JP2008125460A - フィブリン結合性成長因子 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は創傷等のフィブリンが存在する環境における組織再生を促進するための手段を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明はフィブリン結合活性ポリペプチドと細胞成長活性ポリペプチドとが連結した、フィブリン結合活性と細胞成長活性とを有するポリペプチドに関する。当該ポリペプチドはフィブリン存在下における組織再生促進剤として有用である。本発明はまたポリペプチド、フィブリノーゲン及びトロンビンを含有する生体接着剤に関する。
【選択図】図3

Description

本発明はフィブリン結合活性と細胞成長活性とを有するポリペプチド、並びに、当該ポリペプチドを構成成分とする生体接着剤及びフィブリン存在下における組織再生促進剤に関する。
フィブリンは、フィブリノーゲンがトロンビンにより特異的に加水分解されて生じる難溶性画分である。組織間を接着する性質を有することから生体組織を接着するための接着剤(フィブリン接着剤)として使用される(特許文献2)。
フィブリン結合活性ポリペプチドとしては、フィブロネクチン(FN)のアミノ端ドメインのアミノ酸配列からなるポリペプチド(Fib-1)およびカルボキシ端ドメインのアミノ酸配列からなるポリペプチド(Fib-2)が知られている。前者の部分配列に関してはMatsukaら(1994), およびRostagnoら(1994)が大腸菌で生産できることを報告している。また後者については、君塚らの特許出願明細書に記載されている。このほか、Redlらの米国特許明細書(特許文献1)では、血管内皮細胞増殖因子(VEGF165)の部分配列(アミノ酸番号104-165)にフィブリン結合性があるとして、組換えタンパク質の製造法が記載されている。ただし、特許文献1で開示されているVEGF165の部分配列は細胞成長活性を有していない。
一方、細胞成長活性ポリペプチドは細胞増殖及び組織再生を促進する活性を有することが知られている。フィブリンによる接着が要求される環境は、同時に組織の迅速な再生が要求される環境でもある。これまでに、細胞成長活性ポリペプチドを含有させたフィブリン接着剤が開発されている(特許文献2)。
本発明に関連する先行技術文献としては以下のものが挙げられる。
米国特許第6713453号明細書 米国特許第5292362号明細書 特開平10-42878号公報 特開2001-190280号公報 北嶋隆、伊藤嘉浩「成長因子組み込み材料」再生医療学会誌、4(1), 53-61 (2005) Matsuka Y. V. et al (1994) The N-terminal fibrin-binding site of fibronectin is formed by integrating fourth and fifth finger domains. J. Biol. Chem. 269, 9539-46 Rostagno et al(1994). Further characterization of the NH2-terminal fibrin-binding site on fibronectin. J. Biol. Chem. 269, 31938-45. Ishikawa et al. (2001), J. Biochem(Tokyo), 129,627-633
上記のように、細胞成長活性ポリペプチドを含有させたフィブリン接着剤が開発されてはいるものの、このフィブリン接着剤を生体組織に適用すると細胞成長活性ポリペプチドは早期に流れ出してしまい、組織再生を促進する活性は保持されないという問題がある。
本発明はフィブリンが存在する環境における組織再生を促進するための手段を提供することを目的とする。
本発明は以下の発明を包含する。
(1)フィブリン結合活性ポリペプチドと細胞成長活性ポリペプチドとが連結した、フィブリン結合活性と細胞成長活性とを有するポリペプチド。
(2)フィブリン結合活性ポリペプチドが、フィブロネクチンのフィブリン結合性領域を構成するアミノ酸配列、或いは当該アミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたフィブリン結合性のアミノ酸配列からなる(1)記載のポリペプチド。
(3)フィブロネクチンのフィブリン結合性領域を構成するアミノ酸配列が、配列表の配列番号11の第135番〜第223番のアミノ酸配列を少なくとも一部に含むものである(2)記載のポリペプチド。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載のポリペプチドをコードするDNA。
(5)(1)〜(3)のいずれかに記載のポリペプチドをコードするDNAを含む組換えベクター。
(6)(1)〜(3)のいずれかに記載のポリペプチドをコードするDNAを含む組換えベクターが導入された形質転換体。
(7)(1)〜(3)のいずれかに記載のポリペプチド、フィブリノーゲン及びトロンビンを含有する生体接着剤。
(8)(1)〜(3)のいずれかに記載のポリペプチドを含む、フィブリン存在下における組織再生促進剤。
本発明のポリペプチドはフィブリンに結合することができ、且つ細胞成長因子としての活性は保持されていることから、フィブリンの存在下において組織の再生を促進することができる。
本発明のポリペプチドを含むフィブリン接着剤は、組織の接着と再生とを促進することが可能な生体接着剤として有用である。
本発明のポリペプチドは再生医療、人工生体組織の製造、外傷や外科手術後の創傷治癒などの用途において組織再生促進剤として使用することができる。
(フィブリン結合活性ポリペプチド)
本発明で用いられるフィブリン結合活性ポリペプチドは、フィブリンに結合することが可能なものである限り特に限定されないが、フィブロネクチンのフィブリン結合性領域を構成するアミノ酸配列からなるポリペプチドであることが好ましい。或いは、フィブリン結合活性が維持されている限り、フィブロネクチンのフィブリン結合性領域を構成するアミノ酸配列において1又は数個(典型的には1〜5個、好ましくは1〜3個)のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよい。
フィブロネクチンはヒトに由来するものであることが好ましいがこれには限定されず、ウシ、ブタなどの哺乳動物、あるいはニワトリなどの鳥類に由来するものであってもよい。
ヒトフィブロネクチンは、およそ2300個のアミノ酸からなる大きなタンパク質分子である。そのアミノ酸配列は、UniprotKB/Swiss-protデータベースに記載されている(Accession Number P0271)(配列表の配列番号10)。またDNA配列はEMBLデータベースに登録されている(Accession Number X0271)。
フィブリン結合性の配列領域(ドメイン)はフィブロネクチンのアミノ端側とカルボキシ端側にあることが知られている(それぞれFib1,Fib2と表記)。それぞれのドメインは、類似した配列単位(モジュル)が繰り返し連結されて構成されている。フィブロネクチンのモジュルは、タイプI、II、IIIの3種類が知られているが、フィブリン結合性ドメインを構成するのはいずれもタイプIモジュルでFib1はモジュルが5個(モジュル1から5)、Fib2は3個(モジュル8から10)からなる。Matsukaら(1994)によれば、Fib2のフィブリン結合性はFib1に比べ微弱である。Fib1のアミノ酸配列、核酸配列をそれぞれ配列表に配列番号11、12として示す。これらの各ドメインの位置を、配列表の配列番号10-12で表される配列中の番号を参照して次表により説明する。
Figure 2008125460
Fib1に含まれる個々のモジュル単独では、フィブリン結合性は見られない。モジュル1と2(FBD1-2)あるいは2と3(FBD2-3)が連続した部分配列でも結合性は認められていない(Matsukaら1994;Rostagnoら1994)。これらの知見を基礎として本発明者らが鋭意研究を行った結果、驚くべきことに、本発明のフィブリン結合性融合タンパク質の設計におけるフィブリン結合活性ポリペプチドとして、配列表の配列番号11の第135番〜第223番のアミノ酸配列(FBD4-5)を少なくとも一部に含むポリペプチド(好ましくは配列表の配列番号11の第135番〜第223番のアミノ酸配列(FBD4-5)からなるポリペプチド)、配列表の配列番号11の第90番〜第223番のアミノ酸配列(FBD3-5)を少なくとも一部に含むポリペプチド(好ましくは配列表の配列番号11の第90番〜第223番のアミノ酸配列(FBD3-5)からなるポリペプチド)、配列表の配列番号11の第46番〜第223番のアミノ酸配列(FBD2-5)を少なくとも一部に含むポリペプチド(好ましくは配列表の配列番号11の第46番〜第223番のアミノ酸配列(FBD2-5)からなるポリペプチド)、或いは配列表の配列番号11の第1番〜第223番のアミノ酸配列(FBD1-5)を少なくとも一部に含むポリペプチド(好ましくは配列表の配列番号11の第1番〜第223番のアミノ酸配列(FBD1-5)からなるポリペプチド)が好適に使用できることを見出した。ここで具体的に挙げたアミノ酸配列はそれぞれ、フィブリン結合活性を有するものである限り、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたものであってもよい。このような例としては、FBD4-5、FBD3-5、FBD2-5又はFBD1-5である各配列のアミノ末端側に、フィブロネクチンのアミノ酸配列においてアミノ端側に隣接する1〜3個のアミノ酸が更に付加されたアミノ酸配列や、前記各配列のアミノ末端の1〜3個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列が挙げられる。あるいはFBD4-5、FBD3-5、FBD2-5又はFBD1-5である各配列のカルボキシ末端側に、フィブロネクチンのアミノ酸配列においてカルボキシ端側に隣接する1〜3個のアミノ酸が更に付加されたアミノ酸配列や、前記各配列のカルボキシ末端の1〜3個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列が挙げられる。
(細胞成長活性ポリペプチド)
本発明で用いられる細胞成長活性ポリペプチドは細胞成長活性を有するものである限り特に限定されないが、具体例としては繊維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリー、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)ファミリー、上皮成長因子(EGF)ファミリー、血小板由来増殖因子(PDGF)、インシュリン様増殖因子(IGF)、神経成長因子(NGF)ファミリー、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)等の細胞成長因子が挙げられ、より具体的には、配列表の配列番号5の第3061番〜第3222番の塩基配列からなるDNAによりコードされるポリペプチド(EGF)、配列表の配列番号7の第3061番〜第3414番の塩基配列からなるDNAによりコードされるポリペプチド(BMP4)、配列表の配列番号9の第3061番〜第3558番の塩基配列からなるDNAによりコードされるポリペプチド(VEGF165)などが挙げられる。また細胞成長因子としての活性が保持されている限り、天然に存在する細胞成長活性ポリペプチドの部分ポリペプチドや、1又は数個(典型的には1〜5個、好ましくは1〜3個)のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドもまた本発明における「細胞成長活性ポリペプチド」に包含される。
(本発明の融合ポリペプチド)
本発明のポリペプチドでは、フィブリン結合活性ポリペプチドと細胞成長活性ポリペプチドとが遺伝子工学的手法により連結されている。本発明のポリペプチドには、フィブリン結合活性ポリペプチド及び細胞成長活性ポリペプチドがそれぞれ少なくとも1つ含まれていればよく、どちらか一方、或いは両方のポリペプチドが複数個含まれていてもよい。フィブリン結合活性ポリペプチドが複数個含まれている場合は、それらは同一であっても異なっていてもよい。細胞成長活性ポリペプチドが複数含まれる場合も同様である。実施例においては、フィブリン結合活性ポリペプチドのカルボキシル末端側に細胞成長活性ポリペプチドを連結した例を示すが、2種類のポリペプチドの連結順序は特に限定されない。本発明の融合ポリペプチドは水溶性である。また細菌好ましくは大腸菌で工業的に生産することができる。また酵母、昆虫細胞、動物細胞で産生することも可能である。
フィブリン結合活性ポリペプチドと細胞成長活性ポリペプチドとは直接連結されてもよいが、適当なスペーサーを介して連結されることが好ましい。スペーサー配列により、フィブリン結合性ポリペプチドと細胞成長活性ポリペプチドとが適切な距離をもつことによりそれぞれの機能に干渉しないようすることが可能になると期待される。
スペーサーとしてはアミノ酸またはポリペプチドを利用することができる。この場合、該スペーサーのアミノ酸配列、或いは該スペーサーとその隣接部分とで構成される数個程度のアミノ酸からなる配列として、エンテロキナーゼなどのプロテアーゼ認識配列を利用することができる。スペーサー配列を介在させることは、配列特異的プロテアーゼによって、フィブリン結合性ポリペプチドと細胞成長活性ポリペプチドが切り離されるので、融合蛋白であることを確認できるという利点もある。このほかトロンビンや活性型凝固因子X(FactorXa)の認識配列も利用できるが、前者は、フィブリンゲル中に失活せずに存在しフィブリンゲルに結合した融合蛋白を切断する可能性がある。またFactorXaはプロトロンビンからトロンビンを生成する因子である。従って、フィブリン結合性融合蛋白全体あるいはその細胞成長活性ポリペプチド部分のフィブリンからの速やかな徐放を目的とする場合には、これらの認識配列をスペーサーとして利用することが有効であるかもしれない。
本発明の融合ポリペプチドの具体例としては配列表の配列番号5の第2776番〜第3222番の塩基配列からなるDNAによりコードされるポリペプチド(FBD(4-5)-EGF融合ポリペプチド)、配列表の配列番号7の第2776番〜第3414番の塩基配列からなるDNAによりコードされるポリペプチド(FBD(4-5)-BMP4融合ポリペプチド)、並びに、配列表の配列番号9の第2776番〜第3558番の塩基配列からなるDNAによりコードされるポリペプチド(FBD(4-5)-VEGF165融合ポリペプチド)が挙げられる。
本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードするDNA、当該DNAを含む組換えベクター、当該ベクターが導入された形質転換体に関する。組換えベクターとしてはプラスミドベクター、pMAL(FBD4-5)EGF, pMAL(FBD4-5)BMP, pMAL(FBD4-5)VEGFなどが挙げられる。形質転換体としては細菌、特に大腸菌が挙げられる。
(本発明の融合ポリペプチドの用途)
本発明の融合ポリペプチドはフィブリン結合活性と細胞成長活性とを併せ持つことから、適用した部位又はその近傍に存在するフィブリンに結合して細胞成長活性因子の局所濃度を高く維持できる。よって、外傷や外科手術後の創傷治癒などの用途において組織再生促進剤として有用である。また再生医療、移植医療、人工生体組織の製造などの用途において組織間をフィブリン接着剤で接着する際に本発明の融合ポリペプチドを共存させることにより組織間の癒合を速やかに達成することができる。またフィブリンゲル上で細胞増殖を行う際に本発明の融合ポリペプチドを添加すると細胞増殖の効率を高めることができる。
本発明の融合ポリペプチドは生体接着剤の一要素としても使用できる。通常のフィブリン接着剤はフィブリノーゲンを含む成分とトロンビンを含む成分とからなり、両成分を配合したときにフィブリンが形成されるように構成されている。本発明の融合ポリペプチドをフィブリノーゲンを含む成分又はトロンビンを含む成分のどちらか一方或いは両方に添加することにより、接着剤が適用された部位における細胞増殖を促進することができる。生体接着剤は、フィブリノーゲンを含む成分と、トロンビンを含む成分とを含み、当該二成分の少なくとも一方には本発明の融合ポリペプチドが添加されてなり、且つ当該二成分が別個の容器に収容されてなることを特徴とするキットの形態で提供されてもよい。或いは、フィブリノーゲンを含む成分と、トロンビンを含む成分と、本発明の融合ポリペプチドとを含み、当該三成分が別個の容器に収容されてなることを特徴とするキットの形態で提供されてもよい。本発明において「生体接着剤」という用語はこのようなキットも包含する概念である。
(本発明の融合ポリペプチドの製法)
本発明の融合ポリペプチドの製法について具体例を挙げて説明する。
ヒトフィブロネクチンのcDNA及びタンパク質の一次構造は、各々 EMBL データバンク(EMBL DATA BANK )及びThe EMBO Journal、第4巻、第7号、1755-1759 頁 (1985)に記載されている。
ヒトの細胞から抽出されたmRNAを逆転写して得られた市販のヒトcDNAからPCR法(Polymerase Chain Reaction : Saiki ら、Science 、第230巻、1350-1354頁(1985))によりヒトフィブロネクチンのフィブリン結合性領域4-5(FBD 4-5)に対応するcDNA部分を増幅する。この際、PCRに用いられるセンスプライマーには5' 末端に制限酵素認識配列が、またアンチセンスプライマーには5' 末端に制限酵素認識配列が付加されている。こうして得られた増幅産物をHindIII及びEcoRIで消化する。
一方、pMAL-p2x(New England BioLab)を同じくHindIIIとEcoRIで消化する。
こうして得られた2つのDNA断片をライゲーションする。ライゲーション後の反応液を用いてコンピテントセル(大腸菌DH5α)にトランスフォーメーションする。アンピシリン耐性コロニーからDNAを抽出し、前出のプライマーセットを用いたPCRにてスクリーニングを行い目的のPCR断片が挿入されたプラスミドを持つコロニーを確定する。
これらのコロニーを培養し、抽出したDNAの塩基配列決定を行い、目的のプラスミドが作成されていることを確認する。こうしてプラスミドpMAL(FBD4-5)を得る。さらにこのプラスミドに、細胞成長活性ポリペプチドをコードする塩基配列を挿入して以下のように発現ベクターを作製する。
pMAL(FBD4-5)EGFの作製:
1.pMAL(FBD4-5)をHindIII消化後DNAポリメラーゼで平滑末端とし、次にSalIで消化する。
2.EGF配列を有するプラスミドpBS(EGF)(Ishikawaら、(2001)J.Biochem(Tokyo), 129,627-633、および特許文献4)を、SmaI消化後、SalIで消化し、さらにアガロースゲル電気泳動により、約180bpのバンドを回収する。
3.1と2で得られたDNAを上記と同様の手順でライゲーションする。
4.3の反応液を用いて上記と同様の手順でコンピテントセルDH5αにトランスフォーメーションする。目的のDNAが挿入されたプラスミドをpMAL(FBD4-5)EGFとする。
pMAL(FBD4-5)BMP4の作製:
1.ヒト胎盤より抽出されたRNAを逆転写してcDNAを得る。
2.このcDNAを鋳型としてPCRを行い、成熟型BMP4をコードするcDNA配列を得る。
3.得られたcDNAをTAクローニングベクターpCR2.1(Invitrogen)にサブクローニングし、BMP4配列が増幅されていることを確認する。
4.次に、BMP4配列がpCR2.1に組み込まれたプラスミドpCR2.1-BMP4からSalIとHindIIIで切断された断片(約0.38KbDNA断片)を回収し、同じ酵素の組み合わせで切断されたプラスミドpMAL(FBD4-5)に、T4リガーゼで連結する。これを、コンピテントセルDH5αへ導入し(トランスフォーメーション)、得られたプラスミドをpMAL(FBD4-5)BMP4とする。
pMAL(FBD4-5)VEGFの作製:
1.VEGF165のDNA配列は、プラスミドpBS(VEGF165)(特許明細書特開2002-60400に記載)から、制限酵素SalIとEcoRIで切断し、アガロース電気泳動により約0.53Kbの断片として切り出す。
2.このままでは、pMAL(FBD4-5)に組み込めないため、一旦以下のようにサブクローニングする。即ちpCR2.1-BMP4から、SalIとHindIIIでBMP4配列を除去し、ベクター断片を得る。この断片を1の約0.53Kb断片と連結して、プラスミドpCR2.1-VEGF165を得る。
3.次に、pCR2.1-VEGF165を、SalIとHindIIIで切断し、アガロース電気泳動により、約0.53Kbの断片を回収する。この断片は、同じ酵素の組み合わせで切断されたプラスミドpMAL(FBD4-5)と連結され、コンピテントセルDH5αに導入されてpMAL(FBD4-5)VEGFが得られる。
フィブリン結合ドメイン全体の配列(FBD1-5)と細胞成長活性ポリペプチドとの融合蛋白を発現させるベクターは以下のようにして作成される。
FBD1-5を含むプラスミドの作成:
1.上記のプラスミド(pMAL(FBD4-5)EGF, pMAL(FBD4-5)VEGF, およびpMAL(FBD4-5)BMP4)を制限酵素AvaIとXbaIで切断する。これにより、上記のベクターから、FBD4の配列の一部が除かれる。
2.この切断されたベクター断片に、別途PCRで増幅した配列を挿入する。すなわち、ヒト細胞由来のmRNAから逆転写したcDNAを鋳型に、FBD1からFBD4の途中までのアミノ酸配列に相当する部位をコードするDNAをPCR法で増幅する。
3.増幅されたDNA配列を制限酵素AvaIとXbaIで切断する(XbaI部位はFBD4をコードする配列の途中にある)。
4.それぞれ切断されたベクター断片とPCR断片をT4リガーゼで連結し、大腸菌をトランスフォームする。以上により、FBD1-5の配列を有するプラスミド、pMAL(FBD1-5)EGF, pMAL(FBD1-5)VEGF, およびpMAL(FBD1-5)BMP4が得られる。
上記の様に構築されたFBD4-5を含むプラスミド(pMAL(FBD4-5)EGF、pMAL(FBD4-5)BMP4及びpMAL(FBD4-5)VEGF)、あるいはFBD1-5を含むプラスミド(pMAL(FBD1-5)EGF、pMAL(FBD1-5)BMP4及びpMAL(FBD1-5)VEGF)は各々大腸菌に導入され、適当な条件下で培養されることにより、目的の蛋白が大腸菌内で合成される。それぞれ合成される蛋白を、MBP-FDB(4-5)-EGF、MBP-FDB(4-5)-BMP、およびMBP-FDB(4-5)-VEGF)あるいはMBP-FDB(1-5)-EGF、MBP-FDB(1-5)-BMP、およびMBP-FDB(1-5)-VEGF)と記載する。これらの発現の確認にはイムノブロッティングが用いられる。即ち、組換え大腸菌の全菌体タンパク質がSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離され、ニトロセルロース膜あるいはPVDF膜に転写後、EGF、BMP4及びVEGFを各々認識するモノクローナル抗体で目的蛋白質のバンドが検出される。
本発明の融合蛋白質は、例えば次のように調製される。プラスミドが導入された組換え大腸菌はLBブロス等の培地で培養され、IPTG(イソプロピル-β-D-ガラクトシド)が添加される。これによって導入された遺伝子の発現が誘導され、さらに培養してから菌体が回収される。集められた菌体は超音波処理によって破砕される。破砕液を遠心し、上清を回収する。目的の組換え蛋白質は、この上清に含まれていることが、イムノブロッティングで確認される。即ち目的の蛋白質は、可溶性である。それぞれ3種類の目的蛋白質は、Maltose-binding protein(MBP)との融合蛋白質として合成されるので、アミロース樹脂による精製が可能である。超音波破砕液上清をアミロース樹脂に添加し非結合蛋白を洗浄除去した後、10mMのマルトースを含む緩衝液で結合した蛋白を溶出する。次に溶出された蛋白は、FactorXa(活性型FactorX)で切断される。これにより、MBPと切り離され、最終的な目的蛋白質となる。これらを、FBD-EGF,FBD-BMP,およびFBD-VEGFと記載する。これらの最終的な精製は、FactorXa消化物に対して、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などのいずれか、あるいは組み合わせで行うことにより完了する。
こうして調製された融合タンパク質のフィブリン結合活性は次のようにして確認することができる。
1.フィブリノーゲン溶液とトロンビンを適当な濃度に希釈し、マルチウェルに添加する。これを37℃に加温することで、フィブリンゲルを作製する。
2.このゲルを風乾することにより、フィブリンコートとする。
3.フィブリンコートウェルをPBS等で洗浄し、評価する蛋白質サンプルを濃度を変えてウェルに添加し、37℃で2時間保温する。
4.その後ウェルを洗浄し、抗体にて、ウェルに結合した蛋白を検出する。2次抗体にはパーオキシダーゼ(HRP)などで標識された抗体を用いることにより、結合量に対応した発色がHRP基質(o-フェニレンジアミンなど)とH2O2の添加でみられる。発色程度、すなわち吸光度をプレートリーダーによって測定し、結合量の指標とする。
こうして調製された融合タンパク質の細胞成長活性は次のようにして確認することができる。即ち、WST-1試薬(Dojindo)を細胞が代謝して生成するフォルマザンの量が細胞数に比例することを利用して、細胞数の測定を行う。
1.前記の様に、マルチウェルにフィブリンコートを作製する。
2.それぞれのウェルに評価する蛋白質を、濃度を変えて添加し、結合反応を進める(37℃2時間)。
3.ウェルをPBSで洗浄後、線維芽細胞などの細胞を播種する。3ないし4日培養後、WST-1試薬(Dojindo)を培地の1/10容添加し、さらに3ないし4時間培養後、プレートリーダーで吸光度を測定する。
発現ベクターの調製
ヒトフィブロネクチンのフィブリン結合性領域(FBD)をコードするcDNA配列はヒト腎臓組織から得られたcDNAを鋳型にPCR(polymerase chain reaction)により取得した。このcDNA配列と、上皮成長因子(EGF)をコードするcDNA配列を連結した。さらにこの融合遺伝子を、発現ベクターpMALp2xに挿入して、タンパク質発現用ベクターを作製した。同様にして、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)配列、および骨形成因子(BMP4)配列を組み込んだプラスミドpFBD(4-5)VEGF, pFBD(4-5)FGF2、pFBD(4-5)BMP4を作製した。なお、アガロースゲル電気泳動法、ライゲーション、トランスフォーメーションの方法については定法に従って行った(Molecular Cloning, 3rd edition. Cold Spring Harbor Press)。
具体的な手順を以下に記載する。
pMAL(FBD4-5)の作製
1.ヒト腎臓cDNA(Toyobo,PCR-Ready cDNA kit)を鋳型としてPrimer FBD-2F(配列番号1)とFBD-1R(配列番号2)を用いて、PCR反応を行い、フィブロネクチンのフィブリン結合ドメイン4-5 (FBD(4-5))をコードするDNA断片(配列番号3)を得た。
PCR反応条件
酵素:KODplus(Toyobo)
温度条件:93℃3分
30サイクル:93℃30秒、50℃30秒、72℃30秒。
72℃3分
得られたPCR産物(配列番号3)をエタノール沈殿し、TE(10mM Tris-HCl,、pH8,1mM EDTA)に溶解してから、HindIIIおよびEcoRIで消化し、アガロースゲルにて、285bpに相当するバンドを切り出した。
2.pMAL-p2x(New Enland BioLab社、第一化学薬品扱い)を同じくHindIIIとEcoRIで消化し、アガローゲル電気泳動で回収した。
3.上記1と2で得られたDNAをLigation High(TaKaRa)を用いて16℃で2時間50分間反応させてライゲーションした。
4.3の反応液を用いてコンピテントセル(大腸菌DH5α)にトランスフォーメーションした。アンピシリン耐性コロニーからDNAを抽出し、配列番号1と配列番号2をプライマーとしてPCRにてスクリーニングを行い目的のPCR断片(配列番号3)が挿入されたプラスミドを持つコロニーを確定した。
これらのコロニーを培養し、抽出したDNAの塩基配列決定を行い、目的のプラスミドが作成されていることを確認した。得られたプラスミドをpMAL(FBD4-5)とした。その配列を配列表の配列番号4に示す。
pMAL(FBD4-5)EGFの作製
1.配列番号4で表される塩基配列からなるpMAL(FBD4-5)をHindIII消化後DNAポリメラーゼで平滑末端とし、次にSalIで消化した。
2.EGF配列を有するプラスミドpBS(EGF)(非特許文献4および特許文献4)を、SmaI消化後、SalIで消化し、さらにアガロースゲル電気泳動により、約180bpのバンドを回収した。
3.1と2で得られたDNAを上記と同様の手順でライゲーションした。
4.3の反応液を用いて上記と同様の手順でコンピテントセルにトランスフォーメーションした。
目的のDNAが挿入されたプラスミドをpMAL(FBD4-5)EGFとした。その塩基配列を配列番号5に示す。
pMAL(FBD4-5)BMP4の作製
1.ヒト胎盤より抽出されたRNAを逆転写して得られるcDNAを鋳型として、プライマー配列AとBを用いたPCRを行い、BMP4配列を得た。
即ち1μg/μlヒト胎盤RNA(Clonetech社、1μl), 0.5mg/ml oligodT12-18(1μl),およびRNase-free water (11μl)を混合し70℃で10分加温後、氷冷し、ついで、ReverscriptII用1st strand buffer(10倍濃度、2μl)、0.1M DTT(2μl)、10mM dNTP(1μl)、40units/μl RNase inhibitor(1μl)、Reverscript II(和光純薬)を加え42℃60分、70℃15分加温した後、氷冷した。さらに2units/μl RNaseHを1μl加え37℃20分処理しcDNAとした。このcDNA溶液にRNase-free waterを加えて、100μlとした。
2.上記のcDNAの2μlを用いて、PCRを行った。
cDNA(2μl)、Taqポリメラーゼ用10倍緩衝液(6μl)、dNTP(6μl)、プライマーA(配列番号13に記載)とプライマーB(配列番号14に記載)の混合液(8μl)、蒸留水(35.6μl)、Taqポリメラーゼ(0.4μl、TaKaRa)。温度条件は、94℃2分後、94℃30秒→65℃30秒→72℃30秒を30サイクル行い、さらに72℃5分加温後4℃で保管した。
3.以上により得られたcDNAをpCR2.1(Invitrogen社)にサブクローニングし、pCR2.1-BMP4を得た。挿入されている配列の決定を行い、配列番号6に記載されている配列であることを確認した。
4.次に、pCR2.1-BMP4をSalIとHindIIIで切断し、アガロース電気泳動により、上記配列番号6に相当する約0.38Kb DNA断片を回収した。この断片は、同じ酵素の組み合わせで切断されたプラスミドpMAL(FBD4-5)とライゲーションにより連結され、コンピテントセルDH5αへ導入した(トランスフォーメーション)。得られたプラスミドをpMAL(FBD4-5)BMP4とした。その塩基配列を配列番号7に示す。
pMAL(FBD4-5)VEGFの作製
1.VEGF165のDNA配列は、プラスミドpBS(VEGF165)(特許明細書特開2002-60400号公報に記載)から、制限酵素SalIとEcoRIで切断し、アガロース電気泳動により約0.53Kbの断片として切り出した。
2.上記に得られた断片を、一旦、別のプラスミドに挿入した。即ち前記のプラスミドpCR2.1-BMP4をSalIとEcoRIで切断し、BMP4配列を除去した。ついでBMP4配列を除いたプラスミド断片と、1で切り出された約0.53KbのVEGF165配列を連結して、プラスミドpCR2.1-VEGF165を得た。このプラスミドに挿入されている配列を、配列番号8に示す。
3.次に、pCR2.1-VEGF165を、SalIとHindIIIで切断し、アガロース電気泳動により、約0.53Kbの断片を回収した。この断片は、同じ酵素の組み合わせで切断された、プラスミドpMAL(FBD4-5)と連結され、コンピテントセルDH5αに導入されてpMAL(FBD4-5)VEGFが得られた。このプラスミドの塩基配列を配列番号9に示す。
発現用宿主の調製
上記の手順で作成された各プラスミドを、大腸菌BL21(Novagen社、TaKaRa扱い)にトラスフォーメーションしなおし、発現用宿主とした。
配列表の説明
配列表の配列番号3〜9の塩基配列の構成を表2に記載する。
Figure 2008125460
融合タンパク質の生産
発現ベクターpMAL(FBD4-5)EGFを導入した大腸菌をLB培地にて、OD600で約0.5となるまで培養した。次にIPTG(1mM)で誘導し、2時間後に、菌体を5000rpm、30分の遠心操作で回収した。回収した菌体はBuffer1(20mM Tris-HCl/200mM NaCl/1mM EDTA,pH7.4)に懸濁し、-20℃で、18時間凍結保管した後、冷水中で融解した。菌体の懸濁液を氷冷した状態で、超音波破砕機(Branson Sonifier)で破砕した(15秒間処理/15秒間休止を8回繰り返した)。この破砕液を9000gで30分間遠心したのち、上清を回収した。
組換えタンパク質は分子量60KDaのMBP(Maltose結合タンパク質)-FBD(4-5)-EGFとして生産されるので、この上清をアミロース樹脂(New England BioLab社)で精製した。即ち、7.5mlのアミロース樹脂を径2cmのカラムに充填し、100mlのBuffer1でこれを洗浄した。次に上記の菌体破砕物の上清を流速0.5ml/分でカラムに添加した。添加し終わったところで、200mlのBuffer1でカラムを洗浄(流速は0.5ml/分)した。次に、終濃度10mMのMaltoseを含むBuffer1により樹脂に結合した融合タンパク質を溶出した。溶出画分は1mlずつ分取した。SDSアクリルアミドゲル電気泳動によりMBP-FBD(4-5)-EGFを含む画分を確認し、それらをプールして回収した。
融合タンパク質の精製
1)発現ベクターpMAL(FDB4-5)EGFを導入した大腸菌から回収された融合タンパク質(実施例2)MBP-FBD(4-5)-EGFを、さらに酵素Factor Xa処理により切断し、FBD(4-5)-EGF(目的のタンパク質)をMBPから切り離す操作を行った。即ち、5mlのMBP-FBD(4-5)-EGF溶液に、100ulのFactor Xa(Novagen)を添加した(バッファーは終濃度で0.1M NaCl,50mmTris-HCl pH8、5mMCaCl2となるよう、10倍濃度のものを加えた)。室温で18時間処理した後電気泳動で、MBP及びFBD(4-5)-EGFの2つの断片に切断されたことを確認した。
2)イオン交換クロマトグラフィー
DEAE-Sepharose(1x6cm)のカラムを作製し、Buffer2(10mM Tris-HCl、25mM NaCl pH8.0)で洗浄した。これに上記1)のFactor Xa消化物を添加した。Buffer2を25mlずつ2回添加し洗浄した。ついで、NaClの濃度が、25mMから500mMの直線的勾配となるよう、Buffer2とBuffer3(10mM Tris-HCl,500mM NaCl, pH8)を混合しつつながして溶出を行い、1mlずつ画分を回収した。電気泳動により、17KDaの目的物(FBD(4-5)-EGF)の含まれる画分を確認し、それらを回収、プールした。これを透析膜にいれ、吸水ゲル(Spectra)を用いて、液量を1/5に、すなわち5倍に濃縮した。
3)HPLC精製
最終的な精製には、HPLCカラムを用いた。HPLCカラム(YMC-Pack Protein-RP, 150x4.6mm)に、1mlの上記2)濃縮サンプルをアプライし、流速0.5ml/分で以下の2液による勾配(アセトニトリル10%から100%)が作製されるように流した。A液:10%アセトニトリル/水+0.05%TFA, B液:100%アセトニトリル/水+0.05%TFA。それぞれの画分を電気泳動し、目的の蛋白質(17KDa)を含む280nm吸収のピーク画分をプールして回収した。これを、FBD(4-5)-EGFの精製品とした。
融合タンパク質の活性測定
1)フィブリン結合性
コートの作製:フィブリノーゲン(5mg/ml、Calbiochem)とトロンビン(100U/ml、Sigma)および蒸留水を10:1:89の比で混合し96Well-plateに各ウェル当たり,50ul入れた。これを37℃で5-30分おいてから、風乾した。
翌日このウェルをPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄後EGFあるいは、FBD(4-5)-EGFを添加した。4℃終夜あるいは37℃で2時間インキュベートした。その後、PBSでウェルを洗浄した。
各ウェルに抗EGF抗体を1:1000希釈で加え、室温で2時間反応させた。次いで、Tween20を0.05%含むPBS(PBS-T)で洗浄し、更に2次抗体としてHRP標識抗マウスIgG抗体(1:1000希釈)(DAKO)を添加し、1時間反応させた。次いで、PBS-Tで洗浄後、発色基質溶液(o-フェニレンジアミンおよびH2O2をそれぞれ1mg/ml および0.033% 含むクエン酸緩衝液、pH5)を各ウェルあたり100μl加えた。30分後450nmで測定した結果が図1である。
図から明らかなように、FBD(4-5)-EGFはフィブリンコートに結合したが、EGFの結合はわずかであった。
2)細胞増殖活性
EGFに反応性の細胞NRK49F(Ishikawa et al 2001)を、48ウェルプレートの1ウェル当たりに5000個播種し、DMEM+2%血清で培養した。4日後ウェルの培地を代え、培地液量の1/10に当たる量のWST-1試薬(Dojindo)を添加して、3時間培養した。WST-1が代謝されて生成するフォルマザンの量が細胞数に比例することを利用して、細胞数の測定を行った。その結果、FBD(4-5)-EGFはEGFと同等の活性を持っていることが図2より示された。即ち、EGFとしての活性が損なわれずに融合タンパク質が生産され、精製されていることが示された。
次に上記1)のごとくフィブリンコートを作製し、さらにFBD(4-5)-EGFあるいは、EGFを添加した。このウェルを洗浄後、NRK49F細胞を播種した。4日間培養後、培養液に上記と同様1/10加えて4時間後にWST-1アッセイを行った。その結果、EGFによるNRK49の増殖促進はわずかであったが、FBD(4-5)-EGFでは顕著に認められた(図3)。即ちFBD(4-5)-EGFはフィブリンに結合しかつその活性を示したが、EGFはフィブリンコートに添加してもその大半が、洗浄によって失われたものと考えられる。
以上のように、FBD(4-5)-EGFはEGFにはないフィブリン結合性を持つことから、フィブリンゲルと混合して使用するのに有用であるといえる。FBD(4-5)-EGFは細胞の増殖に有効である。
配列番号1
プライマーFBD-2F
配列番号2
プライマーFBD-2R
配列番号3
FBD4-5 (PCR産物)
配列番号4
pMAL(FBD4-5)
配列番号5
pMAL(FBD4-5)EGF
配列番号6
修飾されたBMP4
配列番号7
pMAL(FBD4-5)BMP4
配列番号8
修飾されたVEGF
配列番号9
pMAL(FBD4-5)VEGF
配列番号13
BMP配列増幅のためのプライマーA
配列番号14
BMP配列増幅のためのプライマーB
図1はFBD(4-5)-EGFのフィブリンコートへの結合性を示す図である。 図2はFBD(4-5)-EGFの細胞増殖活性を示す図である。 図3はフィブリンコートに結合したFBD(4-5)-EGFの細胞増殖活性を示す図である。

Claims (8)

  1. フィブリン結合活性ポリペプチドと細胞成長活性ポリペプチドとが連結した、フィブリン結合活性と細胞成長活性とを有するポリペプチド。
  2. フィブリン結合活性ポリペプチドが、フィブロネクチンのフィブリン結合性領域を構成するアミノ酸配列、或いは当該アミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたフィブリン結合性のアミノ酸配列からなる請求項1記載のポリペプチド。
  3. フィブロネクチンのフィブリン結合性領域を構成するアミノ酸配列が、配列表の配列番号11の第135番〜第223番のアミノ酸配列を少なくとも一部に含むものである請求項2記載のポリペプチド。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項記載のポリペプチドをコードするDNA。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項記載のポリペプチドをコードするDNAを含む組換えベクター。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項記載のポリペプチドをコードするDNAを含む組換えベクターが導入された形質転換体。
  7. 請求項1〜3のいずれか1項記載のポリペプチド、フィブリノーゲン及びトロンビンを含有する生体接着剤。
  8. 請求項1〜3のいずれか1項記載のポリペプチドを含む、フィブリン存在下における組織再生促進剤。
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