JP2008081450A - フェノール類二量体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】三価マンガンとフェノール類とを反応させてフェノール類の二量体を製造するにあたり、三価マンガンとフェノール類との反応を効率よく行うことを可能にする。
【解決手段】三価マンガンを含有する液とフェノール類を含有する液とを混合してフェノール類の二量体を製造するフェノール類二量体の製造方法であって、三価マンガン含有液を、昇温速度0.2℃/秒以上、昇温時間5分以内にて液温50℃以上まで昇温する第1工程と、該昇温した三価マンガン含有液を直ちにフェノール類含有液と混合して反応させる第2工程とを有することを特徴とするフェノール類二量体の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】三価マンガンを含有する液とフェノール類を含有する液とを混合してフェノール類の二量体を製造するフェノール類二量体の製造方法であって、三価マンガン含有液を、昇温速度0.2℃/秒以上、昇温時間5分以内にて液温50℃以上まで昇温する第1工程と、該昇温した三価マンガン含有液を直ちにフェノール類含有液と混合して反応させる第2工程とを有することを特徴とするフェノール類二量体の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、三価マンガンとフェノール類とを反応させてフェノール類の二量体を製造する方法に関する。なお、本発明において、フェノール類の二量体とは、二分子のフェノール類が芳香族炭素原子同士で結合してなるビフェノール類及びその酸化生成物であるジフェノキノン類を総称して言うものである。本発明におけるフェノール類の二量体は、ビフェノール類とジフェノキノン類の両方を含む混合物でもよく、またはいずれか一方でもよい。
3価マンガンを酸化剤として用いて基質を重合させることにより重合反応生成物を得る方法は、従来、広く用いられている。
例えば非特許文献1には、シイタケから抽出・精製したマンガンペルオキシダーゼをポリマーに固定化し、これを用いて生成した三価マンガン(MnIII)キレートをクロロフェノール類の酸化剤として利用することが記載されている。
特許文献1の実施例2には、メソポーラスシリカ多孔体に固定化したマンガンペルオキシダーゼを用いてマロン酸塩溶液中で2価マンガンを酸化して3価マンガンキレートを生成し、これを用いて2,6−ジメトキシフェノールを酸化する方法が記載されている。
しかしながら、本文献においては、マンガンペルオキシダーゼ活性の評価のために、2,6−ジメトキシフェノールを用いており、2,6−ジメトキシフェノールを用いて、2,6−ジメトキシフェノールの2量体を製造することに関しては、一切記載がない。
特許文献2には、水性媒質中で、ジアルコキシフェノールと、マンガンペルオキシダーゼと、過酸化水素と、二価のマンガンイオンとを反応させてテトラアルコキシキノンを含む生成物を得る方法が記載されている。
特許文献3には、水性媒質中で、ジアルキルフェノールと、マンガンペルオキシダーゼと、過酸化水素と、二価のマンガンイオンとを反応させてテトラアルキルキノンを含む生成物を得る方法が記載されている。
特許文献4には、オキシダーゼを固定化した酵素充填層を有するカラム中で、ジアルキルフェノール類、又はジアルコキシフェノールを反応させて、フェノール類の2量体を製造する方法が記載されている。
グラブスキー(Anthony C.Grabski)ほか2名、バイオテクノロジー・アンド・バイオエンジニアリング誌(Biotechnology and Bioengineering)、(米国)、John Wiley & Sons,inc.、1998年10月20日、第60巻、第2号、第206−215頁 特開2001−190269号公報
特開2005−229944号公報
特開2005−261258号公報
特開2006−180745号公報
例えば非特許文献1には、シイタケから抽出・精製したマンガンペルオキシダーゼをポリマーに固定化し、これを用いて生成した三価マンガン(MnIII)キレートをクロロフェノール類の酸化剤として利用することが記載されている。
特許文献1の実施例2には、メソポーラスシリカ多孔体に固定化したマンガンペルオキシダーゼを用いてマロン酸塩溶液中で2価マンガンを酸化して3価マンガンキレートを生成し、これを用いて2,6−ジメトキシフェノールを酸化する方法が記載されている。
しかしながら、本文献においては、マンガンペルオキシダーゼ活性の評価のために、2,6−ジメトキシフェノールを用いており、2,6−ジメトキシフェノールを用いて、2,6−ジメトキシフェノールの2量体を製造することに関しては、一切記載がない。
特許文献2には、水性媒質中で、ジアルコキシフェノールと、マンガンペルオキシダーゼと、過酸化水素と、二価のマンガンイオンとを反応させてテトラアルコキシキノンを含む生成物を得る方法が記載されている。
特許文献3には、水性媒質中で、ジアルキルフェノールと、マンガンペルオキシダーゼと、過酸化水素と、二価のマンガンイオンとを反応させてテトラアルキルキノンを含む生成物を得る方法が記載されている。
特許文献4には、オキシダーゼを固定化した酵素充填層を有するカラム中で、ジアルキルフェノール類、又はジアルコキシフェノールを反応させて、フェノール類の2量体を製造する方法が記載されている。
グラブスキー(Anthony C.Grabski)ほか2名、バイオテクノロジー・アンド・バイオエンジニアリング誌(Biotechnology and Bioengineering)、(米国)、John Wiley & Sons,inc.、1998年10月20日、第60巻、第2号、第206−215頁
しかし三価マンガンの溶液はかなり不安定で、二価のマンガンに還元したり、二価のマンガンと四価のマンガンとに不均化するなどして分解しやすいという問題がある。このため、三価マンガンを酸化剤として工業的に利用するには、三価マンガンと基質との反応を効率よく行うことが可能な方法の開発が望まれる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、三価マンガンとフェノール類とを反応させてフェノール類の二量体を製造するにあたり、三価マンガンとフェノール類との反応を効率よく行うことが可能なフェノール類二量体の製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は、三価マンガンを含有する液(以下、「三価マンガン含有液」という。)とフェノール類を含有する液(以下、「フェノール類含有液」という。)とを混合してフェノール類の二量体を製造するフェノール類二量体の製造方法であって、三価マンガン含有液を、昇温速度0.2℃/秒以上、昇温時間5分以内にて液温50℃以上まで昇温する第1工程と、該昇温した三価マンガン含有液を直ちにフェノール類含有液と混合して反応させる第2工程とを有することを特徴とするフェノール類二量体の製造方法を提供する。
本発明によれば、三価マンガン含有液を昇温してから直ちにフェノール類含有液と混合して反応を行うので、効率よく行うことが可能であり、基質であるフェノール類の反応率の向上(未反応品の残存の低減)と、生成物中の二量体の選択率の向上(三量体以上(オリゴマー及びポリマー)の生成物の低減)を図ることができる。
以下、最良の形態に基づき、本発明を詳しく説明する。
本発明に係るフェノール類二量体の製造方法は、三価マンガン含有液とフェノール類含有液とを混合してフェノール類の二量体を製造するフェノール類二量体の製造方法であって、三価マンガン含有液を、昇温速度0.2℃/秒以上、昇温時間5分以内にて液温50℃以上まで昇温する第1工程と、該昇温した三価マンガン含有液を直ちにフェノール類含有液と混合して反応させる第2工程とを有することを特徴とする。
本発明に係るフェノール類二量体の製造方法は、三価マンガン含有液とフェノール類含有液とを混合してフェノール類の二量体を製造するフェノール類二量体の製造方法であって、三価マンガン含有液を、昇温速度0.2℃/秒以上、昇温時間5分以内にて液温50℃以上まで昇温する第1工程と、該昇温した三価マンガン含有液を直ちにフェノール類含有液と混合して反応させる第2工程とを有することを特徴とする。
本発明において、基質として使用されるフェノール類は、三価マンガンとの反応によって二量体を与えるものであれば特に限定されない。具体例としては、2,6−ジアルキルフェノールや2,6−ジアルコキシフェノールなどの2,6−二置換フェノール類が挙げられる。その他、各種置換位置の一置換フェノール類、二置換フェノール類、三置換フェノール類等であってもよい。
フェノール類の芳香環上の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。フェノール類が複数の置換基を有する場合、これら複数の置換基は、同じ種類あるいは異なる種類のいずれでもよい。
アルキル基は、直鎖状、または分岐鎖状であり得る。具体例としては、炭素数が1〜4のアルキル基であるメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基及びtert−ブチル基が挙げられる。アルコキシ基は、直鎖状、または分岐鎖状であり得る。具体例としては、炭素数が1〜4のアルコキシ基であるメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びtert−ブトキシ基が挙げられる。
アルキル基は、直鎖状、または分岐鎖状であり得る。具体例としては、炭素数が1〜4のアルキル基であるメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基及びtert−ブチル基が挙げられる。アルコキシ基は、直鎖状、または分岐鎖状であり得る。具体例としては、炭素数が1〜4のアルコキシ基であるメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びtert−ブトキシ基が挙げられる。
一般に、フェノール類と三価マンガンとの反応(式(I)を参照。なお、式(I)には、フェノール類が2位及び6位にそれぞれ置換基R1、R2を有する式を例示した。)では、フェノール類(式(I)の(B))が三価マンガンにより酸化されてラジカル化したのち、ラジカル同士がカップリングすることによってビフェノール類(式(I)の(B))が生成する。また、ビフェノール類が三価マンガンによってさらに酸化されることによってジフェノキノン類(式(I)の(C))が生成する。このとき、ラジカルが直ちにカップリングしないまま存在すると、ラジカル化していないフェノール類の分子と反応したり、目的物であるビフェノール類やジフェノキノン類と反応して、三量体以上のオリゴマー及びポリマーが生成するものと考えられる。
なお、式(I)ではフェノール類二量体の結合位置が芳香環のパラ位同士(p,p′)の場合を例示したが、基質として用いるフェノール類の置換基の種類や置換位置などにより、他の結合位置(o,p′やo,o′)のフェノール類二量体が得られる場合もあり得る。
なお、式(I)ではフェノール類二量体の結合位置が芳香環のパラ位同士(p,p′)の場合を例示したが、基質として用いるフェノール類の置換基の種類や置換位置などにより、他の結合位置(o,p′やo,o′)のフェノール類二量体が得られる場合もあり得る。
このため、本発明者は、フェノール類の反応率を向上するとともに二量体の選択率を向上するためには、フェノール類を三価マンガンと混合したとき速やかに反応させてラジカル化し、かつラジカル同士を直ちにカップリングさせることが重要と考え、本発明を完成させたのである。
本発明において、第1工程は、三価マンガン含有液を、昇温速度0.2℃/秒以上、昇温時間5分以内にて液温50℃以上まで昇温する。
第1工程にて用意する三価マンガン含有液としては、特に限定されるものではないが、三価マンガン化合物を媒質に溶解する方法、二価マンガンを含有する液(以下、「二価マンガン含有液」という。)を用意して媒質中で二価マンガンを三価マンガンに酸化する方法などによって調製することができる。具体例としては、マンガンペルオキシダーゼの存在下で、二価マンガン含有液と酸化剤とを供給することで、三価マンガン含有液を得ることができる。
第1工程にて用意する三価マンガン含有液としては、特に限定されるものではないが、三価マンガン化合物を媒質に溶解する方法、二価マンガンを含有する液(以下、「二価マンガン含有液」という。)を用意して媒質中で二価マンガンを三価マンガンに酸化する方法などによって調製することができる。具体例としては、マンガンペルオキシダーゼの存在下で、二価マンガン含有液と酸化剤とを供給することで、三価マンガン含有液を得ることができる。
原料となる二価マンガン化合物としては、使用する媒質への溶解性や安定性、価格等を考慮して適宜選択すればよく、例えば、酢酸マンガン(Mn(CH3COO)2)、硫酸マンガン(MnSO4)等が例示される。
媒質としては、水、pH緩衝液、水もしくはpH緩衝液と有機溶媒との混合溶液が用いられる。pH緩衝液としては、例えば、マロン酸緩衝液、シュウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、酢酸緩衝液、コハク酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、等が挙げられる。
媒質が水と有機溶媒の混合溶液である場合、有機溶媒の割合は10体積%以下、好ましくは5体積%以下である。ここで、利用しうる有機溶媒の代表的な例としては、ヘキサン、トリクロロメタン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ブタノール、エタノール、メタノール、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ギ酸メチル、ジメチルホルムアミド、アセトン、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール等が挙げられる。
媒質としては、水、pH緩衝液、水もしくはpH緩衝液と有機溶媒との混合溶液が用いられる。pH緩衝液としては、例えば、マロン酸緩衝液、シュウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、酢酸緩衝液、コハク酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、等が挙げられる。
媒質が水と有機溶媒の混合溶液である場合、有機溶媒の割合は10体積%以下、好ましくは5体積%以下である。ここで、利用しうる有機溶媒の代表的な例としては、ヘキサン、トリクロロメタン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ブタノール、エタノール、メタノール、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ギ酸メチル、ジメチルホルムアミド、アセトン、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール等が挙げられる。
使用可能なマンガンペルオキシダーゼとしては、例えば、ファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)、ファネロカエテ・ソルディダ(Phanerochaete sordida)、カイガラタケ(Lenzites betulinus)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、シイタケ(Lentinus edodes)等の担子菌類が生産するリグニン分解酵素を挙げることができる。これらのマンガンペルオキシダーゼは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。マンガンペルオキシダーゼは、適宜の鉱物や無機物、ポリマー等からなる担体に固定化したものを用いると、得られた三価マンガン含有液からマンガンペルオキシダーゼを分離することが容易になり、好ましい。
酸化剤としては、過酸化水素、メチル過酸化物、エチル過酸化物の過酸化物などが挙げられるが、反応性、経済性の点で過酸化水素が好ましい。酸化剤の配合量は、マンガンペルオキシダーゼとの反応性や安定性などを考慮して、適宜調整されうる。
酸化剤としては、過酸化水素、メチル過酸化物、エチル過酸化物の過酸化物などが挙げられるが、反応性、経済性の点で過酸化水素が好ましい。酸化剤の配合量は、マンガンペルオキシダーゼとの反応性や安定性などを考慮して、適宜調整されうる。
三価マンガン含有液には、三価マンガンイオン(Mn3+)を錯体として安定化させるため、有機酸を含有させることが好ましい。なかでも、効率よくキレート錯体を形成し、三価マンガンを安定化する効果が大きいことから、用いる有機酸は、マロン酸、シュウ酸及び酒石酸のいずれかであることが好ましい。当該有機酸は、二価マンガンを三価マンガンに酸化した後、または酸化反応中に添加してもよいし、二価マンガン含有液のうちに添加しておいてもよい。また、有機酸は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、用いる有機酸の量(濃度)は、モル比にして、三価マンガンの2倍以上であることが、安定な錯体が得られるため好ましい。
本発明のフェノール類二量体の製造方法では、基質であるフェノール類との反応に先だって、三価マンガン含有液を、昇温速度0.2℃/秒以上、昇温時間5分以内にて液温50℃以上まで昇温する第1工程を行う。三価マンガン含有液を液温50℃以上まで昇温することにより、第2工程における反応温度を50℃以上とすることができる。この結果、三価マンガン含有液とフェノール類含有液とを混合したときに、三価マンガンによるフェノール類のラジカル化が円滑に進行するので、フェノール類の反応率及びフェノール二量体の選択率を向上させることができる。
本発明において、三価マンガン含有液の昇温時間を5分以内とした理由は、本発明者が三価マンガン含有液の熱的安定性を検討したところ、水溶液中の三価マンガンイオンは、50℃において5分間で約10%程度分解し、75℃において5分間で約20%程度分解することを考慮して、5分以内を限度とした。
また、三価マンガン含有液の昇温速度を0.2℃/秒以上とした理由は、昇温速度0.2℃/秒で10℃から50℃まで昇温した場合に昇温時間が約3分(200秒)となることから、5分以内で50℃まで昇温するには、昇温速度を0.2℃/秒以上とすれば三価マンガンの分解を許容範囲に抑えられるためである。
ここで、昇温速度は、0.2℃/秒以上であれば、適宜選択した速度で行うことが可能であるが、例えば0.2〜2℃/秒である範囲の昇温速度を挙げることができる。
昇温時間は、5分以内であれば、適宜選択した時間内で行うことが可能であるが、例えば、0.01〜5分の昇温時間を挙げることができる。
液温は、50℃以上であれば、適宜選択した液温で行うことが可能であるが、例えば、50〜150℃の温度を挙げることができる。
また、三価マンガン含有液の昇温速度を0.2℃/秒以上とした理由は、昇温速度0.2℃/秒で10℃から50℃まで昇温した場合に昇温時間が約3分(200秒)となることから、5分以内で50℃まで昇温するには、昇温速度を0.2℃/秒以上とすれば三価マンガンの分解を許容範囲に抑えられるためである。
ここで、昇温速度は、0.2℃/秒以上であれば、適宜選択した速度で行うことが可能であるが、例えば0.2〜2℃/秒である範囲の昇温速度を挙げることができる。
昇温時間は、5分以内であれば、適宜選択した時間内で行うことが可能であるが、例えば、0.01〜5分の昇温時間を挙げることができる。
液温は、50℃以上であれば、適宜選択した液温で行うことが可能であるが、例えば、50〜150℃の温度を挙げることができる。
第1工程において、昇温前の三価マンガン含有液の液温は10℃以下であることが好ましい。昇温前の液温を10℃以下に保つことにより、昇温前の三価マンガンの分解を抑制することができるので、昇温前の三価マンガン含有液をタンク等に貯留しておくときに保存性が向上する。昇温前において三価マンガン含有液が凍結していると、昇温速度及び昇温時間の制御が困難になるので、三価マンガン含有液が流動性を有する温度(該含有液が水溶液の場合、ほぼ0℃以上)を保つことが好ましい。
第1工程において、三価マンガン含有液の昇温は、周囲が壁面に囲まれてなる断面積が3mm2以下の微小流路を通じて行うことが好ましい。具体例としては、チューブやパイプ等を用いた管路を用い、その周囲に熱媒体を供給して管路内の液体を昇温できるようにしてもよい。あるいは、複数本の微小な溝を形成した金属製プレートを1枚又は2枚以上積層して用いて構成したマイクロ熱交換器を用いることもできる。マイクロ熱交換器とは、ステンレス等の金属製プレートに溝加工して所望の流路を形成したマイクロデバイスを応用したものであり、第1の流体(被加熱流体)が流される流路と、第2の流体(熱媒体)が流される流路とを備え、被加熱流体と熱媒体との間で熱交換を可能にした装置である。
本発明において、第2工程は、第1工程で昇温した三価マンガン含有液を直ちにフェノール類含有液と混合して反応させる。
ここで、「直ちに」とは、昇温後の三価マンガン含有液について、放置したり再び冷却したりする操作を介在させることなく、フェノール類含有液との混合を行うという意味である。昇温後の三価マンガン含有液を放置すると、三価マンガンが徐々に分解していくため好ましくない。また、昇温後の三価マンガン含有液を再度冷却すると、昇温の効果が損なわれる。具体的な実施条件としては、第1工程において三価マンガン含有液の昇温を開始してから第2工程においてフェノール類含有液と混合するまでの時間を5分以内とすることが好ましい。第1工程において三価マンガン含有液の昇温を終了してから第2工程においてフェノール類含有液と混合するまでの時間は、好ましくは1分以内、より好ましくは3秒以内、さらに好ましくは1秒以内である。
ここで、「直ちに」とは、昇温後の三価マンガン含有液について、放置したり再び冷却したりする操作を介在させることなく、フェノール類含有液との混合を行うという意味である。昇温後の三価マンガン含有液を放置すると、三価マンガンが徐々に分解していくため好ましくない。また、昇温後の三価マンガン含有液を再度冷却すると、昇温の効果が損なわれる。具体的な実施条件としては、第1工程において三価マンガン含有液の昇温を開始してから第2工程においてフェノール類含有液と混合するまでの時間を5分以内とすることが好ましい。第1工程において三価マンガン含有液の昇温を終了してから第2工程においてフェノール類含有液と混合するまでの時間は、好ましくは1分以内、より好ましくは3秒以内、さらに好ましくは1秒以内である。
フェノール類含有液の溶媒としては、水や有機溶媒等が挙げられる。フェノール類の溶解性の観点からは有機溶媒が好ましく、また、三価マンガン含有液との混合性の観点からは水と相溶性を有する有機溶媒が好ましい。好ましい溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。
第2工程において、混合前のフェノール類含有液の液温は、50℃以上であることが好ましい。これは、フェノール類含有液の温度があまりに低いと、三価マンガン含有液と混合して得られる混合液の温度(すなわち反応温度)を50℃以上とすることができないおそれがあるためである。しかし、フェノール類含有液に比べて三価マンガン含有液の方が量が多い場合にはフェノール類含有液の温度の影響は小さいので、50℃以上の反応温度を確保できる場合は、混合前のフェノール類含有液の液温が50℃未満であってもよい。
第2工程において、三価マンガン含有液及びフェノール類含有液は、連続的に混合されることが好ましい。これは、混合するときに三価マンガン含有液の供給量とフェノール類含有液の供給量との比をなるべく一定にするためであり、これにより、三量体以上の生成物の副生を抑制して、二量体の選択率を向上することができる。具体的には、それぞれの流量を所定の範囲内で一定に保ちつつ混合することが好ましい。
なお、ほかの混合方法としては、三価マンガン含有液の流れに対してフェノール類含有液を一定の速度で断続的に混合する方法が挙げられる。断続的な混合は、例えば、滴下、噴出、チューブやノズル等の挿入等によって行うことができる。この場合には、該液体が添加される時間間隔を十分に短くすることで、連続的に混合した場合とほぼ同様な結果が得られる。
なお、ほかの混合方法としては、三価マンガン含有液の流れに対してフェノール類含有液を一定の速度で断続的に混合する方法が挙げられる。断続的な混合は、例えば、滴下、噴出、チューブやノズル等の挿入等によって行うことができる。この場合には、該液体が添加される時間間隔を十分に短くすることで、連続的に混合した場合とほぼ同様な結果が得られる。
第2工程において、三価マンガン含有液とフェノール類含有液とを混合した後の反応時間は、好ましくは3秒以内、より好ましくは1秒以内である。このためには、混合後の液温を50℃以上に保ちつつ、混合液中で三価マンガンとフェノール類とが十分に混ざり合うようにすれば短時間で反応を完了させることができる。混合後の反応時間がいちじるしく長くなる条件、例えば、三価マンガン含有液とフェノール類含有液との相溶性が低いために均一な混合が起こりにくい条件などは、好ましくない。
第2工程において、三価マンガン含有液は、周囲が壁面に囲まれてなる断面積が3mm2以下の微小流路を通じて供給されることが好ましい。これにより、三価マンガン含有液の温度や流量の制御が容易になる。また、フェノール類含有液は、周囲が壁面に囲まれてなる断面積が3mm2以下の微小流路を通じて供給されることが好ましい。これにより、フェノール類含有液の温度や流量の制御が容易になる。さらに、三価マンガン含有液とフェノール類含有液との混合液は、周囲が壁面に囲まれてなる断面積が3mm2以下の微小流路内で反応させることが好ましい。これにより、混合液の温度や流量の制御が容易になり、また、混合液の流れを安定化することができる。
上記の流路を備える装置の具体例としては、チューブやパイプ等を用いた管路、穴や溝等により流路を形成したデバイスなどを用いることができる。例えば、表面に1本又は複数本の溝を形成した金属製プレートを1枚または複数枚積層し、必要に応じて金属製プレート等の蓋を被せてなる装置(マイクロデバイス)が挙げられる。
上記の流路を備える装置の具体例としては、チューブやパイプ等を用いた管路、穴や溝等により流路を形成したデバイスなどを用いることができる。例えば、表面に1本又は複数本の溝を形成した金属製プレートを1枚または複数枚積層し、必要に応じて金属製プレート等の蓋を被せてなる装置(マイクロデバイス)が挙げられる。
第2工程を行う反応装置の一例として、図1に示すように、周囲が壁面に囲まれてなる断面積が3mm2以下の第1流路11と、この第1流路11の途中において略直角に合流しかつ周囲が壁面に囲まれてなる断面積が3mm2以下の第2流路12とを備える反応装置10が挙げられる。この反応装置10において、昇温された三価マンガン含有液を第1流路11の入口13から供給するとともに、フェノール類含有液を第2流路12の入口14から供給し、第1流路11と第2流路12との合流点15において三価マンガン含有液とフェノール類含有液とを混合することにより、第1流路11における前記合流点15より下流側の部分16において三価マンガンとフェノール類とを反応させることができる。反応生成物は、第1流路11の出口17から取り出すことができる。
三価マンガン含有液及びフェノール類含有液の流量は、三価マンガン含有液中の三価マンガンの濃度及びフェノール類含有液中のフェノール類の濃度にも依存するが、一般に、マンガンペルオキシダーゼを用いた三価マンガンの生成効率による制約から、三価マンガン含有液中の三価マンガンの濃度は低くせざるを得ない。このため、三価マンガンとフェノール類とが一定のモル比で混合されるためには、三価マンガン含有液の流量をフェノール類含有液の流量よりも多くする必要がある。
すなわち、図1に示すような反応装置10では、三価マンガン含有液の流路と、混合液の流路とが、直線状の第1流路11として連続しているため、三価マンガン含有液の流量がフェノール類含有液の流量に比べて十分に大きい場合、有利となる。また、比較的流量の小さいフェノール類含有液の流路が、比較的流量の大きい三価マンガン含有液の流路に対してほぼ直角に合流していることにより、三価マンガン含有液の流れに対してフェノール類含有液の流れが進入しやすく、混合が促進されるという効果も奏される。
三価マンガン含有液とフェノール類含有液とを混合した後、該混合液がフェノール類含有液の流路を逆流するのを防止するため、第1流路の断面積を第2流路11の断面積よりも大きく、すなわち、第2流路12の断面積を第1流路11の断面積よりも小さくすることが好ましい。また、第2流路12の断面積は1mm2以下であることが好ましい。また、三価マンガン含有液とフェノール類含有液との混合液の圧力損失が、フェノール類含有液の圧力損失よりも小さくなるように流すことが好ましい。
図2は、第2工程を行う反応装置の第2の例を示す。図2に示す反応装置20は、三価マンガン含有液が流される第1流路21と、フェノール類含有液が流される第2流路22と、混合液が流される第3流路26とを備える。これら流路21、22、26は、反応装置20の内部において、周囲が壁面に囲まれており、さらに3本の流路21、22、26が、合流点25においてY字型に接続されている。
図2に示す反応装置20を用いて第2工程を行うときには、昇温された三価マンガン含有液を第1流路21の入口23から供給するとともに、フェノール類含有液を第2流路22の入口24から供給し、第1流路21と第2流路22との合流点25において三価マンガン含有液とフェノール類含有液とを混合する。これにより、第3流路26において三価マンガンとフェノール類とを反応させ、さらに、反応生成物を含む混合物を、第3流路26の出口27から取り出すことができる。このような反応装置20において、第1流路21、第2流路22、及び第3流路26は、それぞれ断面積が3mm2以下であることが好ましい。より好ましくは、各流路21、22、26の断面積が1mm2以下である。
また、第2工程において、三価マンガン含有液とフェノール類含有液との混合液は、周囲が大気に囲まれてなる液柱を形成した状態で反応させることもできる。これにより、混合液中で生成したフェノール類2量体が混合液の溶媒から析出しても、流路の詰まりを防止することができる。
図3は、第2工程を行う反応装置の第3の例を示す。図3に示す反応装置30は、三価マンガン含有液が流される第1流路31と、フェノール類含有液が流される第2流路32とを備える。これらの流路31、32は、反応装置30の内部において、周囲が壁面に囲まれており、さらに2本の流路31、32が出口35付近で合流している。
図3に示す反応装置30を用いて第2工程を行うときには、昇温された三価マンガン含有液を第1流路31の入口33から供給するとともに、フェノール類含有液を第2流路32の入口34から供給し、これら流路31、32の出口35付近において三価マンガン含有液とフェノール類含有液とを混合する。これにより、三価マンガン含有液とフェノール類含有液との混合液は、周囲が大気に囲まれてなる液柱36を形成した状態で三価マンガンとフェノール類とを反応させることができる。このような反応装置30において、第1流路31及び第3流路32は、それぞれ断面積が3mm2以下であることが好ましい。より好ましくは、各流路31、32の断面積が1mm2以下である。
本発明において製造の目的とするフェノール類の二量体は、ビフェノール類及びジフェノキノン類である。これらは混合物であってもよく、またはビフェノール類とジフェノキノン類とのいずれか一方を目的としてもよい。ビフェノール類を最終的な目的化合物とするときに第2工程の反応によってジフェノキノン類が得られるときは、第2工程の後で生成物に還元剤を反応させて、ジフェノキノン類をビフェノール類へと還元する操作をしてもよい。この還元操作で用いられる還元剤は特に限定されず、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム等が挙げられる。また、ジフェノキノン類を最終的な目的化合物とするときに第2工程の反応によってビフェノール類が得られるときは、第2工程の後で生成物を酸化させて、ビフェノール類をジフェノキノン類へと酸化する操作をしてもよい。
ビフェノール類やジフェノキノン類は、各種化学品の合成原料などとして利用することができる。利用分野としては、エポキシ樹脂、難燃剤、酸化防止剤、ポリエステル、ポリカーボネート等の製造原料、その他芳香族ジオールが使用される他の用途に広く使用することができる。本発明の方法により得られるフェノール二量体を各種用途に使用する場合、生成物をそのまま用いてもよいし、あるいは公知の方法でフェノール二量体を精製して使用してもよい。
本発明の製造方法により得られるフェノール二量体は、上記の第2工程の生成物中において、基質であるフェノール類(単量体)の未反応品の残存量が少なく、二量体が高含有率で含まれる形態で得られる。したがって、本発明によれば、所望の純度のフェノール二量体を得るためのコスト低減や、製品の高品質化を図ることが可能になる。
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
図4に示す製造装置40を用いて、三価マンガン含有液とフェノール類含有液とを混合して反応を行った。
三価マンガン含有液41は、あらかじめマンガンペルオキシダーゼ(MnP)の作用で過酸化水素の共存下、酢酸マンガン(II)水溶液を酸化したものを用意した。MnPとして担体に固定化したものを用いた。フェノール類含有液との反応に使用する三価マンガン含有液41(この三価マンガン含有液41は、MnPの残留がないことを確認した。)は、三価マンガンの濃度が5.0mmol/Lであり、10℃以下に冷却して第1のタンク42中に貯留した。
フェノール類含有液43としては、2,6−ジメチルフェノール(DMP)のメタノール溶液を用い、第2のタンク44中に貯留した。フェノール類含有液43中のDMPの濃度は250mmol/Lとした。
(実施例1)
図4に示す製造装置40を用いて、三価マンガン含有液とフェノール類含有液とを混合して反応を行った。
三価マンガン含有液41は、あらかじめマンガンペルオキシダーゼ(MnP)の作用で過酸化水素の共存下、酢酸マンガン(II)水溶液を酸化したものを用意した。MnPとして担体に固定化したものを用いた。フェノール類含有液との反応に使用する三価マンガン含有液41(この三価マンガン含有液41は、MnPの残留がないことを確認した。)は、三価マンガンの濃度が5.0mmol/Lであり、10℃以下に冷却して第1のタンク42中に貯留した。
フェノール類含有液43としては、2,6−ジメチルフェノール(DMP)のメタノール溶液を用い、第2のタンク44中に貯留した。フェノール類含有液43中のDMPの濃度は250mmol/Lとした。
プランジャーポンプ45を用いて、第1のタンク42中の三価マンガン含有液41を流量10g/minにてマイクロ熱交換器46に供給し、マイクロ熱交換器46内で三価マンガン含有液41を連続的に流しつつ、昇温した。ここでマイクロ熱交換器46は、ステンレスプレートからなり、三価マンガン含有液41の流路及び熱媒体供給装置47から供給される熱媒体の流路を有する。これら流路の断面寸法は、幅0.4mm×高さ0.2mmである。マイクロ熱交換器46中の三価マンガン含有液41の流路の総延長は約4cmである。プランジャーポンプ45の動作を調節して、三価マンガン含有液41の流速を0.0006m/s、マイクロ熱交換器46中の滞在時間を64秒とした。このマイクロ熱交換器46により、三価マンガン含有液41がマイクロ熱交換器46中に滞在している間に、昇温速度0.2℃/秒以上にて液温50℃に昇温した。マイクロ熱交換器46を通過して昇温された三価マンガン含有液41は、流量10g/minのまま反応装置に供給した。
また、高圧シリンジポンプ48を用いて第2のタンク44中のフェノール類含有液43を流量0.1g/minにて反応装置に供給した。反応装置としては、図1に示す構成の反応装置10を用いた。本実施例で用いた反応装置10の場合、第1流路11の断面寸法は幅0.4mm×高さ0.15mmであり、流路の断面積は0.06mm2である。また、第2流路12の断面寸法は幅0.2mm×高さ0.2mmであり、流路の断面積は0.04mm2である。反応装置10中、三価マンガン含有液41及びフェノール類含有液43の混合液は、第1流路11の合流点16より下流側の部分16において、流速2.7m/s、滞在時間10ミリ秒となるように調整した。反応装置10において三価マンガン含有液41とフェノール類含有液43とは連続的に混合される。混合時の三価マンガン/フェノール類の混合比(モル比)は、2:1となる。
吐出される反応混合物を受け容器49に受け取り、該反応混合物中の組成比(重量比)を液体クロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、未反応の2,6−ジメチルフェノール(単量体)が1.8%、ビフェノール類であるテトラメチルビフェノール(TMBP)が8.8%、ジフェノキノン類であるテトラメチルキノン(TMBQ)が75.5%、三量体以上の生成物(オリゴマー及びポリマー)が13.9%であった。
(比較例1)
マイクロ熱交換器46を通した後の三価マンガン含有液41の液温を10℃をしたこと以外は、実施例1と同様に反応を実施した。
吐出される反応混合物を受け容器49に受け取り、該反応混合物中の組成比(重量比)を液体クロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、未反応の2,6−ジメチルフェノール(単量体)が2.1%、ビフェノール類であるテトラメチルビフェノール(TMBP)が38.1%、ジフェノキノン類であるテトラメチルキノン(TMBQ)が21.6%、三量体以上の生成物(オリゴマー及びポリマー)が38.2%であった。
マイクロ熱交換器46を通した後の三価マンガン含有液41の液温を10℃をしたこと以外は、実施例1と同様に反応を実施した。
吐出される反応混合物を受け容器49に受け取り、該反応混合物中の組成比(重量比)を液体クロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、未反応の2,6−ジメチルフェノール(単量体)が2.1%、ビフェノール類であるテトラメチルビフェノール(TMBP)が38.1%、ジフェノキノン類であるテトラメチルキノン(TMBQ)が21.6%、三量体以上の生成物(オリゴマー及びポリマー)が38.2%であった。
実施例1と比較例1の結果を表1に示す。三価マンガン含有液の液温を10℃として反応させた比較例1では、二量体の組成比(TMBPとTMBQの合計)が約59%であったのに対して、三価マンガン含有液を50℃に昇温した後に反応させた実施例1では、二量体の組成比が約84%にまで向上した。このことから、三価マンガン含有液を液温50℃以上まで昇温することにより、基質の反応率及び二量体の選択率を向上できることが分かる。
(実施例2〜5)
マイクロ熱交換器46における熱媒体の温度を変更することで三価マンガン含有液41の昇温温度を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、三価マンガンと2,6−ジメチルフェノールとの反応を実施した。このときの結果を表2に示す。なお、これらの実施例において、混合前の三価マンガン含有液の液温は50℃以上であり、該液温に至るための昇温速度は0.2℃/秒以上、昇温時間は5分以内であった。
マイクロ熱交換器46における熱媒体の温度を変更することで三価マンガン含有液41の昇温温度を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、三価マンガンと2,6−ジメチルフェノールとの反応を実施した。このときの結果を表2に示す。なお、これらの実施例において、混合前の三価マンガン含有液の液温は50℃以上であり、該液温に至るための昇温速度は0.2℃/秒以上、昇温時間は5分以内であった。
表2に示すように、反応装置10の出口17から吐出される反応混合物の液温が高いほど、未反応の単量体及び三量体以上の生成物の組成比が低く、二量体の組成比(ビフェノール類とジフェノキノン類の合計)が高くなる傾向が見られた。この観点から、反応温度は76〜80℃前後が好ましく、このため、マイクロ熱交換器46において、三価マンガン含有液41を76〜80℃程度まで昇温することが好ましい。
(実施例6〜8)
高圧シリンジポンプ48によるフェノール類含有液43の流量を変更することで、混合時の三価マンガン/フェノール類の混合比(モル比)を変更した以外は、実施例1と同様にして、三価マンガンと2,6−ジメチルフェノールとの反応を実施した。このときの結果を表3に示す。なお、これらの実施例において、混合前の三価マンガン含有液の液温は50℃以上であり、該液温に至るための昇温速度は0.2℃/秒以上、昇温時間は5分以内であった。
高圧シリンジポンプ48によるフェノール類含有液43の流量を変更することで、混合時の三価マンガン/フェノール類の混合比(モル比)を変更した以外は、実施例1と同様にして、三価マンガンと2,6−ジメチルフェノールとの反応を実施した。このときの結果を表3に示す。なお、これらの実施例において、混合前の三価マンガン含有液の液温は50℃以上であり、該液温に至るための昇温速度は0.2℃/秒以上、昇温時間は5分以内であった。
表3に示すように、三価マンガン/フェノール類の混合モル比は2:1が最適である。フェノール類に対して三価マンガンの混合モル比が2より小さいほど、三量体以上の生成物の組成比が増加する傾向が見られた。
(実施例9〜13)
プランジャーポンプ45による三価マンガン含有液41の流量と、高圧シリンジポンプ48によるフェノール類含有液43の流量を変更した以外は、実施例1と同様にして、三価マンガンと2,6−ジメチルフェノールとの反応を実施した。混合時の三価マンガン/フェノール類の混合比(モル比)を2:1とするため、三価マンガン含有液41の流量とフェノール類含有液43の流量との比は、いずれも100:1とした。このときの結果を表4に示す。なお、これらの実施例において、混合前の三価マンガン含有液の液温は50℃以上であり、該液温に至るための昇温速度は0.2℃/秒以上、昇温時間は5分以内であった。
プランジャーポンプ45による三価マンガン含有液41の流量と、高圧シリンジポンプ48によるフェノール類含有液43の流量を変更した以外は、実施例1と同様にして、三価マンガンと2,6−ジメチルフェノールとの反応を実施した。混合時の三価マンガン/フェノール類の混合比(モル比)を2:1とするため、三価マンガン含有液41の流量とフェノール類含有液43の流量との比は、いずれも100:1とした。このときの結果を表4に示す。なお、これらの実施例において、混合前の三価マンガン含有液の液温は50℃以上であり、該液温に至るための昇温速度は0.2℃/秒以上、昇温時間は5分以内であった。
表4に示すように、三価マンガン含有液41及びフェノール類含有液43の流量を増加しても同様の組成比が得られた。このため、本実施例に係る製造方法は、生産性を増大させても高含有率のフェノール類二量体を製造することが可能であることが示された。
本発明は、樹脂等の原料等として用いられる各種フェノール類二量体の製造に利用することができる。
10…反応装置、11…第1流路、12…第2流路、13…第1流路の入口、14…第2流路の入口、15…第1流路と第2流路との合流点、16…第1流路における前記合流点より下流側の部分、17…第1流路の出口、20…反応装置、21…三価マンガン含有液の流路、22…フェノール含有液の流路、26…混合液の流路、30…反応装置、31…三価マンガン含有液の流路、32…フェノール含有液の流路、36…混合液の流路。
Claims (11)
- 三価マンガンを含有する液とフェノール類を含有する液とを混合してフェノール類の二量体を製造するフェノール類二量体の製造方法であって、
三価マンガン含有液を、昇温速度0.2℃/秒以上、昇温時間5分以内にて液温50℃以上まで昇温する第1工程と、
該昇温した三価マンガン含有液を直ちにフェノール類含有液と混合して反応させる第2工程とを有することを特徴とするフェノール類二量体の製造方法。 - 第2工程において、混合前のフェノール類含有液の液温が50℃以上である請求項1に記載のフェノール類二量体の製造方法。
- 第1工程において、昇温前の三価マンガン含有液の液温が10℃以下である請求項1に記載のフェノール類二量体の製造方法。
- 第2工程において、三価マンガン含有液及びフェノール類含有液は、連続的に混合される請求項1に記載のフェノール類二量体の製造方法。
- 第1工程及び第2工程において、三価マンガン含有液は、周囲が壁面に囲まれてなる断面積が3mm2以下の微小流路を通じて供給される請求項1に記載のフェノール類二量体の製造方法。
- 第2工程において、フェノール類含有液は、周囲が壁面に囲まれてなる断面積が3mm2以下の微小流路を通じて供給される請求項5に記載のフェノール類二量体の製造方法。
- 第2工程において、三価マンガン含有液とフェノール類含有液との混合液は、周囲が壁面に囲まれてなる断面積が3mm2以下の微小流路内で反応させる請求項5又は6に記載のフェノール類二量体の製造方法。
- 第2工程において、三価マンガン含有液とフェノール類含有液との混合液は、周囲が大気に囲まれてなる液柱を形成した状態で反応させる請求項5又は6に記載のフェノール類二量体の製造方法。
- 第2工程を行う反応装置として、周囲が壁面に囲まれてなる断面積が3mm2以下の第1流路と、この第1流路の途中において略直角に合流しかつ周囲が壁面に囲まれてなる断面積が3mm2以下の第2流路とを備える反応装置を用い、昇温された三価マンガン含有液を第1流路の入口から供給するとともに、フェノール類含有液を第2流路の入口から供給し、第1流路と第2流路との合流点、又は合流点より下流において三価マンガン含有液とフェノール類含有液とを混合し、第1流路における前記合流点より下流側の部分において三価マンガンとフェノール類とを反応させる請求項1に記載のフェノール類二量体の製造方法。
- 第1流路の断面積が第2流路の断面積よりも大きく、かつ第2流路の断面積が1mm2以下である請求項9に記載のフェノール類二量体の製造方法。
- 第2工程において、三価マンガン含有液とフェノール類含有液との混合液の圧力損失が、フェノール類含有液の圧力損失よりも小さい、請求項1に記載のフェノール類二量体の製造方法。
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