷間タンデム圧延機で使用する方式としては接触ローラー式とレーザードップラー式の2種類が考えられる。接触ローラー式の場合、パルスをカウントしていくことになるので1パルスのカウントが入るか入らないかで誤差が決定される。制御周期(測定周期)やローラー径、1カウントの角度等に依存するが、例えば制御周期50ms、ローラ径240mm、1200パルス/回転の場合、誤差は約1.5%となる。また、張力が緩んだ場合にはその誤差は更に大きくなる。レーザードップラー式の誤差を求めるために実機で使用されている板速度計と同型・同設定の板速度計を用いてラボで実験した。等間隔に印を付けた板を種々の速度で通板し、ビデオカメラで定点観測して正確な板速度を算出した。その結果とレーザードップラー板速度計の出力とを比較した結果平均で1.1%の誤差があることが判明した。これらのことを考慮すると板厚変動が生じている箇所では張力が緩む可能性も高く、正確な板厚推定が難しいことが分かる。
次にBISRA AGCに使用されている相対値ゲージメーター推定値について検討する。BISRA AGCでは予めミル定数を制御系に与えておいて、ロードセルにより検出される荷重変化を元に補償する。ロードセルの検出誤差を検証した。荷重検出精度に誤差はほとんどなく、応答遅れも制御周期を50msとした場合に問題があるレベルでないことが確認できた。ところで、出側板厚h、ロックオン荷重P0、ロックオン荷重時の板厚h(P)と外乱等によって変化した荷重P時のミルストレッチ差ΔMS(P−P)、出側板厚計出力と目標板厚の誤差ΔhとするとBISRA AGCでは式(1)を用いて制御している。
h=h(P)+ΔMS(P−P)+Δh …(1)
また、ミルストレッチは荷重P、ミル定数Mを用いて式(2)で表される。
MS(P)=(P−P)/M …(2)
BISRA AGCではロックオン時の板厚h(P)が目標板厚とは限らないため目標板厚にするにはΔhが必須である。目標板厚とロックオン荷重時の板厚の差は圧延機出側の板厚計出力に頼らざるを得ない。また、BISRA AGCではミル定数を1つしか使用しない。つまりミル変形を線形と仮定していることと同義である。実際のミル変形は非線形であり、荷重域、板幅、ロール径等によっても変化するため、本来コイル毎に使用されるべきミル定数を計算しなければ正確なミルストレッチを計算することはできない。さらにBISRA AGCでは板厚を絶対値で推定できないことを絶対値ゲージメーターAGCとの比較で記述する。板厚を絶対値で推定するには式(3)による計算が必要であり、その際に必要なのは正確なミルストレッチを求めることである。ここでhは推定板厚、Sは無負荷時のギャップ、MS(P)は荷重Pの時のミルストレッチである。
h=S+MS(P) …(3)
図1に曲線の両AGCによるミルストレッチの取り扱い方を示す。太い曲線はミルストレッチである。特に低荷重時はロールを始めとする各接触部の当たり面(面積)が変化するために強い非線形性を有する。高荷重域でも完全な直線ではないので、ミル変形を表すミル定数を一定とするには問題があることが分かる。絶対値ゲージメーターAGCではこのミルストレッチを正確に推定することができなければならない。例えば圧延荷重Pの時のミルストレッチを算出してMS(P)とし、外乱等によって圧延荷重が変化したときにはミルストレッチを新たに計算すれば良い。ミルストレッチ計算にはロール径・胴長・ロール形状・支点間距離・ベンダー形状・板幅等による影響を考慮する必要があるので、制御周期毎にミルストレッチを計算することは今の計算機能力を持ってしても難しい。そこで、基準のミルストレッチを求めておき、板厚に及ぼす影響係数を用いて外乱によって荷重変化が生じたときのミルストレッチ変化を算出する方法がある。影響係数とはすなわち図1の接線の傾きであり、基準の圧延荷重を実圧延荷重の近くで計算するほど正確なミルストレッチを計算することができる。ミルストレッチを正確に計算できれば、無負荷時のギャップも分かっていることから板厚を絶対値で推定することが可能となる。また、ベンディング力についてもその負荷は板厚に影響を及ぼすので影響係数として用いる必要がある。本発明で採用しているミルストレッチ計算法によれば非線形性を考慮して正確に求めることができる。
BISRA AGCでは荷重変化による板厚変化をミル定数で補償するのみで、ミルストレッチがMS(P)であることも計算しない。板厚は式(3)のように表されるので正確なミルストレッチが分からなければ正確な板厚を推定することも不可能である。BISRA AGCは正しいかどうか分かっていないある点を基準にして、時間平均がその基準点になるように相対的な板厚変化のみをさせる制御であるので、前述の絶対値ゲージメーターAGCに対して、相対値ゲージメーターAGCに相当することが分かる。変形抵抗変動を補償する場合、変形抵抗変動は定常部でも生じているので、定常部であれば基準点を合わせて板厚を制御することができるが、変形抵抗の変動量が大きくなって、板厚変動が大きくなればなるほどミルストレッチの非線形性に起因した誤差が大きくなり正確な板厚推定ができなくなる。非定常部では基準点自身が不正確な可能性が高いので、正確な板厚推定は望むべくもない。
次にモニターAGCについて述べる。モニターAGCでは出側板厚計の検出値を用いて、目標板厚と検出板厚の差から圧下位置を変更する。板厚計は一般に圧延機から数m後方にあるので、定常部のように安定した圧延状態であれば良いが、板厚変動を有する接合部近傍の板厚を高精度に推定することは元々不可能である。
以上のように変形抵抗変動による板厚変動は変化が激しいので、絶対値ゲージメーター式による板厚推定が最良である。
絶対値ゲージメーターAGCを適用するためには前述したように高精度ミルストレッチモデルが必要である。ミルストレッチは理論的にはロール撓み、偏平やハウジング・圧下スクリュー・ムッタ・ライナーなどすべての要素の変形の加算で計算することができるが、実際には球面座などの受圧面の変形は計算することは難しい。そのため、特許文献7には理論的に計算可能なロールの変形とその他の変形を分離する方法が採られている。現状でもその状況に変化はなく、ロール系とその他の変形を分離して計算する方法が最良の方法と考えられる。そこで本発明でも当該方法を採用することとする。
式(3)のミルストレッチを制御周期毎に計算していければ良いが、実際の操業ではミルストレッチを制御周期毎(例えば50ms程度毎)にロール系やハウジング圧下系の変形を計算して制御に反映するのは現在のコンピューターの能力をもってしても難しい。そこで予め基準荷重および基準ベンディング力時のミルストレッチと当該基準近傍のミルストレッチに及ぼす荷重やベンディング力の影響係数を算出しておいて、基準からの圧延荷重およびベンディング力の変化によって式(4)のようにミルストレッチを計算して行く方法が採られる。ここで基準荷重および基準ベンディング力は圧下スケジュールを決める
設定計算で計算される荷重とベンディング力である.また基準近傍とはミルストレッチ曲線で接線の傾きを求めておけば線形補完が可能となることを念頭においており,明確な定義はないが,線形補完による補償が可能な範囲をさす.ベンディング力に関しても同様である
h=S+MS(Pm0、Fm0)+K×(P−Pm0)+K×(F−Fm0
…(4)
ここで、hは板厚、Sは無負荷時のギャップ、MS(Pm0、m0)は荷重Pm0、ベンディング力Fm0時のミルストレッチ、K、Kはミルストレッチに及ぼす圧延荷重とベンディング力の影響係数である。
次にクラウン量に及ぼす圧延荷重とベンディング力の影響に関して述べる。圧下制御を行うと圧延荷重変動が生じてクラウンの乱れを誘発する場合がある。クラウンを補償するためのハードとしてはワークロールベンダーがあるので、それを用いた制御を行うことが可能である。クラウン量は板厚と同様に任意の圧延荷重時のクラウン量と圧延荷重やベンディング力が変化した際の影響を考慮すれば推定することができる。但し、ベンディング力を負荷すると圧延材に加わる幅方向荷重分布も変化して板厚が変化する。板厚もしくはクラウン量だけが重要であるときにはこれらを単独で制御すれば良い。同時に所望の板厚およびクラウン量が必要であるときには板厚・クラウン非干渉制御が必要となり、式(5)、式(6)の連立方程式から圧延荷重とベンディング力の変化量ΔP、ΔFを算出することができる。
Δh=K×ΔP+K×ΔF …(5)
ΔC=C×ΔP+C×ΔF …(6)
ここでΔhは板厚変化量、ΔCは任意のクラウン定義点のクラウン変化量、C、Cは当該クラウン定義点のクラウンに及ぼす圧延荷重とベンディング力の影響係数である。
圧下による板厚制御を行うと圧延荷重変動が大きくなり、形状の乱れが誘発される。そのためにベンダーによる補償を行う方法をとる。しかし、ベンダーだけでは制御端が1つなので例えばλ2(板幅中央と板端の張力差)、λ4(板幅中央とクォーター部(半幅を1とした時の中央から1/√2点)の張力差)両方の形状を制御することは不可能である。そこで潤滑油を用いたゾーンクーラントによる制御を付加する。ゾーンクーラントでは油圧圧下ほどの応答性は望めないが、潤滑油供給量を変化させることにより当該部分の摩擦係数を変化させることができ、圧延荷重分布を変化させて形状を変化させることが可能である。潤滑油供給量変化による形状変化の応答性を調査したところ、条件によっては油圧圧下の1/10程度の能力を有することが確認された。変形抵抗変動にすべて対応することは難しいが、形状変動の極大値の減少を狙って潤滑油供給量を変化させることにより形状変動量を減少させることは可能であることは実験によって確認された。変形抵抗変動は周期的に発生することも多々あるので、その場合にはこの方法によって形状変動を抑制する方法をとることができる。
また、潤滑油供給量を変化させるとサーマルクラウン量を変化させることができる。サーマルクラウンが成長しつつある段階では板形状計の出力に基づいて形状を最適化させることが可能となる。サーマルクラウンが飽和した段階では制御を必要はなく、上記したようにベンダーとの相乗効果による形状制御のみを行えばよい。
ミルストレッチモデルでは前述のようにロール系の変形を計算するが、圧延中にはロール温度が上昇してサーマルクラウンが成長するし、板厚の絶対量が変化してしまう。また、圧延本数が増加するにつれてロール摩耗も増加する。これらによってロールプロフィールが変化するが、その経時変化は推定することが難しい。これらの変化は急には起こらないので、出側板厚計を用いたモニターAGC機能を利用して、定常部において平均の板厚を測定し、推定板厚との差を求めて推定式内にその差を取り込むことにより上記の影響を取り込むことができる。
本発明はミル型式およびミル構成に影響されないのは言うまでもない。また、圧延材は鋼板に限られるものではなく、例えばチタン、アルミニウム、銅またはこれら金属の合金であってもよい。
図2は、本発明の効果を確認するために圧延実験を行った冷間タンデム圧延機の構成図である。冷間タンデム圧延機10は、6Hiスタンドの4スタンド11〜15からなっている。各スタンド11〜15はワークロール16〜20、中間ロール21〜25およびバックアップロール26〜30で構成され、油圧圧下装置31〜35およびロードセル36〜40を備えている。各ワークロール16〜20はACモーター41〜45で駆動され、またワークロールベンダー46〜50が設けられている。各スタンド11〜15には潤滑油供給装置51〜55が配置されており、第1スタンド11の入出側にX線板厚計61、62が、またと最終スタンド15の出側にX線板厚計63がそれぞれ設置されている。第1スタンド11の入出側にはテンションメーター71、72が、第2スタンド12〜第5ステンド15の出側にはテンションメーター73〜76がそれぞれ設けられている。最終スタンド15の出側に、板形状計78が配置されている。また、最終スタンド15の出側にブライドルロール82および巻取りリール84が配置されている。巻取りリール84はACモータ86で駆動される。
冷間タンデム圧延機10は、板厚・形状制御装置80を備えている。板厚・形状制御装置80は、モニター板厚制御、張力板厚制御、絶対ゲージメーターAGC、ワークロールベンダーによる形状制御、潤滑油による形状制御などのプログラム、ミルストレッチモデルなどを格納している。ロードセル36〜40から圧延荷重、X線板厚計61〜63から板厚、テンションメーター71〜76から張力、板形状計78から板形状などの計測値が、板厚・形状制御装置80に入力される。板厚・形状制御装置80は、これらの計測値に基づいて油圧圧下装置31〜35、ACモーター41〜45、86、ワークロールベンダー46〜50、潤滑油流量調節弁56〜60などに操作信号を出力し、板厚および形状が目標値となるように圧下位置、板速度、ベンディング力、張力、潤滑油供給量などを調整する。
上記冷間タンデム圧延機で、次の4とおりの制御を行った。
A 従来通りの第1スタンドに圧下制御および第1スタンド出側板厚計からのモニター 制御、第2スタンド以降に最終スタンド出側板厚計からのモニターフィードバック による張力制御を配置した制御
B 全スタンドに本発明のミルストレッチモデルに基づく絶対値ゲージメーターAGC を配置した制御(形状制御なし) ただし、スタンド間は張力一定制御
C 制御Bと同様で形状制御ありの制御
D 制御Cと同様で潤滑油による形状制御ありの制御
E 最終スタンドに本発明のミルストレッチモデルに基づく絶対値ゲージメーターAG Cを配置した制御(形状制御なし) ただし、第2スタンド以降の中間スタンドを 張力AGCを配置した制御
F 制御Eと同様で形状制御ありの制御
G 制御Fと同様で潤滑油による形状制御ありの制御
圧延材は800MPa級の鋼板で予め1mピッチで30mm幅の変形抵抗変動(約1000MPa)を導入しておいた。急峻な板厚変動はX線板厚計では測定が難しいので、変形抵抗変動は急峻とは言えないものの、定常部より変化が激しいことも確かなので、念のために接触式の板厚計で測定し、効果を見極めた。形状制御のクラウン定義点は板端から30mmのところとした。
圧延材は板幅1210mm、入側板厚は4.8mmで、以降第1スタンド出側以降のスケジュールは3.426mm、2.319mm、1.708mm、1.603mmとした。圧延機は4スタンドとも同じで、ロール径はバックアップロール径1291〜1340mm、中間ロール径491〜519mm、ワークロール径425〜430mmのものを使用した。ワークロールの径差については上下差はほとんど無く、0.3mm以内である。形状制御を行わない場合のベンディング力は一定で100kN/chockとした。圧延速度は最終スタンド出側で500m/minとした。
それぞれの制御でa)板厚変動の最大振幅、b)λ2の最大振幅、c)λ4の最大振幅を比較した。その結果、表3に示すように板厚・形状非干渉制御を行うと板厚精度および形状精度が向上し、更に潤滑油制御を行うことで幅方向の均一性も向上することが確認された。
Figure 2008126305
BISRA AGCと絶対値ゲージメーターAGCにおけるミルストレッチの取り扱い方を示す概念図である。 実施例で用いた冷間タンデム圧延機の構成図である。
符号の説明
10 冷間タンデム圧延機 11〜15 圧延スタンド
16〜20 ワークロール 21〜25 中間ロール
26〜30 バックアップロール 31〜35 油圧圧下装置
36〜40 ロードセル 41〜45、86 ACモーター
46〜50 ワークロールベンダー 51〜55 潤滑油供給装置
56〜60 流量調節弁 61〜63 X線板厚計
71〜76 テンションメーター 78 板形状計
80 板厚・形状制御装置 82 ブライドルロール
84 巻取りリール

Claims (10)

  1. 最終スタンドでワークロールに圧下力とベンディング力を付与し、最終スタンド出側から張力を付与する冷間タンデム圧延における板厚制御方法において、最終スタンドで圧延荷重およびロールベンディング力を測定し、これら測定値に基づいてミルストレッチ式により最終スタンド出側板厚を絶対値で推定し、最終スタンド出側板厚の目標値と前記推定値の偏差に基づいて圧下位置を変更して板厚を制御すると共に、圧下位置を変更する前に任意の一定周期毎に当該スタンド出側の張力を測定しておき、当該最終スタンドの出側板厚偏差が特定の範囲内の定常圧延条件であるときの張力を一定の目標値として当該スタンド出側の張力を制御することを特徴とする冷間タンデム圧延における板厚制御方法。
  2. 最終スタンド出側から張力を付与する手段として、ブライドルロールまたは巻取りリールを用い、前記ブライドルロールまたは前記巻取りリールの周速を調整して前記最終スタンド出側張力を制御することを特徴とする請求項1に記載の冷間タンデム圧延における板厚制御方法。
  3. 最終および最終から2スタンド目でワークロールに圧下力とベンディング力を付与し、最終スタンド出側から張力を付与する冷間タンデム圧延における板厚制御方法において、最終および最終から2スタンド目で圧延荷重およびロールベンディング力を測定し、これら測定値に基づいてミルストレッチ式によりそれぞれのスタンドの出側板厚を絶対値で推定し、それぞれのスタンドの出側板厚の目標値と前記推定値の偏差に基づいて圧下位置を変更して板厚を制御すると共に、圧下位置を変更する前に任意の一定周期毎に最終スタンド入出側張力を測定しておき、当該両スタンド出側板厚偏差が特定の範囲内の定常圧延条件であるときの最終スタンド入出側張力を一定の目標値として当該両張力を制御することを特徴とする冷間タンデム圧延における板厚制御方法。
  4. 最終スタンド出側から張力を付与する手段として、ブライドルロールまたは巻取りリールを用い、最終スタンドのワークロール周速並びに前記ブライドルロールまたは前記巻取りリールの周速を調整して前記最終スタンド入出側張力を制御することを特徴とする請求項3に記載の冷間タンデム圧延における板厚制御方法。
  5. 全スタンドに圧下力とベンディング力を付与し、最終スタンド出側から張力を付与する冷間タンデム圧延における板厚制御方法において、全スタンドで圧延荷重およびロールベンディング力を測定し、これら測定値に基づいてミルストレッチ式によりそれぞれのスタンドの出側板厚を絶対値で推定し、それぞれのスタンドの出側板厚の目標値と前記推定値の偏差に基づいて圧下位置を変更して板厚を制御すると共に、圧下位置を変更する前に任意の一定周期毎に全スタンド出側張力を測定しておき、全スタンド出側板厚偏差が特定の範囲内の定常圧延条件であるときの全スタンド出側張力を一定の目標値として全スタンド出側張力を制御することを特徴とする冷間タンデム圧延における板厚制御方法。
  6. 最終スタンド出側から張力を付与する手段として、ブライドルロールまたは巻取りリールを用い、第一スタンド以外の全スタンドでワークロール周速を調整すると共に、前記ブライドルロールまたは前記巻取りリールの周速を調整して前記スタンド出側張力を制御することを特徴とする請求項5に記載の冷間タンデム圧延における板厚制御方法。
  7. 前記ミルストレッチ式により最終スタンド出側板厚を絶対値で推定する方法は、圧下制御対象スタンドでキスロール締め込みから得られるミルの変形特性からロール系の変形成分とそれ以外の変形成分を分離抽出し、前記キスロール締め込み時のロール系の変形成分を通板時のロール系の変形成分に置き換えて当該負荷時のミルストレッチを計算し、無負荷時のロールギャップと該ミルストレッチから圧下制御対象スタンドの出側板厚を絶対値で推定する方法であることを特徴とする請求項1から6項のいずれか1項に記載の冷間タンデム圧延における板厚制御方法。
  8. 前記ミルストレッチ式により最終スタンド出側板厚を絶対値で推定する板厚制御方法において、圧延荷重およびベンディング力の圧下制御対象スタンドの出側板厚に及ぼす影響係数、基準圧延荷重時のミルストレッチ、並びに、任意のクラウン定義点における圧延荷重およびベンディング力の圧下制御対象スタンドの出側クラウンに及ぼす影響係数を予め算出しておき、板厚目標値および目標クラウンとなるように前記影響係数を用いて圧下制御対象スタンドの出側板厚およびクラウンを制御することを特徴とする請求項1から7項のいずれか1項に記載の冷間タンデム圧延における板厚制御方法。
  9. 定常状態において制御周期毎に圧下制御対象スタンドの出側板厚を推定および測定し、これら板厚の推定値および測定値との間に差がある場合に、次回の計算で板厚の推定値に該差分を加算して板厚を推定することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の冷間タンデム圧延における板厚制御方法。
  10. 前記ミルストレッチ式によって求められたミルストレッチは、予め基準圧延荷重および基準ベンディング力時のミルストレッチ、並びに、これら基準圧延荷重および基準ベンディング力近傍のミルストレッチに及ぼす圧延荷重およびベンディング力の影響係数をそれぞれ求め、圧延荷重およびベンディング力の前記基準値からの変化量に基づいて求められることを特徴とする請求項1から9項のいずれか1項に記載の冷間タンデム圧延における板厚制御方法。
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