JP2008118921A - 生物種判定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】DNAマイクロアレイを用いてハイブリダイゼーションした結果から、未知サンプルに含まれる標的核酸に対応する生物種判定に関して、より適切な生物種判定方法を提供する。
【解決手段】標的核酸と相補的な核酸をプローブとして配置したDNAマイクロアレイ上に、既知サンプルまたは未知サンプルを展開し、ハイブリダイゼーション反応させた結果得られたシグナル強度を、多段階しきい値によって輝度レベル化し、輝度レベル化されたベクトルデータを用いて、生物種を判定する方法。
【選択図】図7

Description

本発明はいわゆるDNAマイクロアレイを用いた核酸の塩基配列の解析方法に関するものであり、特に、細菌などの微生物の種を判定する技術に関するものである。
DNAおよびRNAなどの核酸は、それぞれ4種の塩基によって特徴付けられ、その塩基配列は生物の様々な遺伝的情報を貯蔵している。塩基配列のなかには、生物種と対応する部分が存在する。DNAまたはRNAなどの核酸の、生物種と対応する部分を解析する事によって、生物種を特定することができる。従来から、DNAマイクロアレイを利用して、対応する生物種が未知の核酸断片を含んだサンプル(以下未知サンプルと称す)を解析し、サンプルに含まれる未知の生物がどの生物種であるかを判定する方法があった。
DNAマイクロアレイとは、あらかじめ対応する生物種が判明している核酸断片を基板上に高密度に固定したものである。この、核酸断片はプローブと呼ばれ、通常ガラスやシリコン等からなる固体基板上に、固定される。
このDNAマイクロアレイを用いて未知の生物種を判定する方法では、ハイブリダイゼーション反応という核酸の塩基対形成反応を利用する。まず、ハイブリダイゼーション反応とは何かを以下に説明する。生体内でほとんどの場合、DNAは2重らせん構造をしていて、DNAの2本の鎖が塩基間の水素結合によって結合している。一方、RNAは1本鎖で存在する場合が多い。DNAまたはRNAが貯蔵する情報を構成する基本単位は4種類あり、4種類の塩基がその役割を果たしている。その塩基は、DNAの場合はATGCの4種類であり、RNAの場合はAUGCの4種類であり、それぞれA−T(U)、G−Cのペアとなって水素結合によって塩基対をつくることができる。一般にハイブリダイゼーション反応とは、1本鎖状態の2つの核酸分子同士が適切な条件下で反応して、核酸中にある塩基配列を介して1つに結合することをいう。
DNAマイクロアレイを用いた生物種の判定の際は、未知サンプル中に含まれる核酸断片の端部に蛍光物質を付与する。つぎにこの蛍光物質が付与された核酸断片を含む未知サンプルをDNAマイクロアレイ上に展開し、適切な反応条件のもとでハイブリダイゼーション反応させる。未知サンプル中に含まれる核酸断片と、DNAマイクロアレイ上に固定されたプローブとが互いに相補的な塩基配列である場合にはハイブリダイゼーション反応が生じる。その結果、上記の未知サンプル中の核酸断片とプローブとが、互いの塩基配列を介して1つに結合する。
その後、付与された蛍光物質に応じて、適切な波長を持つ励起光を、ハイブリダイゼーション反応後のDNAマイクロアレイに照射する。核酸断片が結合したプローブは、励起光が照射されることによって蛍光を生じる。DNAマイクロアレイ上のプローブの、固定する位置とそのプローブに対応する生物種はあらかじめ決められている。したがって、発光したプローブを検知することによって、未知サンプルは、発光したプローブに対応する生物種を含んでいると判断することができる。一方、発光しなかったプローブを確認することによって、未知サンプルは、発光しなかったプローブに対応する生物種を含んでいないと判断することができる。
蛍光の発生位置を検知することで、未知サンプル中に含まれる未知の核酸断片が特定の生物種に対応するかどうかを判定することができる。このようにして、DNAマイクロアレイを用いて、未知サンプルに含まれる生物種がどの生物種であるかを判定することができる。
しかしながら、核酸断片はかならずしも対応するプローブとだけハイブリダイゼ―ションするとは限らないことがわかっている。その理由は以下に挙げられる。
未知サンプル中に互いに異なる生物種である生物種Aと生物種Bとから抽出された核酸断片が同時に存在し、核酸の塩基配列の大部分が互いに同一である場合である。このように、異なる生物種同士でありながらその塩基配列が非常に類似している場合には、特殊なハイブリダイゼーション反応がおこる場合がある。そのような場合、生物種Aから抽出された核酸断片が、生物種Bに対応するプローブの核酸中の同一の塩基配列を介して部分的にハイブリダイゼーションすることが起こりえる。この現象をクロスハイブリダイゼーションという。
クロスハイブリダイゼーション反応が発生した場合の特徴として、発生する蛍光が弱いことが挙げられる。クロスハイブリダイゼーションが発生して生物種Aの核酸断片が、類似した塩基配列を持つ生物種Bのプローブと結合した場合、その結合体は化学的に不安定になる。そのため、発生する蛍光強度も正規のハイブリダイゼーションが発生した場合とくらべ低下する。
このような状況を踏まえ、特許文献1にはベクトルフィルタを用いて、クロスハイブリダイゼーションが発生した場合であっても、生物種を判定する方法が記載されている。
特許文献1による生物種判定方法を以下に記す。特許文献1によると、まず蛍光物質を付与した核酸断片を含む未知サンプルをDNAマイクロアレイ上に展開し、ハイブリダイゼーション反応を実行する。反応後のDNAマイクロアレイに、励起光を照射すると、マイクロアレイ上に固定されたプローブから発生する蛍光の、発光位置と蛍光強度を測定する。
測定された発光位置と蛍光強度は、発光位置によって順序つけられた蛍光強度を成分とするデータとして扱うことができ、ベクトルデータとして外部記憶手段に記憶される。
記憶されたベクトルデータに対して主成分分析を行い、累積寄与率が80%以上など、ある特定の基準を決めて、主成分と比較して弱い蛍光強度成分に関しては、一括して強度0とし除去する。その後、弱い蛍光強度成分を除去したベクトルデータを用いて生物種の判定を行っている。
また特許文献2には、一本鎖核酸の所定部位における未特定の塩基配列を、DNAマイクロアレイを用いて特定する方法が記載されている。特許文献2には、全長が18mer程度のDNAを対象として、その塩基配列のうち、n箇所(連続してなくても良い)が未特定である場合に、DNAマイクロアレイを用いて標的核酸の該当する塩基配列を決定する方法が記載されている。
例えば3箇所の塩基が未特定の場合には、未特定の部位にはそれぞれ(A、G、C、T)のいずれかが当てはまるので、考えられる組み合わせは合計4種類(64種)ある。この64種類の塩基配列のうち1種類が標的核酸の正しい塩基配列である。次に、この塩基配列をもつ64種類のすべてのプローブをそれぞれ基板上に配備する。その結果64種類の互いに異なる塩基配列を持つプローブが配備されたDNAマイクロアレイが作成される。
この64種類の互いに異なるプローブを配備したDNAマイクロアレイに、蛍光物質が付与された標的核酸を含んだサンプルを展開し、適切な反応条件下でハイブリダイゼーションさせる。標的核酸の塩基配列と、プローブの塩基配列とは完全にはマッチングしていなくても、クロスハイブリダイゼーションが発生し、結合する。その後、DNAマイクロアレイに蛍光物質に対応した適切な波長をもつ励起光を照射すると、DNAマイクロアレイ上に標的核酸と結合したプローブから蛍光が生じる。
クロスハイブリダイゼーションによって標的核酸とプローブとが結合すると、化学的に不安定となり、正規のハイブリダイゼーションにくらべ、発生する蛍光強度が低下する。蛍光強度の低下は、ミスマッチした塩基の数が多いほど、蛍光強度が低下する。その結果、ハイブリダイゼーション反応後のDNAマイクロアレイ上には蛍光強度分布が生じる。
そこで蛍光強度に一定の閾値を設け、閾値以上をポジティブなプローブとみなし閾値以下をネガティブとみなすと、蛍光強度パターンを得ることができる。
この蛍光パターンは、ミスマッチの数が大きいほど蛍光強度低下するという経験則に従えば、考えられる64種類すべての場合においてどのような蛍光パターンが得られるか、あらかじめ予想することができる。
この予想された64種類のハイブリダイゼーション反応後のDNAマイクロアレイ蛍光パターンをコンピュータの記憶装置に入力しておく。その後検体ごとに同様に処理され、得られた蛍光パターンと比較することによって、未知の塩基配列を検体ごとに決定する事ができる。
特開2005−3676公報 特開2002−306166公報
特許文献1記載の従来の技術では、未知サンプルとDNAマイクロアレイとをハイブリダイゼーションさせた結果得られたシグナル強度を成分とするベクトルデータを保持し、パターン認識処理を行っていた。そして、主成分分析の結果、相対的に弱い蛍光強度成分を除去したうえで、パターン認識処理を行なうことで生物種の判定を行っていた。しかしながら、蛍光強度が弱いからといって、必ずしもクロスハイブリダイゼーションが発生していると判断できないことが実験的に分かっている。
したがって、蛍光強度が弱い成分を一律に除去した場合、正常なハイブリダイゼーション反応の結果発生した蛍光強度成分も除去するおそれがある。その結果、適正な生物種の判定ができない場合が発生するという問題があった。
また特許文献2に記載の技術では単に1つのしきい値を設け、パターン認識処理を行っていた。そのため、この技術をそのまま生物種の判定に適用すると、やはり弱い蛍光強度から得られる情報が除去され、適正な生物種判定結果につながらない。
従来の方法では、弱い蛍光強度成分は除去して生物種の判定をしていたり、また一定の閾値以上の蛍光強度成分のみを塩基配列の特定に用いたりしていた。そのため、弱い蛍光強度成分が判定結果に反映されることがなかった。また、仮に生物種の判定の際に、単純に全ての弱い蛍光強度成分をとりいれて判定を行っても、クロスハイブリダイゼーションによる蛍光成分が混入してしまい、適正な判定を行うことは困難である。本発明は上記の問題を踏まえ、より適切な生物種判定方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明に至った。本発明は、複数のプローブを基板上に高密度に固定したDNAマイクロアレイに、核酸断片を含んだサンプルを展開し、ハイブリダイゼーション反応させた結果、DNAマイクロアレイ上の各プローブから発生するシグナルを検知し、前記シグナルを用いて未知サンプルに含まれる生物種を判定するための生物種判定方法であって、
前記シグナルにおけるシグナル強度について多段階しきい値を定める工程と、
対応する生物種が判明している複数の既知サンプルを生物種判定方法によって、複数の識別データを得る工程と、
前記複数の識別データを前記多段階しきい値によって、輝度レベルに分類する工程と、
対応する生物種が未知の未知サンプルを生物種判定方法によって、分析し、未知データを得る工程と、
前記多段階しきい値によって、検知された前記未知データを輝度レベルに分類する工程と、
輝度レベル化された前記識別データを用いて生物種判定条件によって輝度レベル化された前記未知データを分析し生物種の判定を行う工程と、
を有する生物種判定方法である。
また本発明は、複数のプローブを基板上に高密度に固定したDNAマイクロアレイに、核酸断片を含んだサンプルを展開し、ハイブリダイゼーション反応させた結果、DNAマイクロアレイ上の各プローブから発生するシグナルを検知し、前記シグナルを用いて未知サンプルに含まれる生物種を判定するための生物種判定方法によって、対応する生物種が判明している複数の既知サンプルを分析し、分析の結果得られた複数の識別データを、前記シグナルにおけるシグナル強度について定められた多段階しきい値によって輝度レベル化した上で記憶装置に記憶した識別辞書を用いることによって、
対応する生物種が未知の未知サンプルに対応する生物種の判定を行う生物種判定方法である。
本発明によれば、ハイブリダイゼーション反応後に得られる各プローブのシグナル強度を、多段階しきい値を定めることによって輝度レベル化してから生物種判定を行う。したがって、生物種判定時にクロスハイブリダイゼーションによる蛍光強度成分が混入することによる影響を低減しつつ、生物種の判定精度を向上させることができる。
また、生物種を判定する際には、ユーザー側で判定条件を追加設定することができるため、特殊な条件下で生物種を判定する場合においても判定精度を高めることができる。
図1は本発明による生物種判定を行う手順を示すフローチャートである。以下に図1に示された各ステップを順に説明する。
はじめに、対応する生物種があらかじめ判明している核酸断片を含んだサンプル(既知サンプルと称す)をDNAマイクロアレイ上に展開し、ハイブリダイゼーション反応を実行し、その後励起光を照射する。上記の既知サンプルには蛍光物質が付与されている。励起光を照射することによって、各プローブから蛍光が発生するので、蛍光強度を検出装置によって測定する。測定された蛍光は、プローブごとの蛍光強度を成分とするベクトルデータとして記憶手段に記憶される。既知サンプルをDNAマイクロアレイ上に展開した結果得られた蛍光強度などのシグナル強度に関するデータを識別データと称することにする。次に識別データを多段階しきい値によって蛍光強度による輝度レベルに分類する(ステップ101)。本明細書においては、多段階しきい値の各設定値を輝度レベルと称することにする。多段階しきい値の設定値の具体例は後述する。
ステップ101によって、識別辞書が作成される。識別辞書とは、既知の核酸断片をハイブリダイゼーションさせることによって得られる識別データの総体である。例えば識別辞書を構成する識別データの一例として、大腸菌のDNAを含んだサンプルをDNAマイクロアレイ上に展開し、ハイブリダイゼーションさせた結果に得られる蛍光強度データがある。このデータは、適当な記憶手段に格納され、未知サンプル中に大腸菌が含まれるかどうかの判定に用いられる。
生物種の判定ではある特定の属性をもつ生物種を判定したい場合がある。例えば感染症の原因菌を中心に生物種の判定を行いたい場合は大腸菌や黄色ブドウ球菌などを用意し、DNAを抽出した上で、上記に例示した方法にしたがって識別辞書を作成する。このように、まず判定を行いたい生物種を決定し、識別辞書を作成する。この識別辞書として記憶されたデータを用いることで未知サンプルを分析することができる。
次に図1のステップ102を説明する。未知サンプルをDNAマイクロアレイ上に展開しハイブリダイゼーション反応を実行する。反応後のDNAマイクロアレイに励起光を照射し、各プローブから発生する蛍光を測定する。既知サンプルに対して適用したのと同じ多段階のしきい値によって、測定された蛍光(未知データ)を蛍光強度による輝度レベルに分類する(ステップ102)。未知データとは、未知サンプルをDNAマイクロアレイ上に展開し、ハイブリダイゼーション反応を実行させた結果、各プローブから発生するシグナル強度を成分とするベクトルデータのことである。
次に、輝度レベル化された未知データを、識別辞書として格納されている識別データと比較する。具体的には、ステップ102で得られた輝度レベル化された未知データと、ステップ101で得られた輝度レベル化された全ての識別データとを、定められた判定式によって比較する(ステップ103)。
そして、比較の結果、もっとも類似度の高い識別データに対応する生物種を決定(ステップ104)。もし、比較の結果該当する生物種が複数ある場合等、判定困難なサンプルデータについてはプローブ蛍光強度に関する生物種固有条件を追加して生物種判定を行う(ステップ105)。図1の生物種判定を行う手順の詳細や、具体的な判定式の例および判定式による生物種の決定の方法は後述する。
図2は本発明による生物種判定方法が適用される情報処理装置の構成を示すブロック図である。
本発明における生物種判定方法は、外部記憶装置201、中央処理装置(CPU)202、メモリ203、入出力装置204から構成される装置に実装される。外部記憶装置201は、本発明を実現するプログラムや、ハイブリダイゼーション反応の結果、輝度レベルを記憶する。中央処理装置(CPU)202は本発明を実現するプログラムの実行や、すべての装置の制御を行う。
メモリ203は中央処理装置(CPU)202が使用するプログラム、及びサブルーチンやデータを一時的に記憶する。入出力装置204は、ユーザーとのインタラクションを行う。多くの場合、本発明の生物種判定方法を実現するプログラム実行はこの入出力装置を介して行われる。また、ハイブリダイゼーション反応の結果の確認、プログラムのパラメータ制御は、この入出力装置を介して行う。
図3は、DNAマイクロアレイ上にサンプルを展開した様子を示した模式図である。本発明で想定しているハイブリダイゼーション反応は、図3の基板に固定されたプローブ301とサンプル中に含まれる核酸分子302との間で発生する。サンプル中に含まれる核酸分子302が基板に固定されたプローブ301の塩基配列を含む場合は、ハイブリダイゼーション反応が発生し、サンプル中に含まれる核酸分子302はDNAマイクロアレイとプローブ301を介して結合することとなる。
次に図4を用いてDNAマイクロアレイを用いて未知サンプルを分析する方法ついて説明する。識別辞書を作成する方法の詳細は後述する。符号401の“サンプル”とは標的核酸が含まれているはずの物質から抽出した核酸断片を含んだ溶液のことである。例えば感染症の原因菌の特定をするために本発明を適用した場合、ヒト、家畜等の動物由来の血液、喀痰、胃液、膣分泌物、口腔内粘液などの体液、尿及び糞便のような排出物などの細菌や微生物が存在すると思われるあらゆる物から核酸が抽出される。また、食中毒、汚染の対象となる食品、飲料水及び温泉水のような環境中の水等、細菌による汚染が引き起こされる可能性のある媒体からも同様に核酸を抽出することができる。さらに、輸出入時における検疫等の動植物からも核酸を抽出することができる。もちろんそのようにして得られたサンプル中に含まれる核酸が、どの生物に対応するかは自明ではない。
次に、“生化学的増幅”方法を用いてサンプル401を増幅する(ステップ402)。例えば感染症の原因菌の特定をするために本発明を適用した場合、16s rRNA検出用に設計されたPCR反応用プライマーを用いてPCR法によって標的核酸を増幅する。また、PCR法以外のLAMP法などの増幅方法を用いてもよい。
そのあとで、増幅されたサンプル、またはサンプル401そのものに、標識物質を付与する(ステップ403)。付与される標識物質としては、通常Cy3,Cy5,Rodaminなどの蛍光物質が用いられる。また、生化学的増幅402の操作の中で、標識物質を付与してもよい。
そして、標識物質が付与されたサンプルは、DNAマイクロアレイの作成ステップで(ステップ404)作成されたDNAマイクロアレイ上に展開され、ハイブリダイゼーション反応405が行われる(ステップ405)。DNAマイクロアレイには、検出を行いたい細菌に特異的な結合を行うプローブが基板に固定されている。各細菌のプローブは、標的核酸に対し特異性が高く、できるだけばらつきのないハイブリダイゼーションが期待できるように設計する。プローブを固定する基板は、ガラス基板、プラスチック基板、シリコンウェハー等の平面基板が考えられる。また、凹凸のある三次元構造体、ビーズのような球状のもの、棒状、紐状、糸状のもの等を用いても、本発明の実施形態、効果には影響ない。
通常、前記基板の表面はプローブの固定が可能なように処理したものが使用される。特に、表面に官能基を導入した基板は、ハイブリダイゼーション反応の過程でプローブが安定に結合している為に、再現性の点で好ましい。本発明に用いられる固定方法は、例えば、マレイミド基とチオール(−SH)基との組合わせを用いる方法が挙げられる。すなわちプローブの末端にはチオール(−SH)基を結合させておき、基板表面にはマレイミド基を導入する。プローブと結合したチオール基と基板表面のマレイミド基とが反応して、プローブを基板に固定することができる。
基板表面にマレイミド基を導入するには、まず、ガラス基板にアミノシランカップリング剤を反応させ、次にそのアミノ基とEMCS試薬(N−(6−Maleimidocaproyloxy)succinimide:Dojin社製)との反応によりマレイミド基を基板表面に導入する。プローブへのチオール基の導入は、DNA自動合成機上5’−Thiol−ModifierC6(Glen Research社製)を用いる事により行なうことができる。プローブの固定化に利用する官能基の組合わせとしては、上記したチオール基とマレイミド基を用いる方法以外にも、例えばエポキシ基を基板へ導入し、アミノ基をプローブの末端に結合させる方法がある。また、各種シランカップリング剤による表面処理も有効であり、シランカップリング剤により導入された官能基と反応可能な官能基を導入したオリゴヌクレオチドが用いられる。さらに、官能基を有する樹脂をコーティングする方法も利用可能である。このようにしてプローブを基盤に固定し、DNAマイクロアレイを作成する。
こうして作られたDNAマイクロアレイを用いてハイブリダイゼーション反応を行った後、DNAマイクロアレイ404の表面を洗浄し、プローブと結合していないサンプルを除去したあとで、(通常は)乾燥し、蛍光量測定する(ステップ406)。DNAマイクロアレイに励起光を照射し、発生した蛍光が基板上のスポットとして現れるスキャン画像が得られる(ステップ407)。
次に、図5を用いて感染症の原因菌を特定する原理を説明する。図5では、黄色ブドウ球菌を特定する目的で作られたプローブを1つ図示している。
図5における左の列は、黄色ブドウ球菌の野生株を処理する手順を示し、右の列は大腸菌の野生株を処理する手順を示している。左の列は黄色ブドウ球菌に感染した患者から採取した血液を処理する流れで、右の列は大腸菌に感染した患者の血液を処理する流れだと考えてよい。
どちらも同じ処理を行う。まず初めに細菌感染患者の血液や、痰などから核酸を抽出する。この際に、一般的には、患者の体細胞に由来するヒトの核酸も含まれる可能性がある。
抽出された核酸が少ない場合、PCR法などの方法で増幅を行う。抽出される核酸の量はごく微量であることが多く、ほとんどの場合に、なんらかの増幅方法を用いて抽出された核酸の増幅を行う。この際に蛍光物質などの標識物質を加えるのが一般的である。
抽出した核酸の増幅をしない場合は、抽出されたDNAを含む溶液に直接、標識物質を加える。
サンプル中にふくまれる感染症の原因菌の特定が目的であれば、いわゆる16s rRNAといわれるリボゾームRNAに注目するのが一般的である。黄色ブドウ球菌と大腸菌に対して用いるPCRプライマーは同じものを使ってよい。より具体的には、どんな細菌の16srRNAをコーディングしている部分でも増幅させることができるプライマーセットを用いて、マルチプレックスPCRを行う。
黄色ブドウ球菌を検出するために設計されたプローブが正しく機能するならば、図5中の左の系列に示したように、黄色ブドウ球菌から抽出された16s rRNAに対してプローブはポジティブに反応する。また、同じプローブについて、図5中の右の系列で示したように、大腸菌から抽出された16srRNAに対してプローブはネガティブに反応する。
このように、一つのプローブに対して、一つの細菌から抽出された16srRNAがポジティブに反応する。
また、大腸菌を検出するために設計されたプローブに対しては、黄色ブドウ球菌から抽出された16s rRNAに対してプローブはネガティブに反応する。一方で、大腸菌から抽出された16srRNAに対してプローブはポジティブに反応する。このように検出を行いたい生物を決めて、その生物から抽出される特定の核酸断片に対して、それぞれ特異的に反応するプローブを設計し、基板に固定してDNAマイクロアレイを作成する。もちろん上記に挙げた細菌だけに限定されず、様々な細菌や他の生物を本発明を用いた生物の判定対象としてよいことはいうまでもない。
以下に、感染症の原因菌の特定を目的として具体的な操作を説明する。なお、本発明が開示する生物種類判定方法は、以下に述べる感染症の原因菌の特定に限ったものではなく、MHCなどの人間の体質判定や、癌などの疾病に関係するDNA、RNAの解析に用いてもよい。
<プローブの準備>
Enterobacter cloacae菌検出用プローブとして表1に示す塩基配列をもつ核酸(I−n)(nは自然数)を設計した。
具体的には、16srRNAをコーディングしているゲノム部分より、表1に示したプローブを設計した。これらのプローブ群は、当該菌に対応する標的核酸に対し特異性が高く、ばらつきの少ないハイブリダイゼーションが期待できるように設計されている。
Figure 2008118921
プローブとして設計された核酸を基板に固定するために、定法に従って核酸の5’末端にチオール基を導入した。チオール基の導入後、精製し、凍結乾燥した。凍結乾燥した内部標準用プローブは、−30℃の冷凍庫に保存した。
本実施形態では、黄色ブドウ球菌(A−n)、表皮ブドウ球菌(B−n)、大腸菌(C−n)、肺炎桿菌(D−n)、緑膿菌(E−n)、セラチア菌(F−n)、肺炎連鎖球菌(G−n)、インフルエンザ菌(H−n)、及びエンテロコッカス・フェカリス菌(J−n)(nは数字)について、同様な手法により以下に示した塩基配列をもつプローブを設計した。
Figure 2008118921
<PCR Primerの準備>
上記に挙げた感染症の原因菌における16s rRNA増幅用のPCR Primerとして、表2に示す塩基配列をもつ核酸を設計した。
具体的には、16s rRNAをコーディングしているゲノム部分を特異的に増幅するプローブセット、つまり約1500塩基長の16s rRNAコーディング領域の両端部分で、特異的な融解温度をもつプライマーを設計した。なお、変異株や、ゲノム上に複数存在する16s rRNAコーディング領域も同時に増幅できるように複数種類のプライマーを設計した。
Figure 2008118921
表中に示したPrimerは、合成後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製し、Forward Primer3種、Reverse Primer 3種を混合し、それぞれのPrimer濃度が、最終濃度10pmol/μlとなるようにTE緩衝液に溶解した。
<Enterobacter cloacae Genome DNAの抽出>
(微生物の培養&Genome DNA 抽出の前処理)
まず、Enterobacter cloacae標準株を、定法に従って培養した。
培養されたEnterobacter cloacae標準株がふくまれる溶液を、1.5ml容量のマイクロチューブに1.0ml(OD600=0.7)採取し、遠心分離器を用いて細菌を回収した。(8500rpm、5min、4℃)
上精を捨てた後、Enzyme Buffer(50mM Tris−HCl:p.H.8.0、25mM EDTA)300μlを加え、ミキサーを用いて再縣濁した。再縣濁したのち、再度、遠心分離で細菌を回収した。(8500rpm、5min、4℃)上精を捨てた後、回収された細菌に、以下の酵素を加え、ミキサーを用いて再縣濁した。
Lysozyme 50μl(20mg/ml in Enzyme Buffer)
N−Acetylmuramidase SG 50μl(0.2mg/ml in Enzyme Buffer)
次に、酵素を加え再縣濁した溶液を、37℃のインキュベーター内で30分間静置し、細胞壁の溶解処理を行った。
(DNA抽出)
以下に示すGenome DNA抽出は、核酸精製キット(MagExtractor −Genome−:TOYOBO社製)を用いて行った。
具体的には、まず、前処理した微生物縣濁液に溶解・吸着液750μlと磁性ビーズ40μlを加え、チューブミキサーを用いて、10分間激しく攪拌した(ステップ1)。
次に、分離用スタンド(Magical Trapper)にマイクロチューブをセットし、30秒間静置して磁性粒子をチューブの壁面に集め、スタンドにセットした状態のまま、上精を捨てた。
(ステップ2)
次に、洗浄液900μlを加え、ミキサーで5sec程度攪拌して再縣濁を行った。
(ステップ3)
次に、分離用スタンド(Magical Trapper)にマイクロチューブをセットし、30秒間静置して磁性粒子をチューブの壁面に集め、スタンドにセットした状態のまま、上精を捨てた。
(ステップ4)
ステップ3、4を繰り返して2度目の洗浄(ステップ5)を行った後、70%エタノール900μlを加え、ミキサーで5sec程度攪拌して再縣濁した(ステップ6)。
次に、分離用スタンド(Magical Trapper)にマイクロチューブをセットし、30秒間静置して磁性粒子をチューブの壁面に集め、スタンドにセットした状態のまま、上精を捨てた(ステップ7)。
ステップ6、7を繰り返して70%エタノールによる2度目の洗浄(ステップ8)を行った後、回収された磁性粒子に純水100μlを加え、チューブミキサーで10分間攪拌を行った。
次に分離用スタンド(Magical Trapper)にマイクロチューブをセットし、30秒間静置して磁性粒子をチューブ壁面に集め、スタンドにセットした状態のまま、上精を新しいチューブに回収した。
(回収したDNAの検査)
回収されたEnterobacter cloacae株のGenome DNAは、定法に従って、アガロース電気泳動と260/280nmの吸光度測定を行い、その品質(低分子核酸の混入量、分解の程度)と回収量を検査した。
本実施例では、約10μgのGenome DNAが回収され、Genome DNAのデグラデーションやrRNAの混入は認められなかった。
回収したGenome DNAは、最終濃度50ng/μlとなるようにTE緩衝液に溶解した。
<DNAマイクロアレイの作製>
[1]ガラス基板の洗浄
合成石英のガラス基板(サイズ:25mmx75mmx1mm、飯山特殊ガラス社製)を耐熱、耐アルカリのラックに入れ、特定の濃度に調製した超音波洗浄用の洗浄液に浸した。一晩洗浄液中で浸した後、20分間超音波洗浄を行った。続いてガラス基板を取り出し、軽く純水ですすいだ後、超純水中で20分超音波洗浄をおこなった。次に80℃に加熱した1N水酸化ナトリウム水溶液中に10分間基板を浸した。再び純水洗浄と超純水洗浄を行った。この石英ガラス基板をDNAマイクロアレイにおける基板として使用する。
[2]表面処理
シランカップリング剤KBM−603(信越シリコーン社製)を、1%の濃度となるように純水中に溶解させ、室温で2時間攪拌した。続いて、先に洗浄したガラス基板をシランカップリング剤水溶液に浸し、20分間室温で放置した。ガラス基板を引き上げ、軽く純水で表面を洗浄した後、窒素ガスを基板の両面に吹き付けて乾燥させた。次に乾燥した基板を120℃に加熱したオーブン中で1時間ベークし、カップリング剤処理を完結させ、基板表面にアミノ基を導入した。次いで同仁化学研究所社製のN−マレイミドカプロイロキシスクシイミド(N−(6−Maleimidocaproyloxy)succinimido)(以下EMCSと略す)を、ジメチルスルホキシドとエタノールの1:1混合溶媒中に最終濃度が0.3mg/mlとなるように溶解したEMCS溶液を用意した。
ベークしたガラス基板を放冷し、調製したEMCS溶液中に室温で2時間浸した。この処理により、シランカップリング剤によって表面に導入されたアミノ基とEMCSのスクシイミド基が反応し、ガラス基板表面にマレイミド基が導入された。EMCS溶液から引き上げたガラス基板を、先述のMCSを溶解した混合溶媒を用いて洗浄し、さらにエタノールにより洗浄した後、窒素ガス雰囲気下で乾燥させた。
[3]プローブ
作成したプローブを純水中に展開し、それぞれ、最終濃度が10μMとなるように分注した後、凍結乾燥を行い、水分を除いた。
[4]BJプリンターを用いたプローブの吐出、プローブと基板の結合
グリセリン7.5wt%、チオジグリコール7.5wt%、尿素7.5wt%、アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)1.0wt%を含む水溶液を用意した。続いて、先に用意した7種類のプローブ(表1)を上記の混合溶媒に規定濃度なるように溶解した。得られたDNA溶液をバブルジェット(登録商標)プリンター(商品名:BJF−850 キヤノン社製)用インクタンクに充填し、印字ヘッドに装着した。
なおここで用いたバブルジェット(登録商標)プリンターは平板への印刷が可能なように改造を施したものである。またこのバブルジェット(登録商標)プリンターは、約5ピコリットルの液体を約120マイクロメートルピッチでスポッティングすることが可能となっている。
このバブルジェット(登録商標)プリンターを用いて、1枚のガラス基板に対して、印字操作を行い、プローブを含んだ溶液をスポッティングすることで、基板上にプローブを吐出する。吐出が行われたことを確認した後に、基板表面のマレイミド基とプローブ末端のチオール基とを反応させるため、基板を30分間加湿チャンバー内に静置する。
[5]洗浄
30分間の静置したあと、100mMのNaClを含む10mMのリン酸緩衝液(pH7.0)を用いて表面に残った溶液を洗い流す。こうしてガラス基板表面に一本鎖DNAが固定されたDNAマイクロアレイを得た。
<増幅と標識化>
回収した16srRNAのPCR法による増幅、および、蛍光物質の付与による標識化を以下に説明する。
Premix PCR 試薬(TAKARA ExTaq) 25μl
Template Genome DNA 2μl(100ng)
Forward Primer mix 2μl(20pmol/tube each)
Reverse Primer mix 2μl(20pmol/tube each)
Cy−3 dUTP (1mM) 2μl(2nmol/tube)
H20 17μl
Total 50μl
上記組成の反応液を以下のプロトコールに従って、市販のサーマルサイクラーでPCR法による増幅を行った。
Figure 2008118921
反応終了後、精製用カラム(QIAGEN QIAquick PCR Purification Kit)を用いてPrimerを除去した後、増幅物の定量を行い、サンプルとした。
<ハイブリダイゼーション>
作製したDNAマイクロアレイと、作製したサンプルとを用いてハイブリダイゼーションを実行した。
(DNAマイクロアレイのブロッキング)
BSA(牛血清アルブミンFraction V:Sigma社製)を1wt%となるように100mM NaCl/10mM Phosphate Bufferに溶解し、この溶液に作製したDNAマイクロアレイを室温で2時間浸し、ブロッキングを行った。ブロッキング終了後、0.1wt%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を含む2xSSC溶液(NaCl 300mM、Sodium Citrate(trisodium citrate dihydrate,C6H5Na3・2H2O)30mM、p.H.7.0)で洗浄を行った後、純水でリンスしてからスピンドライ装置で水切りを行った。
(ハイブリダイゼーション)
水切りしたDNAマイクロアレイをハイブリダイゼーション装置(Genomic Solutions Inc.Hybridization Station)にセットし、以下に示すハイブリダイゼーション溶液、条件でハイブリダイゼーション反応を行った。
ハイブリダイゼーション反応時には以下の組成の溶液が使用される。
6 x SSPE/10%Form amide/Target(2nd PCR Products全量)
(6xSSPE:NaCl 900mM、NaH2PO4・H2O 60mM、EDTA 6mM、p.H.7.4)
ハイブリダイゼーション反応時の反応条件は以下に示す。
65℃ 3min→92℃ 2min→45℃ 3hr→Wash 2xSSC/0.1% SDS at 25℃→Wash 2 x SSC at 20℃→(Rinse with HO:Manual)→Spin dry
<微生物の検出(蛍光測定)>
ハイブリダイゼーション反応終了後、DNAマイクロアレイをDNAマイクロアレイ用蛍光検出装置(Axon社製、GenePix 4000B)を用いて蛍光測定を行った。以下では蛍光測定の方法を説明するとともに、既知サンプルを使った識別辞書の作成方法と未知サンプルから得られた未知データを解析する方法とを具体的に説明する。未知データとは、未知サンプルをDNAマイクロアレイ上に展開し、ハイブリダイゼーション反応を実行させた結果、各プローブから発生するシグナル強度を成分とするベクトルデータのことである。
Staphylococcus aureusが含まれるサンプルについて、ハイブリダイゼーションした結果得られた各プローブのシグナル強度、輝度レベルを図6に示す。このサンプルを既知サンプルとして識別辞書を作成する方法を説明する。既知サンプルをDNAマイクロアレイ上に展開し、発生した蛍光を測定する。測定された蛍光は、各プローブの蛍光強度を成分とするベクトルデータであって、識別データとして外部記憶装置に記憶する。
本実施例のDNAマイクロアレイ上には、1種類の細菌につき6つの異なるプローブが固定されている。全部で10種類の細菌に対応するプローブが用意されていて、合計60個のプローブがDNAマイクロアレイ上に固定されている。したがって測定された蛍光は、60次元のベクトルデータとして扱われる。
プローブは固定位置によって順序つけられており、各プローブに番号が付与されている。i番目のプローブのシグナル強度をx
Figure 2008118921
とすると、シグナル強度yは下記の数式で正規化される。正規化とは各成分の総和が定められた値(本実施例では10000)となるように、ベクトルデータの各成分の特徴はそのままに、スケールを変換する操作のことである。
Figure 2008118921
シグナルの例としては前述の、蛍光物質を利用した蛍光がある。もちろん、シグナルは蛍光に限定されるものではなく、ベクトルデータを正規化する方法も前述した方法には限定されないことはいうまでもないことである。
シグナル強度を、多段階しきい値によって輝度レベル化する方法を図7に示す。多段階しきい値のそれぞれの設定値は正規化の方法やプローブごとの生化学的な性質などの諸条件を考慮して、本発明を実施する者が自由に設定することが可能である。
ここでは一例として、蛍光強度の零点を起点として、輝度レベル1を100、輝度レベル2を300、輝度レベル3を600、輝度レベル4を1250、輝度レベル5を2500、輝度レベル6を5000とする。多段階しきい値の設定はプローブごとに設定する事ができ、プローブの特徴に応じて設定することが望ましい。
プローブの種類によっては、正常にハイブリダイゼーションした場合でも、相対的に他の生物種に対応するプロ―ブとくらべて蛍光強度が弱く、蛍光を発していても生物種の判定結果に反映されにくい場合がある。そのような場合においても、本発明の方法で解決する事ができる。具体的には、図7に例示したように、となり合うしきい値間の間隔が順次大きくなるように輝度レベルを設定したり、輝度レベルの間隔を該当するプローブに関して、より小さくとったりすることによって、そのような弱い蛍光強度にも適切に重み付けすると良い。もちろん本実施形態の輝度レベル化の方法だけに限定されないことは言うまでもない。
図8は既知サンプルを用いて識別データを得たのち、得られたシグナル強度を輝度レベル化し、識別辞書を作成する方法を説明する図である。横軸はプローブに付与された番号が対応し、縦軸がハイブリダイゼーション反応後のDNAマイクロアレイから検知された各プローブの蛍光のシグナル強度をあらわしている。図8では、プロ−ブA−1、プローブA−2、プローブA−3は相対的に蛍光強度が弱く、プローブA−4、プローブA−5、プローブA−6は蛍光強度が強いことが確認できる。あらかじめ定められた多段階閾値を用いて、それぞれの蛍光強度成分に対して、輝度レベル化を行う。プロ−ブA−1、プローブA−2、プローブA−3はそれぞれ輝度レベル3で、プローブA−4、プローブA−5、プローブA−6は輝度レベルはそれぞれ6である。輝度レベル化されたベクトルデータは、識別辞書として外部記憶装置に記憶され、未知サンプルに含まれる生物種の判定に用いられる。ここでは、Staphylococcus aureusから抽出されたDNAを含んだ既知サンプルを用いて、得られたシグナル強度を成分ごとにそれぞれ輝度レベル化した。
次に、未知サンプルをDNAマイクロアレイ上に展開し、ハイブリダイゼーション反応を実行して、プローブごとに発生する蛍光を測定する。DNAマイクロアレイは識別辞書を作成した際に用いられたものと同じものであって、同一のプローブ名には同一のプローブが対応する。図9は、未知サンプルを用いて、得られた未知データを輝度レベル化する方法を説明する図である。プロ−ブA−1、プローブA−2、プローブA−3はそれぞれ輝度レベルが3,である。またプローブA−4は輝度レベル5であって、プローブA−5、プローブA−6の輝度レベルはそれぞれ6である。
識別辞書として格納された生物種yに関する識別データのi番目の成分をyとする。識別辞書を作成する際に用いられた多段階しきい値を用いて、未知データを正規化して、正規化された未知データのi番目の成分をとする。
本発明では、既知サンプルから作成した識別辞書と、未知サンプルから得た未知データとを用いて生物種の判定を行う。生物種の判定においては、輝度レベル化されたベクトルデータである、yとzをもちいて、
Figure 2008118921
で表されるユークリッド距離を判定式として計算した。判定式の計算の際には識別辞書として外部記憶装置に記憶されている全ての生物種に対して同様の計算がCPUにて行われる。判定式を用いた計算の結果、最小値をとる生物種が未知のサンプルの生物種と同一のものであると判定される。生物種判定の際に用いられる判定式は、上記のユークリッド距離だけに限られないことは言うまでもない。
輝度レベル化された未知データと識別辞書との輝度レベルを比較して生物種判定を行う際のユーザーインターフェースを図10に示す。比較結果から、識別辞書の一部として記憶されている識別データに対応する生物種のうち、最も近い細菌が選択される。それと同時にBacteria Listとして、選択中の未知サンプルに対して、最も類似している順に既知サンプルを比較結果とともにリスト化される。また、本ユーザーインターフェースでは、各プローブのシグナル強度、輝度レベル、判定式を用いた比較の結果、蛍光強度の成分ごとに示したグラフ、しきい値とともに視覚的に表示している。
図11は、生物種判定条件をユーザーが設定する際に表示されるユーザーインターフェースである。生物種判定を行う際には、輝度レベル化された未知データと識別辞書として記憶された複数の識別データとを比較した結果、該当する生物種が複数ある場合など、未知サンプルに含まれる生物種を特定することが困難な場合がある。そのような未知サンプルを判定する際は、判定結果が予想される生物種があらかじめ分かっている場合も少なくない。また、特定の細菌は、様々な細菌が混在している場合でも、他の生物種と比べて、非常に強い傾向が発生する場合がある。その場合、ユーザー側で判定基準をプローブごとに設定し、生物種判定条件をさらに追加することができる。生物種判定条件は、各プローブの輝度レベル比較、乗算、除算、論理積、論理和、等号、不等号の組み合わせによる条件設定が可能である。
ユーザーが、個々の生物種ごとに独自に得た知見を生物種の判定条件に自由に追加することができるため、塩基配列が極めて類似している生物同士を判定するなど特殊な条件下での生物種の判定においても、より精度の高い生物種判定結果を与えることが可能となる。
本発明による生物種判定を行う手順を示すフローチャートである。 本発明による生物種判定方法が適用される情報処理装置の構成を示すブロック図である。 DNAマイクロアレイ上にサンプルを展開した様子を示した模式図である。 DNAマイクロアレイを用いて未知サンプルを分析する方法を説明するための図である。 感染症の菌を特定するDNAマイクロアレイの原理を説明するための図である。 Staphylococcus aureusが含まれるサンプルについて、ハイブリダイゼーションした結果得られた各プローブのシグナル強度、輝度レベル、比較結果。 各プローブのシグナル強度を多段階しきい値によって輝度レベル化する方法を示した図である。 既知サンプルを用いて識別データを得たのち、得られたシグナル強度を輝度レベル化し、識別辞書を作成する方法を説明する図である。 未知サンプルを用いて、得られた未知データを輝度レベル化する方法を説明する図である。 輝度レベル化された未知データと識別辞書との輝度レベルを比較して生物種判定を行う際のユーザーインターフェースを示す図である。 生物種判定条件をユーザーが設定する際に表示されるユーザーインターフェースを示す図である。

Claims (6)

  1. 複数のプローブを基板上に高密度に固定したDNAマイクロアレイに、核酸断片を含んだサンプルを展開し、ハイブリダイゼーション反応させた結果、DNAマイクロアレイ上の各プローブから発生するシグナルを検知し、前記シグナルを用いて未知サンプルに含まれる生物種を判定するための生物種判定方法であって、
    前記シグナルにおけるシグナル強度について多段階しきい値を定める工程と、
    対応する生物種が判明している複数の既知サンプルを生物種判定方法によって、複数の識別データを得る工程と、
    前記複数の識別データを前記多段階しきい値によって、輝度レベルに分類する工程と、
    対応する生物種が未知の未知サンプルを生物種判定方法によって、分析し、未知データを得る工程と、
    前記多段階しきい値によって、検知された前記未知データを輝度レベルに分類する工程と、
    輝度レベル化された前記識別データを用いて生物種判定条件によって輝度レベル化された前記未知データを分析し生物種の判定を行う工程と、
    を有する生物種判定方法。
  2. 前記多段階しきい値は、シグナル強度の零点を起点としてシグナル強度が大きくなるに従って、隣合うしきい値間の間隔が順次大きくなるようにしきい値が設定されている請求項1に記載の生物種判定方法。
  3. 前記生物種判定条件は、前記既知サンプルの各プローブの輝度レベルからなるベクトルデータと前記未知サンプルの輝度レベルからなるベクトルデータとの間で定義された判定式の値が最小となる既知サンプルに対応する生物種を未知サンプルに対応する生物種であると判定する請求項1または請求項2に記載の生物種判定方法。
  4. 前記判定式は、ユークリッド距離であることを特徴とする請求項3記載の生物種判定方法。
  5. 請求項3記載の生物種判定条件に、特定の生物種が持つ固有の性質に応じて作成したさらなる生物種判定条件を追加することができる請求項3記載の生物種判定方法。
  6. 複数のプローブを基板上に高密度に固定したDNAマイクロアレイに、核酸断片を含んだサンプルを展開し、ハイブリダイゼーション反応させた結果、DNAマイクロアレイ上の各プローブから発生するシグナルを検知し、前記シグナルを用いて未知サンプルに含まれる生物種を判定するための生物種判定方法によって、対応する生物種が判明している複数の既知サンプルを分析し、分析の結果得られた複数の識別データを、前記シグナルにおけるシグナル強度について定められた多段階しきい値によって輝度レベル化した上で記憶装置に記憶した識別辞書を用いることによって、
    対応する生物種が未知の未知サンプルに対応する生物種の判定を行う生物種判定方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2018504616A (ja) * 2014-12-15 2018-02-15 ルミネックス コーポレーション 詳細検定プロトコル仕様

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