JP2008096737A - プラスチック製光学物品とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】プラスチック基材から発生する水分を外部に逃がすことによって、ムクミの発生しない、かつ、耐擦傷性に優れたプラスチック製光学物品とその製造方法を提供すること。
【解決手段】メガネレンズ1は、レンズ基材10の表面に、ハードコート層11、反射防止層12、防汚層13が順に積層される。 反射防止層12は、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層され、ハードコート層11側から順に第1膜121、第2膜122、第3膜123、第4膜124、第5膜125からなる5層で構成されている。第1膜121、第3膜123、第5膜125は二酸化ケイ素からなり、第2膜122、第4膜124は、酸化窒化ケイ素からなる。
なお、反射防止層12は、CVD法(化学気相成長法)により形成することができる。
【選択図】図1
【解決手段】メガネレンズ1は、レンズ基材10の表面に、ハードコート層11、反射防止層12、防汚層13が順に積層される。 反射防止層12は、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層され、ハードコート層11側から順に第1膜121、第2膜122、第3膜123、第4膜124、第5膜125からなる5層で構成されている。第1膜121、第3膜123、第5膜125は二酸化ケイ素からなり、第2膜122、第4膜124は、酸化窒化ケイ素からなる。
なお、反射防止層12は、CVD法(化学気相成長法)により形成することができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、プラスチック製光学物品とその製造方法に関する。
一般に、メガネレンズなどのプラスチック製光学物品の表面には、傷防止のためのハードコート層や、ゴースト及びちらつきを防止するための反射防止層、そして撥水効果を付与するための防汚層などが形成されている。
反射防止層はハードコート層表面に異なる屈折率を持つ物質を交互に積層してなるいわゆる多層反射防止層として形成される。このような多層反射防止層を構成する物質としては、低屈折率層に二酸化ケイ素が用いられ、高屈折率層にZrO2(酸化ジルコニウム)、Ta2O5(酸化タンタル)、TiO2(酸化チタン)、Nb2O5(酸化ニオブ)等が用いられていた。これらの組み合わせにより形成された光学物品の耐擦傷性は、使用者の乱暴な取り扱いや不注意などにより、必ずしも最表面の傷を防げることはなかった。
そこで、低屈折率層に酸化ケイ素、高屈折率層に窒化ケイ素を持つ構造とすることによって、耐擦傷性をさらに高めることができる技術が開発された。例えば、特許文献1には低屈折率層に二酸化ケイ素、高屈折率層に四窒化三ケイ素を用いた反射防止層を製造する技術が開示されている。
反射防止層はハードコート層表面に異なる屈折率を持つ物質を交互に積層してなるいわゆる多層反射防止層として形成される。このような多層反射防止層を構成する物質としては、低屈折率層に二酸化ケイ素が用いられ、高屈折率層にZrO2(酸化ジルコニウム)、Ta2O5(酸化タンタル)、TiO2(酸化チタン)、Nb2O5(酸化ニオブ)等が用いられていた。これらの組み合わせにより形成された光学物品の耐擦傷性は、使用者の乱暴な取り扱いや不注意などにより、必ずしも最表面の傷を防げることはなかった。
そこで、低屈折率層に酸化ケイ素、高屈折率層に窒化ケイ素を持つ構造とすることによって、耐擦傷性をさらに高めることができる技術が開発された。例えば、特許文献1には低屈折率層に二酸化ケイ素、高屈折率層に四窒化三ケイ素を用いた反射防止層を製造する技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1で用いた四窒化三ケイ素は、二酸化ケイ素の約10倍の高いガスバリア性を持っているため、製造工程から使用時にいたるまでの長時間にわたってプラスチック基材から発生する水分を食い止めてしまう。その結果、基材が膨潤してムクミ(膜浮き)が発生し、プラスチックレンズの耐久性を低下させてしまうという問題があった。
したがって、本発明の目的は、プラスチック基材から発生する水分を外部に逃がすことによって、ムクミの発生しない、かつ、耐擦傷性に優れたプラスチック製光学物品とその製造方法を提供することである。
したがって、本発明の目的は、プラスチック基材から発生する水分を外部に逃がすことによって、ムクミの発生しない、かつ、耐擦傷性に優れたプラスチック製光学物品とその製造方法を提供することである。
本発明のプラスチック製光学物品は、ハードコート層を有する基材表面に、第1膜と第2膜とが積層してなる反射防止層が設けられたプラスチック製光学物品であって、前記第1膜は、二酸化ケイ素膜であり、前記第2膜は酸化窒化ケイ素膜であることを特徴とする。
この発明によれば、第2膜である酸化窒化ケイ素膜に酸素が含まれているので、プラスチック基材から発生した水分を透過することができる。
したがって、ムクミが発生せず、耐久性に優れたプラスチック製光学物品を提供することができる。
また、二酸化ケイ素からなる低屈折率層と、酸化窒化ケイ素からなる高屈折率層とが交互に積層されているので、耐擦傷性にも優れている。
この発明によれば、第2膜である酸化窒化ケイ素膜に酸素が含まれているので、プラスチック基材から発生した水分を透過することができる。
したがって、ムクミが発生せず、耐久性に優れたプラスチック製光学物品を提供することができる。
また、二酸化ケイ素からなる低屈折率層と、酸化窒化ケイ素からなる高屈折率層とが交互に積層されているので、耐擦傷性にも優れている。
本発明のプラスチック製光学物品は、ハードコート層の直上が反射防止層の第1膜であることが好ましい。
この発明によれば、ハードコート層に接する面に第1膜である酸化ケイ素膜が積層されているので、ハードコート層に対する反射防止層の密着性が優れ、耐擦傷性も向上する。なお、ハードコート層に接する面に第2膜である酸化窒化ケイ素を積層した場合には、密着性に問題があり、ムクミの原因ともなり得る。
この発明によれば、ハードコート層に接する面に第1膜である酸化ケイ素膜が積層されているので、ハードコート層に対する反射防止層の密着性が優れ、耐擦傷性も向上する。なお、ハードコート層に接する面に第2膜である酸化窒化ケイ素を積層した場合には、密着性に問題があり、ムクミの原因ともなり得る。
本発明のプラスチック製光学物品は、反射防止層の最上層が第1膜であることが好ましい。
この発明によれば、反射防止層の最上層に第1膜である酸化ケイ素膜が積層されるので、耐擦傷性に優れる。
また、反射防止層の表面に防汚層などを積層する場合に、防汚層の反射防止層への密着性が優れ、耐久性に優れたプラスチック製光学物品を提供することができる。
この発明によれば、反射防止層の最上層に第1膜である酸化ケイ素膜が積層されるので、耐擦傷性に優れる。
また、反射防止層の表面に防汚層などを積層する場合に、防汚層の反射防止層への密着性が優れ、耐久性に優れたプラスチック製光学物品を提供することができる。
本発明のプラスチック製光学物品は、メガネレンズであることが好ましい。
この発明によれば、前述の反射防止層を積層しているので、前述の作用効果を奏することができるメガネレンズを提供することができる。
この発明によれば、前述の反射防止層を積層しているので、前述の作用効果を奏することができるメガネレンズを提供することができる。
本発明のプラスチック製光学物品の製造方法は、前記第1膜と前記第2膜とは、化学気相成長法(CVD法)により酸素を導入して形成されることを特徴とする。
この発明によれば、酸化ケイ素膜からなる第1膜と、酸化窒化ケイ素膜からなる第2膜とが交互に積層してなる反射防止層を、CVD法により形成することができる。
CVD法は既存の積層技術であるため、原料となるガスを変えるだけで、容易に積層することができる。具体的には、第1膜を二酸化ケイ素で形成する場合には、酸素雰囲気下でSiOを導入する。第2膜を酸化窒化ケイ素で形成する場合には、酸素雰囲気下でSiNを導入する。
したがって、既存の技術を用いて形成することができるため、コストや手間をかけることなく、簡単に積層することができる。
この発明によれば、酸化ケイ素膜からなる第1膜と、酸化窒化ケイ素膜からなる第2膜とが交互に積層してなる反射防止層を、CVD法により形成することができる。
CVD法は既存の積層技術であるため、原料となるガスを変えるだけで、容易に積層することができる。具体的には、第1膜を二酸化ケイ素で形成する場合には、酸素雰囲気下でSiOを導入する。第2膜を酸化窒化ケイ素で形成する場合には、酸素雰囲気下でSiNを導入する。
したがって、既存の技術を用いて形成することができるため、コストや手間をかけることなく、簡単に積層することができる。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、光学物品としてメガネレンズを適用した一例である。
図1は、本実施形態のメガネレンズ1の断面図である。(1.メガネレンズ1の構成)
メガネレンズ1は、レンズ基材10の表面に、ハードコート層11、反射防止層12、防汚層13が、内側から外側に向かって順に積層される。
反射防止層12は、低屈折率層である第1膜121と、高屈折率層である第2膜122とが交互に積層され、ハードコート層11側から順に第1膜121、第2膜122、第3膜123、第4膜124、第5膜125からなる5層で構成されている。第3膜123および第5膜125は、第1膜121と同じ低屈折率層であり、第4膜124は、第2膜122と同じ高屈折率層である。
図1は、本実施形態のメガネレンズ1の断面図である。(1.メガネレンズ1の構成)
メガネレンズ1は、レンズ基材10の表面に、ハードコート層11、反射防止層12、防汚層13が、内側から外側に向かって順に積層される。
反射防止層12は、低屈折率層である第1膜121と、高屈折率層である第2膜122とが交互に積層され、ハードコート層11側から順に第1膜121、第2膜122、第3膜123、第4膜124、第5膜125からなる5層で構成されている。第3膜123および第5膜125は、第1膜121と同じ低屈折率層であり、第4膜124は、第2膜122と同じ高屈折率層である。
(1.レンズ基材)
レンズ基材10は、屈折力、機械的強度、透過率など、メガネまたは光学物品における基本特性を維持するための機能を有する。
レンズ基材10は特に限定されないが、(メタ)アクリル樹脂をはじめとしてスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アリル樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)等のアリルカーボネート樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、イソシアネート化合物とジエチレングリコールなどのヒドロキシ化合物との反応で得られたウレタン樹脂、イソシアネート化合物とポリチオール化合物とを反応させたチオウレタン樹脂、分子内に1つ以上のジスルフィド結合を有する(チオ)エポキシ化合物を含有する重合性組成物を硬化して得られる透明なプラスチック樹脂等を例示することができる。
レンズ基材10は、屈折力、機械的強度、透過率など、メガネまたは光学物品における基本特性を維持するための機能を有する。
レンズ基材10は特に限定されないが、(メタ)アクリル樹脂をはじめとしてスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アリル樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)等のアリルカーボネート樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、イソシアネート化合物とジエチレングリコールなどのヒドロキシ化合物との反応で得られたウレタン樹脂、イソシアネート化合物とポリチオール化合物とを反応させたチオウレタン樹脂、分子内に1つ以上のジスルフィド結合を有する(チオ)エポキシ化合物を含有する重合性組成物を硬化して得られる透明なプラスチック樹脂等を例示することができる。
(2.ハードコート層)
ハードコート層11としては、本来の機能である耐擦傷性を向上するものであればよい。例えば、メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等を用いたハードコート膜が挙げられるが、シリコーン系樹脂を用いたハードコート膜が最も好ましい。例えば、金属酸化物微粒子、シラン化合物からなるコーティング組成物を塗布し硬化させてハードコート膜を形成することができる。このコーティング組成物にはコロイダルシリカ、および多官能性エポキシ化合物等の成分を含んでいてもよい。
ハードコート層11としては、本来の機能である耐擦傷性を向上するものであればよい。例えば、メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等を用いたハードコート膜が挙げられるが、シリコーン系樹脂を用いたハードコート膜が最も好ましい。例えば、金属酸化物微粒子、シラン化合物からなるコーティング組成物を塗布し硬化させてハードコート膜を形成することができる。このコーティング組成物にはコロイダルシリカ、および多官能性エポキシ化合物等の成分を含んでいてもよい。
さらにハードコート層11は、従来公知の各種添加剤を含むことができる。例えば、塗布性の向上を目的とした各種レベリング剤、耐候性の向上を目的とした紫外線吸収剤や酸化防止剤、さらに染料や顔料等の添加剤などが挙げられる。
このようなハードコート層11を形成する方法としては、ディッピング法、スピンナー法、スプレー法、フロー法により、ハードコート層11を構成する組成物を塗布し、その後、40〜200℃の温度で数時間加熱乾燥する方法が例示できる。
このようなハードコート層11を形成する方法としては、ディッピング法、スピンナー法、スプレー法、フロー法により、ハードコート層11を構成する組成物を塗布し、その後、40〜200℃の温度で数時間加熱乾燥する方法が例示できる。
(3.反射防止層)
(3−1.反射防止層の構成)
次に、反射防止層12について説明する。
反射防止層12は、反射防止、フィルタリング等の光学機能のほか、耐擦傷性機能も有する。なお、反射防止層12は、可視光領域(380nm〜700nm)で反射率が3%以下の機能を有する。
反射防止層12は、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層され、第1膜121と第2膜122と第3膜123と第4膜124と第5膜125とからなる5層で形成される。
第1膜121と第3膜123と第5膜125は、二酸化ケイ素(SiO2)からなる低屈折率層であり、第2膜122と第5膜125は、酸化窒化ケイ素(SiON)からなる高屈折率層となっている。
(3−1.反射防止層の構成)
次に、反射防止層12について説明する。
反射防止層12は、反射防止、フィルタリング等の光学機能のほか、耐擦傷性機能も有する。なお、反射防止層12は、可視光領域(380nm〜700nm)で反射率が3%以下の機能を有する。
反射防止層12は、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層され、第1膜121と第2膜122と第3膜123と第4膜124と第5膜125とからなる5層で形成される。
第1膜121と第3膜123と第5膜125は、二酸化ケイ素(SiO2)からなる低屈折率層であり、第2膜122と第5膜125は、酸化窒化ケイ素(SiON)からなる高屈折率層となっている。
(3−2.反射防止層12の形成)
反射防止層12は、CVD法(化学気相成長法)により形成することができる。
図2は、メガネレンズ1を製造するための蒸着装置2を模式的に示した図である。この蒸着装置2により、ハードコート層11が積層されたレンズ基材10の表面に、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層され、反射防止層12を形成する。
以下、蒸着装置2の構成と、反射防止層12の形成方法について詳述する。
蒸着装置2は、真空排気装置(ターボ分子ポンプ、メカニカルブースターポンプ、ドライポンプ等)で排気できるようになっている。また、APC(自動圧力制御装置)によって蒸着装置2内の圧力は一定に保たれる。
基材載置台22にはメガネレンズ1と光学層厚モニタ用ガラス23がセットされている。蒸着装置2にはメガネレンズ1を加熱するヒータ24が備えられている。
蒸着装置2では、高周波発生装置25から電極26に高周波電圧が印可されると、蒸着装置2内に原料ガスやキャリアガスに基づくプラズマが発生し、メガネレンズ1の表面に膜を形成することができる。
反射防止層12は、CVD法(化学気相成長法)により形成することができる。
図2は、メガネレンズ1を製造するための蒸着装置2を模式的に示した図である。この蒸着装置2により、ハードコート層11が積層されたレンズ基材10の表面に、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層され、反射防止層12を形成する。
以下、蒸着装置2の構成と、反射防止層12の形成方法について詳述する。
蒸着装置2は、真空排気装置(ターボ分子ポンプ、メカニカルブースターポンプ、ドライポンプ等)で排気できるようになっている。また、APC(自動圧力制御装置)によって蒸着装置2内の圧力は一定に保たれる。
基材載置台22にはメガネレンズ1と光学層厚モニタ用ガラス23がセットされている。蒸着装置2にはメガネレンズ1を加熱するヒータ24が備えられている。
蒸着装置2では、高周波発生装置25から電極26に高周波電圧が印可されると、蒸着装置2内に原料ガスやキャリアガスに基づくプラズマが発生し、メガネレンズ1の表面に膜を形成することができる。
次に、反射防止層12を形成する方法について説明する。
ハードコート層11が積層されたメガネレンズ1を基材載置台22に載せ、基材載置台22を蒸着装置2内に設置し、真空排気した後、約80℃に加熱する。原料ガスとしてTEOS(テトラエトキシシラン)とO2の混合ガス、キャリアガスにArを導入する。蒸着装置2内にプラズマを発生させ、メガネレンズ1上にSiO2からなる第1膜121を形成する。なお、この条件は一例であり、本実施形態はこれに限定されるものではない。
次に、第1膜形成時に原料としたTEOS(テトラエトキシシラン)とO2の混合ガスをSiH4とN2OとO2との混合ガスに変えて、第1膜形成と同様に行い、SiONからなる第2膜122を形成する。
これらを繰り返し、SiO2からなる第3膜123、SiONからなる第4膜124、さらにSiO2からなる第5膜125を形成し、反射防止層12を形成することができる。
ハードコート層11が積層されたメガネレンズ1を基材載置台22に載せ、基材載置台22を蒸着装置2内に設置し、真空排気した後、約80℃に加熱する。原料ガスとしてTEOS(テトラエトキシシラン)とO2の混合ガス、キャリアガスにArを導入する。蒸着装置2内にプラズマを発生させ、メガネレンズ1上にSiO2からなる第1膜121を形成する。なお、この条件は一例であり、本実施形態はこれに限定されるものではない。
次に、第1膜形成時に原料としたTEOS(テトラエトキシシラン)とO2の混合ガスをSiH4とN2OとO2との混合ガスに変えて、第1膜形成と同様に行い、SiONからなる第2膜122を形成する。
これらを繰り返し、SiO2からなる第3膜123、SiONからなる第4膜124、さらにSiO2からなる第5膜125を形成し、反射防止層12を形成することができる。
(4.防汚層)
反射防止層12の表面には、防汚層13が形成される。
防汚層13は、メガネレンズを使用するに際し、レンズ面に手垢、汗、化粧料等による汚れが付着し難く、しかも汚れを拭き取りやすくするために、防汚性能(撥水撥油性能)を付与する。
防汚層13は、フッ素系のフルオロアルキシシラン等を用いて形成することができる。また、塗布方法としては、ディッピング法、スピンナー法、スプレー法、フロー法などの公知の方法が使用可能である。
反射防止層12の表面には、防汚層13が形成される。
防汚層13は、メガネレンズを使用するに際し、レンズ面に手垢、汗、化粧料等による汚れが付着し難く、しかも汚れを拭き取りやすくするために、防汚性能(撥水撥油性能)を付与する。
防汚層13は、フッ素系のフルオロアルキシシラン等を用いて形成することができる。また、塗布方法としては、ディッピング法、スピンナー法、スプレー法、フロー法などの公知の方法が使用可能である。
以上説明した実施形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。
(1)反射防止層12の第2膜122および第4膜124の酸化窒化ケイ素膜(SiON)は、酸素を含んでいるので、窒化ケイ素膜(SiN)よりも水分を透過しやすい。したがって、レンズ基材10から発生した水分は、酸化窒化ケイ素膜(SiON)を透過して外部に放出されるため、ムクミが発生せず、耐久性に優れたメガネレンズを得ることができる。
(1)反射防止層12の第2膜122および第4膜124の酸化窒化ケイ素膜(SiON)は、酸素を含んでいるので、窒化ケイ素膜(SiN)よりも水分を透過しやすい。したがって、レンズ基材10から発生した水分は、酸化窒化ケイ素膜(SiON)を透過して外部に放出されるため、ムクミが発生せず、耐久性に優れたメガネレンズを得ることができる。
(2)また、反射防止層12は、SiO2からなる低屈折率層とSiONからなる高屈折率層を交互に積層して形成されるので、耐擦傷性に優れたメガネレンズを得ることができる。
(3)反射防止層12の最下層および最上層は、SiO2で形成されているので、反射防止層12と接するハードコート層11および防汚層13との密着性がより高くなり、優れた耐久性を付与することができる。
(4)CVD法において、導入するガスを変えるだけでSiO2膜およびSiON膜を形成できるので、特別な設備や工程を必要とせず、コストや手間がかからない。
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。
例えば、本実施形態では、反射防止層12を第1膜から第5膜までの5層構成としたが、反射防止層12の最下層と最上層がSiO2(酸化ケイ素)膜で形成されていればよいので、SiO2膜とSiON膜とを交互に積層した7層構成とすることもできるし、SiO2膜やSiON膜以外にも、その他の層を中間に積層することもできる。
また、光学物品はメガネレンズに限定されず、望遠鏡等のレンズであってもよい。
例えば、本実施形態では、反射防止層12を第1膜から第5膜までの5層構成としたが、反射防止層12の最下層と最上層がSiO2(酸化ケイ素)膜で形成されていればよいので、SiO2膜とSiON膜とを交互に積層した7層構成とすることもできるし、SiO2膜やSiON膜以外にも、その他の層を中間に積層することもできる。
また、光学物品はメガネレンズに限定されず、望遠鏡等のレンズであってもよい。
以下の実施例および比較例に示される方法でメガネレンズを作製し、耐擦傷性試験および恒温恒室試験を行った。
[実施例1]
第一実施形態に記載の方法でメガネレンズを作製した。
プラスチック製光学物品として、プラスチック製メガネレンズ(セイコーエプソン(株)製、商品名:セイコースーパーソブリン(SSV))の表面に、ハードコート層が積層されたものを準備し、CVD法により反射防止層の形成を行った。
酸化ケイ素膜にはSiO2を用い、酸化窒化ケイ素膜にはSiONを用いた。SiO2層は、TEOS(テトラエキシシラン)とO2を導入してCVD法により形成した。SiON層は、SiH4とN2OとO2とを導入してCVD法により形成した。
第一実施形態に記載の方法でメガネレンズを作製した。
プラスチック製光学物品として、プラスチック製メガネレンズ(セイコーエプソン(株)製、商品名:セイコースーパーソブリン(SSV))の表面に、ハードコート層が積層されたものを準備し、CVD法により反射防止層の形成を行った。
酸化ケイ素膜にはSiO2を用い、酸化窒化ケイ素膜にはSiONを用いた。SiO2層は、TEOS(テトラエキシシラン)とO2を導入してCVD法により形成した。SiON層は、SiH4とN2OとO2とを導入してCVD法により形成した。
レンズ基材側から順に、第1層は1.70λ(物理膜厚146nm)の光学膜厚を持つSiO2層、第2層は、0.48λ(物理膜厚30nm)の光学膜厚を持つSiON層、第3層は0.24λ(物理膜厚21nm)の光学膜厚を持つSiO2層、第4層は、0.91λ(物理膜厚57nm)の光学膜厚を持つSiON層、第5層は1.00λ(物理膜厚86nm)の光学膜厚を持つSiO2層を順次積層した。
反射防止層の表面には、防汚層または撥水層として、フッ素系のフルオロアルキシシラン等を積層した。例えば、GE東芝シリコーン株式会社製TSL8233(商品名)、TSL8257(商品名)、ダイキン工業株式会社製オプツールDSX(商品名)等を使用することができる。
[比較例1]
実施例1において、反射防止層を、スパッタリング法により形成した。なお、第1層、第3層、第5層はSiO2層、第2層、第4層はSi3N4層とした。SiO2層、Si3N4層ともに、アルゴン導入圧を2〜5Paで行った。
レンズ基材側から順に、第1層は2.05λ(物理膜厚175nm)の光学膜厚を持つSiO2層、第2層は、0.51λ(物理膜厚31nm)の光学膜厚を持つSi3N4層、第3層は0.25λ(物理膜厚21nm)の光学膜厚を持つSiO2層、第4層は、1.03λ(物理膜厚64nm)の光学膜厚を持つSi3N4層、第5層は1.00λ(物理膜厚86nm)の光学膜厚を持つSi3N4層を順次積層した。
実施例1において、反射防止層を、スパッタリング法により形成した。なお、第1層、第3層、第5層はSiO2層、第2層、第4層はSi3N4層とした。SiO2層、Si3N4層ともに、アルゴン導入圧を2〜5Paで行った。
レンズ基材側から順に、第1層は2.05λ(物理膜厚175nm)の光学膜厚を持つSiO2層、第2層は、0.51λ(物理膜厚31nm)の光学膜厚を持つSi3N4層、第3層は0.25λ(物理膜厚21nm)の光学膜厚を持つSiO2層、第4層は、1.03λ(物理膜厚64nm)の光学膜厚を持つSi3N4層、第5層は1.00λ(物理膜厚86nm)の光学膜厚を持つSi3N4層を順次積層した。
レンズ基材、ハードコート層、防汚層については、実施例1と同様の方法でメガネレンズを作製した。
なお、膜厚が実施例1と若干異なるのは、屈折率が異なるためである。
なお、膜厚が実施例1と若干異なるのは、屈折率が異なるためである。
実施例1および比較例1により得られたメガネレンズを以下の試験により評価した。
(耐擦傷試験)
スチールウール試験を行った。メガネレンズにボンスター#0000スチールウール(日本スチールウール(株)製)で1kgの荷重をかけ、10往復表面を摩擦し、傷ついた程度を目視で観察した。
評価基準は、傷の程度を目視の観察により10段階(1(悪)〜10(良))にランク付けし、以下のように評価した。
◎:非常に耐擦傷性が高い(段階10〜8)
〇:耐擦傷性が高い(段階7〜6)
△:耐擦傷性は若干低い(段階5〜4)
×:耐擦傷性が低い(段階3〜1)
(耐擦傷試験)
スチールウール試験を行った。メガネレンズにボンスター#0000スチールウール(日本スチールウール(株)製)で1kgの荷重をかけ、10往復表面を摩擦し、傷ついた程度を目視で観察した。
評価基準は、傷の程度を目視の観察により10段階(1(悪)〜10(良))にランク付けし、以下のように評価した。
◎:非常に耐擦傷性が高い(段階10〜8)
〇:耐擦傷性が高い(段階7〜6)
△:耐擦傷性は若干低い(段階5〜4)
×:耐擦傷性が低い(段階3〜1)
(恒温恒室試験)
この試験により、密着性と外観評価を行った。
レンズ表面を約1mm間隔で基盤目状に100目クロスカットし、温度60℃湿度100%の恒温恒室層に置いた。7日目に、クロスカットした部分に、粘着テープ(ニチバン(株)製、商品名セロテープ(登録商標))12mm(JIS Z1522)を強く貼り付けたのち、急速に粘着テープを剥がし、粘着テープを剥がした後の基盤目に膜剥がれ状態を下記の4段階で評価した。評価基準は膜剥がれの面積を目視の観察により行った。
◎:非常に密着性が高い (残った面積=100/100)
〇:密着性が高い (残った面積=99〜85/100)
△:密着性がやや低い(残った面積=84〜35/100)
×:密着性が低い (残った面積=34〜0/100)
この試験により、密着性と外観評価を行った。
レンズ表面を約1mm間隔で基盤目状に100目クロスカットし、温度60℃湿度100%の恒温恒室層に置いた。7日目に、クロスカットした部分に、粘着テープ(ニチバン(株)製、商品名セロテープ(登録商標))12mm(JIS Z1522)を強く貼り付けたのち、急速に粘着テープを剥がし、粘着テープを剥がした後の基盤目に膜剥がれ状態を下記の4段階で評価した。評価基準は膜剥がれの面積を目視の観察により行った。
◎:非常に密着性が高い (残った面積=100/100)
〇:密着性が高い (残った面積=99〜85/100)
△:密着性がやや低い(残った面積=84〜35/100)
×:密着性が低い (残った面積=34〜0/100)
次に、外観評価試験を、図3に示すような透過検査法で行った。具体的には、まず反射の少ない黒色の背景(床、壁)Fを持つ検査室内で、照度を200〜250ルクス、試験位置における照度を350〜500ルクスとし、肉眼により明視できる環境とした(JIS T7313〜T7315に準拠)。また、蛍光灯Lは3波長域発光形昼白色タイプを使用した。そして、レンズを上下させ、レンズに残存しているクラックやムクミを観察した後、さらに45〜90度回転して、レンズを上下させ外観を観察した。各々10個のサンプルについて評価を行った(n=10)。
なお、外観評価試験は、図4に示すような反射検査法で行ってもよく、また両者を併用してもよい。図4の反射検査法においては、検査室内の環境は図3の透過検査法と同様であるが、レンズの傾斜角を変えて評価を行う。具体的には、いったんレンズを観察した後、45〜90度回転して再度同様に評価を行う。
評価結果を以下に示す。
評価結果を以下に示す。
実施例1は、比較例1と同等のスチールウール試験の結果が得られた。また、実施例1および比較例1はともにクロスカット試験が良好であった。すなわち、実施例1が比較例1と同等の高耐擦傷性および高い密着性を持つことを示した。
外観は比較例1においてムクミの発生がみられ、実施例1ではムクミおよびクラックが観察できなかった。
したがって、実施例1は、高耐擦傷性、高密着性およびムクミ防止機能をもつ反射防止層であるといえる。
外観は比較例1においてムクミの発生がみられ、実施例1ではムクミおよびクラックが観察できなかった。
したがって、実施例1は、高耐擦傷性、高密着性およびムクミ防止機能をもつ反射防止層であるといえる。
本発明は、メガネレンズなどのプラスチック製光学物品に使用できる。
1…メガネレンズ
11…ハードコート層
12…反射防止層
13…防汚層
2…蒸着装置
22…基材載置台
26…電極
11…ハードコート層
12…反射防止層
13…防汚層
2…蒸着装置
22…基材載置台
26…電極
Claims (5)
- ハードコート層を有するプラスチック基材の表面に、第1膜と第2膜とが積層してなる反射防止層が設けられたプラスチック製光学物品であって、
前記第1膜は、二酸化ケイ素膜であり、前記第2膜は酸化窒化ケイ素膜であることを特徴とするプラスチック製光学物品。 - 請求項1に記載のプラスチック製光学物品において、
前記ハードコート層の直上が、前記反射防止層の前記第1膜であることを特徴とするプラスチック製光学物品。 - 請求項1および請求項2のいずれかに記載のプラスチック製光学物品において、
前記反射防止層の最上層が前記第1膜であることを特徴とするプラスチック製光学物品。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載のプラスチック製光学物品は、メガネレンズであることを特徴とするプラスチック製光学物品。
- 請求項1から請求項4に記載のプラスチック製光学物品を製造する製造方法であって、
前記第1膜と前記第2膜とは、化学気相成長法(CVD法)により酸素を導入して形成されることを特徴とするプラスチック製光学物品の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006279039A JP2008096737A (ja) | 2006-10-12 | 2006-10-12 | プラスチック製光学物品とその製造方法 |
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JP (1) | JP2008096737A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPWO2010016242A1 (ja) * | 2008-08-04 | 2012-01-19 | 株式会社ニコン・エシロール | 光学部品及び光学部品の製造方法 |
-
2006
- 2006-10-12 JP JP2006279039A patent/JP2008096737A/ja not_active Withdrawn
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