JP2008116013A - Cvtエレメント - Google Patents

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佳大 前川
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Abstract

【課題】高強度かつCVTのプーリの摩耗を低減可能なCVTエレメントを提供する。
【解決手段】サドル部11、ネック部12およびヘッド部13からなり、リング5と係合する本体部と、プーリ2・3に当接する当接部15と、を具備し、当接部15の硬度を本体部の硬度よりも低く設定したCVTエレメント10・10・・・を用いてCVTベルト4を構成することにより、本体部を高強度化してエンジンの高トルク化に対応するとともに、プーリ2・3におけるCVTエレメント10・10・・・との当接部分(溝の表面)の摩耗を低減する。
【選択図】図4

Description

本発明は、CVT(Continuously Variable Transmission)のうち、ベルト式のCVTに用いられるCVTエレメントの技術に関する。
より詳細には、CVTエレメントの高強度化を図りつつCVTエレメントに当接するプーリの摩耗を低減する技術に関する。
従来、自動車の燃費向上やショックのないスムーズな変速を行う技術の一つとしてCVT、特にベルト式のCVTが検討されている。
ベルト式のCVTは、多数のCVTエレメントを隙間無く無端状のリング(CVTベルト用リング)に係合して形成するCVTベルトを入力側および出力側の二つのプーリに巻回し、該二つのプーリの一方または両方を割りプーリとし、CVTベルトが当接する当該プーリにおける溝の間隔を変更することにより、該二つのプーリの実質的な直径比を変化させ、変速を行うものである。
ベルト式のCVTは比較的エンジンの排気量が小さい(エンジンのトルクが比較的小さい)自動車に適用されていたが、近年は徐々にエンジンの排気量が大きい(エンジンのトルクが大きい)自動車への適用も検討されており、これに伴ってCVTベルトを構成する部品であるCVTエレメントの高強度化を図る必要が生じている。
CVTエレメントの高強度化を図る方法としては、CVTエレメントの形状を工夫することの他、鉄鋼材料からなるCVTエレメントに焼き入れや浸炭等を施すことによりCVTエレメントの硬度を向上する方法が知られている。例えば、特許文献1および特許文献2に記載の如くである。
図5に示す如く、一般に、CVTエレメントの硬度が上昇するとCVTエレメントの疲労限強度も向上することから、CVTエレメントの高硬度化はCVTエレメントの高強度化を図る上で有効である。
しかし、CVTエレメントの高強度化を行うと、CVTのプーリ(シーブ)におけるCVTエレメントとの当接面の摩耗が顕著になるという問題がある。
特開平10−169718号公報 特開2004−136361号公報
本発明は以上の如き状況に鑑み、高強度かつCVTのプーリの摩耗を低減可能なCVTエレメントを提供するものである。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、請求項1においては、
リングと係合する本体部と、
プーリに当接する当接部と、
を具備し、
前記当接部の硬度を前記本体部の硬度よりも低く設定したものである。
請求項2においては、
前記当接部の硬度を前記本体部の硬度よりもビッカース硬度で20以上低く設定したものである。
請求項3においては、
前記本体部および当接部は鉄鋼材料からなり、
前記当接部に焼戻し温度よりも高い温度で所定時間保持する追加焼戻し処理を施すものである。
請求項4においては、
前記追加焼戻し処理は、
前記本体部を冷却しながら行うものである。
請求項5においては、
前記追加焼戻し処理は、
複数の前記CVTエレメントを整列した状態で行うものである。
請求項6においては、
前記本体部は、
両端に前記当接部が設けられるサドル部と、
前記サドル部に延設されるネック部と、
前記ネック部に延設されるとともに、前記リングに係合する係合溝を前記サドルとの間に形成するヘッド部と、
を具備し、
前記当接部の硬度を前記ネック部と前記サドル部との境界部分の硬度よりも低く設定したものである。
本発明の効果は、CVTエレメントの高強度化とCVTのプーリの摩耗の低減とを両立することが可能である。
以下では、図1を用いて本発明に係るCVTエレメントの第一実施例であるCVTエレメント10が適用されるCVT1について説明する。
CVT1はベルト式のCVTであり、入力側プーリ2、出力側プーリ3、CVTベルト4等を具備する。
入力側プーリ2および出力側プーリ3は回転可能に軸支され、これらにCVTベルト4が巻回される。エンジン(不図示)等からCVT1に入力された駆動力は、入力側プーリ2からCVTベルト4を経て出力側プーリ3に伝達され、出力される。
入力側プーリ2および出力側プーリ3はいわゆる割りプーリであり、CVTベルト4が係合する外周面の溝の幅を調整することにより、入力側プーリ2および出力側プーリ3に係合するCVTベルト4の曲率半径を変更し、ひいてはCVT1の入力側の回転速度と出力側の回転速度の比(変速比)を変更することが可能である。
CVTベルト4はリング5・5およびCVTエレメント10・10・・・を具備する。
リング5・5は鋼鉄等の金属材料からなる無端状のリングである。CVTベルト4を構成するCVTエレメント10は、それぞれ隣接するCVTエレメント10・10と表面または裏面で当接した状態で積層され、リング5・5に係合される。
以下では、図1乃至図4を用いてCVTエレメント10の詳細について説明する。
CVTエレメント10はCVTベルト4を構成する部材の一つであり、通常、耐摩耗性に優れた硬質鋼等からなる板材等の出発材に打ち抜き加工等を施すことにより製造される。なお、CVTエレメント10を構成する材料については鉄鋼材料に限定されず、CVTエレメントとしての機能を果たすことが可能な程度の耐摩耗性や寸法精度を有するものであれば別の材料でも良い。
図2および図3に示す如く、CVTエレメント10は主にサドル部11、ネック部12、ヘッド部13、当接部15等を具備する。
サドル部11はCVTエレメント10の主たる構造体を成す部分であり、その左右両端には入力側プーリ2および出力側プーリ3に形成された溝との当接面15a・15aを成す部分である当接部15が設けられる。
ネック部12はサドル部11に延設される部分であり、後述するヘッド部13とサドル部11とを繋ぐ部分である。ネック部12は通常、サドル部11の上端部の左右略中央から上方に延設される。
ヘッド部13はネック部12に延設される部分であり、ヘッド部13は左右に延びた形状を成す。
ヘッド部13の表面の略中央部には係合突起13aが形成されるとともに、ヘッド部13の裏面の略中央部には係合孔13bが形成される。
係合突起13aが隣接するCVTエレメント10の係合孔13bに係合することにより、CVTエレメント10・10・・・を積層する際に略一直線に並ぶことを容易としている。
サドル部11、ネック部12およびヘッド部13にて囲んだ位置(サドル部11とヘッド部13との間)には係合溝14・14が形成される。係合溝14・14はそれぞれリング5・5に係合する。
サドル部11、ネック部12およびヘッド部13を合わせた部分は、CVTエレメント10における本体部を成す。「本体部」はCVTエレメントにおいてCVTベルトを構成する部品の一つであるリングと係合する部分である。
図4はCVTエレメント10のX−X断面(図3参照)におけるエレメント幅方向の硬度(ビッカース硬度)の分布を示すものである。
図4に示す如く、CVTエレメント10の当接部15の硬度は、CVTエレメント10の本体部(本実施例のX−X断面の場合、サドル部11)の硬度よりも低くなるようにその硬度が設定される。
このように構成することにより、CVTエレメント10の本体部についてはエンジンの高トルク化に合わせてより高強度化を図ることが可能である。また、CVTエレメント10の当接部15については、CVT1のプーリ(入力側プーリ2および出力側プーリ3)に対する硬度が相対的に小さくなるため、CVTエレメント10との当接部(溝の表面)の摩耗を低減することが可能である。
本実施例のCVTエレメント10はサドル部11、ネック部12、ヘッド部13からなる本体部を有する構成としたが、本発明に係るCVTエレメントはこれに限定されず、本体部の形状はリングと係合する機能を有していれば他の形状でも良い。
CVTエレメント10の当接部15の硬度を本体部の硬度に比べてどの程度低く設定するかは、CVT1のプーリ(入力側プーリ2および出力側プーリ3)の材質、CVT1が適用される自動車のエンジンの排気量やトルクの大きさ、重量、用途等の種々の条件を考慮した上で適宜選択することが望ましいが、目安としてはビッカース硬度で20以上、より好ましくは30以上低く設定することが望ましい。
本実施例のCVTエレメント10の場合、ネック部12とサドル部11との境界部分が最も応力(圧縮応力およびねじり応力)の集中する部分であるため、当該部位の硬度を最も高くすることが望ましい。
従って、CVTエレメント10の当接部15の硬度をネック部12とサドル部11との境界部分の硬度よりも低く設定することが望ましい。
CVTエレメント10の当接部15の硬度を本体部の硬度よりも低く設定する具体的な方法としては、CVTエレメント10の材質が鉄鋼材料である場合において、CVTエレメント10に焼き入れや浸炭処理等の高強度化を目的とする熱処理を施し、さらにCVTエレメント10の硬度を所望の値に調整するためにCVTエレメント10の全体に所定の焼戻し温度で焼戻し処理を施した後、別途当接部15に焼戻し温度よりも高い温度で所定時間保持する追加焼戻し処理を施す方法が挙げられる。
また、CVTエレメント10の本体部を冷却しながら上記追加焼戻し処理を施すことにより、CVTエレメント10の本体部と当接部15との間で急激な硬度の変化を与えることが可能であり、当接部15の体積を必要最小限とし、よりCVTエレメント10の全体としての高強度化を図ることが可能である。
CVTベルトを製造する工程ではその途中において必ずCVTエレメントを積層して整列する工程が存在することから、CVTエレメント10・10・・・を整列したときにまとめて当接部15・15・・・に上記追加焼戻し処理を施すことにより、当接部15・15・・・の硬度を均一に揃えることが容易であるとともに生産性の向上が可能である。
本発明に係るCVTエレメントの実施の一形態が適用されるCVTの模式図。 本発明に係るCVTエレメントの実施の一形態の斜視図。 本発明に係るCVTエレメントの実施の一形態の正面図。 本発明に係るCVTエレメントの実施の一形態のX−X断面における硬度分布を示す図。 CVTエレメントの硬度と疲労限強度との関係を示す図。
符号の説明
2 入力側プーリ(プーリ)
3 出力側プーリ(プーリ)
5 リング
10 CVTエレメント
11 サドル部(本体部)
12 ネック部(本体部)
13 ヘッド部(本体部)
15 当接部

Claims (6)

  1. リングと係合する本体部と、
    プーリに当接する当接部と、
    を具備し、
    前記当接部の硬度を前記本体部の硬度よりも低く設定したCVTエレメント。
  2. 前記当接部の硬度を前記本体部の硬度よりもビッカース硬度で20以上低く設定した請求項1に記載のCVTエレメント。
  3. 前記本体部および当接部は鉄鋼材料からなり、
    前記当接部に焼戻し温度よりも高い温度で所定時間保持する追加焼戻し処理を施す請求項1または請求項2に記載のCVTエレメント。
  4. 前記追加焼戻し処理は、
    前記本体部を冷却しながら行う請求項3に記載のCVTエレメント。
  5. 前記追加焼戻し処理は、
    複数の前記CVTエレメントを整列した状態で行う請求項3または請求項4に記載のCVTエレメント。
  6. 前記本体部は、
    両端に前記当接部が設けられるサドル部と、
    前記サドル部に延設されるネック部と、
    前記ネック部に延設されるとともに、前記リングに係合する係合溝を前記サドルとの間に形成するヘッド部と、
    を具備し、
    前記当接部の硬度を前記ネック部と前記サドル部との境界部分の硬度よりも低く設定した請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のCVTエレメント。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010280966A (ja) * 2009-06-05 2010-12-16 Toyota Motor Corp 焼入れ用治具
JP2011196426A (ja) * 2010-03-18 2011-10-06 Jatco Ltd 無段変速機用ベルトとその製造方法

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