JP2008093685A - 燃料電池用電解質膜のレーザ切断装置 - Google Patents

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Tsutomu Sakamoto
阪本努
Yoshifumi Yuki
遊喜芳文
Katsuro Kawazoe
川添克朗
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Abstract

【課題】
燃料電池用電解質膜の切断において、電池反応を阻害するラジカルを発生させずに切断を可能とする燃料電池用電解質膜の切断装置を提供することにある。
【解決手段】
燃料電池用電解質膜の切断加工において、電解質膜の切断速度、スキャン回数、レーザ出力を変更可能なレーザ発振器を使用し、またレーザ種の選択により波長を選択することで切断時に電解質膜に与えるエネルギーを調整する。またレーザ光のエネルギーにより電解質膜を溶解もしくは消失することにより切断を行う。
【選択図】 図1

Description

本発明は、燃料電池に使用する電解質膜のレーザ切断装置に関するものである。
フィルムをはじめ様々な材料の切断、加工するには一般的に金型やトムソン刃などによる機械加工を使用することが多い。これらの機械加工は精度良く、また複数の片を一括で切断することができるため広く実用化されている。燃料電池用の電解質膜を所定の大きさに切断する場合においてもこれらの機械加工は適用されている。
特表2002-521250
しかしこれらの機械加工中においてはフィルム中にラジカルが発生する場合がある。ラジカルは加工中の摩擦などによって微少に発生した熱により発生する。またラジカルは一般的に非常に短い時間で消失するが、ラジカルによっては長い期間フィルム中に存在するものがある。燃料電池用の電解質膜ではこのラジカルが電池反応を阻害する場合があり、所望の出力を得られないという問題があった。また燃料電池用電解質膜は膜の機械的強度を上げる目的で膜中に多孔質の電解質でないフィルムなどを補強材として挟み込むことがある。つまり多孔質膜を中心とした多層構造になっていることがある。この多層構造膜を上記の機械加工をすると切断端面において多孔質膜と電解質の界面に剥離が生じるという問題があった。
また、所望の大きさに燃料電池の電解質膜を切断する際に出力に影響するラジカルが発生してしまう点および補強材として使用する多孔質膜と電解質の界面から剥離が生じてしまう。
本発明の目的は、レーザで熱的に切断し、かつ切断部にラジカルを発生させない燃料電池用電解質膜のレーザ切断装置を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明は、燃料電池用電解質膜の切断にレーザを使用することでラジカルを発生させずにかつ膜の剥離を生じさせずに電解質膜を切断することを特徴とする。
レーザによる電解質膜の切断は切断速度(レーザスキャン速度)、レーザスキャン回数、レーザ出力を自由に調整できる。またレーザ種を変更することで波長を変更することもできる。つまり切断部にかかるエネルギーを自由に変更することができる。そのためラジカルを発生させない電解質膜切断条件を選択することができる。またレーザによる切断は電解質膜切断部に機械的な変形を与えないため補強材と電解質の界面の接着が切断時の応力により破壊されるということはない。このため補強材と電解質の間で剥離を発生させずに電解質膜を切断することができる。
図1は、本発明の一実施形態である切断装置の概略図である。レーザ照射部は、レーザ発振器1と2枚の回転可能な全反射ミラー2,3及び集光レンズ3の組み合わせからなる。加工部は、XYステージ上に治具に貼り付けた電解質膜を搭載可能とする位置決めピン6を有している。また、レーザ加工形状及びレーザ出力,レーザスキャン速度等のレーザ条件、あるいはXYステージの移動位置座標等の制御はコンピュータ5により行う。本実施例では、レーザ発振器1に炭酸ガスレーザを使用しているが、被加工物の材料の波長吸収特性を考慮して適正なレーザ波長を選定することが望ましい。
図1のレーザ装置は、制御コンピュータ5にレーザおよび冶具7に貼り付けた電解質膜8を搭載するステージ4の移動位置座標をプログラムすることにより電解質膜8を所望の形状に切断することができる。このとき制御コンピュータ5にレーザ出力を入力することで設定を変更できる。また電解質膜8を所望の形状に切断する際に、その形状に沿ってレーザをスキャンする回数、スキャンする際の速度も入力することができる。つまり切断する電解質膜8に出力の高いレーザ光を照射することにより1回で電解質膜を切断するか、または出力の低いレーザ光を多数回照射することで切断するなどを選択することができる。この制御により、発生するラジカル量を制御することができる。表1は、レーザ切断装置で電解質膜を切断した条件および電解質膜中に発生したラジカル量を表すスピン濃度を示している。
Figure 2008093685
また図2および図3は、それぞれ表1のサンプル1とサンプル2をレーザで切断した後の、電解質膜中のラジカル量を電子スピン共鳴法により測定したスペクトルである。表1によると、本実施形態で使用した電解質膜はスキャン速度が遅く、また1スキャンあたりの単位切断長に照射されるレーザエネルギーが大きい場合に、ラジカルが発生する。一方で、単位切断長あたりにかかる総照射エネルギーは前記の条件とほぼ同じであっても、スキャン速度が速く、1スキャンあたりの単位切断長にかかる照射エネルギーが小さい場合は、ラジカルが発生しない。また前記の条件と比較して、切断部の外観品質には大きな差も発生しない。ラジカルの存在は燃料電池の電池反応を阻害することが考えられるため、出来る限り発生させないことが望ましいので、レーザの出力、スキャン速度、スキャン回数を制御することは燃料電池の品質向上に大いに役立つ。
図4は、補強材13を中心に備えた電解質膜12の断面図である。ここで、補強材13は、多孔質の補強材であるとする。補強材13と電解質12の界面の密着強度が弱い場合、せん断による機械加工で切断を行うと補強材13と電解質12の間で剥離が生じる場合がある。これは膜の変形により膜内部に応力が発生し、それを吸収するために密着強度の弱い界面で剥離が生じる。これに対し、本実施形態によるレーザ切断装置は、熱的に電解質を切断することにより膜の変形は発生しないので、補強材と電解質の間で剥離が生じることはない。また、補強材13と電解質12が熱的に溶融、一体化しているため、より剥離しにくい構造となり燃料電池の品質向上に大いに役立つ。
レーザ切断による電解質膜の加工はラジカル発生の調整、切断端面からの剥離防止のみならず、切断加工する形状を変更してもプログラムの再設定で対応できるため冶具費用が不要である。そのため特に多品種少量の生産を行う試作時には有効である。
本実施形態では、レーザで熱的に切断し、かつ切断部にラジカルを発生させないために、最小の構成で、レーザスキャン速度、スキャン回数、レーザ出力の制御を可能とした。またレーザの種類を変更することで波長の変更も可能とした。
レーザ切断装置の構成を示した説明図である。 表1におけるサンプル1をレーザ切断した後の、電解質膜中のラジカル量を示した電子スピン共鳴法のスペクトルである。 表1におけるサンプル2をレーザ切断した後の、電解質膜中のラジカル量を示した電子スピン共鳴法のスペクトルである。 補強材を中心に備えた電解質膜の断面図である。
符号の説明
1 レーザ発振器
2 全反射ミラー
3 集光レンズ
4 XYステージ
5 制御用コンピュータ
6 位置決めピン
7 電解質膜貼り付け治具
8 電解質膜
9 レーザ光
12 電解質
13 電解質膜中の補強材

Claims (3)

  1. 燃料電池用電解質膜を切断する切断装置において、
    レーザを発振するレーザ発振器と、
    該レーザ発振器から照射されたレーザ光を反射する反射レンズと、
    該反射レンズによって反射されたレーザ光を集光する集光レンズと、
    該集光レンズによって集光されたレーザ光が照射される電解質膜を搭載するステージと、
    前記レーザ発振器から照射されるレーザ光の出力および前記ステージの移動を制御することにより、前記ステージに搭載された電解質膜に対するレーザ光の切断速度及び切断回数を制御するコンピュータを備えることを特徴とする燃料電池用電解質膜を切断する切断装置。
  2. 前記コンピュータは、前記レーザ発振器が照射するレーザ光の波長を変更する制御を行うことを特徴とする請求項1記載の燃料電池用電解質膜を切断する切断装置。
  3. 前記電解質膜は、多孔質の補強材を電解質膜中に備える多層構造の電解質膜であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池用電解質膜を切断する切断装置。
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