JP2008087024A - スプリングバック対策位置特定方法、その装置、及びそのプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】プレス成形製品のスプリングバックの原因となる部位を特定するという課題があった。
【解決手段】プレス成形品の成形条件を数値解析して、プレス成形品の成形データを算出するプレス成形解析ステップと、プレス成形品の成形データのうち、プレス成形品の少なくとも一部の領域を選定し、当該選定領域の形状と、当該選定領域の応力分布との少なくとも1つを所定のデータで置換した置換成形データを算出する置換成形データ生成ステップと、置換成形データを数値解析して、スプリングバック量を算出するスプリングバック量算出ステップとを有してスプリングバック対策位置特定方法を構成する。
【選択図】図3

Description

本発明は、自動車用部材などを鋼板や棒鋼などの鋼材を始め、アルミ、マグネシウム、チタン等の金属からプレス成形した際にプレス成形製品に発生するスプリングバックの原因部位を特定するための方法、その装置、及びプログラムに関する。
ドアやバンパーなど多くの自動車用部材、家電部材、建材等は鋼板のプレス成形により製造されている。近年、それらの部材に対する軽量化の要求が高まっており、その要求を実現するために高強度を有する鋼材を使用することによって鋼材を薄手化するなどの対応が図られている。
しかしながら、鋼板の高強度化に伴い、プレス成形による製品形状の確保には厳しい管理が必要となっており、その管理において重要な項目の一つは、プレス成形時に鋼板に生じた残留応力を駆動力として、鋼板の弾性変形分が弾性回復する変形であるスプリングバックである。
特に、昨今は、自動車等の開発工数及びコスト削減のため、デザイン段階と同時に、その成形部材の成形方法を検討する設計段階が開始される傾向にあり、デザイン段階でのデザイン変更が、設計段階での成形部材の変更を生じさせるため、成形部材の成形方法を検討する設計段階での工数やコストは、自動車等の開発工程や開発費において、より大きな問題となっている。
図1は、従来のスプリングバックへの対応を示す成形部材の断面模式図である。(a)は、成形製品の形状断面を示し、(b)は、(a)で示した成形製品と同型の金型で鋼板を冷間プレス成形後、成形製品に生じるスプリングバックを示し、(c)は、スプリングバックを想定して補正した金型の形状断面を示す。このように、(a)に示される成形製品を得るために、(c)に示すようなスプリングバックを予想した「見込み」の金型によって、所望の成形製品を得る対応がある。
このようなスプリングバックを予想した金型を成形する方法として、有限要素法により金型にプレスされた下死点における鋼板の残留応力を解析し、その残留応力と反対向きの残留応力により生じる変形(スプリングフォワード)形状の金型を数値解析することにより、簡易にスプリングバックを考慮した金型を成形する方法が提案されている(特許文献1、非特許文献1)。
しかし、スプリングバックを完全に考慮した金型を数値解析により設計することは、非線形問題であり非常に困難であるため、提案されている方法は、あくまでも有限要素法によって簡易にスプリングバックを考慮した金型を成形するというものである。そのため、その金型によって、スプリングバックの許容量を満たさない場合にどのような対策が必要となるかについては、数値的に解析することが困難であるため、依然として、何の解決方法も提案されていない。
そのため、簡易にスプリングバックを考慮した金型で、スプリングバックの許容量が満たされなかった場合、所望の成形製品を得るためにどのような対策をとるかは、技術者の経験に依存することになる。結局、その成形法による金型と実際の鋼板とによるトライアンドエラーテストが必要になる。
また、金型形状ではなく、鋼材や成形製品の形状に残留応力を除去する修正を加えることでスプリングバックを少なくする方法が提案されている。
図2は、スプリングバックによる変形の発生原因となる部位を探る従来の方法を例示する斜視図である。(a)は、成形製品の形状を示し、(b)は、製品の一部1を切断除去した場合を示し、(c)は、製品に孔2を開けた場合を示し、(d)は、製品の一部にスリット3を付与する場合を示す。このような対策を講じることによってスプリングバックの挙動を観察すると共に、スプリングバックを少なくする対策が試みられている。
また、スプリングバック発生の原因部位への対策により、スプリングバックの原因となる残留応力は低減されても、切断除去や孔開け等のために部材自体の剛性が低下するので、わずかな残留応力でスプリングバックが発生してしまうという問題が生じ、根本的な原因究明には至らない。さらに、このような対策は、実際に試験金型と鋼板とによるテストを必要とするため、設計段階の工数とコストの増大という問題が生じる。
特開2003−33828号公報 三菱自動車テクニカルレビュー(2006 No.18 126〜131頁)
上述のような問題点に鑑み、本発明は、数値解析によりプレス成形製品のスプリングバック発生の原因となる部位を特定することで、成形部材の成形方法の検討時間を効率的にかつ経済的に短縮する方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、製品強度を維持しつつ、スプリングバック量を許容値以下とする成形製品を数値解析により提供することを課題とする。
さらに本発明は、数値解析によりプレス成形製品のスプリングバック発生の原因となる部位に対して、スプリングバック量を減少させる対策を提供することを課題とする。
以上の課題を解決するために、本発明に係るスプリングバック対策位置特定方法(プログラム:以下、カッコ内はプログラムの発明に対応する)は、プレス成形品の成形条件を数値解析して、プレス成形品の成形データを算出するプレス成形解析ステップ(手順)と、プレス成形品の成形データのうち、プレス成形品の少なくとも一部の領域を選定し、当該選定領域の形状と異なる形状に置換した、及び/又は、当該選定領域の応力分布と異なる応力分布で置換した置換成形データを生成する置換成形データ生成ステップ(手順)と、置換成形データを数値解析して、スプリングバック量を算出するスプリングバック量算出ステップ(手順)とを有する。
上記選定領域の位置と数を変えて、置換成形データ生成ステップ及びスプリングバック量算出ステップ(手順)を繰り返しても良く、スプリングバック量が、所定値以下となるか判断するステップ(手順)をさらに有しても良い。
また、所定値以下のスプリングバック量を与える1又は複数の領域の形状と、当該選定領域の応力分布との少なくとも1つを、その置換した所定のデータで置換し、更に選定領域の位置又は数を変えて、前記置換成形データ生成ステップ(手順)及び前記スプリングバック量算出ステップ(手順)を繰り返しても良い。
さらに、プレス成形品の成形データを、所定の領域で分割するステップ(手順)をさらに有しても良く、置換成形データ生成ステップ(手順)は、所定の領域で分割した領域の全てについて、置換成形データを算出しても良い。また、上記所定のデータは、選択領域毎に、形状および応力分布の少なくとも1つが異なっても良い。
さらに、本発明に係るスプリングバック対策位置特定装置は、プレス成形品の成形条件を数値解析して、プレス成形品の成形データを算出するプレス成形解析部と、プレス成形品の成形データのうち、プレス成形品の少なくとも一部の領域を選定し、当該選定領域の形状と、当該選定領域の応力分布との少なくとも1つを所定のデータで置換した置換成形データを生成する置換成形データ生成部と、置換成形データを数値解析して、スプリングバック量を算出するスプリングバック解析部とを有する。
上記選定領域の位置と数を変えて、置換成形データ生成部は、置換成形データを算出し、及び、スプリングバック解析部は、スプリングバック量算出を繰り返しても良い。また、置換成形データ生成部は、スプリングバック量が、所定値以下となるかを判断しても良い。
また、所定値以下のスプリングバック量を与える1又は複数の領域の形状と、当該選定領域の応力分布との少なくとも1つを、その置換した所定のデータで置換し、更に選定領域の位置又は数を変えて、置換成形データ生成部は、前記置換成形データを算出し、及び、前記スプリングバック解析部は、スプリングバック量算出を繰り返しても良い。
置換成形データ生成部は、プレス成形品の成形データを、所定の領域で分割し、かつ、所定の領域で分割した領域の全てについて、置換成形データを算出しても良い。また、上記所定のデータは、選択領域毎に、形状および応力分布の少なくとも1つが異なっても良い。
本発明のプログラムは、上記に説明したプログラムの他に、プレス成形の成形条件を数値解析してプレス成形品の成形データを算出するプレス成形解析プログラム、及び、該成形データを数値解析してスプリングバック量を算出するスプリングバック解析プログラムは市販のプログラムを使用し、これらプレス成形解析プログラム及びスプリングバック解析プログラムと、データ入出力が可能であるスプリングバック対策位置特定プログラムであって、プレス成形解析プログラムから、成形データを取得する手順と、プレス成形品の成形データのうち、プレス成形品の少なくとも一部の領域を選定し、当該選定領域の形状と、当該選定領域の応力分布との少なくとも1つを所定のデータで置換した置換成形データを算出する置換成形データ生成手順と、前記スプリングバック解析プログラムに、前記置換成形データを出力する手順をコンピュータに実行させるものでも良い。市販のスプリングバック解析プログラムは、本発明のプログラムから出力された置換成形データに基づいてスプリングバック量を算出する。
本発明によれば、プレス成形製品のスプリングバック発生の原因として解析対象となる選択領域に対して、当該選択領域と異なる形状及び応力分布に置換して、スプリングバック量を最小化することにより、スプリングバック発生の原因部位を特定し、かつその原因部位に対する対策を提供することを可能とし、これにより、成形部材の成形方法の検討時間を経済的にかつ効率的に短縮する方法を提供する。
さらに、本発明は、実際の成形製品に対して切断除去や孔開けを行わずに、少なくとも1つの選択領域に対して異なる形状と応力分布の少なくとも一つ又は双方を置換することで、スプリングバック量を許容値以下とすることが可能である。そのため、このように解析された成形製品は、スプリングバック量を許容値以下とすると同時に、剛性等の製品の品質を維持することが確認できるため、成形製品に求められる所定のスプリングバック量を維持するために、製品品質を犠牲にするような成形製品の特定部位への切断除去や孔開け等の対策を不要とすることができる。
図3は、本発明の一実施形態によるスプリングバック対策位置特定装置の機能構成図を示す。
スプリングバック対策位置特定装置10Aは、プレス成形解析部11、スプリングバック解析部12、置換成形データ生成部14、ファイル格納部16、成形条件入力部18、及びスプリングバック量出力画面19を有する。
成形条件入力部18は、後述するプレス成形解析部11及びスプリングバック解析部12で解析対象となる鋼板の形状データ(板厚、長さ、幅、曲率、歪等)、性状(強度、伸びなどの材質、板厚などの形状)、金型形状(ダイ(金型)及びパンチ形状、曲率、径、クリアランス、潤滑条件)、プレス条件(しわ押さえ荷重、パッド荷重、ビード張力、プレス圧力、温度)などの成形条件を入力する入力部である。または、成形解析におけるデータ領域、置換成形データ生成部14におけるデータ領域、スプリングバック量出力画面19で画面表示する際の分割領域等を別個に設定することも可能である。
プレス成形解析部11は、成形条件入力部18で入力された成形条件を入力情報として、弾塑性有限要素法、剛塑性有限要素法、ワンステップ有限要素法、境界要素法、初等解析等を用いて、プレス成形された被加工物である鋼板等の応力や歪や板厚などを求める数値解析を行う。プレス成形解析部11は、被加工物の板厚、応力の成分値、歪の成分値等の変数や、その変数の分布という形式で数値解析結果を出力する。その出力データは、例えば、ファイル「P org.k」として、スプリングバック解析部12、後述する部分置換成形データ生成部14及びファイル格納部16に出力される。
このプレス成形解析部11による数値解析は、有限要素法(例えば市販のソフトウェアPAM-STAMP、LS-DYNA、Autoform、OPTRIS、ITAS-3D、ASU/P-FORM、ABAQUS、ANSYS、MARC、HYSTAMP、Hyperform、SIMEX、Fastform3D、Quikstamp)を用いて、プレス成形する製品の形状データ(板厚、長さ、幅、曲率、歪みなど)及び、使用する金属板の性状(強度、伸びなどの材質、板厚などの形状)に基づいて、必要であれば金型形状(ダイ及びパンチ形状、曲率、径、クリアランス、潤滑条件)、プレス条件(温度、圧力)などの成形条件を設定し、成形解析を行い、かつ、成形後の応力、歪値の分布を数値的に得ることができる。
また、プレス成形解析部11は、有限要素法による応力分布や曲率等の解析結果を、ポスト処理ソフトを用いて、スプリングバック量出力画面19にコンタ表示することが可能である。
スプリングバック解析部12は、プレス成形解析部11の出力データファイル「P org.k」及び後述する置換成形データ生成部14の出力データファイル「P rem.casen.k」を入力データとして用いて、スプリングバック解析を行う。スプリングバック解析とは、プレス成形解析部11の出力結果である被加工物の板厚、応力の成分値、歪の成分値等の変数、及び変数分布に基づいて、弾性有限要素法,弾塑性有限要素法、ワンステップ有限要素法、初等解析等により、除荷過程の計算を行い、被加工物に生じる変形量であるスプリングバック量を数値解析することである。そのスプリングバック量は、被加工物を有限要素法等により分割し、3次元データ座標の要素毎に計算される。なお、被加工物に生じる変形量であるスプリングバック量としては、被加工物の任意点の変形量、被加工物の指定領域内の最大変位点もしくは最小変位点の変形量、被加工物内の複数の任意の面又は線同士がなす角度、または、被加工物の任意の面又は先のなす曲率等がある。
スプリングバック解析部12のスプリングバック解析結果である出力データは、スプリングバック量、スプリングバック時の歪等の形状、性状、応力等を含み、スプリングバック量出力画面19に出力され、かつ、入力データファイル「P org.k」による数値解析結果出力データファイル「SB org.k」、又は、後述する「P rem.casen.k」による数値解析結果出力データファイル「SB rem.casen.k」として、スプリングバック解析部12、後述する置換成形データ生成部14及びファイル格納部16に出力される。
置換成形データ生成部14は、プレス成形解析部11の出力データファイル「P org.k」を取得し、出力データファイルに含まれる対象部材の位置データの中から、対策(ビード等)可能範囲、及び対策可能範囲の分割領域を決定する。置換成形データ生成部14は、さらに、ファイル格納部16内に定義される様々な形状のビードや応力分布が定義される形状応力データテーブルT1(図示しない)から、ビードの形状や応力分布のデータ「P trim.casen.k」を取得し、上述した分割領域とそのビード形状や応力分布を置換して、置換成形データ「P rem.casen.k」を生成する。
置換成形データ生成部14は、スプリングバック量が所定値以内になるように、分割領域を、異なる形状や応力分布データで置換する処理を繰り返す。このような繰り返し処理は、全ての分割領域について形状応力データテーブルT1内の全てのそれぞれが異なる形状や応力分布データを置換することによって、置換成形データを生成することとなる。したがって、置換成形データはケース番号n毎に複数の置換成形データ「P rem.casen.k」が生成されることになる。
また、置換成形データ生成部は、所定値以下のスプリングバック量を与える1又は複数の領域の形状と、当該選定領域の応力分布との少なくとも1つを、その置換した所定のデータで置換した上で(第1のスプリングバック量低減の対策)、更に前記選定領域の位置又は数を変えて、置換成形データを算出しても良い。この置換成形データに基づいて、スプリングバック解析部により、スプリングバック量算出を繰り返すことにより、第1のスプリングバック量低減の対策に加え、第2のスプリングバック量低減の対策も取ることができるので、さらにスプリングバック量を低減することが可能になる。
また、上述した分割領域も、選択される形状や応力分布データにしたがって、分割領域の大きさも変化させ、スプリングバック量を所定値以内にするために、あらゆるケースの置換成形データが生成される。
スプリングバック解析部12は、有限要素法(例えば市販のソフトウェアPAM-STAMP、LS-DYNA、Autoform、OPTRIS、ITAS-3D、ASU/P-FORM、ABAQUS、ANSYS、MARC、HYSTAMP)を用いて、プレス成形解析部11で得られた「P org.k」内に記載の応力分布を入力し、スプリングバック解析を実施する。ソフトウェア内でのスプリングバックの計算は例えば、有限弾塑性変形の基礎式や離散化手法に沿った内容で計算される。ただし、スプリングバックの計算は弾性解析であっても、弾塑性解析であっても良い。
また、スプリングバック解析部12は、有限要素法によるスプリングバック解析結果を、ポスト処理ソフトを用いて、スプリングバック量出力画面19にコンタ表示することが可能である。
さらに、置換成形データ生成部14において、スプリングバック量を、パンチ速度又はしわ押さえ力等のプレス成形条件で除算することで正規化した値を求め、ポスト処理ソフトにより、コンタ表示することで、プレス成形条件と、スプリングバック量との関係を視覚的に捉え易くすることもできる。このようなスプリングバック量の正規化とその数値のコンタ表示は、スプリングバック発生の原因部位の特定を経済的にかつ効率的に短縮し、かつ、成形製品の成形方法の検討時間を経済的にかつ効率的に短縮することが可能とする。
ファイル格納部16は、プレス成形解析部11、スプリングバック解析部12、後述する置換成形データ生成部14の出力結果であるデータファイル「P org.k」、「SB org.k」、「P rem.casen.k」、「SB rem.casen.k」、「P trim.casen.k」等を保存するための格納部である。しかし、それらのデータファイル等が、プレス成形解析部11と、スプリングバック解析部12と、置換成形データ生成部14との間で直接入出力される場合は、このファイル格納部16は、必ずしも必要では無い。
スプリングバック量出力画面19上に表示されるコンタ図は、置換成形データ生成部14による置換成形データに基づいて、スプリングバック解析部12によるスプリングバック量計算を繰り返し行いながら、形状や応力分布の置換というスプリングバック対策の結果を視覚的に判断することが可能である。
図4は、本発明の一実施例によるスプリングバック原因部位特定処理のスプリングバック発生原因特定処理のフローチャートを示す。
ステップS101では、成形条件入力部18に成形条件が入力される。次に、ステップS102に進む。
ステップS102では、プレス成形解析部11が、成形条件で規定された被加工物に対して数値解析処理を行い、プレス成形する製品の成形後の応力、歪値の分布を計算する。次に、ステップS103に進む。
ステップS103では、置換成形データ生成部14で、成形データの被加工物における置換対象領域となる領域が決定される。この置換対象領域は、形状や応力分布が置換可能な十分な大きさを有する領域とされる。そして、置換成形データ生成部14は、形状応力分布データテーブルT1から、置換する形状や応力分布データを選択して、その形状や応力分布データで成形データの置換対象領域を置換して、置換成形データ14を、スプリングバック解析部12に渡す。次に、ステップS104に進む。
ステップS104では、置換成形データ14について、スプリングバック量を算出する。次に、ステップS105に進み、同時にステップS107でスプリングバック量の結果がコンタ表示などにより画面表示される。
ステップS105では、スプリングバック量が許容値以内か判定を行う。許容値以内であれば、本処理を終了する。許容値以上であれば、ステップS107に進む。
ステップS107では、置換対象領域、置換する形状データや応力分布の少なくとも1つを変更する。ここでは、置換対象領域のみの変更を行ってもよく、形状データ又は応力分布の変更だけを行っても良く、それら双方を同時に行っても良い。そして、ステップS103に戻る。ステップS103〜S107の処理は、スプリングバック量が許容値以下になるような収束計算により行うことが可能で、許容値以下になるまで繰り返される。
なお、本処理は、予めスプリングバック量の許容値を限定せず、置換対象領域、置換する形状データや応力分布の全ての組み合わせケースについて、ステップS104のスプリングバック解析を行うことで、スプリングバック量が最小となるケースを計算するようにしても良い。
また、上記説明においては、スプリングバック量を目的変数とし、置換対象領域、形状データ、応力分布が操作変数とする収束計算の問題であるが、それらの操作変数の数が非常に大きくなると、解空間が非常に大きいため、最適解や許容値以下となる解を見つけるのが困難な場合もある。そのような場合は、遺伝的アルゴリズムや、ニューラルネットなどの良く知られたアルゴリズムを使用して最適解等を求めても良い。
図5は、本発明の一実施形態によるスプリングバック対策位置特定装置のハードウェア構成図を示す。上述したプレス成形解析部11、スプリングバック解析部12、置換成形データ生成部14、部分残留応力除去処理部21、における各処理は、プログラム100に規定され、そのプログラム100をコンピュータ90に実行させても良い。コンピュータ90は、必要な処理を実行するCPU91、処理結果を格納するメモリ92(例えば、RAM(Random Access Memory))、ディスプレイ93、例えば、キーボードやマウスのような入力装置94、ハードディスク95、CD/DVDドライブのような外部記憶装置96、NIC(ネットワーク・インタフェース・カード)97、プリンタ98を備える。コンピュータ90は、NIC97に接続されたイーサネット(登録商標)ケーブルにより構成されるネットワーク99を介して、他のコンピュータ90Aと接続可能である。
プログラム100は、記録媒体に保存され、外部記憶装置96からローディングされ、もしくは、他のコンピュータ90Aからネットワーク99を介してダウンロードされ、CPU91の制御によって、コンピュータ90のハードディスク95に保存される。次に、保存されたプログラム100は、CPU91によって、実行され、実行プロセス又はスレッドとしてメモリ92に格納される。例えば、プレス成形解析部11、スプリングバック解析部12、置換成形データ生成部14又は部分残留応力除去処理部21における各処理が、それぞれ実行プロセス又はスレッドととなり、各実行プロセス又はスレッド間で上述したデータファイル、又は、データが入出力される。また、それらの各実行プロセス又はスレッドは、他のコンピュータ90Aに分散して存在し、各処理がコンピュータ90と他のコンピュータ90Aによって分散処理されても良い。
また、図3に示される成形条件入力部18、スプリングバック量出力画面19は、それぞれ、入力装置94、ディスプレイ93であっても良い。上述したファイル格納部16は、ハードディスク95であっても良い。プログラム100は、ハードディスク95に保存しても良い。そして、ディスプレイ93に出力された上述のコンタ図は、プリンタ98に出力することが可能である。
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。
図6は、本発明の実施例によるスプリングバック解析の対象となるハット型断面形状部品を示す図であり、(a)はその斜視図、(b)はその断面図であり、ウェブ面、側壁1、2、フランジ1、2から構成される。成形条件は、金属板の性状として、板厚1.6mm、引張強さ780MPa級の高強度鋼板のデータを用いた。プレス成形解析部11による数値解析は有限要素法LS-DYNAを用い、スプリングバック解析部12によるスプリングバック解析は、有限要素法LS-DYNAを用いた。
図7は、本発明の実施例による置換するビードと応力分布のデータテーブルを示す図である。本実施例においては、3つの形状を有するビードと応力分布を用いた。
図8は、本発明の実施例による被加工体の領域分割を示す図である。図示のように、図7に示した形状に合うように、被加工物のビードと応力分布の形状が配置可能な領域において、形状が配置可能な数に領域分割される。また、分割された領域には、番号としてn=1、2、...、nのように位置番号が配番される。
図9は、本発明の実施例による被加工体の指定領域全てに形状及び応力を配置した図である。図10は、本発明の実施例による断面位置とねじれ量を定義した図である。ここでは、このねじれ量をスプリングバック量とする。なお、ビードや応力等の置換処理を行わない初期状態において、スプリングバック量は、5.60mmである。
図11は、本発明の実施例による被加工体の指定領域にビード及び領域を配置した図である。検討ケース1として、被加工体のn=1@1(初期位置番号)で示される位置に、ビードを配置した場合、応力を配置した場合、ビードと応力を配置した場合について数値解析を行った。使用した形状は、図7に示す形状No.A12w3d(深さ3mm)であり、スプリングバック量は、ビード置換、応力置換、ビードと応力置換のそれぞれにおいて、5.58mm、5.64mm、5.62mmであった。
図12は、本発明の実施例による被加工体の指定領域にビード及び領域を配置した図である。検討ケース2として、被加工体のn=2@1(2番目の位置番号)で示される位置に、ビードを配置した場合、応力を配置した場合、ビードと応力を配置した場合について数値解析を行った。スプリングバック量は、ビード置換、応力置換、ビードと応力置換のそれぞれにおいて、5.57mm、5.64mm、5.62mmであった。このように、スプリングバック量が、許容値に満たない場合等は、位置番号を順に進めて検討を行うこともできる。
図13は、本発明の実施例による最もスプリングバック量が小さい1つのビード等を配置した図である(第1のスプリングバック量低減の対策)。検討ケース3として、被加工体のn=best@1で示される位置に、ビードを配置した場合、応力を配置した場合、ビードと応力を配置した場合について数値解析を行った。スプリングバック量は、ビード置換、応力置換、ビードと応力置換のそれぞれにおいて、5.22mm、4.26mm、4.03mmであった。このように、1つの位置に置換処理を行った場合の最もスプリングバック量が小さい場合、28%のスプリングバックが改善された。
図14は、本発明の実施例による最もスプリングバック量が小さい1つのビード等の配置に2つめのビード等を配置した図である。検討ケース4として、被加工体のn=1@2、n=best@1で示される位置に、ビードを配置した場合、応力を配置した場合、ビードと応力を配置した場合について数値解析を行った。スプリングバック量は、ビード置換、応力置換、ビードと応力置換のそれぞれにおいて、5.21mm、4.34mm、4.11mmであった。このように、1つのビード等の配置の最適例に加えて2つめのビード等を配置するに置換処理を行った場合、27%のスプリングバックが改善された(第2のスプリングバック量低減の対策)。
図15は、本発明の実施例による最もスプリングバック量が小さい1つのビード等の配置に2つめのビード等を配置した図である。検討ケース5として、被加工体のn=2@2、n=best@1で示される位置に、ビードを配置した場合、応力を配置した場合、ビードと応力を配置した場合について数値解析を行った。スプリングバック量は、ビード置換、応力置換、ビードと応力置換のそれぞれにおいて、5.23mm、4.32mm、4.09mmであった。このように、1つのビード等の配置の最適例に加えて2つめのビード等を2番目の位置番号に配置する置換処理を行った場合、27%のスプリングバックが改善された。このように、スプリングバック量が、許容値に満たない場合等は、位置番号を順に進めて検討を行うこともできる。
図16は、本発明の実施例による被加工体の指定領域にn回ビード等を配置した図である。検討ケース6として、1つのビード等を配置したとき、最もスプリングバック量が小さくなった位置n=best@1の次に、2つめのビード等を配置して最もスプリングバック量が小さくなった位置n=best@2という置換処理をn回行った例である。スプリングバック量は、ビード置換、応力置換、ビードと応力置換のそれぞれにおいて、3.22mm、1.60mm、1.51mmであった。このように、n回最適な位置を探索して繰り返す置換処理を行った場合、73%のスプリングバックが改善された。
さらに、検討ケース7として、図16で発見したn個の位置に、図16とは異なる形状No.A12w3d(深さ4mm)に置換した場合の検討を行った。その場合、スプリングバック量は、ビード置換、応力置換、ビードと応力置換のそれぞれにおいて、3.20mm、1.54mm、1.46mmであった。このように、n回最適な位置を探索して繰り返す置換処理を行った場合、74%のスプリングバックが改善された。
図17は、本発明の実施例による被加工体の指定領域に実ビードを配置した図である。検討ケース8として、図16に示された位置に、実際のビードを配置して、数値解析を行った。図16に示したように、小さなビードを配置した場所に、実際の大きなビードを配置しても、スプリングバック量は、1.60mmであり、72%のスプリングバックが改善された。このように、上述したビード等の配置位置の検討に基づき、実際のビードを配置した場合でも、同等のスプリングバックの削減を図ることが可能である。
表1に、上述したケース1〜8についてのスプリングバックの結果を示す。
このように、本発明は、スプリングバック発生位置を特定することに加えて、その対策までも算出することを可能にする。
以上に例を挙げて示したように、本発明は、被加工物のスプリングバック対策までも提供することを可能とする。
このように、本発明によるスプリングバック対策位置特定装置は、従来は、実際の装置を用いてスプリングバックの検討を行っていたが、数値解析によりスプリングバック対策位置を特定できるので、成形部材の設計段階でのテスト工数及び費用を極めて減少させるものである。また、このようなスプリングバック対策位置特定装置は、被加工物全般に適用されることが期待されることから、産業界において多大な利益をもたらす。
以上説明した実施形態は典型例として挙げたに過ぎず、その各実施形態の構成要素を組合せること、その変形及びバリエーションは当業者にとって明らかであり、当業者であれば本発明の原理及び請求の範囲に記載した発明の範囲を逸脱することなく上述の実施形態の種趣の変形を行えることは明らかである。
従来のスプリングバックへの対応を示す成形部材の断面模式図である。 スプリングバックによる変形の発生原因となる部位を探る従来の方法を例示する斜視図である。 本発明の一実施形態によるスプリングバック対策位置特定装置の機能構成図を示す。 本発明の一実施形態によるスプリングバック発生部位特定処理のフローチャートである。 本発明の一実施形態によるスプリングバック対策位置特定装置のハードウェア構成図である。 本発明の実施例によるスプリングバック解析の対象となるハット型断面形状部品を示す図である。 本発明の実施例による置換するビードと応力分布のデータテーブルを示す図である。 本発明の実施例による被加工体の領域分割を示す図である。 本発明の実施例による被加工体の指定領域全てに形状及び応力を配置した図である。 本発明の実施例による断面位置とねじれ量を定義した図である。 本発明の実施例による被加工体の指定領域にビード及び領域を配置した図である。 本発明の実施例による被加工体の指定領域にビード及び領域を配置した図である。 本発明の実施例による最もスプリングバック量が小さい1つのビード等を配置した図である。 本発明の実施例による最もスプリングバック量が小さい1つのビード等の配置に2つめのビード等を配置した図である。 本発明の実施例による最もスプリングバック量が小さい1つのビード等の配置に2つめのビード等を配置した図である。 本発明の実施例による被加工体の指定領域にn回ビード等を配置した図である。 本発明の実施例による被加工体の指定領域に実ビードを配置した図である。
符号の説明
10A,10B スプリングバック対策位置特定装置
11 プレス成形解析部
12 スプリングバック解析部
14 置換成形データ生成部
16 ファイル格納部
18 成形条件入力部
19 スプリングバック量出力画面

Claims (20)

  1. プレス成形品の成形条件を数値解析して、プレス成形品の成形データを算出するプレス成形解析ステップと、
    プレス成形品の成形データのうち、プレス成形品の少なくとも一部の領域を選定し、当該選定領域の形状と、当該選定領域の応力分布との少なくとも1つを所定のデータで置換した置換成形データを算出する置換成形データ生成ステップと、
    前記置換成形データを数値解析して、スプリングバック量を算出するスプリングバック量算出ステップと、
    を有することを特徴とするスプリングバック対策位置特定方法。
  2. 前記選定領域の位置又は数を変えて、前記置換成形データ生成ステップ及び前記スプリングバック量算出ステップを繰り返す請求項1に記載のスプリングバック対策位置特定方法。
  3. 前記スプリングバック量が、所定値以下となるか判断するステップをさらに有する請求項1又は2に記載のスプリングバック対策位置特定方法。
  4. 前記置換成形データ生成ステップは、所定値以下のスプリングバック量を与える1又は複数の領域の形状と、当該選定領域の応力分布との少なくとも1つを、その置換した所定のデータで置換し、更に前記選定領域の位置又は数を変えて、前記置換成形データ生成ステップ及び前記スプリングバック量算出ステップを繰り返す請求項3記載のスプリングバック対策位置特定方法。
  5. 前記プレス成形品の成形データを、所定の領域で分割するステップをさらに有し、
    前記置換成形データ生成ステップは、前記所定の領域で分割した領域の全てについて、前記置換成形データを算出する請求項1〜4のいずれか一項に記載のスプリングバック対策位置特定方法。
  6. 前記所定のデータは、前記選択領域毎に、形状および応力分布の少なくとも1つが異なる請求項1〜5のいずれか一項に記載のスプリングバック対策位置特定方法。
  7. プレス成形品の成形条件を数値解析して、プレス成形品の成形データを算出するプレス成形解析部と、
    プレス成形品の成形データのうち、プレス成形品の少なくとも一部の領域を選定し、当該選定領域の形状と、当該選定領域の応力分布との少なくとも1つを所定のデータで置換した置換成形データを生成する置換成形データ生成部と、
    前記置換成形データを数値解析して、スプリングバック量を算出するスプリングバック解析部と、
    を有することを特徴とするスプリングバック対策位置特定装置。
  8. 前記選定領域の位置又は数を変えて、前記置換成形データ生成部は、前記置換成形データを算出し、及び、前記スプリングバック解析部は、スプリングバック量算出を繰り返す請求項7に記載のスプリングバック対策位置特定装置。
  9. 前記置換成形データ生成部は、前記スプリングバック量が、所定値以下となるかを判断する請求項7又は8に記載のスプリングバック対策位置特定装置。
  10. 前記置換成形データ生成部は、所定値以下のスプリングバック量を与える1又は複数の領域の形状と、当該選定領域の応力分布との少なくとも1つを、その置換した所定のデータで置換し、更に前記選定領域の位置又は数を変えて、前記置換成形データ生成部は、前記置換成形データを算出し、及び、前記スプリングバック解析部は、スプリングバック量算出を繰り返す請求項9記載のスプリングバック対策位置特定装置。
  11. 前記置換成形データ生成部は、前記プレス成形品の成形データを、所定の領域で分割し、かつ、前記所定の領域で分割した領域の全てについて、前記置換成形データを生成する請求項7〜10のいずれか一項に記載のスプリングバック対策位置特定装置。
  12. 前記所定のデータは、前記選択領域毎に、形状および応力分布の少なくとも1つが異なる請求項7〜11のいずれか一項に記載のスプリングバック対策位置特定装置。
  13. プレス成形品の成形条件を数値解析して、プレス成形品の成形データを算出するプレス成形解析手順と、
    プレス成形品の成形データのうち、プレス成形品の少なくとも一部の領域を選定し、当該選定領域の形状と、当該選定領域の応力分布との少なくとも1つを所定のデータで置換した置換成形データを算出する置換成形データ生成手順と、
    前記置換成形データを数値解析して、スプリングバック量を算出するスプリングバック量算出手順と、
    をコンピュータに実行させるスプリングバック対策位置特定プログラム。
  14. 前記選定領域の位置と数を変えて、前記置換成形データ生成手順及び前記スプリングバック量算出手順を繰り返す請求項11に記載のスプリングバック対策位置特定プログラム。
  15. 前記スプリングバック量が、所定値以下となるか判断する手順をさらに有する請求項11又は12に記載のスプリングバック対策位置特定プログラム。
  16. 前記置換成形データ生成手順は、所定値以下のスプリングバック量を与える1又は複数の領域の形状と、当該選定領域の応力分布との少なくとも1つを、その置換した所定のデータで置換し、更に前記選定領域の位置又は数を変えて、前記置換成形データ生成手順及び前記スプリングバック量算出手順を繰り返す請求項15記載のスプリングバック対策位置特定プログラム。
  17. 前記プレス成形品の成形データを、所定の領域で分割する手順をさらに有し、
    前記置換成形データ生成手順は、前記所定の領域で分割した領域の全てについて、前記置換成形データを生成する請求項13〜16のいずれか一項に記載のスプリングバック対策位置特定プログラム。
  18. 前記所定のデータは、前記選択領域毎に、形状および応力分布の少なくとも1つが異なる請求項13〜17のいずれか一項に記載のスプリングバック対策位置特定プログラム。
  19. プレス成形の成形条件を数値解析してプレス成形品の成形データを算出するプレス成形解析プログラム、及び、該成形データを数値解析してスプリングバック量を算出するスプリングバック解析プログラムと、データ入出力が可能であるスプリングバック対策位置特定プログラムであって、
    前記プレス成形解析プログラムから、成形データを取得する手順と、
    プレス成形品の成形データのうち、プレス成形品の少なくとも一部の領域を選定し、当該選定領域の形状と、当該選定領域の応力分布との少なくとも1つを所定のデータで置換した置換成形データを算出する置換成形データ生成手順と、
    前記スプリングバック解析プログラムに、前記置換成形データを出力する手順、
    をコンピュータに実行させることを特徴とするスプリングバック対策位置特定プログラム。
  20. 請求項13〜19の何れか1項に記載のプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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