JP2008081542A - ポリアリ−レンスルフィド樹脂の製造方法 - Google Patents

ポリアリ−レンスルフィド樹脂の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】反応容器中に有機極性溶媒及び固形物質が共存する所謂不均一系で、スルフィド化剤とポリハロ芳香族化合物とをアルカリ触媒下に反応させてPAS樹脂を製造する際に、該反応容器の腐食と摩耗を良好に防ぎ、反応容器の減肉を防止できるPAS樹脂の製造方法を提供すること。
【解決手段】反応容器中にN−メチルピロリドン及び固形物質が共存する系で、アルカリ金属硫化物とジクロルベンゼンとを反応させるポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法であって、前記反応容器の接液部がジルコニウムで構成されている装置を用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属に対する腐食性や磨耗性の高い原材料を用いた、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法に関するものである。
ポリフェニレンスルフィド樹脂に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂は、耐熱性、耐薬品性等に優れ、電気電子部品、自動車部品、給湯機部品、繊維、フィルム用途等に幅広く利用されている。
これらの各種用途では、機械強度や溶融押出成形性といった観点から、近年、特に線状高分子量ポリアリーレンスルフィド樹脂の要求が高い。かかる線状高分子量ポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する方法は、例えば、含水アルカリ金属硫化物、該含水アルカリ金属硫化物1モル当たり1モル未満のN−メチルピロリドン、及び、ポリハロ芳香族化合物を混合し、該混合物を共沸脱水することで微粒子状の無水アルカリ金属硫化物を含むスラリー状の組成物を得、次いで、これを加熱して重合させることでポリアリーレンスルフィド樹脂を生産効率良く線状高分子量ポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する方法が知られている(特許文献1参照)。然し乍ら、この製造方法における前記共沸脱水により生成したアルカリ金属硫化物は、高硬度でかつ非常に微細な粒径を有する微粒子の形状をとり、ポリハロ芳香族化合物等の有機溶媒中に分散されたものであるため、反応容器に用いられている部材の磨耗を招き、反応容器の減肉を進め、メンテナンス頻度の増加や、設備費用の高騰を招いていた。更に、前記した共沸脱水する工程で用いられている含水アルカリ金属硫化物は、一般に金属に対する腐食性が極めて高い為に、前記した反応容器の減肉の進行が著しいという不具合を有していた。
一方、含水アルカリ金属硫化物の有する金属腐食性の問題を解決する方法として、溶媒中で含水アルカリ金属硫化物を脱水し、次いで、生成したアルカリ金属硫化物とポリハロ芳香族化合物とを重合させることによりポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する方法において、前記した含水アルカリ金属硫化物を脱水する工程において、接液部がチタンで構成されている反応容器を用いる方法が知られている(特許文献2参照)。然し乍ら、かかるチタンで構成されている反応容器は、含水アルカリ金属硫化物の有する金属腐食性に対して、ある程度の効果は認められるものの未だ十分なレベルには達していないものであった。更に、チタンで構成されている反応容器は、耐摩耗性が著しく低く、前記したスラリー状の組成物を反応溶液とする反応系に使用した場合に、反応容器の減肉を防止することができないものであった。
特開平8−231723号公報 特公平3−39537号公報
本発明が解決しようとする課題は、反応容器中に有機極性溶媒及び固形物質が共存する所謂不均一反応系で、スルフィド化剤とポリハロ芳香族化合物とをアルカリ触媒下に反応させてポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する際に、該反応容器の腐食と摩耗を良好に防ぎ、反応容器の減肉を防止できるポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法を提供することにある
本発明者は上記の課題を解決するために鋭意試験研究を重ねた結果、反応容器内で固形物質の存在下にポリハロ芳香族化合物(a)とスルフィド化剤(b)とをアルカリ雰囲気下に反応させるポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法であって、前記反応容器の接液部がジルコニウムで構成されている装置を用いることにより上記課題を解決出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、反応容器内で、固形物質の存在下、ポリハロ芳香族化合物(a)とスルフィド化剤(b)とをアルカリ雰囲気中で反応させるポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法であって、前記した反応容器の接液部がジルコニウムで構成されている装置を用いることを特徴とするポリアリ−レンスルフィド樹脂の製造方法に関する。
本発明によれば、反応容器中に固形物質が存在する所謂不均一反応系で、スルフィド化剤とポリハロ芳香族化合物とをアルカリ触媒下に反応させてポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する際に、該反応容器の腐食と摩耗を良好に防ぎ、反応容器の減肉を防止できるポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法を提供できる。
本発明で用いる反応容器は、反応液との設液部がジルコニウムで構成されていることを特徴としている。
ここで用いる反応容器は、内部に撹拌翼を具備するバッチ式反応容器、及び、連続式反応容器などが挙げられる。
バッチ式反応容器は、該反応容器内部に前記のスラリー状の反応液を保持し得る容器であればよく、例えば、上部蓋部、胴部、及び底部分から構成され、かつ、必要に応じて密閉可能な構造を有するものが挙げられ、内部に攪拌翼、邪魔板、温度制御用蛇管を有する構造のものが攪拌効率に優れる点から好ましい。ここで、攪拌翼としては、アンカー型攪拌翼、タービン型攪拌翼、スクリュー型攪拌翼、ダブルヘリカル型攪拌翼等が挙げられる。
また、該反応容器は、具体的には、更に温度センサーや圧力センサー、レベルゲージ等の各種測定機器を備えており、また、その外部には蒸気留出ライン、コンデンサー、デカンター、留出液戻しライン、排気ライン、硫化水素捕捉装置等が配設されたものであることが好ましい。
一方、連続式反応容器は、例えば、可動部分のない複数のミキシングエレメントが内部に固定されている管状反応器が挙げられ、該管状反応器を直列に連結させた重合ライン、或いは、複数の管状反応器を連結する共に反応液の一部を前記管状反応器の原料投入口に環流させる構造を有する連続環状重合ラインを形成するものが挙げられる。これらの連続式反応容器は、プランジャーポンプなどにより原料のフィード及び反応液の移送を行うことがきできる。
また、前記した反応液との設液部とは、反応容器の内部において前記の有機極性溶媒、固形物質、ポリハロ芳香族化合物(a)、スルフィド化剤(b)、アルカリ触媒等を有するスラリー状の反応液が接する反応容器内部壁面の一部乃至全部である。
これらの中でも、反応の制御が容易であり、工業的生産が容易である点からバッチ式反応容器であることが好ましい。
本発明で使用する反応容器は、その接液部、好ましくは反応容器内壁の全てがジルコニウムで構成されていることを特徴としている。ここで用いられるジルコニウムは、耐食性と耐磨耗性の面から、その純度が95質量%以上のものが好ましく、より好ましくは97質量%以上、更に特に好ましくは99質量%以上のものである。
また、ジルコニウムで構成される反応容器内壁面は、例えば1)ジルコニウム製圧延板2)圧延圧着法、拡散接合法、爆発圧着法等によってジルコニウム圧延板と炭素鋼等の鋼板とを貼り合わせて製造されたクラッド鋼板、3)炭素鋼製圧延板の表面にチタン製圧延板を配し、さらにジルコニウム製圧延板を配した3層構造を有するクラッド鋼板が挙げられる。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法は、以上詳述した反応容器内で、固形物質の存在下に、ポリハロ芳香族化合物(a)及びスルフィド化剤(b)をアルカリ雰囲気中で、かつ、反応させることにより、本発明の如く不均一系の反応において反応容器の優れた耐摩耗性を発現すると共に、該反応容器の腐食をも同時に防止できるものである。
ここで用いる固形物質は、例えば、本発明の原料成分として用いるスルフィド化剤(b)のうち、固形のアルカリ金属硫化物や固形のアルカリ金属水硫化物や、充填材が挙げられる。
また、充填材は、ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合工程から共存させることで、ポリアリーレンスルフィド樹脂との均一分散させることが可能となる。ここで用いる充填材は、例えば、繊維状充填材、無機充填材等が挙げられる。繊維状充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、シランガラス繊維、セラミック繊維、アラミド繊維、金属繊維、チタン酸カリウム、炭化珪素、硫酸カルシウム、珪酸カルシウム等の繊維、ウォラストナイト等の天然繊維等が使用出来る。また無機充填材としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、クレー、バイロフェライト、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、マイカ、雲母、タルク、アタルパルジャイト、フェライト、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラスビーズ等が挙げられる。
従って、固形物質の存在下、ポリハロ芳香族化合物(a)とスルフィド化剤(b)とをアルカリ雰囲気中で反応させる具体的な方法は、
1)充填材の存在下に、ポリハロ芳香族化合物(a)とスルフィド化剤(b)とを、アルカリ雰囲気中で反応させる方法、及び
2)ポリハロ芳香族化合物(a)と固形のスルフィド化剤(b)とを、アルカリ雰囲気中で反応させる方法、
が挙げられる。上記1)及び2)の反応における、反応液中の固形分濃度は10〜80質量%、特に35〜65質量%であることが耐摩耗性の性能を維持し乍ら生産性が良好となる点から好ましい。
ここで用いるポリハロ芳香族化合物(a)は、例えば、p−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン、o−ジハロベンゼン、1,2,3−トリハロベンゼン、1,2,4−トリハロベンゼン、1,3,5−トリハロベンゼン、1,2,3,5−テトラハロベンゼン、1,2,4,5−テトラハロベンゼン、1,4,6−トリハロナフタレン、2,5−ジハロトルエン、1,4−ジハロナフタレン、1−メトキシ−2,5−ジハロベンゼン、4,4’−ジハロビフェニル、3,5−ジハロ安息香酸、2,4−ジハロ安息香酸、2,5−ジハロニトロベンゼン、2,4−ジハロニトロベンゼン、2,4−ジハロアニソール、p,p’−ジハロジフェニルエーテル、4,4’−ジハロベンゾフェノン、4,4’−ジハロジフェニルスルホン、4,4’−ジハロジフェニルスルホキシド、4,4’−ジハロジフェニルスルフィド、及び、上記各化合物の芳香環に炭素原子数1〜18のアルキル基を核置換基として有する化合物が挙げられる。また、上記各化合物中に含まれるハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子であることが望ましい。
これらの中でも、線状高分子量ポリアリーレンスルフィド樹脂を効率的に製造できることを特徴とする点から、2官能性のジハロ芳香族化合物が好ましく、とりわけ最終的に得られるポリアリーレンスルフィド樹脂の機械的強度や成形性が良好となる点からp−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン及び4,4’−ジクロロジフェニルスルホンが好ましく、特にp−ジクロロベンゼンが好ましい。また、線状ポリアリーレンスルフィド樹脂のポリマー構造の一部に分岐構造を持たせたい場合には、上記ジハロ芳香族化合物と共に、1,2,3−トリハロベンゼン、1,2,4−トリハロベンゼン、又は1,3,5−トリハロベンゼンを一部併用することが好ましい。
一方、スルフィド化剤(b)は、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム等の化合物の液状アルカリ金属硫化物又は固体状含水アルカリ金属硫化物、水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウム及び水硫化セシウム等の化合物の液状アルカリ金属水硫化物又は固体状含水アルカリ金属水硫化物が挙げられる。
また、前記スルフィド化剤(b)は、前記液状アルカリ金属水硫化物又は固体状含水アルカリ金属水硫化物と、アルカリ金属水酸化物とを予め反応させることにより固形アルカリ金属硫化物を調整して反応に供してもよい。
ここで用いるアルカリ金属水酸化物は、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、及びこれらの濃度20質量%以上の水溶液が挙げられる。これらの中でも特に水酸化リチウムと水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが好ましく、特に水酸化ナトリウムが好ましい。
また、アルカリ雰囲気中とは、反応スラリーがアルカリ性を示すことを意味するものであり、必要に応じて反応スラリーに前記したアルカリ金属水酸化物を適宜加えることが好ましい。
また、上記1)及び2)の方法では、有機溶媒を用いることができる。ここで使用できる有機溶媒は、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と略記する。)、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン酸、ε−カプロラクタム、N−メチル−ε−カプロラクタム等の環状アミド尿素類;スルホラン、ジメチルスルホラン等のスルホラン類;ホルムアミド、アセトアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチル尿素、N−ジメチルプロピレン尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン酸のアミド尿素等のアミド類;及びラクタム類;スルホラン、ジメチルスルホラン等のスルホラン類;ベンゾニトリル等のニトリル類;メチルフェニルケトン等のケトン類等が挙げられる。
これらの中でも、特に、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と略記する。)、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン酸、ε−カプロラクタム、N−メチル−ε−カプロラクタム等の環状アミド尿素類、スルホラン、ジメチルスルホラン等のスルホラン類等の加水分解によって開環し得る脂肪族環状構造を有する化合物、中でも、N−メチル−2−ピロリドンが、溶解性に優れ、また、反応を促進する効果がある点から好ましい。
以上詳述した上記1)及び2)の反応の中でも、後者2)の方法が本発明の効果が顕著に現れる点、更に、最終的に得られるポリアリーレンスルフィド樹脂の分子量が高くなる点から好ましい。すなわち、上記2)の反応の場合、固形のアルカリ金属硫化物や固形のアルカリ金属水硫化物等のスルフィド化剤(b)は、強アルカリであると共に、粒子の硬度が高いため反応容器内壁面の腐食及び磨耗が進行しやすく、本発明の効果が顕著に現れることとなる。
また、上記2)の方法は、とりわけ、下記工程1及び工程2を必須とする方法がポリアリーレンスルフィド樹脂の高分子量化の点から好ましい。
工程1:加水分解によって開環し得る脂肪族環状構造を有する化合物(c1)、非加水分解性有機溶媒、含水アルカリ金属硫化物(b1)を混合し、次いで、得られた混合液を脱水して、固形のアルカリ金属硫化物(b2)と、アルカリ金属水硫化物(b3)と、前記化合物(c1)の加水分解物のアルカリ金属塩(c2)とを含むスラリーを製造する工程。
工程2:次いで、接液部がジルコニウムで構成された反応容器内で、前記スラリーの存在下、ポリハロ芳香族化合物(a)と前記アルカリ金属水硫化物(b)と前記化合物(c1)の加水分解物のアルカリ金属塩(c2)とを反応させて重合を行う工程。
工程1の脱水処理及び工程2の反応乃至重合の各工程は、個別の反応容器を用いてもよいが、経済的な観点や、生産性に優れる点から、工程1から工程2へ移るときに反応容器の移し替えの不要となるように、接液部がジルコニウムで構成されている反応容器内で行うことが好ましい。
なお、ここで加水分解によって開環し得る脂肪族環状構造を有する化合物(c1)は、前記した、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と略記する。)、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン酸、ε−カプロラクタム、N−メチル−ε−カプロラクタム等の環状アミド尿素類、スルホラン、ジメチルスルホラン等のスルホラン類等の加水分解によって開環し得る脂肪族環状構造を有する化合物がいずれも使用できる。
ここで、前記工程1は、加水分解によって開環し得る脂肪族環状構造を有する化合物(c1)、非加水分解性有機溶媒、及び含水アルカリ金属硫化物(b1)を含む混合液を脱水して、固形のアルカリ金属硫化物(b2)と、アルカリ金属水硫化物(b3)と、前記化合物(c1)の加水分解物のアルカリ金属塩(c2)とを含むスラリーを製造する工程であり、これによりスルフィド化剤(b)であるアルカリ金属硫化物(b2)を固形分とするスラリーが得られる。
また、工程1では、含水アルカリ金属硫化物(b1)に対する加水分解によって開環し得る脂肪族環状構造を有する化合物(c1)の使用量を調節することで、前記スルフィド化剤(b)の固形分の含有率及び当該化合物(c1)の加水分解物の量を調整することができる。即ち、工程1は、例えば下記式(1)に示す通り、脱水処理によって含水アルカリ金属硫化物(b1)に含まれる水を除去すると共に、加水分解によって開環し得る脂肪族環状構造を有する化合物(c1)が加水分解し、同時にアルカリ金属水硫化物(b3)を形成する工程である。
ここで、前記したとおり、含水アルカリ金属硫化物(b1)は、含水アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物とを反応容器内で事前に予め反応させたものを用いてもよい。この反応を以下に示す。
Figure 2008081542

ここで、式(1)中、x及びyは(x+y)が0.1〜30を満足する数、zはMSH・xHOに対して当量未満、好ましくは0.01〜0.9であり、Mはアルカリ金属原子、Xは前記化合物(c1)、X’はその加水分解物を表す。
よって、含水アルカリ金属硫化物(b1)に対して加水分解によって開環し得る脂肪族環状構造を有する化合物(c1)を当量未満で使用した場合、前記スルフィド化剤(b)が固形分となって析出し、目的とするスラリーが得られる。
一方、加水分解によって開環し得る脂肪族環状構造を有する化合物(c1)の加水分解に供された水は、工程2において、ポリハロ芳香族化合物(a)とスルフィド化剤(b)が、反応後、前記化合物(c1)の加水分解物が閉環して該化合物(c1)に戻る際、反応系内に放出され、スラリー中の固形分であるアルカリ金属硫化物(b2)を溶解し、アルカリ金属水硫化物(b3)と前記化合物(c1)の加水分解物に変換する。
従って、工程1において前記脂肪族環状構造を有する化合物(c1)の仕込み量を調整することで、反応系内の固形分であるアルカリ金属硫化物(b2)の量、及びアルカリ金属水硫化物(b3)の量を調節することができる。このようにスルフィド化剤(b)を固形分のままスラリー状に存在させ、次いで、工程2においてスラリー状態のまま不均一系で反応させることで前記脂肪族環状構造を有する化合物(c1)の加水分解物のアルカリ金属塩の量を低減できて、ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合時における副反応を抑制、高分子量化できる。
また、ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合時における副反応を抑制、高分子量化するため、工程1において前記脂肪族環状構造を有する化合物(c1)の仕込み量は、含水アルカリ金属硫化物(b1)に対して加水分解によって開環し得る脂肪族環状構造を有する化合物(c1)を当量未満、中でも含水アルカリ金属硫化物(b1)1モルに対して加水分解によって開環し得る脂肪族環状構造を有する化合物(c1)を0.02〜0.9モルとなる割合で用いることが好ましい。特に、かかる効果が顕著なものとなる点から含水アルカリ金属硫化物1モルに対して加水分解によって開環し得る脂肪族環状構造を有する化合物(c1)を0.04〜0.4モルとなる割合で用いることが好ましい。
また、工程1において用いられる非加水分解性有機溶媒は、水に不活性な有機溶媒であればよく、例えば、汎用の脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類等を用いることができるが、本発明では特に、工程2における反応に供せられるポリハロ芳香族化合物(a)を前記非加水分解性有機溶媒として用いることが、次の工程2の反応乃至重合が良好となって生産効率が飛躍的に向上する点から好ましい。
非加水分解性有機溶媒の使用量は特に制限されるものではないが、工程1で得られるスラリーの流動性が良好となり、かつ、非加水分解性有機溶媒としてポリハロ芳香族化合物(a)を用いる場合には、工程2における反応性や重合性に優れる点からアルカリ金属硫化物1モル当たり、0.2〜5.0モルの範囲が好ましく、特に0.3〜2.0モルの範囲が好ましい。ポリハロ芳香族化合物(a)は続くポリアリーレンスルフィド樹脂の製造工程でそのまま使用でき、続くポリアリーレンスルフィド樹脂の製造工程で必要に応じて不足の場合は追加して使用してもよいし、過剰な場合は削減して使用してもよい。
その他、ポリハロ芳香族化合物(a)の適当な選択組合せによって2種以上の異なる反応単位を含む共重合体を得ることもでき、例えばp−ジクロルベンゼンと4,4’−ジクロルベンゾフェノン又は4,4’−ジクロルジフェニルスルホンとを組み合わせて使用することが耐熱性に優れたポリアリーレンスルフィド樹脂が得られるので特に好ましい。
工程1で用いる含水アルカリ金属硫化物(b1)は、前記したスルフィド化剤(b)で例示したもののうち、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム等の化合物の含水物が何れも使用することができる。その固形分濃度は10〜80質量%、特に35〜65質量%であることが好ましい。
また、工程1では含水アルカリ金属硫化物の他に、更にアルカリ金属水酸化物を加えて脱水処理を行うことにより、固形のアルカリ金属硫化物(b2)の生成が一層促進される。
工程1では、前記した反応容器に含水アルカリ金属硫化物(b1)を仕込んで脱水処理を行う方法の他、前記した通り、予め反応容器内で含水アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物とを反応させて含水アルカリ金属硫化物(b1)を生成させてもよい。
一方、前記アルカリ金属水酸化物は、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、及びこれらの濃度20質量%以上の水溶液が挙げられる。これらの中でも特に水酸化リチウムと水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが好ましく、特に水酸化ナトリウムが好ましい。アルカリ金属水酸化物の使用量は、固形のアルカリ金属硫化物(b2)の生成が促進される点から、アルカリ金属水硫化物1モル当たり、0.8〜1.2モルの範囲が好ましく、特に0.9〜1.1モルの範囲がより好ましい。
工程1の脱水処理を行う具体的方法は、加水分解によって開環し得る脂肪族環状構造を有する化合物(c1)、非加水分解性有機溶媒、含水アルカリ金属硫化物(b1)、更に必要に応じて前記アルカリ金属水酸化物の所定量を反応容器に仕込むか、或いは、加水分解によって開環し得る脂肪族環状構造を有する化合物(c1)、非加水分解性有機溶媒、含水アルカリ金属水硫化物(b1)、及びアルカリ金属水酸化物の所定量を反応容器に仕込み、この仕込みとほぼ同時に含水アルカリ金属硫化物を生成させた後、前記含水アルカリ金属硫化物の沸点以上で、かつ、水が共沸により除去される温度、具体的には80〜220℃の範囲、好ましくは100〜200℃の範囲にまで加熱して脱水する方法が挙げられる。この際、共沸留出した水と非加水分解性有機溶媒とをデカンタ−で分離し、非加水分解性有機溶媒のみを反応系内に戻すか、共沸留出した量に相当する量の非加水分解性有機溶媒を追加仕込みするか、或いは、共沸留去する量以上の非加水分解性有機溶媒を予め過剰に仕込んでおいてもよい。
また、脱水初期の反応系内は、ポリハロ芳香族化合物(a)と溶融した含水アルカリ金属硫化物(b1)との2層になっているが、脱水が進行するとともに無水アルカリ金属硫化物が微粒子状となって析出し、非加水分解性有機溶媒中に均一に分散する。さらに、反応系内の加水分解によって開環し得る脂肪族環状構造を有する化合物(c1)のほぼ全てが加水分解するまで継続して脱水処理を行う。
このように本発明の工程1は、脱水処理によって水が反応系外に排出されると共に、加水分解によって開環し得る脂肪族環状構造を有する化合物(c1)が加水分解されるため、同時に無水の固形アルカリ金属硫化物(b2)が析出する工程である。よって、反応系内に前記加水分解に過剰な水分が存在した場合、工程2において加水分解によって開環し得る脂肪族環状構造を有する化合物(c1)を追加添加した場合に、反応系内に当該化合物(c1)の加水分解物のアルカリ金属塩が多量に生成してしまう為、副反応を誘発して目的であるポリアリーレンスルフィド樹脂の高分子量化が阻害され易くなる。従って、工程1における脱水処理後の反応系内の水分量は極力少ない方が好ましく、具体的には、最終的に得られるスラリー中の固形のアルカリ金属硫化物(b2)の含有量が、工程1で用いた含水アルカリ金属硫化物1モル当たり0.4〜0.98モルとなる範囲、好ましくは0.6〜0.96モルとなる範囲であること、特に実質的に水分を含有しないことが好ましい。すなわち、前記のとおり本工程1において固形の無水アルカリ金属硫化物(b2)のスラリーが得られる。
また、工程1で用いる反応容器は、必ずしもジルコニウムで構成される反応容器内壁面を有するものではないが、該工程1は通常反応容器内壁面の摩耗が顕著なものとなる点から工程2と同様にジルコニウムで構成された内壁面を有する反応容器であることが好ましい。
次に、工程1によって得られたスラリーは、工程2として、ポリハロ芳香族化合物(a)と前記アルカリ金属水硫化物(b3)と前記化合物(c1)の加水分解物のアルカリ金属塩(c2)との反応に供される。
工程2の反応におけるポリハロ芳香族化合物(a)は、工程2において反応系内に添加してもよいが、前記したとおり、工程1において非加水分解性有機溶媒としてポリハロ芳香族化合物(a)を用いた場合には、そのまま工程2の反応を行うことができる。
また、前記アルカリ金属水硫化物(b3)は、前記式(1)で示されるとおり、前記化合物(c1)の加水分解物が形成される際に、同時に生成されるものであり、工程1を経て得られた前記スラリー中に存在するものである。従って、前記アルカリ金属水硫化物(b3)は工程1を経てスラリー中に存在するものをそのまま用いて工程2の反応を行うことができる。
そしてアルカリ金属水硫化物(b3)がポリハロ芳香族化合物(a)との反応によって消費された後、該反応に関与した前記化合物(c1)の加水分解物が、下記式(3)に示すように、閉環して水を放出し、ついで、これがスラリー中の固形のアルカリ金属硫化物(b2)を溶解させて、再度、アルカリ金属水硫化物(b3)を生成する。よって、工程2の反応はこのようなサイクルによって固形のアルカリ金属硫化物(b2)が徐々に必要量のアルカリ金属水硫化物(b3)と前記化合物(c1)の加水分解物のアルカリ金属塩(c2)とに変換される為、副反応が抑制されることになる。
Figure 2008081542

(式中、Mはアルカリ金属原子を表す。)
工程2の反応におけるポリハロ芳香族化合物(a)は、工程2において反応系内に添加してもよいが、前記したとおり、工程1において非加水分解性有機溶媒としてポリハロ芳香族化合物(a)を用いた場合には、そのまま工程2の反応を行うことができる。
上記2)の方法は、このような前記化合物(c1)の加水分解、それに続く閉環による水の放出というサイクルによって、工程2の反応乃至重合が進行していくため、工程2において改めて水を反応系内に加える必要はないものの、本発明ではスラリー中の固形のアルカリ金属硫化物(b2)の溶解を促進させる点から、反応系内の潜在的な水分量の総計が、工程1で用いた含水アルカリ金属水硫化物(b)に対して当量未満、好ましくは当該含水アルカリ金属水硫化物(b)1モルに対して0.02〜0.9モル、更に好ましくは0.04〜0.4モルとなる範囲内となるように加えることが好ましい。
このように工程1において得られた固形のアルカリ金属硫化物(b2)は、上記式(3)に示すように、逐次アルカリ金属水硫化物(b3)へ変換されてポリハロ芳香族化合物(a)との反応に供されるものであるから、該アルカリ金属硫化物は反応の進行に従って、反応系内の含有量が減少するものの、工程2においてもスラリーの状態で常時存在している。本発明では、反応容器の液接面がジルコニウムで構成されているため、このようなスラリー状の反応液であっても何ら腐食や磨耗が生じないため、工業的に効率的に生産することができる。
また、工程2における反応乃至重合反応の原料である前記アルカリ金属水硫化物(b3)は、前記した通り、スラリー中の固形分であるアルカリ金属硫化物(b2)を順次アルカリ金属水硫化物(b3)と前記化合物(c1)の加水分解物のアルカリ金属塩(c2)とへ変換されることで順次反応系に供給されるものであるが、必要により、工程2の任意の段階でアルカリ金属水硫化物(b3)を別途添加してもよい。ここで使用し得るアルカリ金属水硫化物(b3)は、例えば、水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウム及び水硫化セシウム、またはこれらの水和物等が挙げられる。これらの中でも水硫化リチウムと水硫化ナトリウムが好ましく、特に水硫化ナトリウムが好ましい。
また、スラリーの固形分を構成するアルカリ金属硫化物中に微量存在するアルカリ金属水硫化物(b3)、チオ硫酸アルカリ金属と反応させるために、少量のアルカリ金属水酸化物を加えてもよい。
工程2の反応及び重合を行う具体的方法は、工程1を経て得られたスラリーに、必要によりポリハロ芳香族化合物(a)、アルカリ金属水硫化物(b3)、及び有機溶媒を加え、180〜300℃の範囲、好ましくは200〜280℃の範囲で反応乃至重合させることが好ましい。重合反応は定温で行うこともできるが、段階的にまたは連続的に昇温しながら行うこともできる。
また、工程2におけるポリハロ芳香族化合物(a)の量は、具体的には、反応系内の硫黄原子1モル当たり、0.8〜1.2モルの範囲が好ましく、特に0.9〜1.1モルの範囲がより高分子量のポリアリーレンスルフィド樹脂が得られる点から好ましい。
工程2の反応乃至重合反応において、更に有機溶媒として前記化合物(c1)を加えてもよい。反応系内に存在する前記化合物(c1)の総使用量は、反応系内に存在する硫黄原子1モル当たり0.6〜10モルとなるように前記化合物(c1)を追加することが好ましく、更にはポリアリーレンスルフィド樹脂のより一層の高分子量化が可能となる点から2.0〜6.0モルの範囲が好ましい。また、重合釜容積当たりの反応体濃度の増加という観点からは、反応系内に存在する硫黄原子1モル当たり1.0〜3.0モルの範囲が好ましい。
また、工程2における反応乃至重合は、その初期においては、反応系内の水分量は実質的に無水状態となる。即ち、工程1における脱水工程で前記化合物(c1)の加水分解に供された水、及び、その後必要に応じて添加されて前記化合物(c1)の加水分解に供された水は、前記したとおり、再度、該加水分解物が閉環反応されることで放出される。また、これと同時にアルカリ金属水硫化物(b3)の生成と、前記化合物(c1)の加水分解に再び利用されることになるため、見かけ上反応系内に水は存在せず、スラリー中の固形分が消失した時点で、前記化合物(c1)の加水分解も進行しなくなるため、見かけ上、反応系内に水が認められる様になる。
従って、本発明の工程2では前記固形のアルカリ金属硫化物(b2)の消費率が10%の時点における該重合スラリーが実質的に無水状態であることが好ましい。
また、工程1の脱水工程及び工程2の重合工程何れにおいても、不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。使用する不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等が挙げられ、中でも経済性及び取扱いの容易さの面から窒素が好ましい。
重合工程により得られたポリアリーレンスルフィド樹脂を含む反応混合物の後処理方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、(1)重合反応終了後、先ず反応混合物をそのまま、あるいは酸または塩基を加えた後、減圧下または常圧下で溶媒を留去し、次いで溶媒留去後の固形物を水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類などの溶媒で1回または2回以上洗浄し、更に中和、水洗、濾過および乾燥する方法、或いは、(2)重合反応終了後、反応混合物に水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素などの溶媒(使用した重合溶媒に可溶であり、且つ少なくともポリアリーレンスルフィド樹脂に対しては貧溶媒である溶媒)を沈降剤として添加して、ポリアリーレンスルフィド樹脂や無機塩等の固体状生成物を沈降させ、これらを濾別、洗浄、乾燥する方法、或いは、(3)重合反応終了後、反応混合物に反応溶媒(又は低分子ポリマーに対して同等の溶解度を有する有機溶媒)を加えて撹拌した後、濾過して低分子量重合体を除いた後、水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類などの溶媒で1回または2回以上洗浄し、その後中和、水洗、濾過および乾燥をする方法等が挙げられる。
尚、上記(1)〜(3)に例示したような後処理方法において、ポリアリーレンスルフィド樹脂の乾燥は真空中で行なってもよいし、空気中あるいは窒素のような不活性ガス雰囲気中で行なってもよい。
この様にして得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、そのまま各種成形材料等に利用可能であるが、空気あるいは酸素富化空気中あるいは減圧条件下で熱処理を行い、酸化架橋させてもよい。この熱処理の温度は、目標とする架橋処理時間や処理する雰囲気によっても異なるものの、180℃〜270℃の範囲であることが好ましい。また、前記熱処理は押出機等を用いてポリアリーレンスルフィド樹脂の融点以上で、ポリアリーレンスルフィド樹脂を溶融した状態で行ってもよいが、ポリアリーレンスルフィド樹脂の熱劣化の可能性が高まるため、融点プラス100℃以下で行うことが好ましい。
以上詳述した本発明の製造方法によって得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形の如き各種溶融加工法により、耐熱性、成形加工性、寸法安定性等に優れた成形物に加工することが出来る。
また、本発明では前記した充填材を、原料成分とともに、反応容器に仕込み反応を行うことによってポリアリーレンスルフィド樹脂中に取り込むこともできるが、前記した工程1及び工程2からなる前記方法2)によって製造する場合、ポリアリーレンスルフィド樹脂に対して、更に強度、耐熱性、寸法安定性等の性能を更に改善するために、押し出し混練機等を用いて前記充填材を混合してポリアリーレンスルフィド樹脂組成物として使用することが出来る。
更に、本発明により得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、用途に応じて、適宜、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ四弗化エチレン、ポリ二弗化エチレン、ポリスチレン、ABS樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、液晶ポリマー等の合成樹脂、或いは、ポリオレフィン系ゴム、弗素ゴム、シリコーンゴム等のエラストマーを配合したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物として使用してもよい。
本発明の製造方法で得られるポリアリーレンスルフィド樹脂は、ポリアリーレンスルフィド樹脂の本来有する耐熱性、寸法安定性等の諸性能も具備しているので、例えば、コネクタ、プリント基板及び封止成形品等の電気・電子部品、ランプリフレクター及び各種電装品部品などの自動車部品、各種建築物、航空機及び自動車などの内装用材料、あるいはOA機器部品、カメラ部品及び時計部品などの精密部品等の射出成形若しくは圧縮成形、若しくはコンポジット、シート、パイプなどの押出成形、又は引抜成形などの各種成形加工用の材料として、或いは繊維若しくはフィルム用の材料として幅広く有用である。
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
(耐食性の判定基準)
「化学装置便覧:化学工学協会編、昭和45年発行」に準拠し金属材料の耐食性を評価した。判定基準は以下である。
浸食度0.05mm/年以下のもの:「完全耐食」で判定「○」
浸食度0.05〜1.00mm/年のものは「耐食性あり」で判定「△」
浸食度1.00mm/年以上のものは「耐食性なし」で判定「×」
(溶融粘度の測定法)
得られた重合体の溶融粘度(η)は、島津製作所製フローテスターを用い、300℃、20kgf/cm、L/D=10で6分間保持した後に測定した値である。
実施例1
(無水硫化ナトリウムの製造工程)
圧力計、温度計、コンデンサ−、デカンタ−を連結したジルコニウム製撹拌翼付きジルコニウムライニングの1リットルオートクレーブにp−ジクロロベンゼン(以下、p−DCBと略す)220.5g(1.5モル)、NMP29.7g(0.3モル)、68%NaSH123.6g(1.5モル)、及び48%NaOH125.0gを仕込み、撹拌しながら窒素雰囲気下で173℃まで2時間掛けて昇温して、水123.5gを留出させた後、釜を密閉した。その際、共沸により留出したDCBはデカンタ−で分離して、随時釜内に戻した。脱水終了後の釜内は微粒子状の無水硫化ナトリウム組成物がDCB中に分散した状態であった。なお、前記の攪拌翼及びライニングに用いたジルコニウムはASTM R60702規格適合品(純度:99.2質量%)を用いた。
上記と同一の装置を用い、同一の操作を10回繰り返した後、ジルコニウム製攪拌翼の重量は40.9839gから40.9814gに減少した。反応装置の接液部の表面に変化は見られなかった。上記工程におけるジルコニウムの浸食度は0.03mm/年以下の割合で減少し、前記の耐食性の判定基準に従って判定すると「完全耐食」で判定「○」であった。
(PPSの製造工程)
前記「無水硫化ナトリウムの製造工程」と同じ操作を行い無水硫化ナトリウムを含むスラリーを製造した後、内温を160℃に冷却し、NMP415.8g(4.2モル)を仕込み、220℃まで昇温し、2時間撹拌した後、250℃まで昇温し、1時間撹拌した。最終圧力は2.8kg/cmであった。冷却後、得られたスラリーを3リットルの水に注いで80℃で1時間撹拌した後、濾過した。このケーキを再び3リットルの温水で1時間撹拌し、洗浄した後、濾過した。この操作を4回繰り返し、濾過後、熱風乾燥機内で120℃で一晩乾燥して白色の粉末状のPPS154gを得た。このポリマーの溶融粘度は66Pa・sであった。
比較例1
(無水硫化ナトリウムの製造工程)
圧力計、温度計、コンデンサ−、デカンタ−を連結したチタン製撹拌翼付きチタンライニングの1リットルオートクレーブにp−ジクロロベンゼン(以下、p−DCBと略す)220.5g(1.5モル)、NMP29.7g(0.3モル)、68%NaSH123.6g(1.5モル)、及び48%NaOH125.0gを仕込み、撹拌しながら窒素雰囲気下で173℃まで2時間掛けて昇温して、水123.5gを留出させた後、釜を密閉した。その際、共沸により留出したDCBはデカンタ−で分離して、随時釜内に戻した。脱水終了後の釜内は微粒子状の無水硫化ナトリウム組成物がDCB中に分散した状態であった。なお、前記の攪拌翼及びライニングに用いたチタンはASTM B265−99 Grade 1規格適合品を用いた。
上記と同一の装置を用い、同一の操作を10回繰り返した後、チタン製攪拌翼の重量は26.9412gから26.9152gに減少した。反応装置の接液部の表面は艶が無くなり白色に変化した。上記工程におけるチタンの浸食度は0.46mm/年の割合で減少し、耐食性の判定結果は「耐食性あり」で判定「△」となり、反応容器に用いられている部材の磨耗を招き、反応容器の減肉を進め、メンテナンス頻度、及び設備費用の増加を招く。
(PPSの製造工程)
前記「無水硫化ナトリウムの製造工程」と同じ操作を行い無水硫化ナトリウムを含むスラリーを製造した後、内温を160℃に冷却し、NMP415.8g(4.2モル)を仕込み、220℃まで昇温し、2時間撹拌した後、250℃まで昇温し、1時間撹拌した。最終圧力は2.8kg/cmであった。冷却後、得られたスラリーを3リットルの水に注いで80℃で1時間撹拌した後、濾過した。このケーキを再び3リットルの温水で1時間撹拌し、洗浄した後、濾過した。この操作を4回繰り返し、濾過後、熱風乾燥機内で120℃で一晩乾燥して白色の粉末状のPPS154gを得た。このポリマーの溶融粘度は64Pa・sであった。

Claims (5)

  1. 反応容器内で、固形物質の存在下、ポリハロ芳香族化合物(a)とスルフィド化剤(b)とをアルカリ雰囲気中で反応させるポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法であって、前記した反応容器の反応液との接液部がジルコニウムで構成されている装置を用いることを特徴とするポリアリ−レンスルフィド樹脂の製造方法。
  2. 前記固形物質が固形アルカリ金属硫化物であり、前記スルフィド化剤がアルカリ金属水硫化物である請求項1記載の製造方法。
  3. 加水分解によって開環し得る脂肪族環状構造を有する化合物(c1)、非加水分解性有機溶媒、含水アルカリ金属硫化物(b)を混合し、次いで、得られた混合液を脱水することによって、固形のアルカリ金属硫化物(b2)と、アルカリ金属水硫化物(b3)と、前記化合物(c1)の加水分解物のアルカリ金属塩(c2)とを含むスラリーを製造し(工程1)、次いで、
    該スラリーの存在下、ポリハロ芳香族化合物(a)と前記アルカリ金属水硫化物(b3)と前記化合物(c1)の加水分解物のアルカリ金属塩(c2)とを反応させて重合を行う(工程2)
    請求項2記載の製造方法。
  4. 前記非加水分解性有機溶媒がポリハロ芳香族化合物(a)である請求項1または3記載のポリアリ−レンスルフィド樹脂の製造方法。
  5. 反応液中の固形物質を10〜80質量%となる割合で含有する請求項1〜4の何れか1つに記載の製造方法。


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