JP2008111351A - 内燃機関の排気制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】機関始動後のOF/B制御の開始前に強制変調を実行すると共に、このときの排気空燃比の変動状況を最適制御して触媒上に十分な量のCOやOを供給し、触媒の貴金属担持量を増大することなく触媒の昇温促進により早期活性化を実現して浄化性能を向上できる内燃機関の排気制御装置を提供する。
【解決手段】強制変調パラメータとして触媒入口の排気のO2濃度及びCO濃度を共に増加可能な周期及び振幅を設定し(S12)、設定したパラメータに基づいて排気空燃比を強制的に変動させる強制変調を実行することで触媒反応を促進して早期活性化させ(S16)、その後に02F/B制御に切換える(S20)。
【選択図】図3

Description

本発明は内燃機関(以下、エンジンと称する)の排気制御装置に係り、詳しくは機関始動直後における触媒反応を促進して早期活性化により排気浄化性能を向上させる排気制御装置に関するものである。
未だ触媒が活性化していない冷態始動時にエンジンから排出される有害成分、例えばTHC(Total HC)等はエンジンの各モード運転により生じるTHC総排出量に対してかなりの割合を占めており、排ガス浄化性能の改善のためには冷態始動時の対策が重要であることが知られている。このための対策の一つとして、機関始動直後には、まず、エンジンアウトの排ガス濃度(特にHC)が低く、且つ燃焼変動が許容可能な特性を有するオープンループ(以下、O/Lと略する)制御により排気空燃比をリッチ側の略一定値に制御し、その後にOセンサが活性化すると、Oセンサ出力に基づく理論空燃比へのフィードバック(以下、OF/Bと略する)制御に切換える手法が採られている。
しかしながら、この手法では排ガス浄化性能が三元触媒の貴金属担持量に大きく依存してしまうという欠点がある。特にO/L制御からOF/B制御に移行する過程ではこの傾向が顕著に現れ、貴金属担持量が減少するに従って浄化性能が大幅に低下してしまう。よって、この従来手法では、貴金属担持量が不足すれば十分な浄化性能を実現できず、逆に十分な浄化性能の確保のために貴金属担持量を増加すると、コスト高騰や触媒容量の増大に伴う圧損増加等を引き起こすという別の問題が生じた。
一方、機関始動直後の有害成分の排出を抑制すべく、空燃比の強制変調を実行する技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。強制変調とは、エンジンの排気空燃比を強制的にリッチ方向及びリーン方向に交互に所定の振幅で変動させる制御であり、特許文献1の技術では冷態始動時に強制変調を実行して、リッチ方向への変調時に触媒上で還元反応を生起させると共に、リーン方向への変調時に触媒上で酸化反応を生起させ、これにより触媒昇温を促進することで浄化性能の向上を図っている。
そして、特許文献1の技術では、Oセンサの活性化後は強制変調から通常のOF/B制御へと切換えるが、切換後にも空燃比変動が暫く継続されて排気空燃比を理論空燃比(即ち、触媒ウインドウ内)に速やかに収束できない実情を鑑みて、触媒の活性状態と相関するエンジン水温が高くなるほど強制変調時の排気空燃比の振幅を縮小し、これによりOF/B制御への切換時の理論空燃比への収束性を向上させている。
特許第3392197号公報
上記のように特許文献1の技術では強制変調からOF/B制御への切換性を重要視して排気空燃比の振幅を設定しているため、触媒の昇温促進、ひいては早期活性化による浄化性能向上に関して適切な設定とは言い難かった。
即ち、強制変調によって得られる触媒上での還元反応や酸化反応には、排ガスと共に触媒上に供給されるCO量やO量が密接に関係するため、これらの供給量を最適制御しなければ適切な還元反応及び酸化反応、ひいては十分な昇温促進は望めない。特許文献1の技術では、OF/B制御への切換時を想定して排気空燃比の振幅を制御しているだけであるため、結果として強制変調時において触媒上に十分な量のCOやOを供給できず、触媒の昇温促進による浄化性能の向上を達成できなかった。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、機関始動後のOF/B制御の開始前に強制変調を実行すると共に、このときの排気空燃比の変動状況を最適制御して触媒上に十分な量のCOやOを供給し、もって触媒の貴金属担持量に依存することなく触媒の昇温促進により早期活性化を実現して浄化性能を向上することができる内燃機関の排気制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、内燃機関の排気通路に設けられた触媒と、記触媒よりも上流で排気通路に設けられた空燃比検出手段と、空燃比検出手段の出力に基づき内燃機関の実空燃比を目標空燃比に近づけるようにフィードバック制御するフィードバック制御手段と、内燃機関の始動後でフィードバック制御手段の作動前に作動し、触媒に流入する排気の空燃比をリーン空燃比とリッチ空燃比との間で強制的に変動させる空燃比変動制御手段とを備え、空燃比変動制御手段が、フィードバック制御手段の作動中と比較して触媒入口における排気のO2濃度及びCO濃度が共に高くなるように、その周期及び振幅が設定されているものである。
従って、内燃機関の始動後には空燃比変動制御手段により触媒に流入する排気の空燃比がリーン空燃比とリッチ空燃比との間で強制的に変動され、その後にフィードバック制御手段によるフィードバック制御が開始されて、空燃比検出手段の出力に基づき内燃機関の実空燃比が目標空燃比に近づけられる。フィードバック制御の開始前に排気空燃比が強制的に変動され、且つ、排気空燃比の変動時には、フィードバック制御中と比較して触媒入口の排気のO2濃度及びCO濃度が共に高くなるように周期及び振幅が設定されるため、触媒反応を促進して触媒の貴金属担持量を増大せずに良好な昇温促進が得られ、触媒の早期活性化が達成される。
請求項2の発明は、請求項1において、空燃比変動制御手段による変動の振幅が、フィードバック制御手段の作動中の振幅と比較して大きく設定されているものである。
従って、空燃比制御手段による排気空燃比の変動時には、フィードバック制御手段の作動中に比較して変動の振幅が大きく設定されるため、一層十分な量のCOやOが触媒上に供給されて昇温が促進される。
請求項3の発明は、請求項2において、空燃比変動制御手段による変動の振幅が、リーン空燃比よりもリッチ空燃比側が大きく設定されているものである。
リーン中に貴金属サイトに吸着したOを素早くパージして貴金属の活性を高めるには、O濃度に対してより高濃度の還元ガス(CO,H2,HC)を供給することが望ましいが、リーン空燃比よりもリッチ空燃比側が大きく設定されることで触媒入口に供給するCO濃度が高まるため、リーン・リッチ変調でOが共存する条件下においてより反応(酸化)熱が得られ易くなり、触媒昇温が一層促進される。
請求項4の発明は、請求項2,3において、空燃比変動制御手段による変動の周期が、リーン空燃比よりもリッチ空燃比側が短く設定されているものである。
ある程度のリーンの継続は触媒の酸素ストレージ能により許容される一方、高濃度のCO,HCが触媒に流入し続けることで触媒の酸素ストレージ能を越えるほどに還元雰囲気が継続すると、触媒の貴金属活性が低下する。排気空燃比の変動の周期をリーン空燃比よりもリッチ空燃比側を短く設定することで、これらの双方の条件が共に満たされて触媒の昇温促進が効率的に行われる。
特に請求項3の発明に対して本請求項4の発明を組み合わせた場合には、触媒入口のO2濃度及びCO濃度を同時に高めた上で、貴金属サイトに吸着したOを素早くパージして貴金属の活性を高めることが可能となる。
以上説明したように請求項1の発明の内燃機関の排気制御装置によれば、機関始動後のフィードバック制御の開始前に排気空燃比を強制的に変動させると共に、このときの排気空燃比の変動の振幅及び周期を、フィードバック制御時に比較して排気のO2濃度及びCO濃度が共に高くなるように設定するため、触媒上に十分な量のCOやOを供給でき、触媒の貴金属担持量を増大することなく触媒の昇温促進により早期活性化を実現して浄化性能を向上することができる。
請求項2の発明の内燃機関の排気制御装置によれば、請求項1に加えて、フィードバック制御時に比較して排気空燃比の変動の振幅を大きく設定することにより、一層十分な量のCOやOを触媒上に供給して昇温を促進させることができる。
請求項3の発明の内燃機関の排気制御装置によれば、請求項2に加えて、排気空燃比の変動の振幅をリーン空燃比よりもリッチ空燃比側を大きく設定することにより、触媒入口に供給するCO濃度を高めて触媒昇温を一層促進することができる。
請求項4の発明の内燃機関の排気制御装置によれば、請求項2,3に加えて、排気空燃比の変動の周期をリーン空燃比よりもリッチ空燃比側を短く設定することにより、触媒の昇温促進を効率的に行うことができる。
[第1実施形態]
以下、本発明を具体化したエンジンの排気制御装置の第1実施形態を説明する。
図1は本実施形態のエンジン及びその排気制御装置を模式的に示す全体構成図であり、筒内噴射型直列4気筒ガソリンエンジン1を対象として構成されている。エンジン1にはDOHC4弁式の動弁機構が採用されており、図示しないクランク軸によりシリンダヘッド2上に設けられた吸気カムシャフト3及び排気カムシャフト4が回転駆動され、これらのカムシャフト3,4により吸気弁5及び排気弁6が所定のタイミングで開閉される。
シリンダヘッド2には各気筒毎に点火プラグ7と共に電磁式の燃料噴射弁8が取り付けられ、図示しない燃料ポンプから供給された高圧燃料が燃料噴射弁8の開閉に応じて燃焼室9内に直接噴射される。シリンダヘッド2には両カムシャフト3,4間を抜けるようにして略直立方向に吸気ポート10が形成され、吸気弁5の開弁に伴って吸入空気がエアクリーナ11からスロットル弁12、サージタンク13、吸気マニホールド14、吸気ポート10を経て燃焼室9内に導入される。燃焼後の排ガスは排気弁6の開弁に伴って燃焼室9から排気ポート15に排出され、更に排気通路16及び三元触媒17を経て大気中に排出される。
車室内には、図示しない入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される記憶装置(ROM,RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えたECU(エンジン制御ユニット)21が設置されており、エンジン1の総合的な制御を行う。ECU21の入力側には、エンジン1の冷却水温Twを検出する水温センサ22、スロットル開度θthを検出するスロットルセンサ23、三元触媒17に流入する排ガス温度(以下、入口温度と称する)Texを検出する温度センサ24、排ガスのO2濃度に応じて出力を変化させるO2センサ25(空燃比検出手段)等の各種センサ類が接続され、ECU21の出力側には、上記燃料噴射弁8、上記点火プラグ7を駆動するイグナイタ26等の各種デバイス類が接続されている。
ECU21は各センサからの検出情報に基づいて点火時期や燃料噴射量等を決定し、これらの制御量に基づいてイグナイタ26や燃料噴射弁8を駆動制御してエンジン1の運転を制御する。
また、エンジン1の冷態始動時において、ECU21はOセンサ25の出力に基づく目標空燃比(例えば、理論空燃比)へのOF/B制御を実行すると共に(フィードバック制御手段)、OF/B制御に先立ってO/L制御による強制変調を実行するが(空燃比変動制御手段)、強制変調では、触媒温度Tcat等から求めたCO濃度及びO濃度の目標値(後述する要求CO濃度、要求O濃度)に基づき、これらの目標値を達成するための強制変調の振幅、周期等の制御量を設定し、各制御量に基づく強制変調により三元触媒17へのCO及びOの供給量を制御している。以下、この冷態始動時の排気制御について詳述する。
まず、ECU21による制御を説明する前に、強制変調の実行状況に応じた排ガスのCO濃度及びO濃度の特性を説明する。
図2は強制変調時における排気空燃比の振幅の相違によるCO濃度及びO濃度の変化を示す特性図である。排ガスのCO濃度及びO濃度は、排気空燃比の変化に伴って図中の特性線に沿って増減する。すなわち、CO濃度は排気空燃比が大きくなるに従って徐々に低くなり、O濃度は排気空燃比が大きくなるに従って徐々に高くなる。一方、強制変調時には、波形パターンの1周期毎に特性線上において排気空燃比の振幅に対応する領域内で増減を繰り返し、排気空燃比の振幅に応じて1周期当たりの平均CO濃度及び平均O濃度が共に増加あるいは共に低減する特性を有する。図では中心空燃比14.5を前提として、振幅±0.1に設定した場合と±0.5に設定した場合とを比較しているが、振幅±0.1に比較して振幅を±0.5まで増加させると、1周期当たりの平均CO濃度及び平均O濃度(図中にAveで表示)が共に増加することが判る。
図3はECU21が実行する始動時排気制御ルーチンを示すフローチャートであり、ECU21はエンジン始動時にルーチンを所定の制御インターバルで実行する。
まず、ステップS2でエンジン始動モードを実行する。始動モードとしては、クランキング開始から完爆判定までの始動時増量補正、及び完爆判定後の始動後増量補正等が適宜O/L制御で実行されて、円滑なエンジン始動が図られる。エンジン始動モードの内容は一般的なものであり、このときの始動後増量補正による燃料制御が[背景技術]で述べたOセンサの活性化前に実行されるリッチ空燃比によるO/L制御に相当する。
その後、ステップS4で冷却水温Tw、スロットル開度θth、入口温度Tex等の各種センサ情報を取り込み、続くステップS6で始動完了(完爆判定)からの経過時間を算出し、ステップS8でOセンサ25の活性化条件を判定し、ステップS10で入口温度Texに基づき触媒温度Tcatを推定する。なお、触媒温度Tcatは、予め設定された入口温度Texと触媒温度Tcatとの関係を規定したマップから算出するが、触媒温度Tcatの算出手法はこれに限ることはなく、例えば入口温度Texからの推定に代えて三元触媒17のベッド温度を直接的に検出したり、或いは冷却水温Twと始動完了からの経過時間に基づき簡易的に触媒温度Tcatを求めたりしてもよい。
続くステップS12では強制変調パラメータを算出する。本実施形態では強制変調パラメータとして強制変調時における排気空燃比の振幅及び周期を算出するが、その詳細は後述する。
その後、ステップS14で強制変調開始条件が成立したか否かを判定する。強制変調開始条件は、エンジン1の排気空燃比を強制的に変動させる強制変調を実行しても支障ないエンジン運転状態として設定されたものであり、例えば以下の1)〜5)に示す各要件に基づいて判定される。
1)エンジン負荷、具体的にはスロットル開度θthや体積効率等
2)エンジン始動完了後の経過時間
3)冷却水温Tw
4)Oセンサの活性化後の経過時間
5)触媒温度Tcat
これらの要件に基づき強制変調開始条件が成立していないとしてステップS14でNo(否定)の判定を下したときには、そのままルーチンを終了する。従って、この場合にはステップS2のエンジン始動モードで、従来制御と同様に略一定のリッチ空燃比によるO/L制御が継続して実行される。
また、強制変調開始条件が成立したとしてステップS14でYes(肯定)の判定を下したときには、ステップS16に移行して排気空燃比の強制変調を実行する。本実施形態では、中心空燃比に対するリッチ方向及びリーン方向への排気空燃比の変動量、及び1周期中のリッチ方向及びリーン方向への変動期間を共に等しく設定した波形パターンが強制変調に適用される。図4は強制変調時の排気空燃比の波形パターンを示すタイムチャートであり、中心空燃比14.5を前提として、振幅が1.0に設定され、周期が0.2secに設定されているが、振幅に関しては±0.5に、周期に関してはリッチ・リーンの変動期間が共に0.1secに設定されている。
続くステップS18では強制変調終了条件が成立したか否かを判定する。強制変調終了条件は、強制変調を終了して通常の02F/B制御に移行しても排ガス浄化性能が悪化しない(換言すれば、三元触媒17が既に活性化している)エンジン運転条件として設定されたものであり、例えば触媒温度Tcat等に基づき判定される。
ステップS18の判定がNoのときにはステップS16に戻るため、強制変調終了条件が終了しない限りステップS16の強制変調が継続される。そして、強制変調終了条件の成立によりステップS18の判定がYesになると、ステップS20でOセンサ出力に基づく理論空燃比への02F/B制御に切換えた後にルーチンを終了する。なお、強制変調から02F/B制御への切換時には運転状態の急変を防止すべく、移行期間(図6に示す)を設定して、移行期間中に振幅及び周期を次第に減少させて緩やかに02F/B制御に移行するように配慮している。
ECU21は上記ステップS12の処理を図5に示す強制変調パラメータ算出ルーチンに従って実行している。以下、このECU21による処理を説明する。
まず、ステップS22で要求O濃度を算出し、ステップS24で要求CO濃度を算出する。これらの算出処理は上記ステップS10の処理により推定された触媒温度Tcatに基づき、予め触媒温度Tcat毎に要求O濃度及び要求CO濃度が設定されたマップに従って実行される。
続くステップS26,28では要求O濃度及び要求CO濃度を達成可能な強制変調時の波形パターンを決定し、その後にルーチンを終了する。即ち、上記のように本実施形態では、強制変調時における排気空燃比のリッチ・リーンの変動量及び変動期間が等しいことから、振幅及び周期に基づき波形パターンが定まることになる。よって、ステップS26では要求O濃度及び要求CO濃度より排気空燃比の振幅を決定し、ステップS28では要求O濃度及び要求CO濃度より排気空燃比の周期を決定する。これらの処理は、要求O濃度及び要求CO濃度毎に振幅や周期が設定されたマップに従って実行される。
ステップS26では、O/L制御やOF/B制御で発生する排気空燃比の変動に比較して、排気空燃比の振幅が大きな値として設定される。即ち、O/L制御では排気空燃比の揺らぎが発生し、OF/B制御ではフィードバックにより排気空燃比が変動するが、これらの変動に対してステップS26で設定される振幅は大きな値になる。
なお、必ずしも要求O濃度及び要求CO濃度に応じて振幅及び周期を共に変更する必要はなく、例えば振幅のみを要求O濃度及び要求CO濃度に応じて設定し、周期については所定の固定値としてもよいし、逆に周期のみを要求O濃度及び要求CO濃度に応じて設定し、振幅については所定の固定値としてもよい。
また、振幅及び周期の設定は、要求O濃度及び要求CO濃度のみならず、他の要件、例えば三元触媒17のタイプ(Pt、Pd、Rh等の貴金属配合量)、酸素ストレージ能、劣化度合、或いは排ガス規制等を鑑みた排ガス低減のターゲット成分(どの有害成分の低減を優先するか)等を考慮してもよい。具体的には、予め判明している触媒タイプや酸素ストレージ能を加味して振幅及び周期を算出したり、或いは、周知の劣化判定手法から推定した三元触媒17の劣化度合を加味して振幅及び周期を算出したり、或いは、HCとNOxの何れの低減を優先するかに応じて振幅及び周期を算出してもよい。
一方、強制変調時の振幅及び周期によっては、燃焼変動により無視できないトルク変動が生じてドライバビリティを損ねるため、上記ステップS26,28では、設定した振幅及び周期がトルク変動を考慮した許容値を上回るときに、その上限を許容値に制限するようにしてもよい。
図6はエンジン冷態始動時の触媒温度Tcatに対する排気制御の切換状況と要求O濃度及び要求CO濃度の推移を示すタイムチャートである。上記したECU21の処理により、エンジン始動時及び始動直後にはエンジン始動モードとしてO/L制御による始動時増量補正や始動後増量補正が行われ、その後に強制変調が開始される。図6に示す例では、強制変調中において要求O濃度として0.6%が設定され、要求CO濃度として0.9%が設定された場合を示している。その後、上記移行期間を経て02F/B制御に切換えられ、それに伴って要求O濃度及び要求CO濃度は強制変調時より減少する。
図7は強制変調によるエンジンアウト(即ち、触媒入口)の排ガス濃度をエンジン始動モードのO/L制御及び02F/B制御による排ガス濃度と比較した特性図である。この図では、図4に示した振幅を±0.5、周期をリッチ・リーン共に0.1secに設定したときの強制変調のデータを第1実施形態として表示している。この図に示すように、平均空燃比によって若干の差異はあるものの、強制変調時ではO/L制御や02F/B制御に比較してO濃度、CO濃度が増加する一方、NOx排出量が抑制され、触媒昇温に関して望ましい排ガス特性が得られることが判る。この特性により、強制変調時には図6に示した要求O濃度及び要求CO濃度が達成される。
図8は強制変調時のNMHC(ノンメタンHC)の浄化率をO/L制御時及び02F/B制御時と比較した特性図、図9は強制変調時のCOの浄化率をO/L制御時及び02F/B制御時と比較した特性図、図10は強制変調時のNOxの浄化率をO/L制御時及び02F/B制御時と比較した特性図であり、各図中では、図7と同じ強制変調の実行条件を第1実施形態として表示している。これらの図に示すように、NMHC、CO、NOxの何れについても、昇温により三元触媒17がより活性化している02F/B制御時と略同等の浄化率が強制変調時に達成されていることが判る。
以上のように本実施形態のエンジン1の排気制御装置では、エンジン1の冷態始動後の02F/B制御の開始前に強制変調を実行し、この強制変調時には02F/B制御中と比較して触媒入口の排気のO2濃度及びCO濃度が共に高くなるように排気空燃比の周期及び振幅を設定している。従って、三元触媒17上に十分な量のCOやOを供給でき、三元触媒17の昇温を促進して早期活性化を実現でき、これにより浄化性能を向上し,触媒の貴金属担持量を削減することができる。
加えて、強制変調時には、O/L制御や02F/B制御で生じる排気空燃比の変動に比較して排気空燃比の振幅を大きな値に設定するため、一層十分な量のCOやOを触媒上に供給して触媒昇温を一層促進することができる。
[第2実施形態]
次に、本発明を別のエンジン1の排気制御装置に具体化した第2実施形態を説明する。
本実施形態の排気制御装置は第1実施形態のものと比較して全体的な構成やECU21による基本的な制御内容は共通しており、相違点は強制変調パラメータの算出処理にある。そこで、構成が共通の箇所は説明を省略し、相違点を重点的に述べる。
本実施形態では、中心空燃比に対するリッチ方向及びリーン方向への排気空燃比の変動量を相違させ、且つ、1周期中のリッチ方向及びリーン方向への変動期間を相違させた波形パターンが強制変調に適用される。このため、波形パターンを決定するための強制変調パラメータ算出ルーチンとして、本実施形態では図5に代えて図11のフローチャートが適用される。
図11において、ECU21は第1実施形態と同様にステップS22,24で要求O濃度及び要求CO濃度を算出し、ステップS26,28で要求O濃度及び要求CO濃度に基づいて排気空燃比の振幅及び周期を決定する。その後、ステップS30に移行して中心空燃比からのリッチ・リーンの変動量を決定し、ステップS32でリッチ・リーンの変動期間を決定する。従って、強制変調開始条件の成立に伴って図3においてステップS14からステップS16に移行したときには、第1実施形態の振幅及び周期に加えて、リッチ・リーンの変動量及び変動期間に基づき強制変調時の波形パターンが定まる。
上記ステップS30では、リッチ方向の変動量がリーン方向の変動量よりも大きな値に設定され、ステップS32では、リッチ方向の変動期間がリーン方向の変動期間よりも小さな値に設定される。このためステップS16の処理による強制変調は、例えば図12に示すタイムチャートに従って実行される。この例では中心空燃比14.5を前提として、振幅が1.5に設定され、周期が0.15secに設定されているが、振幅に関しては+0.5(リーン側),−1.0(リッチ側)と、リーン方向への変動量よりもリッチ方向への変動量が大きく設定され、周期に関しては、リッチ期間0.05sec,リーン期間0.1secと、リーン方向への変動期間よりもリッチ方向への変動期間が短く設定されている。なお、この設定例では、図4に示す第1実施形態と等しい平均空燃比が達成される。
以上のように本実施形態の内燃機関の排気制御装置では、第1実施形態の強制変調時の設定に加えて、排気空燃比の振幅に関してリーン方向への変動量よりもリッチ方向への変動量を大きく設定し、排気空燃比の周期に関してリーン方向への変動期間よりもリッチ方向への変動期間を短く設定し、これらの設定に基づいて強制変調を実行している。
周知のようにリーン中に貴金属サイトに吸着したOを素早くパージして貴金属の活性を高めるには、O濃度に対してより高濃度の還元ガス(CO,H2,HC)を供給することが望ましく、そのためには触媒入口に供給するCO濃度を高める必要がある。また、ある程度のリーンの継続は触媒の酸素ストレージ能により許容される一方、高濃度のCO,HCが三元触媒17に流入し続けることにより、三元触媒17の酸素ストレージ能を越えるほど還元雰囲気が継続すると、触媒17の貴金属活性が低下してしまうため、この問題を回避するには還元雰囲気の過剰な継続を抑制する必要がある。
本実施形態では、強制変調時において排気空燃比をリーン方向よりもリッチ方向に大きく変動させ、且つリーン方向への変動よりもリッチ方向への変動を短くしているため、第1実施形態の作用効果に加えて触媒入口に供給するCO濃度をより高め、触媒昇温を一層促進して浄化性能を向上できると共に、還元雰囲気の継続による三元触媒17の貴金属活性の低下を抑制して効率的な触媒昇温を実現することができる。
加えて、ガス種によって貴金属への吸着及び離脱特性が異なるが、貴金属の活性を高めるためにリーン及びリッチ空燃比をmsecオーダーで制御していることから、貴金属表面のガス雰囲気バランスを最適化でき、この要因も上記作用効果に貢献している。
図7〜10では、本実施形態の強制変調の実行条件を第2実施形態として表示しているが、図7に示すように、本実施形態の強制変調によれば第1実施形態に比較してO濃度、CO濃度がより増加し、NOx排出量がより抑制されていることが判る。また、図8〜10に示すように、NMHC、CO、NOxの浄化率も第1実施形態よりさらに向上していることが判り、これらの試験結果からも本実施形態の作用効果が裏付けられる。
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記第1実施形態では図4のタイムチャートに従って強制変調を実行し、第2実施形態では図12のタイムチャートに従って強制変調を実行したが、無論、強制変調時の振幅や周期などの設定はこれに限ることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。
また、上記各実施形態では、エンジン1の排気通路16に三元触媒17のみを備えたが、近接触媒やNOx触媒等を任意に追加してもよい。
また,直接噴射型のエンジンに限ることなく,吸気管噴射型のエンジンにも適用可能である。さらに,触媒下流にO2センサーを装着して,A/Fの目標値を制御してもよい。
実施形態のエンジン及びその排気制御装置を示す全体構成図である。 強制変調時における排気空燃比の振幅の相違によるCO濃度及びO濃度の変化を示す特性図である。 ECUが実行する始動時排気制御ルーチンを示すフローチャートである。 第1実施形態の強制変調時の排気空燃比の波形パターンを示すタイムチャートである。 第1実施形態のECUが実行する強制変調パラメータ算出ルーチンを示すフローチャートである。 エンジン冷態始動時の触媒温度に対する排気制御の切換状況と要求O濃度及び要求CO濃度の推移を示すタイムチャートである。 強制変調によるエンジンアウトの排ガス濃度をO/L制御及び02F/B制御による排ガス濃度と比較した特性図である。 強制変調時のNMHCの浄化率をO/L制御時及び02F/B制御時と比較した特性図である。 強制変調時のCOの浄化率をO/L制御時及び02F/B制御時と比較した特性図である。 強制変調時のNOxの浄化率をO/L制御時及び02F/B制御時と比較した特性図であり、 第2実施形態のECUが実行する強制変調パラメータ算出ルーチンを示すフローチャートである。 第2実施形態の強制変調時の排気空燃比の波形パターンを示すタイムチャートである。
符号の説明
1 エンジン(内燃機関)
16 排気通路
17 三元触媒
21 ECU(フィードバック制御手段、空燃比変動制御手段)
25 O2センサ(空燃比検出手段)

Claims (4)

  1. 内燃機関の排気通路に設けられた触媒と、
    上記触媒よりも上流で上記排気通路に設けられた空燃比検出手段と、
    上記空燃比検出手段の出力に基づき上記内燃機関の実空燃比を目標空燃比に近づけるようにフィードバック制御するフィードバック制御手段と、
    上記内燃機関の始動後で上記フィードバック制御手段の作動前に作動し、上記触媒に流入する排気の空燃比をリーン空燃比とリッチ空燃比との間で強制的に変動させる空燃比変動制御手段と
    を備え、
    上記空燃比変動制御手段は、上記フィードバック制御手段の作動中と比較して上記触媒入口における排気のO2濃度及びCO濃度が共に高くなるように、その周期及び振幅が設定されていることを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
  2. 上記空燃比変動制御手段による変動の振幅は、上記フィードバック制御手段の作動中の振幅と比較して大きく設定されていることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の排気制御装置。
  3. 上記空燃比変動制御手段による変動の振幅は、リーン空燃比よりもリッチ空燃比側が大きく設定されていることを特徴とする請求項2記載の内燃機関の排気制御装置。
  4. 上記空燃比変動制御手段による変動の周期は、リーン空燃比よりもリッチ空燃比側が短く設定されていることを特徴とする請求項2または3記載の内燃機関の排気制御装置。
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