JP2008115180A - 抗イディオタイプ抗体の産生方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、抗イディオタイプ抗体を産生することを課題とする。
【解決手段】本発明は、抗イディオタイプ抗体を産生するための外因性抗体についてトランスジェニックな非ヒト動物の使用、並びに(a)外因性抗体についてトランスジェニックな非ヒト動物を作製する工程、(b)外因性抗体と同じ種特異的アイソタイプを含む関心対象の抗体に対する免疫反応をトランスジェニック非ヒト動物において誘導する工程、及び(c)関心対象の抗体のイディオタイプ部分に対して向けられる抗体を産生する工程を包含する抗イディオタイプ抗体の産生方法に関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、抗イディオタイプ抗体の産生方法に関する。
癌、自己免疫疾患、移植片拒絶、及びその他の徴候の処置におけるモノクローナル抗体(MAb)療法の使用は、近年大きく拡大している。特に、分子工学は、マウスMAbをヒト化分子又は完全ヒト分子に変換し、それによって処置を受けた患者においてこれらの治療薬剤に対する望ましくない免疫反応を低減することを可能にした(ヒト抗ヒト抗体=HAHA)。その結果、主として免疫原性の減退又は排除、血清半減期の増加、及びエフェクター機能の改善により、治療用MAbを用いた療法の成功は劇的に増加した。しかし、この関係で、処置を受けた患者の血清中の内因性免疫グロブリン(IgG)分子の大きなプールから治療用IgGを識別できる適切なアッセイ系を開発することが重要となった。それ故、治療用MAbを臨床的に投与するために、薬物動態、薬力学、体内分布、及び免疫反応の誘導の分析のためのツールが必要とされる。抗イディオタイプ(抗ID)抗体は、他の抗体の可変領域に特異的に結合し、従って、薬物動態研究において治療用MAbを検出するのに使用でき、かつ処置を受けた個体におけるヒト抗ヒト抗体(HAHA)反応を定量化するのに役立ち得る。現在、このような抗イディオタイプ抗体は、実験動物を関心対象の治療用抗体で免疫した後にイディオタイプ結合性MAbの存在をスクリーニングすることによって産生される。残念ながら、治療用MAbを有する実験動物において誘発される免疫反応は、主にヒト抗体のFc部分に対して向けられるものであるため、抗イディオタイプ抗体を獲得するのは稀であり困難である。さらに、ポリクローナル血清のアフィニティ精製法による動物からの抗イディオタイプ抗体の産生は、例えば、非イディオタイプ結合性抗体の割合が高く、通常の免疫グロブリンを用いる免疫吸着法の収率を低下させ、バッチ毎の調製物の質が不均一である。
特許文献1において、外因性抗体についてトランスジェニックな非ヒト動物が既に記載されている。しかし、本明細書に記載される用法は開示されていない。
EP 05105946.7
本発明は、抗イディオタイプ抗体を産生することを課題とする。
本発明は、関心対象の抗体に対する抗イディオタイプ抗体を産生するためのトランスジェニック非ヒト動物の使用を提供する。ここで、該非ヒト動物は外因性抗体についてトランスジェニックであり、該関心対象の抗体は該外因性抗体と同じアイソタイプを有する。
このような外因性抗体についてトランスジェニックな動物は、該外因性抗体と同じアイソタイプの全抗体のFc部分に対する寛容性を有する一方、該外因性抗体と同じアイソタイプであるが異なるイディオタイプの抗体の可変領域に対しては免疫反応を起こす。
本発明(1)は、非ヒト動物が外因性抗体についてトランスジェニックであり、関心対象の抗体が該外因性抗体と同じアイソタイプを有する、該関心対象の抗体に対する抗イディオタイプ抗体を産生するためのトランスジェニック非ヒト動物の使用である。
本発明(2)は、外因性抗体及び関心対象の抗体がヒト抗体又はヒト化抗体である、本発明(1)の使用である。
本発明(3)は、外因性抗体及び関心対象の抗体がIgG抗体である、本発明(1)又は(2)のいずれかの使用である。
本発明(4)は、
(a)外因性抗体についてトランスジェニックな非ヒト動物を作製する工程;
(b)該トランスジェニック非ヒト動物において関心対象の抗体に対する免疫反応を誘導する工程であって、それによって該関心対象の抗体が該外因性抗体と同じアイソタイプを有する工程;及び
(c)該関心対象の抗体のイディオタイプ部分に対して向けられる抗体を産生する工程を包含する、
関心対象の抗体に対する抗イディオタイプ抗体を産生する方法である。
本発明(5)は、さらに、(d)抗イディオタイプ抗体を単離する追加の工程を包含する、本発明(4)の方法である。
本発明(6)は、外因性抗体及び関心対象の抗体がヒト抗体又はヒト化抗体である、本発明(4)又は(5)のいずれかの方法である。
本発明(7)は、外因性抗体及び関心対象の抗体がIgG抗体である、本発明(4)〜(6)のいずれかの方法である。
本発明(8)は、実質的に本明細書に記載され、特に実施例を参照して記載される方法及び使用である。
本発明により、抗イディオタイプ抗体の産生方法が提供された。
特に、本発明は、
(a)外因性抗体についてトランスジェニックな非ヒト動物を作製する工程;
(b)該トランスジェニック非ヒト動物による関心対象の抗体に対する免疫反応を誘導する工程であって、該関心対象の抗体は該外因性抗体と同じ種特異的アイソタイプを有する工程;及び
(c)それによって該関心対象の抗体のイディオタイプ部分に対して向けられる抗体を産生する工程を包含する、
抗イディオタイプ抗体を産生する方法を提供する。
好ましくは、本方法はさらに、(d)抗イディオタイプ抗体を単離する追加の工程を包含する。抗体を単離する方法、特に、体液(例えば血液)から抗体を単離する方法は、当技術分野において公知である。より好ましくは、抗イディオタイプ抗体は精製される。適切な精製方法は当業者に公知である。
本明細書中で使用する「外因性抗体」という用語は、ソース生物(例えばヒト)に由来する定常領域を含む抗体を意味し、該抗体をコードするDNAがホスト生物(例えばマウス)に導入され、ホスト生物が該抗体を発現する。ソース生物及びホスト生物は、リンネ式分類体系による同種に属さない。種とは、現実に又は潜在的に交配する集団である。
外因性抗体は治療用抗体であり得る。好ましくは、外因性抗体はヒト抗体、ヒト化抗体、又は少なくともその定常領域がヒトであるキメラ抗体である。より好ましくは、外因性抗体は免疫グロブリンγ(IgG)である。さらに好ましくは、抗体はヒトアミロイドβペプチド又はその変異体に対する抗体である。最も好ましい抗体は抗Aβ IgG1である。抗Aβ IgG1は特許出願WO 03/070760に詳細に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
本明細書中で使用する「変異体」又は「抗体変異体」という用語は、構造的特徴、その調製方法、処方、又は保存条件が標準的な抗体と異なる抗体を意味する。構造変異体は、一次、二次、及び三次の蛋白質構造の変化(すなわち立体構造変化)、グリコシル化、及びアミノ酸の化学修飾を含み得る。さらなる構造変異体とは、すなわち、オルタナティブインタードメイン構造体(alternative inter-domain construct)(VL/VL、VH/VH)、二量体、オリゴマー、及びさらに大きな凝集体である。
本明細書中で使用する「関心対象の抗体」という用語は、その定常領域が外因性抗体の定常領域と同じアイソタイプに属する抗体を意味する。
抗体は「Y」型の分子であり、2つの重鎖及び2つの軽鎖からなる。重鎖及び軽鎖の両方に異なるタイプ及びサブタイプが存在する。各重鎖及び各軽鎖は定常領域及び可変領域を有し、定常領域の大きさは重鎖の方が大きい。
「定常領域」又は「C領域」という用語は、抗体分子の一領域であって、同じ種の生物により産生される特異性の異なる抗体とその対応する領域がほぼ同一である領域を意味する。定常部分は同じ抗体クラス(アイソタイプ)内では不変であり、特定の免疫グロブリンサブクラスのエフェクター機能を担う。Fcフラグメントは、酵素パパインによる抗体の切断により生じ、定常領域の大部分を含む抗体のフラグメントを意味する。
本明細書中で使用する「可変領域」という用語は、特定の抗原に結合する抗体分子の一領域を意味する。可変領域は、重鎖及び軽鎖の抗原結合部位の組み合わせにより構成される。可変領域は、異なるB細胞由来の免疫グロブリン間で異なるが、同じB細胞により産生される全ての免疫グロブリンで同一である。可変領域はB細胞の成熟過程で起こる遺伝子組換えプロセスを通じて体細胞的に産生される。任意の与えられた抗原に結合するのに必要な膨大な多様性を生み出すのはこの再配列プロセスであり、これによって免疫系は外来構造物及び病原性構造物によりもたらされる無数の抗原的負荷を認識及び中和することができる。つまり、抗体のプールは、同一のFc部分を共有する一方で異なるV領域の大量のレパートリーを有する免疫グロブリンにより構成される。
「抗原結合フラグメント」又は「Fabフラグメント」という用語は、可変性の抗原結合領域を含み、酵素パパインによる抗体の切断により生じる抗体フラグメントのことである。
本明細書中で使用する「イディオタイプ領域」という用語は、各抗体タイプに特有な抗体の可変領域の一部を意味する。
本明細書中で使用する「抗イディオタイプ抗体」という用語は、別の抗体のイディオタイプ領域に結合する抗体を意味する。
本明細書中で使用する「免疫反応」という用語は、抗原の存在に対する免疫系の反応を意味する。免疫反応はその抗原に結合できる抗体の産生を含む。
「アイソタイプ」という用語は、重鎖のクラス及びサブクラス、並びに軽鎖のタイプ及びサブタイプを特徴付ける抗原決定因子を意味する。異なるアイソタイプの抗体は異なる可変領域を有するだけでなく、その定常領域においても相違点を有する。従って、例えば、同じ種のIgG抗体及びIgM抗体は異なるアイソタイプに属する。ある種の抗体が別の種に導入されると、大部分がそのアイソタイプにおける免疫原性領域(アイソタイプ決定因子)に向けられる抗異種抗体の産生が優先的に誘導される。
本発明の好ましい態様は、
(a)ヒトIgG抗体についてトランスジェニックな非ヒト動物を作製する工程;
(b)該トランスジェニック動物において該治療用抗体に対する免疫反応を誘導する工程;及び
(c)該治療用抗体のイディオタイプ部分に特異的な抗イディオタイプ抗体を産生する工程を包含する、
ヒト治療用抗体に対する抗イディオタイプ抗体を産生する方法である。
好ましくは、本方法はさらに、(d)抗イディオタイプ抗体を単離する追加の工程を包含する。
トランスジェニック非ヒト動物は任意の非ヒト動物であり得る。好ましい非ヒト動物は哺乳類である。より好ましくは、非ヒト動物は、例えば、マウス又はラットなどの齧歯類である。トランスジェニック非ヒト動物を作製する方法は当技術分野で周知である。適切な方法は、Hogan B., Beddington R., Costantini F. & Lacy E. Manipulating the mouse embryo. A laboratory manual. 2nd Edition (1994). Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
外因性抗体を発現する非ヒトトランスジェニック動物の好ましい作製方法は、
(a)外因性抗体をコードするDNAを含む遺伝子構築物を非ヒト接合体又は非ヒト胚性幹細胞に導入する工程、
(b)該接合体又は胚性幹細胞からトランスジェニック非ヒト動物を発生させる工程、及びそれによって、
(c)該外因性抗体を発現するトランスジェニック非ヒト動物を作製する工程を包含する。
例えば、トランスジェニック動物は、上記DNA構築物を接合体の前核に注入し、これらの注入した接合体を偽妊娠させた代理母に移植し、その卵母細胞から発生する創始動物と野生型動物を交配させ、これらの交配から発生する子孫を合成DNA導入遺伝子構築物の存在について試験し、半接合動物を交配させ、任意にホモ接合トランスジェニック動物を作製することによって作製され得る。
あるいは、トランスジェニック動物は、上記の遺伝子構築物を胚性幹細胞に導入し、その後そのゲノムに導入遺伝子が存在する胚性幹細胞クローンを選択し、形質転換した胚性幹細胞クローンにおける導入遺伝子の存在を確認し、そのことが確認された組換え胚性幹細胞を野生型動物の胚盤胞に注入し、これらの注入した胚盤胞を偽妊娠させた代理母に移植し、この胚盤胞から発生するキメラ体を野生型動物と交配させ、これらの交配から発生する子孫を導入遺伝子の存在について試験し、半接合動物を交配させ、任意にホモ接合トランスジェニック動物を作製することによって作製され得る。
本発明において使用され得る非ヒトトランスジェニック動物はまた、上記方法のうちの一つにより作製される非ヒトトランスジェニック動物の子孫であり得る。該トランスジェニック動物と同じ表現型を保持する子孫は、該非ヒトトランスジェニック動物を交配させることによって獲得され得る。
接合体又は胚性幹細胞は任意の非ヒト動物由来であり得る。好ましくは、接合体又は胚性幹細胞は齧歯類由来である。より好ましくは、接合体又は胚性幹細胞はマウス由来である。
トランスジェニック動物を作製するための接合体又は胚性幹細胞は、C57BL/6J、CBA/、BALB/c、DBA/2、及びSV129由来の接合体又は胚性幹細胞を含むがこれらに限定されない(Seong, E et al (2004) Trends Genet. 20, 59-62; Wolfer, D.P. et al., Trends Neurosci. 25 (2002): 336-340)。
トランスジェニック非ヒト動物における抗体の発現は構成性又は誘導性であり得る。好ましくは、抗体の発現は構成性である。
抗体に対する動物の免疫反応の誘導は、例えば、抗原の皮下注入、静脈内注入、病巣内注入、筋内注入、若しくは腹腔内(i.p.)注入を含む方法によって、又は抗原の経口(p.o.)投与によって実施され得る。
トランスジェニック非ヒト動物の処置のために、関心対象の抗体はトランスジェニック非ヒト動物への投与に適した薬学的に許容できる坦体で希釈又は乳化され得る。坦体は液体坦体である。適切な坦体は当業者に周知の、例えば、生理食塩水溶液などである。好ましくは、坦体はRehydragel-HPAである。
産生した抗イディオタイプ抗体を単離する方法は当業者に周知である。好ましい方法は、(a)外因性抗体についてトランスジェニックな免疫した非ヒト動物から血液サンプルを採取する工程、(b)例えば凝固法により、血清を調製する工程、及び(c)例えば、アフィニティクロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、及び/又はサイズ排除クロマトグラフィなどのクロマトグラフィ法により、抗イディオタイプ抗体を分離精製する工程を包含する。
本明細書に記載される非ヒトトランスジェニック動物はまた、関心対象の抗体に対する抗イディオタイプモノクローナル抗体の産生のためにも使用され得る。モノクローナル抗体を産生する方法は当業者に周知である。そのような方法は、例えば、(a)外因性抗体についてトランスジェニックな非ヒト動物の脾細胞の単離、(b)骨髄腫細胞の調製、及び(c)該脾細胞と該骨髄腫細胞の融合を含む方法であり得る。このようにして作製されたハイブリドーマ細胞がモノクローナル抗イディオタイプ抗体を産生する。
外因性抗体を発現するトランスジェニック動物は、この特定の抗体に対して免疫寛容を獲得する。例えば、ヒト抗Aβ IgG1などの規定されたトランスジェニック抗体は、同じアイソタイプの全抗体のFc部分に対して寛容性を有するが、その他の抗体のV領域に対しては免疫反応を起こす。
本発明の方法は、治療用抗体を特異的に認識する抗体を産生するために使用され得る。このような抗イディオタイプ抗体は、薬物動態研究において、及び対応する治療用モノクローナル抗体で処置した個体における臨床的なヒト抗ヒト抗体(HAHA)反応の研究において有用である。
さらに、上記のトランスジェニックマウスで産生された抗イディオタイプ抗体は抗原決定因子を模倣し得、従って診断目的の(例えば、抗原の利用性が限定的な適用における)代理抗原として機能し得る。その適用としては、競合的免疫アッセイ又は直接的な血清学的アッセイがある。従来の抗原の代わりに「内部イメージ」の抗イディオタイプ抗体を使用する利点としては、産生が容易であること、その抗原が毒性であるか他の理由で有害である場合にも安全な使用ができること、精製が容易であること、標識付与法が確立していること、及び免疫反応性を失うことなく固体支持体に付着できることがある。
多くの自己免疫疾患は、自己抗体の出現により特徴付けられる。その自己抗体に保持されるイディオタイプが同定されれば、記載されるトランスジェニックマウスは、抗体媒介性及び自己抗体随伴性の自己免疫疾患の診断のための抗イディオタイプ抗体の産生に有用となり得る。重症筋無力症、橋本甲状腺炎、関節リウマチ、及び全身性エリテマトーデス等の疾患において特異的IDの発現の増加が実証されている(Isenberg DA, Williams W, Axford J, et al., "Comparison of Anti-DNA Antibody Idiotypes in Human Sera," J Autoimmunity, 3:393-414, 1990)。ヒト感染性疾患の診断のための代理抗原としての使用は、抗イディオタイプ抗体のさらに別の有用な適用である。
ここまで、本発明を総括的に記載してきたが、本発明は、添付図面と関連付けて具体的な実施例を参照することによってより理解されるであろう。ただしこれらは解説目的で本明細書中に含まれるのみであり、そうでないことが記載されない限り限定を意図しない。
本実施例において言及する市販の試薬は、そうでないことが示されない限り、製造元の指示に従って使用した。
実施例1:ヒト免疫グロブリンについてトランスジェニックなマウスの作製
Mab-11構築物の産生
ヒト抗体ペプチドに対する特異性を有するアイソタイプγ1の免疫グロブリン(Ig)重鎖(H)をコードするcDNA(配列番号1)及びアイソタイプκの軽鎖(L)をコードするcDNA(配列番号2)を使用した[Bardroff, M.e.a., Anti-amyloid beta antibodies and their use. EP 03001759 EP, 2003]。この抗Aβ IgG1抗体はMab-11とも称する。
これらのcDNAを表1のプライマーを用いるPCR反応により増幅した。5’プライマーはSalI(又は互換性のあるXhoI)部位を含み、かつ5’プライマーはpHSE3’ベクターへの定方向挿入(directed insertion)のためのBamHI(又は互換性のあるBglII)部位を含む[Pircher, H., et al., T cell tolerance to Mlsa encoded antigens in T cell receptor V beta 8.1 chain transgenic mice. Embo J, 1989.8(3): p.719-27.]。PCR増幅したcDNAはまず制限酵素SalI及びBamHIの両方で酵素切断し、次に個々にベクターpHSE3’の対応部位に挿入した。pHSE3’におけるIg cDNAの発現は、MHCクラスI遺伝子H-2kのマウスプロモーターにより駆動され、クローニング遺伝子の3’側に位置するマウスIgH遺伝子エンハンサーにより増強される[Pircher, H., et al., T cell tolerance to Mlsa encoded antigens in T cell receptor V beta 8.1 chain transgenic mice. Embo J, 1989.8(3): p.719-27.]。この発現ベクターは、トランスジェニックマウスのTリンパ球及びBリンパ球における対応する挿入遺伝子産物の高レベル産生を約束する([Pircher, H., et al., T cell tolerance to Mlsa encoded antigens in T cell receptor V beta 8.1 chain transgenic mice. Embo J, 1989. 8(3): p.719-27.]及び未公表の観察)。次に、(5’から3’の方向に)H-2kプロモーター、挿入したcDNA、ポリA及びスプライス部位、並びにIg H遺伝子エンハンサーエレメントを含む全発現カセットを、XhoIによる制限酵素切断によりベクターから切り出し、アガロースゲル精製を行い、受精マウスの卵母細胞へのマイクロインジェクションに十分な濃度を調製した(10mM Tris HCl/0.1mM EDTA、pH7中2μg/ml)。cDNAのコード能力は、抗Aβ Ig H遺伝子及び抗Aβ Ig L遺伝子をコードする全cDNAの配列決定により確認した(図2及び3参照)。
(表1)クローニングプライマーの配列
Figure 2008115180
抗Aβ IgG1トランスジェニックマウスの作製
C57BL/6雌ドナーから得た受精卵母細胞に、前節に記載したIgH遺伝子及びIgL遺伝子をコードする精製XhoIフラグメントの1:1混合物をマイクロインジェクションし、二重トランスジェニック動物を得た。特定のプライマーを用いて尾の生検材料から調製したゲノムDNAを増幅することによって、これらのマイクロインジェクションした胚由来の出生児を導入遺伝子の存在についてスクリーニングした。使用したプライマーを表2に示す。
(表2)導入遺伝子の検出のためのプライマー配列
Figure 2008115180
PCR反応を、尾の生検材料から得た1μl(約100ng)の総DNAを用いて実施した。PCR反応においては以下の条件を用いた:90°で1分、[94°で10秒、64°で30秒、72°で90秒]を30回、72°で7分。最後に、PCR増幅した約660bpのDNAフラグメントを、トランスジェニックIgH遺伝子及びIgL遺伝子について別々に、1.5%アガロースゲル中で可視化させた。
実施例2:トランスジェニックマウスの表現型の特徴付け
血清の分析
尾静脈穿刺により血液を採取した。室温で一晩、凝固させた。500×g、10分間の遠心分離により血清を分離し、さらに分析するまで-20°で凍結させた。
トランスジェニックマウスがヒト抗体を十分に発現するかどうかを測定するために、ELISA系を構築した。ポリクローナルヤギ抗ヒトκ鎖特異的抗体(Sigma K 3502)を用いてヒト抗体を捕捉した。ペルオキシダーゼに結合させたモノクローナルマウス抗ヒトγ鎖特異的抗体(POD、Sigma A 0170)によって検出を行った。図4に示されるように、トランスジェニックマウスはヒト免疫グロブリンを十分に発現する。
関係の近い抗原に対する反応を、ヒトIgG1抗体HUMIRA(Abbott)による免疫により評価した。10μgのHUMIRAを200μlのRehydragel HPA(Reheis)で乳化させた。動物を腹腔内(i.p.)免疫し(0日目)、尾静脈穿刺により血液を抜き取り(7、12、21、及び35日目)、血清を調製し、そして捕捉のためにHUMIRAをMaxiSorpプレート(Nunc)にコーティングして使用し、抗マウスIgG(BD Pharmigen)により抗HUMIRA抗体をの検出するELISAにより抗HUMIRA価を評価した。図11に示されるように、野生型マウス及びトランスジェニックマウスの両方が、関係の近いヒトIgG1抗体HUMIRAに対する反応を惹起した。
実施例3:Mab-11(抗Aβ IgG1とも称する)の産生、精製、及び特徴付け
Mab-11は、無血清条件下、実施例1で概説した導入遺伝子と同配列のIgG1をコードするcDNAをトランスフェクトしたチャイニーズハムスター卵巣細胞から産生された。
発酵上清からのMab-11の単離及び精製
全ての手順は、強化ガラスのみを用いて内毒素不在条件下で行い、カラムを含む全ての備品の衛生化は、0.5M NaOH及び全緩衝液の滅菌濾過(0.22μm)により行った。新鮮なゲル物質のみを用いた。
第一精製工程として、MabSelectゲル(Amersham)を用いてプロテインAアフィニティクロマトグラフィを行った。準備作業の後、カラムを25mM Tris/HCl;25mM NaCl、5mM EDTA、pH7.1で平衡化し、CHO細胞培養物の濾過上清をこのゲルに充填した。プロテインAに結合した抗体は、100mM HAc、pH2.9で溶出した。ウィルスの不活性化のために、HAcで溶出液のpHを3.6以下に調節し、次いで室温で15分間インキュベートし、次いで1M TrisでpHを4.0に調節した。第二精製工程として、マトリクスとしてSP-Toyopearl 650M(Tosoh)を用いるイオン交換クロマトグラフィ(陽イオン交換クロマトグラフィ)を行った。準備作業の後、第一工程の溶出画分をこのゲルに充填し、緩衝液A(50mM HAc、pH5.0)で平衡化し、次いで0〜100%の緩衝液B(50mM HAc、1M NaCl、pH5.0)による勾配溶出を行った。溶出した蛋白質画分を回収し、限外濾過により濃縮し、pHを7.5に調節し、そしてIEX及びSEC HPLCにより分析した。第三精製工程として、固定相としてQ-セファロースFFゲル(Biorad)を、移動相として25mM Tris/HCl、80mM酢酸ナトリウム、pH7.5を用いるサイズ排除クロマトグラフィ(フロースルー陰イオン交換クロマトグラフィ)を行った。溶出液をUVシグナルに従い分画した。緩衝液から20mMヒスチジン/140mM NaCl、pH5.5を含有するMab-11プラセボ(Mab-11を含まない緩衝液)への交換及び濃度の調節を、10kDaメンブレンを用いてAmicon撹拌式セル(Amicon)により行った。最後にその溶液を0.22μm Millex-GV滅菌フィルタ(Millipore)を通じて濾過し、-80℃でアリコートとして保存した。
抗Aβ IgG1(Mab-11)の特徴付け
精製したMab-11 IgG1蛋白質の完全性及び不均一性をSDS-PAGE、サイズ排除クロマトグラフィ及びイオン交換クロマトグラフィにより評価し、一次配列の確認を以下に記載する還元型及びカルボキシメチル化Mab-11抗体のLC/MS分析により行った。
サイズ排除クロマトグラフィ
精製したMab-11のサンプルを、Jasco PU-980 HPLCシステムを用いるサイズ排除クロマトグラフィにより分析した。サンプルを、移動相として0.2M K2HPO4、0.25M KCl、pH7.0を用いるTSK-Gel G3000SWXL、7.8×300 mm、5μmカラム(Tosoh Biosciences)によるクロマトグラフィに供した。流速は0.5ml/分に設定した。Merck-Hitachi D-2500記録システムに接続されたJasco UV-975検出器を用いて、220nmでの吸光度をモニタした。安定な基準が得られるまでこのカラムを平衡化した。ゲル濾過標準(BioRad, 151-1901, 670kDウシサイログロブリン、158kDウシIgG、44kD OVA、17kDウマミオグロビン、1.35kDビタミンB12含有)、Mab-11プラセボ(負の対照;Mab-11を含まない緩衝液)、Mab-11サンプルに相当する一連のものを注入した。注入量は、およそサンプル50μgに相当する量であった。典型的なサイズ排除クロマトグラムを図5に示す。155〜160kDaに相当する保持時間に対称的なピークが見られた。凝集物又はフラグメントは検出されなかった。
イオン交換クロマトグラフィ
精製したMab-11のサンプルを、Jasco PU-980 HPLCシステムを用いるイオン交換クロマトグラフィにより分析した。サンプルは、20分間の0% Bから52% Bへの勾配(移動相A:50mM マロン酸/マロネート水溶液、pH5.3;移動相B:移動相A中1M酢酸ナトリウム、pH5.3)を用いるMono S 5/50 GLカラム(Amersham Biosciences)によるクロマトグラフィに供した。流速は1ml/分に設定した。Merck-Hitachi D-2500記録システムに接続されたJasco UV-975検出器を用いて、280nmでの吸光度をモニタした。安定な基準が得られるまでこのカラムを移動相Aで平衡化した。Mab-11プラセボ及びMab-11サンプルに相当する系列を注入した。Mab-11の注入量はおよそ50μgに相当した。典型的なイオン交換クロマトグラ厶(IEC)を図6に示す。結果:Map-11サンプルの95%超が単一ピークとして溶出し、それより長い保持時間に分解されない段部が存在した。約5%はそれより短い保持時間で溶出する。
ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動
精製したMab-11及び還元型/カルボキシメチル化Mab-11(RA Mab-11の調製については以下参照)のサンプルをXcell Mini-Cell IIゲルシステム(Invitrogen)を用いるSDS-PAGEにより分析した。希釈前のサンプルを還元又は非還元サンプル緩衝液と混合し、濃度を2〜8μg/20μLとした。還元サンプル緩衝液は、製造元の助言に従い、NuPAGE LDSサンプル緩衝液(Invitrogen)とNuPAGE還元剤(Invitrogen)を混合することにより調製した。還元サンプル緩衝液中のサンプルを70℃で10分間インキュベートした。サンプル及び標準をNuPAGE 4〜12% Bis-Trisゲル、10ウェルコーム、1.0mm厚(Invitrogen、#NP0301BOX)に充填した。標準として、200〜2.5kDaの範囲を網羅するMark 12TM分子量マーカ(Invitrogen、#LC5677)を用いた。ゲルは、NuPAGE MOPS SDS泳動緩衝液(Invitrogen)を用い、200Vで1時間泳動させた。ゲルをStainEaseゲル染色トレイ(Invitrogen)を用いて一晩染色し、スキャンし、そしてデンシトメトリーにより分析した。蛋白質の濃度は、同じゲルを泳動させた参照標準から得た標準サンプル曲線を参照して算出した。結果:非還元条件下でのSDS-PAGE:完全なMab-11について、予想された分子量のIgGに相当するバンドあり;RA Mab-11について、IgG1 H鎖及びIgG1 L鎖の分子量に相当する2つのバンドあり。完全還元型又は部分還元型Mab-11は検出されなかった。還元条件下でのSDS-PAGE:完全Mab-11及びRA Mab-11の両方について、IgG1 H鎖及びIgG1 L鎖の分子量に相当する2つのバンドあり。凝集物又はフラグメントは検出されなかった(図7参照)。
質量分析法
一次配列の確認はLC/MS分析により行った。還元型及びカルボキシメチル化Mab-11抗体をLundell及びSchreitmuller(Sample preparation for peptide mapping--A pharmaceutical quality-control perspective. Anal Biochem. 1999 Jan 1;266(1):31-47)に記載されるように調製し、勾配系(A:水0.1%蟻酸、B:アセトニトリル0.1%蟻酸)を用いるAgilent Poroshell C8逆相(0.5×75mm)カラムによる分析用RP-HPLC分析に供した。次に、クロマトグラフィの流れを、ロックスプレー(lockspray)質量補正法を採用するポジティブモードのESI-Q-TOF質量分析器(Micromass/Waters Q-TOF Ultima, Manchester, UK)のESIイオン源に供した。蛋白質のスペクトルをMasslynx MaxEnt1モジュールで解析した。
RA-Mab-11のLC/MS分析を図8に示し、観察及び算出した質量を表3に示す。
(表3)RA-Mab-11のLC/MS分析、観察した質量の割当(図8参照)
Figure 2008115180
L鎖=軽鎖、H鎖=重鎖、G0、G1、G2=H鎖上のグリコシル化;Pyro-Glu=ピログルタメートを含むアミノ酸配列、-Lys=H鎖のアミノ酸配列において1つのリジンが欠落している。
検出された質量は、Mab-11一次配列を有する抗体の還元型/カルボキシメチル化H鎖及びL鎖について理論的に予想された質量と一致し、1つのpyro-Gluを含み、1つのLysがH鎖から欠落している。H鎖は、主にG0及びG1がグルコシル化されており、G2は微量程度のみ見られた。
実施例4:寛容性の免疫学的評価
トランスジェニックマウス及び野生型同腹仔対照マウス(各々N=5)を、200μlのRehydragel-HPA(Reheis)で乳化した10μgの組換えMab-11でi.p.免疫した。尾静脈穿刺により、7、12、21、及び35日目の血液を得た。血清を上記のように凝固法により調製し、血清の抗Mab-11価をELISAで測定した。室温で一晩、0.2μg/ウェルのMab-11でMaxiSorpプレート(Nunc)をコーティングした。洗浄後、PBS/0.1%(v/v) Tween-20/0.1%(w/v) BSAでウェルをブロッキングし、1:100希釈した血清を添加し、オービタルシェーカーで振盪しながら1時間インキュベートした。抗体の結合は、製造元の助言に従い1:100希釈したAPK標識抗マウスIgG(BD Pharmingen)により検出した。
ELISA分析は野生型動物におけるMab-11に対する強い免疫反応の発生を明らかにしたが、hIgG1トランスジェニック動物は組換えMab-11に対する免疫反応を惹起できなかった(図10)。従って、Mab-11トランスジェニックマウスは、外から供給される抗体の形態のそれらの導入遺伝子産物に対して寛容である。
実施例5:Humira、Synagis、及びMab-11のFabフラグメント及びFcフラグメントの生成及び単離
モノクローナル抗体Humira(登録商標)、Synagis(登録商標)(パリビズマブ、ABBOTT AG、#2422260A)、及びMab-11をパパインで消化し、生じたFabフラグメント及びFcフラグメントをイオン交換クロマトグラフィ(IEC)により単離した。簡単に言うと、セファデックスTM G-25M PD10カラム(Amersham Biosience)を用いて抗体の処方緩衝液を0.1M Tris、4mM EDTA、1mMシステイン、pH7.4に交換し、3〜5mg/mlの濃度まで希釈した。パパイン(Roche Diagnostics)を最終濃度を0.01mg/mLとなるよう添加した。37℃で2時間インキュベートした後、緩衝液を、Amicon Ultra 遠心式フィルターデバイス(Millipore)を用いた10kDa限外濾過により20mM L-ヒスチジン、pH5.5に交換した。Fabフラグメント及びFcフラグメントは、それぞれ、PL-SCX 1000A、8μm、4.6×150mm(Polymer Labs)又はMono STM 5/50 GLカラム(Amersham Biosciences)及び50mM 3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)(Applichem)、pH6.7から50mM MOPS中1M酢酸ナトリウム、pH7.0の勾配;又は10mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、pH6.0から10mM MES、0.2M NaCl、pH6.0の勾配を用いる分取IECにより単離した。
蛋白質を含有する画分を回収し、10kDa限外濾過(Amicon Ultra、上記参照)により緩衝液を20mM L-ヒスチジン、140mM NaCl、0.01% Tween、pH5.5に交換した。
濃縮した画分を、実施例3に記載される非還元条件下のSDS-PAGEにより特徴付けた。その結果を図9に示す。
実施例6:抗イディオタイプ抗体の産生
Mab-11と同じアイソタイプのイディオタイプ抗体の例としてHumira(登録商標)(アダリムマブ、ABBOTT AG、#04H-640-E694-1)を使用した。Humiraは、関節リウマチの処置のためのTNF特異的治療用モノクローナルヒト抗体である。Mab-11及びHumiraは共にIgG1抗体であり、それらのFc部分及び定常Fab領域の一次配列は同一又はほぼ同一である。10μgのHUMIRAを200μlのRehydragel HPA(Reheis)で乳化した。動物を腹腔内(i.p.)免疫し(0日目)、尾静脈穿刺により血液を抜き取り(7、12、及び21日目)、血清を調製し、抗HUMIRA価をELISAにより評価した。HUMIRAは、MaxiSorpプレート(Nunc)にコーティングすることにより捕捉に使用され、検出は上記の通り抗マウスIgG(BD Pharmigen)により行った。図11に示されるように、野生型マウス(A)及びトランスジェニックマウス(B)の両方が、HUMIRAに対する強い反応を示した。
実施例7:イディオタイプ抗体に対する抗Humira血清の交差反応性の評価
Humiraで免疫したWTマウス及びTGマウスの血清中の抗Humira抗体の特異性を評価するために、それらのFc部分及び定常Fab領域の一次配列が同一又はほぼ同一であるイディオタイプヒトIgG1の例としてHumira、Mab-11、及びSynagisを用いてELISAを行った。
Synagis(登録商標)(パリビズマブ、 ABBOTT AG、 #2422260A)は、RSV感染の処置に使用されるモノクローナルヒト化IgG1である。
Humira、Mab-11、及びSynagisのFabフラグメント及びFcフラグメントは実施例5に記載されるように調製及び単離し、室温で一晩、0.2μg/ウェルでMaxiSorpプレート(Nunc)をコーティングした。洗浄後、ウェルをPBS/0.1%(v/v) Tween-20/0.1%(w/v) BSAでブロッキングした。Humiraで免疫した5匹のトランスジェニックマウス及び5匹の野生型マウスの血清の1:100希釈プールを添加し、オービタルシェーカーで振盪しながら1時間インキュベートした。
抗体の結合は、製造元の助言に従い1:100希釈したAPK標識抗マウスIgG(BD Pharmingen)により検出した。
ELISA分析は、試験抗原に対する血清抗原の結合における大きな違いを明らかにした。
野生型動物については、試験した全抗体のFabフラグメント及びFcフラグメントのいずれに対しても強い免疫反応の発生が観察された。つまり、野生型動物において誘起された免疫反応はヒトIgG1の定常部分に対して優先的に向けられるということであり、このことから、試験した全抗体のFab部分及びFc部分のいずれにも強い交差認識が観察されたことを説明することができる(図12)。
対照的に、Humiraで免疫したMab-11トランスジェニックマウスについて、HumiraのFab部分に対する強い抗体反応が検出されたが、HumiraのFc部分及びFab部分、並びに試験した他の全てのイディオタイプ抗体のFc部分に対する結合は、バックグラウンドレベルであった(図13)。
従って、ヒト抗体Mab-11についてトランスジェニックな動物は、免疫に使用されたイディオタイプ抗体の可変性のイディオタイプ特異的部分に対して優先的に免疫反応を惹起すると結論付けることができる。
本明細書中に示されたIgG1トランスジェニックマウスは、導入遺伝子によって発現されるIgG1抗体に対しては寛容だが、同じIgG1アイソタイプの異なるヒト抗体を用いて抗原投与を行った場合に強い免疫反応を生じることが示された。誘起された免疫反応は、専ら抗原投与に使用したヒトIgG1分子のV領域に向けられ、Fc領域は完全に無視される。このヒト抗Aβ IgG1トランスジェニックマウスの特性により、当該マウスは抗イディオタイプモノクローナル抗体の迅速かつ効率的な産生のための非常に貴重なツールとなる。
本方法の概略図を示す。例えば、モノクローナルヒトIgG抗体で免疫した野生型マウスは、大部分がこのモノクローナル抗体のアイソタイプ部分に向けられる抗体を産生する。これらの抗体は全てのヒトIgGを交差認識する。モノクローナルヒトIgG抗体についてトランスジェニックなマウスを例えばモノクローナルヒトIgG抗体で免疫すると、主に免疫したIgGの可変領域(抗体のイディオタイプ部分)に向けられる抗体を産生し、従ってその他のヒトIgGとの交差認識性が低い。(1)=免疫;(2)=免疫反応;(A)=モノクローナルヒトIgG抗体;(B)=野生型マウス、(C)=主にモノクローナル抗体(A)のアイソタイプ部分に向けられる産生された抗体、(C1)=産生された抗体(C)の認識部位はモノクローナルヒト抗体(A)のアイソタイプ部分に位置する;(D)=モノクローナルヒトIgG抗体(A)についてトランスジェニックなマウス;(E)=主にモノクローナル抗体(A)のイディオタイプ部分に向けられる産生された抗体、(E1)=産生された抗体(E)の認識部位はモノクローナルヒト抗体(A)のイディオタイプ部分に位置する。 トランスジェニック発現用発現ベクターpHSE3’にクローニングされた、ヒトAβに特異的なヒトIgγ1遺伝子のコード配列を示す。PRC増幅に使用したプライマーの位置及び名称を対応する配列の上又は下に表示する。リーダー配列は斜体で示す。停止コドンは太字で示す。 トランスジェニック発現用発現ベクターpHSE3’にクローニングされた、ヒトAβに特異的なヒトIgκ遺伝子のコード配列を示す。PRC増幅に使用したプライマーの位置及び名称を対応する配列の上又は下に表示する。リーダー配列は斜体で示す。停止コドンは太字で示す。 抗Aβ IgG1(=Mab-11)についてトランスジェニックなマウスの血清分析のグラフを示す。ヒトκ軽鎖及びヒトγ重鎖に特異的なサンドイッチELISAを行った。MS:マウス血清、hIgG1:γ1アイソタイプの組換えヒト免疫グロブリン、F 2F:創始マウス2F、Neg:PCR陰性同腹仔対照、Tg 5M+:トランスジェニックマウス5M+、Tg 7M+:トランスジェニックマウス7M+。トランスジェニックマウスは、同じ分子内に両方の抗体鎖を発現した。 (A)分子量標準、(B)Mab-11プラセボ、及び(C)Mab-11のサイズ排除クロマトグラ厶を示す。凝集物又はフラグメントは検出されなかった。設備、実施条件、及び手順は実施例3に記載する。 Mab-11プラセボ(左)及びMab-11(右)のイオン交換クロマトグラ厶を示す。設備、実施条件、及び手順は実施例3に記載する。 非還元条件(A)下及び還元条件(B)下で行った2〜4%Bis-Trisゲルによる、Mab-11及び還元型/カルボキシメチル化Mab-11(RA Mab-11)のSDS-PAGE分析を示す。染色はクマシーブリリアントブルー染色を用いて行った。M:マーカー、レーン1〜3:Mab-11、レーン4〜7:RA-Mab-11。 還元型/アルキル化Mab-11(RA Mab-11)のLC/MS分析を示す。(A)HPLCクロマトグラム(C8 RP-HPLC、UVトレース、214nm)、ピークは軽鎖及び重鎖を表す;(B)解析された質量スペクトル;(C)(B)における高分子量(HMW)質量ピークの拡大図。検出された質量は表3に示す。 実施例5に記載されるように調製及び単離した全長抗体、精製Fabフラグメント、及び精製FcフラグメントのSDS-PAGEを示す。左側の数字は分子量マーカーのバンドの位置(kDa)を表す。染色はクマシーブリリアントブルー染色を用いて行った。SDS-PAGEは非還元条件下で行った。M:分子量マーカー、1:Humira、全長抗体、2:Humira、Fabフラグメント、3:Humira、Fcフラグメント、4:Synagis、全長抗体、5:Synagis、Fabフラグメント、6:Synagis、Fcフラグメント、7:Mab-11、全長抗体、8:Mab-11、Fabフラグメント、9:Mab-11、Fcフラグメント。抗体及びフラグメントはMES緩衝液で希釈し、充填量は各サンプルにつき2μgであった。 0日目にMab-11で免疫した野生型(WT)動物及びMab-11トランスジェニック(TG)動物の血清における、7、12、21、及び35日目の抗Mab-11反応のELISAのグラフを示す。このグラフは、それぞれ5匹のWTマウス及び5匹のTGマウスの免疫の平均値を示す。結果は免疫前血清のO.D.の倍数で表す。 (A)野生型マウス及び(B)Mab-11トランスジェニックマウスの血清中の抗Humira反応のELISAを、免疫前血清のO.D.の倍数で表すグラフを示す。5匹の野生型(WT)マウス及び5匹のトランスジェニック(TG)マウスをHumiraで0日目に免疫し、7、12、及び21日目に抗Humira抗体価を評価した。 Humiraで免疫した21日後の5匹の野生型マウスの血清プールにおけるHumira、Synagis、及びMab-11のFabフラグメント及びFcフラグメントに対する血清反応性のELISAのグラフを示す。結合は対照(野生型免疫前)血清のO.D.の倍数で表す。 Humiraで免疫した21日後の5匹のMab-11トランスジェニックマウスの血清プールにおけるHumira、Synagis、及びMab-11のFabフラグメント及びFcフラグメントに対する血清反応性のELISAのグラフを示す。結合は対照(野生型免疫前)血清のO.D.の倍数で表す。

Claims (7)

  1. 非ヒト動物が外因性抗体についてトランスジェニックであり、関心対象の抗体が該外因性抗体と同じアイソタイプを有する、該関心対象の抗体に対する抗イディオタイプ抗体を産生するためのトランスジェニック非ヒト動物の使用。
  2. 外因性抗体及び関心対象の抗体がヒト抗体又はヒト化抗体である、請求項1記載の使用。
  3. 外因性抗体及び関心対象の抗体がIgG抗体である、請求項1又は2のいずれか一項記載の使用。
  4. (a)外因性抗体についてトランスジェニックな非ヒト動物を作製する工程;
    (b)該トランスジェニック非ヒト動物において関心対象の抗体に対する免疫反応を誘導する工程であって、それによって該関心対象の抗体が該外因性抗体と同じアイソタイプを有する工程;及び
    (c)該関心対象の抗体のイディオタイプ部分に対して向けられる抗体を産生する工程を包含する、
    関心対象の抗体に対する抗イディオタイプ抗体を産生する方法。
  5. さらに、(d)抗イディオタイプ抗体を単離する追加の工程を包含する、請求項4記載の方法。
  6. 外因性抗体及び関心対象の抗体がヒト抗体又はヒト化抗体である、請求項4又は5のいずれか一項記載の方法。
  7. 外因性抗体及び関心対象の抗体がIgG抗体である、請求項4〜6のいずれか一項記載の方法。
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