JP2008106322A - 転がり軸受構成部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】焼入れ時の冷却方法の工夫により、転がり軸受構成部材の転がり面に接線力に起因する剥離が生じないようにして、転がり軸受の寿命を長くする。
【解決手段】焼入れ時の冷却媒体としてイオン性液体を用いる。
【選択図】図1
【解決手段】焼入れ時の冷却媒体としてイオン性液体を用いる。
【選択図】図1
Description
この発明は転がり軸受構成部材(内輪、外輪、または転動体)の製造方法に関する。
自動車、農業機械、建設機械、鉄鋼機械等のトランスミッションやエンジンで用いられる転がり軸受は、潤滑油中に金属の切粉、削り屑、バリ、摩耗粉等の異物が混入した条件下(以下、「異物混入潤滑下」と記す。)で使用されることが多いため、軌道輪や転動体に異物による早期剥離が生じて、大幅に寿命が低下する場合がある。
このような異物混入潤滑下における早期剥離は、軌道輪と転動体との間に異物が噛み込むことで転がり面に形成された圧痕のエッジ部(以下、「圧痕縁」と記す。)に、応力集中が生じることが原因であると言われている。
このような異物混入潤滑下における早期剥離は、軌道輪と転動体との間に異物が噛み込むことで転がり面に形成された圧痕のエッジ部(以下、「圧痕縁」と記す。)に、応力集中が生じることが原因であると言われている。
そこで、本出願人は、異物混入潤滑下で転がり面(内輪および外輪の軌道面、転動体の転動面)に圧痕が形成された場合であっても、圧痕縁への応力集中を緩和するために、特許文献1において、内外輪のうち少なくとも一つの軌道面をなす表層部と、転動体の転動面をなす表層部の残留オーステナイト量を20体積%以上45体積%以下とし、さらに、転動体の転動面をなす表層部の炭窒化物の含有率を体積比で5%以上15%以下とすることを提案している。
ところで、近年、異物混入潤滑下で生じる早期剥離は、上述した圧痕縁への応力集中だけでなく、軌道輪と転動体との転がり面に作用する接線力が原因となっていることが分かってきている。接線力に影響を及ぼす要因としては、転がり面のすべり速度や面圧の他に、転がり面の表面形状や表面粗さ等が挙げられる。表面粗さが小さく、表面形状が良好なほど転動体と軌道輪に作用する接線力は小さくなり、異物混入潤滑下での軸受寿命は長くなる。
このような接線力に起因する剥離には、残留オーステナイトだけでなくマルテンサイトの強度、すなわち高密度の転位に起因した結晶の歪みも大きな影響を及ぼすことが分かった。そして、焼入れ時の冷却速度が速く、冷却温度が低いほど結晶の歪みが大きくなって、接線力に起因する剥離が生じ難いことも分かった。ただし、焼入れ時の冷却温度が低いと、接線力に起因する剥離に対して有効な残留オーステナイト量が低下するため、単に冷却温度を下げる方法を採用することは好ましくない。
特開昭64−55423号公報
本発明の課題は、鋼からなる素材を所定形状に加工した後、焼入れおよび焼戻しを含む熱処理を行うことで転がり軸受の内輪、外輪、または転動体を製造する転がり軸受構成部材の製造方法において、焼入れ時の冷却方法の工夫により、転がり軸受構成部材の転がり面に接線力に起因する剥離が生じないようにして、転がり軸受の寿命を長くすることである。
上記課題を解決するために、本発明は、鋼からなる素材を所定形状に加工した後、焼入れおよび焼戻しを含む熱処理を行うことで転がり軸受の内輪、外輪、または転動体を製造する転がり軸受構成部材の製造方法において、焼入れ時の冷却媒体としてイオン性液体を用いることを特徴とする転がり軸受構成部材の製造方法を提供する。
前記素材としては、転がり軸受構成部材用の素材として通常使用される、焼入れ性や硬さの点で優れたSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなる素材が挙げられる。
前記素材としては、転がり軸受構成部材用の素材として通常使用される、焼入れ性や硬さの点で優れたSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなる素材が挙げられる。
イオン性液体とは、カチオン(陽イオン)と、アニオン(陰イオン)とからなる塩の一種でありながら、常温で液体として存在する常温溶融塩である。イオン性液体は、イオン結合で結合しているため、分子間凝集力で結合した油と比べて結合力が強く、高温環境下でも不揮発性で、熱容量が高い。また、溶融塩の種類にもよるが、粘土は水や油と殆ど変わらない。
本発明で使用するイオン性液体としては、例えば、脂肪族アミン系、脂環式アミン系、イミダゾリウム系、ピリジニウム系、ホスホニウム系のカチオンと、例えば、BF4-、PF6-、(CF3 SO2 )2 N- 、Cl- 、Br- のアニオンとをそれぞれ一種以上組み合わせたものが挙げられる。
焼入れ時の冷却媒体として水や油を用いた場合には、水や油が被焼入れ材である鋼材の表面で沸騰し蒸気膜となって存在する。そして、この蒸気膜が切れた部分から対流による急速な冷却が生じることが知られている。このような冷却プロセスでは、冷却速度を速くすることに限界があるとともに、被焼入れ材の部分部分で冷却速度に差が生じて、熱収縮や相変態による膨張のバランスが崩れ、被焼入れ材の変形が大きくなる場合がある。
本発明の方法においては、イオン性液体を焼入れ時の冷却媒体として用いることで、冷却時にイオン性液体の蒸気が生じないため、冷却速度を速くすることができるとともに、被焼入れ材の冷却ムラが低減される。これにより、結晶の歪みが大きくなって、接線力に起因する剥離が生じ難くなる。また、イオン性液体を焼入れ時の冷却媒体として用いることで、油を用いた場合よりも、同じ温度で冷却した場合の冷却速度が速いため、冷却温度を高くすることができる。これにより、接線力に起因する剥離に対して有効な残留オーステナイト量を確保できる。
本発明の方法によれば、転がり軸受構成部材の転がり面に、接線力に起因する剥離を生じ難くすることができるため、この方法で得られた転がり軸受構成部材を用いて組み立てた転がり軸受の寿命が長くなる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
SUJ2からなる素材を、呼び番号51305のスラスト玉軸受の内輪、外輪、玉の形状に旋盤加工した。これらを840℃で1時間保持した後、下記の各温度の冷却媒体に投入する焼入れを行った。次いで170℃で2時間保持する焼戻しを行った。
No. 1〜3では、50℃で液体であるイオン性液体を冷却媒体として用い、この液体をNo. 1では100℃に、No. 2では75℃に、No. 3では50℃に保持した。No. 4では、鉱油を50℃に保持した。
SUJ2からなる素材を、呼び番号51305のスラスト玉軸受の内輪、外輪、玉の形状に旋盤加工した。これらを840℃で1時間保持した後、下記の各温度の冷却媒体に投入する焼入れを行った。次いで170℃で2時間保持する焼戻しを行った。
No. 1〜3では、50℃で液体であるイオン性液体を冷却媒体として用い、この液体をNo. 1では100℃に、No. 2では75℃に、No. 3では50℃に保持した。No. 4では、鉱油を50℃に保持した。
熱処理後の内輪、外輪、玉を用いて転がり軸受を組み立て、下記の条件で異物混入潤滑下での寿命試験を行った。剥離が生じるまでの回転時間を転がり寿命とし、各値からNo. 4の値を「1」とした相対値を算出した。その結果を下記の表1に示す。
<試験条件>
P/C=0.3
回転速度:3000min-1
潤滑油:VG68
異物の硬さ:Hv870
異物の大きさ:74〜134μm
異物混入量:0.1g
また、20mm×20mm×厚さ6mmの試験片を用い、試験片の板面の中心の温度を熱電対で測定して、No. 1〜4の冷却速度を測定した。この測定結果から、400〜600℃での平均冷却速度を求めた。
その結果も下記の表1に示す。また、冷却速度と寿命の関係を図1にグラフで示す。
P/C=0.3
回転速度:3000min-1
潤滑油:VG68
異物の硬さ:Hv870
異物の大きさ:74〜134μm
異物混入量:0.1g
また、20mm×20mm×厚さ6mmの試験片を用い、試験片の板面の中心の温度を熱電対で測定して、No. 1〜4の冷却速度を測定した。この測定結果から、400〜600℃での平均冷却速度を求めた。
その結果も下記の表1に示す。また、冷却速度と寿命の関係を図1にグラフで示す。
この結果から分かるように、焼入れの冷却媒体として油に変えてイオン性液体を用いることで、同じ50℃で4倍以上の冷却速度が得られる。また、50℃のイオン性液体で冷却した場合には、得られた内輪、外輪、および転動体を用いて組み立てた転がり軸受の寿命を、50℃の油で冷却した場合の5倍以上にすることができる。
また、軸受の転がり寿命は冷却速度と比例関係になっており、イオン性液体を用いて急速に冷却することにより寿命を長くできることが分かる。
また、軸受の転がり寿命は冷却速度と比例関係になっており、イオン性液体を用いて急速に冷却することにより寿命を長くできることが分かる。
Claims (2)
- 鋼からなる素材を所定形状に加工した後、焼入れおよび焼戻しを含む熱処理を行うことで転がり軸受の内輪、外輪、または転動体を製造する転がり軸受構成部材の製造方法において、
焼入れ時の冷却媒体としてイオン性液体を用いることを特徴とする転がり軸受構成部材の製造方法。 - 前記素材は高炭素クロム軸受鋼からなる請求項1記載の転がり軸受構成部材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006291463A JP2008106322A (ja) | 2006-10-26 | 2006-10-26 | 転がり軸受構成部材の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006291463A JP2008106322A (ja) | 2006-10-26 | 2006-10-26 | 転がり軸受構成部材の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2008106322A true JP2008106322A (ja) | 2008-05-08 |
Family
ID=39439932
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2006291463A Pending JP2008106322A (ja) | 2006-10-26 | 2006-10-26 | 転がり軸受構成部材の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2008106322A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE102010050702A1 (de) | 2010-11-06 | 2012-05-10 | Schaeffler Technologies Gmbh & Co. Kg | Lager sowie Verfahren zum reibungsreduzierten Betreiben eines Lagers |
WO2019101503A1 (de) * | 2017-11-21 | 2019-05-31 | Sms Group Gmbh | Verfahren zur herstellung von mehrphasenstählen mittels ionischer flüssigkeiten |
CN114262773A (zh) * | 2021-09-30 | 2022-04-01 | 南京科润新材料技术有限公司 | 一种基于带咪唑环有机电解质的回火液 |
-
2006
- 2006-10-26 JP JP2006291463A patent/JP2008106322A/ja active Pending
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