以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施の形態において、型締装置については、型閉じを行う際の可動プラテンの移動方向を前方とし、型開きを行う際の可動プラテンの移動方向を後方とし、射出装置については、射出を行う際のスクリューの移動方向を前方とし、計量を行う際のスクリューの移動方向を後方として説明する。
図1は本発明の実施の形態における金型装置及び型締装置の型閉じ時の状態を示す図、図2は本発明の実施の形態における金型装置及び型締装置の型開き時の状態を示す図である。
本実施の形態における型締装置10は、主に、固定プラテン11、可動プラテン12、ロッド39、タイバー14、及び型開閉駆動部100等より構成される。型締装置10は、射出成形機のフレームFr上に施設されてレールを構成する2本のガイドGd(図においては、2本のガイドGdのうちの1本だけを示す。)によって支持されると共に案内される。
固定プラテン11は、金型装置19を構成する一方の金型(固定金型15)を支持する部材であり、ガイドGd上に載置され、フレームFr及びガイドGdに対して固定されている。可動プラテン12は、金型装置19を構成する他方の金型(可動金型16)を支持する部材であり、タイバー14に沿って固定プラテン11と対向させて型開閉方向に進退自在に配設される。したがって、前記可動プラテン12におけるタイバー14と対応する箇所にタイバー14を貫通させるための図示されないガイド穴が形成される。可動プラテン12の進退に伴って、固定金型15と可動金型16とが接離させられ、型閉じ、型締め及び型開きが行われる。なお、型締めが行われるのに伴って、固定金型15と可動金型16との間に複数の図示されないキャビティ空間が形成され、射出装置17の射出ノズル18から射出された成形材料としての図示されない樹脂が前記各キャビティ空間に充墳される。
型開閉駆動部100は、型開閉用の駆動力を発生させると共に、型締力を発生させるための機構を有する。したがって、型開閉駆動部100によって発生させられる力によって可動プラテン12は進退する。図中、型開閉駆動部100は、単なる矩形によって表現されているが、その詳細な構成については複数の実施の形態に分けて説明する。したがって、ここでは、各実施の形態において共通な点についてのみ説明する。
固定プラテン11と型開閉駆動部100との間には4本の連結部材としてのタイバー14(図においては、4本のタイバー14のうちの2本だけを示す。)が架設される。タイバー14の前端部には図示されない第1のねじ部が形成され、タイバー14は、当該第1のねじ部とナットn1とを螺合させることによって固定プラテン11に固定される。また、タイバー14の後方の所定の部分又は後端部は、型開閉駆動部100を構成するいずれかの部材に固定される。これによって、型開閉駆動部100と固定プラテン11とが連結される。
また、可動プラテン12と型開閉駆動部100を構成するいずれかの部材とはロッド39によって連結されている。すなわち、型開閉駆動部100によって発生される力は、ロッド39によって可動プラテン12に伝達され、その力によって、可動プラテン12は前後方向に進退すると共に、型締力を発生させる。
以下、実施の形態ごとに型開閉駆動部100の詳細な構成を説明すると共に、各型開閉駆動部100に基づく型締装置10の動作について説明する。
図3は、第一の実施の形態における型開閉駆動部の構成例を示す図である。図3中、図1又は図2と同一部分には同一符号を付しその説明は省略する。図3において、型開閉駆動部100aは、リヤプラテン13、吸着板22a、及び吸着板22b等より構成される。リヤプラテン13の前端面及び後端面と、吸着板22aの後端面と、吸着板22bの前端面とのそれぞれは、可動プラテン12の移動の方向に対して直角に交わり、かつ互いに平行となるように形成されている。
リヤプラテン13とフレームFrとの間には、直動機構としてのローラ機構28aが設けられている。ローラ機構28aが設けられることにより、リヤプラテン13は前後方向に移動可能に配設される。ここで、ローラ機構28aの代わりにリニアガイド機構を設けてもよい。また、第一の実施の形態において、ロッド39は、リヤプラテン13に連結及び固定される。吸着板22aには、ロッド39を貫通させるための穴41が形成され、穴41の前端部の開口に臨ませて、ロッド39を摺動自在に支持する非図示のブッシュ等の軸受部材が配設される。したがって、リヤプラテン13が前後方向に摺動することにより、可動プラテン12が進退し、型閉じ、型締め、又は型開きが行われる。
第一の実施の形態において、可動プラテン12を摺動させるための駆動手段は、二つの電磁石ユニットより構成される。第一の電磁石ユニット37aは、リヤプラテン13を前進させ、型閉じ及び型締めを行うためのものである。電磁石ユニット37aは、リヤプラテン13の前端面側に形成された電磁石49a及び、吸着板22aの後端面側に形成された吸着部51aより構成される。吸着部51aは、吸着板22aの後端面の所定の部分、本実施の形態においては、吸着板22aにおいてロッド39を包囲し、かつ、電磁石49aと対向する部分に形成される。また、リヤプラテン13の前端面の所定の部分、本実施の形態においては、ロッド39よりわずかに上方及び下方に、矩形の断面形状を有するコイル配設部としての二つの溝45aが互いに平行に形成され、各溝45a間に矩形の形状を有するコア46a、及び他の部分にヨーク47aが形成される。そして、コア46aにコイル48aが巻装される。
なお、コア46a及びヨーク47a、鋳物の一体構造で構成されるが、強磁性体から成る薄板を積層することによって形成され、電磁積層鋼板を構成してもよい。
本実施の形態においては、リヤプラテン13に電磁石49aが、吸着板22aに吸着部51aが形成されるが、リヤプラテン13側に吸着部51aを、吸着板22aに電磁石49aを形成するようにしてもよい。この場合、固定された部材にコイル48aが配設されるので、配線の信頼性を向上させることができる。
ここで、可動プラテン12とリヤプラテン13との間には、図示されない型厚調整機構が備えられている。この型厚調整機構を駆動し、可動プラテン12とリヤプラテン13との間の距離を調整することで、金型の大きさが変わっても、吸着板22aと吸着板22bとの間の距離を変更する必要はない。したがって、金型のサイズが変わっても、電磁力を発生する駆動部は変化しないため、安定した電磁力を発生させることができる。
電磁石ユニット37aにおいて、コイル48aに電流が供給されると、電磁石49aが駆動し、電磁石49aと吸着部51aとの間で吸着力が発生する。図3において吸着板22aはフレームFrに固定されている。したがって、その吸着力によって、リヤプラテン13は前進する。更に、ロッド39は、リヤプラテン13が前進するのに伴って可動プラテン12を前進させる。その結果、型閉じ及び型締めが行われる。
なお、第一の実施の形態においてタイバー14の後端は、吸着板22aに連結及び固定されている。
一方、第二の電磁石ユニット37bは、リヤプラテン13を後退させ、型開きを行うためのものである。電磁石ユニット37bは、リヤプラテン13の後端面側に形成された電磁石49b及び、吸着板22bの前端面側に形成された吸着部51bより構成される。吸着部51bは、吸着板22bの後端面の所定の部分、本実施の形態においては、電磁石49bと対向する部分に形成される。また、リヤプラテン13の後端面の所定の部分、本実施の形態においては、垂直方向において溝45aと同じ位置(同じ高さ)に矩形の断面形状を有するコイル配設部としての二つの溝45bが互いに平行に形成され、各溝45b間に矩形の形状を有するコア46b、及び他の部分にヨーク47bが形成される。そして、コア46bにコイル48bが巻装される。
なお、コア46b及びヨーク47b、鋳物の一体構造で構成されるが、強磁性体から成る薄板を積層することによって形成され、電磁積層鋼板を構成してもよい。
本実施の形態においては、リヤプラテン13に電磁石49bが、吸着板22bに吸着部51bが形成されるが、リヤプラテン13側に吸着部51bを、吸着板22bに電磁石49bを形成するようにしてもよい。この場合、固定された部材にコイル48aが配設されるので、配線の信頼性を向上させることができる。
電磁石ユニット37bにおいて、コイル48bに電流を供給されると、電磁石49bが駆動し、電磁石49bと吸着部51bとの間で吸着力が発生する。図3において、吸着板22bは、吸着板支持部材221bを介してフレームFrに固定されている。したがって、その吸着力によって、リヤプラテン13は後退する。ロッド39は、リヤプラテン13が後退するのに伴って可動プラテン12を後退させる。その結果、型開きが行われる。なお、型開限の位置は、電磁石49aの磁力(吸着力)が吸着部51aに及ぶ範囲とされる。すなわち、型開きの完了時において、ギャップδの値は、電磁石49aの磁力(吸着力)によってリヤプラテン13が前進可能な範囲とされる。
つまり、
Fd37a:電磁石ユニット37aで発生させる吸引力
Fm1:型締装置の可動部を動かすのに必要な力(機械摩擦も含む)
Fm2:搭載可能な最大金型を動かすのに必要な力
とした場合、
(Fm1+Fm2)<Fd37a
が満たされる範囲内で、型開限の位置が設定される。
同様に、電磁石ユニット37aに対する電磁石ユニット37bの位置、つまり二つの対向する電磁石ユニット37a、37b間の距離は、金型装置19を型閉状態から電磁石ユニット37bで引くことができる距離、つまり、
Fd37b:電磁石ユニット37bで発生させる吸引力
Fm1:型締装置の可動部を動かすのに必要な力(機械摩擦も含む)
Fm2:搭載可能な最大金型を動かすのに必要な力
Fm3:キャビティ内の成形品による吸着力、金型の摩擦力等
とした場合、
(Fm1+Fm2+Fm3)<Fd37b
が満たされる範囲内で設定される。
したがって、上述の関係を考慮して、電磁石ユニット37a、37bに発生される吸着力、及びそれぞれの間隔が決定される。
以下、第一の実施の形態の型締装置10の動作について説明する。
型締装置10において、非図示の制御部の型開閉処理手段が、型開閉処理の制御を行う。閉じ時及び型締め時に、型開閉処理手段は、コイル48aに電流を供給する。それによって電磁石49aが駆動され、吸着部51aが電磁石49aの吸着力によって吸着される。その結果、リヤプラテン13及びロッド39を介して可動プラテン12が前進させられ、可動金型16が固定金型15に当接させられる。このとき、リヤプラテン13と吸着板22aとの間、すなわち、電磁石49aと吸着部51aとの間には、ギャップδが形成される。なお、型閉じに必要とされる力は、型締力と比較されて十分に小さくされる。
引き続き、吸着部51aと電磁石49aとの吸着力によって、型締めが行われる。なお、本実施の形態では、型締め開始時等、型締力を変化させる際に、制御部は、当該変化によって得るべき目標となる型締力、すなわち、定常状態で目標とする型締力型締力(以下、かかる型締力を「定常型締力」という。)を発生させるために必要な定常的な電流(以下、かかる電流を「定格電流」という。)の値をコイル48aに供給するように制御する。
また、型締力は図示されない荷重検出器によって検出され、検出された型締力は前記制御部に送られ、該制御部において、型締力が設定値になるようにコイル48aに供給される電流が調整され、フィードバック制御が行われる。この間、射出装置17において溶融させられた樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19の各キャビティ空間に充墳される。なお、前記荷重検出器として、ロッド39上に配設されたロードセル、タイバー14の伸び量を検出するセンサ等を使用することができる。
続いて、各キャビティ空間内の樹脂が冷却されて固化すると、型開閉処理手段は、型開き時に、コイル48aへの電流の供給を停止する一方でコイル48bへの電流の供給を開始する。それによって電磁石49bが駆動され、吸着部51bが電磁石49bの吸着力によって吸着される。その結果、リヤプラテン13及びロッド39を介して可動プラテン12及び可動金型16が後退させられ、型開きが行われる。
この場合、型閉じ時及び型開き時におけるコイル48a、コイル48bへの電流は図示されない可動プラテン12の位置検出器の検出値に基づいて制御される。
なお、本実施の形態においては、コア46a、46b及びヨーク47a、47bは、鋳物の一体構造で構成されるが、強磁性体から成る薄板を積層することによって形成され、電磁積層鋼板を構成してもよい。
上述したように、第一の実施の形態における型締装置10によれば、型閉じ動作と型締動作とを一つの電磁石ユニット37aによって行う。また、型開き動作は電磁石ユニット37bによって行う。ここで、電磁石ユニット37aの吸着力と電磁石ユニット37bによる吸着力とはロッド39と同軸方向又はほぼ同軸方向(略同軸方向)に働く。したがって、型開閉動作及び型締め動作を通して同軸方向の力によって当該動作を駆動することができ、型開閉動作及び型締め動作の駆動系を単純化させることができる。
次に、第二の実施の形態について説明する。図4は、第二の実施の形態における型開閉駆動部の構成例を示す図である。図4中、図3と同一又は対応する部分には同一符号を付している。第二の実施の形態では第一の実施の形態と異なる点を中心に説明する。したがって、特に明記しない点については第一の実施の形態と同様でよい。
図4の型開閉駆動部100bは、タイバー支持プラテン20を更に構成要素としている。タイバー支持プラテン20は、タイバー14の後端を支持するためのプラテンである。第二の実施の形態では、吸着板22aがフレームFrに対して固定されていないためタイバー14の後端は、タイバー支持プラテン20に連結及び固定されるのである。なお、タイバー支持プラテン20は、フレームFrに対して固定されるとともに、その前後方向の両面は、例えば、吸着板22a等と平行に形成されている。
第二の実施の形態において、リヤプラテン13はフレームFrに固定されている。一方、吸着板22aの吸着板支持部材221aとフレームFrとの間と、吸着板22bの吸着板支持部材221bとフレームFrとの間にはそれぞれローラ機構28bが設けられている。したがって、吸着板22a及び22bは、前後方向に摺動可能に配設される。
ロッド39は、タイバー支持プラテン20、吸着板22a及びリヤプラテン13を貫通している。ロッド39は吸着板22aに対しては固定され、タイバー支持プラテン20及びリヤプラテン13に対しては摺動可能とされている。ロッド39の後端は吸着板22bに連結及び固定されている。
したがって、第二の実施の形態では、吸着板22a及び22bが前後方向に摺動することにより、可動プラテン12が進退し、型閉じ、型締め、又は型開きが行われる。
すなわち、電磁石ユニット37bにおいて、コイル48bに電流を供給されると、電磁石49bが駆動し、電磁石49bと吸着部51bとの間で吸着力が発生する。図4においてリヤプラテン13はフレームFrに固定されている。したがって、その吸着力によって、吸着板22bは前進する。ロッド39は、吸着板22bが前進するのに伴って吸着板22a及び可動プラテン12を後退させる。その結果、型閉じ及び型締めが行われる。
また、電磁石ユニット37aにおいて、コイル48aに電流が供給されると、電磁石49aが駆動し、電磁石49aと吸着部51aとの間で吸着力が発生する。図4においてリヤプラテン13はフレームFrに固定されている。したがって、その吸着力によって吸着板22aは後退する。更に、ロッド39は、吸着板22aが後退するのに伴って可動プラテン12を後退させる。その結果、型開きが行われる。なお、型開限の位置は、電磁石49bの磁力(吸着力)が吸着部51bに及ぶ範囲とされる。すなわち、型開きの完了時において、ギャップδの値は、電磁石49bの磁力(吸着力)によって吸着板22bが前進可能な範囲とされる。
ここで、電磁石ユニット37a、37bに発生される吸着力及びそれぞれの間隔は、第一の実施の形態と同様に決定される。
以下、第二の実施の形態の型締装置10の動作について説明する。
型閉じ時及び型締め時に、制御部の型開閉処理手段は、コイル48bに電流を供給する。それによって電磁石49bが駆動され、吸着部51bが電磁石49bの吸着力によって吸着される。その結果、吸着板22b及びロッド39を介して可動プラテン12が前進させられ、可動金型16が固定金型15に当接させられる。このとき、リヤプラテン13と吸着板22bとの間、すなわち、電磁石49bと吸着部51bとの間には、ギャップδが形成される。引き続き、吸着部51bと電磁石49bとの吸着力によって、型締めが行われる。
続いて、射出装置17において溶融させられた樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19の各キャビティ空間に充墳される。各キャビティ空間内の樹脂が冷却されて固化すると、型開閉処理手段は、型開き時に、コイル48bへの電流の供給を停止する一方でコイル48aへの電流の供給を開始する。それによって電磁石49aが駆動され、吸着部51aが電磁石49aの吸着力によって吸着される。その結果、吸着板22a及びロッド39を介して可動プラテン12及び可動金型16が後退させられ、型開きが行われる。
上述したように、第二の実施の形態における型締装置10によれば、第一の実施の形態と同様、型開閉動作及び型締め動作の駆動系を単純化させることができる。
ここで、本実施の形態の場合、吸着板22aと吸着板22bとは距離が不変な状態で固定されている。そして、型厚調整機構は可動プラテン12と吸着板22a、22bとの間に備えられている。この型厚調整機構を駆動し、可動プラテン12と吸着板22a、22bとの間の距離を調整することで、金型の大きさが変わっても吸着板22aと吸着板22bと間の距離を変更する必要はない。したがって、金型のサイズが変わっても電磁力を発生する駆動部は変化しないため、安定した電磁力を発生させることができる。
次に、第三の実施の形態について説明する。図5は、第三の実施の形態における型開閉駆動部の構成例を示す図である。図5中、図4と同一又は対応する部分には同一符号を付している。第三の実施の形態では第二の実施の形態と異なる点を中心に説明する。したがって、特に明記しない点については第二の実施の形態と同様でよい。
図5において、型開閉駆動部100cは、リヤプラテン13、及び吸着板22a等より構成される。また、タイバー14の後端は、リヤプラテン13に連結及び固定されている。ロッド39は、リヤプラテン13を摺動可能に貫通し、吸着板22bに連結及び固定される。
第三の実施の形態において、可動プラテン12を摺動させるための駆動手段は、一つの電磁石ユニット37cによって構成される。電磁石ユニット37cは、リヤプラテン13の後端面側に形成された電磁石49b及び、吸着板22bの前端面側に形成された電磁石49cより構成される。電磁石49cは、電磁石49bと対向する部分に形成される。すなわち、吸着板22bの前端面の所定の部分、本実施の形態においては溝45bと同じ位置に対向する部分に、矩形の断面形状を有するコイル配設部としての二つの溝45cが互いに平行に形成され、各溝45c間に矩形の形状を有するコア46c、及び他の部分にヨーク47cが形成される。そして、コア46cにコイル48cが巻装される。
電磁石ユニット37bにおいて、コイル48b及びコイル48cに電流を供給されると、電磁石49b及び電磁石49cが駆動し、コイル48b及びコイル48cに供給される電流の向きによって電磁石49bと電磁石49cとの間で吸着力又は反発力が発生する。図5において、リヤプラテン13はフレームFrに固定されている。したがって、吸着力が発生しているときは、吸着板22bは前進する。更に、ロッド39は、吸着板22bが前進するのに伴って可動プラテン12を前進させる。その結果、型閉じ及び型締めが行われる。一方、反発力が発生しているときは、吸着板22bは後退する。ロッド39は、吸着板22bが後退するのに伴って可動プラテン12を後退させる。その結果、型開きが行われる。なお、型開限の位置は、電磁石49b及び電磁石49cの磁力(吸着力)が及ぶ範囲とされる。すなわち、型開きの完了時において、ギャップδの値は、電磁石49b及び電磁石49cの磁力(吸着力)によって吸着板22bが前進可能な範囲とされる。
つまり、
Fd37c:電磁石ユニット37cで発生させる吸引力
Fm1:型締装置の可動部を動かすのに必要な力(機械摩擦も含む)
Fm2:搭載可能な最大金型を動かすのに必要な力
とした場合、
(Fm1+Fm2)<Fd37c
が満たされる範囲内で、型開限の位置が設定される。
ここで、Fd37cは、コイル48bとそれに対向するコイル48cとの双方で発生させる吸引力である。
以下、第三の実施の形態の型締装置10の動作について説明する。
型閉じ時及び型締め時に、制御部の型開閉処理手段は、電磁石49bと電磁石49cとの間に吸着力が発生するような向きの電流をコイル48b及びコイル48cに供給する。すなわち、図5(b)に示すように、対向するコイル48b、48cにおいて、紙面に対して互いに同じ向きの電流が流される。それによって電磁石49b及び電磁石49cが駆動され、電磁石49bと電磁石49cとの間で吸着力が発生する。その結果、吸着板22b及びロッド39を介して可動プラテン12が前進させられ、可動金型16が固定金型15に当接させられる。このとき、リヤプラテン13と吸着板22bとの間、すなわち、電磁石49bと吸着部51bとの間には、ギャップδが形成される。引き続き、電磁石49bと電磁石49cとの吸着力によって型締めが行われる。
続いて、射出装置17において溶融させられた樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19の各キャビティ空間に充墳される。各キャビティ空間内の樹脂が冷却されて固化すると、型開閉処理手段は、型開き時に、コイル48b及びコイル48cのいずれか一方に供給する電流の向きを逆にする(磁極を反転させる)。
すなわち、図5(c)に示すように、対向するコイル48b、48cにおいて、紙面に対して互いに逆向きの電流が流される。それによって電磁石49b及び電磁石49cの間に反発力が発生する。その結果、吸着板22b及びロッド39を介して可動プラテン12及び可動金型16が後退させられ、型開きが行われる。
ここで、型閉じ時及び型開き時におけるコイル48b、コイル48cへの電流は可動プラテン12の図示されない位置検出器の検出値に基づいて制御される。
上述したように、第三の実施の形態における型締装置10によれば、型開閉動作及び型締動作を一つの電磁石ユニット37cによって行う。したがって、型開閉動作及び型締め動作を通して同軸方向の力によって当該動作を駆動することができ、型開閉動作及び型締め動作の駆動系を単純化させることができる。
次に、第四の実施の形態について説明する。図6は、第四の実施の形態における型開閉駆動部の構成例を示す図である。図6中、図5と同一又は対応する部分には同一符号を付している。第四の実施の形態では第三の実施の形態と異なる点を中心に説明する。したがって、特に明記しない点については第三の実施の形態と同様でよい。
図6の型開閉駆動部100dにおいて、電磁石ユニット37dは、リヤプラテン13の後端面側に形成された電磁石49b及び、吸着板22bの前端面側に配設された永久磁石50bより構成される。永久磁石50bは、電磁石49bによって形成される磁極に対向する部分に配設される。図中における永久磁石50bの磁極は、コア46bに対向する部分がN極とされ、ヨーク47bに対向する部分がS極とされているが、逆でもよい。永久磁石50bの磁極は、少なくとも、電磁石49bが駆動した際に電磁石49bに供給される電流の向きによって、吸着力又は反発力が発生するように分布されていればよい。また、リヤプラテン13側に永久磁石50bを配設し、吸着板22b側に電磁石49bを配設してもよい。ここで、永久磁石50bは、対向して配置されたコイル45bをまたいでN極とS極とが磁気回路を構成するように配置される。
ここで、電磁石ユニット37dに発生される吸着力及びそれぞれの間隔は、第三の実施の形態と同様に決定される。
以下、第四の実施の形態の型締装置10の動作について説明する。
型閉じ時及び型締め時に、制御部の型開閉処理手段は、電磁石49bと永久磁石50bとの間に吸着力が発生するような向きの電流をコイル48bに供給する。それによって電磁石49bが駆動され、電磁石49bと永久磁石50bとの間で吸着力が発生する。その結果、吸着板22b及びロッド39を介して可動プラテン12が前進させられ、可動金型16が固定金型15に当接させられる。このとき、リヤプラテン13と吸着板22bとの間、すなわち、電磁石49bと吸着部51bとの間には、ギャップδが形成される。引き続き、電磁石49bと永久磁石50bとの吸着力によって、型締めが行われる。
続いて、射出装置17において溶融させられた樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19の各キャビティ空間に充墳される。各キャビティ空間内の樹脂が冷却されて固化すると、型開閉処理手段は、型開き時に、コイル48bの電流の向きを逆にする。それによって電磁石49b及び永久磁石50bとの間に反発力が発生する。その結果、吸着板22b及びロッド39を介して可動プラテン12及び可動金型16が後退させられ、型開きが行われる。なお、型開限の位置は、電磁石49b及び永久磁石50bの磁力(吸着力)が及ぶ範囲とされる。すなわち、型開きの完了時において、ギャップδの値は、電磁石49b及び永久磁石50bの磁力(吸着力)によって吸着板22bが前進可能な範囲とされる。この構造により、対向するそれぞれの複数のコイルと回路とを設ける必要はなく、容易な電気回路でも応答性を向上させることができる。
上述したように、第四の実施の形態における型締装置10によれば、第三の実施の形態と同様、型開閉動作及び型締め動作の駆動系を単純化させることができる。
次に、第五の実施の形態について説明する。図7は、第五の実施の形態における型開閉駆動部の構成例を示す図である。図7中、図4又は図5と同一又は対応する部分には同一符号を付している。第五の実施の形態では第二又は第三の実施の形態と異なる点を中心に説明する。したがって、特に明記しない点については第二又は第三の実施の形態と同様でよい。
図7の型開閉駆動部100eは、リヤプラテン13と、吸着板22a及び22bと、タイバー支持プラテン20と等を主な構成要素とし、二つの電磁石ユニットを備える点において図4の型開閉駆動部100bと共通する。但し、図7における電磁石ユニット37e及び37cの構成は、図4のそれとは異なり、図5の電磁石ユニット37cと共通する。
電磁石ユニット37eは、リヤプラテン13の前端面側に形成された電磁石49a及び、吸着板22aの後端面側に形成された電磁石49dより構成される。電磁石49dは、電磁石49bと対向する部分に形成される。すなわち、吸着板22aの後端面の所定の部分、本実施の形態においては溝45aと対向する部分に、矩形の断面形状を有するコイル配設部としての二つの溝45dが互いに平行に形成され、各溝45d間に矩形の形状を有するコア46d、及び他の部分にヨーク47dが形成される。そして、コア46dにコイル48dが巻装される。
つまり、
Fd37e:電磁石ユニット37eで発生させる吸引力
Fr37c:電磁石ユニット37cで発生させる反発力
Fm1:型締装置の可動部を動かすのに必要な力(機械摩擦も含む)
Fm2:搭載可能な最大金型を動かすのに必要な力
とした場合、
(Fm1+Fm2)<(Fd37e+Fr37c)
が満たされる範囲内で、型開限の位置が設定される。
同様に、電磁石ユニット37eに対する電磁石ユニット37cの位置、つまり二つの対向する電磁石ユニット37e、37c間の距離は、金型装置19を型閉状態から電磁石ユニット37eで反発させ、電磁石ユニット37cにより引くことができる距離、つまり、
Fr37e:電磁石ユニット37eで発生させる反発力
Fd37c:電磁石ユニット37cで発生させる吸引力
Fm1:型締装置の可動部を動かすのに必要な力(機械摩擦も含む)
Fm2:搭載可能な最大金型を動かすのに必要な力
Fm3:キャビティ内の成形品による吸着力、金型の摩擦力等
とした場合、
(Fm1+Fm2+Fm3)<(Fr37e+Fd37c)
が満たされる範囲内で設定される。
したがって、上述の関係を考慮して、電磁石ユニット37e、37dに発生される吸着力、反発力及びそれぞれの間隔が決定される。
電磁石ユニット37cは、図5における電磁石ユニット37cと同様であるのでその説明は省略する。
以下、第五の実施の形態の型締装置10の動作について説明する。
型閉じ時及び型締め時に、制御部の型開閉処理手段は、電磁石49aと電磁石49dとの間には反発力が、電磁石49bと電磁石49cとの間に吸着力が発生するような向きの電流をコイル48a、48d、48b及び48cに供給する。それによって電磁石49a、49d、49b及び49cが駆動され、電磁石49aと電磁石49dとの間で反発力が発生すると共に、電磁石49bと電磁石49cとの間で吸着力が発生する。その結果、吸着板22a、吸着板22b及びロッド39を介して可動プラテン12が前進させられ、可動金型16が固定金型15に当接させられる。このとき、リヤプラテン13と吸着板22bとの間、すなわち、電磁石49bと吸着部51bとの間には、ギャップδが形成される。引き続き、前記反発力及び吸着力によって型締めが行われる。
続いて、射出装置17において溶融させられた樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19の各キャビティ空間に充墳される。各キャビティ空間内の樹脂が冷却されて固化すると、型開閉処理手段は、型開き時に、コイル48a及びコイル48dのいずれか一方に供給する電流の向きを逆にすると共に、コイル48b及びコイル48cのいずれか一方に供給する電流の向きを逆にする。それによって電磁石49a及び電磁石49dの間に吸着力が発生すると共に、電磁石49b及び電磁石49cの間に反発力が発生する。その結果、吸着板22a、吸着板22b及びロッド39を介して可動プラテン12及び可動金型16が後退させられ、型開きが行われる。なお、型開限の位置は、電磁石49a及び電磁石49dの反発力と、電磁石49b及び電磁石49cの吸着力とによって吸着板22a及び吸着部22bが前進可能な範囲とされる。これにより、ギャップ間において磁束密度を大きくすることができるので、可動プラテン12の立ち上がり応答性を向上させることができる。
上述したように、第五の実施の形態における型締装置10は、型開閉動作及び型締動作を同じ電磁石ユニット(二つの電磁石ユニット37c及び37e)を用いて行う。したがって、型開閉動作及び型締め動作を通して当該動作を同軸方向の力によって駆動することができ、型開閉動作及び型締め動作の駆動系を単純化させることができる。
次に、第六の実施の形態について説明する。図8は、第六の実施の形態における型開閉駆動部の構成例を示す図である。図8中、図7若しくは図6と同一又は対応する部分には同一符号を付している。第六の実施の形態では第五の実施の形態と異なる点を中心に説明する。したがって、特に明記しない点については第五の実施の形態と同様でよい。
図8の型開閉駆動部100fにおいて、電磁石ユニット37fは、リヤプラテン13の前端面側に形成された電磁石49a及び、吸着板22aの後端面側に配設された永久磁石50aより構成される。永久磁石50aは、電磁石49aによって形成される磁極に対向する部分に配設される。図中における永久磁石50aの磁極は、コア46aに対向する部分がN極とされ、ヨーク47aに対向する部分がS極とされているが、逆でもよい。永久磁石50aの磁極は、少なくとも、電磁石49aが駆動した際に電磁石49aに供給される電流の向きによって、吸着力又は反発力が発生するように分布されていればよい。また、リヤプラテン13側に永久磁石50aを配設し、吸着板22a側に電磁石49aを配設してもよい。
電磁石ユニット37dは、図6における電磁石ユニット37dと同様であるのでその説明は省略する。
ここで、電磁石ユニット37d、37fに発生される吸着力、反発力及びそれぞれの間隔は、第五の実施の形態と同様に決定される。
以下、第六の実施の形態の型締装置10の動作について説明する。
型閉じ時及び型締め時に、制御部の型開閉処理手段は、電磁石49aと永久磁石50aとの間には反発力が、電磁石49bと永久磁石50bとの間に吸着力が発生するような向きの電流をコイル48a及び48bに供給する。それによって電磁石49a及び49bが駆動され、電磁石49aと永久磁石50aとの間で反発力が発生すると共に、電磁石49bと永久磁石50bとの間で吸着力が発生する。その結果、吸着板22a、吸着板22b及びロッド39を介して可動プラテン12が前進させられ、可動金型16が固定金型15に当接させられる。このとき、リヤプラテン13と吸着板22bとの間、すなわち、電磁石49bと吸着部51bとの間には、ギャップδが形成される。引き続き、前記反発力及び吸着力によって型締めが行われる。
続いて、射出装置17において溶融させられた樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19の各キャビティ空間に充墳される。各キャビティ空間内の樹脂が冷却されて固化すると、型開閉処理手段は、型開き時に、コイル48a及びコイル48bに供給する電流の向きを逆にする。それによって電磁石49a及び永久磁石50aの間に吸着力が発生すると共に、電磁石49b及び永久磁石50bの間に反発力が発生する。その結果、吸着板22a、吸着板22b及びロッド39を介して可動プラテン12及び可動金型16が後退させられ、型開きが行われる。なお、型開限の位置は、電磁石49a及び永久磁石50aの反発力と、電磁石49b及び永久磁石50bの吸着力とによって吸着板22a及び吸着部22bが前進可能な範囲とされる。
上述したように、第六の実施の形態における型締装置10によれば、第五の実施の形態と同様、型開閉動作及び型締め動作の駆動系を単純化させることができる。
次に、第七の実施の形態について説明する。図9は、第七の実施の形態における型開閉駆動部の構成例を示す図である。図9中、図3と同一又は対応する部分には同一符号を付している。第七の実施の形態では第一の実施の形態と異なる点を中心に説明する。したがって、特に明記しない点については第一の実施の形態と同様でよい。
また、電磁石ユニット37g、37hに発生される吸着力、反発力及びそれぞれの間隔についても、第五の実施の形態と同様に決定される。
図9の型開閉駆動部100gにおいて、電磁石ユニット37gは、リヤプラテン13の前端面側に形成された電磁石49a及び、吸着板22aの後端面側に形成された着脱磁部52aより構成される。また、電磁石ユニット37hは、リヤプラテン13の後端面側に形成された電磁石49b及び、吸着板22bの前端面側に形成された着脱磁部52bより構成される。
着脱磁部52aは、ネオジ系磁石(ネオジウム磁石)53と、それぞれコイル55が巻装されたアルニコ系磁石(アルニコ磁石)54とが適切に配置されることに構成され、アルニコ系磁石54の極性の反転により着磁及び脱磁が可能とされている。アルニコ系磁石54の極性の反転は、コイル55に対する電流の供給によって生じる。
図10は、着脱磁部の作用を説明するための図である。図10において(A)は脱磁状態を示し、(B)は着磁状態を示す。
着脱磁部52aを脱磁状態(A)にする場合、コイル55に例えば0.5秒程度電流が供給される。それによって、アルニコ系磁石54の極性が反転する。それにより、アルニコ系磁石54とネオジ系磁石53との吸引し合い、磁力線が着脱磁部52aの表面に出なくなる(磁気回路が閉じる)。したがって、着脱磁部52aは、磁石として機能しなくなる。
一方、着脱磁部52aを着磁状態(B)にする場合、コイル55に例えば0.5秒程度電流が供給される。なお、この際の電流の向きは、脱磁状態にする場合と逆である。コイル55への電流の供給によってアルニコ系磁石54の極性が反転する。それにより、アルニコ系磁石54とネオジ系磁石53とが反発し合い、磁力線が着脱磁部52aの表面に出る(磁気回路が開く)。したがって、コア部56が磁石となり、着脱磁部52aは磁石として機能する。
なお、着脱磁部52bも同様に作用する。
以下、第七の実施の形態の型締装置10の動作について説明する。
型閉じ時及び型締め時に、制御部の型開閉処理手段は、着脱磁部52a及び52bにおけるコイル55に約0.5秒間電流を供給し、着脱磁部52a及び52bを着磁状態にする。型開閉手段は、また、コイル48a及びコイル48bに電流を供給し、電磁石49a及び49bを駆動させる。この際、コイル48aには、電磁石49aと着脱磁部52aとの間に吸着力が発生するような向きで電流が供給される。また、コイル48bには、電磁石49bと着脱磁部52bとの間に反発力が発生するような向きで電流が供給される。その吸着力及び反発力によってリヤプラテン13及びロッド39を介して可動プラテン12が前進させられ、可動金型16が固定金型15に当接させられる。このとき、リヤプラテン13と吸着板22aとの間、すなわち、電磁石49aと着脱磁部52aとの間には、ギャップδが形成される。引き続き、前記吸着力及び反発力によって型締めが行われる。
続いて、射出装置17において溶融させられた樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19の各キャビティ空間に充墳される。各キャビティ空間内の樹脂が冷却されて固化すると、型開閉処理手段は、型開き時に、コイル48a及び48bに供給する電流の向きを逆にする。それによって電磁石49a及び着脱磁部52aの間に反発力が発生すると共に、電磁石49b及び着脱磁部52bの間に吸着力が発生する。その結果、リヤプラテン13及びロッド39を介して可動プラテン12及び可動金型16が後退させられ、型開きが行われる。なお、型開限の位置は、電磁石49a及び着脱磁部52aの反発力と、電磁石49b及び着脱磁部52bの吸着力とによって吸着板22a及び吸着部22bが前進可能な範囲とされる。
上述したように、第七の実施の形態における型締装置10によれば、第五の実施の形態と同様、型開閉動作及び型締め動作の駆動系を単純化させることができる。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。