JP2008120350A - 車両の制御装置、制御方法およびその方法をコンピュータで実現されるプログラムならびにそのプログラムを記録した記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】内燃機関のアイドル制御中の車両の減速時に、車両に振動が発生することを抑制する。
【解決手段】エンジンECUは、ISC実行制御実行条件が成立すると(S100にてYES)、学習値を読み出すステップ(S102)と、補正値を算出するステップ(S104)と、フィードバック補正値を算出するステップ(S106)と、ISC制御量を決定するステップ(S108)と、電子スロットルバルブを制御するステップ(S110)とを含む、プログラムを実行する。
【選択図】図7
【解決手段】エンジンECUは、ISC実行制御実行条件が成立すると(S100にてYES)、学習値を読み出すステップ(S102)と、補正値を算出するステップ(S104)と、フィードバック補正値を算出するステップ(S106)と、ISC制御量を決定するステップ(S108)と、電子スロットルバルブを制御するステップ(S110)とを含む、プログラムを実行する。
【選択図】図7
Description
本発明は、ハイブリッド車両に搭載された内燃機関のアイドル制御に関し、特に車両の減速時におけるアイドル制御に関連した制御量の補正に関する。
近年、環境問題対策の1つとして、モータからの駆動力により走行するハイブリッド車が注目されている。このようなハイブリッド車両として、たとえば、特開2006−83734号公報(特許文献1)は、ハイブリッド車両において、HC低減のための補助アイテム等を付加することなく、バッテリクリア後の冷間始動時のHC排出量を低減するハイブリッド車両用エンジンの学習制御装置を開示する。この学習制御装置は、エンジンとモータとが駆動源として搭載されたハイブリッド車両においてエンジンの学習制御を行なう。学習制御装置は、エンジンの制御量を学習する学習手段と、制御手段と、エンジンの制御装置への給電が停止されたか否かを検出する検出手段とを備える。制御手段は、エンジンの制御装置への給電停止があった後、エンジンの冷却水の水温に関係なく、エンジンの暖機運転要求を行なって、学習手段による制御量の学習を実行するように構成されている。
この学習制御装置によると、バッテリ復帰後の運転時には、必ず現在の運転状態を反映した正確な学習値を得ることができる。これにより冷間始動時のHCの排出量を低減することが可能になる。
特開2006−83734号公報
しかしながら、エンジンのアイドル制御中に車両が減速する場合、エンジンと車輪軸とが連結された構成である場合には、減速による車輪軸の回転数の低下によりエンジン回転数が引き下げられるという問題がある。
エンジン回転数が引き下げられると、エンジン回転数の成分とエンジンから駆動輪までの駆動系の共振周波数とが重なって、車両に振動が発生する場合がある。車両の振動の発生により運転者は不快感を感じることとなる。
上述した公報に開示された学習制御装置においては、減速時のエンジン回転数の引き下げに起因する車両の振動について何ら考慮されていないため、上述した問題を解決することができない。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、内燃機関のアイドル制御中の車両の減速時に、車両に振動が発生することを抑制する車両の制御装置、制御方法およびその制御方法をコンピュータで実現されるプログラムならびにそのプログラムが記録された記録媒体を提供することである。
第1の発明に係る車両の制御装置は、内燃機関および回転電機を駆動源とする車両の制御装置である。車両は、内燃機関の出力軸に連結され、内燃機関の動力に基づいて発電する第1の回転電機と、内燃機関の動力を車両の車輪軸に伝達する動力分割機構とを含む。動力分割機構は、入力された内燃機関の動力を、車輪軸への駆動力または第1の回転電機への動力に分割する。動力分割機構と車輪軸との間には、車輪軸に駆動力を付与する第2の回転電機が設けられる。この制御装置は、車両の速度に関連した物理量を検出するための速度検出手段と、内燃機関のアイドル制御についての予め定められた実行条件が成立するか否かを判定するための判定手段と、予め定められた実行条件が成立することが判定されると、車両の減速の度合いに応じて、アイドル制御に関連する制御量を補正するための補正手段と、補正された制御量を用いてアイドル制御を実行するための制御手段とを含む。第8の発明に係る車両の制御方法は、第1の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
第1または8の発明によると、補正手段は、予め定められた実行条件が成立することが判定されると、検出された物理量(たとえば、車輪の回転数)に基づく車両の減速の度合いに応じてアイドル制御に関連する制御量(たとえば、スロットルバルブ開度の制御量またはアイドル制御時における内燃機関の目標回転数)を補正する。たとえば、減速の度合いが大きくなるほど、スロットルバルブ開度の制御量または内燃機関の目標回転数を増加するように補正すると、内燃機関の回転数が減速時でない通常のアイドル制御時の回転数よりも高くなる。回転数の上昇により内燃機関の出力が上昇する。そのため、車両の減速時に内燃機関の回転数の低下が抑制され、また、内燃機関の回転数が引き下げられたとしても、内燃機関の回転数の振動成分が駆動系の共振周波数と略同じ周波数になるまで低下することを抑制できる。すなわち、車両に振動が発生することを抑制できる。したがって、内燃機関のアイドル制御中の車両の減速時に、車両に振動が発生することを抑制する車両の制御装置および制御方法を提供することができる。
第2の発明に係る車両の制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、補正手段は、内燃機関の回転数の低下が抑制されるように制御量を補正するための手段を含む。第9の発明に係る車両の制御方法は、第2の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
第2または9の発明によると、たとえば、減速度の度合いが大きくなるほど、アイドル制御に関連する制御量(たとえば、スロットルバルブ開度の制御量またはアイドル制御時における内燃機関の目標回転数)が内燃機関の回転数の低下が抑制されるように補正すると、車両の減速時に内燃機関の回転数の低下が抑制され、また、内燃機関の回転数が引き下げられたとしても、内燃機関の回転数の振動成分が駆動系の共振周波数と略同じになるまで低下することを抑制できる。すなわち、車両に振動が発生することを抑制できる。
第3の発明に係る車両の制御装置においては、第1または2の発明の構成に加えて、内燃機関には、内燃機関に吸入される空気量を変化させるバルブが設けられる。補正手段は、車両の減速の度合いが大きいほど、バルブ開度が増加するように制御量を補正するための手段を含む。第10の発明に係る車両の制御方法は、第3の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
第3または10の発明によると、補正手段は、車両の減速の度合いが大きいほど、バルブ開度(たとえば、スロットルバルブ)が増加するように制御量を補正する。これにより、車両の減速時に内燃機関の回転数の低下が抑制され、また、内燃機関の回転数が引き下げられたとしても、内燃機関の回転数の振動成分が駆動系の共振周波数と略同じになるまで低下することを抑制できる。すなわち、車両に振動が発生することを抑制できる。
第4の発明に係る車両の制御装置においては、第3の発明の構成に加えてバルブは、スロットルバルブである。第11の発明に係る車両の制御方法は、第4の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
第4または11の発明によると、スロットルバルブの開度が増加するように制御量を補正することにより、内燃機関の出力を上昇させて、減速時の車輪軸の回転数の低下による内燃機関の回転数の低下を抑制することができる。
第5の発明に係る車両の制御装置においては、第3の発明の構成に加えて、バルブは、アイドルスピードコントロールバルブである。第12の発明に係る車両の制御方法は、第5の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
第5または12の発明によると、アイドルスピードコントロールバルブの開度が増加するように制御量を補正することにより、内燃機関の出力を上昇させて、減速時の車輪軸の回転数の低下による内燃機関の回転数の低下を抑制することができる。
第6の発明に係る車両の制御装置においては、第1または2の発明の構成に加えて、補正手段は、車両の減速の度合いが大きいほど、アイドル制御時の内燃機関の目標回転数を増加するように補正するための手段を含む。第13の発明に係る車両の制御方法は、第6の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
第6または13の発明によると、補正手段は、車両の減速の度合いが大きいほど、アイドル制御時の内燃機関の目標回転数が増加するように補正する。これにより、車両の減速時に内燃機関の回転数の低下が抑制され、また、内燃機関の回転数が引き下げられたとしても、内燃機関の回転数の振動成分が駆動系の共振周波数と略同じになるまで低下することを抑制できる。すなわち、車両に振動が発生することを抑制できる。
第7の発明に係る車両の制御装置においては、第1〜6のいずれかの発明の構成に加えて、補正手段は、車両の減速度に基づいて、制御量を補正するための手段を含む。第14の発明に係る車両の制御方法は、第7の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
第7または14の発明によると、車両の減速度を検出することにより、減速の度合いを検出することができる。
第15の発明に係るプログラムは、第8〜14のいずれかの発明に係る車両の制御方法をコンピュータで実現されるプログラムであって、第16の発明に係る記録媒体は、第8〜14のいずれかの発明に係る車両の制御方法をコンピュータで実現されるプログラムを記録した媒体である。
第15または第16の発明によると、コンピュータ(汎用でも専用でもよい)を用いて、第8〜14のいずれかの発明に係る車両の制御方法を実現することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る制御装置が適用されるハイブリッド車両の制御ブロック図を説明する。
ハイブリッド車両は、駆動源としての、たとえばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関(以下、単にエンジンという)120と、回転電機であるモータジェネレータ(MG)140を含む。なお、図1においては、説明の便宜上、モータジェネレータ140を、モータ140Aとジェネレータ140B(あるいはモータジェネレータ140B)と表現するが、ハイブリッド車両の走行状態に応じて、モータ140Aがジェネレータとして機能したり、ジェネレータ140Bがモータとして機能したりする。
エンジン120の吸気通路122には、吸入空気のほこりを捕捉するエアクリーナ122A、エアクリーナ122Aを通ってエンジン120に吸入される空気量を検知するエアフローメータ122B、エンジン120に吸入される空気量を調整するためのバルブである電子スロットルバルブ122Cが設けられている。電子スロットルバルブ122Cにはスロットルポジションセンサが設けられている。エンジンECU280には、エアフローメータ122Bにより検知された吸入空気量や、スロットルポジションセンサにより検知された電子スロットルバルブ122Cの開度等が入力される。
また、エンジン120の排気通路124には、三元触媒コンバータ124Bと、三元触媒コンバータ124Bに導入される排気における空燃比(A/F)を検知する空燃比センサ124Aと、三元触媒コンバータ124Bの温度を検知する触媒温度センサ124Cと、消音器124Dとが設けられている。エンジンECU(Electronic Control Unit)280には、空燃比センサ124Aにより検知された三元触媒コンバータ124Bに導入される排気の空燃比や、触媒温度センサ124Cにより検知された三元触媒コンバータ124Bの温度等が入力される。
なお、空燃比センサ124Aは、エンジン120で燃焼された混合気の空燃比に比例した出力電圧を発生する全域空燃比センサ(リニア空燃比センサ)である。なお、空燃比センサ124Aとしては、エンジン120で燃焼された混合気の空燃比が理論空燃比に対してリッチであるかリーンであるかをオン−オフ的に検出するO2センサを用いてもよい。
また、エンジンECU280には、エンジン120の冷却水の温度を検知する水温検知センサ360からエンジン冷却水温を示す信号が入力される。エンジン120の出力軸には、クランクポジションセンサ380が設けられており、エンジンECU280には、クランクポジションセンサ380から出力軸の回転数を示す信号が入力される。
ハイブリッド車両には、この他に、エンジン120やモータジェネレータ140で発生した動力を駆動輪160に伝達したり、駆動輪160の駆動をエンジン120やモータジェネレータ140に伝達する減速機180と、エンジン120の発生する動力を駆動輪160とジェネレータ140Bとの2経路に分配する動力分割機構(たとえば、遊星歯車機構)200と、モータジェネレータ140を駆動するための電力を充電する走行用バッテリ220と、走行用バッテリ220の直流とモータ140Aおよびジェネレータ140Bの交流とを変換しながら電流制御を行なうインバータ240と、走行用バッテリ220の充放電状態を管理制御するバッテリ制御ユニット(以下、バッテリECUという)260と、エンジン120の動作状態を制御するエンジンECU280と、ハイブリッド車両の状態に応じてモータジェネレータ140およびバッテリECU260、インバータ240等を制御するMG_ECU300と、バッテリECU260、エンジンECU280およびMG_ECU300等を相互に管理制御して、ハイブリッド車両が最も効率よく運行できるようにハイブリッドシステム全体を制御するHV_ECU320等を含む。なお、走行用バッテリではなくキャパシタ等の蓄電機構であってもよい。
本実施の形態においては、走行用バッテリ220とインバータ240との間にはコンバータ242が設けられている。これは、走行用バッテリ220の定格電圧が、モータ140Aやモータジェネレータ140Bの定格電圧よりも低いので、走行用バッテリ220からモータ140Aやモータジェネレータ140Bに電力を供給するときには、コンバータ242で電力を昇圧する。このコンバータ242には平滑コンデンサが内蔵されており、コンバータ242が昇圧動作を行なう際には、この平滑コンデンサに電荷が蓄えられる。
なお、図1においては、各ECUを別構成しているが、2個以上のECUを統合したECUとして構成してもよい(たとえば、図1に、点線で示すように、MG_ECU300とHV_ECU320とを統合したECUとすることがその一例である)。
運転席にはアクセルペダル(図示せず)が設けられており、アクセルポジションセンサ(図示せず)は、アクセルペダルの踏込み量を検知する。アクセルポジションセンサは、アクセルペダルの踏込み量を示す信号をHV_ECU320に出力する。HV_ECU320は、踏込み量に対応する要求駆動力に応じて、モータ140A、ジェネレータ140BおよびエンジンECU280を介してエンジン120の出力あるいは発電量を制御する。
さらに、車速センサ330は、車両の速度に関連した物理量を検出するセンサである。「車両の速度に関連した物理量」とは、たとえば、車輪軸の回転数であってもよいし、トランスミッションの出力軸の回転数であってもよい。車速センサ330は、検出した物理量をエンジンECU280に送信する。
動力分割機構200は、エンジン120の動力を、駆動輪160とモータジェネレータ140Bとの両方に振り分けるために、遊星歯車機構(プラネタリーギヤ)が使用される。モータジェネレータ140Bの回転数を制御することにより、動力分割機構200は無段変速機としても機能する。
図1に示すようなハイブリッドシステムを搭載するハイブリッド車両においては、発進時や低速走行時等であってエンジン120の効率が悪い場合には、モータジェネレータ140のモータ140Aのみによりハイブリッド車両の走行を行ない、通常走行時には、たとえば動力分割機構200によりエンジン120の動力を2経路に分け、一方で駆動輪160の直接駆動を行ない、他方でジェネレータ140Bを駆動して発電を行なう。この時、発生する電力でモータ140Aを駆動して駆動輪160の駆動補助を行なう。また、高速走行時には、さらに走行用バッテリ220からの電力をモータ140Aに供給してモータ140Aの出力を増大させて駆動輪160に対して駆動力の追加を行なう。
一方、減速時には、駆動輪160により従動するモータ140Aがジェネレータとして機能して回生発電を行ない、回収した電力を走行用バッテリ220に蓄える。なお、走行用バッテリ220の充電量が低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン120の出力を増加してジェネレータ140Bによる発電量を増やして走行用バッテリ220に対する充電量を増加する。もちろん、低速走行時でも必要に応じてエンジン120の駆動力を増加する制御を行なう場合もある。たとえば、上述のように走行用バッテリ220の充電が必要な場合や、エアコン等の補機を駆動する場合や、エンジン120の冷却水の温度を所定温度まで上げる場合等である。
さらに、図1に示すようなハイブリッドシステムを搭載するハイブリッド車両においては、車両の運転状態や走行用バッテリ220の状態によっては、燃費を向上させるために、エンジン120を停止させる。そして、その後も車両の運転状態や走行用バッテリ220の状態を検知して、エンジン120を再始動させる。このように、このエンジン120は間欠運転され、従来の車両(エンジンしか搭載していない車両)においては、イグニッションスイッチがSTART位置にまで回されてエンジンが始動すると、イグニッションスイッチがON位置からACC位置またはOFF位置にされるまでエンジンが停止しない点で異なる。
図2に示すように、動力分割機構200は、サンギヤ202と、リングギヤ206と、サンギヤ202とリングギヤ206との間の複数のピニオンギヤ208の回転軸を連結して設けられるプラネタリキャリア204とを含む遊星歯車機構である。サンギヤ202は、ジェネレータ140Bの回転軸に接続される。リングギヤ206は、モータ140Aの回転軸に接続される。そして、プラネタリキャリア204は、エンジン120の出力軸に接続される。
モータ140Aおよびリングギヤ206が一体的に回転する回転軸にはさらにチェーンドライブスプロケット(1)216が接続される。チェーンドライブスプロケット(1)216における動力は、チェーン210を介してチェーンドライブスプロケット(2)212に伝達され、チェーンドライブスプロケット(2)212は、カウンタドライブギヤ214から減速機180に動力を伝達する。
すなわち、エンジン120の回転力はプラネタリキャリア204に入力され、それがサンギヤ202によってモータジェネレータ140Bに、リングギヤ206によってモータ140Aおよび出力軸(駆動輪160側)に伝えられる。回転中のエンジン120を停止させる時には、エンジン120が回転しているので、この回転の運動エネルギをジェネレータ140Bで電気エネルギに変換して、エンジン120の回転数を低下させる。
以上のようなハイブリッド車両において、たとえば、エンジン120が無負荷状態であって、かつアイドル制御中である場合を想定する。このとき、車両が定常走行している場合においては、図3の共線図において、モータ140A、エンジンおよびジェネレータ140Bの各回転数を結ぶ直線(実線)に示すように、車輪軸側に設けられたモータ140Aの回転数が上昇した状態となる。
一方、運転者がブレーキペダルを踏み込むなどして、車両が急減速する場合には、図3の各回転数を結ぶ直線(破線)に示すように、モータ140Aの回転数が車両に発生した制動力により減少する。このとき、エンジン120の出力軸と車輪軸とは直結状態にあることから、モータ140Aの回転数の低下によりエンジン120の回転数が引き下げられる場合がある。
アイドル制御中にエンジン120の回転数が引き下げられると、エンジン120の回転数の振動成分が車両の駆動輪からエンジンまでの駆動系の構成部品の共振周波数と略同じになる場合がある。このとき、車両に振動が生じる場合がある。
そこで、本発明は、エンジンECU280が、エンジン120のアイドル制御についての予め定められた実行条件が成立することを判定すると、車速センサ330により検出された車速信号に基づく車両の減速の度合いに応じて、アイドル制御に関連する制御量を補正する点に特徴を有する。本実施の形態において、「車両の減速の度合い」は、単位時間当たりの速度の低下量を表す減速度を示す。また、「アイドル制御に関連する制御量」は、アイドル制御中におけるスロットル開度の制御量を示す。
図4に、本実施の形態に係る車両の制御装置であるエンジンECU280の機能ブロック図を示す。
エンジンECU280は、入力インターフェース(以下、入力I/Fと記載する)400と、演算処理部500と、記憶部600と、出力インターフェース(以下、出力I/Fと記載する)700とを含む。
入力I/F400は、車速センサ330からの車速信号と、エアフローメータ122Bからの吸入空気量信号と、クランクポジションセンサ380からのエンジン回転数信号とを受信して、演算処理部500に送信する。
演算処理部500は、ISC(Idle Speed Control)制御実行判定部502と、減速補正値算出部504と、フィードバック補正値算出部506と、ISC制御量決定部508と、スロットル開度制御部510とを含む。
ISC制御実行判定部502は、エンジン120のアイドル制御を実行する予め定められた実行条件が成立するか否かを判定する。予め定められた実行条件は、特に限定されるものではないが、たとえば、車速、水温、SOC(State Of Charge)等についての条件である。ISC制御実行判定部502は、たとえば、車速、水温およびSOCのそれぞれが予め定められた値よりも低いと、実行判定フラグをオンするようにしてもよいし、車速、水温およびSOCのうちの少なくともいずれか1つが予め定められた値よりも低いと、実行判定フラグをオンするようにしてもよい。
減速補正値算出部504は、車両の減速度に応じて、スロットルバルブ開度の補正値を算出する。減速補正値算出部504は、たとえば、図5に示す、記憶部600に記憶された減速度と補正値との関係を示すマップを読み出すようにしてもよい。
図5に示すマップは、横軸(X軸)を減速度とし、縦軸(Y軸)を補正値とし、減速度と補正値との関係が比例関係であることを示す。減速補正値算出部504は、たとえば、車速センサ330からの車速信号に基づく車両の減速度がa(0)であるとすると、マップから補正値b(0)を算出する。本実施の形態において、減速度と補正とは線形の関係にあるとしてマップを設定したが、非線形の関係を示すマップを設定するようにしてもよい。図5に示すように、マップは、減速度が大きくなるほど大きい補正値が算出されるように設定される。
なお、減速補正値算出部504は、車両が減速状態でないと、すなわち、車両が加速状態あるいは定常走行状態である場合には、補正値をゼロとする。
また、本実施の形態において、減速補正値算出部504は、マップと車速センサ330からの車速信号に基づく車両の減速度とから補正値を算出するようにしたが、特にマップを用いることに限定されるものではない。たとえば、図6に示すように、減速度と補正値との関係を示す表を用いて補正値を算出するようにしてもよい。なお、表に示されない値は、線形補間等により算出すればよい。また、減速度と補正値との関係を示すマップあるいは表については、実験的あるいは解析的に適合して設定すればよい。あるいは、マップおよび表に代えて減速度と補正値との関係を示す数式(たとえば、比例式)を用いても補正値を算出するようにしてよい。
フィードバック補正値算出部506は、クランクポジションセンサ380から受信するエンジン回転数信号に基づくエンジン回転数(以下、単に実エンジン回転数と記載する)とアイドル制御時における目標エンジン回転数(以下、単に目標エンジン回転数と記載する)との差に応じたフィードバック補正値を算出する。
フィードバック補正値は、記憶部600に記憶された学習値と回転差に応じて設定される増減値とからなる。学習値は、学習制御が実施される毎に更新される値である。フィードバック補正値算出部506は、たとえば、実エンジン回転数と目標エンジン回転数との回転数差と増減値との関係を示すマップを読み出す。フィードバック補正値算出部506は、回転数差とマップから増減値を算出する。フィードバック補正値算出部506は、学習値と増減値との和をフィードバック補正値として算出する。
なお、予め定められた学習条件が成立すると、学習制御が実行され、このとき算出されるフィードバック補正値が新たな学習値として記憶部600に記憶される。また、マップに代えて表あるいは数式を用いてもよい。マップ、表あるいは数式は、実験的あるいは解析的に適合して設定すればよい。
ISC制御量決定部508は、記憶部600に記憶されたアイドル制御が実行される際のスロットルバルブ開度の予め定められた値(制御基本値)と、減速補正値算出部504において算出された補正値と、フィードバック補正値算出部506において算出されたフィードバック補正値との和を算出して、ISC制御量を決定する。
なお、本実施の形態においては、フィードバック補正値が学習値と増減値とから構成されるものとして説明したが、このような構成に限定されるものではない。たとえば、学習制御実行時における、フィードバック補正値と制御基本値との和を学習値として記憶部600に記憶するようにしてもよい。この場合、ISC制御量決定部508は、この学習値と減速補正値算出部504において算出された補正値と、フィードバック補正値算出部506において回転数差に基づいて算出された増減値との和を算出して、ISC制御量を決定してもよい。
スロットル開度制御部510は、決定されたISC制御量に基づいて電子スロットルバルブ122Cの開度を制御する。すなわち、スロットル開度制御部510は、ISC制御量に基づいてスロットル開度制御信号を生成して、出力I/F700を介して電子スロットルバルブ122Cにスロットル開度制御信号を送信する。なお、スロットル開度制御部510は、スロットルポジションセンサからのスロットルバルブの開度を示す信号に基づいて、スロットル開度を決定されたISC制御量に対応する開度になるように電子スロットルバルブのスロットルモータを制御するようにしてもよい。あるいは、エアフローメータからの吸入空気量が決定されたISC制御量に対応する吸入空気量になるように電子スロットルバルブ122Cのスロットルモータを制御するようにしてもよい。
なお、本実施の形態において、ISC制御実行判定部502と、減速補正値算出部504と、フィードバック補正値算出部506と、ISC制御量決定部508と、スロットル開度制御部510とは、いずれも演算処理部500であるCPU(Central Processing Unit)が記憶部600に記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両に搭載される。
記憶部600には、各種情報、プログラム、しきい値、マップ等が記憶され、必要に応じて演算処理部500からデータが読み出されたり、格納されたりする。
以下、図5を参照して、本実施の形態に係る車両の制御装置であるエンジンECU280で実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、以下のプログラムは、エンジンECU280で実行されることに限定されるものではなく、HV_ECU320で実行されるようにしてもよいし、エンジンECU280とHV_ECU320とが連携して実行されるようにしてもよい。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、エンジンECU280は、ISC制御を実行する予め定められた実行条件が成立するか否かを判定する。実行条件が成立すると(S100にてYES)、処理はS102に移される。もしそうでないと(S100にてNO)、処理はS100に戻される。
S102にて、エンジンECU280は、メモリから学習値を読み出す。S104にて、エンジンECU280は、車両の減速度に応じて補正値を算出する。具体的には、エンジンECU280は、上述したとおり、受信した車速信号に基づく車両の減速度に応じた補正値を図5に示すマップから算出する。
S106にて、エンジンECU280は、フィードバック補正値を算出する。具体的には、エンジンECU280は、実エンジン回転数と目標エンジン回転数との回転数差およびマップに基づいて増減値を算出して、増減値とメモリに記憶された学習値との和を算出する。
S108にて、エンジンECU280は、メモリから読み出された制御基本値と補正値とフィードバック補正値との和を算出してISC制御量を決定する。S110にて、決定されたISC制御量に基づいて電子スロットルバルブ122Cの開度を制御する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両の制御装置であるエンジンECU280の動作について説明する。
たとえば、走行中のハイブリッド車両において、SOCの低下により、エンジン120が無負荷状態であって、かつアイドル制御中である場合を想定する。このとき、予め定められた実行条件は成立しており(S100にてYES)、アイドル制御が続行される。
ここで、運転者がブレーキペダルを踏み込むなどして、車両が減速状態となると、学習値がメモリから読み出された後に(S102)、減速度に応じた補正値が算出される(S104)。補正値は、減速度が大きいほど大きい値が算出され、減速度が小さいほど小さい値が算出される。
また、実エンジン回転数と目標エンジン回転数との差から増減値が算出されて、学習値と増減値との和からフィードバック補正値が算出される(S106)。エンジンECU280は、メモリから読み出された制御基本値と補正値とフィードバック補正値との和を算出して、ISC制御量を決定する(S108)。
エンジンECU280は、決定されたISC制御量に基づいてスロットル開度を制御する(S110)。このとき、エンジン120の回転数は、ISC制御量に補正値が加算された分だけ減速していない状態(減速度ゼロ)と比較して高くなる傾向にある。このとき、エンジン120の出力が向上する。
そのため、車両の減速時の車輪軸の回転数の低下によるエンジン120の回転数の引き下げが抑制される。また、エンジン120の回転数が引き下げられたとしても、エンジン120の回転の振動成分が駆動系の共振周波数まで低下することが抑制される。そのため、車両に振動が発生することが抑制される。
以上のようにして、本実施の形態に係る車両の制御装置によると、アイドル制御中において、減速度が大きくなるほど、電子スロットルバルブの開度が増加するように補正すると、エンジンの回転数が減速時でない通常のアイドル制御時の回転数よりも高くなる。回転数の上昇によりエンジンの出力が上昇する。そのため、車両の減速時にエンジンの回転数の低下が抑制され、また、エンジンの回転数が引き下げられたとしても、エンジンの回転数の振動成分が駆動系の共振周波数と略同じ周波数になるまで低下することを抑制できる。すなわち、車両に振動が発生することを抑制できる。したがって、内燃機関のアイドル制御中の車両の減速時に、車両に振動が発生することを抑制する車両の制御装置、制御方法およびその方法をコンピュータで実現されるプログラムならびにそのプログラムを記録した記録媒体を提供することができる。
さらに、本実施の形態においては、車両の減速の度合いとマップとからスロットルバルブ開度の制御量の補正値を算出するようにしたが、本発明はスロットルバルブ開度の制御量に限定して適用されるものではない。
たとえば、アイドル制御が電子スロットルバルブではなくアイドルスピードコントロールバルブ(以下、ISCVと記載する)により実施される場合においては、車両の減速の度合いとマップとからISCVの制御量の補正値を算出するようにしてもよい。
あるいは、車両の減速の度合いとマップとから目標エンジン回転数の補正値を算出するようにしてもよい。より具体的には、メモリに図8に示すような、減速度と目標回転数の加算量との関係を示すマップを記憶しておく。図8において、横軸は減速度であって、縦軸は目標回転数の加算量である。したがって、エンジンECUは、車速信号に基づく減速度から加算量を算出し、アイドル制御時における目標回転数に加算量を加算した値を新たな目標回転数としてフィードバック制御を実行する。このようしても、車両の減速時において、エンジンの回転数が上昇するため、上述した効果と同様の効果を奏する。なお、減速度と加算値との関係は、特に図8に示すような比例関係に限定されるものではなく、非線形の関係であってもよい。
また、本実施の形態において、ISC制御量は、スロットルバルブの開度の制御量に関連する物理量であれば、特に限定されるものではない。たとえば、スロットルバルブの開度を変化させるアクチュエータのデューティ比の制御量を示すものであってもよいし、吸入空気量であってもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
120 エンジン、122 吸気通路、122A エアクリーナ、122B エアフローメータ、122C 電子スロットルバルブ、124 排気通路、124A 空燃比センサ、124B 三元触媒コンバータ、124C 触媒温度センサ、124D 消音器、140 モータジェネレータ、140A モータ、140B ジェネレータ、160 駆動輪、180 減速機、200 動力分割機構、202 サンギヤ、204 プラネタリキャリア、206 リングギヤ、208 ピニオンギヤ、210 チェーン、212,216 チェーンドライブスプロケット、214 カウンタドライブギヤ、220 走行用バッテリ、240 インバータ、242 コンバータ、260 バッテリECU、280 エンジンECU、300 MG_ECU、320 HV_ECU、330 車速センサ、360 水温検知センサ、380 クランクポジションセンサ、400 入力I/F、500 演算処理部、502 ISC制御実行判定部、504 減速補正値算出部、506 フィードバック補正値算出部、508 ISC制御量決定部、510 スロットル開度制御部、600 記憶部、700 出力I/F。
Claims (16)
- 内燃機関および回転電機を駆動源とする車両の制御装置であって、前記車両は、前記内燃機関の出力軸に連結され、前記内燃機関の動力に基づいて発電する第1の回転電機と、前記内燃機関の動力を前記車両の車輪軸に伝達する動力分割機構とを含み、前記動力分割機構は、入力された前記内燃機関の動力を、前記車輪軸への駆動力または前記第1の回転電機への動力に分割し、前記動力分割機構と前記車輪軸との間には、前記車輪軸に駆動力を付与する第2の回転電機が設けられ、
前記車両の速度に関連した物理量を検出するための速度検出手段と、
前記内燃機関のアイドル制御についての予め定められた実行条件が成立するか否かを判定するための判定手段と、
前記予め定められた実行条件が成立することが判定されると、前記車両の減速の度合いに応じて、前記アイドル制御に関連する制御量を補正するための補正手段と、
前記補正された制御量を用いて前記アイドル制御を実行するための制御手段とを含む、車両の制御装置。 - 前記補正手段は、前記内燃機関の回転数の低下が抑制されるように前記制御量を補正するための手段を含む、請求項1に記載の車両の制御装置。
- 前記内燃機関には、前記内燃機関に吸入される空気量を変化させるバルブが設けられ、
前記補正手段は、前記車両の減速の度合いが大きいほど、前記バルブ開度が増加するように制御量を補正するための手段を含む、請求項1または2に記載の車両の制御装置。 - 前記バルブは、スロットルバルブである、請求項3に記載の車両の制御装置。
- 前記バルブは、アイドルスピードコントロールバルブである、請求項3に記載の車両の制御装置。
- 前記補正手段は、前記車両の減速の度合いが大きいほど、前記アイドル制御時の前記内燃機関の目標回転数を増加するように補正するための手段を含む、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
- 前記補正手段は、車両の減速度に基づいて、前記制御量を補正するための手段を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の車両の制御装置。
- 内燃機関および回転電機を駆動源とする車両の制御方法であって、前記車両は、前記内燃機関の出力軸に連結され、前記内燃機関の動力に基づいて発電する第1の回転電機と、前記内燃機関の動力を前記車両の車輪軸に伝達する動力分割機構とを含み、前記動力分割機構は、入力された前記内燃機関の動力を、前記車輪軸への駆動力または前記第1の回転電機への動力に分割し、前記動力分割機構と前記車輪軸との間には、前記車輪軸に駆動力を付与する第2の回転電機が設けられ、
前記車両の速度に関連した物理量を検出するステップと、
前記内燃機関のアイドル制御についての予め定められた実行条件が成立するか否かを判定するステップと、
前記予め定められた実行条件が成立することが判定されると、前記車両の減速の度合いに応じて、前記アイドル制御に関連する制御量を補正する補正ステップと、
前記補正された制御量を用いて前記アイドル制御を実行するステップとを含む、車両の制御方法。 - 前記補正ステップは、前記内燃機関の回転数の低下が抑制されるように前記制御量を補正するステップを含む、請求項8に記載の車両の制御方法。
- 前記内燃機関には、前記内燃機関に吸入される空気量を変化させるバルブが設けられ、
前記補正ステップは、前記車両の減速の度合いが大きいほど、前記バルブ開度が増加するように制御量を補正するステップを含む、請求項8または9に記載の車両の制御方法。 - 前記バルブは、スロットルバルブである、請求項10に記載の車両の制御方法。
- 前記バルブは、アイドルスピードコントロールバルブである、請求項10に記載の車両の制御方法。
- 前記補正ステップは、前記車両の減速の度合いが大きいほど、前記アイドル制御時の前記内燃機関の目標回転数を増加するように補正するステップを含む、請求項8または9に記載の車両の制御方法。
- 前記補正ステップは、車両の減速度に基づいて、前記制御量を補正するステップを含む、請求項8〜13のいずれかに記載の車両の制御方法。
- 請求項8〜14のいずれかに記載の制御方法をコンピュータで実現されるプログラム。
- 請求項8〜14のいずれかに記載の制御方法をコンピュータで実現されるプログラムを記録した記録媒体。
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2006
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