JP2008080384A - スライディングノズル用のプレート状耐火物 - Google Patents

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Abstract

【課題】SNプレートの摺動面の損傷を低減し、漏鋼の危険性を低減すると共にSNプレートの寿命を延長すること。
【解決手段】溶鋼の流量制御に使用するスライディングノズル用のSNプレート10のSNプレート本体1は、ピッチ、タール若しくはフェノール樹脂またはこれらの溶剤成分の単独若しくは混合物からなる揮発分を0.1質量%以上含有する耐火物からなる。このSNプレート10の非摺動面である背面側4に、非通気性の金属製皮膜または無機質材料の1若しくは複数の層からなる非通気性の皮膜6を設ける。さらに、この皮膜6の外側に、SNプレート10の背面側4に加えられる面圧を分散させるためのシート材として、セラミックシート7とブリキ板8を積層する。
【選択図】図1

Description

本発明は、溶融金属を容器からノズルを経由して排出する際の排出開始若しくは停止を含む流量制御のために使用するスライディングノズル用のプレート状耐火物(以下「SNプレート」という。)の摺動面の損傷軽減技術に関するものである。
溶鋼を容器からノズルを経由して排出する際の流量制御のために使用するスライディングノズルは、内孔を設けた上プレートと下プレートの2枚、またはそれに中プレートが加わった3枚のSNプレートを有し、これらのSNプレートを相対的に摺動動作させることにより、溶鋼流路である内孔の開度を調整し溶鋼の流量制御を行う。
このようなSNプレートには、流量制御にあたりその面間からの溶鋼の漏れを防ぐことを目的として高い圧力が負荷されており、その高圧を負荷した状態で摺動動作を行っている。このSNプレートの溶鋼との接触面は、溶鋼中の酸素による酸化、溶鋼中の耐火物と反応性の高い成分による化学的な溶損、溶鋼中の非金属介在物の付着とそれらによる摩耗等により損傷する。
またSNプレートは、溶鋼が通過する内孔の周辺の約1600℃から常温の外周方向に向かって大きな温度分布を持つことから、その熱膨張差等により反りが生じ、その反りによりSNプレート間には隙間が生じる。このような隙間には、特に溶鋼が通過する周辺では負圧になることが多く、外気が侵入して摺動面等の酸化による損傷等をさらに促進する。それらに加え上下方向に強く圧縮された状態で開閉(摺動)動作を行うことから、SNプレートには溶鋼が通過する内孔を中心に亀裂が入りやすく、その亀裂を通じてSNプレートの外部から内孔へ空気中の酸素が引き込まれ、この酸素による酸化等により損傷がさらに大きくなる。
これらの損傷はSNプレートの安全性及び寿命を決定する重要な要因となっており、これらの損傷を軽減する試みが様々になされてきた。
SNプレートの摺動面の強化を図ろうとするものとして、例えば、特許文献1にはSNプレートの摺動面の溶鋼と接触する部分を中心に、耐食性や耐熱衝撃性に優れる成分を開気孔に充填した緻密な異材質を、SNプレート耐火物の表面に組み込むことが示されている。しかし、このような異材質を組み込んだ場合にはその異材質の割れや剥離等が生じ、摺動面の損傷を改善することができず、却ってその異材質の損傷により生じた空間や破片等が摺動面の損傷を助長することになり、安定的かつ有効な対策とはなり得ない。また、このような方法ではSNプレートの摺動抵抗の低減や摩耗、化学的溶損、亀裂等に対する抑制効果はなく、亀裂からの空気の引き込みを抑制することもできない。
摺動面の耐火物自体の改善ではなく、周囲の雰囲気の酸素分圧を下げることでSNプレートの損傷を軽減する方法として、例えば、特許文献2にはSNプレートの摺動面に不活性ガスを供給する機構を備えたSNプレートが示されている。このように周囲の雰囲気の酸素分圧を下げることでSNプレートの酸化は或る程度抑制することができるが、SNプレート自体の摺動抵抗や摩耗、化学的溶損、亀裂等に対する抑制効果はなく、また大量の不活性ガスを消費することからSNプレートのみならず溶鋼を冷却する虞があり、非金属介在物のノズル内壁への付着の増大や閉塞、鋳片の品質の低下等の影響や生産コストの上昇も来す虞がある。
摺動面のシール性を強化して摺動面の損傷を軽減する方法として、例えば、特許文献3には高温でも液体の状態を保てるシール材を摺動面に施すことが示されている。この方法によると摺動面から引き込まれる空気中の酸素を或る程度軽減する効果は得られるが、その効果は摺動面のみに限られ、亀裂(側面、背面等)から侵入する空気等を抑制する効果はない。また、摺動面の溶鋼と接触する部分ではこのシール材が溶鋼により流失してしまい、溶鋼中の酸素による酸化や化学的溶損等に対しては持続的な効果は得られない。
また、SNプレートの摺動面の損傷を低減する別の方法として、SNプレートに、約200℃以上の温度から揮発を始める揮発分を含ませておいて、その揮発分の摺動面での潤滑作用を利用する方法がある。
このようなSNプレートには、焼成したSNプレートに主としてタールやピッチを含浸し、個別の具体的な製品に求められる具備条件によっては200℃以上の熱処理を行って、SNプレートの使用中約200℃以上の温度域でナフタリン、フルオレンなどの中沸点成分を、400℃以上の高温域ではその他の高沸点成分を揮発させるようにしたものがある。
他の形態として、主としていわゆる不焼成品または軽焼品と呼ばれる、結合剤として一般的にフェノール樹脂を使用し、200℃以上の熱処理を行ったものがある。このSNプレートは、使用時に到達する約300℃以上の温度域では、フェノール樹脂の分解成分である水分、フェノール、CH、CO、CO等が揮発する。
ただし、SNプレートの使用中にはSNプレートの温度は溶鋼通過経路である内孔部分では約1600℃、SNプレートの端部、背面側などの温度が低い部分でも約400℃以上に上昇する。この温度上昇により、SNプレート中の揮発分は徐々にSNプレートのあらゆる面に移動し、散逸していく。
SNプレートの使用初期からSNプレート中にこれらの揮発分が残留している間は、この揮発分がSNプレートの摺動面にも移動して摺動面からも揮発するので、摺動面には潤滑効果が生じて摺動時の抵抗が減少すると共に、SNプレート中の炭素成分等の酸化しやすい成分の酸化防止にも寄与することができる。しかし、SNプレート中の揮発分の量には限界があり、この揮発分がなくなるとこれらの効果はなくなる。
特に温度が相対的に高い内孔周囲では早期から揮発速度が大きく、摺動面側のみならずその反対面の非摺動面からも多く揮発し、この非摺動面から失われる揮発分はSNプレートの損傷低減には、SNプレートに亀裂が生じた場合等の亀裂周辺の酸素分圧を下げて酸化を抑制することには寄与するものの、限りある揮発分の消費速度を大きくしてしまう。
このような摺動面以外の部分からの揮発分の散逸は、揮発分による上述の諸改善作用の持続時間を短縮させる一因となっている。
上述のように、SNプレートの摺動面の損傷対策は、未だ十分ではない。
特開2001−71124号公報 特開平5−329593号公報 特開平3−230851号公報
本発明の課題は、総括的には、SNプレートの摺動面の損傷を低減し、漏鋼の危険性を低減すると共にSNプレートの寿命を延長することにある。
具体的には、SNプレートの非摺動面からの揮発分の揮発を抑制して摺動面からの揮発を増大させると共に、揮発速度を小さくして鋳造の間のできるだけ長い時間揮発を維持させ、より強い摺動面の潤滑効果及び耐酸化効果等をより長い時間持続して、SNプレートの損傷を低減することにある。
本発明は、ピッチ、タール若しくはフェノール樹脂またはこれらの溶剤成分の単独若しくは混合物からなる揮発分をその内部に含む、溶鋼の流量制御に使用するSNプレートにおいて、非摺動面である背面側に、非通気性の金属製皮膜をSNプレートに接して、または接着剤を介して設置したことを基本的な特徴とするSNプレートである。
また、本発明は、ピッチ、タール若しくはフェノール樹脂またはこれらの溶剤成分の単独若しくは混合物からなる揮発分をその内部に含む、溶鋼の流量制御に使用するSNプレートにおいて、非摺動面である背面側に、無機質材料の1または複数の層からなる皮膜を設け、この皮膜の300℃×5時間の熱処理後の通気率が1.0×10−3cm・cm/cm・sec・cmHO以下で、かつ、前記皮膜の厚みが0.2mm以上0.5mm以下であることを基本的な特徴とするSNプレートである。
本発明においてSNプレート中の揮発分の成分を、ピッチ、タール若しくはフェノール樹脂またはこれらの溶剤成分の単独若しくは混合物に特定した理由は、これらが一定の狭い温度範囲で一気に揮発する性質ではなく、温度上昇に伴って漸次揮発を続ける性質があること、SNプレートの摺動面での凝集等により液状化して潤滑効果を有すること、非酸化性でありSNプレートの炭素成分を空気酸化等から保護すること、SNプレート中の残留物が炭素結合を形成し、強度向上や緻密化等に寄与すること等にある。これら機能はピッチ、タール若しくはフェノール樹脂のうち、ピッチ、タール及びこれらの溶剤成分の方がフェノール樹脂及びこの溶剤成分よりも高く、また揮発する成分も多様であって幅広い温度範囲に分散して揮発するので、より好ましい。
これら揮発分のSNプレート中の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましい。0.1質量%未満であると、鋳造後短時間で揮発分が消失して揮発分によるSNプレートの損傷抑制の効果を十分に得ることができないことがある。なお、SNプレートの背面側に非通気性の金属製皮膜等を設置する本発明では揮発分の含有量が0.1質量%未満でも本発明の効果を得ることができるが、高温度において長時間安定的に本発明の効果を得るためには、前述のとおり0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、揮発分の含有量が5質量%を超えると、特に下部プレートの場合、ストップゾーン等の溶鋼と直接に接触して急激に温度が上昇するような部位付近では、通鋼開始時に急激な揮発を生じてSNプレートに亀裂や剥離を生じる危険性が高くなるので、5質量%以下に止めることが好ましい。
本発明において前述のSNプレート中の揮発分の含有量は、SNプレートから切り出した1辺が40mmの立方体の耐火物試料を800℃の非酸化雰囲気中で1時間の熱処理をした際の、熱処理前後の質量の変化率(以下、単に「質量減少率」という。)に基づいて決定するものとする。
ここで、加熱する温度を800℃とするのは、ピッチ、タール若しくはフェノール樹脂またはこれらの溶剤成分の単独若しくは混合物の中に含まれる揮発分の大半が揮発する温度が約800℃であることと、それら以外の要素による質量減少率への影響を排除するためである。また、加熱雰囲気を非酸化雰囲気中とするのは、SNプレートの構成成分の一つである炭素の酸化等を抑制するため、すなわち揮発分による質量減少率の中にそれ以外の要素(炭素等の酸化による質量変化)を排除するためである。
本発明では、非通気性の金属製皮膜を、非摺動面であるSNプレートの背面側にSNプレートに接して、または接着剤を介して設置することにより、背面側付近の揮発分は揮発経路を失い、摺動面側に移動する。その結果、SNプレート中の揮発分の揮発は摺動面から集中的に、かつ長時間に亘って維持され、摺動面の潤滑性及び耐酸化性等の機能を高め、またより長時間それらを持続させることが可能となる。その結果、摺動面の損傷抑制効果を高めることができる。
SNプレートに接して、または接着剤を介して設置するとは、揮発分が非通気性の金属製皮膜によりSNプレートから外に出ることを抑制する目的に適うよう、SNプレートと非通気性の金属製皮膜との間には揮発分の流通経路となるような気孔や空隙を内部に有して大きな通気性を呈する物質を存在させないことを意味する。したがって、非通気性の金属製皮膜はプレート状耐火物に接して、しかもその両者の間は隙間なく密着させて機密性を確保することが好ましい。ただし、後述の接着剤を使用して密着に近い状態とすることは、非通気性の金属製皮膜とSNプレートとの間の気密性を害しない限度において許容できる。
SNプレート中の揮発分は約200℃付近から揮発し始め、約300℃付近から揮発速度が大きくなる。このことから非通気性の金属製皮膜は、少なくとも約300℃以上の温度域になる領域に設置することが必要である。鋳造中にSNプレートは高温に曝され、溶鋼の通行経路である内孔は約1600℃、そこから外周方向には外気温までの温度勾配を伴った温度分布になり、SNプレートの形状にもよるが背面側のほぼ全領域は鋳造中には約400℃以上の温度に上昇する。したがって、非通気性の金属製皮膜はSNプレートの背面側の全面に設けることが好ましい。
SNプレートの側面部分は、通常、SNプレートの亀裂を防止するために金属バンド等で拘束されている。この側面部分にも非通気性の金属製皮膜を形成することが好ましいが、このような金属バンド等が揮発分散逸の抑制機能をも僅かながら有することから、SNプレートの側面部分には非通気性の金属製皮膜を形成しなくてもよい。
この非通気性の金属製皮膜は、ガスが漏れる程度の貫通孔をその皮膜としての金属内に有さない状態であればよく、一般的な金属製の皮膜であればよい。この指標として、後述の無機質材料の皮膜の通気率の上限である、300℃×5時間の熱処理後にJISR2115耐火れんがの通気率の測定方法に準じて測定した通気率が1.0×10−3cm・cm/cm・sec・cmHO以下であれば問題ない。したがって本発明において金属製皮膜に関して「非通気性」とは、皮膜状とした金属を前記通気率を超える耐火物の基材に貼付して測定した場合の前記通気率以下の通気率を備えた状態をいう。ただし、通常の市販の金属製の板、箔等の皮膜の素材になるものではこの通気率を超えることは殆どない。
金属製皮膜の金属の種類は、非通気性の特性があればよく、特に制限はないが、純度約99%以上のアルミニウムまたはJIS規格及びISO規格に該当するアルミニウム合金が好ましい(以下アルミニウムとアルミニウム合金を総称して「アルミニウム」という。)。
アルミニウムは加工性に優れていて低温強度も高いので、SNプレートに貼付しやすくまた皮膜の安定性を維持しやすいことに加え、その融点が660℃以下と他の金属より低く、比較的低温度域から軟化する特徴があることが、特に本発明への利用に適している点である。
SNプレート中の揮発分の揮発が始まる約200℃、また揮発速度が大きくなる約300℃以上では高純度のアルミニウム及びどのアルミニウム合金でもこれらのアルミニウム自体がほぼ同様な軟度で軟化し始めて、揮発分がSNプレートから散逸する広い温度域において、SNプレートの表面(無機質材料系の接着剤を使用する場合はその接着剤の表面を含む)の微細な凹凸や気孔、発生した亀裂等に食い込むことで密着性とシール性をより高めることができる。
なお、実使用後の状態観察ではSNプレートの背面側でのアルミニウムの溶融による消失は観られないが、アルミニウムの融点を超えて高温度になる場合にはアルミニウムの酸化によりアルミナを生成して緻密化に寄与することも期待できる。
金属製皮膜の厚みは、本発明の目的である揮発分の揮発の抑制、揮発速度の低下等のためには特に制限はない。しかし、SNプレートはスライディングノズル装置の中に組み込むので、取り合い寸法、面圧の程度その他の、個別の装置の限界値とのバランスにより上限厚みを決定する必要がある。現実的には、金属製皮膜自体の製作、金属製皮膜の取り扱い及び設置作業、設置後のSNプレートの搬送や装置への組み込み作業等における安定性、コスト等を考慮すると、0.01mm以上約0.5mm程度が好ましい。
アルミニウムの場合は、市販のアルミニウム箔がSNプレート中の揮発分の揮発を抑制する機能を満たす上に、前記の作業性、安定性、物流安定性、コスト等付帯的な諸事項でも優れているので、最適である。アルミニウム箔は0.006mm以上0.2mm程度までが工業的に製造され、市販されており、これらのいずれをも使用することが可能であるが、家庭用として市販されている0.01mm〜0.02mm程度が前記諸事項の観点から最も好ましい。
アルミニウム箔は0.025mm以下の厚みの場合にはピンホールが多くなり、若干通気性を示すものもあるが、その通気性の程度は前述の通気率基準よりはるかに小さいので無視できる。
厚みが0.01mmより薄いもの、例えば約0.007mm程度のものを単独で使用する場合には、設置作業時、設置後のSNプレートの搬送時等において損傷する危険性が大きくなるので、アルミニウム箔を単独で設置する場合には、0.01mm以上の厚みのものが好ましい。
厚みが0.01mmより薄いものでも、その表面に予め接着剤や他のシート状物質で補強等を施した複合積層材を使用することで、前記の設置作業時、設置後のSNプレートの搬送時等における損傷の危険性を低減することができる。ただし、その場合は、アルミニウム箔をSNプレートに設置する際に使用する接着剤とアルミニウム以外の積層部分との厚みの合計を0.5mm以下にすることが好ましい。0.5mmを超えると接着剤自体に亀裂や損傷等が生じやすくなり、アルミニウム以外の層からの揮発分の散逸が無視できない程度、すなわちSNプレートの摺動面の損傷を軽減する効果を損なう程度に増大する虞が大きくなるからである。
本発明では、前述の金属製皮膜に代えて、300℃×5時間の熱処理後にJISR2115耐火れんがの通気率の測定方法に準じて測定した通気率が1.0×10−3cm・cm/cm・sec・cmHO以下で、かつ厚みが0.2mm以上0.5mm以下である無機質材料の1または複数の層からなる皮膜を設けることができる。
この通気率が1.0×10−3cm・cm/cm・sec・cmHOを超えると揮発分がこの皮膜を通過して揮発抑制効果が得られない。また、厚みが0.2mm未満であると揮発分が皮膜の中の気孔等を通過することに加え、SNプレート表面の気孔に浸透する等によってこの皮膜に亀裂や剥離等の損傷が生じやすくなり、それが約300℃以上の温度においても皮膜の連続性を断絶する部分として残存し、この連続性を断絶した部分を揮発分が通過して揮発抑制効果が得られない。一方、厚みが0.5mmを超えると皮膜の固化、焼結等による収縮や変形等が生じやすくなり、SNプレートの面圧によってこの皮膜がSNプレートに密着するように圧着されてもSNプレートの表面に十分に馴染ませることができなくて、この皮膜の亀裂の発生やSNプレートの表面からの剥離等を招来しやすくなる。その結果、揮発分がこれら亀裂や剥離部分の隙間等を通過して揮発抑制効果が著しく低下しやすくなる。なお、無機質材料の皮膜が複数の層からなる場合は、複数層の全体を1つの層とみなして前記通気率や厚み等を満たすように設ければよい。
さらに、前述の金属製皮膜または無機質材料の1若しくは複数の層からなる皮膜の外側に、面圧を分散させるための、セラミック繊維の集合体等の単層またはセラミック繊維の集合体等にブリキ板等の金属板を組み合わせた複合積層構造からなる、シート材を設けることができる。
SNプレートには非摺動面である背面側の全面から強い圧力で摺動面側に常時圧力が加わっているが、SNプレート背面側の表面の一部に局部的にその圧力がかかるとSNプレートに亀裂が生じる。それを避けるために、SNプレートへの機械的外力(面圧)を分散して局部への応力集中を緩和することができるシート材を設置することが一般的であるが、本発明においてもこのようなシート材を設置することが好ましい。このシート材により、本発明の金属製皮膜または無機質材料の1若しくは複数の層からなる皮膜をSNプレートに、より均等な圧力で密着させる効果が得られる。
このシート材の厚みは、機械的圧力を分散し、局部の圧力を緩和する機能がある厚みであれば、特に制限はない。また一般的な1ないし7mm程度以下のセラミック繊維の集合体等の単層だけでもよいが、より均一な加圧のためにはセラミック繊維の集合体等の外側に一般的な0.1ないし3mm程度以下のブリキ板等の金属板を設けることが好ましい。
本発明のSNプレートを使用することで、摺動面の損傷を低減し、漏鋼の危険性を低減できると共に、SNプレートの寿命を延長することができる。さらにSNプレートの摺動時の抵抗をも小さくすることができることから、SNプレートの摺動に伴い発生する引張り応力等を低減でき、SNプレートの亀裂の発生を抑制しまたは低減することも可能となる。
また、SNプレートは拘束条件下で使用されることから使用時に応力がその内孔廻りに集中し、多くの場合内孔から放射状の亀裂が発生する。この内孔部分は鋳造時負圧となることから外部、特に摺動面とその内孔周囲の背面から亀裂を通って内孔へ空気が進入する。これは稼働面である摺動面を酸化してSNプレートの損耗を助長する原因となるだけでなく、溶鋼の酸化や非金属介在物の増加等の鋳片の品質低下をも惹き起こす。本発明のSNプレートは、SNプレートの背面側に設置した非通気性の皮膜により、亀裂が発生しても外気の進入を遮断できるので、前記のような鋳片品質の低下を抑制する効果も得られる。
図1は、本発明のSNプレートの一形態を示し、(a)は摺動面側の平面図、(b)はそのA−A断面図である。
図1に示すSNプレート10は、一般的な上プレートまたは下プレートとして使用されるものであり、SNプレート本体1には、溶鋼通過用の内孔2が設けられている。また、SNプレート10の摺動面3と反対側の背面側4には、上ノズルまたは下ノズルとの嵌合部となるダボ部5部分を除いて、非通気性の金属製皮膜または無機質材料の1若しくは複数の層からなる非通気性の皮膜6が設けている。さらに、この皮膜6の外側に、SNプレート10の背面側4に加えられる面圧を分散させるためのシート材、すなわちショックアブソーバーとして、セラミックシート7とブリキ板8が積層されている。また、SNプレート10の側面部分は、SNプレート10の亀裂を防止するために金属バンド9で拘束されている。
SNプレート本体1は、ピッチ、タール若しくはフェノール樹脂またはこれらの溶剤成分の単独若しくは混合物からなる揮発分を0.1質量%以上含有する耐火物からなる。
このようなSNプレート本体1は、例えば以下の方法によって製造することができる。
すなわち、耐火原料及びフェノール樹脂等の炭素系結合剤から成るはい土を混練、成形、焼成したSNプレート耐火物に、さらにタール、ピッチ等の本発明の揮発分を有する液状の物質を高圧を負荷しながらSNプレートの気孔内等に含浸し、その後所定の揮発分を残留させるように設定した温度及び時間の条件で熱処理を施して過剰な揮発分を除去するという、SNプレートの一般的な製造方法を採ることができる。
このタール、ピッチ等の本発明の揮発分を有する物質は、前記のように液状のものを含浸する方法の他、軟化温度の高い固体に近い状態の粉末をSNプレートの組織内に分散させることによって、またこの粉末の分散と前記の含浸とを併用することによってもSNプレート耐火物中に含有させることが可能である。
これらのタール、ピッチ等を含有させた後の熱処理の条件は、SNプレートの材質、物性、形状等、また含浸する液状の物質の成分や組成等によって変化させる必要がある。すなわち、個別具体的な製品としてのSNプレート毎に固有の材質や物性に応じた設計条件とそれらに応じた製造条件を含むものである。
また、前記のようなタール、ピッチ等の揮発分を有する物質の付加に先立って高温度で焼成工程を経るSNプレートの材質とは異なって、主として結合剤の硬化による強度発現により保形性や機械的強度を付与ないし維持している、いわゆる低温焼成品若しくは不焼成品等と呼ばれるSNプレート製品の場合には、前記のような含浸工程を経ずにフェノール樹脂等の結合剤の硬化とそれらの残留揮発分を管理できるような、個別具体的な製品としてのSNプレート毎に固有の設計条件とそれらに応じた製造条件の熱処理を行うことも可能である。
次に、SNプレートの背面側に図1に示したような非通気性の皮膜6を設ける方法を説明する。
SNプレートの背面側に非通気性の皮膜としてアルミニウム皮膜を設ける場合は、アルミニウム皮膜を設ける領域のSNプレート面に予め酢酸ビニル等の有機質の接着剤、水ガラス等の無機質の接着剤等を塗布しておき、SNプレートの微細な表面の凹凸に馴染ませながら、押しつけるように加圧しながら密着させることが好ましい。
接着剤の塗布方法は、特に限定されないが、塗布厚みが0.5mm以下になるように作業性に応じた粘性に調整した材料を刷毛塗り、噴霧、吹き付け、浸漬等の方法で塗布することができる。
アルミニウム皮膜はできるだけ一体物とし、継ぎ目等の揮発分が漏れる部分を設けないことが好ましい。
アルミニウム皮膜を設ける範囲は、摺動面以外の全面が好ましい。なお、アルミニウム箔を貼付する場合にはアルミニウム箔を均一な厚みでフラットな面以外の立体的な構造部分にその立体的構造に合わせて密着するように変形させることが困難であるので、そのような立体的構造部分に貼付する場合にはその部分には重複部分が生じても構わない。また、上ノズルまたは下ノズルとの嵌合部となるダボ部の非接触部分においては圧力がかかることがなく、皮膜の密着性を保つことは困難であり、また皮膜を設けても剥げやすいので、そのような部分は除外してフラットな平滑面のみに設けてもよい。
金属製皮膜をSNプレートに貼付するための接着剤としては、アルミニウム箔用接着剤として市販されているものを始め、各種の有機質、無機質の接着剤が使用できる。
有機質の接着剤の例としては、エマルジョン型接着剤(例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリス酸エステル、各種ゴム等)、溶剤型接着剤(例えば、ポリウレタン等とその溶剤等)、熱溶融型接着剤(例えば、酢酸ビニル、ポリエチレン、各種ワックス系、ロジン系等)等が挙げられる。無機質の接着剤の例としては、水ガラス等の珪酸塩系の無機質接着剤等が挙げられる。これらの接着剤は常温または数百℃程度以下の加熱下で金属製皮膜をSNプレートに密着できる機能を備えるものであれば使用できる。ただし、接着剤が、例えばpHが約5以下または約8以上等の強酸性またはアルカリ性の場合にはアルミニウムと反応し若しくは腐食させてアルミニウム皮膜を損傷することもあるので、反応によりガスを発生するものは使用しない、できるだけ早く乾燥させる等の対策を要する。
接着剤層の厚みは金属製皮膜を設置面全域で保持できるに必要な程度であればよく、できるだけ薄いことが好ましい。SNプレートには背面側から強い圧力で摺動面側に常時圧力が加わっており、すなわち金属製皮膜がSNプレートに密着するような方向に常時圧力がかかるので、溶鋼の鋳造中に密着度が低下することは殆ど無いからである。
接着剤が有機質の場合でかつ約300℃以下で消失する場合を除いて、約300℃以上でも残留する無機質の場合は、後述の無機質材料による皮膜と同様に、300℃×5時間の熱処理後の通気率が1.0×10−3cm・cm/cm・sec・cmHO以下であって、その接着剤によって揮発分抑制効果が損なわれない厚みである0.5mm以下(ゼロを除く)にすることが好ましい。
この接着剤層の厚みは、SNプレートの表面の粗度により密着性が異なることがあるので、その個別の粗度の程度に応じて0.5mm以下の範囲で最適な厚みを設定する。しかし、接着剤層が厚く凹凸が大きい場合には金属製皮膜、特に家庭用のアルミニウム箔程度以下の薄い厚みのものを設置する場合には接着剤の凹凸や分布状態等によって加圧時に金属製皮膜を損傷することもある。したがって、接着剤層の厚みは、前記家庭用アルミニウム箔等の薄い金属製皮膜の場合でもその展伸性によって接着剤層表面の凹凸に起因する損傷の防止が或る程度期待できる0.3mm程度以下がより好ましく、0.1mm程度以下がさらに好ましい。
アルミニウム皮膜はSNプレート用のはい土と同時に成形することも可能である。つまり、SNプレートの成形時に、まず所定の形状に成形したアルミニウム板を金型内に敷き、その上にはい土を投入して加圧成形する方法である。このような同時加圧によると、軟らかいアルミニウム板自体に耐火骨材が食い込み、SNプレートとアルミニウム皮膜との密着性が高まる。
しかし、この場合はアルミニウム皮膜の破損を生じやすいのでアルミニウム皮膜の厚みを増す等の工夫や注意を要する。また、このように同時成形する場合は、アルミニウム皮膜の溶融による消失や剥離等を避けるために、その後の工程におけるSNプレートの焼成温度は約650℃以下にする必要がある。
なお、650℃以下の温度で熱処理したいわゆる低温焼成プレート若しくは不焼成プレート等は、多くの場合、耐火物組織内の結合部の消失による強度低下から、外周部は酸化による強度・組織劣化(いわゆる「ぼろつき現象」)が生じやすいことが指摘されている。アルミニウム皮膜を背面側ならびに外周部に設けることは、このような耐火物の酸化防止という効果も期待できる。しかしながら、焼成後にタールやピッチ等を含浸する場合は、はい土と一緒に成形し、予めアルミニウム皮膜を背面側に配置することは、含浸性を阻害するので好ましくない。
SNプレートへの面圧の局部集中を抑制するためのシート材として、図1に示したように、SNプレートの背面側にセラミックシート6等若しくはそれにブリキ板7を併用したものを設ける場合には、(1)前述の方法でアルミニウム皮膜を設けたSNプレートの外側に、予めSNプレートの形状に合わせてライナーでの打ち抜き成形等により製造されたシート材を貼付する、(2)予めSNプレートの形状に合わせてライナーでの打ち抜き成形等により製造されたシート材にアルミニウム皮膜を接着剤を使用して貼付しておいて、これをSNプレートに接着剤を使用して貼付する、(3)シート材を製造する際に、予めSNプレートの形状に合わせてライナーでの打ち抜き成形等により製造されたアルミニウム皮膜をシート材と一体的に形成しておき、これをSNプレートに接着剤を使用して貼付する、等の方法を採ることができる。このうち、(2)及び(3)の方法が大幅に作業性を改善することができ、好ましい。
一方、SNプレートの背面側に非通気性の皮膜として無機質材料の皮膜を設ける場合、その皮膜形成用材料としては、ゲル化、反応による硬化等の皮膜形成の機構にかかわらず、常温から通気性の極めて低い皮膜を形成する無機質の液体や、300℃以上で緻密化等により前記通気率を得ることができるような耐火物の原料として使用される一般的な耐火性の原料、またそれらにガラス形成材やガラス化助剤等の低融化、緻密化等に寄与する材料を含む1種または2種以上からなる混合物等を使用することができる。
これら1種または2種以上からなる混合物の具体例としては、珪酸アルカリ溶液、さらに珪酸アルカリ溶液にシリカや硼素等のガラス化する成分等、また低融物を生成する成分等(例えば、NaO、KO、CaO、LiO、B、P、SiO等)を含有させた無機質の材料等が好ましい。このような珪酸アルカリ溶液を中心にした無機質の材料は、水分が消失する約100℃付近から緻密で強固な皮膜を形成し、さらにそれ以上の高温度域、特に約400℃以上の温度域では軟化しつつガラス化し始め、緻密な皮膜を高い温度域まで維持することができる。耐火物の原料として使用される一般的な耐火性の原料としては、消化性、発泡性のものを除き特に制限はないが、アルミナ−シリカ系、シリカ系が、ガラス形成材やガラス化助剤との反応性、取り扱いの容易さ、コスト等の点から最適である。なお、耐火性の原料の粒度は、皮膜の厚みを0.5mm以下、より好ましくは0.3mm以下にするため、また通気率を1.0×10-3cm・cm/cm・sec・cmHO以下するために、最大粒径は0.2mm以下とすることが好ましい。
また、これら無機質材料の1種または2種以上からなる混合物は、SNプレートの内孔から外周に至る温度勾配に応じて、温度により軟化や緻密化の異なる組成に調整した複数の皮膜材料、すなわちそれぞれの温度領域毎に前述の通気率、厚みを維持できる組成の材料を、それぞれの温度に応じた領域に設置する方法を採ることができる。
このような無機質材料からなる皮膜は、液体状にし、厚みが0.5mm以下、好ましくは0.3mm程度になるように作業性に応じた粘性に調整した材料を刷毛塗り、噴霧、吹き付け、浸漬等の方法で塗布することで形成することができる。
皮膜が無機質材料の場合に、SNプレートの背面側に面圧を分散させるためのシート材を設ける場合は、その皮膜を損傷しないために、皮膜を形成後、その皮膜が十分に乾燥または硬化した後にシート材を設ける必要がある。この場合のシート材の接着に使用する接着剤は、皮膜との反応等による皮膜の損傷や機能低下を避けるため、できるだけ有機質のものが好ましい。
この実施例は、SNプレート用の耐火物試料に本発明の皮膜を形成したときの揮発分の散逸実験結果を、比較例と共に示す。
この実験では、ピッチを含浸した1辺が40mmの立方体のSNプレート用耐火物試料の5面に、本発明の皮膜を設けて、110℃で約1日乾燥した後、電気炉内の非酸化雰囲気中でその雰囲気を5℃/min.の昇温速度で650℃まで加熱し、その時間経過に伴う各試料の質量減少量を測定し、その質量減少量を揮発分とみなして加熱前の各耐火物試料の質量との比で示した。
なお、各皮膜の効果を明確化するために、耐火物試料の中の揮発分は通常のSNプレート中の含有量よりも多くした。また、皮膜面は加熱中には加圧していない。
本実験に供した皮膜試料は次のとおりである。
アルミニウム皮膜としては、アルミニウム部分の厚みが0.007mmの有機質層との複合積層材、0.01mm及び0.02mmの家庭用に市販されているアルミニウム箔、0.3mmのアルミニウム板を供試料とした。各アルミニウム皮膜の実験前の通気率は測定限界以下である。アルミニウムはいずれもJIS1000系であり、これらアルミニウム皮膜を酢酸ビニル系の接着剤(厚み約0.05〜0.1mm)を介して貼付した。また、アルミニウム皮膜以外の金属製皮膜としてブリキ板(厚み0.1mm)も使用した。
無機質材料からなる皮膜としては、3号珪酸ソーダに硼砂末及び珪酸粉末を少量添加した約450cpの混合液体を基本とし、それに添加する珪酸粉末等の添加量を増減させて通気率を5.0×10-3cm・cm/cm・sec・cmHO、1.0×10-3cm・cm/cm・sec・cmHO、1.0×10-4cm・cm/cm・sec・cmHOの3水準で、かつその厚みを0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.5mm、0.7mmの5水準とした。
なお、通気率は、直径50mmφ、厚み10mmの同材質の耐火物試料に上記各試料を作製する際と同条件で皮膜を形成し、300℃×5時間の熱処理後、JISR2115耐火れんがの通気率の測定方法に準じて測定した。
比較例として、皮膜を形成していないSNプレート用耐火物の露出試料である比較例A、従来のSNプレートに貼付されているセラミック繊維からなるシート材(厚み3.0mm)を貼付しその外側に鉄板(厚み0.3mm)を配置した試料である比較例B、無機質材料からなる皮膜の通気率あるいは厚みが本発明の範囲外である比較例Cないし比較例Fの6種を実験に供した。
表1に、実験結果を示す。
本実験の結果、本発明のアルミニウム皮膜を形成した試料である実施例Aないし実施例Dは、皮膜を形成していない比較例Aの試料と比較して質量減少率が約40%ないし18%小さく、またシート材を設置した比較例Bの試料と比較しても約38%ないし15%小さく、特にアルミニウム箔の皮膜を形成した試料である実施例B及び実施例Cでは高い揮発分散逸抑制効果が確認できた。厚み0.007mmのアルミニウム皮膜は取り扱い上損傷しやすく、また複合積層材であること、さらには本試験では皮膜面は加熱中には加圧していないこともあって、耐火物試料面との密着性がやや保てずに、0.01ないし0.02mmのアルミニウム箔の場合よりもやや揮発分散逸抑制効果が劣る結果になった。0.1mmのブリキ板の皮膜である実施例Eは、アルミニウム皮膜よりも劣るものの、揮発分散逸抑制効果が確認できた。
本発明の無機質材料の皮膜を形成した試料である実施例Fないし実施例Iでは、比較例Cないし比較例Fよりも質量減少率が大きく下回り、本発明の皮膜の揮発分散逸抑制効果が確認できた。
従来のSNプレートに設置されているシート材を貼付した試料である比較例Bは、比較例Aの試料と比較して約4%の低下に止まり、揮発分の散逸抑制効果はほとんど確認できなかった。
なお、実際のSNプレートでは面圧(皮膜が密着する方向での加圧)があるので、変形や剥離は生じ難いと考えられ、また皮膜を圧着する効果も得られて、SNプレート内の揮発分の揮発を抑制する効果は、特に金属製の皮膜では本実施例の試験条件よりも高くなると考えられる。
Figure 2008080384
この実施例は、前記実施例1で最も良好は結果を示した、実施例B(アルミニウム箔の皮膜)を、上下部の2枚からなる溶鋼取鍋用のSNプレートに適用して実際の鋳造操業に使用したものである。
すなわち、表2に示す実施例Jでは、アルミナ−カーボン質のSNプレート本体にピッチを含浸して一定の熱処理をした、摺動方向(縦)約500mm、摺動方向に直角の方向(横方向)約280mmの溶鋼取鍋用のSNプレートに、ダボ部を除く背面側全面に金属製皮膜を形成した。この供試SNプレートの揮発分は2〜3質量%である。
金属製皮膜には一般に家庭用として市販されている0.01mm厚みのアルミニウム箔を使用し、市販されている酢酸ビニル系の接着剤を用いてSNプレートの背面側に貼付した。また、皮膜の外側には、面圧を分散させるためのシート材として、約3.0mmのセラミックシートと約0.3mmのブリキ板を設けた。
一方、比較例Gは、本発明の皮膜を備えない点以外は実施例Jと同じ構成を備えている。
本実施例のスライディングノズル装置は上下2枚を1組として下部のSNプレートをスライドさせて使用する構造になっているが、本実施例においては本発明のSNプレートは上部のSNプレートのみに適用し、下部のSNプレートには比較例Gと同じ従来品を使用した。
本発明の効果は、試験後のSNプレートの摺動面の状態及びSNプレートの亀裂の発生とその酸化状態とで評価した。
摺動面の損傷は、摺動面の窪んだ部分の深さを測定して、その深さが0.5mm以上である部分を損傷部分とし、その摺動方向の損傷部分の長さを、使用した取鍋の数であるch数で除して1ch当たりの損傷の長さに換算した値を、損傷速度(mm/ch)として評価した。SNプレートの亀裂の発生とその酸化状態は目視観察にて評価した。
表2に、使用結果を示す。
Figure 2008080384
実施例Jは12chの使用及び140mmの損傷で、11.7mm/chの損傷速度、比較例Gは10chの使用及び150mmの損傷で、15.0mm/chの損傷速度であり、実施例Jは比較例Gより約20%の改善効果が確認できた。
また、健全な残存部分とみなした寸法から使用可能ch数を推定した結果、すなわちSNプレートの最大寿命も、実施例Jは12ch、比較例Gは10chであり、実施例Jは比較例Gより約20%、2chの延長効果が確認できた。
SNプレートの内孔周囲の亀裂は、実施例Jの方が比較例Gよりも幅が小さく、変色すなわち酸化の程度が小さく、酸化抑制効果も確認できた。
なお、本実施例は本発明のSNプレートを上部のSNプレートのみに適用した例であるが、下部のSNプレートに適用することも可能である。
本発明のSNプレートの一形態を示し、(a)は摺動面側の平面図、(b)はそのA−A断面図である。
符号の説明
10 SNプレート
1 SNプレート本体
2 内孔
3 SNプレートの摺動面
4 SNプレートの背面側
5 ダボ部
6 非通気性の皮膜
7 セラミックシート
8 ブリキ板
9 金属バンド

Claims (5)

  1. ピッチ、タール若しくはフェノール樹脂またはこれらの溶剤成分の単独若しくは混合物からなる揮発分をその内部に含む、溶鋼の流量制御に使用するスライディングノズル用のプレート状耐火物において、非摺動面である背面側に、非通気性の金属製皮膜をプレート状耐火物に接して、または接着剤を介して設置したスライディングノズル用のプレート状耐火物。
  2. 前記金属製皮膜がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる請求項1に記載のスライディングノズル用のプレート状耐火物。
  3. 前記金属製皮膜の外側に、面圧を分散させるためのシート材を設けた請求項1または請求項2に記載のスライディングノズル用のプレート状耐火物。
  4. ピッチ、タール若しくはフェノール樹脂またはこれらの溶剤成分の単独若しくは混合物からなる揮発分をその内部に含む、溶鋼の流量制御に使用するスライディングノズル用のプレート状耐火物において、非摺動面である背面側に、無機質材料の1または複数の層からなる皮膜を設け、この皮膜の300℃×5時間の熱処理後の通気率が1.0×10−3cm・cm/cm・sec・cmHO以下で、かつ、前記皮膜の厚みが0.2mm以上0.5mm以下であるスライディングノズル用のプレート状耐火物。
  5. 前記皮膜の外側に、面圧を分散させるためのシート材を設けた請求項4に記載のスライディングノズル用のプレート状耐火物。
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