JP2008089012A - ディスクブレーキ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ブレーキの引き摺りを抑制し得るディスクブレーキ装置を得る。
【解決手段】ディスクブレーキ装置10において、サブピン62に対応する嵌合穴66の内周部にブッシュ90を設ける。ブッシュ90は、嵌合穴66の開口部に向かって傾斜する環状の環状凸部92を複数備えている。その環状凸部92により、サブピン62の嵌合穴66へ進入する移動に対して大きな抵抗が発生し、サブピン62の嵌合穴66から脱出する移動に対して小さな抵抗力が発生する。つまり、サブピン62の進入方向の移動を抑制し、脱出方向の移動を許容することにより、キャリパ26が下降傾動(シリンダ部44側が下降する向きの傾動)する傾向を抑制し、キャリパ26がインナパッド22をディスクロータ16に押し付けにくくすることで、ブレーキの引き摺りを抑制することができる。
【選択図】 図6

Description

本発明は、キャリパ浮動型のディスクブレーキ装置に関する。
キャリパ浮動型のディスクブレーキ装置は、キャリパが、マウンティングブラケットに、車輪の回転軸線方向に移動可能に支持されている。この場合、キャリパとマウンティングブラケットとの一方に1対のスライドピンが設けられるとともに、他方にそれら1対のスライドピンと嵌合される1対の嵌合穴が設けられ、それらが軸方向に摺動することでキャリパの移動が許容される。このような構造によって、1つのシリンダで1対のブレーキパッド(以後、特に必要がない限りパッドと略称する)をディスクロータ(以後、特に必要がない限りロータと略称する)に押し付けることができるようにされている。
下記特許文献1,2には、キャリパ浮動型のディスクブレーキ装置が記載されている。特許文献1には、スライドピンの基端部付近と嵌合穴の開口部との隙間を覆う防塵ブーツの付勢力によって非制動時のキャリパ(シリンダボディ)の傾動を防止する技術が記載されている。それは、キャリパ浮動型のディスクブレーキ装置は、スライドピンと嵌合穴との間にある程度のクリアランスが設けられており、キャリパが傾動しやすい構造であるからである。キャリパが傾動すると、非制動時にパッドとロータとが接触してブレーキの引き摺りが生じる場合が多い。
また、特許文献2には、パッドの裏板に磁石を固着することによって、パッドがピストンやキャリパの爪部に吸引されるようにして、非制動時にパッドがロータから離間し易いようにしてブレーキの引き摺りを抑制する技術が記載されている。従来のディスクブレーキ装置では、パッドを離間させるスプリングが設けられている場合もあるが、パッドの外周側に離間力を作用させるため、パッドの内周側がロータと接触してブレーキの引き摺りが生じやすいという問題がある。上記技術は、そのような問題の解決を図るものである。
特開平8−177895号公報 特開平11−241741号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、重力の影響によってキャリパが傾動しないようにされているが、重力以外の影響、例えば、路面の凹凸を通過する際の振動等の影響については考慮されていないという問題がある。例えば、振動の向きによってはキャリパの重心に上向きの力が作用する場合もあるのである。また、上記特許文献2に記載の技術では、パッドがキャリパ(あるいはピストン)に吸着することによってブレーキの引き摺りが抑制されているのであるが、キャリパとマウンティングブラケットとの相対運動によってキャリパ等がパッドをロータに押し付ける場合にはブレーキの引き摺りを抑制する効果が発揮されないという問題がある。
このような問題は、従来のディスクブレーキ装置の実用性を向上させる上で障害となり得る問題の一例であり、ディスクブレーキ装置には種々の観点からの改良の余地がある。すなわち、従来のディスクブレーキ装置に改良を施すことによって、あるいは、従来と異なる構成を備えたディスクブレーキ装置によって、非制動時におけるパッドとロータとの接触をより効果的に抑制できる等、ディスクブレーキ装置の実用性を向上させることが可能である。本発明は、そういった実情に鑑みてなされたものであり、より実用的なディスクブレーキ装置を得ることを課題としてなされたものである。
上記課題を解決するために、本発明のディスクブレーキ装置は、特定スライドピンとその特定スライドピンに対応する対応嵌合穴との軸方向におけるいずれか一方の向きの相対移動に対して、他方の向きの相対移動に対するよりも大きな抵抗力を付与する異方向性抵抗力付与装置を含むことを特徴とする。
本発明のディスクブレーキ装置によれば、キャリパがシリンダ側の部分が下降する向きに回転する下降傾動等のキャリパの相対運動の傾向を効果的に弱めることができ、例えば、キャリパがパッドをロータに押し付けることにより発生するブレーキの引き摺りを抑制することができる。すなわち、本項の態様によれば、より実用的なディスクブレーキ装置が得られるのである。なお、本発明のディスクブレーキ装置の各種態様およびそれらの作用および効果については、以下の、〔発明の態様〕の項において詳しく説明する。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から一部の構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)項と(2)項とを合わせたものが請求項1に、(3)項が請求項2に、(5)項が請求項3に、(6)項が請求項4に、(8)項が請求項5に、それぞれ相当する。
(1)回転軸線まわりに回転するディスクロータと、
そのディスクロータの両側の摩擦面に対向する1対の摩擦パッドと、
それら摩擦パッドを前記ディスクロータの摩擦面に接近離間可能に保持するマウンティングブラケットと、
前記1対の摩擦パッドを前記ディスクロータに押し付ける力を発生させるシリンダを有するキャリパと、
前記マウンティングブラケットと前記キャリパとの一方に前記ディスクロータの周方向に互いに離間して設けられて前記ディスクロータの回転軸線方向に延びる1対のスライドピンと、
前記マウンティングブラケットと前記キャリパとの他方に設けられ、前記1対のスライドピンの各々と摺動可能に嵌合する1対の嵌合穴と
を含むディスクブレーキ装置であって、
非制動時に、前記1対の摩擦パッドの少なくとも一方の前記ディスクロータに接近する向きの移動を抑制する接近移動抑制装置を含むことを特徴とするディスクブレーキ装置。
本項のディスクブレーキ装置において、キャリパが、1対のスライドピンと1対の嵌合穴との緩み嵌合によって、車輪の回転軸線方向に移動可能に支持されている。そのため、路面の凹凸を通過する際の振動等によってキャリパとマウンティングブラケットとが相対運動(相対移動,相対回転等)させられる場合がある。その相対運動によってキャリパと摩擦パッド(以後、「パッド」と略称する)との相対位置関係が変化し、例えば、キャリパがパッドをディスクロータ(以後、「ロータ」と略称する)に押し付けて、ブレーキの引き摺りが発生する場合がある。このようなブレーキの引き摺りによって、走行抵抗が増加したり、パッドやロータの摩耗が早まったりするという悪影響が生じる場合がある。また、いわゆるロータの振れがある場合に、つまり、ロータの摩擦面が回転軸線方向に歪んでいる場合に、ブレーキの引き摺りによってロータの厚さ寸法が部分的に小さくなるロータの偏摩耗が生じる場合がある。つまり、ロータの回転軸線方向に張り出している部分が主としてパッドと接触することとなり、他の箇所よりも多く摩耗するのである。そして、ロータに偏摩耗が生じると、制動時に振動が発生する等の弊害が生じる場合がある。
本項の態様は、パッドのロータに接近する向きの移動を抑制することにより、例えば、走行時にキャリパとマウンティングブラケットとを相対運動させる振動が発生した場合であっても、ブレーキの引き摺りを抑制することができ、ひいては、パッドとロータとの摩耗を抑制することができる。すなわち、本項の態様によれば、より実用的なディスクブレーキ装置が得られるのである。
(2)前記接近移動抑制装置が、
前記1対のスライドピンの少なくとも一方のものである特定スライドピンと前記1対の嵌合穴のうちその特定スライドピンに対応するものである対応嵌合穴との軸方向におけるいずれか一方の向きの相対移動である第1相対移動に対して、その第1相対移動と逆の向きの相対移動である第2相対移動に対するよりも大きな抵抗力を付与する異方向性抵抗力付与装置を含む(1)項に記載のディスクブレーキ装置。
キャリパがマウンティングブラケットに対して相対運動する際には、1対のスライドピンの各々とそれらに対応する嵌合穴とが軸方向に相対移動させられる。そのスライドピンと嵌合穴との相対移動に対して、相対移動の向きによって大きさが異なる抵抗力を付与することによって、キャリパのマウンティングブラケットに対する相対運動をコントロールして、ブレーキの引き摺りを抑制することができる。
各種のディスクブレーキ装置において、ディスクブレーキ装置のロータ周方向における配設位置、キャリパの重心位置、スライドピンおよび嵌合穴の位置等、種々の要素の違いによって、キャリパの動き方が異なり、キャリパのマウンティングブラケットに対する相対運動に特有の傾向が生じる場合が多い。例えば、シリンダが設けられている部分が下降する向きにキャリパが回転する下降傾動の傾向や、回転軸線方向のいずれか一方の向きにキャリパが移動する偏向移動の傾向等である。そのような傾向が生じると、キャリパがパッドに当接してパッドをロータに接触させ、ブレーキの引き摺りが発生する場合が多い。また、キャリパが勢いよくパッドに当接した場合には、パッドがロータに強く押し付けられることとなり、ブレーキの引き摺りの度合いが強くなり、ロータやパッドが摩耗しやすくなる。
本項の態様によれば、上述のようなキャリパの相対運動の傾向を抑制することができる。例えば、振動等に起因して、キャリパが上記下降傾動する傾向がある場合には、異方向性抵抗力付与装置を、キャリパが下降傾動する際のスライドピンと嵌合穴との相対移動を抑制する向きに大きな抵抗力を発生させるものとすることができる。この場合に、キャリパが逆向きに傾動(上昇傾動)した場合には、比較的小さな抵抗が付与されるためその傾動はあまり抑制されない。つまり、キャリパが下降傾動し易い傾向がある場合には、その下降傾動を抑制する一方、逆向きの傾動を許容することより、下降傾動し易いという相対運動の傾向を効果的に弱めることができるのである。同様に、キャリパが上記偏向移動する傾向がある場合には、相対移動しやすい向きの相対移動を抑制する一方、逆の向きの相対移動を許容することによって、偏向移動の傾向を効果的に弱めることができる。
すなわち、本項の態様によれば、キャリパの相対運動の傾向を効果的に弱めることができ、例えば、ブレーキの引き摺りを抑制することができる。すなわち、本項の態様によれば、実用的なディスクブレーキ装置が得られるのである。
(3)前記異方向性抵抗力付与装置が、
ゴムまたはその類似物によって形成され、前記特定スライドピンと前記対応嵌合穴との一方に設けられてその一方から突出して前記特定スライドピンと前記対応嵌合穴との他方に摺接するとともに、前記第2相対移動において前記特定スライドピンと前記対応嵌合穴との前記一方に対して前記他方が移動する向きに傾斜した形状にされた1以上の傾斜凸部を有する抵抗力発生体を含む(2)項に記載のディスクブレーキ装置。
本項の態様は、例えば、傾斜凸部が対応嵌合穴に設けられていた場合に、第2相対移動において特定スライドピンが傾斜凸部の傾斜に沿う向きに移動するようにして抵抗力を小さくし、第1相対移動において傾斜に逆らう向きに移動するようにして抵抗力を大きくすることができる。すなわち、本項の態様によれば、比較的容易に相対移動の向きによって抵抗力の大きさを異ならせることができるのである。
第1相対移動の向きは、例えば、キャリパのシリンダ側の部分がロータに接近する向きに移動する場合におけるスライドピンと嵌合穴との相対移動の向きとすることができる。
1以上の傾斜凸部は、対応嵌合穴の内周部と特定スライドピンの外周部との少なくとも一方に設けられたものとすることができる。また、傾斜凸部は、例えば、スライドピンあるいは嵌合穴の軸線を含む平面における断面形状を三角形状,平行四辺形状等のように、相対移動方向における一端部の突出量と他端部の突出量とが異なるものとすることができる。なお、傾斜凸部の断面形状が、平行四辺形状のように、傾斜凸部の上記一端部側の辺と上記他端部側の辺(平行四辺形の場合は斜辺)とが同じ向きに傾斜していることが望ましい。例えば、傾斜凸部の断面形状が三角形であれば、鈍角三角形であって基端部側に鈍角が位置するもの、言い換えれば、先端部側に鋭角が位置するものとすることができる。また、傾斜凸部の断面形状において、傾斜する辺は直線であってもよいし、曲線であってもよい。
このように、一端部側の辺と他端部側の辺とが同じ向きに傾斜させられることにより、例えば、第2相対移動において傾斜凸部が軸方向に沿う向きに変形しやすくなり、つまり、倒れやすくなり、摩擦抵抗が小さくなる。一方、第1相対移動において傾斜凸部が軸方向に直交する向きに変形しやすくなり、つまり、立ち上がりやすくなり、摩擦抵抗が大きくなる。
傾斜凸部の傾斜は、例えば、第2相対移動において、傾斜凸部の進行方向側の部分を前方部、進行方向と反対側の部分を後方部とすると、前方部よりも後方部の方が傾斜凸部の突出量が多くなるように傾斜させることができる。その場合に、傾斜凸部の断面形状を、例えば、前方部から後方部に向かって突出量が漸増する形状にすることができる。
また、1以上の傾斜凸部は、例えば、対応嵌合穴の内周あるいは特定スライドピンの外周に沿って連続する環状に形成することや、互いに独立した複数の凸部を内周あるいは外周に沿って並べて形成すること等ができる。また、互いに独立した複数の凸部を軸線方向に並べて形成することもできる。なお、1以上の傾斜凸部が、内周あるいは外周の全周にわたって形成されていることは不可欠ではなく、一部分に形成されていてもよい。傾斜凸部を形成する材料は、弾性を有し、例えば、合成ゴム,天然ゴムまたはそれらを合わせたもの等を含む材料とすることができる。
(4)前記1対のスライドピンが、上下方向において互いに離間して設けられ、
前記特定スライドピンが、前記1対のスライドピンの下方に位置する下方スライドピンであり、
前記第1相対移動の向きが、前記キャリパが前記シリンダ側の部分が前記ディスクロータに接近する向きに移動する場合における前記下方スライドピンと前記対応嵌合穴との相対移動の向きとされた(2)項または(3)項に記載のディスクブレーキ装置。
本項の態様は、例えば、キャリパおよびマウンティングブラケットが車軸の前方側に設けられた場合等に好適である。この場合に、キャリパがそれのシリンダ側の部分が前記ディスクロータに接近する向き(ブレーキを解放する向き)に移動する場合の下方スライドピンの相対移動を第1相対移動とし、その相対移動を1以上の傾斜凸部によって抑制することで、例えば、キャリパが上方のスライドピンを支点にしてパッドに接近する向きの回動、つまり、前述の下降傾動を抑制してパッドの引き摺りを抑制することができる。
(5)前記接近移動抑制装置が、
前記1対の嵌合穴のうち前記1対のスライドピンの少なくとも一方のものである特定スライドピンと対応するものである対応嵌合穴の内部に、前記特定スライドピンと接触する状態で充填され、電磁的作用によって粘性が急速に変化する流体である電磁粘性変化流体と、
設定された条件が満たされた場合に、前記電磁粘性変化流体の粘性を増加させる電磁的作用を生じさせる電磁作用発生装置と
を含む(1)項ないし(4)項のいずれかに記載のディスクブレーキ装置。
本項の態様は、例えば、電気粘性流体(ER流体),磁性流体(MR流体)等の電磁粘性変化流体によって、特定スライドピンと対応嵌合穴との相対移動を抑制するものである。本項の電磁作用発生装置は、例えば、電界や磁界などを発生させて、電磁粘性変化流体に電磁的作用を生じさせるものとすることができる。
上記「設定された条件」は、例えば、制動が終了してから設定時間が経過することとすることができる。例えば、制動が終了するとパッドがロータにはじかれて、ロータから離間するが、その状態で特定スライドピンと対応嵌合穴との相対移動を抑制することにより、キャリパとマウンティングとの相対運動を抑制することができ、キャリパがパッドをロータに押し付けにくくしてブレーキの引き摺りを抑制することができる。なお、制動が終了してから設定時間経過後から、例えば、制動が開始されるまで特定スライドピンと対応嵌合穴との相対移動を抑制することや、予め定められた時間だけ相対移動を抑制することができる。
また、「設定された条件」は、例えば、非制動時において特定スライドピンと対応嵌合穴との相対移動が検出された場合に満たされたと判定されるように設定することができる。特定スライドピンと対応嵌合穴との相対移動を抑制することで、キャリパとマウンティングとの相対運動を抑制し、ブレーキの引き摺りを抑制することができる。また、本項の態様が、前記(2)項に従属する場合には、特定スライドピンと対応嵌合穴とが前記第1相対移動した場合に、設定された条件が満たされたとして電磁粘性変化流体の粘性を増加させ、前記第1相対移動と逆向きの前記第2相対移動した場合には設定された条件が満たされず電磁粘性変化流体の粘性を減少させる態様とすることができる。その場合には、前述の下降傾動や偏向移動の傾向を抑制することができる。また、その場合には、異方向性抵抗力付与装置が、電磁粘性変化流体と電磁作用発生装置とを含むものとすることができる。
さらにまた、「設定された条件」は、キャリパやマウンティングに大きな振動が加わることとすることができる。キャリパやマウンティングに大きな振動が加わると、それらが激しく相対運動して比較的強い度合いのブレーキの引き摺りが生じる場合があるため、特定スライドピンと対応嵌合穴との相対移動を抑制することによって相対運動を抑制することにより、ブレーキの引き摺りを抑制することができ、この場合には、ブレーキの引き摺りの度合いを弱め、あるいは、引き摺りが生じないようにすることができる。
なお、上述の制御を、例えば、常時行うこと、キャリパの下降傾動や偏向移動の度合いが強くなった場合に行うこと、設定された時間間隔で行うこと等ができる。
(6)前記接近移動抑制装置が、前記特定スライドピンと前記対応嵌合穴との相対移動を検出する相対移動検出器を含み、
前記電磁作用発生装置が、前記相対移動検出器によって検出された相対移動に基づいて、前記設定された条件が満たされたか否かを判定する相対移動依拠判定部を含む(5)項に記載のディスクブレーキ装置。
本項の態様は、特定スライドピンと対応嵌合穴との軸方向の相対移動において少なくとも一方の向きの相対移動を抑制することができる。相対移動を抑制することにより、非制動時におけるブレーキの引き摺りを抑制することができる。
本項の相対移動検出器は、例えば、加速度センサによってキャリパとマウンティングブラケットとの相対移動を検出するものとすることや、差動トランスや電気抵抗式位置センサ等によって特定スライドピンと対応嵌合穴との相対移動を検出するものとすることができる。
(7)前記電磁粘性変化流体が、電界の作用によって粘性が増大する電気粘性流体を含み、
前記電磁作用発生装置が、前記特定スライドピンと前記対応嵌合穴の内周部との間に電位差を生じさせる電圧印加装置を含む(5)項または(6)項に記載のディスクブレーキ装置。
電気粘性流体は、電界中において粘性が大きくなる流体であり、特定スライドピンと嵌合穴との少なくとも一方の向きの相対移動を比較的容易に抑制することができる。一般的な電気粘性流体は、分散系と均一系に分類され、本項の電気粘性流体をそれらの少なくとも一方を含むものとすることができる。なお、応答速度の速さや、低剪断速度域における剪断応力の大きさを重視する場合は分散系が望ましく、消費電力の低さを重視する場合は均一系が望ましい。
(8)前記接近移動抑制装置が、
前記ディスクロータの回転軸線方向の磁場を発生させる第1磁石と、
前記1対の摩擦パッドの少なくとも一方に設けられ、前記第1磁石の磁場において前記ディスクロータから離間する向きの力を生じさせる磁極を発生させる第2磁石と
を含む(1)項ないし(7)項のいずれかに記載のディスクブレーキ装置。
従来のディスクブレーキ装置は、ブレーキの引き摺りを抑制するために、ばね部材がパッドの外周側に取り付けられ、そのばねの弾性力によってパッドをロータから離間させるものが多かった。そのため、1対のパッドがディスクロータを挟んで配置されるというディスクブレーキ装置の構造上、パッドの内周側をロータから離間させることが不充分になり、パッドの外周側を離間させることができても、内周側がロータに接触してブレーキの引き摺りが発生してしまうことが多かった。前述の特許文献2に記載の技術では、パッドに永久磁石を設けてキャリパ(あるいはピストン)に吸着させることにより、パッドの外周側および内周側をロータから離間させることができる。しかしながら、特許文献2に記載の技術は、キャリパとマウンティングとの相対運動を考慮したものではなく、例えば、前述のキャリパの下降傾動によってキャリパ(あるいはピストン)がパッドをロータに押し付けるといった状態では、パッドとロータとの接触を抑制することが困難である。
本項の態様によれば、第1磁石と摩擦パッドに設けられた第2磁石とによって、パッドをロータから離間させる磁力を発生させ、パッドの引き摺りを抑制することができる。本項の態様は、パッドをロータから離間させる向きの力を生じさせるため、単に摩擦パッドに磁石を設けてキャリパ(ピストン等)に吸着させる態様と比較して、パッドの引き摺りを抑制する効果が高くなる。
第1磁石は、例えば、ロータに設けられたものとすることができる。具体的には、例えば、ディスクロータを2枚のディスクプレートを含むものとし、それら2枚のディスクプレートの間に磁石を設けることができる。また、例えば、ディスクロータが強磁性を有する場合には、第1磁石によってディスクロータを回転軸線方向に磁化することによってその両側に互いに異なる磁極を発生させることができる。
第2磁石は、例えば、摩擦パッドが、摩擦材が金属製の裏板に固着されたものである場合に、裏板に設けることができる。その場合には、例えば、摩擦材を、スチール繊維,鉄粉末等の強磁性材料を含むもの(いわゆるメタルパッド等と称される場合がある)とすることができる。摩擦材に強磁性体を含ませることによって、ディスクロータに近接する摩擦材自体がある程度磁化されるため、効果的に斥力を発生させることができる。
第1,第2磁石は、例えば、電磁石と永久磁石との少なくとも一方を含むものとすることができる。

以下、請求可能発明の実施例を、図面を参照しつつ説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、上記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
図1に、請求可能発明の一実施例であるキャリパ浮動型のディスクブレーキ装置10を備えた車両12の前方部分を示す。本ディスクブレーキ装置10は、車両12に回転可能に設けられた車輪14に制動トルクを付与する装置である。そのディスクブレーキ装置10は、車輪14と一体的に回転するように設けられたディスクロータ16と、車輪14と相対回転不能に設けられてディスクロータ16に摩擦抵抗力を付与する摩擦抵抗力付与部としてのブレーキ本体部20とを含む。また、ブレーキ本体部20は、ディスクロータ16(以後、単に「ロータ」と略称する場合がある)の回転軸線に対して前方側(正確には、前方側であってわずかに斜め上方)に配置されている。
図2に、ブレーキ本体部20を前方側から見た正面図を示す。ブレーキ本体部20は、制動時にロータ16に押し付けられる1対の摩擦パッドの一種である1対のブレーキパッド22,23(以後、「パッド」と略称する場合がある)と、1対のパッド22,23を保持するマウンティングブラケット24(以後、「マウンティング」と略称する場合がある)と、1対のパッド22,23をロータ16に押し付けるキャリパ26とを備えている。なお、この図において、上側が車両の上側、下側が車両の下側、左側が車両の中央側、右側が車両の側方側である。
図3に、1対のパッド22,23とマウンティング24とを示す。なお、この図において、1対のパッド22,23等を見やすくするために、キャリパ本体40及びピストン42等を2点鎖線で示した。1対のパッド22,23は、それぞれ摩擦材30,31が裏板32,33に固着されて形成されている。1対のパッド22,23は、それらの摩擦材30,31がそれぞれロータ16の摩擦面36,37に対向するように設けられている。また、1対のパッド22,23のうち、左側に位置するものがインナパッド22であり、ロータ16を挟んでインナパッド22に対向する位置にあるもの、つまり、右側に位置するものがアウタパッド23である。それらインナパッド22とアウタパッド23とは、V字形状をなすスプリング38によって互いに離間する向きに付勢されている。
マウンティング24は、上記1対のパッド22,23を、ロータ16の回転軸線方向に移動可能、かつ、ロータ16の回転方向に移動不能に保持している。すなわち、制動時において、1対のパッド22,23のロータ16に接近離間する方向の移動が許容されるとともに、ロータ16の回転を制止することによって1対のパッド22,23に加わる回転方向の力がマウンティング24によって受け止められるようにされているのである。なお、図において、車両前進時にロータ16が上方から下方に向かって回転するようにされており、ブレーキ本体部20の上方側がロータ回入側、下方側がロータ回出側とされている。また、マウンティング24は、前進する車両の制動時において、1対のパッド22,23を回出側へ移動させる力、つまり、図において下方に向かう力を受け止めることとなる。
キャリパ26(図2)は、1対のパッド22,23およびロータ16を跨いだ状態でロータ16の回転軸線方向に移動可能に支持されており、キャリパ本体40とピストン42とを含む。キャリパ本体40は、ピストン42が嵌合されたシリンダ部44と、これに対向して形成されたリアクション部46と、これらシリンダ部44とリアクション部46とを連結する連結部48とを含む。すなわち、キャリパ26は、ピストン42によってインナパッド22をロータ16の摩擦面36に押し付けるとともに、その反力でキャリパ本体40が車体の中央側に移動させられて、リアクション部46によってアウタパッド23を外側からロータ16の摩擦面37に押し付けることで、摩擦抵抗力を発生させるようにされているのである。
キャリパ本体40には、シリンダ部44から周方向に延び出す1対のアーム部50,52が設けられている。それら1対のアーム部50の各々の先端部には、ロータ16の回転軸線に平行でリアクション部46側に延び出す1対のスライドピン60,62が設けられている(図3)。一方、マウンティング24には、1対のスライドピン60,62を軸方向に摺動可能に嵌合させる1対の嵌合穴64,66を形成する嵌合穴形成部たる1対のスリーブ70,72が設けられている。これら1対のスライドピン60,62および1対のスリーブ70,72によって、キャリパ26がロータ16の回転軸線方向に移動可能に支持される。
また、スライドピン60と嵌合穴64とのクリアランスは、スライドピン62と嵌合穴66とのクリアランスよりも小さくされており、以後、スライドピン60をメインピン60と、スライドピン62をサブピン62と称する場合がある。
なお、本実施例において、ブレーキ本体部20は、前述のようにロータ16の前方側に配置されており、メインピン60およびスリーブ70の下方に、サブピン62およびスリーブ72が位置させられている。すなわち、メインピン60とサブピン62とが、上下方向において互いに離間して設けられているのである。本実施例において、サブピン62が前記「下方スライドピン」とされているのである。
嵌合穴64,66の各々には、内周部の開口部付近に周方向の溝74,76が設けられており、それら溝74,76に、スライドピン60,62の各々と嵌合穴64,66の開口部の各々との隙間を塞ぐブーツ80,82が配設されている。さらに、溝76は、溝74よりも長くされており、ブーツ82のスリーブ72側の端部の奥側に抵抗力発生体たるブッシュ90が配設されている。
図4に、サブピン62側のブッシュ90を拡大して示す。ブッシュ90の内周部には、一円周にわたって連続して嵌合穴66の中央に向かって突出するとともに断面形状が開口部側に傾斜する形状にされた環状凸部92(傾斜凸部の一種)が複数、軸方向に並べて設けられている。それら複数の環状凸部92の各々の、サブピン62の先端部側の部分を前方部、サブピン62の基端部側の部分を後方部とすれば、各環状凸部92は、前方部よりも後方部の方が突出量が多くなるように傾斜させられ、また、前方部から後方部に向かって突出量が漸増する形状にされている。また、各環状凸部92の断面形状は鈍角三角形状にされており、鈍角にされた部分が、環状凸部92の後方部かつ嵌合穴66の内周部側(溝76の底面側)に位置させられている。そして、各環状凸部92の前方側の面と後方側の面とが同じ向きに傾斜させられている。
なお、各環状凸部92は、それらを貫通するサブピン62によって若干押し広げられて弾性変形し、そのサブピン62を軽く締め付ける状態にされている。また、ブッシュ90は、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム:合成ゴムの一種)によって形成されている。
この環状凸部92により、サブピン62の嵌合穴66に進入する向きの移動、つまり、環状凸部92の傾斜に逆らう向きの移動に対しては、環状凸部92がそれの傾斜が減少する向き(環状凸部92が軸方向と直交する方向に立ち上がる向き)に変形させられてサブピン62の外周部に強く押し付けられることとなり、比較的大きな抵抗力が発生する。一方、サブピン62の嵌合穴66から脱出する向きの移動、つまり、環状凸部92の傾斜に沿う向きの移動に対しては、環状凸部92がそれの傾斜が増加する向きに(環状凸部92が軸方向に沿って倒れる向き)変形させられて環状凸部92とサブピン62の外周部との垂直抗力が小さくなるため、抵抗力が比較的小さくなる。
なお、ブーツ80,82のスリーブ70,72側の端部も、それぞれスライドピン60,62の外周部と摺接するようにされているが、それらの抵抗力の大きさは、サブピン62の進入時にブッシュ90が発生する抵抗力に比較的して小さくなるようにされている。
本実施例において、サブピン62が嵌合穴66に進入する向きの相対移動が「前記第1相対移動」に相当し、脱出する向きの相対移動が「前記第2相対移動」に相当する。また、下方スライドピンたるサブピン220が、「前記特定スライドピン」とされ、サブピン62の嵌合穴66が「前記対応嵌合穴」とされている。
ここで、図5に、従来のディスクブレーキ装置100を示す。このディスクブレーキ装置100は、ブッシュ90が設けられていないこと以外は上記ディスクブレーキ装置10と同様の構成にされている。従来のディスクブレーキ装置100では、サブピン62が嵌合穴66に進入する向きへの移動が規制されておらず、路面からの入力等に起因する振動によって、例えば、キャリパ26が、メインピン60の基端部付近(図において記号Aで示す部分)を支点に、図において反時計回りに傾動する場合がある。このようなキャリパ26の傾動が生じると、ピストン42がインナパッド22に当接して(図において記号Bで示す部分)をロータ16に接近させる向きに押す場合がある。なお、この図の下方は路面であり、キャリパ26は概ね上下方向に配設されている。したがって、インナパッド22は、それの裏板32の下端部(図において記号Cで示す部分)においてマウンティング24に支持されており、ピストン42に押された場合に裏板32の下端部(C)を支点にして回動させられる場合が多い。その場合には、摩擦材の上端部分がロータ16に押し付けられることとなる(図において記号Dで示す部分)。このような接触によって、ブレーキの引き摺りが発生する場合があり、キャリパ26が傾動する勢いが強い場合には、ブレーキの引き摺りの度合いも強くなる。
なお、この図は、キャリパ26とマウンティング24との相対運動の傾向の一例である。また、キャリパ26が傾動した際にピストン42ではなくキャリパ本体40がパッド22,23のいずれかに接触する場合もあると考えられる。
図6に、本ディスクブレーキ装置10に、路面からの入力等に起因する振動が加わった場合の傾向を示す。本ディスクブレーキ装置10において、ブッシュ90により、サブピン62が嵌合穴66に進入しにくくされている。すなわち、振動によってキャリパ26が揺らされて、サブピン62が嵌合穴66に進入する向きに移動させられる場合には、ブッシュ90の抵抗力によってサブピン62の進入が抑制され、つまり、サブピン62の進入方向への移動が阻止され、あるいは、進入方向への移動量が従来のディスクブレーキ装置100と比較して減少させられるのである。逆に、キャリパ26の揺れによってサブピン62が嵌合穴66から脱出する向きに移動させられる場合には、ブッシュ90の抵抗力が小さいため、サブピン62が脱出方向に移動させられやすくなる。このように、サブピン62の移動方向によって抵抗力の大きさが異なるようにされているため、キャリパ26が揺れを繰り返す内にサブピン62が嵌合穴66から脱出する方向に移動する傾向が生じる。
それに対して、メインピン60については、移動方向によって抵抗力の大きさを異ならせるブッシュ90が設けられていないため、進入方向および脱出方向のいずれかの方向に偏って移動するという傾向は生じない。
以上に述べたことから、本ディスクブレーキ装置10において、キャリパ26の揺れによって、図に示すように、メインピン60と比較して、サブピン62の脱出方向への移動量が多くなる傾向が生じる。したがって、キャリパ26が下降傾動する傾向が抑制され、ピストン42あるいはシリンダ部44によってインナパッド22がロータ16に押しつけられにくくなる。例えば、キャリパ26をメインピン60を中心に反時計回りに回動(下降傾動)させる揺れが加わったとしても、ブッシュ90の抵抗力によってサブピン62の進入方向への移動が抑制され、ピストン42がインナパッド22に当接するまでキャリパ26が回動しない、あるいは、ピストン42がインナパッド22に当接したとしてもインナパッド22を押す力が弱くなる。したがって、ブレーキの引き摺りが抑制されるのである。
なお、図において、キャリパ26が中立位置よりも時計回りに若干上昇傾動した状態が示されているが、これはあくまでもキャリパ26の相対運動の傾向を示す図であり、実際にこのような状態になるとは限らない。例えば、従来のディスクブレーキ装置100においてキャリパ26が下降傾動し易い傾向であった場合に、ブッシュ90を設けることによって上記傾向が緩和され、キャリパ26の下降傾動の度合い(角度や頻度)が小さくなる状態であってもよい。つまり、キャリパ26が下降傾動したとしても、従来のディスクブレーキ装置100と比較して、その度合いが小さくなれば、それに応じてブレーキの引き摺りが抑制されるのである。
なお、図5,図6において、パッド22,23の偏摩耗を誇張して示した。パッド22,23の偏摩耗は、例えば、制動時において、パッド22,23を支えるマウンティング24が、図の下方に向かう回転方向の力を受けて変形するのに伴いキャリパ26も回転させられ、ロータ16に対してパッド22,23が傾いて接触させられることが一因と推察される。このようなパッド22,23の偏摩耗が生じてしまうと、制動時にキャリパ26が時計回りに傾動(上昇傾動)し易くなるとともに、パッド22,23が上端部がリアクション部46側に接近する向きに傾斜しやすくなると考えられる。このような場合には、制動後のキャリパ26の反時計回りの傾動によって、ピストン42がインナパッド22に当接しやすくなり、ブレーキの引き摺りが生じやすいと考えられる。したがって、パッド22,23の偏摩耗が生じた状態において、環状凸部92を複数備えたブッシュ90を設けることによって、サブピン62の進入方向の移動に対する抵抗力を大きくすることが特に望ましいと考えられる。
図7に、ロータ16の振れ、つまり、ロータ16の回転軸線方向の歪みを誇張して示す。一般的に、ロータ16には若干の振れが存在するため、ブレーキの引き摺りが生じると、ロータ16の摩擦面のうち主として回転軸線方向に張り出した部分が摩耗し易い傾向がある。そして、ロータ16が部分的に摩耗すると、つまり、ロータ16の偏摩耗が生じると、制動時に振動が発生する等の弊害が生じる。それに対して、本ディスクブレーキ装置10によれば、嵌合穴66にブッシュ90を配設することにより、キャリパ26の下降傾動を抑制することができ、ブレーキの引き摺りを抑制するとともに、ロータ16の偏摩耗をも抑制することができるのである。
本実施例において、1以上の環状凸部92を有するブッシュ90が、サブピン62側の嵌合穴66にのみ設けられていたが、両方の嵌合穴64,66に設けることもできる。例えば、下降傾動の傾向をさらに抑制したい場合には、嵌合穴64に環状凸部90と逆の傾斜の傾斜凸部を有するブッシュを設けて、メインピン60の進入を許容して脱出を抑制することができる。
また、本実施例において、キャリパ26はブッシュ90による進入側の抵抗力がない場合には反時計回りに傾動する傾向が生じるものとされていたが、その傾向はディスクブレーキ装置の構造によって異なる場合がある。例えば、キャリパがシリンダ部44側に移動しやすい傾向や、リアクション部46側に移動しやすい傾向等である。そのような傾向がある場合には、本ブッシュ90を適宜キャリパの移動傾向を打ち消すように1対の嵌合穴64,66の少なくとも一方に設けることができる。また、環状凸部92の傾斜の向きは、スライドピン60,62の移動傾向を打ち消す向きに配設することができる。
上記とは別の実施例について説明する。
上記実施例において、サブピン62の進入方向の移動に対する抵抗力が、ブッシュ90との摩擦によって発生させられていたが、ER流体(電気粘性流体)によって発生させることもできる。ER流体は、電気絶縁性の媒体中に、非常に小さい固体粒子が分散、懸濁させられたものである。このER流体は、電界が付与されると粘度が可逆的に増加する性質を有する。そこで、本実施例において、嵌合穴にER流体を充填するとともに、サブピンが嵌合穴に進入する向きに移動した際にER流体に電界を付与し、脱出する向きに移動した際に電界を付与しないことにより、移動方向によって抵抗力の大きさを異ならせることができる。
図8に、ディスクブレーキ装置210を示す。本ディスクブレーキ装置210の構成は、上記ディスクブレーキ装置10と共通する部分が多いため、同様の構成部品については上記実施例と同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について中心に説明する。
本実施例において、嵌合穴216とサブピン220との隙間にER流体200が充填されている。なお、本実施例において、嵌合穴216とサブピン220との隙間に、全てER流体200が充填されているわけではなく、若干の気体(空気)が入った状態とされている。この気体の存在により、サブピン220の相対移動によって隙間の容積が変化した際の圧力の変化が抑制される。
サブピン220は、本実施例において、導電性を有して電極となる導電性ロッド222と、それの基端部側の外周を覆う絶縁性の絶縁性ケース224と、先端部を覆う絶縁性の絶縁性キャップ226とを含んでいる。導電性ロッド222は、ER流体200と接触して電極として機能する電極部228を含み、基端部において高圧電源230と接続されている。そして、導電性ロッド222に電圧が印加されると、電極部228とアース232に接続されたスリーブ72との間に電界を生じさせ、ER流体200に電界を付与するようにされている。
なお、絶縁性ケース224および絶縁性キャップ226は、絶縁性に優れたセラミックスによって形成されるとともに、電極部228よりも直径が大きくされている。そのため、キャリパ26の傾動によってサブピン220と嵌合穴216の内周部との離間距離が小さくなった場合でも、導電性ロッド222とスリーブ72との間の絶縁が保たれるようにされている。なお、絶縁性ケース224と絶縁性キャップ226との少なくとも一方を絶縁性に優れた樹脂等によって形成することもできる。
絶縁性ケース224の基端部240には、外周部の径が小さくされた小径部242が設けられており、その小径部242においてアーム部250に保持されている。なお、アーム部250は、絶縁性ケース224を境に、シリンダ部44側の支持部252とシリンダ部44から離間した側の固定部254とに分割されている。支持部252と固定部254とにはそれぞれ半円状の切欠が設けられており、その2つの切欠によって形成された円筒状の嵌合穴に小径部242が嵌合した状態で支持部252に固定部254が固定され、絶縁性ケース224がアーム部250に保持されている。また、絶縁性ケース224とアーム部250との隙間には、樹脂製で両端部に鍔が設けられた薄肉円筒状の部材であるカラー256が配設されており、絶縁性ケース224とアーム部250との密着性が高められるとともに絶縁性ケース224に加わる衝撃が緩和されるようにされている。
スリーブ72のキャリパ本体40と反対側に、サブピン220とアーム部250との相対移動を検出する相対移動検出器たる相対変位センサ260が設けられている。その相対変位センサ260は、本実施例において、差動トランス形とされており、センサ本体252内から延び出すロッド254の軸方向の変位が検出される。センサ本体252は、スリーブ72に設けられたセンサ固定部270に固定されている。一方、ロッド254の先端部272には、2つの鍔部274が設けられており、アーム部250の固定部254から周方向に延び出す係合部276が、2つの鍔部274に挟まれ、ロッド254の軸方向に相対移動不能に係合させられている。なお、2つの鍔部274の各々と係合部276との間には、弾性部材が配設されており、ロッド254と係合部276とのがたつきが抑制されるとともに、キャリパ26が傾動した際の係合部276とロッド254とが交差する角度の変化がある程度許容される。
本ディスクブレーキ装置200には、高圧電源230に指令して上記サブピン220に高電圧を印加させ、ER流体200の粘度を制御する電子制御ユニット(以後、特に必要のない限り「ECU」と略記する)290が設けられている。
ECU290は、図示は省略するが、コンピュータおよび入出力部を含む制御部と、複数の駆動回路とを含む。コンピュータは、CPU,ROM,RAMおよびそれらを接続するバスを含み、入出力部には、相対変位センサ260、ブレーキが操作されるとON信号を出力するブレーキペダルスイッチ292等が入力側に接続され、高圧電源230が出力側に接続されている。また、ROMには、図示を省略するメインルーチン,電圧印加制御ルーチン等、種々のプログラムが格納されている。制御部においては、上記メインルーチンおよび他のサブルーチンが予め定められた設定時間毎に繰り返し実行される。
図9に、電圧印加制御ルーチンのフローチャートを示す。
S11(ステップ11の略称であり、他のステップについても同様とする)において、ブレーキペダルスイッチ292の出力と、相対変位センサ260によって検出されたロッド254の軸方向の変位状態とが取得される。
S12において、ブレーキペダルスイッチ292の出力がON信号である場合には制動中であると判定され、出力がOFF信号である場合には非制動中であると判定される。
S13において、ロッド254がセンサ本体252に収容される向きに変位したか否か、つまり、サブピン220が嵌合穴216に進入する向きに移動したか否かが判定される。具体的には、変位ロッド254の変位速度が取得され、変位ロッド254の突出量が減少する向きに変位している場合は、サブピン220が進入方向に移動していると判定される。一方、変位ロッド254の突出量が増加する向きの変位である場合、あるいは、変位ロッド254が変位していない場合には、サブピン220が脱出方向に移動していると判定される。
非制動時にサブピン220が進入方向に移動していると判定された場合には、設定された条件が満たされており、S14において、電圧印加処理が行われる。電圧印加処理では、高圧電源230に対して導電性ロッド222に電圧を印可すべき旨の指令が行われる。なお、本ルーチンが前回実行された際に電圧が印加されていた場合には、継続して電圧が印加される。導電性ロッド222に電圧が印加されるとER流体200の粘性が急速に増加してサブピン220の進入方向の移動が抑制される。
一方、制動中であると判定された場合、または、非制動時にサブピン220が進入方向に移動していないと判定された場合には、設定された条件が満たされておらず、S15において、電圧の印加を解除する処理が行われる。この電圧印加解除処理では、高圧電源230に対して導電性ロッド222への電圧の印可を停止すべき旨の指令が行われる。具体的には、本ルーチンが前回実行された際に電圧が印加されていた場合には電圧の印加が停止され、本ルーチンが前回実行された際に電圧が印加されていなかった場合にはその状態が保たれる。
以上の処理によって、サブピン220の進入方向への移動が抑制されるとともに脱出方向への移動が許容される。すなわち、前記ディスクブレーキ装置10と同様に、本ディスクブレーキ装置210において、メインピン60と比較して、サブピン220の脱出方向への移動量が多くなる傾向が生じ、キャリパ26の下降傾動が抑制されてブレーキの引き摺りが抑制されるのである(図5,図6参照)。
本実施例において、前記「電磁作用発生装置」が、サブピン220,ECU290および高圧電源230を含む。また、ECU290のS13の処理を行う部分が、前記「相対移動依拠判定部」として機能している。さらにまた、前記「電圧印加装置」が、導電性ロッド222および高圧電源230を含む。さらにまた、サブピン220が前記「特定スライドピン」とされ、嵌合穴216が前記「対応嵌合穴」とされている。
なお、本実施例において、電圧を印加しているか否かにかかわらず、相対変位センサ260の検出値に基づいてサブピン220が進入方向に移動しているか否かが判定されていた。それは、本実施例において、導電性ロッド222に電圧が印加された状態でも、キャリパ26の揺れによってサブピン220がわずかに移動するため、サブピン220の相対変位を検出することができるからである。しかしながら、ER流体の特性、印可する電圧、サブピン220やキャリパ26の構造等によっては、導電性ロッド222に電圧が印加された状態でサブピン220の相対変位を非常に小さくすることができる。その場合には、例えば、キャリパ26のアーム部240に加速度センサを取り付けて、電圧が印加された状態においてサブピン220の軸方向の加速度を検出することによって、サブピン220が進入方向と脱出方向とのいずれに移動するかを推測して電圧の印加を継続するべきか否かを判断することができる。具体的には、例えば、マウンティング24の揺れによって、キャリパ26が相対運動させられると仮定すると、進入方向の加速度が検出された場合には電圧の印加を解除することにより、サブピン220の脱出移動を許容でき、脱出方向の加速度が検出された場合には電圧の印加を継続することにより、サブピン220の進入を抑制することができる。
なお、本実施例において、アーム部240に加速度センサを取り付けてサブピン220の軸方向の加速度を検出し、その加速度(あるいは加速度と相対変位)とに基づいて、電圧が印加された状態におけるサブピン220の移動方向を判定することもできる。
本実施例において、相対変位センサ260の検出値に基づいて、サブピン220が進入方向に移動しているか否かが判定されていたが、加速度センサの検出値に基づいて判定することができる。例えば、キャリパ26のアーム部240およびスリーブ72に、サブピン220の軸方向の加速度を検出する加速度センサを取り付けることにより、サブピン220とスリーブ72との相対加速度を取得することができ、サブピン220が進入方向に移動するか否かを判定することができる。なお、この態様においても、電圧が印加された状態では、サブピン220の軸方向の加速度に基づいてサブピン220の移動方向を判定することが有効である。
本実施例において、サブピン220の移動方向に基づいて、電圧を印加するか否かが判定されていたが、他の条件、例えば、マウンティング24あるいはキャリパ26等の加速度に基づいて、電圧を印加するか否かを判定することもできる。キャリパ26はマウンティング24に支持されており、マウンティング24が揺れる際にキャリパ26とマウンティング24とが相対運動し易いことから、マウンティング24の揺れが検出された際に電圧を印加することによって、キャリパ26の揺れ(下降傾動等)を抑制することができる。具体的には、例えば、マウンティング24に加速度センサを取り付けて、マウンティング24の加速度が設定加速度を超える場合に電圧を印加するようにすることができる。
上記とはさらに別の実施例について説明する。
上記2つの実施例において、ブレーキの引き摺りを抑制するためにサブピンの嵌合穴への進入が抑制されていたが、磁力の斥力によってブレーキの引き摺りを抑制することもできる。
図10に、ディスクブレーキ装置300を示す。本ディスクブレーキ装置300は、1対のブレーキパッド310,312およびディスクロータ320を含み、それらの各々に磁石が設けられたものである。本ディスクブレーキ装置300は、前記ディスクブレーキ装置10と同様の位置(車軸の前方側)に配設されており、この図は、車軸を含む平面によってディスクブレーキ装置300を概ね2等分した断面である。本ディスクブレーキ装置300は、1対のブレーキパッド310,312およびディスクロータ320以外は、前記ディスクブレーキ装置10と同様の構成にされているため、同様の構成部品については上記装置10と同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。なお、この図において、マウンティング24の図示が省略されている。また、この図において、上側が車両前方側、下側が車両後方側、右側が車両の側方側、左側が車両の中央側である。
1対のブレーキパッド310,312は、それぞれ摩擦材330,331が裏板334,335に固着されて形成されている。なお、車両中央側のものをインナパッド310,車両側方側のものをアウタパッド312と称する場合がある。また、ブレーキパッド310,312は、互いに同様の構成にされているため、インナパッド310について代表的に説明する。
図11に、インナパッド310を裏板334側から見た斜視図を示す。インナパッド310の裏板334には、摩擦材330側と反対側に開口する凹部336が設けられており、その凹部336にパッド側磁石340が配設されている。パッド側磁石340は、強磁性体のコア342にコイル344が巻き付けられた電磁石とされており、その軸線がインナパッド310と直交する向きに配設され、凹部336の底面に固着されている。なお、本実施例において、凹部336は、概ねインナパッド310の外径に沿う形状とされ、楕円状ないし扁平な多角形(6角形,8角形)状とされている。また、コア342は底面が楕円状の楕円柱形状とされ、パッド側磁石340も楕円柱形状とされている。
裏板334の凹部336の側壁をなす部分には、その側壁を横切って凹部336と外部とを結ぶ切欠346が形成され、その切欠346には、コイル344に電力を供給するケーブル348が通されている。インナパッド310がディスクブレーキ装置300に装着される際には、裏板334側に、いわゆるシムと称される薄板状の部材である第1板状部材350と第2板状部材352とが取り付けられる。なお、アウタパッド312の裏板335には、第1板状部材350が取り付けられるが、第2板状部材352は取り付けられない。
ディスクロータ320(図1)は、車輪14を保持するハブ356に固定された第1ロータ360と、その第1ロータ360に取り付けられた第2ロータ362と、第1ロータ360と第2ロータ362との間に設けられた永久磁石であるロータ側磁石364とを含む。第1ロータ360は、円筒部370と、その円筒部370の軸方向の一端から半径方向内向きに延びるフランジ部372と、円筒部370の他端から半径方向外向きに延びる摩擦プレート部374とを備えたハット型ロータとされている。第2ロータ362は、第1ロータ360の側面(詳しくは、摩擦プレート部374の内周部の側面)に締結されるフランジ部376と、そのフランジ部376から半径方向外向きに延びる摩擦プレート部378とを備えている。その第2ロータ362の摩擦プレート部378の第1ロータ360と反対側の面が、インナパッド310と摺接するインナ側の摩擦面380となり、第1ロータ360の摩擦プレート部374の第2ロータ362と反対側の面が、アウタパッド312と摺接するアウタ側の摩擦面382となる。
図12に、第2ロータ362の平面図を示す。第2ロータ362の摩擦プレート部378には、第1ロータ360側に開口し、ロータ側磁石364を収容する複数の収容凹部386が設けられている。それら収容凹部386の各々は概して台形状をなしており、互いに隣接する収容凹部386の間に隔壁388が形成されている。その隔壁388の端面は、フランジ部376の第1ロータ360と接触する接触面384と同じ平面に位置し、第2ロータ362が第1ロータ360に取り付けられた状態で摩擦プレート部374と当接するようにされており、制動時におけるディスクロータ320の幅方向の圧縮に対する剛性が高まるようにされている。
各ロータ側磁石364は、円板形状をなし、第1,第2ロータ360,362から受ける衝撃を緩和するための緩衝材390(グラスウール等)に包まれた状態で収容凹部386に配設されている。また、各ロータ側磁石364は、熱減磁の小さい永久磁石とされており、本実施例においてアルニコ磁石とされている。
各ロータ側磁石364は、第1ロータ360側にN極を、第2ロータ362側にS極を生じさせる向きに配設されている。すなわち、各ロータ側磁石364は、ディスクロータ320の2つの摩擦面が位置する両側の部分に互いに異なる磁極を生じさせ、「ディスクロータの回転軸線方向の磁場を発生させる第1磁石」として機能しているのである。また、本実施例において、第1,第2ロータ360,362は、それぞれ強磁性体とされており、それらの摩擦プレート部374,378はロータ側磁石364によって磁化されて、摩擦面382となる部分がN極、摩擦面380となる部分がS極となる。
以上に述べた本ディスクブレーキ装置300において、パッド側磁石340に電力を供給することによって、各ブレーキパッド310,312とディスクロータ320とを離間させる向きの磁力、つまり、斥力を発生させることができる。
本ディスクブレーキ装置300には、電子制御ユニット(以後、特に必要のない限り「ECU」と略記する)400と、駆動回路410とが設けられており(図10)、ECU400の制御下において、駆動回路410からパッド側磁石340に適切なタイミングで電力が供給され、斥力が発生させられるのである。ECU400は、前述のECU290と同様に、コンピュータおよび入出力部を含む。入出力部には、ブレーキペダルスイッチ292、加速度センサ420等が入力側に接続され、駆動回路410が出力側に接続されている。また、ROMには、図示を省略するメインルーチン,電磁斥力制御ルーチン等、種々のプログラムが格納されている。制御部においては、上記メインルーチンおよび他のサブルーチンが予め定められた設定時間毎に繰り返し実行される。
電磁斥力制御ルーチンがECU400のコンピュータによって実行されることにより、電磁斥力制御が行われる。この電磁斥力制御について以下に説明する。
電磁斥力制御では、制動時において、パッド側磁石340に電力が供給されず、各パッド310,312とディスクロータ320との間に斥力が発生しないようにされる。一方、制動操作が解除された場合、非制動時においてキャリパ26の加速度がしきい加速度を超えた場合に、設定された時間、パッド側磁石340に電力を供給すべき旨の指令が駆動回路410になされる。なお、制動操作が解除されたか否かは、ブレーキペダルスイッチ292の出力がON信号からOFF信号に切り換わったか否かによって判断される。また、加速度センサ420は、3軸型の加速度センサとされており、キャリパ26のシリンダ部44に取り付けられている。本実施例において、いずれかの方向の加速度がしきい加速度を超えた場合に電力供給指令がなされるが、設定された方向(例えば、ディスクロータ320の回転軸線方向,上下方向等)の加速度がしきい加速度を超えた場合にのみ電力供給指令がなされるようにすることもできる。
電力供給指令がなされると、駆動回路410から1対のブレーキパッド310,312の各々のパッド側磁石340に直流電流が供給され、インナパッド310のパッド側磁石340では、ディスクロータ320側にS極が生じ、アウタパッド312側のパッド側磁石341では、ディスクロータ320側にN極が生じる。一方、ディスクロータ320において、前述のように、ロータ側磁石364によって、インナパッド310側にS極が生じ、アウタパッド312側にN極が生じており、ディスクロータ320と各ブレーキパッド310,312との間に斥力が発生する。その結果、ディスクロータ320と各ブレーキパッド310,312との接触が抑制され、ブレーキの引き摺りが抑制されるのである。
なお、本実施例において、パッド側磁石340,341の各々が、前記「第2磁石」として機能している。また、本実施例において、各ロータ側磁石364が、ディスクロータの2つの摩擦面となる両側の部分に互いに異なる磁極を生じさせており、パッド側磁石340,341の各々が、1対の摩擦パッドの各々のディスクロータの側に、そのディスクロータの磁極と反発する磁極を発生させている。
本実施例において、非制動時であっても、制動操作が解除された場合等の設定された条件が満たされない場合にはパッド側磁石340に電力が供給されないが、非制動時において常時電力が供給されるようにすることができる。その際には、例えば、非制動時に設定された条件が満たされない場合に、設定された条件が満たされた場合よりも小さな電力が供給されるようにすることができる。
本実施例において、ディスクロータ320に永久磁石が設けられていたが、永久磁石に換えて電磁石を設けることができる。また、本実施例において、第1,第2ロータ360,362は強磁性体とされていたが、非磁性体にされていてもよい。
なお、前記ER流体200を備えた実施例と、上記磁石を備えた実施例とにおいて、ECUが1の車輪のディスクブレーキ装置を制御するものとされていたが、ECUが複数の車輪の各々に対応する複数のディスクブレーキ装置の各々を制御するものとすることもできる。
請求可能発明の実施例であるディスクブレーキ装置を備えた車両の一部を模式的に示す図である。 上記ディスクブレーキ装置を車両前方側から見た正面図である。 上記ディスクブレーキ装置のマウンティングおよびブレーキパッドの正面図である。 上記ディスクブレーキ装置のブッシュを拡大して示す図である。 従来のディスクブレーキ装置の下降傾動を模式的に示す図である。 上記ディスクブレーキ装置の相対運動の傾向を模式的に示す図である。 上記従来のディスクブレーキ装置のディスクロータの歪みを誇張して示す模式図である。 上記とは別の実施例のディスクブレーキ装置の正面図である。 上記実施例において、電圧印加制御のフローチャートを示す図である。 上記とはさらに別の実施例においてディスクブレーキ装置を概ね水平な面で切断した断面を示す図である。 上記実施例において、インナパッドおよびパッド側磁石の斜視を示す図である。 上記実施例において、第2ロータおよびロータ側磁石を示す図である。
符号の説明
<第1実施例> 10:ディスクブレーキ装置 14:車輪 16:ディスクロータ 20:ブレーキ本体部 22:ブレーキパッド、インナパッド 23:ブレーキパッド、アウタパッド 24:マウンティングブラケット 26:キャリパ 36,37:摩擦面[ロータ] 40:キャリパ本体 42:ピストン 44:シリンダ部 46:リアクション部 48:連結部 60:スライドピン(メインピン) 62:スライドピン(サブピン) 64,66:嵌合穴 70,72:スリーブ 74,76:溝 90:ブッシュ(抵抗力発生体) 92:環状凸部(傾斜凸部) 100:従来のディスクブレーキ装置 <第2実施例> 200:ER流体(電気粘性流体) 210:ディスクブレーキ装置 216:嵌合穴 220:サブピン 222:導電性ロッド 230:高圧電源 260:相対変位センサ(相対移動検出器) 290:電子制御装置(ECU) 292:ブレーキペダルスイッチ <第3実施例> 300:ディスクブレーキ装置 310:インナパッド 312:アウタパッド 320:ディスクロータ 330,331:摩擦材 334,335:裏板 340:パッド側磁石(第2磁石) 360:第1ロータ 362:第2ロータ 364:ロータ側磁石(第1磁石) 380,382:摩擦面 386:収容凹部 400:電子制御装置(ECU) 420:加速度センサ

Claims (5)

  1. 回転軸線まわりに回転するディスクロータと、
    そのディスクロータの両側の摩擦面に対向する1対の摩擦パッドと、
    それら摩擦パッドを前記ディスクロータの摩擦面に接近離間可能に保持するマウンティングブラケットと、
    前記1対の摩擦パッドを前記ディスクロータに押し付ける力を発生させるシリンダを有するキャリパと、
    前記マウンティングブラケットと前記キャリパとの一方に前記ディスクロータの周方向に互いに離間して設けられて前記ディスクロータの回転軸線方向に延びる1対のスライドピンと、
    前記マウンティングブラケットと前記キャリパとの他方に設けられ、前記1対のスライドピンの各々と摺動可能に嵌合する1対の嵌合穴と、
    非制動時に、前記1対のスライドピンの少なくとも一方のものである特定スライドピンと前記1対の嵌合穴のうちその特定スライドピンに対応するものである対応嵌合穴との軸方向におけるいずれか一方の向きの相対移動である第1相対移動に対して、その第1相対移動と逆の向きの相対移動である第2相対移動に対するよりも大きな抵抗力を付与することにより、前記1対の摩擦パッドの少なくとも一方の前記ディスクロータに接近する向きの移動を抑制する異方向性抵抗力付与装置と
    を含むことを特徴とするディスクブレーキ装置。
  2. 前記異方向性抵抗力付与装置が、
    ゴムまたはその類似物によって形成され、前記特定スライドピンと前記対応嵌合穴との一方に設けられてその一方から突出して前記特定スライドピンと前記対応嵌合穴との他方に摺接するとともに、前記第2相対移動において前記特定スライドピンと前記対応嵌合穴との前記一方に対して前記他方が移動する向きに傾斜した形状にされた1以上の傾斜凸部を有する抵抗力発生体を含む請求項1に記載のディスクブレーキ装置。
  3. 前記異方向性抵抗力付与装置が、
    前記対応嵌合穴の内部に前記特定スライドピンと接触する状態で充填され、電磁的作用によって粘性が急速に変化する流体である電磁粘性変化流体と、
    前記特定スライドピンと対応嵌合穴とが前記第1相対移動した場合に前記電磁粘性変化流体の粘性を増加させる電磁的作用を生じさせる電磁作用発生装置と
    を含む請求項1または2に記載のディスクブレーキ装置。
  4. 前記異方向性抵抗力付与装置が、前記特定スライドピンと前記対応嵌合穴との相対移動を検出する相対移動検出器を含み、
    前記電磁作用発生装置が、前記相対移動検出器によって検出された相対移動に基づいて、前記特定スライドピンと対応嵌合穴とが前記第1相対移動したか否かを判定する相対移動依拠判定部を含む請求項3に記載のディスクブレーキ装置。
  5. 前記異方向性抵抗力付与装置が、
    前記ディスクロータの回転軸線方向の磁場を発生させる第1磁石と、
    前記1対の摩擦パッドの少なくとも一方に設けられ、前記第1磁石の磁場において前記ディスクロータから離間する向きの力を生じさせる磁極を発生させる第2磁石と
    を含む請求項1ないし4のいずれかに記載のディスクブレーキ装置。
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