JP2008101065A - 色素、電極および光電変換素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐久性の高い光電変換素子を提供する。
【解決手段】作用電極10および対向電極20と共に電解質含有体30を備えた色素増感型の光電変換素子において、作用電極10の金属酸化物半導体層12に色素14が担持されている。この色素14は、アズレン骨格と電子吸引性基とを有する色素を含んでいる。このため、作用電極10では、色素14の分解が抑制されると共に、その色素14が金属酸化物半導体層12に定着しやすくなる。
【選択図】図1
【解決手段】作用電極10および対向電極20と共に電解質含有体30を備えた色素増感型の光電変換素子において、作用電極10の金属酸化物半導体層12に色素14が担持されている。この色素14は、アズレン骨格と電子吸引性基とを有する色素を含んでいる。このため、作用電極10では、色素14の分解が抑制されると共に、その色素14が金属酸化物半導体層12に定着しやすくなる。
【選択図】図1
Description
本発明は、色素、それを用いた電極、ならびにそれを用いた光電変換素子に関する。
従来、多様な技術分野において、色素が広く使用されている。一例を挙げると、太陽電池などの光電変換素子の分野では、酸化物半導体電極に色素を担持させ増感させる色素増感型光電変換素子に用いられている。
この色素増感型光電変換素子は、理論的に高い効率が期待でき、従来のシリコン半導体を用いた光電変換素子より、コスト的に非常に有利であると考えられている(例えば特許文献1参照)。従来の色素増感型光電変換素子に用いられる色素としては、配位子として4,4'−ジカルボン酸−2,2'−ビピリジンおよびチオシアン酸を含むルテニウム(Ru)錯体が既に知られている。さらに、アズレン骨格を有するポリマーも光電変換素子の色素として用いることが示唆されている(例えば特許文献2参照)。
特開2003−308891号公報
特表2004−536896号公報
しかしながら、従来の色素は、安定性の面において充分とは言えないため、その色素を用いた光電変換素子では、耐久性に問題が残る。具体的には、従来の色素は光にさらされると分解されやすいため、その色素を用いた光電変換素子では、光電変換効率が低下し、素子として機能しなくなる虞がある。
本発明はかかる問題点を鑑みてなされたもので、その第1の目的は、安定性の高い色素を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、耐久性の高い電極および光電変換素子を提供することにある。
本発明の色素は、アズレン骨格と、電子吸引性基とを有するものである。また、本発明の電極は、上記した色素と、この色素を担持する担持体とを含むものであり、本発明の光電変換素子は、上記した電極を備えるものである。
本発明の色素では、アズレン骨格と共に電子吸引性基を有することから、分解が抑制される。また、本発明の電極および光電変換素子では、上記した色素を含むことから、その色素が担持体に定着しやすくなる。
本発明の色素によれば、アズレン骨格と、電子吸引性基とを有するようにしたので、安定性を向上させることができる。よって、この色素を用いた電極および光電変換素子によれば、耐久性を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施の形態に係る色素は、アズレン骨格と、電子吸引性基とを有している。
電子吸引性基は、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基およびリン酸基のうちの少なくとも1種である。この電子吸引性基は、色素の全体構造のうちのいずれかにあればよく、アズレン骨格に直接的に導入されていてもよいし、アズレン骨格に間接的に導入されていてもよい。なお、色素は、電子吸引性基を複数有していてもよい。
この色素は、さらに、メチン鎖またはメチン鎖を環の一部として含む環状構造(以下、単に「メチン鎖等」と呼ぶ)を有しているのが好ましい。色素の安定性がより向上するからである。なお、色素は、メチン鎖等を複数有していてもよい。
メチン鎖は、1または2以上のCHからなる鎖状構造である。一例を挙げると、炭素数=1の場合は−CH=、炭素数=2の場合は−CH=CH−または=CH−CH=、炭素数=3の場合は−CH=CH−CH=、炭素数=4の場合は−CH=CH−CH=CH−または=CH−CH=CH−CH=、炭素数=5の場合は−CH=CH−CH=CH−CH=である。なお、メチン鎖は、その一部または全部が置換されていてもよい。
メチン鎖を環の一部として含む環状構造は、メチン鎖に相当する構造部分を環の一部として含むことにより、全体として環状をなす構造である。このメチン鎖を環の一部として含む環状構造としては、例えば、化1に表すものなどが挙げられる。すなわち、化1の(1)は、炭素数=3のメチン鎖を含む四員環構造のスクアリリウムであり、(2)は、炭素数=3のメチン鎖を含む五員環構造のクロコニウムであり、(3)は、炭素数=3のメチン鎖を含む六員環構造のシクロヘキセンである。
メチン鎖等は、化2に表すアズレン骨格の1または3の位置に導入されているのが好ましく、メチン鎖または環状構造に含まれるメチン鎖の炭素数は、1以上5以下であるのが好ましい。より高い安定性が得られると共に、優れた光吸収特性が得られるからである。ただし、導入位置および炭素数は、必ずしも上記した場合に限られない。
メチン鎖等は、末端に置換基を有している。以下では、この置換基を「メチン鎖等の置換基」と呼ぶ。このメチン鎖等の置換基は、水素基であってもよいし、水素基以外のものであってもよい。この水素基以外のものは、例えば、1または2以上の不飽和結合を有するもの(メチン鎖を除く)である。ただし、メチン鎖等の置換基の構造は、メチン鎖等の末端が二重結合であるか単結合であるかによって異なる。この場合には、メチン鎖の末端が二重結合であるときに、置換基が芳香族性の炭素環化合物や複素環化合物などであると、その置換基がカチオン化することもある。具体的な置換基の構造は、以下の通りである。
メチン鎖の末端が二重結合である場合におけるメチン鎖等の置換基としては、例えば、化3に表すものなどが挙げられる。すなわち、化3(1)のカチオン化したフェニル基、(2)のカチオン化したアズレン基、(3)のシアノ酢酸基などである。これらの基の骨格を有していれば、その骨格の一部または全部が置換されていてもよい。
この場合におけるメチン鎖等の置換基は、化3に表したものの他、例えば、化4に表した酸性核を有する基や、化5に表した塩基性核を有する基であってもよい。
すなわち、酸性核を有する基は、化4に表した(1)のオキサチアゾリジンからなる基、(2)のチオキソチアゾリジン−5−オンからなる基、(3)のベンゾチオフェン−3−オンからなる基、(4)の2−チオキソチアゾリジン−4−オンからなる基、(5)のイミダゾピリジン−3−オンからなる基、(6)のピラゾール−3−オンからなる基、(7)のインダン−1,3−ジオンからなる基、(8)のジオキサジアジナン−3−オンからなる基などの基である。これらの基の骨格を有していれば、その骨格の一部または全部が置換されていてもよい。
また、塩基性核を有する基は、化5に表した(1)のベンゾチアゾールからなる基、(2)のインドールからなる基、(3)のチアゾロキノリンからなる基、(4)のベンゾオキサゾールからなる基、(5)のイソキノリンからなる基、(6)のテトラゾールからなる基、(7)のナフトイミダゾールからなる基、(8)のキノリンからなる基などの基である。これらの基の骨格を有していれば、その骨格の一部または全部が置換されていてもよい。
一方、メチン鎖の末端が単結合である場合におけるメチン鎖等の置換基としては、例えば、化6に表したものなどが挙げられる。すなわち、(1)のフェニル基、(2)のアズレニル基などである。これらの基の骨格を有していれば、その骨格の一部または全部が置換されていてもよい。
この場合におけるメチン鎖等の置換基は、化6に表したものの他、化7に表した酸性核を有する基や、化8に表した塩基性核を有する基であってもよい。すなわち、酸性核を有する基は、化7のチアゾール−2−チオンからなる基であり、塩基性核を有する基は、化8のインドレニウムからなる基などの基である。これらの基の骨格を有していれば、その骨格の一部または全部が置換されていてもよい。
なお、アズレン骨格は、上記したメチン鎖等の他に、置換基を有していてもよい。以下では、この置換基を「アズレン骨格の置換基」と呼ぶ。このアズレン骨格の置換基としては、例えば、シアノ基、水酸基、メチン鎖、アルコキシル基、アミン基、アルキル基、エステル基、アルデヒド基、チオニル基、ハロゲン基、フェニル基などが挙げられる。もちろん、アズレン骨格の置換基が上記した電子吸引性基に該当する場合には、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基であってもよい。なお、アズレン骨格の置換基がそのアズレン骨格に導入される位置(化2参照)は、特に限定されない。
上記した色素の一例としては、化9に表した化合物などが挙げられる。
化9の(1)は、ビス(2−メトキシ−1−アズレンカルボン酸)−エンである。この場合には、アズレン骨格の3の位置にメチン鎖(炭素数=2)が導入されており、そのメチン鎖の置換基が2-メトキシ−1−アズレンカルボン酸からなる基であると共に、アズレン骨格の置換基がメトキシ基およびカルボキシル基である。これにより、全体として2つの電子吸引性基(カルボキシル基)を有している。
化9の(2)は、6−[2−(4−ジエチルアミノ−フェニル)−ビニル]−2−メトキシ−1−アズレンカルボン酸である。この場合には、アズレン骨格の6の位置にメチン鎖(炭素数=2)が導入されており、そのメチン鎖の置換基が4−ジエチルアミノベンゼンからなる基であると共に、アズレン骨格の置換基がメトキシ基およびカルボキシル基である。これにより、全体として1つの電子吸引性基(カルボキシル基)を有している。
化9の(3)は、3−アズレン−4−イル−2−シアノ−アクリル酸である。この場合には、アズレン骨格の4の位置にメチン鎖(炭素数=1)が導入されており、そのメチン鎖の置換基がシアノ酢酸基であり、全体として1つの電子吸引性基(カルボキシル基)を有している。
化9の(4)は、1−(1−カルボキシ−3−アズレニル)−2−(1−アズレニル)メチニウムクロライドである。この場合には、アズレン骨格の3の位置にメチン鎖(炭素数=1)が導入されており、そのメチン鎖の置換基がカチオン化されたアズレン基であると共に、アズレン骨格の置換基がカルボキシル基である。これにより、全体として1つの電子吸引性基(カルボキシル基)を有している。
化9の(5)は、1−(1−カルボキシ−3−アズレニル)−3−(4−ジエチルアミノフェニル)トリメチニウムアイオダイドである。この場合には、アズレン骨格の3の位置にメチン鎖(炭素数=3)が導入されており、そのメチン鎖の置換基がカチオン化された4−ジエチルアミノベンゼンからなる基であると共に、アズレン骨格の置換基がカルボキシル基である。これにより、全体として1つの電子吸引性基(カルボキシル基)を有している。
化9の(6)は、ビス(1−カルボキシ−3−アズレニル)−スクアリリン酸である。この場合には、アズレン骨格の3の位置に化1(1)のメチン鎖を環の一部として含む環状構造(炭素数=3)が導入されており、そのメチン鎖の置換基がカチオン化されたアズレンカルボン酸からなる基であると共に、アズレン骨格の置換基がカルボキシル基である。これにより、全体として2つの電子吸引性基(カルボキシル基)を有している。
化9の(7)は、[5−(3−アズレン−1−イル−アリリデン)−4−オキソ−2−チオキソ−チアゾリデン−3−イル]−酢酸である。この場合には、アズレン骨格の1の位置にメチン鎖(炭素数=3)が導入されており、そのメチン鎖の置換基が4−オキソ−2−チオキソ−チアゾリデン−3−イル−酢酸からなる基である。これにより、全体として1つの電子吸引性基(カルボキシル基)を有している。
化9の(8)は、[2−(3−アズレン−1−イル−アリリデン)−3,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−インドール−1−イル]−酢酸である。この場合には、アズレン骨格の1の位置にメチン鎖(炭素数=3)が導入されており、そのメチン鎖の置換基が3,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−インドール−1−イル−酢酸からなる基である。これにより、全体として1つの電子吸引性基(カルボキシル基)を有している。
化9の(9)は、2−メトキシ−1−アズレンカルボン酸である。この場合には、アズレン骨格の置換基がメトキシ基およびカルボキシル基であり、全体として1つの電子吸引性基(カルボキシル基)を有している。
なお、アズレン骨格と電子吸引性基とを有していれば、色素が化9に表した化合物に限定されないことは言うまでもない。
この色素は、単体で使用されてもよいし、あるいは他の材料と混合して使用されてもよい。また、この色素は、例えば、電極を構成する色素として、光電変換素子に使用可能である。その場合、電子吸引性基を有するので、耐久性が向上する。
この色素によれば、アズレン骨格と電子吸引性基とを有するので、高温環境においても分解が抑制される。したがって、安定性を向上させることができる。この場合には、特に、メチン鎖も有するようにすれば、さらに安定性を向上させることができると共に、優れた光吸収特性も得ることができる。
次に、本実施の形態に係る色素の使用例について説明する。ここで、色素を有する電極を備えた光電変換素子を例に挙げると、本実施の形態の色素は、以下のようにして光電変換素子に用いられる。
図1は、光電変換素子の断面構成を模式的に表すものであり、図2は、図1に示した光電変換素子の主要部を抜粋および拡大して表すものである。図1および図2に示した光電変換素子は、いわゆる色素増感型太陽電池の主要部である。この光電変換素子は、作用電極10と対向電極20とが電解質含有体30を介して対向配置されたものであり、作用電極10と対向電極20との少なくとも一方は、光透過性を有する電極である。
作用電極10は、例えば、導電性基板11に金属酸化物半導体層12が設けられ、この金属酸化物半導体層12を担持体として色素14が担持されている構造を有している。導電性基板11は、例えば、絶縁性の基板11Aの表面に導電層11Bを設けたものである。
基板11Aの材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、透明ポリマーフィルムなどの絶縁性材料が挙げられる。透明ポリマーフィルムとしては、例えばテトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオクタチックポリステレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシなどが挙げられる。
導電層11Bとしては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)、酸化スズにフッ素をドープしたもの(FTO)などの導電性金属酸化物薄膜や、金(Au)、銀(Ag)、白金などの金属薄膜や、導電性高分子などで形成されたものが挙げられる。
なお、導電性基板11は、例えば、導電性を有する材料によって単層構造となるように構成されていてもよく、その場合、導電性基板11の材料としては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)、酸化スズにフッ素をドープしたもの(FTO)などの導電性金属酸化物、金、銀、白金などの金属、導電性高分子などが挙げられる。
金属酸化物半導体層12は、例えば、緻密層12Aと多孔質層12Bとから形成されている。導電性基板11との界面においては、緻密層12Aが形成され、この緻密層12Aは緻密で空隙が少ないことが好ましく、膜状であることがより好ましい。電解質含有体30と接する表面においては、多孔質層12Bが形成され、この多孔質層12Bは空隙が多く、表面積が大きくなる構造が好ましく、特に多孔質の微粒子が付着している構造が好ましい。金属酸化物半導体の材料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。好ましくは、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブであり、最も好ましくは酸化チタンである。また、これら金属酸化物半導体は、いずれか1種を単独で用いてもよいが、2種以上を複合(混合、混晶、固溶体など)させて用いてもよく、例えば、酸化亜鉛と酸化スズ、酸化チタンと酸化ニオブなどの組み合わせで使用することもできる。
金属酸化物半導体層12に担持される色素14は、上記した本発明の色素を含んでいる。この色素は単独で用いてもよく、他の有機色素、有機金属錯体化合物を複数混合して用いてもよい。他の色素は、金属酸化物半導体層12と化学的に結合することができる電子吸引性の置換基を有する色素が好ましく、特に分子内にカルボキシル基、スルホン酸基、もしくはリン酸基を有するものが好ましい。
他の色素としては、例えば、エオシンY、ジブロモフルオレセイン、フルオレセイン、ロ−ダミンB、ピロガロ−ル、ジクロロフルオレセイン、エリスロシンB(エリスロシンは登録商標)、フルオレシン、マ−キュロクロム、トリスアゾ系色素、アントラキノン系色素、多環キノン系色素、インジゴ系色素、ジフェニルメタン系色素、トリメチルメタン系色素、キノリン系色素、ベンゾフェノン系色素、ナフトキノン系色素、ペリレン系色素、フルオレノン系色素、ペリノン系色素、キナクリドン系色素、無金属フタロシアニン系色素、無金属ポルフィリン系色素などの有機色素などが挙げられる。
また、有機金属錯体化合物も好ましく、特に、芳香族複素環内にある窒素アニオンと金属カチオンとで形成されるイオン性の配位結合と、窒素原子またはカルコゲン原子と金属カチオンとの間に形成される非イオン性配位結合の両方を有する有機金属錯体化合物や、酸素アニオンもしくはイオウアニオンと金属カチオンとで形成されるイオン性の配位結合と、窒素原子またはカルコゲン原子と金属カチオンとの間に形成される非イオン性配位結合の両方を有する有機金属錯体化合物が好ましい。具体的には、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の金属フタロシアニン系色素、金属ナフタロシアニン系色素、金属ポルフィリン系色素、ビピリジルRu錯体、タ−ピリジルRu錯体、フェナントロリンRu錯体、ビシンコニン酸Ru、アゾRu錯体、キノリノールRu錯体などのRu錯体などが挙げられる。
対向電極20は、例えば、導電性基板21に導電層22を設けたものである。導電性基板21の材料としては、例えば、作用電極10の導電性基板11と同様の材料が挙げられる。導電層22に用いる導電材としては、例えば、白金、金、銀、銅、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウムなどの金属、炭素(C)、または導電性高分子などが挙げられる。これらの導電材は、単独で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。また必要に応じて、結着材としてアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、セルロース、メラミン樹脂、フロロエラストマー、ポリイミド樹脂などを用いてもよい。なお、対向電極20は、例えば、導電層22の単層構造でもよい。
電解質含有体30としては、例えば、レドックス電解質を含むものなどが挙げられる。レドックス電解質としては、例えば、I-/I3 -系や、Br-/Br3 -系、キノン/ハイドロキノン系などが挙げられる。このようなレドックス電解質は、例えば、I-/I3 -系の電解質の場合、ヨウ素のアンモニウム塩とヨウ素を混合することによって得ることができる。電解質含有体30は、液体電解質でもよく、これを高分子物質中に含有させた固体高分子電解質でもよい。液体電解質の溶媒としては、電気化学的に不活性なものが用いられ、例えば、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートなどが挙げられる。
また、電解質含有体30として、例えば、レドックス電解質に代えて、固体電解質などの固体電荷移動層を設けてもよい。固体電荷移動層は、例えば、固体中のキャリアー移動が電気伝導にかかわる材料を有している。この材料としては、電子輸送材料や正孔(ホール)輸送材料などが好ましい。
正孔輸送材料としては、芳香族アミン類やトリフェニレン誘導体類などが好ましく、例えば、オリゴチオフェン化合物、ポリピロール、ポリアセチレンおよびその誘導体、ポリ(p−フェニレン)およびその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)およびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリトルイジンおよびその誘導体などの有機導電性高分子などが挙げられる。
また、正孔輸送材料としては、例えば、p型無機化合物半導体を用いてもよい。このp型無機化合物半導体は、バンドギャップが2eV以上であることが好ましく、さらに2.5eV以上であることが好ましい。また、p型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルは色素の正孔を還元できる条件から、作用電極10(色素吸着電極)のイオン化ポテンシャルより小さいことが必要である。使用する色素によってp型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は異なってくるが、一般に4.5eV以上5.5eV以下であることが好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下であることが好ましい。
p型無機化合物半導体としては、例えば、一価の銅を含む化合物半導体が挙げられる。一価の銅を含む化合物半導体の一例としては、CuI、CuSCN、CuInSe2、Cu(In,Ga)Se2、CuGaSe2、Cu2O、CuS、CuGaS2、CuInS2、CuAlSe2などがある。このほかのp型無機化合物半導体として、例えば、GaP、NiO、CoO、FeO、Bi2O3、MoO2、Cr2O3などが挙げられる。
このような固体電荷移動層の形成方法としては、作用電極10の上に直接、固体電荷移動層を形成する方法があり、そののち対向電極20を形成付与してもよい。
有機導電性高分子を含む正孔輸送材料は、例えば、真空蒸着法、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解重合法、光電解重合法などの手法により電極内部に導入することができる。無機固体化合物の場合も、例えば、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解メッキ法などの手法により電極内部に導入することができる。
このように形成される固体電荷移動層(特に、正孔輸送材料を有するもの)の一部は、金属酸化物半導体層の多孔質構造の隙間に部分的に浸透し、直接接触する形態となることが好ましい。
この光電変換素子は、例えば以下のように製造することができる。
まず、例えば、導電性基板11の導電層11Bが形成されている面に金属酸化物半導体層12を形成し、金属酸化物半導体層12に色素14を担持させることにより、作用電極10を作製する。この金属酸化物半導体層12を形成する際には、金属酸化物半導体の粉末を金属酸化物半導体のゾル液に分散させることにより、金属酸化物スラリーとし、その金属酸化物スラリーを導電性基板11に塗布して乾燥させたのち、焼成する。この金属酸化物半導体層12が形成された導電性基板11を、有機溶媒に上記した色素14を溶解した色素溶液に浸漬し、色素14を担持させる。
次に、例えば、導電性基板21の片面に導電層22を形成することにより、対向電極20を作製する。導電層22は、例えば、導電材をスパッタリングすることで形成する。
続いて、作用電極10の色素14を担持した面と、対向電極20の導電層22を形成した面とが所定の間隔を保つと共に、対向するように配置する。その作用電極10と対向電極20との間に、電解質含有体30を注入し、全体を封止する。これにより図1および図2に表した光電変換素子が完成する。
この光電変換素子では、作用電極10に担持された色素14に光(太陽光または、太陽光と同等の可視光)があたると、光を吸収して励起した色素14が電子を金属酸化物半導体層12へ供給することで、対向電極20との間に電位差が生じ、両極間に電流が流れる。
この光電変換素子によれば、上記した本発明の色素を含む色素14を作用電極10に担持させるようにしたので、耐久性を向上させることができる。この場合には、特に、金属酸化物半導体層12が金属酸化物であれば、その金属酸化物半導体層12に対して色素14がより定着しやすくなるため、耐久性をより向上することができる。
本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
まず、本発明の色素を代表して、以下の手順により、化9(1)に示したビス(2−メトキシ−1−アズレンカルボン酸)−エンを合成した。すなわち、まず、エタノール150mlにナトリウム2.1gを加え、ナトリウムエトキシドを得た。次に、2−クロロトロポン2.1gと、マロン酸ジエチル7.2gとを加えたのち、40時間室温で攪拌した。そののち、水と酢酸とを加え、ジクロロメタンで抽出を行った。次に、溶媒(ジクロロメタン)を留去したのち、エタノールで再結晶し、2−ヒドロキシ−1,3−アズレンジカルボン酸エチルを収率48%で得た。
次に、エタノール10mlに2−ヒドロキシ−1,3−アズレンジカルボン酸エチル1.0gと2N水酸化カリウム溶液2mlとを混合し、3時間還流した。反応物を水で希釈し、その希釈液を6N塩酸で酸性にしたのち、酸性の希釈液をエーテルで抽出し、抽出液を濃縮した。濃縮液からカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)により、2−ヒドロキシ−1−アズレンカルボン酸エチルを収率20%で得た。
次に、2−ヒドロキシ−1−アズレンカルボン酸エチル500mgをエーテルに懸濁し、その懸濁液に、氷冷下において、トリメチルシリル−ジアゾメタン1mlを滴下して3時間攪拌した。次に、溶媒を留去し、残留物をトルエン100%に溶解させたのち、その溶液をカラムクロマトグラフィー(アルミナ:トルエン100%)を通すことで、2−メトキシ−1−アズレンカルボン酸エチルを収率91%で得た。
次に、氷冷した塩化ホスホリル837mgを撹拌しているところにN,N−ジメチルホルムアミド3mlをゆっくり滴下し、Vilsmeier試薬を作製した。次に、2−メトキシ−1−アズレンカルボン酸エチル450mgをN,N−ジメチルホルムアミド7mlに溶解させたのち、その溶液に氷冷下においてVilsmeier試薬を加え、1時間後に室温まで戻して一晩反応させた。その反応液を10%水酸化カリウム100mlに注ぎ、トルエンで抽出した。その抽出液からカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:トルエン100%)により、緑色の留分を回収し、ヘキサンで再結晶することで、2−メトキシ−3−カルバルデヒド−1−アズレンカルボン酸エチルを得た。次に、2−メトキシ−3−カルバルデヒド−1−アズレンカルボン酸エチルを1,2−ジメトキシエタンに溶解させ、三塩化チタン、金属リチウムを加え、3時間加熱還流した。その反応液に水と酢酸とを加え、ジクロロメタンで抽出を行った。その抽出液からカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:トルエン100%)によって緑色の留分を回収し、ヘキサンで再結晶することで、ジ(2−メトキシ−1−アズレンカルボン酸エチル)−エンを得た。次に、ジ(2−メトキシ−1−アズレンカルボン酸エチル)−エンを水酸化カリウムに溶解し、この溶液を3時間還流した。そののち、その反応液に6N塩酸を加えることで、最終合成物を収率28%で得た。
この最終合成物について、質量分析および最大吸収波長の測定を行った。液体クロマトグラフ質量分析装置にて、分子量を測定した結果、分子量428のカチオンを確認した。また、最大吸収波長を測定した結果、536nmにピーク波長がみられた。この結果より、得られた化合物が化9(1)に示したビス(2−メトキシ−1−アズレンカルボン酸)−エンであることが確認され、可視光領域に吸収を持つことがわかった。以上のことから、本発明の色素を合成可能であることが確認された。
次に、上記実施の形態で説明した光電変換素子の具体例として色素増感型太陽電池を以下の要領で作製した。
(実施例1〜9)
まず、化9に示した(1)〜(9)の色素を用意した。次に、酸化チタンゾル液を調整した。チタンイソプロポキシド125mlを、0.1M硝酸水溶液750mlに攪拌しながら添加し、80℃で8時間激しく攪拌した。得られた液体をテフロン(登録商標)製の圧力容器内で230℃、16時間オ−トクレ−ブにて処理した。そののち沈殿物を含むゾル液を攪拌により再懸濁させた。次に、吸引濾過により、再懸濁しなかった沈殿物を除き、エバポレ−タ−で酸化チタン濃度が11質量%になるまでゾル液を濃縮した。基板への塗れ性を高めるため、Triton X-100(Tritonは登録商標)を1滴添加した。次に、酸化チタンの粉末P−25をこの酸化チタンゾル液に、酸化チタンの含有率が全体として33質量%となるように加え、自転公転を利用した遠心撹拌を1時間行い分散させ、金属酸化物スラリーとした。
まず、化9に示した(1)〜(9)の色素を用意した。次に、酸化チタンゾル液を調整した。チタンイソプロポキシド125mlを、0.1M硝酸水溶液750mlに攪拌しながら添加し、80℃で8時間激しく攪拌した。得られた液体をテフロン(登録商標)製の圧力容器内で230℃、16時間オ−トクレ−ブにて処理した。そののち沈殿物を含むゾル液を攪拌により再懸濁させた。次に、吸引濾過により、再懸濁しなかった沈殿物を除き、エバポレ−タ−で酸化チタン濃度が11質量%になるまでゾル液を濃縮した。基板への塗れ性を高めるため、Triton X-100(Tritonは登録商標)を1滴添加した。次に、酸化チタンの粉末P−25をこの酸化チタンゾル液に、酸化チタンの含有率が全体として33質量%となるように加え、自転公転を利用した遠心撹拌を1時間行い分散させ、金属酸化物スラリーとした。
次に作用電極10を作製した。縦2.0cm×横1.5cm×厚さ1.1mmの導電性ガラス基板(F−SnO2)よりなる導電性基板11に、縦0.5cm×横0.5cmの四角形を囲むように厚さ70μmのマスキングテープを貼り、この部分に金属酸化物スラリー3mlを一様の厚さとなるように塗布して乾燥させたのち、マスキングテープを剥がし取った。次に、この基板を電気炉により500℃で焼成し、厚さ約10μmの金属酸化物半導体層12を形成した。この金属酸化物半導体層12として酸化チタン半導体層が形成された導電性基板11を、用意した色素の無水エタノール溶液(3×10-4mol/l)に浸漬し、色素14を担持させた。
次に、縦2.0cm×横1.5cm×厚さ1.1mm導電性ガラス基板(F−SnO2)よりなる導電性基板21の片面に、スパッタリングにより白金よりなる100nmの厚さの導電層22を形成することにより、対向電極20を作製した。予め、導電性基板21には、電解質含有体30注入用の穴(φ1mm)を2つ開けておいた。電解質含有体30は、アセトニトリルに対して、ジメチルヘキシルイミダゾリウムヨージド(0.6mol/l)、ヨウ化リチウム(0.1mol/l)、ヨウ素(0.05mol/l)、水(1mol/l)の濃度になるように調製した。
次に、作用電極10の色素14を担持した面と、対向電極20の導電性層22を形成した面とが所定の間隔を保つために厚さ50μmのスペーサを介して貼り合わせた。このときスペーサは金属酸化物半導体層12の周りを囲むように配置した。次に、対向電極20に開けておいた穴から調整した電解質含有体13を注入したのち、全体を封止し色素増感型太陽電池を得た。以上により、化9に示した(1)〜(9)の色素をそれぞれ用いて色素増感型太陽電池を作製し、表1に示す実施例1〜9とした。
(比較例)
本実施例に対する比較例として、配位子として4,4'−ジカルボン酸−2,2'−ビピリジンおよびチオシアン酸を含むルテニウム錯体を色素に用いたことを除き、他は本実施例と同様にして色素増感型太陽電池を作製した。なお、4,4'−ジカルボン酸−2,2'−ビピリジンの構造式は、化10に示したとおりである。
本実施例に対する比較例として、配位子として4,4'−ジカルボン酸−2,2'−ビピリジンおよびチオシアン酸を含むルテニウム錯体を色素に用いたことを除き、他は本実施例と同様にして色素増感型太陽電池を作製した。なお、4,4'−ジカルボン酸−2,2'−ビピリジンの構造式は、化10に示したとおりである。
作製した実施例1〜9および比較例の色素増感型太陽電池について、耐久性試験を行った。具体的には、色素増感型太陽電池を80℃,80%RHで500時間保存し、光電流密度(Jsc)の経時的変化を測定することにより、保存前の光電流密度に対する500時間保存後の光電流密度の減少率(%)を求めた。この減少率は、[(保存前の光電流密度−500時間保存後の光電流密度)/保存前の光電流密度]×100で表される。得られた結果を表1に示す。
表1に示したように、実施例1〜9によれば、比較例に比べて減少率をほぼ半分以下に抑えることができた。すなわち、本発明の色素増感型太陽電池によれば、高温においても色素の分解が抑制され、優れた安定性が得られるため、優れた耐久性が得られることがわかった。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記した実施の形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本発明の色素の使用用途は、必ずしも既に説明した用途に限らず、他の用途であってもよい。他の用途としては、例えば、液晶表示装置のカラーフィルタなどが挙げられる。
10…作用電極、11,21…導電性基板、11A…基板、11B…導電層、12…金属酸化物半導体層、12A…緻密層、12B…多孔質層、14…色素、20…対向電極、22…導電層、30…電解質含有体。
Claims (10)
- アズレン骨格と、
電子吸引性基と
を有することを特徴とする色素。 - 前記電子吸引性基は、カルボキシル基(−COOH)、スルホン酸基(-SO3H)およびリン酸基(−PO3H)からなる群のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の色素。
- さらに、メチン鎖またはメチン鎖を環の一部として含む環状構造を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の色素。
- 前記メチン鎖の炭素数は、1以上5以下であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の色素。
- 前記メチン鎖は、末端に置換基を有することを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の色素。
- 前記置換基は、1または2以上の不飽和結合を有するもの(メチン鎖を除く)であることを特徴とする請求項6記載の色素。
- 請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の色素と、
この色素を担持する担持体と
を含むことを特徴とする電極。 - 前記担持体は、金属酸化物であることを特徴とする請求項8記載の電極。
- 請求項8または請求項9に記載の電極を備えることを特徴とする光電変換素子。
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JP2006283012A JP2008101065A (ja) | 2006-10-17 | 2006-10-17 | 色素、電極および光電変換素子 |
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KR101236035B1 (ko) | 2008-09-30 | 2013-02-21 | 가부시키가이샤 아데카 | 광전 변환 소자용 색소 및 광전 변환 소자 |
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2006
- 2006-10-17 JP JP2006283012A patent/JP2008101065A/ja not_active Withdrawn
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