JP2008088218A - カプセル化顔料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】記録ヘッドからの吐出安定性に優れ、記録媒体の種類を問わず優れた記録特性を示すカプセル化顔料及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】表面に電荷を有する顔料粒子がポリマーを主成分とする壁材によって被覆されてなるカプセル化顔料であって、前記ポリマーが、特定の官能基を有するイオン性重合性界面活性剤A、及び/又は、特定の官能基を有するイオン性モノマーから誘導された繰り返し構造単位と、(2)疎水性モノマーから誘導された繰り返し構造単位と、(3)特定の官能基を有するイオン性重合性界面活性剤Bから誘導された繰り返し構造単位とを少なくとも含んでおり、前記カプセル化顔料を5重量%及び水を含有する顔料分散液の25℃での動的粘弾特性が、下記式(I)及び(II)を同時に満たすように設定されたカプセル化顔料。
【数1】
Figure 2008088218

【選択図】図1

Description

本発明は、インクジェット記録用インクに有用なカプセル化顔料及びその製造方法に関する。
インクジェット記録方法は、微細なノズルヘッドからインク液滴を吐出して、文字や図形を紙などの記録媒体の表面に記録する方法である。インクジェット記録方法としては電歪素子を用いて電気信号を機械信号に変換し、ノズルヘッド部分に貯えたインク液滴を断続的に吐出して記録媒体表面に文字や記号を記録する方法や、あるいはノズルヘッドの吐出部分に近い一部でインク液の一部を急速に加熱して泡を発生させ、その泡による体積膨張でインク液滴を断続的に吐出して、記録媒体表面に文字や記号を記録する方法などが実用化されている。
インクジェット記録用インクとして、最近では、顔料を水中に分散させた水系顔料インクが提供されている。これは、顔料を用いたインクの方が、水溶性染料を用いたインクに比べて、耐水性や耐光性に優れるという特徴を有するからである。このような水系顔料インクにおいては、PPC用紙に代表されるインクジェット適性に乏しい普通紙において高い印字濃度を実現することや、光沢紙などの光沢媒体において高い印字部光沢性を実現することなど、記録特性を一層高めることが求められているが、斯かる要求に十分に応え得る技術は未だ提供されていないのが現状である。
また、このような水系顔料インクとしては、一般的には界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤を用いて顔料を水性分散媒中に分散させたものが使用されることが多い。しかし、このように顔料粒子の分散のために分散剤を用いると、インクとして好ましい特性を確保するためにはインク組成において調節すべき点が多く、例えば、高い印字濃度や定着性、耐擦性を得ようとすると、粘度が高くなる傾向があるなどの課題があった。
さらに、これらの水系顔料インクにおいては、分散剤が顔料粒子表面に単に吸着しているだけであり、インクがノズルヘッドの細いノズルを通って吐出される際に該インク中の顔料粒子に強い剪断力が加わるようなインクジェット記録方法では、顔料粒子表面に吸着していた分散剤が離脱してしまうことがある。これによって、顔料インクの分散性が低下し、吐出安定性(記録ヘッドから一定方向に安定して吐出される特性)が悪化することがある。また、界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤で分散した顔料を用いた顔料インクにおいては、これらの分散剤の脱吸着が起こりやすく、長期間保存した場合にも分散が不安定となりやすい。
一方、顔料系インクジェットインクに含まれる顔料粒子の記録媒体に対する定着性を向上させる目的で、顔料粒子がポリマーで被覆されたカプセル化顔料を使用する技術が知られている。
特許文献1、2、3には顔料粒子をカプセル化したものが、特許文献4〜7には顔料粒子の表面にポリマーをグラフト重合したものが提案されている。また特許文献8には、両親媒性グラフトポリマーを用いて疎水性粉体をカプセル化する方法が提案されているが、カプセル化にあたり、予め重合したポリマーを用いるとカプセル化後の粒子径が大きくなりすぎるという問題があった。
前記の提案のほかに、特許文献9〜17には転相乳化法によって室温で皮膜形成可能な樹脂で被覆された顔料を用いたインクが、特許文献18〜27には酸析法によってアニオン性基含有有機高分子化合物で被覆された顔料を用いたインクが提案されている。
さらに、特許文献28〜33には、転相乳化法によってポリマー微粒子と色材を含浸させてなるポリマーエマルションを用いたインクが提案されている。しかしながら、転相乳化法や酸析法によって得られた色材をインクに用いた場合、インクに用いられる浸透剤等の有機溶媒の種類によっては、色材(顔料粒子)に吸着されたポリマーの脱離が起きてインク中に溶解することもあり、インクの分散安定性や吐出安定性、画像品質等が十分でない場合があった。また、転相乳化法においては、その製造過程で使用される有機溶剤の残留によって、インクの分散安定性や吐出安定性、画像品質等の変動が生じたり、プラスチック部材の侵食等が生じたりすることがあった。
特公平7−94634号公報 特開平8−59715号公報 特開2003−306661号公報 特開平5−339516号公報 特開平8−302227号公報 特開平8−302228号公報 特開平8−81647号公報 特開平5−320276号公報 特開平8−218015号公報 特開平8−295837号公報 特開平9−3376号公報 特開平8−183920号公報 特開平10−46075号公報 特開平10−292143号公報 特開平11−80633号公報 特開平11−349870号公報 特開2000−7961号公報 特開平9−31360号公報 特開平9−217019号公報 特開平9−316353号公報 特開平9−104834号公報 特開平9−151342号公報 特開平10−140065号公報 特開平11−152424号公報 特開平11−166145号公報 特開平11−199783号公報 特開平11−209672号公報 特開平9−286939号公報 特開2000−44852号公報 特開2000−53897号公報 特開2000−53898号公報 特開2000−53899号公報 特開2000−53900号公報
本発明は、前記の問題点に鑑みて成されたものであって、その目的とするところは、記録ヘッドからの吐出安定性に優れ、記録媒体の種類を問わず優れた記録特性を示すカプセル化顔料及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討の結果、表面に電荷を有する顔料粒子を、(1)前記顔料粒子の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有するイオン性重合性界面活性剤A、及び/又は、前記顔料粒子の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有するイオン性モノマーから誘導された繰り返し構造単位と、(2)疎水性モノマーから誘導された繰り返し構造単位と、(3)前記顔料粒子の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有するイオン性重合性界面活性剤Bから誘導された繰り返し構造単位とを少なくとも含むポリマーを主成分とする壁材によって被覆してなるカプセル化顔料が、インクジェット記録において優れた吐出安定性及び記録特性を発揮し得るものであることを知見すると共に、さらに検討した結果、このカプセル化顔料を5重量%及び水を含有する顔料分散液の25℃での動的粘弾特性を、特定範囲に調整することにより、吐出安定性並びに普通紙における発色性及び光沢媒体における印字部光沢性をより高レベルで実現し得るカプセル化顔料が得られることを知見した。本発明は、こうした知見に基づきなされたものであり、その技術的構成は以下の通りである。
〔1〕表面に電荷を有する顔料粒子がポリマーを主成分とする壁材によって被覆されてなるカプセル化顔料であって、前記ポリマーが、(1)前記顔料粒子の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有するイオン性重合性界面活性剤A、及び/又は、前記顔料粒子の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有するイオン性モノマーから誘導された繰り返し構造単位と、(2)疎水性モノマーから誘導された繰り返し構造単位と、(3)前記顔料粒子の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有するイオン性重合性界面活性剤Bから誘導された繰り返し構造単位とを少なくとも含んでおり、前記カプセル化顔料を5重量%及び水を95重量%含有する顔料分散液の25℃での動的粘弾特性が、下記式(I)及び(II)を同時に満たすように設定されたカプセル化顔料。
Figure 2008088218
〔2〕前記ポリマーが、非イオン性基と疎水性基と重合性基とを有する非イオン性重合性界面活性剤から誘導された繰り返し構造単位を更に含んでいる前記〔1〕記載のカプセル化顔料。
〔3〕前記〔1〕記載のカプセル化顔料の製造方法であって、少なくとも下記工程1、2a、3a及び4aを有するカプセル化顔料の製造方法。
工程1:前記顔料粒子を含有する水性溶媒に前記イオン性重合性界面活性剤A及び/又は前記イオン性モノマーを添加・混合し、該顔料粒子の表面に該イオン性重合性界面活性剤A及び/又は該イオン性モノマーを吸着させる工程。
工程2a:前記工程1で得られた混合液に前記疎水性モノマーを添加・混合する工程。
工程3a;前記工程2aで得られた混合液に前記イオン性重合性界面活性剤Bを添加・混合する工程。
工程4a:前記工程3aで得られた混合液に重合開始剤を添加・混合し、前記イオン性重合性界面活性剤A及び/又は前記イオン性モノマーと前記疎水性モノマーと前記イオン性重合性界面活性剤Bとを重合して前記ポリマーを形成する工程。
〔4〕前記〔1〕記載のカプセル化顔料の製造方法であって、少なくとも下記工程1、2b、3b及び4bを有するカプセル化顔料の製造方法。
工程1:前記顔料粒子を含有する水性溶媒に前記イオン性重合性界面活性剤A及び/又は前記イオン性モノマーを添加・混合し、該顔料粒子の表面に該イオン性重合性界面活性剤A及び/又は該イオン性モノマーを吸着させる工程。
工程2b:前記工程1で得られた混合液に前記イオン性重合性界面活性剤Bを添加・混合する工程。
工程3b:前記工程2bで得られた混合液に前記疎水性モノマーを添加・混合する工程。
工程4b:前記工程3bで得られた混合液に重合開始剤を添加・混合し、前記イオン性重合性界面活性剤A及び/又は前記イオン性モノマーと前記イオン性重合性界面活性剤Bと前記疎水性モノマーとを重合して前記ポリマーを形成する工程。
〔5〕前記工程3a又は2bにおいて、前記混合液に更に、非イオン性基と疎水性基と重合性基とを有する非イオン性重合性界面活性剤を添加・混合する前記〔3〕又は〔4〕記載のカプセル化顔料の製造方法。
〔6〕前記工程1において、前記顔料粒子を含む水性溶媒に前記イオン性重合性界面活性剤A及び/又は前記イオン性モノマーを添加・混合した後、該水性溶媒に超音波を照射する前記〔3〕〜〔5〕の何れかに記載のカプセル化顔料の製造方法。
〔7〕前記〔1〕又は〔2〕記載のカプセル化顔料及び水を含有するインクジェット記録用インク。
本発明によれば、記録ヘッドからの吐出安定性及び画像品質に優れたカプセル化顔料を提供することができる。
即ち、本発明のカプセル化顔料によれば、インクジェット記録に適用された場合において、いわゆるドット抜けやインク着弾位置のズレなどが防止され、印字濃度が高く、記録媒体として普通紙を使用した場合にも画像が滲みにくく、画像の発色性が高い記録物を得ることができ、記録媒体として光沢媒体を使用した場合には印字部の光沢感に優れた記録物を得ることができる。
以下、先ず、本発明のカプセル化顔料及びその製造方法について説明する。
本発明のカプセル化顔料は、表面に電荷を有する顔料粒子が、ポリマーを主成分とする壁材によって被覆されたものである。壁材に占めるポリマーの含有量は、好ましくは60重量%以上、更に好ましくは90重量%以上であり、100重量%であってもよい。
本発明のカプセル化顔料の主たる特徴の一つは、壁材の組成、構成にある。即ち、壁材の主成分であるポリマーが、(1)前記顔料粒子の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有するイオン性重合性界面活性剤A、及び/又は、前記顔料粒子の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有するイオン性モノマーから誘導された繰り返し構造単位と、(2)疎水性モノマーから誘導された繰り返し構造単位と、(3)前記顔料粒子の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有するイオン性重合性界面活性剤Bから誘導された繰り返し構造単位とを少なくとも含んでいる点を特徴の一つとしている。
即ち、このような特定組成のポリマーを壁材として有する本発明のカプセル化顔料は、転相乳化法や酸析法等の公知のカプセル化法とは異なる方法、好ましくは前記〔3〕又は〔4〕に記載のカプセル化顔料の製造方法によって製造されるものであり、その製造工程において、該ポリマーの形成前に、該ポリマーの形成材料である重合成分(イオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマー、疎水性モノマー、イオン性重合性界面活性剤B、その他のモノマー)が芯物質である顔料粒子上に極めて高度に制御された形態で配置されたアドミセル(admicell)を経るため、構造が極めて高精度に制御されている。このため、本発明のカプセル化顔料は、下記効果(イ)〜(リ)を奏する。
(イ)壁材の厚みを自由に設計できる。
(ロ)顔料粒子一個をカプセル化できる。
(ハ)顔料粒子と壁材とでその機能を分離することができるため、カプセル化顔料の設計自由度が高く、用途に適した高機能なカプセル化顔料が得られる。
(ニ)均一な表面状態を有する粒子を製造することができる。
(ホ)ナノオーダーでのカプセル化が容易である。
(ヘ)顔料粒子をコアに持たない重合副生成物の生成が抑制され、使用した疎水性モノマーの添加量に応じた粒子径を持つ、均一な形状を有した、粒度分布幅の狭いカプセル化顔料を安定して得ることができる。
(ト)環境に対して優しい。即ち、カプセル化顔料の製造は、生体に対して有害な有機溶剤を使用しない、水系での反応によって実施可能であるため、環境に悪影響を及ぼすおそれが少ない。
(チ)毒性などのある顔料粒子のカプセル化によって低毒化又は無害化が可能である。
(リ)インクの色材として用いた場合、水性分散液中における分散安定性に優れ、画像品質、画像の堅牢性及び耐擦性に優れた記録物を得ることができる。インクジェット記録用インクの色材として用いた場合には、更に、記録ヘッドからの吐出安定性に優れる。
図1は、本発明のカプセル化顔料の製造工程における反応系(各種添加成分が混合された混合液)中に存在する前記アドミセルの一例を示す模式図である。
顔料粒子1は、その表面に負電荷を有しており、水を主成分とする溶媒(水性溶媒)中に分散している。この顔料粒子1に対し、カチオン性基31(顔料粒子の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基)と疎水性基32と重合性基33とを有するカチオン性モノマー3(イオン性モノマー)が、そのカチオン性基31をアニオン性界面活性剤2のアニオン性基21に向けてイオン性の強い結合で吸着する。そして、このカチオン性モノマー3の疎水性基32及び重合性基33に対しては、疎水性相互作用によって、アニオン性基41(顔料粒子の表面の電荷と同種の電荷を有するイオン性基)と疎水性基42と重合性基43とを有するアニオン性重合性界面活性剤4(イオン性重合性界面活性剤B)の該疎水性基42及び該重合性基43が向き合い、アニオン性重合性界面活性剤4の該アニオン性基41は水性溶媒の存在する方向、即ち顔料粒子1から最も離れた方向に存在している。疎水性モノマー5は、カチオン性モノマー3の疎水性基32及び重合性基33と、アニオン性重合性界面活性剤4の疎水性基42及び重合性基43とが向き合って形成される疎水相に存在している。
そして、図1に示す如きアドミセルが存在する溶媒に、重合開始剤を添加・混合し、カチオン性モノマー3とアニオン性重合性界面活性剤4と疎水性モノマーとを重合させることによってポリマーが形成され、図2に示すように、顔料粒子1が該ポリマーを主成分とする壁材60によって被覆された、本発明のカプセル化顔料100が生成される。ここで、壁材60の表面には、アニオン性基41が水相側に向かって規則正しく密に存在しているので、カプセル化顔料100は水性溶媒中で良好に分散する。
図3は、本発明のカプセル化顔料の製造工程における反応系(各種添加成分が混合された混合液)中に存在する前記アドミセルの別の例を示す模式図、図4は、図3に示す分散状態において、各種モノマーが重合した状態を示す模式図である。図3及び図4に示す形態は、顔料粒子1の表面にイオン性(アニオン性)基21と疎水性基22とを有するイオン性(アニオン性)界面活性剤2が吸着している点以外は、図1及び図2に示す形態と同様であり、図1及び図2に記載の符号と同じ符号のものは、上述した図1及び図2の説明が適用される。
このように、前記特定組成のポリマーを含んで構成される壁材を有する本発明のカプセル化顔料の製造工程においては、壁材の主成分であるポリマーの重合成分が、重合する前の段階で、芯物質である顔料粒子の周囲に極めて高度に制御された形態で配置され、最外殻では水相に向かってイオン性基が配向している状態のアドミセルが形成される。そして、このアドミセルの形態が維持されたまま、各重合成分が重合しポリマーに転化して壁材が形成されるため、本発明のカプセル化顔料は、極めて高精度に構造が制御されているのである。
尚、前記アドミセルが生成されないカプセル化法、例えば転相乳化法や酸析法では、前記効果(イ)〜(リ)の全てを奏し得るカプセル化顔料を得ることはできない。その理由は定かではないが、転相乳化法や酸析法では、顔料粒子を被覆する壁材として、予め作製されたポリマーを用いるため、顔料粒子に対する壁材の被覆状態が完全ではない(顔料粒子が壁材によって完全には被覆されていない)ためと推察される。また、転相乳化法の場合はその製造過程で有機溶剤を使用するため使用した有機溶剤の残留が起こることがあるため、塗料やインクに転相乳化法によるカプセル化顔料を使用する場合では性能の安定性に課題が生じることもある。特に、転相乳化法によるカプセル化顔料をインクジェット用インクに利用した場合には、インクの分散安定性やインクの吐出安定性並びに得られる画像品質等に変動が起きることもあり、また、プラスチック部材の劣化等を引き起こすこともある。本発明のカプセル化顔料は製造工程中に有機溶剤を使用しないことから安定した性能を得ることができ、プラスチック部材の劣化等を引き起こすことは無い。
本発明のカプセル化顔料は、上述したように、顔料粒子を被覆する壁材が特定組成のポリマーを含んで構成されている、即ち、前記アドミセルを経て製造されていることに加えて、その水性分散液の動的粘弾特性が特定範囲に入っている点を特徴としている。
即ち、本発明のカプセル化顔料は、該カプセル化顔料を5重量%及び水を95重量%含有する顔料分散液の25℃での動的粘弾特性が、下記式(I)及び(II)を同時に満たすように設定されていることを特徴としている。この顔料分散液は、前記カプセル化顔料及び水のみを含有しており、これら以外の成分を一切含有していない。
Figure 2008088218
以下に、前記式(I)及び(II)について図5を用いて説明する。
図5は、前記顔料分散液の液温25℃での動的粘弾特性曲線の模式図であり、横軸に印加周波数ω(rad/sec)の常用対数を、縦軸に貯蔵剛性率G’(Pa)の常用対数をとっている。
このように、印加周波数及び貯蔵剛性率を両対数目盛りでとると、ニュートン流動の場合は傾きが2(Pa・sec/rad)の直線となる。しかしながら、水に不溶のカプセル化顔料が粒子として存在する顔料分散液は、非ニュートン流動となることが多く、非ニュートン流動の場合、グラフは曲線となり、その原因は顔料分散液中でのカプセル化顔料粒子間の相互作用であると考えられている。
よって、前記式(I)中の下記式(I−1)は、下記式(I−2)のように点A及び点Bを定めれば、図5においては、線分ABの傾きであり、前記式(I)は、線分ABの傾きが0.3(Pa・sec/rad)〜2(Pa・sec/rad)であることを示している。線分ABの傾き(前記式(I−1))は、好ましくは0.5〜2の範囲である。
Figure 2008088218
Figure 2008088218
カプセル化顔料は、前記式(I)を満たすことにより、特にインクジェット記録に用いた場合の吐出安定性に優れた効果を発現し得る。即ち、前記式(I)を満たすカプセル化顔料は、これをインクジェット記録の色材として用いた場合、記録ヘッドからの吐出安定性に優れ、いわゆるドット抜けやインク着弾位置のズレなどが効果的に防止される。
カプセル化顔料は、前記式(I)を満たすことにより、特に画像品質において優れた効果を発現し得る。即ち、前記式(I)を満たすカプセル化顔料は、これをインクジェット記録の色材として用いた場合、記録媒体としてインクジェット適性に乏しい普通紙(非インクジェット専用紙)を使用した場合でも高い印刷濃度(OD値)を実現し、また記録媒体として光沢紙等の光沢媒体を使用した場合は、高い光沢性を有する印字部を作製することが可能となる。前記式(I−1)、即ち、図5における線分ABの傾きが0.3未満である場合は、インクの吐出不良やドット抜けやインク着弾位置のズレが起こるおそれがある。
また、前記式(II)は、前記顔料分散液の液温25℃での動的粘弾性測定において、印加周波数ωが0.8(rad/sec)以下の周波数域での貯蔵剛性率G’が、1×10−2Pa以下であることを示している。該貯蔵剛性率G’は、好ましくは1×10−3Pa以下である。
以上のような動的粘弾特性を有する本発明のカプセル化顔料は、その壁材が前記特定組成を有していることによる効果(前記効果(イ)〜(リ))と相俟って、吐出安定性、印刷濃度(発色性)、印字部光沢性に極めて優れたものである。
本発明に係る動的粘弾特性の測定は、円錐−円板型の粘弾性測定装置を用いて行うことができる。本装置は、中心が同一の垂直軸に乗るように上下に水平に置かれた円錐と円板の間隙に前記顔料分散液を入れて円板あるいは円錐板を所定の振れ角で所定の印加周波数で反復運動させたときに生じるトルクを検出し、下記式より剪断応力τ、剪断速度γ・を計算することができる。
・剪断応力(Sheer Stress):τ=3M/(2πR
・剪断速度(Sheer rate):γ・=Ω/θ(式中、Mはトルク(torque)、Rは円板半径、Ωは角速度、θは円錐角(cone angle))
これらの計算値から、角印加周波数(ω)における貯蔵剛性率G’及び損失剛性率G’’が得られる。
前記の動的粘弾特性の測定のための装置は、市販されているものを利用することが可能であり、例えば、TA INSTRUMENTS社製のストレスレオメータAR−G2が利用できる。測定は応力制御によって行い、線形性を有する範囲で動的粘弾性関数(G’、G’’、η’、η’’、tanδ)の周波数依存性を求める。
カプセル化顔料の前記動的粘弾特性を上述した範囲内に設定することは、例えば、芯物質である顔料粒子と壁材の形成材料である重合成分(イオン性重合性界面活性剤A及びB、イオン性モノマー、疎水性モノマー、その他のモノマー)との添加重量比を適宜調整する方法や、イオン性重合性界面活性剤Aの種類を適宜調整する方法等により、あるいはこれらの方法を適宜組み合わせることにより達成することができる。
以下に、本発明のカプセル化顔料の製造方法について、その好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明の第1実施形態の製造方法は、少なくとも下記工程1、2a、3a及び4aを有する。
工程1:表面に電荷を有する顔料粒子を含有する水性溶媒に、前記顔料粒子の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有するイオン性重合性界面活性剤A、及び/又は、前記顔料粒子の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有するイオン性モノマーを添加・混合し、前記顔料粒子の表面に該イオン性重合性界面活性剤A及び/又は該イオン性モノマーを吸着させる工程。
工程2a:前記工程1で得られた混合液に疎水性モノマーを添加・混合する工程。
工程3a;前記工程2aで得られた混合液に、前記顔料粒子の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有するイオン性重合性界面活性剤Bを添加・混合する工程。
工程4a:前記工程3aで得られた混合液に重合開始剤を添加・混合し、前記イオン性重合性界面活性剤A及び/又は前記イオン性モノマーと前記疎水性モノマーと前記イオン性重合性界面活性剤Bとを重合して前記ポリマーを形成する工程。
また、本発明の第2実施形態の製造方法は、少なくとも前記工程1並びに下記工程2b、3b及び4bを有する。
工程2b:前記工程1で得られた混合液に、前記顔料粒子の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有するイオン性重合性界面活性剤Bを添加・混合する工程。
工程3b:前記工程2bで得られた混合液に疎水性モノマーを添加・混合する工程。
工程4b:前記工程3bで得られた混合液に重合開始剤を添加・混合し、前記イオン性重合性界面活性剤A及び/又は前記イオン性モノマーと前記イオン性重合性界面活性剤Bと前記疎水性モノマーとを重合して前記ポリマーを形成する工程。
前記の第1実施形態と前記第2実施形態との相違点は、実質的に、疎水性モノマー及びイオン性重合性界面活性剤Bの混合液への添加順序のみである。
即ち、第1実施形態では、工程1で得られた混合液に疎水性モノマーを添加・混合する工程(工程2a)を経た後、イオン性重合性界面活性剤Bを添加・混合する工程(工程3a)を行なうのに対し、第2実施形態では、工程1で得られた混合液にイオン性重合性界面活性剤Bを添加・混合する工程(工程2b)を経た後、疎水性モノマーを添加・混合する工程(工程3b)を行う。
先ず、前記工程1を実施する前に、その準備工程として、「表面に電荷を有する顔料粒子」を含む溶媒を調製する工程がある。この「表面に電荷を有する顔料粒子」としては、元来表面に電荷を有している顔料粒子の他、元来表面に電荷を有していないか、あるいは有していても非常に電荷が低い顔料粒子に、化学反応や吸着等の物理的作用を利用して電荷を有する官能基や化学物質を導入した物質(表面処理顔料)を用いることができる。この表面処理顔料の具体例としては、例えば、本出願人の先の出願に係る特開2005−97476号公報の〔0036〕〜〔0056〕に記載の「親水性基付与剤による顔料粒子の表面処理」が挙げられる。
例えば、図3に記載の顔料粒子1のような、「イオン性基と疎水性基とを有するイオン性界面活性剤が表面に吸着した顔料粒子」を製造するには、イオン性基と疎水性基とを有するイオン性界面活性剤を溶解させたイオン交換水に顔料粒子を添加・混合し、得られた混合液をボールミル、ロールミル、アイガーミル、ジェットミル等の一般的な分散機に入れて分散処理を行い、該イオン性界面活性剤を該顔料粒子の表面に吸着させることが好ましい。更に、分散処理済みの混合液に対し限外濾過等を行い、顔料粒子に未吸着の該イオン性界面活性剤を低減させることが好ましい。未吸着のイオン性界面活性剤が多量に存在していると、副生成物であるポリマー粒子の生成量が増加して顔料粒子のカプセル化が不充分となるおそれがある。但し、未吸着のイオン性界面活性剤を低減しすぎると、顔料粒子の分散が不安定になる場合があるので、限外濾過等の程度は、顔料粒子の分散安定性とカプセル化の状況とを鑑み、適宜決定することが好ましい。
尚、顔料粒子の表面に吸着させる物質は、前記の「イオン性基と疎水性基とを有するイオン性界面活性剤」に限定されず、例えば、「イオン性基と疎水性基と重合性基とを有するイオン性重合性界面活性剤」、「非イオン性基と疎水性基とを有する非イオン性界面活性剤」、「非イオン性基と疎水性基と重合性基とを有する非イオン性重合性界面活性剤」でもよく、顔料粒子の分散媒への分散性を考慮してこれらの中から適宜決定することができる。
前記工程1における「表面に電荷を有する顔料粒子を含む水性溶媒」の水性溶媒とは、脱イオン水等の水を主成分とする溶媒である。該水性溶媒には、必要に応じて、顔料粒子の水中への分散を助ける各種助剤や「表面に電荷を有する顔料粒子」を含む水性溶媒の保存安定性を助けるために水溶性有機溶剤等を含有させることもできる。
前記工程1において、イオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマーの「表面に電荷を有する顔料粒子」を含む水性溶媒への添加量は、顔料粒子表面のイオン性基の総モル数(即ち、用いた顔料粒子1gの顔料粒子表面に存在するイオン性基量[mol/g])に対して、0.5〜2倍モルの範囲であることが好ましく、更に0.8〜1.2倍モルの範囲であることが好ましい。0.5〜2倍モルの範囲においては、顔料粒子表面のイオン性基とそれとは反対の電荷を有するイオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマーのイオン性基との間の静電相互作用が好適な状態となり、顔料粒子がイオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマーで好適に覆われることで疎水性となり、前記工程2a又は2b以降でのアドミセルの形成が容易となる。特に0.8〜1.2倍モルの範囲はより好適な状態が得られ、高収率でカプセル化顔料を得ることができる。
前記工程1では、顔料粒子の表面にイオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマーを均一に吸着させることを促進させる観点から、顔料粒子を含む水性溶媒にイオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマーを添加・混合した後、こうして得られた混合液(顔料粒子を含む水性溶媒)に超音波を照射することが好ましい。この時の超音波の照射条件は、顔料粒子の種類、イオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマーの顔料粒子表面への吸着の程度、顔料粒子の凝集の程度等を考慮して、照射周波数及び照射時間が決定される。
尚、前記工程1以降に超音波を照射することは、形成されたアドミセルを破壊するため、ポリマー粒子の生成が増してカプセル化顔料の収率が下がりやすく、得られるカプセル化顔料は粒度分布が拡がりやすく、目的の粒子径が得にくいことから好ましくない。
前記工程1の次の工程は、前記第1実施形態のように、工程1で得られた混合液に疎水性モノマーを添加・混合する工程(工程2a)を経てからイオン性重合性界面活性剤Bを添加・混合する工程(工程3a)としてもよく、あるいは、前記第2実施形態のように、工程1で得られた混合液にイオン性重合性界面活性剤Bを添加・混合する工程(工程2b)を経てから疎水性モノマーを添加・混合する工程(工程3b)としてもよい。即ち、本発明においては、疎水性モノマー及びイオン性重合性界面活性剤Bの混合液への添加順序は、どちらを先にしても構わない。
前記工程2a(第1実施形態)又は3b(第2実施形態)で使用する疎水性モノマーは、カプセル化顔料の成膜性、壁材の強度、耐薬品性、耐水性、耐光性、耐侯性、光学特性、その他の物理特性及び化学特性を制御するために必須な成分である。特に、カプセル化顔料をインクジェット記録用インクの色材として使用する場合においては、色材の定着性、印字部の耐擦性、耐水性及び耐溶剤性等の要求特性を満たす上で疎水性モノマーをカプセル化顔料の製造に利用することは非常に有効である。また、カプセル化顔料を電子写真用トナーとして使用する場合には、定着性や耐擦性とともにオフセット性や電気特性等も考慮して疎水性モノマーが選択される。
前記工程2a又は3bにおいて、疎水性モノマーの総添加量は、求めるカプセル化顔料の粒子径に応じて決定する。具体的には、望むカプセル化顔料の粒子径と顔料粒子の粒子径とから求めた被覆ポリマー(壁材を構成するポリマー)量と被覆ポリマーの密度とから疎水性モノマーの必要量を求め、この値を基準にして疎水性モノマーの総添加量を決定する。
第1実施形態の前記工程3aでは、前記工程2aで得られた混合液に、イオン性重合性界面活性剤Bを添加・混合する。工程3aにおけるイオン性重合性界面活性剤Bの添加量は、工程2aで添加した疎水性モノマーがアドミセル内に保持され重合反応によってポリマーに転化して球状のカプセル化物が得られると仮定して求めた表面積とイオン性重合性界面活性剤Bの分子占有面積とから求めた値を用いることが好ましい。但し、カプセル化顔料以外にポリマー粒子や塊状物の生成がある場合は、前記の添加量を基準にして最適な添加量を適宜決定することが好ましい。
一方、第2実施形態の前記工程2bでは、前記工程1で得られた混合液に、イオン性重合性界面活性剤Bを添加・混合する。工程2bにおけるイオン性重合性界面活性剤Bの添加量は、次の工程3bで添加する疎水性モノマーがアドミセル内に保持され重合反応によってポリマーに転化して球状のカプセル化物が得られると仮定して求めた表面積とイオン性重合性界面活性剤Bの分子占有面積とから求めた値を用いることが好ましい。但し、カプセル化顔料以外にポリマー粒子や塊状物の生成がある場合は、前記の添加量を基準にして最適な添加量を適宜決定することが好ましい。
このように、前記工程1、2a、3a(第1実施形態)、又は前記工程1、2b、3b(第2実施形態)を順次経ることによって、表面に電荷を有する顔料粒子の該表面に、該表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマーが静電的に吸着し、その外側に疎水性モノマーが局在し、更にその外側にイオン性重合性界面活性剤Bがそのイオン性基を水相側に向けて配向しアドミセルを形成するものと推定される。そして最終的に、使用した疎水性モノマーの添加量に応じた粒子径を有した、均一で、球状に近い、粒度分布幅の狭いカプセル化顔料を得ることができる。また、顔料粒子をコアに持たない重合副生成物は生成され難く、したがって、高い収率でカプセル化顔料を得ることができる。
尚、本発明においては、カプセル化顔料の製造工程において、必要に応じて発明の効果を損ねない範囲で、前記重合成分(イオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマーB、疎水性モノマー、イオン性重合性界面活性剤B)以外の他の重合成分を用いることができる。この場合、他の重合成分を添加後、顔料粒子を含む水性溶媒(混合液)に超音波を照射することが好ましい。
また、第1実施形態の前記工程3aにおいては、イオン性重合性界面活性剤Bに加えてさらに、「非イオン性基と疎水性基と重合性基とを有する非イオン性重合性界面活性剤」を、前記工程2aで得られた混合液に添加・混合することができる。同様に、第2実施形態の前記工程2bにおいては、イオン性重合性界面活性剤Bに加えてさらに、前記非イオン性重合性界面活性剤を、前記工程1で得られた混合液に添加・混合することができる。
前記非イオン性重合性界面活性剤の使用は、カプセル化顔料の表面の電荷量を制御することを可能にする。例えば、水中に分散したカプセル化顔料のゼータ電位を非イオン性重合性界面活性剤の添加量によって変えることができる。また、カプセル化顔料をインクジェット記録用インクの色材として用いた場合には、普通紙上での高い発色性と印刷濃度が得られると共に、インクジェット専用紙上では高い光沢性と写像性を得ることができる。
前記工程3a(工程2b)において、前記非イオン性重合性界面活性剤の添加量は、前記工程3a(工程2b)で用いる水性溶媒(前記工程2a(工程1)で得られた混合液。主として用いる溶媒は水)中での非イオン性重合性界面活性剤の濃度が、該混合液中の水分量に対して非イオン性重合性界面活性剤Bの臨界ミセル濃度と等しくなる量とすることが好ましい。
前記非イオン性重合性界面活性剤を使用した場合に形成されうるアドミセルの状態を図6に示す。図6に記載の符号のうち、図1〜図4に記載の符号と同じ符号のものは、上述した図1〜図4の説明が適用される。
図6に示すアドミセルにおいては、顔料粒子1の表面にアニオン性界面活性剤2を介して吸着したカチオン性モノマー3(イオン性モノマー)の疎水性基32及び重合性基33に対して、疎水性相互作用によって、アニオン性重合性界面活性剤4(イオン性重合性界面活性剤B)の疎水性基42及び重合性基43と共に、非イオン性重合性界面活性剤8の疎水性基82及び重合性基83がそれぞれ向き合い、且つ、アニオン性重合性界面活性剤4のアニオン性基41と、非イオン性重合性界面活性剤8の非イオン性基81とが、それぞれ水性溶媒の存在する方向、即ち顔料粒子1から最も離れた方向に存在している。疎水性モノマー5は、カチオン性重合性界面活性剤3の疎水性基32及び重合性基33と、アニオン性重合性界面活性剤4の疎水性基42及び重合性基43と、非イオン性重合性界面活性剤8の疎水性基82及び重合性基83とが向き合って形成される疎水相に存在している。本発明のカプセル化顔料は、このようなアドミセルの形成を経ることによっても、好適に製造することができる。
第1実施形態の前記工程4aでは、攪拌機、還流冷却器、滴下漏斗、及び温度調節器を備えた反応容器中にて前記工程3aで得られた混合液に重合開始剤を添加・混合し、重合反応を行う。同様に、第2実施形態の前記工程4bでは、前記と同様の設備を備えた反応容器中にて前記工程3bで得られた混合液に重合開始剤を添加・混合し、重合反応を行う。
重合開始剤の溶媒への添加は、重合開始剤が活性化される温度に加熱された溶媒に対して、重合開始剤を一度に若しくは分割して添加してもよく、又は連続的に添加してもよい。また、重合開始剤を添加した後に、重合開始剤が活性化される温度に溶媒を加熱してもよい。重合開始剤には、水に可溶な水溶性重合開始剤と、水に不溶又は難溶の油溶性重合開始剤とがあり、本発明では何れの重合開始剤も用いることができる。水溶性重合開始剤を用いる場合は、水溶性重合開始剤をイオン交換水に溶解させて得た水溶液を、反応容器内の溶媒に所定の滴下速度で滴下することにより、重合反応を好適に実施することができる。油溶性重合開始剤を用いる場合は、反応容器内の溶媒に直接添加するか、又は油溶性重合開始剤を疎水性モノマーに溶解させたものを溶媒に添加することにより、重合反応を好適に実施することができる。
前記重合性開始剤の添加量は、重合成分(イオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマー、疎水性モノマー、イオン性重合性界面活性剤B、非イオン性重合性界面活性剤及びその他の重合成分)の総添加重量に対して、好ましくは1〜5重量%、更に好ましくは1〜3重量%である。該添加量が1重量%未満では、重合反応が十分に進まないおそれがあり、該添加量が5重量%を超得ると、ゲル化や凝集等が起こるおそれがある。
重合開始剤の活性化は、重合開始剤が開裂して開始剤ラジカルが発生する温度まで、反応系を昇温することによって好適に実施できる。添加された重合開始剤が開裂して開始剤ラジカルが発生し、該開始剤ラジカルが、イオン性モノマー及びイオン性重合性界面活性剤、並びに疎水性モノマー、場合によって非イオン性重合性界面活性剤及びその他の重合成分の重合性基を攻撃することによって重合反応が起こる。重合温度及び重合反応時間は、用いる重合開始剤の種類及び重合性モノマーの種類によって変わるが、当業者であれば適宜好ましい重合条件を設定することは容易である。一般に、重合温度は40℃〜90℃の範囲とするのが好ましく、重合時間は3時間〜12時間とするのが好ましい。
尚、前記工程4a又は4bで行われる重合反応では、必要に応じて公知のアニオン系、非イオン系、及びカチオン系乳化剤からなる群から選ばれる1種以上を用いることもできる。ただし、これらの乳化剤を使用する際にはイオン性重合性界面活性剤Bと同じ電荷を有するもの、または、非イオン性のものを用いなければならない。イオン性重合性界面活性剤Bと異なる電荷の乳化剤を使用するとゲル化や凝集が起こるため好ましくない。
前記工程4a又は4bの終了後(重合終了後)は、得られたカプセル化顔料の水性分散液のpHをアニオン性重合性界面活性剤を使用した場合はpHを7.0〜9.0の範囲に調整し、カチオン性重合性界面活性剤を使用した場合はpHを4.0〜6.0の範囲に調整することが好ましい。さらに濾過を行なうことが好ましい。濾過は限外濾過が好ましい。
前記工程1、2a、3a、4a(第1実施形態)、又は前記工程1、2b、3b、4b(第2実施形態)を経て製造されるカプセル化顔料の水性分散液においては、カプセル化顔料は水性溶媒に対して高い分散安定性を有するが、これは顔料粒子が、ポリマーを主成分とする壁材で完全に被覆されている(被覆されていない部分がない)とともに、壁材を構成するポリマーにおける親水性基が水性溶媒に向かって規則正しく配向しているためであると考えられる。
尚、こうして得られたカプセル化顔料の水性分散液には、カプセル化顔料の他に、該カプセル化顔料の製造に使用したモノマー(イオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマー、疎水性モノマー、イオン性重合性界面活性剤B、非イオン性重合性界面活性剤等)に由来する未反応モノマー(反応に使用されなかったモノマーや重合性化合物等の副生成物)が含まれていることがあるため、前記水性分散液を精製処理し、未反応モノマーの濃度を低減することが好ましい。精製処理された前記水性分散液を特にインクジェット記録用インクに用いた場合、普通紙に対しては、彩度及び印字濃度(印刷濃度)が高く、滲みの発生も抑制されて、高画質な画像を出力することが可能となり、また、インクジェット記録用専用メディア、特にインクジェット用光沢メディアに対しては、良好な光沢性を有する画像を出力することが可能となる。
カプセル化顔料を含む水性分散液を精製処理する方法としては、遠心分離法や限外濾過法等を用いることができる。
精製処理後のカプセル化顔料を含む水性分散液の固形分以外の全成分中に含まれる前記未反応モノマーの量は、50,000ppm以下であることが好ましく、10,000ppm以下であることがより好ましい。未反応モノマーの量は、既知濃度の未反応モノマーを含む試料を対象として、測定試料のガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーを用いて容易に測定することができる。
以上、顔料粒子を被覆する壁材(ポリマー被覆層)が単層構造であるカプセル化顔料の製造方法について説明したが、本発明のカプセル化顔料においては、ポリマー被覆層を、2層以上を積層して複層化することも可能である。この場合には、ポリマー被覆層が2層構造となっているカプセル化顔料を例にとると、先ず、(1)「表面に電荷を有する顔料粒子」を含む水性溶媒に、「顔料粒子の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有するイオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマー」を添加・混合し、前記顔料粒子の表面にイオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマーを吸着させ、(2)疎水性モノマーを添加・混合後、(3)「顔料粒子の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有するイオン性重合性界面活性剤B」を添加・混合した後に、(4)重合開始剤を添加し、前記イオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマーと疎水性モノマーとイオン性重合性界面活性剤Bとを水中で重合して第1のポリマー被覆層を有したカプセル化顔料を得る。次いで、(5)第1のポリマー被覆層を有したカプセル化顔料の水性分散液に、「第1のポリマー被覆層の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性重合性界面活性剤C及び/又はイオン性モノマー」を添加・混合後、(6)疎水性モノマーを添加・混合し、(7)「第1のポリマー被覆層の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性重合性界面活性剤D」を添加・混合した後に、(8)重合開始剤を添加して前記イオン性重合性界面活性剤C及び/又はイオン性モノマーと疎水性モノマーとイオン性重合性界面活性剤Dとを水中で重合し、第2のポリマー被覆層を形成して、顔料粒子上に第一のポリマー被覆層と第二のポリマー被覆層を持ったカプセル化顔料を好適に製造することができる。3層以上の多層構造のポリマー被覆層を有するカプセル化顔料は、前記方法に準じて、顔料粒子上にポリマー被覆層を順次形成していくことによって好適に製造することができる。尚、前記イオン性重合性界面活性剤Cとしては、前記イオン性重合性界面活性剤Aと同様のものを用いることができ、前記イオン性重合性界面活性剤Dとしては、前記イオン性重合性界面活性剤Bと同様のものを用いることができる。
以下に、本発明の製造方法で用いられる各種原料について説明する。
[顔料粒子]
本発明に用いられる顔料粒子としては、所望の色を発色し得る無機顔料や有機顔料を用いることができる。尚、顔料粒子の表面に電荷を付与させる方法については上述した通りである。
無機顔料としては、ファーネスブラック,ランブブラック,アセチレンブラック,チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、あるいは、酸化鉄顔料等を挙げることができる。
有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、及びキレートアゾ顔料などを含む。)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、又はキノフラノン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート又は酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、又はアニリンブラック等を挙げることができる。
更に詳しくは、ブラック用として使用される無機顔料として、以下のカーボンブラック、例えば、三菱化学製のNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、又はNo2200B等;コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、又はRaven700等;キャボット社製のRegal 400R、Regal 330R、Regal 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、又はMonarch 1400等;あるいは、デグッサ社製のColor Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color Black S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、又はSpecial Black 4等を挙げることができる。
また、ブラック用の有機顔料としては、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の黒色有機顔料を挙げることができる。
イエロー有機顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1(ハンザイエロー)、2,3(ハンザイエロー10G)、4,5(ハンザイエロー5G)、6,7,10,11,12,13,14,16,17,24(フラバントロンイエロー),34,35,37,53,55,65,73,74,75,81,83,93,94,95,97,98,99,108(アントラピリミジンイエロー)、109,110,113,117(銅錯塩顔料)、120,124,128,129,133(キノフタロン)、138,139(イソインドリノン)、147,151,153(ニッケル錯体顔料)、154,167,172,180等を挙げることができる。
マゼンタ有機顔料としては、C.I.ピグメントレッド1(パラレッド)、2,3(トルイジンレッド)、4,5(lTR Red)、6,7,8,9,10,11,12,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38(ピラゾロンレッド)、40,41,42,48(Ca),48(Mn),57(Ca),57:1,88(チオインジゴ)、112(ナフトールAS系)、114(ナフトールAS系)、122(ジメチルキナクリドン)、123,144,146,149,150,166,168(アントアントロンオレンジ)、170(ナフトールAS系)、171,175,176,177,178,179(ベリレンマルーン)、184,185,187,202,209(ジクロロキナクリドン)、219,224(ベリレン系)、245(ナフトールAS糸)、又は、C.I.ピグメントバイオレット19(キナクリドン)、23(ジオキサジンバイオレット)、32,33,36,38,43,50等を挙げることができる。
シアン有機顔料としては、C.I.ピグメントブルー1,2,3,15,15:1,15:2,15:3,15:34,15:4,16(無金属フタロシアニン)、18(アルカリブルートナー)、22,25,60(スレンブルー)、65(ビオラントロン)、66(インジゴ)、C.I.Vatブルー4,60等を挙げることができる。
また、イエロー、マゼンタ、シアン以外の有機顔料として、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、10(グリーンゴールド)、36,37;C.I.ピグメントブラウン3,5,25,26;あるいはC.I.ピグメントオレンジ1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,63等を挙げることができる。
顔料粒子の平均粒子径(直径)は、好ましくは150nm以下、更に好ましくは20nm〜80nmである。ここでいう平均粒子径は、レーザ光散乱法による計測値である。顔料粒子の平均粒子径が斯かる範囲にあるカプセル化顔料は、特にインクジェット記録用インクの色材として用いた場合に、分散安定性及び吐出安定性に優れ、画像の印字濃度が高い画像を出力し得る。
[イオン性重合性界面活性剤A]
イオン性重合性界面活性剤Aは、顔料粒子を被覆する壁材の主成分であるポリマーの重合成分であり、顔料粒子の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と、疎水性基と、重合性基とを有する。
前記疎水性基としては、炭素数が8〜16の直鎖アルキル基、炭素数が8〜16の分岐鎖アルキル基、及び分子中にアルキル基及びアリール基の両者を有するアルキルベンゼン(アルキルフェニル基)やアルキルナフタレン(アルキルナフチル基)、並びにポリプロピレンオキサイド基からなる群から選ばれる。分子中にアルキル基及びアリール基の両者を有することもできる。
前記重合性基としては、ラジカル重合が可能な不飽和炭化水素基が好ましく、具体的には、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、及びビニレン基からなる群から選択された基であることが好ましい。これらの中でも特にアリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基が好ましい。
前記イオン性基としては、カチオン性基及びアニオン性基が挙げられ、前記イオン性基としてカチオン性基を有するイオン性重合性界面活性剤は、「カチオン性重合性界面活性剤」と称され、前記イオン性基としてアニオン性基を有するイオン性重合性界面活性剤は、「アニオン性重合性界面活性剤」と称される。本発明では、顔料粒子の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基を持つイオン性重合性界面活性剤Aを顔料粒子表面に静電相互作用を利用して吸着させる。イオン性重合性界面活性剤Aは、顔料粒子表面が持つ電荷によってカチオン性重合性界面活性剤、アニオン性重合性界面活性剤の何れかを使用する。
前記カチオン性重合性界面活性剤としては、例えば、一般式R[4−(l+m+n)] ・Xで表される化合物を挙げることができる(前記一般式中、Rは重合性基であり、R、R、Rはそれぞれ炭素数が8〜16のアルキル基及びフェニル基、フェニレン基等のアリール基であり、XはCl、Br、I、CHOSO 、COSO であり、l、m 及びnはそれぞれ1又は0である)。ここで、重合性基としては、上述したものと同じものを挙げることができる。
前記カチオン性重合性界面活性剤の具体例としては、メタクリル酸ジメチルアミノエチルオクチルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルセチルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルデシルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルドデシルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルテトラデシルクロライド塩、等を挙げることができる。
以上例示したカチオン性重合性界面活性剤は、単独で、又は2種以上の混合物として本発明に用いることができる。
前記アニオン性重合性界面活性剤の具体例としては、特公昭49−46291号公報、特公平1−24142号公報、又は特開昭62−104802号公報に記載されているようなアニオン性のアリル誘導体、特開昭62−221431号公報に記載されているようなアニオン性のプロペニル誘導体、特開昭62−34947号公報又は特開昭55−11525号公報に記載されているようなアニオン性のアクリル酸誘導体、特公昭46−34898号公報又は特開昭51−30284号公報に記載されているようなアニオン性のイタコン酸誘導体等を挙げることができる。
本発明に用いられる前記アニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、下記一般式(31):
Figure 2008088218

[式中、R21及びR31は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基であり、Zは、炭素−炭素単結合又は式:
−CH−O−CH
で表される基であり、mは2〜20の整数であり、Xは式−SOで表される基であり、Mはアルカリ金属、アンモニウム塩、又はアルカノールアミンである。]
で表される化合物、又は、例えば、下記一般式(32):
Figure 2008088218

[式中、R22及びR32は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基であり、Dは、炭素−炭素単結合又は式:
−CH−O−CH
で表される基であり、nは2〜20の整数であり、Yは式−SOで表される基であり、Mはアルカリ金属、アンモニウム塩、又はアルカノールアミンである。]
で表される化合物が好ましい。
前記一般式(31)で表される化合物(アニオン性重合性界面活性剤)としては、特開平5−320276号公報、又は特開平10−316909号公報に記載されている化合物を挙げることができる。前記一般式(31)におけるmの値を適宜調整することによって、顔料粒子をカプセル化して得られるカプセル化顔料の表面の親水性を調整することが可能である。前記一般式(31)で表される好ましい重合性界面活性剤としては、下記一般式(310)で表される化合物を挙げることができ、さらに具体的には、下記式(31a)〜(31d)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2008088218

[式中、R31、m、及びMは一般式(31)で表される化合物と同様である。]
Figure 2008088218
Figure 2008088218
Figure 2008088218
Figure 2008088218
前記一般式(310)で表される化合物(アニオン性重合性界面活性剤)としては、市販品を用いることもできる。例えば、旭電化工業株式会社のアデカリアソープSE−10Nは、前記一般式(310)で表される化合物において、MがNH、R31がC19、m=10とされる化合物である。旭電化工業株式会社のアデカリアソープSE−20Nは、前記一般式(310)で表される化合物において、MがNH、R31がC19、m=20とされる化合物である。
また、本発明に用いられる前記アニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、下記一般式(33):
Figure 2008088218

[式中、pは9又は11であり、qは2〜20の整数であり、Aは−SOで表わされる基であり、Mはアルカリ金属、アンモニウム塩又はアルカノールアミンである。]
で表される化合物が好ましい。前記一般式(33)で表される好ましいアニオン性重合性界面活性剤としては、以下の化合物を挙げることができる。
Figure 2008088218

[式中、rは9又は11、sは5又は10である。]
前記一般式(33)、前記〔化9〕に記載の式で表される化合物(アニオン性重合性界面活性剤)としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のアクアロンKHシリーズ(アクアロンKH−5、及びアクアロンKH−10)(以上、商品名)などを挙げることができる。アクアロンKH−5は、前記一般式(33)で表される化合物において、rが9及びsが5である化合物と、rが11及びsが5である化合物との混合物である。アクアロンKH−10は、前記〔化9〕に記載の式で表される化合物において、rが9及びsが10である化合物と、rが11及びsが10である化合物との混合物である。
また、本発明に用いられる前記アニオン性重合性界面活性剤としては、下記一般式(34)で表される化合物が好ましい。
Figure 2008088218

[式中、Rは炭素数8〜15のアルキル基であり、nは2〜20の整数であり、Xは−SOBで表わされる基であり、Bはアルカリ金属、アンモニウム塩又はアルカノールアミンである。]
前記一般式(34)で表される化合物(アニオン性重合性界面活性剤)としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、旭電化工業株式会社製のアデカリアソープSRシリーズ(アデカリアソープSR−10、SR−20、SR−1025)(以上、商品名)などを挙げることができる。アデカリアソープSRシリーズは、前記一般式(34)において、BがNHで表される化合物であって、SR−10はn=10、SR−20はn=20である化合物である。
また、本発明に用いられる前記アニオン性重合性界面活性剤としては、下記一般式(A)で表される化合物も使用できる。
Figure 2008088218

[前記式(A)中、Rは水素原子又は炭素数1から12の炭化水素基を表し、lは2〜20の数を表し、Mはアルカリ金属、アンモニウム塩、又はアルカノールアミンを表す。]
前記一般式(A)で表される化合物(アニオン性重合性界面活性剤)としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のアクアロンHSシリーズ(アクアロンHS−10、HS−20、及びHS−1025)(以上、商品名)が挙げられる。
また、本発明に用いられる前記アニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、下記一般式(35)で表されるアルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム塩を挙げることができる。
Figure 2008088218
前記一般式(35)で表される化合物(アニオン性重合性界面活性剤)としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、三洋化成工業株式会社のエレミノール JS−2を挙げることができ、前記一般式(35)において、m=12で表される化合物である。
また、本発明に用いられる前記アニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、下記一般式(36)で表されるメタクリロイルオキシポリオキシアルキレン硫酸エステルナトリウム塩を挙げることができる。下記一般式(36)中、nは1〜20である。
Figure 2008088218
前記一般式(36)で表される化合物(アニオン性重合性界面活性剤)としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、三洋化成工業株式会社のエレミノール RS−30を挙げることができ、前記一般式(36)において、n=9で表される化合物である。
また、本発明に用いられる前記アニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、下記一般式(37)で表される化合物を用いることができる。
Figure 2008088218

[式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、R及びRは水素原子又はアルキル基で各々同一か異なっていてもよく、R及びRは水素原子又はアルキル基、ベンジル基、スチレン基で各々同一か異なっていてもよく、Xはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウム又はアミンカチオンを表し、mは0又は1以上の整数を表し、nは1以上の整数を表す。]
前記一般式(37)で表される化合物(アニオン性重合性界面活性剤)としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社のAntox MS−60を挙げることができ、前記一般式(37)において、Rがメチル基、R、R、R、Rが水素原子又はアルキル基、m及びnが正の整数、Xがアンモニウムで表される化合物がこれに当たる。
以上に例示したアニオン性重合性界面活性剤は、単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
[イオン性重合性界面活性剤B]
イオン性重合性界面活性剤Bは、顔料粒子を被覆する壁材の主成分であるポリマーの重合成分であり、顔料粒子の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と、疎水性基と、重合性基とを有する。該イオン性基、該疎水性基、該重合性基としては、それぞれ、前記[イオン性重合性界面活性剤A]の項で記載したものと同じものを用いることができ、また、イオン性重合性界面活性剤Bとして、前記[イオン性重合性界面活性剤A]の項で記載したカチオン性重合性界面活性剤及びアニオン性重合性界面活性剤と同じものを用いることができる。
[イオン性モノマー]
イオン性モノマーは、顔料粒子を被覆する壁材の主成分であるポリマーの重合成分であり、顔料粒子の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と、疎水性基と、重合性基とを有し、水溶性である。
前記疎水性基としては、炭素数が1〜7のアルキル基及びフェニル基、フェニレン基等のアリール基からなる群から選ばれる一種又は二種以上であることが好ましく、分子中にアルキル基及びアリール基の両者を有することもできる。
前記重合性基としては、前記[イオン性重合性界面活性剤A]の項で記載したものと同じものを用いることができる。
前記イオン性基としては、カチオン性基及びアニオン性基が挙げられ、前記イオン性基としてカチオン性基を有するイオン性モノマーは、「カチオン性水溶性モノマー」と称され、前記イオン性基としてアニオン性基を有するイオン性モノマーは、「アニオン性水溶性モノマー」と称される。本発明では、イオン性モノマーとして、カチオン性モノマー、アニオン性モノマーの何れを用いても良く、カプセル化顔料の用途に応じて何れかを適宜選択すれば良い。
前記カチオン性基(イオン性基)としては、一級アンモニウムカチオン、二級アンモニウムカチオン、三級アンモニウムカチオン、及び第四級アンモニウムカチオンなる群から選択されたカチオン性基が好ましい。一級アンモニウムカチオンとしてはモノアルキルアンモニウムカチオン(RNH )等を、二級アンモニウムカチオンとしてはジアルキルアンモニウムカチオン(RNH )等を、三級アンモニウムカチオンとしてはトリアルキルアンモニウムカチオン(RNH)等を、第四級アンモニウムカチオンとしては(R)等を挙げることができる。ここで、Rは、疎水性基であり、以下に示すものを挙げることができる。また、前記カチオン性基の対アニオンとしては、Cl、Br、I、CHOSO 、COSO 等を挙げることができる。
前記アニオン性基(イオン性基)としては、スルホン酸基(−SO )、スルフィン酸基(−SO )、硫酸エステル基(−OSO )、カルボキシル基(―COO)、リン酸基(=OPO(O),−OPO(O)、亜リン酸基(=OPO,−OP(O)、ホスホン酸基(−PO(O),−PO(O)、スルフィン酸エステル基(−OSO )、リン酸エステル基等が挙げられ、これらは下記に示す塩の形で用いられる。具体的に画、スルホン酸塩(−SOM)、スルフィン酸塩(−SOM)、硫酸エステル塩(−OSOM)、カルボン酸塩(―COOM)、リン酸塩(=OPO(OM),−OPO(OM))、亜リン酸塩(=OPOM,−OP(OM))、ホスホン酸塩(−PO(OM),−PO(OM))、スルフィン酸エステル塩(−OSOM)、リン酸エステル塩、から選択されたものを好適に例示でき、Mは、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、NH、アミン、エタノールアミン等である。
本発明に用いられる前記カチオン性水溶性モノマーの好ましい具体例としては、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド塩、及び2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド塩、等が挙げられる。前記のカチオン性水溶性モノマーとしては市販品を用いることもでき、例えば、アクリエステルDMC(三菱レイヨン(株))、アクリエステルDML60(三菱レイヨン(株))、及びC−1615(第一工業製薬(株))などを挙げることができる。以上例示したカチオン性水溶性モノマーは、単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
本発明に用いられる前記アニオン性水溶性モノマーの好ましい具体例としては、カルボキシル基を有するモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等が挙げられる。これらの中でもアクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。スルホン酸基を有するモノマーとしては、例えば、4−スチレンスルホン酸及びその塩、ビニルスルホン酸及びその塩、スルホエチルアクリレート及びその塩、スルホエチルメタクリレート及びその塩、スルホアルキルアクリレート及びその塩、スルホアルキルメタクリレート及びその塩、スルホプロピルアクリレート及びその塩、スルホプロピルメタクリレート及びその塩、スルホアリールアクリレート及びその塩、スルホアリールメタクリレート及びその塩、ブチルアクリルアミドスルホン酸及びその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩等が挙げられる。また、ホスホン基を有するモノマーとしては、ホスホエチルメタクリレート等のリン酸基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。以上例示したアニオン性水溶性モノマーは、単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
[疎水性モノマー]
本発明に用いられる疎水性モノマーとしては、その構造中に少なくとも疎水性基と重合性基とを有するもので、該疎水性基が、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基の群から選択されたものを例示できる。該脂肪族炭化水素基としてはメチル基、エチル基、及びプロピル基等を、該脂環式炭化水素基としてはシクロヘキシル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、及びイソボルニル基等を、該芳香族炭化水素基としてはベンジル基、フェニル基、及びナフチル基等を挙げることができる。
前記疎水性モノマーの重合性基としては、前記[イオン性重合性界面活性剤A]の項で記載したものと同じものを用いることができる。
疎水性モノマーの具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、t−ブチルスチレン、ブロムスチレン、p−クロルメチルスチレン等のスチレン誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、イソプロピルアクリレート、アクリル酸n−ブチル、ブトキシエチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸シクロヘキシル、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、及びイソボルニルアクリレート、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノールEO付加物アクリレート、イソオクチルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシルジグリコールアクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアクリレート等の単官能アクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、イソプロピルメタクリレート、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソデシル、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、及びイソボルニルメタクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート、等の単官能メタクリル酸エステル類;アリルベンゼン、アリル−3−シクロヘキサンプロピオネート、1−アリル−3,4−ジメトキシベンゼン、アリルフェノキシアセテート、アリルフェニルアセテート、アリルシクロヘキサン、及び多価カルボン酸アリル等のアリル化合物;フマル酸、マレイン酸、及びイタコン酸等の不飽和エステル類;N−置換マレイミド、環状オレフィンなどのラジカル重合性基を有するモノマー等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
[非イオン性重合性界面活性剤]
本発明に用いられる非イオン性重合性界面活性剤は、炭素数が8〜16の直鎖アルキル基、炭素数が8〜16の分岐鎖アルキル基、及び分子中にアルキル基及びアリール基の両者を有するアルキルベンゼン(アルキルフェニル基)やアルキルナフタレン(アルキルナフチル基)、並びにポリプロピレンオキサイド基からなる群から選ばれる疎水性基と、水酸基、ポリオキシエチレン基、ポリグリセリン基等からなる非イオン性基と、重合性基から構成されたものである。該重合性基としては、前記[イオン性重合性界面活性剤A]の項で記載したものと同じものを用いることができる。
本発明に用いられる非イオン性重合性界面活性剤としては、下記一般式(100)で表される化合物を使用できる。
Figure 2008088218

[前記式(100)中、R50は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、nは5〜50の数を表す。]
前記一般式(100)で表される化合物(非イオン性重合性界面活性剤)としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のアクアロンRNシリーズ(アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50、及びRN−2025)(以上、商品名)が挙げられる。下記式(101)はアクアロンRN−20を示す。
Figure 2008088218
本発明に用いられる非イオン性重合性界面活性剤としては、下記一般式(103)で表される化合物を使用できる。
Figure 2008088218

[前記式(103)中、R51は水素原子又は炭素数1から12の炭化水素基を表し、nは5〜50の数を表す。]
前記一般式(103)で表される化合物(非イオン性重合性界面活性剤)としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のノイゲンシリーズ(ノイゲンN−10、N−20、N−30、N−50)(以上、商品名)が挙げられる。下記式(104)はノイゲンN−20を示す。
Figure 2008088218
本発明に用いられる非イオン性重合性界面活性剤としては、下記一般式(105)で表される化合物を使用できる。
Figure 2008088218

[前記式(105)中、R52は炭素数8〜15のアルキル基であり、nは5〜50の整数である。]
前記一般式(105)で表される化合物(非イオン性重合性界面活性剤)としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、旭電化工業株式会社製のアデカリアソープERシリーズ(アデカリアソープER−10、ER−20、ER−30、ER−40)(以上、商品名)などを挙げることができる。ER−10はn=10、ER−20はn=20、ER−30はn=30、ER−40はn=40である化合物である。
本発明に用いられる非イオン性重合性界面活性剤としては、下記一般式(106)で表される化合物を使用できる。
Figure 2008088218

[前記式(106)中、R53は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、nは5〜50の数を表す。]
前記一般式(106)で表される化合物(非イオン性重合性界面活性剤)としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、旭電化工業株式会社製のアデカリアソープNEシリーズ(アデカリアソープNE−5、NE−10、NE−20、NE−30、NE−40)(以上、商品名)などを挙げることができる。NE−5はn=5、NE−10はn=10、NE−20はn=20、NE−30はn=30、NE−40はn=40である化合物である。下記式(107)はアデカリアソープNE−10を示す。
Figure 2008088218
本発明に用いられる非イオン性重合性界面活性剤としては、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(商品名 ブレンマー50PEP−300 <日本油脂株式会社製> 下記式(108))、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名 ブレンマー70PEP−350B <日本油脂株式会社製> 下記式(109))、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノアクリレート(商品名 ブレンマーAEPシリーズ <日本油脂株式会社製>)、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノアクリレート(商品名 ブレンマーAETシリーズ <日本油脂株式会社製>)、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノアクリレート(商品名 ブレンマーAPTシリーズ <日本油脂株式会社製>)、ラウロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(商品名 ブレンマーPLE−200 <日本油脂株式会社製> 下記式(110))、ラウロキシポリエチレングリコールモノアクリレート(商品名 ブレンマーALE−200、ALE−800 <日本油脂株式会社製> 下記式(111))、ステアロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(商品名 ブレンマーPSE−200、PSE−400、PSE−1300 <日本油脂株式会社製> 下記式(112))、ステアロキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノアクリレート(商品名 ブレンマーASEPシリーズ <日本油脂株式会社製> 下記式(113))、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノアクリレート(商品名 ブレンマーANE−300、ANE−1300<日本油脂株式会社製> 下記式(114))、ノニルフェノキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名 ブレンマーPNEPシリーズ<日本油脂株式会社製> 下記式(115))、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールモノメタクリレート(商品名 ブレンマーPNPEシリーズ<日本油脂株式会社製> 下記式(116))、ノニルフェノキシポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノアクリレート(商品名 ブレンマー43ANEP−500、70ANEP−550、75ANEP−600<日本油脂株式会社製>)が挙げられる。
Figure 2008088218
Figure 2008088218
Figure 2008088218
Figure 2008088218
Figure 2008088218
Figure 2008088218
Figure 2008088218
Figure 2008088218
Figure 2008088218
[その他の重合成分]
本発明に係る壁材の原料としては、上述した重合成分(イオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマー、疎水性モノマー、イオン性重合性界面活性剤B、非イオン性重合性界面活性剤)以外の他の重合成分を用いることができ、例えば、架橋性モノマーが挙げられる。
壁材の主成分であるポリマーに、架橋性モノマーから誘導された繰り返し構造単位を含有させることにより、該ポリマー中に架橋構造が形成され、耐溶剤性(インクジェット記録用インクに含有される溶媒が顔料粒子を被覆するポリマー内部に侵入しにくい特性)を向上させることができる。溶剤が顔料粒子を被覆するポリマーの内部に浸透すると、ポリマーが膨潤や変形等を起こし、水性媒体側に向くカプセル化顔料のアニオン性基の配向状態が乱されるなどしてカプセル化顔料の分散安定性等が低下することがある。このような場合においては、顔料粒子を被覆するポリマーに架橋構造を形成させることによって、カプセル化顔料の耐溶剤性が向上し、水溶性有機溶媒が共存するインク組成物において、カプセル化顔料の分散安定性、インク組成物の保存安定性、インクジェットヘッドからのインク組成物の吐出安定性を一層高めることができる。また、疎水性モノマーと架橋性モノマーとが共重合することにより、壁材の主成分であるポリマーの機械的強度や耐熱性が高まり、壁材の形態維持性が向上する。
本発明に用いられる架橋性モノマーとしては、ビニル基,アリル基,アクリロイル基,メタクリロイル基,プロペニル基,ビニリデン基,及びビニレン基から選ばれる1種以上の不飽和炭化水素基を2個以上有する化合物を有するものが挙げられる。架橋性モノマーの具体例としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、アリルアクリレート、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラブロモビスフェノールAジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン、テトラブロモビスフェノールAジメタクリレート、ジシクロペンタニルジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリグリセーロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリルメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、及びジエチレングリコールビスアリルカーボネート等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、他の重合成分として、下記一般式(1)で表される化合物を用いることができる。
Figure 2008088218

[ただし、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rはt−ブチル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はヘテロ環基を表す。mは0〜3、nは0又は1の整数を表す。]
前記一般式(1)において、Rが示す脂環式炭化水素基としては、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、及びアダマンタン基等が挙げられ、ヘテロ環基としてはテトラヒドロフラン基等が挙げられる。
前記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
Figure 2008088218
Figure 2008088218
本発明に係るカプセル化顔料の壁材の主成分であるポリマー中に、前記一般式(1)で表される化合物由来の「嵩高い」基である前記R基を入れることによって、ポリマーの分子のたわみやすさが低下する、即ち、分子の運動性が低下するため、ポリマーの機械的強度や耐熱性が向上する。このため、該ポリマーを主成分とする壁材を有する本態様のカプセル化顔料を含むインク組成物は、優れた耐擦性と耐久性を有する印刷物を提供することができる。また、壁材を構成するポリマー中に、"嵩高い"基である前記R基を存在させることによって、ポリマー内部へのインク組成物中の有機溶媒の浸透を抑制できることから、カプセル化顔料の耐溶剤性を優れたものにすることができる。これによって、水溶性有機溶媒が共存するインクジェット記録用インク組成物において、色材粒子の分散性や、インク組成物の保存安定性、さらにインクジェットヘッドからのインク組成物の吐出性をも高めることができる。
ところで、前記の「架橋性モノマーから誘導された繰り返し構造単位」を有するポリマーや、「前記一般式(1)で表される化合物から誘導された繰り返し構造単位」を有するポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が高く、機械的強度、耐熱性、耐溶剤性に優れるという利点を有する。
しかしながら、このようなポリマーを含む壁材を有するカプセル化顔料は、ポリマーの可塑性が不十分となって、インク組成物の成分として使用した場合には、記録媒体と密着しにくい状態となりやすく、その結果カプセル化顔料の記録媒体への定着性・耐擦性が低下する場合がある。
一方、上述した疎水性モノマーのうち、長鎖アルキル基を有するモノマーから誘導された繰り返し構造単位を有するポリマーは柔軟性を有する。したがって、「架橋性モノマーから誘導された繰り返し構造単位」及び/又は「前記一般式(1)で表される化合物(モノマー)から誘導された繰り返し構造単位」と、「長鎖アルキル基を有するモノマーから誘導された繰り返し構造単位」との比率を適宜調整することによって、壁材として好ましい可塑性を損なわずに、優れた機械的強度及び耐溶剤性を有する壁材用ポリマーとすることができる。このようなポリマーを含む壁材を有するカプセル化顔料を含有するインク組成物は、該インク組成物が水溶性有機溶媒を含むものであっても、分散安定性や長期保存性に優れ、インクジェットヘッドからの吐出性安定性にも優れている。また、本態様のカプセル化顔料を含むインク組成物は、紙やインクジェット記録用専用紙等の記録媒体への該カプセル化顔料の定着性が良好であり、耐擦性、耐久性及び耐溶剤性に優れた印刷画像を提供することができる。
[重合開始剤]
本発明に用いられる重合開始剤としては、公知の重合開始剤を用いることができ、特にラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤は、水溶性のものでもよく、油溶性のものでもよいが、好ましくは水溶性重合開始剤であり、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、2,2−アゾビス−(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、及び4,4−アゾビス−(4−シアノ吉草酸)等が挙げられる。また、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等と、亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄等とを組み合わせたレドックス系開始剤を用いることもできる。
[その他の成分]
本発明に係るカプセル化顔料を構成する原料としては、上述したもの以外に、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤、ワックス等を用いることができる。
以下、上述した本発明の製造方法によって製造されるカプセル化顔料について説明する。
[カプセル化顔料の粒子径等]
本発明のカプセル化顔料の粒子径は、カプセル化顔料の用途によって適宜調整すればよく、特に限定されるものではない。特に、カプセル化顔料をインクジェット記録用インクの色材として用いる場合は、体積平均粒子径として400nm以下であることが好ましく、10〜200nmであることが更に好ましい。カプセル化顔料の粒子径の制御は、顔料粒子に対する疎水性モノマーの体積比と顔料粒子の平均粒子径とから求めた疎水性モノマーの添加量とを調整することなどによって行うことができる。
また、本発明のカプセル化顔料は、アスペクト比(長短度)が1.0〜1.3であり、且つZingg指数が1.0〜1.3(より好ましくは1.0〜1.2)であることが好ましい。Zingg指数が1.3より大きくなると、カプセル化顔料がより扁平形状となって等方性が低くなる。アスペクト比及びZingg指数を前記範囲内とする方法としては特に限定されないが、上述した本発明の製造方法により得られたカプセル化顔料は、この条件を容易に満たし得る。カプセル化顔料をインクジェット記録用インクの色材として用いる場合、アスペクト比及びZingg指数がそれぞれ前記範囲にあると、カプセル化顔料のインク溶媒中での分散性が高く、分散安定性にも優れる。また、吐出安定性にも優れ、普通紙上での高いOD値や光沢系フィルム上での高い光沢と写像性が得られやすい。
尚、酸析法や転相乳化法等の本発明以外のカプセル化顔料の製造方法では、カプセル化顔料のアスペクト比及びZingg指数が前記範囲内になり難い。
これに対し、上述した本発明の製造方法によって得られるカプセル化顔料は、アスペクト比及びZingg指数がそれぞれ前記範囲となり、真球状となるため、インク成分として使用した場合、インクの流動特性がニュートニアンとなりやすく、吐出安定性に優れたものとなる。また、真球状であることから、紙等の記録媒体に着弾した場合にカプセル化顔料が記録媒体上に高密度で配置され、印刷濃度や発色を高効率で発現することができる。また、真球状であることから、分散性や分散安定性にも優れる。
また、本発明のカプセル化顔料の成膜性、壁材の強度、耐薬品性、耐水性、耐光性、耐侯性、光学特性、その他の物理特性及び化学特性は、壁材の主成分であるポリマーの組成、構造等を適切に制御することによって、カプセル化顔料の用途に適したものとすることが可能である。
特に、カプセル化顔料をインクジェット記録用インクの色材として使用した場合における色材の定着性、印字部の耐擦性及び光沢性は、壁材の主成分であるポリマー(共重合体、コポリマー)のガラス転移温度(Tg)によって制御可能である。
一般に、高分子固体、特に無定形高分子固体において、温度を低温から高温へ上げていくと、わずかな変形に非常に大きな力の要る状態(ガラス状態)から小さな力で大きな変形が起こる状態へと急変する現象が起こるが、この現象の起こる温度をガラス転移温度(又はガラス転移点)という。一般には、熱走査型熱量計(Differential scanning calorimeter)による昇温測定によって得られた示差熱曲線において、吸熱ピークの底部から吸熱の開始点に向かって接線を引いたときのベースラインとの交点の温度がガラス転移温度とされる(本明細書におけるTgは、この定義に従ったものである)。また、ガラス転移温度では弾性率、比熱、屈折率などの他の物性も急激に変化することが知られており、これらの物性を測定することによってもガラス転移温度が決定されることが知られている。さらに共重合体を合成する際に使用したモノマーの重量分率と当該モノマーを単独重合して得られるホモポリマーのガラス転移点とから下記Foxの式によりガラス転移温度を計算することができる。(本発明においては、Foxの式により得られるガラス転移温度を用いた。)
Figure 2008088218

(前記式中、Tg[p]は得られるポリマーのガラス転移温度、iは種類の異なるモノマーごとに付した番号、Tg[hp]iは重合に用いるモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度、xiは重合するモノマーの重量総計に対するモノマーiの重量分率を表す。)
即ち、カプセル化顔料の置かれた温度環境が、該カプセル化顔料の壁材を構成する共重合体のガラス転移温度よりも高い場合には、この共重合体は小さな力で大きな変形が起こる状態となり、さらに融点に達すると溶融する。このとき、近傍に他のカプセル化顔料が存在するとカプセル化顔料同士が融着して成膜する。また、融点まで環境温度が達しない場合であっても、カプセル化顔料同士が強い力によって接触するような場合は、各カプセル化顔料を被覆している共重合体分子同士が絡み合うことが可能となるような条件が整えば、カプセル化顔料を覆う共重合体(コポリマー)同士は融着することもある。
カプセル化顔料を色材として用いたインクを用いて普通紙やインクジェット記録用専用紙等の記録媒体に印字した場合に、該カプセル化顔料が室温でより好ましく成膜し、色材定着性、印字部の耐擦性及び光沢性について良好な結果を得るためには、壁材の主成分である前記ポリマーのTgが、好ましくは30℃以下、より好ましくは15℃以下、さらに好ましくは10℃以下である。従って、カプセル化顔料をインクジェット用インクに用いる場合には、壁材を構成するポリマー(共重合体、コポリマー)のガラス転移温度を30℃以下になるように設計することが好ましく、より好ましくは15℃以下、さらに好ましくは10℃以下に設計するのが好ましい。但し、ガラス転移温度を−20℃より低くした場合は、耐溶剤性が低下する傾向となるため注意を要する。
次に、本発明のインクジェット記録用インクについて説明する。
本発明のインクジェット記録用インクは、上述した本発明のカプセル化顔料及び水を含有するインク組成物である。
前記カプセル化顔料の含有量は、本発明のインク組成物の総重量に対して、1〜10重量%が好ましく、3〜7重量%がさらに好ましい。カプセル化顔料の含有量が1重量%未満では、十分な印刷濃度が得られないおそれがあり、逆に10重量%超では、インクの粘度が高くなり、プリンタノズルの目詰まり等の信頼性上の問題が起きるおそれがある。
[インク組成物に添加するポリマー微粒子]
本発明のインク組成物には、前記カプセル化顔料に加えて、ポリマー微粒子をさらに添加することができる。ポリマー微粒子は、以下の形態のものが好ましい。
表面に前記カプセル化顔料のイオン性基と同種のイオン性基を有し、ガラス転移温度(Tg)が30℃以下で、体積平均粒子径が10〜100nmであるポリマー微粒子。
インク組成物に前記カプセル化顔料と共に前記ポリマー微粒子を添加することにより、色材であるカプセル化顔料の記録媒体に対する定着性が高まり、記録画像の耐擦性が向上する。特に、前記カプセル化顔料において、壁材の主成分であるポリマーが、前記「架橋性モノマーから誘導された繰り返し構造単位を有するポリマー」及び/又は前記「前記一般式(1)で表される化合物(モノマー)から誘導された繰り返し構造単位を有するポリマー」を有しているものは、高い機械的強度、耐熱性及び耐溶剤性を有するものの、ポリマー(壁材)の可塑性が不十分となって、記録媒体への定着性・耐擦性が低下する傾向があるが、前記ポリマー微粒子を併用することにより、得られるインク組成物を用いて記録媒体上に形成した画像においては、カプセル化顔料をポリマー微粒子が覆うことができ、記録媒体への画像の定着性及び画像の耐擦性を高くすることができる。
前記ポリマー微粒子としては成膜性を有するものが特に好ましい。「成膜性を有する」とは、ポリマー微粒子を水に分散させて水性エマルジョンの形態にし、この水性エマルジョンの水分を蒸発させたときにポリマーの皮膜が形成されうることを意味する。成膜性を有するポリマー微粒子を含んだ本発明のインク組成物は、その溶媒成分を蒸発させていくと、ポリマーの皮膜を形成する性質を有する。このポリマーの皮膜によって、インク中のカプセル化顔料をより強固に記録媒体表面に固着することができる。これによって、より優れた耐擦性及び耐水性を有する画像が形成できる。
前記ポリマー微粒子が良好な成膜性を有するためには、そのポリマーのガラス転移温度が30℃以下であることが好ましく、15℃以下であることがさらに好ましく、10℃以下であることが特に好ましい。ポリマーのガラス転移温度は、使用するモノマーの種類や組成比を適宜選択することによって好ましい温度範囲内にすることができ、当業者には周知の方法である。ここで、ポリマーのガラス転移温度としては、熱走査型熱量計(Differential scanning calorimeter:DSC)による昇温測定によって得られたガラス転移温度を用いた。即ち、熱走査型熱量計によるポリマーの昇温測定を行って得られた示差熱曲線において、吸熱ピークの底部から吸熱の開始点に向かって接線を引いたとき、その接線とベースラインとの交点の温度をそのポリマーのガラス転移温度(Tg)とした。
このようなポリマー微粒子、及び本発明のカプセル化顔料を含有した本発明のインク組成物を用いて、普通紙やインクジェット記録用専用メディア等の記録媒体に印字した場合、該インク組成物中の水性媒体が記録媒体中に浸透し、ポリマー粒子及びカプセル化顔料が近接し、ポリマー微粒子同士及び/又はカプセル化顔料の被覆ポリマー(壁材を構成するポリマー)同士及び/又はポリマー微粒子とカプセル化顔料の被覆ポリマーが融着して顔料粒子を内部に包み込んだ状態で記録媒体上にポリマーの膜が形成される。これにより、画像の記録媒体への定着性や画像の耐擦性を特に良好にできる。
さらに、前記ポリマー微粒子がその表面に前記カプセル化顔料と同種のイオン性基を有している場合は、該ポリマー微粒子及び該カプセル化顔料がインク組成物中に共存しても凝集することなく、安定に分散できることから好ましい。
さらに、前記ポリマー微粒子の粒子径は、体積平均粒子径で10〜100nmの範囲であることが好ましい。体積平均粒子径が100nm以下の場合、画像の光沢性や写像性が良好となることから、好ましい。
また、本発明のインク組成物においては、前記ポリマー微粒子を濃度10重量%で水媒体に分散させた水性エマルジョンのテフロン(登録商標)板上での接触角が70°以上であることが好ましい。
さらに、前記ポリマー微粒子を濃度35重量%で水媒体に分散させた水性エマルジョンの表面張力が、40×10−3N/m(40dyne/cm、20℃)以上であることが好ましい。
前記のような特性のポリマー微粒子を用いることによって、インクジェット記録方法においてインク滴の飛行曲がりをさらに有効に防止でき、良好な画質の画像を印刷することが可能となる。
さらに、前記のようなイオン性基を比較的多く表面に有するポリマー微粒子をインク組成物に含有させることにより、より良好な画像の耐擦性を実現できる。その理由は定かではないが、以下の様に考えられる。即ち、本発明によるインク組成物を紙のような記録媒体表面に付着させると、先ずインク組成物中の水及び水溶性有機溶媒が記録媒体へ浸透する。そして、記録媒体の表面近傍に本発明のカプセル化顔料粒子とポリマー微粒子とが残る。この時、このポリマー微粒子表面のイオン性基が、紙繊維を構成するセルロースの水酸基やカルボキシル基と作用して、ポリマー微粒子が紙繊維に強固に吸着する。この紙繊維に吸着したポリマー微粒子の近傍の水及び水溶性有機溶媒はさらに紙内部に浸透し減少していく。さらに、上述のとおり、ポリマー微粒子が成膜性を有することから、記録媒体上で水及び水溶性有機溶媒がカプセル化顔料及びポリマー微粒子の近傍から消失すると、粒子同士が合(coalescence)し、カプセル化顔料を包み込んでポリマー層が形成され、顔料粒子をポリマーで被覆した状態が形成される。このポリマーは、イオン性基によって、より強固に記録媒体表面に結合することができる。ただし、これらは本発明の効果を説明するための仮説である。
前記ポリマー微粒子の好ましい具体例としては、「イオン性基を有する不飽和ビニル単量体」に由来する繰り返し構造単位を少なくとも1〜10重量%含むポリマーからなるものが挙げられる。
前記ポリマー微粒子の更に好ましい具体例としては、「イオン性基を有する不飽和ビニル単量体」に由来する繰り返し単位を1〜10重量%含み、かつ重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性単量体によって架橋された構造を有し、この架橋性単量体に由来する構造を0.2〜4重量%含有するポリマーからなるものが挙げられる。重合の際に重合可能な二重結合を二つ以上、さらに好ましくは三つ以上有する架橋性単量体類を他の重合性モノマーと共重合させてポリマー鎖を架橋し、そのような架橋ポリマーからなるポリマー微粒子をインク組成物に用いることによって、インク組成物によってインクジェット記録装置のノズルプレート表面がさらに濡れ難くなるため、インク滴の飛行曲がりを防止でき、吐出安定性を向上させることができる。
本発明において用いられるポリマー微粒子は、公知の乳化重合法によって製造することができる。たとえば、不飽和ビニル単量体(不飽和ビニルモノマー)を重合開始剤、及び乳化剤を存在させた水中において乳化重合することによってポリマー微粒子を得ることができる。
前記不飽和ビニル単量体としては、一般的に乳化重合で用いられるアクリル酸エステル単量体類、メタクリル酸エステル単量体類、芳香族ビニル単量体類、ビニルエステル単量体類、ビニルシアン化合物単量体類、ハロゲン化単量体類、オレフィン単量体類、及びジエン単量体類が挙げられる。さらに、具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、及びグリシジルアクリレート等のアクリル酸エステル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、及びグリシジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等のビニルシアン化合物類;塩化ビニリデン及び塩化ビニル等のハロゲン化単量体類;スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、及びビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体類;エチレン、プロピレン、及びイソプロピレン等のオレフィン類;ブタジエン及びクロロプレン等のジエン類;並びに、ビニルエーテル、ビニルケトン、及びビニルピロリドン等のビニル単量体類が挙げられる。
前記「イオン性基を有する不飽和ビニル単量体」としては、スルホン酸基、スルフィン酸基、カルボキシル基、カルボニル基、及びこれらの塩から選択されたアニオン性基を有する不飽和ビニル単量体が挙げられ、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、2−スルホエチルメタクリレート、及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などを例示することができる。また、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド塩、及び2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド塩等のカチオン性基を有する不飽和ビニル単量体も例示できる。
さらに、前記単量体に加えて、アクリルアミド類又は水酸基含有ビニル単量体を用いて製造したポリマー微粒子をインク組成物に用いることにより、このインク組成物をインクジェット記録方法に用いた場合に、インクジェットヘッドからのインク組成物の吐出安定性を向上させることが出来る。アクリルアミド類の例としては、アクリルアミド及びN,N'−ジメチルアクリルアミドが挙げられる。また、水酸基含有ビニル単量体の例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、及び2−ヒドロキシプロピルメタクリレートが挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。
また、前記のように、ポリマー微粒子を構成するポリマーとしては、前記モノマー由来の構造単位が、重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性単量体によって架橋された構造を有するポリマーが好ましい。重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性単量体の例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2'−ビス(4−アクリロキシプロピロキシフェニル)プロパン、及び2,2'−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジアクリレート化合物;トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、及びテトラメチロールメタントリアクリレート等のトリアクリレート化合物;ジトリメチロールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、及びペンタエリスリトールテトラアクリレート等のテトラアクリレート化合物;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のヘキサアクリレート化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリブチレングリコールジメタクリレート、及び2,2'−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジメタクリレート化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート、及びトリメチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート化合物;メチレンビスアクリルアミド;並びに、ジビニルベンゼンが挙げられる。
また、ポリマー微粒子を乳化重合する際に用いる重合開始剤、乳化剤、界面活性剤、分子量調整剤、及び中和剤等も前記公知の方法に準じて用いることができる。特に、乳化剤として前述したアニオン性重合性界面活性剤を用いた場合、アニオン性重合性界面活性剤がモノマーと共重合することから、液中に遊離している乳化剤が無くなるか、微量となり、それに伴って液の泡立ちが抑制されるため、本発明のカプセル化顔料と併用したインク組成物の吐出安定性を高めることができる。また、本発明のカプセル化顔料に使用したアニオン性重合性界面活性剤と同種のものを乳化剤として使用した場合、本発明のカプセル化顔料と併用したインク組成物は、分散安定性ならびに保存安定性が特に優れたものとなる。
本発明のインク組成物に前記ポリマー微粒子を用いる場合、ポリマー微粒子は微粒子粉末として用いることもできるが、好ましくは、水媒体にポリマー微粒子が分散されたポリマーエマルジョンの形態で、インク組成物に含有される他の成分と混合することが好ましい。
本発明のインク組成物中に含まれるポリマー微粒子の量は、インク組成物の総重量に対して0.01〜10重量%程度が好ましく、0.01〜5重量%程度であることがさらに好ましい。
[その他のインク組成物用添加剤等]
本発明のインク組成物には、pH調整剤を含有させることができる。前記カプセル化顔料や前記ポリマー微粒子の表面がアニオン性基を有する場合には、インク組成物のpHを7〜11、より好ましくは8〜9に調整することが好ましく、この場合、pH調整剤としては塩基性化合物を用いることが好ましい。また、前記カプセル化顔料や前記ポリマー微粒子の表面がカチオン性基を有する場合には、インク組成物のpHを5〜7、より好ましくは6〜7に調整することが好ましく、この場合、pH調整剤としては酸性化合物を用いることが好ましい。
pH調整剤として好ましい前記塩基性化合物としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、フタル酸水素カリウム、及び酒石酸水素カリウムなどのアルカリ金属塩類;アンモニア;並びに、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロペノールアミン、ブチルジエタノールアミン、モルホリン、及びプロパノールアミンなどのアミン類などが挙げられる。
これらの中でも、水酸化アルカリ化合物又はアミンアルコールをインク組成物に添加すると、アニオン性基を有する顔料粒子のインク中での分散安定性を向上させることができる。
また、本発明のインク組成物には、防カビ、防腐、又は防錆の目的で、安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンチアゾリン−3−オン〔製品名:プロキセルXL(アビシア社製)〕、及び3,4−イソチアゾリン−3−オン、4,4−ジメチルオキサゾリジン等から選ばれる一種以上の化合物を含有させることができる。
また、本発明のインク組成物には、インクジェット記録ヘッドのノズルが乾燥することを防止する目的で、尿素、チオ尿素、及びエチレン尿素等なる群から選ばれる少なくとも1種を含有させることもできる。
特に好ましい本発明のインク組成物の実施態様の一例(実施態様例1)は、少なくとも下記(1)〜(5)の全てを含むインク組成物である。
(1)前記カプセル化顔料
(2)前記ポリマー微粒子
(3)ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、及び炭素数4〜10の1,2−アルキルジオールからなる群から選択される1種以上の化合物(浸透剤)
(4)グリセリン
(5)水
特に好ましい本発明のインク組成物の実施態様の別の一例(実施態様例2)は、少なくとも下記(1)〜(6)の全てを含むインク組成物である。
(1)前記カプセル化顔料
(2)前記ポリマー微粒子
(3)ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、及び炭素数4〜10の1,2−アルキルジオールからなる群から選択される1種以上の化合物(浸透剤)
(4)アセチレングリコール系界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール系界面活性剤、
(5)グリセリン
(6)水
前記各実施態様例において、浸透剤として前記(3)のジエチレングリコールモノブチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いる場合の添加量はインク組成物の全重量に対して、10重量%以下であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがさらに好ましい。ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルをインク組成物に添加することにより、インク組成物の記録媒体への浸透性を向上することができ、印字品質の向上に役立つ。また、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルは、アセチレングリコール系の界面活性剤の溶解性を向上させるという効果もある。
前記各実施態様例において、浸透剤として前記(3)の炭素数4〜10の1,2−アルキルジオールを用いる場合の添加量は、インク組成物の全重量に対して、15重量%以下であることが好ましい。炭素数が3以下の1,2−アルキルジオールを用いた場合、記録媒体に対するインク組成物の充分な浸透性が得られず、炭素数が15を超える1,2−アルキルジオールは水に溶解しにくくなるので好ましくない。また、インク組成物中における炭素数4〜10の1,2−アルキルジオールの量が15重量%を超えると、インク組成物の粘度が増加する傾向があるため好ましくない。炭素数4〜10の1,2−アルキルジオールとしては、具体的には1,2−ペンタンジオール又は1,2−ヘキサンジオールを用いるのが好ましく、いずれか一方を単独で用いることも、両者を併用することもできる。1,2−ペンタンジオールは、インク組成物の全重量に対して3〜15重量%の範囲で添加するのが好ましい。インク組成物に1,2−ペンタンジオールを3重量%以上添加することにより、良好な浸透性を有するインク組成物が得られる。1,2−ヘキサンジオールは、インク組成物の全重量に対して0.5〜10重量%の範囲で添加するのが好ましく、前記範囲において良好な浸透性を有するインク組成物が得られる。
また、前記各実施態様例のインク組成物をインクジェット記録方法に用いる場合、インクジェットノズルの目詰まりが発生しにくくなるように(目詰まり信頼性の向上)、固体湿潤剤をインク組成物の全重量に対して3重量%〜20重量%で含有させることが好ましい。尚、固体保湿剤の添加は、前記各実施態様例に限らず、本発明のカプセル化顔料を用いたインク組成物全般に添加することができる。
前記固体湿潤剤とは、保水機能を有する常温(25℃)で固体の水溶性物質を言う。好ましい固体湿潤剤は、糖類、糖アルコール類、ヒアルロン酸塩、トリメチロールプロパン、及び1,2,6−ヘキサントリオールである。糖の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類及び四糖類を含む)及び多糖類があげられ、好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、ソルビット、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、及びマルトトリオースなどがあげられる。ここで、糖類とは広義の糖を意味し、アルギン酸、α−シクロデキストリン、及びセルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いる。また、これらの糖類の誘導体としては、前記糖類の還元糖(例えば、糖アルコール(一般式HOCH(CHOH)CHOH(ここで、n=2〜5の整数を表す)で表される)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ糖など)があげられる。特に糖アルコール類が好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビトール、及びキシリトールなどが挙げられる。ヒアルロン酸塩は、ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液(分子量350000)として市販されているものを使用することができる。特に好ましい固体湿潤剤は、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサトリオール、糖類、及び糖アルコール類である。本発明のインク組成物には、一種又は二種以上の固体湿潤剤を添加することができる。
インク組成物に固体湿潤剤を用いることにより、その保水機能によってインク組成物の水分の蒸発を抑えることができるため、インクジェットプリンタのインク流路やインクジェットノズル周辺でインク組成物の粘度が上昇することなく、また、インク組成物の水分蒸発による皮膜の形成も起こりにくくなるため、ノズルの目詰りが起こり難くなる。また、前記の固体湿潤剤は化学的に安定であるため、インク組成物中で分解することもなく、長期にわたってインク組成物の品質を維持することができる。また、インク組成物に前記の固体湿潤剤を添加した場合でも、インク組成物がノズルプレートを濡らすことがなく、インクジェットノズルからインク組成物を安定して吐出することができる。固体保湿剤としてトリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、糖類、及び糖アルコール類から選ばれる化合物を用いた場合に特に優れた前記効果が得られる。
本発明のインク組成物中に添加する前記の固体湿潤剤の量はその合計量が、インク組成物の全重量に対して3〜20重量%であることが好ましく、3〜10重量%であることがさらに好ましい。固体湿潤剤を二種以上混合して用いる場合の好ましい組み合わせは、糖類、糖アルコール類、及びヒアルロン酸塩から選ばれる一種以上と、トリメチロールプロパン、及び1,2,6−ヘキサントリオールから選ばれる一種以上との組み合わせである。この組み合わせで固体湿潤剤をインク組成物に添加した場合は、インク組成物の粘度の上昇を抑えることができる。インク組成物中に含まれる固体湿潤剤の量を3重量%以上にすることによって、インクジェットノズルの目詰まりを防止する効果が得られ、インク組成物中に含まれる固体湿潤剤の量を20重量%以下にすることによってインク組成物がインクジェットノズルから安定して吐出できるために充分に低い粘度のインク組成物を得ることができる。
前記実施態様例2においては、インク組成物に(4)のアセチレングリコール系界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール系界面活性剤を添加するが、これら界面活性剤はその合計量がインク組成物の全重量に対して0.01〜10重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%であることが特に好ましい。
前記実施態様例に示したインク組成物は、特に、顔料の分散安定性、及びインクジェット記録方法に用いた場合にインクジェットヘッドノズルからの吐出安定性に優れ、更に、長期にわたって、ノズルの目詰まりもなく、安定した印字が可能である。また、このインク組成物は、普通紙及び再生紙並びにコート紙等の記録媒体に印字したときに、印字後のインクの乾燥性が良好であり、このインク組成物を用いることによって滲みがなく、高い印刷濃度を有し、発色性に優れた高品位の画像を得ることができる。
以上、上述した本発明のカプセル化顔料を含有する本発明のインクジェット記録用インク(インク組成物)と、従来公知の顔料を用いて調製したインク組成物との間には以下のような違いがある。
界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤を用いて顔料を分散させた顔料分散液と、前記のアセチレングリコール系界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール系界面活性剤と、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の浸透剤とを用いたインク組成物は、細いインクジェットノズルを通って吐出される際に加えられる強い剪断力によって分散剤が顔料表面から容易に脱離して分散性の劣化をもたらし、吐出が不安定となる傾向がある。これに対して、本発明のインク組成物は、こうした現象が全く認められず、インクジェットノズルを通して長期間安定に吐出されることができる。また、本発明のカプセル化顔料は耐溶剤性が良好であるため、前記浸透剤によって顔料粒子の表面から壁材のポリマーが脱離したり、ポリマーが膨潤したりしにくく、長期にわたって顔料粒子をインク組成物中に安定して分散している状態を保つことができる。
また、界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤を用いて顔料を分散して得られる顔料分散液を用いるとともに、浸透性を向上させた公知のインク組成物では、一般に、顔料を分散液媒体に分散した当初は分散剤の全てが顔料表面には吸着されるわけではないため、顔料分散液中に溶解している分散剤によってインク組成物の粘度が高くなる傾向や、顔料分散後の時間経過にともない顔料から分散剤が脱離し、この脱離した分散剤によってインク組成物の粘度が高くなる傾向がある。このため、顔料分散液中に含まれる顔料の含有量を高くすることができない場合も多い。顔料含有量が少ない顔料分散液を用いた場合には、インク組成物を用いて、特に普通紙や再生紙に印刷した場合は、充分な印刷濃度を得ることができず、画像の良好な発色性が得られないことも多い。これに対して、本発明のカプセル化顔料を用いたインク組成物では、経時的なインク組成物の粘度上昇がきわめて起こりにくい。したがって、本発明のカプセル化顔料を用いたインク組成物は、低粘度化が容易であり、顔料粒子をより多く含有できるという利点を有し、普通紙や再生紙を印刷媒体として用いた場合でも充分に高い印刷濃度を得ることができる。
さらに、本発明のカプセル化顔料は、形状が真球状であるために、この顔料を用いたインク組成物の流動性がニュートニアンになりやすい。これは、カプセル化顔料の表面のイオン性基が水性溶媒側に向かって規則正しく密に配向しているためと考えられ、カプセル化顔料相互間に効果的な静電反発力が生じているものと考えられる。このことから、従来のカプセル化顔料と比較して本発明のカプセル化顔料を用いた本発明のインク組成物は、インクジェット記録方法においてインクジェットヘッドからのインク組成物の吐出安定性に優れる。さらに、インク組成物中に含有させるカプセル化顔料の量を多くしても顔料の分散性及び分散安定性に優れる(高分散性)ことから、着色剤の含有濃度を高めたインクジェット記録用インク組成物を製造することができ、そのインク組成物を用いることによって高い印刷濃度を有する画像を得ることができる。本発明のインク組成物は、インクジェット記録方法に用いるためのインク組成物として特に好ましいが、その用途は制限されるものではない。
また、本発明のカプセル化顔料を含有する本発明のインク組成物は、さらに、下記一般式(2)に示す化合物を含んでなることが好ましい。
Figure 2008088218

(式中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基を表し、m,nはそれぞれ繰り返し単位数であって、m+nが平均で0〜10である。)
前記一般式(2)の化合物において、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基であり、m,nはそれぞれ繰り返し単位数であって、m+nが平均で0〜10であるが、普通紙上ではよりにじみが少なく高発色であり、専用紙上では十分な発色に加えて定着性を有するインク組成物を作製可能であり、インクジェット記録にあってはさらに吐出安定性が優れ、印字における十分な線幅が確保できる水性インク組成物を得るためには、R+Rの炭素数は好ましくは5以上15以下であり、m+nは好ましくは0〜7の範囲である。
前記一般式(2)の化合物の含有量は、インク組成物の全重量に対して、0.1〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.3〜10重量%である。特に良好な光沢度、写像性を得るには、0.5〜10重量%が好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
(アニオン性重合性界面活性剤を表面に吸着させたシアン顔料P1の製造)
銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigment Blue 15:1)20gをアニオン性重合性界面活性剤アクアロンKH−10(第一工業製薬(株)製)10g及びイオン交換水と混合し、アイガーモーターミルM250(アイガージャパン社製)でビーズ充填率70%及び回転数5000rpmの条件下で2時間分散し、限外濾過によって未吸着のアニオン性重合性界面活性剤KH−10を除去した。この限外濾過による洗浄は分光光度計で透過水の吸収スペクトルの変化を追跡し、一定となったところを終点とした。こうして、目的のアニオン性重合性界面活性剤KH−10を表面に吸着させたシアン顔料P1を分散液の形態で得た。この得られた分散液の固形分濃度は8.5%であった。また、熱重量分析によって求めたこの分散液中のアニオン性重合性界面活性剤KH−10の含有量は顔料に対して25.7%であった。フラスコ燃焼法によって求めた硫黄含有量は0.66%で、これから求めたこの分散液中のアニオン性重合性界面活性剤KH−10(顔料に吸着したアニオン性重合性界面活性剤量とみなす。)は、2.15×10−4mol/g(顔料1gに対するアニオン性重合性界面活性剤のモル数)であった。また、リーズ&ノースロップ社製のレーザードップラー方式粒度分布測定機マイクロトラックUPA150で測定した体積平均粒子径は70nmであった。
(カプセル化顔料分散液M1〜M5の製造)
前記のようにして製造したシアン顔料P1を顔料粒子として用い、下記のようにして、本発明の実施例であるカプセル化顔料分散液M1〜M5を製造した。
<カプセル化顔料分散液M1の製造>
前記シアン顔料粒子[銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigment Blue 15:1)]P1の分散液176gに、前記イオン性モノマー(カチオン性水溶性モノマー)としてのメタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を0.8g添加し、30分攪拌混合し、さらに超音波を30分間照射した。ここに、ベンジルメタクリレート6.3g、イソボルニルメタクリレート2.52g、ラウリルメタクリレート3.78gを混合した混合物を加えて攪拌混合し、さらにイオン交換水50mlに溶解した前記イオン性重合性界面活性剤Bとしてのアニオン性重合性界面活性剤SR−10(旭電化工業製)0.29gを前記の混合物に加えて、1時間攪拌混合した。さらに、イオン交換水100mlを加え、1時間攪拌混合した。前記の混合物を、還流管、窒素導入管、滴下管、攪拌装置、温度調節器を備えた反応容器に入れ、窒素を流しながら、温度を80℃まで40分かけて昇温し、過硫酸カリウム0.32gをイオン交換水100mlに溶解し1時間かけて滴下し、さらに4時間反応後、温度を下げて反応を止めた。
重合終了後、1mol/l水酸化カリウム水溶液でpHを8に調整し、プレフィルターで粗大粒子を除去した後、これを限外濾過装置でクロスフロー法による限外濾過を行い、濃縮操作をして顔料濃度10wt%の目的のカプセル化顔料分散液M1を得た。
<カプセル化顔料分散液M2の製造>
前記シアン顔料粒子[銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigment Blue 15:1)]P1の分散液176gに、前記イオン性モノマー(カチオン性水溶性モノマー)としてのメタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を0.8g添加し、30分攪拌混合し、さらに超音波を30分間照射した。ここに、ベンジルメタクリレート6.3g、イソボルニルメタクリレート2.52g、ラウリルメタクリレート3.78gを混合した混合物を加えて攪拌混合し、さらにイオン交換水50mlに溶解した前記イオン性重合性界面活性剤Bとしてのアニオン性重合性界面活性剤SR−10(旭電化工業製)1.31gを前記の混合物に加えて、1時間攪拌混合した。さらに、イオン交換水100mlを加え、1時間攪拌混合した。前記の混合物を、還流管、窒素導入管、滴下管、攪拌装置、温度調節器を備えた反応容器に入れ、窒素を流しながら、温度を80℃まで40分かけて昇温し、過硫酸カリウム0.34gをイオン交換水100mlに溶解し1時間かけて滴下し、さらに4時間反応後、温度を下げて反応を止めた。
重合終了後、1mol/l水酸化カリウム水溶液でpHを8に調整し、プレフィルターで粗大粒子を除去した後、これを限外濾過装置でクロスフロー法による限外濾過を行い、濃縮操作をして顔料濃度10wt%の目的のカプセル化顔料分散液M2を得た。
<カプセル化顔料分散液M3の製造>
前記シアン顔料粒子[銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigment Blue 15:1)]P1の分散液176gに、前記イオン性モノマー(カチオン性水溶性モノマー)としてのメタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を0.8g添加し、30分攪拌混合し、さらに超音波を30分間照射した。ここに、ベンジルメタクリレート6.3g、イソボルニルメタクリレート2.52g、ラウリルメタクリレート3.78gを混合した混合物を加えて攪拌混合し、さらにイオン交換水50mlに溶解した前記イオン性重合性界面活性剤Bとしてのアニオン性重合性界面活性剤SR−10(旭電化工業製)2.55gを前記の混合物に加えて、1時間攪拌混合した。さらに、イオン交換水100mlを加え、1時間攪拌混合した。前記の混合物を、還流管、窒素導入管、滴下管、攪拌装置、温度調節器を備えた反応容器に入れ、窒素を流しながら、温度を80℃まで40分かけて昇温し、過硫酸カリウム0.36gをイオン交換水100mlに溶解し1時間かけて滴下し、さらに4時間反応後、温度を下げて反応を止めた。
重合終了後、1mol/l水酸化カリウム水溶液でpHを8に調整し、プレフィルターで粗大粒子を除去した後、これを限外濾過装置でクロスフロー法による限外濾過を行い、濃縮操作をして顔料濃度10wt%の目的のカプセル化顔料分散液M3を得た。
<カプセル化顔料分散液M4の製造>
前記シアン顔料粒子[銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigment Blue 15:1)]P1の分散液176gに、前記イオン性モノマー(カチオン性水溶性モノマー)としてのメタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を0.7g添加し、30分攪拌混合し、さらに超音波を30分間照射した。ここに、ベンジルメタクリレート10.2g、イソボルニルメタクリレート4.34g、ラウリルメタクリレート4.34gを混合した混合物を加えて攪拌混合し、さらにイオン交換水50mlに溶解した前記イオン性重合性界面活性剤Bとしてのアニオン性重合性界面活性剤SR−10(旭電化工業製:ポリオキシエチレン基の付加モル数n=10)1.11gを前記の混合物に加えて、1時間攪拌混合した。さらに、イオン交換水100mlを加え、1時間攪拌混合した。前記の混合物を、還流管、窒素導入管、滴下管、攪拌装置、温度調節器を備えた反応容器に入れ、窒素を流しながら、温度を80℃まで40分かけて昇温し、過硫酸カリウム0.45gをイオン交換水100mlに溶解し1時間かけて滴下し、さらに4時間反応後、温度を下げて反応を止めた。
重合終了後、1mol/l水酸化カリウム水溶液でpHを8に調整し、プレフィルターで粗大粒子を除去した後、これを限外濾過装置でクロスフロー法による限外濾過を行い、濃縮操作をして顔料濃度10wt%の目的のカプセル化顔料分散液M4を得た。
<カプセル化顔料分散液M5の製造>
前記シアン顔料粒子[銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigment Blue 15:1)]P1の分散液176gに、前記イオン性モノマー(カチオン性水溶性モノマー)としてのメタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を0.7g添加し、30分攪拌混合し、さらに超音波を30分間照射した。ここに、ベンジルメタクリレート10.2g、イソボルニルメタクリレート4.34g、ラウリルメタクリレート4.34gを混合した混合物を加えて攪拌混合し、さらにイオン交換水50mlに溶解した前記イオン性重合性界面活性剤Bとしてのアニオン性重合性界面活性剤SR−20(旭電化工業製:ポリオキシエチレン基の付加モル数n=20)1.11gを前記の混合物に加えて、1時間攪拌混合した。さらに、イオン交換水100mlを加え、1時間攪拌混合した。前記の混合物を、還流管、窒素導入管、滴下管、攪拌装置、温度調節器を備えた反応容器に入れ、窒素を流しながら、温度を80℃まで40分かけて昇温し、過硫酸カリウム0.45gをイオン交換水100mlに溶解し1時間かけて滴下し、さらに4時間反応後、温度を下げて反応を止めた。
重合終了後、1mol/l水酸化カリウム水溶液でpHを8に調整し、プレフィルターで粗大粒子を除去した後、これを限外濾過装置でクロスフロー法による限外濾過を行い、濃縮操作をして顔料濃度10wt%の目的のカプセル化顔料分散液M5を得た。
(カプセル化顔料の平均粒子径の測定)
前記カプセル化顔料分散液M1〜M5について、マルバーン社製のゼータサイザーナノを用いて各分散液中のカプセル化顔料の粒度分布を測定し、得られた粒度分布から平均粒子径(Z-平均粒子径)を求めた。この結果を下記表1に示す。
(カプセル化顔料分散液の動的粘弾特性の測定)
前記カプセル化顔料分散液M1〜M5からカプセル化顔料のみをそれぞれ取り出し、取り出した各カプセル化顔料を用いて、カプセル化顔料5重量%及びイオン交換水95重量%を含有する顔料分散液をカプセル化顔料毎に調製した。そして、これらの顔料分散液(液温25℃)について、上述した測定方法に従い、線分ABの傾き(図5参照)、及び貯蔵剛性率G’ω≦0.8(印加周波数ωが0.8(rad/sec)以下の周波数域での貯蔵剛性率)を求めた。測定は、TA INSTRUMENTS社製のストレスレオメータAR−G2を用い、直径40mmのコーンプレート(傾斜角1°)で、測定歪400%で、印加周波数0.1〜10(rad/sec)の範囲におけるG’、G’’、|η|の周波数分散を求めることによって行った。これらの結果を下記表1に示す。また図7及び図8に、測定結果である印加周波数ωと貯蔵剛性率G’との関係を示す。
〔試験例〕
前記カプセル化顔料分散液M1〜M5を用い、下記のようにしてインク1〜5をそれぞれ調製した。そして、これらのインクについて、吐出安定性、印刷濃度(発色性)及び光沢性をそれぞれ下記方法により評価した。これらの結果を下記表1に示す。
・インク1:グリセリン15g、トリエチレングリコールモノブチルエーテル5g、1,2−ヘキサンジオール2g、トリメチロールプロパン5g、2−ピロリドン1g、オルフィンE1010 1g、プロキセルXL−2 0.05g、及びイオン交換水30.95gを混合し、さらに濃度10重量%の水酸化カリウム1gを加えて混合し、液状混合物を得た。この液状混合物を、40gの前記カプセル化顔料分散液M1に添加し、攪拌装置を用いてカプセル化顔料を分散させて目的のインク1を得た。
・インク2:前記インク1の調製において、40gの前記カプセル化顔料分散液M1に代えて、40gの前記カプセル化顔料分散液M2を用いた以外は前記インク1の調製と同様に調製し、得られたインクをインク2とした。
・インク3:前記インク1の調製において、40gの前記カプセル化顔料分散液M1に代えて、40gの前記カプセル化顔料分散液M3を用いた以外は前記インク1の調製と同様に調製し、得られたインクをインク3とした。
・インク4:前記インク1の調製において、40gの前記カプセル化顔料分散液M1に代えて、40gの前記カプセル化顔料分散液M4を用いた以外は前記インク1の調製と同様に調製し、得られたインクをインク4とした。
・インク5:前記インク1の調製において、40gの前記カプセル化顔料分散液M1に代えて、40gの前記カプセル化顔料分散液M5を用いた以外は前記インク1の調製と同様に調製し、得られたインクをインク5とした。
<吐出安定性の評価>
評価対象のインクをインクカートリッジに充填し、このインクカートリッジをインクジェットプリンタEM-930C(商品名/セイコーエプソン株式会社製)に装填して、セイコーエプソン(株)製スーパーファイン専用紙に、1mmの罫線を印刷して、ドット抜けやインク着弾位置ずれ等の印字の状態を目視で観察し、下記基準により評価した。Aが最高評価である。
A:ドット抜けやインク着弾位置ずれのない良好な吐出状態が継続している。
B:軽微なドット抜けやインク着弾位置ずれが発生することがあるが回復する。
C:ドット抜けやインク着弾位置ずれが発生すると回復しにくい。
D:吐出不良
<印刷濃度の評価>
評価対象のインクをインクカートリッジに充填し、このインクカートリッジをインクジェットプリンタEM-930C(商品名/セイコーエプソン株式会社製)に装填して、普通紙であるXerox 4024紙(ゼロックス社製)に、ベタ印刷を行い、このベタ印刷部分の濃度を分光光度計(グレタグマクベス社製、GRETAG SPM−50)で測定し、得られた結果を下記基準により評価した。Aが最高評価である。
A:OD値:1.2以上1.25未満
B:OD値:1.15以上1.2未満
C:OD値:1.15未満
<光沢性の評価>
評価対象のインクをインクカートリッジに充填し、このインクカートリッジをインクジェットプリンタEM-930C(商品名/セイコーエプソン株式会社製)に装填して、写真用紙<光沢>(商品名/セイコーエプソン株式会社製)に1440×720dpiでベタ画像(100%duty)を印刷した。
測定装置として自動変角光度計GP−200(村上色彩技術研究所製)を使用し、測定条件としては12V、50W、入射光束絞り直径1mm、反射光絞り直径1.5mm、ND10フィルター使用、入射角度45度、煽り角度0度、及び標準鏡面板を42.5として、入射角45度における記録面の鏡面光沢度を測定した。この測定結果を以下の基準により評価した。Aが最高評価である。
A:光沢度が21以上
B:光沢度が11〜20の範囲内
C:光沢度が1〜10の範囲内
Figure 2008088218
表面に電荷を有する顔料粒子(顔料粒子自体が表面に負電荷を有する)が、水性溶媒に分散するとともに、イオン性モノマー(3)とイオン性重合性界面活性剤B(4)と疎水性モノマー(5)とに対して、共存している状態を示す模式図である。 図1に示す分散状態において、イオン性モノマー(3)とイオン性重合性界面活性剤B(4)と疎水性モノマー(5)とが重合した状態を示す模式図である。 表面にアニオン性界面活性剤(2)が吸着した顔料粒子(表面に電荷を有する顔料粒子)が、水性溶媒に分散するとともに、イオン性モノマー(3)とイオン性重合性界面活性剤B(4)と疎水性モノマー(5)とに対して、共存している状態を示す模式図である。 図3に示す分散状態において、イオン性モノマー(3)とイオン性重合性界面活性剤B(4)と疎水性モノマー(5)とが重合した状態を示す模式図である。 本発明のカプセル化顔料の分散液の液温25℃での動的粘弾特性曲線の模式図である。 図3に示す分散状態において、更に、非イオン性重合性界面活性剤C(8)を用いた場合における各物質の分散状態を示す模式図である。 本発明の実施例1〜3についての印加周波数ωと貯蔵剛性率G’との関係を示す図である。 本発明の実施例4〜5についての印加周波数ωと貯蔵剛性率G’との関係を示す図である。
符号の説明
1 顔料粒子、2 アニオン性界面活性剤、3 イオン性(カチオン性)モノマー、4 イオン性(アニオン性)重合性界面活性剤B、5 疎水性モノマー、8 非イオン性重合性界面活性剤、21, 41 アニオン性基、22, 32, 42, 82 疎水性基、31 カチオン性基、33, 43, 83 重合性基、60 壁材(ポリマー被覆層)、81 非イオン性基、100 カプセル化顔料

Claims (7)

  1. 表面に電荷を有する顔料粒子がポリマーを主成分とする壁材によって被覆されてなるカプセル化顔料であって、
    前記ポリマーが、(1)前記顔料粒子の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有するイオン性重合性界面活性剤A、及び/又は、前記顔料粒子の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有するイオン性モノマーから誘導された繰り返し構造単位と、(2)疎水性モノマーから誘導された繰り返し構造単位と、(3)前記顔料粒子の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有するイオン性重合性界面活性剤Bから誘導された繰り返し構造単位とを少なくとも含んでおり、
    前記カプセル化顔料を5重量%及び水を95重量%含有する顔料分散液の25℃での動的粘弾特性が、下記式(I)及び(II)を同時に満たすように設定されたカプセル化顔料。
    Figure 2008088218
  2. 前記ポリマーが、非イオン性基と疎水性基と重合性基とを有する非イオン性重合性界面活性剤から誘導された繰り返し構造単位を更に含んでいる請求項1記載のカプセル化顔料。
  3. 請求項1記載のカプセル化顔料の製造方法であって、少なくとも下記工程1、2a、3a及び4aを有するカプセル化顔料の製造方法。
    工程1:前記顔料粒子を含有する水性溶媒に前記イオン性重合性界面活性剤A及び/又は前記イオン性モノマーを添加・混合し、該顔料粒子の表面に該イオン性重合性界面活性剤A及び/又は該イオン性モノマーを吸着させる工程。
    工程2a:前記工程1で得られた混合液に前記疎水性モノマーを添加・混合する工程。
    工程3a;前記工程2aで得られた混合液に前記イオン性重合性界面活性剤Bを添加・混合する工程。
    工程4a:前記工程3aで得られた混合液に重合開始剤を添加・混合し、前記イオン性重合性界面活性剤A及び/又は前記イオン性モノマーと前記疎水性モノマーと前記イオン性重合性界面活性剤Bとを重合して前記ポリマーを形成する工程。
  4. 請求項1記載のカプセル化顔料の製造方法であって、少なくとも下記工程1、2b、3b及び4bを有するカプセル化顔料の製造方法。
    工程1:前記顔料粒子を含有する水性溶媒に前記イオン性重合性界面活性剤A及び/又は前記イオン性モノマーを添加・混合し、該顔料粒子の表面に該イオン性重合性界面活性剤A及び/又は該イオン性モノマーを吸着させる工程。
    工程2b:前記工程1で得られた混合液に前記イオン性重合性界面活性剤Bを添加・混合する工程。
    工程3b:前記工程2bで得られた混合液に前記疎水性モノマーを添加・混合する工程。
    工程4b:前記工程3bで得られた混合液に重合開始剤を添加・混合し、前記イオン性重合性界面活性剤A及び/又は前記イオン性モノマーと前記イオン性重合性界面活性剤Bと前記疎水性モノマーとを重合して前記ポリマーを形成する工程。
  5. 前記工程3a又は2bにおいて、前記混合液に更に、非イオン性基と疎水性基と重合性基とを有する非イオン性重合性界面活性剤を添加・混合する請求項3又は4記載のカプセル化顔料の製造方法。
  6. 前記工程1において、前記顔料粒子を含む水性溶媒に前記イオン性重合性界面活性剤A及び/又は前記イオン性モノマーを添加・混合した後、該水性溶媒に超音波を照射する請求項3〜5の何れかに記載のカプセル化顔料の製造方法。
  7. 請求項1又は2記載のカプセル化顔料及び水を含有するインクジェット記録用インク。
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