JP2008079607A - Girkチャネル遺伝子解析による薬物感受性の評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】薬物感受性または疾患脆弱性の個人差を、GIRKチャネル遺伝子多型を用いて予測する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、GIRKチャネル遺伝子の遺伝子多型または当該遺伝子多型により構成されるハプロタイプと、個体の薬物感受性または疾患脆弱性とを関連づけることを特徴とする、薬物感受性の評価方法または疾患脆弱性の評価方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、GIRKチャネル遺伝子解析により薬物感受性を評価する方法に関する。
疼痛は、医療現場で最も頻繁に見られる病態であり、疾患そのものよりもむしろ、疾患に伴う疼痛の方が患者にとって深刻である場合が多い。痛覚は、生体の警告システムであるという点で重要な役割を有するが、過度の痛みは適切に制御しないとQOL(Quality of Life)を著しく低下させることになる。近年、ペインコントロールの重要性が認識され、疼痛治療を含む緩和医療が飛躍的に進歩しつつあり、各種鎮痛薬の使用機会および使用量は増加傾向にある。
これまでに、アフリカツメガエル卵母細胞タンパク質発現系、およびウィーバーミュータントマウスを用いた行動薬理解析により、モルヒネやアルコール等による鎮痛の分子メカニズムにおいて、Gタンパク質活性型内向き整流性カリウムチャネル(以下、GIRKチャネルという)が、極めて重要な役割を果たすものであることが知られている(非特許文献1〜4)。また、モルヒネ感受性の遺伝子メカニズムが明らかになりつつある(非特許文献5)。
Ikeda, K. et al., Involvement of G-protein-activated inwardly rectifying K+ (GIRK) channels in opioid-induced analgesia, Neurosci. Res., (2000) 38: 111-114. Kobayashi, T. et al., Ethanol opens G-protein-activated inwardly rectifying K+ channels, Nature Neurosci., (1999) 2: 1091-1097. Ikeda, K. et al., Molecular mechanisms of analgesia induced by opioids and ethanol: is the GIRK channel one of the keys?, Neurosci Res., (2002) 44:121-131. Kobayashi T, et al., G protein-activated inwardly rectifying potassium channels as potential therapeutic targets., Current Pharmaceutical Design in press. Ikeda, K. et al., How individual sensitivity to opiates can be predicted by gene analyses., Trends Pharmacol. Sci., (2005) 26:311-317.
本発明が解決しようとする課題は、薬物感受性または疾患脆弱性、具体的には鎮痛薬投与必要回数、総鎮痛薬量、薬物依存脆弱性、および覚せい剤精神病遷延化等に関する薬物感受性または疾患脆弱性の個人差を、GIRKチャネル遺伝子多型を用いて予測する方法を提供することにある。
本発明者は、GIRKチャネル遺伝子に注目し、従来知見および臨床データに基づいて、鋭意研究を行った。その結果、各種GIRKチャネル遺伝子多型と、鎮痛薬および覚醒剤等の薬物感受性または疾患脆弱性との相関関係を解析することにより、いくつかの有用な遺伝子多型を同定した。そして、同定したこれら遺伝子多型間の連鎖不平衡を見出し、さらに薬物感受性または疾患脆弱性との有意な相関を明らかにした。
詳しくは、特定のGIRKチャネル遺伝子多型が異なることによって鎮痛薬の投与必要回数および総投与量が変化すること、並びにメタンフェタミン依存性患者と健常者との間で特定のGIRKチャネル遺伝子多型頻度が異なることを明らかにし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
1. GIRKチャネル遺伝子の遺伝子多型、または該遺伝子多型により構成されるハプロタイプと、個体の薬物感受性とを関連づけることを特徴とする、薬物感受性の評価方法。
2.以下の工程を含む、前項1に記載の方法。
(1)健常者における連鎖不平衡解析およびハプロタイプ解析を行い、連鎖不平衡ブロック内の遺伝子多型を選択する
(2)被験者における該遺伝子多型の遺伝子型と薬物感受性との間の関連を解析する
(3)被験者において薬物感受性と有意に関連した遺伝子多型を薬物感受性の評価に用いる
3.GIRKチャネル遺伝子の遺伝子多型、または該遺伝子多型により構成されるハプロタイプと、個体の疾患脆弱性とを関連づけることを特徴とする、疾患脆弱性の評価方法。
4.以下の工程を含む、前項3に記載の方法。
(1)健常者における連鎖不平衡解析およびハプロタイプ解析を行い、連鎖不平衡ブロック内の遺伝子多型を選択する
(2)被験者における該遺伝子多型の遺伝子多型頻度を、健常者における該遺伝子多型の遺伝子多型頻度と比較する
(3)被験者と健常者とで遺伝子多型頻度に有意差のある遺伝子多型を疾患脆弱性の評価に用いる
5.疾患脆弱性が、薬物感受性または薬物依存への脆弱性である前項3または4に記載の方法。
6.遺伝子多型が、一塩基多型、挿入型多型、欠失型多型および塩基繰り返し多型からなる群から選択される少なくとも1つである、前項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
7.遺伝子多型がGIRK2遺伝子のA-1361G、G-1250A、T-244C、C-227T、A-68G、IVS1C75167T、A1032G、C1569TおよびC1843G、並びにGIRK3遺伝子のA-1329C、C-979G、C-968G、A-447G、C1211T、C1339T、C1781T、C1817T、G2069AおよびC2429Tから選ばれる少なくとも1つである、前項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
8.ハプロタイプが以下の表に示されるものから選ばれる少なくとも1つである、前項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
Figure 2008079607
Figure 2008079607
9.前項1〜8のいずれか1項に記載の方法により評価された結果を指標として、個体に投与する薬物の種類、量および/または投与回数を決定する方法。
10.前項1〜9のいずれか1項に記載の方法により評価された結果を指標として、個体に投与する薬物の副作用を予測する方法。
11.薬物が、GIRKチャネル機能修飾薬および/またはミューオピオイド受容体機能修飾薬である、前項1、2、5、9および10のいずれか1項に記載の方法。
12.GIRKチャネル機能修飾薬が、モルヒネ、DAMGO、コデイン、メサドン、カルフェンタニール、フェンタニール、ヘロイン、ナロキソン、ナルトレキソン、ナロルフィン、レバロルファン、ペンタゾシン、ペチジン、ブプレノルフィン、オキシコドン、ヒドロコドン、レボルファノール、エトルフィン、ジヒドロエトルフィン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、トラマドール、ジクロフェナク、インドメタシン、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、フルピルチン、笑気、F3(1クロロ1,2,2トリフルオロサイクロブタン)、ハロセン、エストラジオール、ジチオトレイトール、チオリダジン、ピモザイド、フルオキセチン、パロキセチン、デシプラミン、イミプラミン、クロミプラミン、テトラミド、イソフルレン、ギンセノシド、イフェンプロディール、ブピバカイン、テルチアピン、クロザピン、ハロペリドール、SCH23390、およびコカインからなる群から選択される少なくとも1つであり、ミューオピオイド受容体機能修飾薬が、メタンフェタミン、メチレンジオキシメタンフェタミン、アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、ドパミン、モルヒネ、DAMGO、コデイン、メサドン、カルフェンタニール、フェンタニール、ヘロイン、コカイン、ナロキソン、ナルトレキソン、ナロルフィン、レバロルファン、ペンタゾシン、ブプレノルフィン、オキシコドン、ヒドロコドン、レボルファノール、エトルフィン、ジヒドロエトルフィン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、エタノール、メタノール、ジエチルエーテルおよびトラマドールからなる群から選択される少なくとも1つである、前項11記載の方法。
13.GIRKチャネル遺伝子の遺伝子多型を含むDNA断片に特異的にハイブリダイズしうる、配列番号1〜19のいずれか1に示す塩基配列のうち第51番目の塩基を含む少なくとも10塩基長の塩基配列または該塩基配列に相補的な配列からなるオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とする前項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
14.前記オリゴヌクレオチドの長さが10〜150塩基長である前項13に記載の方法。
15.前記オリゴヌクレオチドが配列番号1〜19のいずれか1に示す塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列からなる群から選択されるオリゴヌクレオチドである前項13または14に記載の方法。
16.GIRKチャネル遺伝子の遺伝子多型を含むDNA断片に特異的にハイブリダイズしうる、配列番号1、9、10、11および14のいずれか1に示す塩基配列のうち第51番目の塩基を含む少なくとも10塩基長の塩基配列または該塩基配列に相補的な配列からなるオリゴヌクレオチド。
17.10〜150塩基長の長さを有する、前項16に記載のオリゴヌクレオチド。
18.配列番号1、9、10、11および14のいずれか1に示す塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド。
19.前項16〜18のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドが支持体に固定されたマイクロアレイ。
20.前項1〜15のいずれか1項に記載の方法において、GIRKチャネル遺伝子多型の検出に用いる配列番号20〜25のいずれか1に示す塩基配列からなるプライマー。
21.請求項16〜18のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドおよび/または前項19に記載のマイクロアレイおよび/または前項20に記載のプライマーを含む、薬物感受性評価用キット。
22.請求項16〜18のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドおよび/または前項19に記載のマイクロアレイおよび/または前項20に記載のプライマーを含む、疾患脆弱性評価用キット。
本発明により、薬物感受性または疾患脆弱性に関する個人差を評価することができるGIRKチャネル遺伝子多型、および当該遺伝子多型を用いた薬物感受性または疾患脆弱性の評価方法等を提供することができる。この評価方法により、モルヒネ等の麻薬性薬物に関する処方適正量および処方適正スケジュールなどを容易に知ることが可能となり、テーラーメイド疼痛治療および薬物依存治療などに極めて有用である。
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施し得る。
1.本発明の概要
(1)GIRKチャネル
モルヒネ等に代表される麻薬性鎮痛薬は、オピオイド受容体というタンパク質に作用して鎮痛を引き起こす。オピオイド受容体には、ミュー、デルタ、カッパ(μ、δ、κ)の3種類があり、いずれも鎮痛作用と関係する。これら受容体は、Gi/oタンパク質共役型受容体であるため、Gi/oタンパク質を介してアデニル酸シクラーゼとカルシウムチャネルを抑制するが、それに加えてGIRKチャネルの活性化も行う。
オピオイド受容体とGIRKチャネルを人工的に細胞に発現させた場合、モルヒネ等の鎮痛薬によってカリウムイオンが細胞内から細胞外へ流れ出て細胞膜が過分極になる。その結果、当該細胞の活性が抑えられ、鎮痛効果が発揮される。しかし、Gタンパク質による制御を受けない異常なGIRKチャネルを持つウィーバーミュータントマウスでは、モルヒネ等による鎮痛効果が減弱する。これらの知見から、モルヒネ等の鎮痛薬が十分な鎮痛効果を発揮するためには、GIRKチャネルの開口が極めて重要なステップであると考えられている。
ここで、GIRKチャネルについて説明する。GIRKチャネルは、脳および心臓に多く存在し、神経細胞の興奮性や心拍数の制御において重要な働きをするイオンチャネルである。GIRKチャネルは、細胞膜をM1およびM2部位で細胞膜を2回貫通し、M1およびM2部位の間にあるH5部位が細胞膜に食い込む構造をとっている。H5部位はイオンを通す中心部を形成する。
GIRKチャネルは、4個のサブユニットが合わさって4量体の状態で機能する。サブユニットの種類としては、GIRK1、GIRK2、GIRK3およびGIRK4の4種類があり、脳ではGIRK1、GIRK2およびGIRK3サブユニットが強く発現し、主にGIRK1およびGIRK2サブユニットの組合せによるGIRK1/2タイプのGIRKチャネルが機能する。なお、心臓ではGIRK1およびGIRK4サブユニットが強く発現し、主にGIRK1/4タイプが機能する。
(2)遺伝子多型
本発明者は、健常者について、GIRKチャネルを構成しうる4種のサブユニットのうち脳で強く発現するGIRK2およびGIRK3サブユニットに関して遺伝子多型(SNP等)を同定した(図1および2)。また必要により連鎖不平衡解析を行い、連鎖不平衡の強いブロック(ハプロタイプブロック)を同定した。
ここで、連鎖平衡とは2つの遺伝子多型間の染色体上の関係が独立な場合をいい、連鎖不平衡とは遺伝子多型と遺伝子多型が連鎖しているためにメンデルの独立の法則による平衡状態から逸脱している場合をいう。また、ハプロタイプとは、一組の対立遺伝子のうちの一方(片方の親に由来する遺伝子)において、相互に近隣する遺伝子や遺伝子多型などの遺伝的構成を意味する。
ゲノム上近接する遺伝子多型等はハプロタイプブロックで遺伝する。言い換えれば、ハプロタイプは、このハプロタイプブロック内の、同一遺伝子の並び方の組み合わせであるとも言える。
GIRKチャネル遺伝子において、いくつかの遺伝子多型が、ある表現型に関連して出現する場合は、個々の遺伝子多型を全てタイピングしなくても、ハプロタイプを構成するいくつかの遺伝子多型を解析することによって、患者の遺伝子型と表現型との関連を明らかにすることができる。
本発明者は、GIRK2サブユニット遺伝子について解析した結果、5´フランキング領域には5つの遺伝子多型(A-1361G、G1250A、T-244C、C-227TおよびA-68G)を、イントロンの一部に1つの遺伝子多型(IVS1C75167T)を、エクソン3の翻訳領域、エクソン4の翻訳領域、および3´非翻訳領域にそれぞれ1つずつ(計3つ)の遺伝子多型(A1032G、C1569TおよびC1843G)を見出した(図1参照)。これらの遺伝子多型のうち、エクソン中でマイナーアレル頻度が高い遺伝子多型はA1032Gであった。
また、GIRK3サブユニット遺伝子については、5´フランキング領域には4つの遺伝子多型(A-1329C、C979G、C-968G、A-447G)、エクソン3の翻訳領域に2つの遺伝子多型(C1211T、C1339T)、3´非翻訳領域に4つの遺伝子多型(C1781T、C1817T、G2069A、C2429T)を見出した(図2参照)。これらの遺伝子多型のうち、エクソン中でマイナーアレル頻度が特に高い遺伝子多型はC1339TおよびC1781Tなどであり、さらにアミノ酸置換を伴う遺伝子多型はC1339Tのみであった。
特に、GIRK2サブユニット遺伝子については、A-1361GおよびC1843Gの2つの遺伝子多型が、GIRK3サブユニット遺伝子については、A-1329C、C-979GおよびC1211Tの3つの遺伝子多型が、GenBankのデータベースに登録のない新規な遺伝子多型であった。
GIRKチャネル遺伝子の遺伝子多型またはハプロタイプを解析することによって、鎮痛薬投与必要回数、総鎮痛薬量、薬物依存脆弱性、および覚せい剤精神病遷延化等の薬物感受性または疾患脆弱性についての個人差を容易に評価することができる。薬物感受性または疾患脆弱性について評価した結果は、個体に投与する薬物の投与回数、投与量および種類などの決定、並びに副作用の予測において重要な情報となる。
特に、モルヒネや覚醒剤などは、使用方法によっては社会的に大きな問題を生じるため、各個人に適切な投薬量を投薬前に予め知ることは重要である。そのため、本発明は、テーラーメイド疼痛治療や薬物依存治療において極めて有用であると言える。
2.GIRKチャネル遺伝子多型
本発明のヒトGIRKチャネル遺伝子多型としては、主に一塩基多型(single nucleotide polymorphism、以下SNPとも呼称する)を含むが、限定はされず、挿入型多型、欠失型多型、および塩基繰り返し多型をも含みうる。
一塩基多型[SNP(SNPs)]とは、遺伝子の特定の1塩基が他の塩基に置換することによる遺伝子多型を意味する。挿入/欠失型多型とは、1以上の塩基が欠失/挿入することによる遺伝子多型を意味する。
また、塩基繰り返し多型とは塩基配列の繰り返し数の異なることにより生じる遺伝子多型を意味する。塩基繰り返し多型は繰り返す塩基数の違いにより、マイクロサテライト多型(塩基数:2塩基〜4塩基程度)とVNTR(variable number of tandem repeat)多型(繰り返し塩基:数塩基〜数十塩基)に分けられ、その繰り返し数が個々人によって異なる。
本発明によって明らかにされたヒトGIRKチャネル遺伝子多型の情報(日本人健常者のゲノム上で見られたGIRK2およびGIRK3におけるSNP)を、表3に示す。表3に示す遺伝子多型は、本発明のGIRKチャネル遺伝子多型に含まれる。
Figure 2008079607
表3において、「遺伝子名」はヒトGIRKチャネルを構成しうるサブユニットをコードする遺伝子名を意味し、例えば「GIRK2」(斜体表記)は、GIRK2サブユニット遺伝子を表す。なお、GIRK2遺伝子は、Kir3.2遺伝子とも称され、「KCNJ6」(斜体表記)と表記されることがあり、GIRK3遺伝子は、Kir3.3遺伝子とも称され、「KCNJ9」(斜体表記)と表記されることがある。
「位置」は、GIRKチャネル遺伝子のゲノム上の位置を意味し、5´フランキング領域、並びに各エクソンおよびイントロンを表す。
「遺伝子多型名」は、ゲノム上の位置におけるSNPの名称であり、本発明者が付与したものである。基本的に、2〜5桁の数字および記号の前と後にそれぞれA、G、CまたはTのアルファベットが付与され、どの塩基のSNPであるかが識別されている。例えば「A-1361G」は、転写開始点から1361bp上流(5´側)の塩基がAとGとの遺伝子多型であることを示しており、「C1339T」は、転写開始点から1339bp下流(3´側)の塩基がCとTとの遺伝子多型であることを示している。
ここで、転写開始点からの塩基数の数え方は、転写開始点の塩基を1としたときに、1塩基上流の塩基を−1として、1塩基下流の塩基を2として、順次数える。
また「イントロン1」欄の「IVS1C75167T」は、イントロン1の中の遺伝子多型であり、イントロン1の開始点の塩基を1として75167bp下流の塩基がCとTとの遺伝子多型であることを示している。
「メジャーアレル」および「マイナーアレル」は、それぞれ日本人健常者のゲノム上での多数派および少数派となるアレルを表す。
本発明において遺伝子多型情報を得る方法は、例えば、以下の通りである。
(1)ヒトから採取した血液検体から、フェノール法等を用いてゲノムDNAを精製する。その際、GFX Genomic Blood DNA Purification Kit(GEヘルスケア バイオサイエンス株式会社製)等の市販のゲノムDNA抽出キットや装置を用いてもよい。
(2)次に、得られたゲノムDNAを鋳型として、PCR法によりゲノムDNAをいくつかに分けて増幅し、シークエンス用の鋳型DNAとする。本発明は、遺伝子多型を対象とするため、PCR法に用いる酵素はなるべくFidelity(忠実度)の高いものを用いることが望ましい。
(3)GIRKチャネル遺伝子の5´非翻訳領域(5´UTR)および5´フランキング領域を、転写開始点よりも上流約1.8kbpまでの領域、好ましくは約2kbpまでの領域の全域についてまたは当該領域を2〜4つに分けてPCRにより増幅を行う。各エクソンおよびイントロンは、それぞれの箇所毎にPCR法により全域を増幅する。
(4)最終エクソン(最も3´側のエクソン)の増幅の際は、終止コドンまでの翻訳領域および3´非翻訳領域(3´UTR)をすべて含む領域を2〜5つに分けてPCRにより増幅を行う。
(5)これらのPCR断片の全領域の塩基配列を、GenBankに公開されている配列情報に基づいて設計したプライマーを用いて約500〜700bpずつシークエンス法により解読し、目的の遺伝子多型情報を得ることができる。
本発明は、GIRKチャネル遺伝子の遺伝子多型を含むDNA断片に特異的にハイブリダイズしうる、GIRK2サブユニット遺伝子多型(A-1361G、G-1250A、T-244C、C-227T、A-68G、IVS1C75167T、A1032G、C1569TおよびC1843G)とGIRK3サブユニット遺伝子多型(A-1329C、C-979G、C-968G、A-447G、C1211T、C1339T、C1781T、C1817T、G2069AおよびC2429T)のいずれか1つを含むオリゴヌクレオチドを提供する。当該遺伝子多型部位は、配列番号1〜19のいずれか1に示される塩基配列の第51番目の塩基である。
本発明のオリゴヌクレオチドの塩基は、少なくとも10塩基、好ましくは10〜150塩基、より好ましくは10〜45塩基、さらに好ましくは14〜25塩基を有することが好ましい。
本発明のオリゴヌクレオチドとしては、例えば上記の遺伝子多型を含有する配列番号1〜19のいずれか1に示す塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列から選択されるオリゴヌクレオチドが挙げられる(表4)。
本発明のオリゴヌクレオチドは、5.で後述するGIRKチャネル遺伝子多型の検出において、GIRKチャネル遺伝子特異的なプローブおよびプライマーとして用いることができる。
Figure 2008079607
表4(配列番号1〜19)には101塩基が表示されており、その51番目に遺伝子多型部位を表示してある。例えば、「A/G」と表示したものは「A」と「G」の遺伝子多型であることを意味し、「C/T」は「C」と「T」の遺伝子多型であることを意味する。
3.ハプロタイプ解析
本発明においては、上記遺伝子多型のうちSNPを用いてハプロタイプを構築することができる。ハプロタイプ解析の対象となるSNPは、その遺伝子多型頻度が0.5%以上のものであればよく、好ましくは1%、より好ましくは5%以上のものを選択することができる。また、ハプロタイプ解析の対象となるSNPは、全部であってもその一部であってもよい。
ハプロタイプ解析は、種々のコンピュータープログラムで解析することが可能であり、例えば、Haplotype Estimation(http://www.bioinf.mdc-berlin.de/projects/hap/のウェブサイトから入手可能;Rohde K, Fuerst R. Haplotyping and estimation of haplotype frequencies for closely linked biallelic multilocus genetic phenotypes including nuclear family information. Max-Delbrueck-Centrum for Molecular Medicine, Berlin, Germany.)を用いることができる。
ハプロタイプ解析の例として、上記2.において見出した日本人健常者のGIRKチャネル遺伝子多型のうち、GIRK2サブユニット遺伝子多型である9箇所のSNP、およびGIRK3サブユニット遺伝子多型である10箇所のSNPに関して、Haplotype Estimationを用いてハプロタイプを推定した。推定したハプロタイプをそれぞれ表5および表6に示す。
Figure 2008079607
Figure 2008079607
さらに、集団における各個人のGIRK遺伝子についての遺伝子型情報から、該集団におけるハプロタイプ頻度を算出し、当該ハプロタイプ頻度をもとにして連鎖不平衡解析を行うことができる。連鎖不平衡の尺度を示す値であるD´値およびr2値は、以下の定義に基づき算出することができる。
定義:
SNP AとSNP Bとがあり、それぞれのアレルをA、aとB、bとする。SNP AとSNP Bとが作る4つのハプロタイプをAB、Ab、aB、abとし、それぞれのハプロタイプ頻度をPAB、PAb、PaB、Pabとすると、
D=PAB×Pab-PAb×PaB(D>0のとき)
D´=(PAB×Pab-PAb×PaB)/Minimum(((PAB+PaB)×(PaB+Pab)),((PAB+PAb)×(PAb+Pab)))(D<0のとき)
D´=(PAB×Pab-PAb×PaB)/Minimum(((PAB+PaB)×(PAB+PAb)),((PaB+Pab)×(PAb+Pab)))
r2=(PAB×Pab-PAb×PaB)2/[(PAB+PAb)(PAB+PaB)(PaB+Pab)(PAb+Pab)][但し、Minimum(((PAB+PaB)×(PaB+Pab)),((PAB+PAb)×(PAb+Pab)))は、(PAB+PaB)×(PaB+Pab)と(PAB+PAb)×(PAb+Pab)との内、値の小さい方をとることを意味する。]
さらに、連鎖不平衡解析を行った結果からハプロタイプブロックを推定することができる。ハプロタイプブロックは、ハプロタイプ解析の結果から、例えば、Haploview(http://www.broad.mit.edu/mpg/haploview/index.phpからアクセス可能)を用いて連鎖ブロックを推定することができる。
推定されたハプロタイプブロック中の特定のSNPを調べると、間接的に同一ブロック内で連鎖しているSNPの情報を知ることができる。つまり、GIRKチャネル(詳しくはGIRK2またはGIRK3サブユニット)遺伝子の遺伝子多型を調べる際に、すべてのSNPを解析する必要はなく、特定のいくつかのSNPについてのみタイピングを行えばよい。
4.GIRKチャネル遺伝子多型と薬物感受性または疾患脆弱性との相関
GIRKチャネル遺伝子に遺伝子多型が生じると、GIRKチャネルの機能や発現量が変化する場合があると考えられる。従って、GIRKチャネル遺伝子多型と、GIRKチャネルに関するさまざまな表現型とは相関関係にある場合がある。
ここで、表現型とは、薬物の感受性に関する表現型(薬物感受性)と、疾患の発症に関する表現型(疾患脆弱性)とを挙げることができる。薬物感受性としては、薬物の有効性、薬物の副作用、薬物の有効持続期間等が挙げられる。また、疾患脆弱性としては、疼痛感受性、薬物依存への脆弱性等が挙げられる。
前記薬物としては、GIRK関連薬物であることが好ましく、例えば、GIRKチャネルに直接的または間接的に作用する各種薬物が挙げられる。GIRKチャネルに直接的または間接的に作用する各種薬物としては、例えば、GIRKチャネル機能修飾薬およびオピオイド受容体機能修飾薬などがあり、GIRKチャネル機能修飾薬が好ましい。具体的には、メタンフェタミン等の覚醒剤、ドパミン受容体作動薬、ドパミン受容体拮抗薬、μ、κ、δオピオイド受容体作動薬、μ、κ、δオピオイド受容体拮抗薬等を挙げることができる。
GIRKチャネル機能修飾薬としては、例えば、モルヒネ、DAMGO、コデイン、メサドン、カルフェンタニール、フェンタニール、ヘロイン、ナロキソン、ナルトレキソン、ナロルフィン、レバロルファン、ペンタゾシン、ペチジン、ブプレノルフィン、オキシコドン、ヒドロコドン、レボルファノール、エトルフィン、ジヒドロエトルフィン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、トラマドール、ジクロフェナク、インドメタシン、フルルビプロフェンアキセチル、マーカイン、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、フルピルチン、笑気、F3(1クロロ1,2,2トリフルオロサイクロブタン)、ハロセン、エストラジオール、ジチオトレイトール、チオリダジン、ピモザイド、フルオキセチン、パロキセチン、デシプラミン、イミプラミン、クロミプラミン、テトラミド、イソフルレン、ギンセノシド、イフェンプロディール、ブピバカイン、テルチアピン、クロザピン、ハロペリドール、SCH23390、およびコカイン等が挙げられ、特にモルヒネ、ペンタゾシン、ペチジン、ブプレノルフィン、ジクロフェナク、インドメタシン、フルルビプロフェンアキセチル、マーカインが好ましく、モルヒネ、フェンタニール、およびペンタゾシンがより好ましい。
μオピオイド受容体機能修飾薬としては、例えば、メタンフェタミン、メチレンジオキシメタンフェタミン、アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、ドパミン、モルヒネ、DAMGO、コデイン、メサドン、カルフェンタニール、フェンタニール、ヘロイン、コカイン、ナロキソン、ナルトレキソン、ナロルフィン、レバロルファン、ペンタゾシン、ブプレノルフィン、オキシコドン、ヒドロコドン、レボルファノール、エトルフィン、ジヒドロエトルフィン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、エタノール、メタノール、ジエチルエーテルおよびトラマドール等を挙げられ、特にメタンフェタミン、モルヒネ、ペンタゾシン、ブプレノルフィンが好ましく、モルヒネ、フェンタニール、およびペンタゾシンがより好ましい。
GIRKチャネル遺伝子多型と表現型との相関は、例えば、以下の(1)〜(4)のように調べることができる。
(1)健常者における連鎖不平衡解析およびハプロタイプ解析の結果、推定された連鎖不平衡ブロック内の遺伝子多型を選択する。例えば、代表的な遺伝子多型であるTag SNPを表現型との相関解析用のGIRKチャネル遺伝子多型として選択する。
(2)次に、被験者(患者)における該遺伝子多型についての遺伝子多型頻度を解析する。遺伝子多型と疾患脆弱性との相関を調べる場合、被験者と健常者の遺伝子多型頻度との比較を行う。比較においてはχ2乗検定などの統計手法を用いることが有効である。
ここで、さらに、表現型の違いにより被験者を分類し、分類毎に健常者と被験者の遺伝子多型頻度や遺伝子型を比較してもよい。疾患の発症に関する表現型が覚醒剤精神病様症状の場合、例えば、覚醒剤の使用開始から妄想・幻覚を発症するまでの期間、使用停止後に妄想・幻覚が持続する期間、再燃性の有無、多剤乱用の有無で分類できる。
(3)被験者において薬物感受性と有意に関連した遺伝子多型があれば、該遺伝子多型を薬物感受性の遺伝的素因の評価に用いることができる。また、健常者と被験者との間で遺伝子多型頻度に有意差のある遺伝子多型があれば、該遺伝子多型を疾患脆弱性の遺伝的素因の評価に用いることができる。
ただし、遺伝子多型の傾向は、人種や出身地等に影響されることが示唆されているため、関連する遺伝子多型(例えばSNP)を見出すのに用いた母集団と同様な遺伝子多型を示す集団おいて、当該遺伝子多型を用いる上記評価を行うことが望ましい。
GIRKチャネル遺伝子多型と表現型との相関の具体例を以下の(1)〜(4)に示す。
(1)GIRK2サブユニット遺伝子多型(A1032G)でメジャーアレル(G)を持たない外科手術を受けた患者群は、当該アレルGを持つ患者群と比較して、鎮痛薬の投与必要回数が統計学的に有意に多かった。さらに、当該遺伝子多型のメジャーアレル(G)を持たない患者群は総鎮痛薬量も統計学的に多い傾向であり、特に女性では総鎮痛薬量が統計学的に有意に多かった。したがって、GIRK2サブユニット遺伝子多型(A1032G)を解析することにより、鎮痛薬への感受性を予測することができる。
(2)術後の鎮痛薬投与必要回数および総鎮痛薬量との相関において、GIRK2サブユニット遺伝子多型(A1032G)でのメジャーアレル(G)の有無と、G-1250Aでのメジャーアレル(A)の有無とは、有意な交互作用を示した。したがって、GIRK2サブユニット遺伝子多型(A1032G)およびGIRK2サブユニット遺伝子多型(G-1250A)を解析することにより、鎮痛薬に対する感受性をより容易に予測することができる。
(3)メタンフェタミン依存患者群は、健常者群に比べて、非同義置換であるGIRK3サブユニット遺伝子多型(C1339T)のマイナーアレル(T)頻度が有意に高かった。したがって、GIRK3サブユニット遺伝子多型(C1339T)を解析することにより、メタンフェタミンへの依存性を予測することができる。
(4)覚醒剤精神病が遷延化(1ヶ月以上)した患者群と健常者群とでは、GIRK3サブユニット遺伝子中の遺伝子多型(C1339T)に関して遺伝子型頻度およびアレル頻度のいずれにおいても顕著な差が認められた。したがって、GIRK3サブユニット遺伝子中の遺伝子多型(C1339T)を解析することにより、覚醒剤精神病についての疾患脆弱性を予測することができる。
5.解析結果の利用
上記4のように解析されたGIRKチャネル遺伝子多型と表現型との相関は、GIRKチャネルに関する様々な薬物の感受性を予測する方法、GIRKチャネルに関する疾患の治療または予防法を選択する方法、または治療用の薬物の適正投与量を決定する方法、副作用を予測する方法などの指標として利用することができる。
また、本発明の遺伝子多型または方法を用いて、人種の違いによる薬物感受性または疾患脆弱性を評価することが可能である。対象者は特に限定されるものではなく、日本人、欧米人などが挙げられるが、本発明においては日本人または日本人と同様の遺伝子多型傾向を有する者であることが好ましい。
6.遺伝子多型の検出
被験対象者からのゲノム試料は、血液、唾液、皮膚等から抽出することができるが、ゲノム試料を採取できるものであれば、これに限定されるものではない。ゲノムDNAの抽出および精製法は周知である。例えば、ヒトから採取した血液、唾液、皮膚等の検体から、フェノール法等を用いてゲノムDNAを精製する。その際、GFX Genomic Blood DNA Purification Kit(GEヘルスケア バイオサイエンス株式会社製)等の市販のゲノムDNA抽出キットや装置を用いてもよい。検出するSNPがエクソン中にある場合は、ゲノムDNAの代わりにmRNAやtotal RNAを抽出してもよい。
ゲノム試料中のGIRKチャネル遺伝子多型の検出には、上記した本発明のオリゴヌクレオチドをプローブおよびプライマーとして用いることができる。以下、遺伝子多型検出法の一例を示す。
(1)PCR法による遺伝子多型の検出
PCRにより被験サンプルを増幅するには、忠実度の高いDNAポリメラーゼ、例えば、KOD Dashポリメラーゼ(TOYOBO社製)を用いることが好ましい。用いるプライマーは、被験サンプル中の対象SNPを増幅できるように設計し合成する。上流および下流側のプライマーの間の任意の位置に遺伝子多型またはその相補鎖が含まれるのが好ましい。増幅反応終了後は、増幅産物の検出を行い、遺伝子多型の有無を判定する。
本発明の方法に用いることのできるプライマーとして、例えば、下記表7に示すプライマーが好適に挙げられる。
Figure 2008079607
(2)塩基配列決定法による遺伝子多型の検出
ジデオキシ法に基づく塩基配列決定法により本発明の遺伝子多型を検出することもできる。塩基配列決定に用いるシークエンサーには、市販のABIシリーズ(アプライドバイオシステムズ)を用いることができる。
(3)DNAマイクロアレイによる遺伝子多型の検出
DNAマイクロアレイは、支持体上にオリゴヌクレオチドプローブが固定されたものであり、DNAチップ、Gene チップ、マイクロチップ、ビーズアレイなどを含む。まず、被験サンプルのポリヌクレオチドを単離し、PCRにより増幅し、蛍光レポーター基により標識する。続いて、標識化DNA/mRNA、total RNAをアレイと共にインキュベートする。
次に前記アレイをスキャナーに差し込み、ハイブリダイゼーションパターンを検出する。ハイブリダイゼーションのデータは、プローブアレイに結合した(すなわち標的配列に取り込まれた)蛍光レポーター基からの発光として採集する。標的配列と完全に一致したプローブは、標的配列と一致していない部分を有するものよりも強いシグナルを生じる。アレイ上の各プローブの配列および位置は分かっているため、相補性によって、プローブアレイと反応させた標的ポリヌクレオチドの配列を決定することができる。
(4)TaqMan PCR法による遺伝子多型の検出
TaqMan PCR法は、蛍光標識したアレル特異的オリゴヌクレオチド(TaqManプローブとも言う(とTaq DNAポリメラーゼによるPCRとを利用する方法である。アレル特異的オリゴヌ
クレオチドとは、遺伝子多型部位を含むオリゴヌクレオチドである。TaqMan PCR法で用いるアレル特異的オリゴヌクレオチドは、前記遺伝子多型情報に基づいて設計することができる。
(5)インベーダー法による遺伝子多型の検出
インベーダー法は、アレル特異的オリゴヌクレオチドと鋳型とをハイブリダイゼーションすることにより遺伝子多型を検出する方法である。インベーダー法を行うためのキットは市販されており(例えばNano Invader(R) Array(ビー・エム・エル社製))、この方法により容易に遺伝子多型を検出することが可能である。
6.キット
本発明は、薬物感受性または疾患脆弱性を評価するためのキットを提供する。本発明の遺伝子多型検出用キットは、本発明を実施するために必要な1種以上の成分を含む。
例えば、本発明のキットは、酵素を保存若しくは供給するためのもの、および/または遺伝子多型検出を実施するために必要な反応成分を含むことが好ましい。当該成分としては、限定されるものではないが、例えば、本発明のオリゴヌクレオチド、酵素緩衝液、dNTP、コントロール用試薬(例えば、組織サンプル、ポジティブおよびネガティブコントロール用標的オリゴヌクレオチドなど)、標識用および/または検出用試薬、固相支持体、説明書などが挙げられる。また本発明のキットは、必要な成分のうちの一部のみを含む部分的キットであってもよく、その場合には、ユーザーが他の成分を用意することができる。
本発明のキットは、上記オリゴヌクレオチドを支持体に固定したマイクロアレイとして提供することもできる。マイクロアレイは、支持体上に本発明のオリゴヌクレオチドが固定されたものであり、DNAチップ、Geneチップ、マイクロチップ、ビーズアレイなどを含む。
本発明のキットは、本発明において見出されたGIRKチャネル遺伝子多型を含み、当該遺伝子多型を含むDNA断片に特異的にハイブリダイズしうるオリゴヌクレオチドを含むことが好ましい。
本発明のキットにより遺伝子多型を判定する場合、例えば、薬物を患者等に使用する前(例えば手術前、癌性疼痛時等)に採血してGIRKチャネル遺伝子を含むDNAを単離し、該遺伝子をキット中のオリゴヌクレオチドと反応させて遺伝子型を判定する。
また、本発明のキットはGIRKチャネル遺伝子多型の検出に用いる配列番号20〜25に示す塩基配列からなるプライマーを含んでいても良い。当該プライマーを用いたGIRKチャネル遺伝子多型の検出は、例えばPCRにより行う。
判定した遺伝子型および遺伝子多型から薬物の種類または用量などの投与計画を作成することができる。その結果、個人に合った薬物効果を得ることができ、オーダーメイド医療に有用となる。例えばモルヒネを使用する場合は、個人に合った鎮痛効果を得、また副作用を最低限に抑えることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<SNP解析およびハプロタイプ構築>
(SNP解析)
ヒト(日本人健常者:48名)の血液または口腔粘膜から常法によりゲノムDNAを抽出し、ヒトG蛋白質活性型内向き整流性カリウムチャネル(GIRKチャネル)の4つのサブユニットのうち主に脳で強く発現する2つのサブユニット(GIRK2、3)について遺伝子多型を同定した。
GIRK2サブユニットに関しては、全エクソン領域、5´フランキング領域およびイントロンの一部を解析範囲とした。GIRK2サブユニット遺伝子は、4つのエクソンより構成され、エクソン3の翻訳領域、エクソン4の翻訳領域および3´非翻訳領域にそれぞれ1つずつ、計3つの遺伝子多型を日本人サンプルにおいて同定した。また、5´フランキング領域には5つの遺伝子多型を見出し、イントロンに1つの遺伝子多型を見出した(図1および表8参照)。連鎖不平衡解析の結果、5´フランキング領域の3つの遺伝子多型が強い連鎖不平衡であることを見出した。この連鎖不平衡ブロックを代表するTag SNPとしてG-1250Aが適切であることが見出された。
また、同様に、GIRK3サブユニット遺伝子に関しても、全エクソン領域、5´フランキング領域およびイントロンの一部を解析範囲とした。GIRK3サブユニット遺伝子は、3つのエクソンより構成され、エクソン3の翻訳領域に2つ、3´非翻訳領域に4つ、5´フランキング領域に4つの遺伝子多型を日本人サンプルにおいて同定した(図2および表8参照)。これらの遺伝子多型のうち、エクソン中でマイナーアレル頻度が特に高い遺伝子多型はC1339TおよびC1781Tなどであり、さらにアミノ酸置換を伴う遺伝子多型はC1339Tのみであった。
Figure 2008079607
表8において、「報告アレル」は、GenBank中に登録されている配列でのアレルを表す。「アミノ酸置換」は、遺伝子多型のアレルに依存して翻訳後のアミノ酸の種類が変化することを意味し、例えば「Ala366Val」は、翻訳後のペプチド鎖のN末端から366番目のアミノ酸がアラニンまたはバリンとなることを表す。なお「−」の表記は、いずれのアレルでもアミノ酸の種類は変化しないことを意味する。
また、表8において、「マイナーアレル頻度」は、マイナーアレルの割合を意味する。「被験者数」は、被験者となった健常者の人数を意味する。
(ハプロタイプ構築)
ハプロタイプ解析の例として、日本人健常者のGIRKチャネル遺伝子多型のうち、表8に示すGIRK2サブユニット遺伝子多型である9箇所のSNP、およびGIRK3サブユニット遺伝子多型である10箇所のSNPに関して、Haplotype Estimationを用いてハプロタイプを推定した。推定したハプロタイプを表9および表10に示す。
Figure 2008079607
Figure 2008079607
表9に示すように、日本人健常者におけるGIRK2サブユニット遺伝子多型のハプロタイプは、少なくとも14ハプロタイプが推定され、そのうち3%以上の高頻度でみられるものは9ハプロタイプあった(ハプロタイプ番号1〜9)。なお、3%未満の頻度で起こることが推定される5以上のハプロタイプについては、表9のハプロタイプ番号10にまとめて表記した。
また、表10に示すように、日本人健常者におけるGIRK3サブユニット遺伝子多型のハプロタイプは、9ハプロタイプが推定され、そのうち3%以上の高頻度でみられるものは5ハプロタイプあった(ハプロタイプ番号1〜5)。
表9および表10に示すハプロタイプ解析のハプロタイプ頻度に基づき、連鎖不平衡解析を行った。その結果を表11および表12に示す。表11に、日本人健常者におけるGIRK2サブユニット遺伝子多型間の連鎖不平衡を示す。また、表12に、日本人健常者におけるGIRK3サブユニット遺伝子多型間の連鎖不平衡を示す。
Figure 2008079607
Figure 2008079607
連鎖不平衡解析を行った結果(表11および表12)からHaploview(http://www.broad.mit.edu/mpg/haploview/index.phpからアクセス可能)を用いて連鎖不平衡ブロックを推定した。
表11において、上または左から順にA-1361Gを「SNP1」、G-1250Aを「SNP2」、・・・、C1843Gを「SNP9」とすると、SNP1とSNP2との連鎖不平衡の指標であるD´値を計算し、その値を表右上側のSNP1の行とSNP2の列の交わったセルに記している。また、連鎖不平衡のより厳しい指標であるr2値についても同様に計算し、その値を表左下側のSNP1の列とSNP2の行の交わったセルに記している。そして、連鎖不平衡解析の結果、完全連鎖不平衡(D´ = 1)を示す遺伝子多型の組み合わせについては数値に下線を付して表し、さらに完全連鎖不平衡(D´ = 1, r2 = 1)でもある組み合わせに関しては、値を太字斜体で表している。また、表12に関しても同様に表している。
表11のD´に着目すると、5´フランキング領域を中心に、多くの遺伝子多型の組み合わせにおいて、完全連鎖不平衡が確認された。また、r2値に着目すると、5´フランキング領域の3つの遺伝子多型が強い連鎖不平衡(完全連鎖不平衡)であることが分かった。この連鎖不平衡ブロックを代表するTag SNPとして、G-1250Aが適切であることが分かった。
また、表12のD´に着目すると、多くの遺伝子多型の組み合わせにおいて、完全連鎖不平衡が確認された。また、r2値に着目すると、5´フランキング領域およびエクソン3の3´非翻訳領域のそれぞれ2つずつの遺伝子多型が強い連鎖不平衡であることが分かった。
また、連鎖不平衡解析を行った結果(表11および表12)からHaploview(http://www.broad.mit.edu/mpg/haploview/index.phpからアクセス可能)を用いて連鎖不平衡ブロックを推定した。その結果、表11に示すGIRK2サブユニット遺伝子のSNPについては、Tag SNPのG-1250Aを含む1つの連鎖不平衡ブロックを確認した。同様に、表12に示すGIRK3サブユニット遺伝子のSNPについては、5´フランキング領域およびエクソン3の3´非翻訳領域に合計2つの連連鎖不平衡ブロックを確認した。
<GIRK2サブユニット遺伝子多型(A1032G)と、鎮痛薬投与必要回数および総鎮痛薬量との相関>
GIRKチャネル遺伝子多型と、鎮痛薬投与必要回数との相関を調べた。外科手術を受けた123名の患者の血液または口腔粘膜よりゲノムDNAを抽出し、GIRK2サブユニット遺伝子の1つの遺伝子多型(A1032G)を判定した。そして、これら遺伝子多型の判定結果と、術後の鎮痛薬投与必要回数および総鎮痛薬量との相関を解析した。
なお、鎮痛薬としては、主に静脈内投与されるペンタゾシンおよびペチジン、主に座薬として投与されるブプレノルフィン、ジクロフェナクおよびインドメタシン、また点滴静脈内注射されるフルルビプロフェンアキセチル、並びに硬膜外モルヒネおよびマーカインといった鎮痛薬を用いた。
なお、ペンタゾシン換算総鎮痛薬量とは、投与した各鎮痛薬をペンタゾシンに換算した場合の総鎮痛薬量(mg)を意味する。各鎮痛薬のペンタゾシンへの換算は、30mgペンタゾシンと等力価が、35mgペチジン(オピスタン)、0.4mgブプレノルフィン(レペタン)、100mgジクロフェナク(ボルタレン)、100mgフルルビプロフェンアキセチル(ロピオン)、2mg硬膜外モルヒネ、20mlマーカイン(0.5%)として換算した。
その結果、下記表13および図3に示すように、遺伝子多型(A1032G)についてメジャーアレル(G)を持たない患者群は、当該アレルGを持つ患者群と比較して、鎮痛薬投与必要回数が有意に多かった。しかも、これらの結果は男女(男性:M、女性:F)でほぼ同じであった。
Figure 2008079607
また、GIRKチャネル遺伝子多型と、総鎮痛薬量との相関を調べた。その結果、下記表14および図4に示すように、遺伝子多型(A1032G)について、メジャーアレル(G)を持たない患者群は、当該アレルGを持つ患者群と比較して、総鎮痛薬量が統計学的に多い傾向が認められた。特に、女性では統計学的に有意に多かった(P=0.033)。
Figure 2008079607
以上の結果より、GIRK2サブユニット遺伝子多型(A1032G)のメジャーアレル(G)を持たない個体は、鎮痛薬に対する感受性が低いと考えられ、鎮痛薬投与必要回数および総鎮痛薬量が多いことが分かった。したがって、GIRKチャネル遺伝子多型を判定することで、鎮痛薬投与必要回数、および総鎮痛薬量を容易に予測しうることが示された。
<GIRK2サブユニット遺伝子多型(A1032GおよびG-1250A)と、鎮痛薬投与必要回数および総鎮痛薬量との相関>
GIRK2サブユニット遺伝子多型と、鎮痛薬投与必要回数との相関を調べた。上記のGIRK2サブユニット遺伝子多型(A1032G)の判定結果に、GIRK2サブユニット遺伝子5´フランキング領域の連鎖不平衡ブロックを代表するTag SNPである遺伝子多型(G-1250A)の判定結果を加えた場合の、術後の鎮痛薬投与必要回数および総鎮痛薬量との相関を解析した。なお、解析対象データは実施例2と同じとした。
解析の結果、下記表15および図5に示すように、鎮痛薬投与必要回数に関して、遺伝子多型(A1032G)でのメジャーアレル(G)の有無と、遺伝子多型(G-1250A)でのメジャーアレル(A)の有無とは、有意な交互作用を示した。
すなわち、2つのGIRK2サブユニット遺伝子多型(A1032GおよびG-1250A)でのメジャーアレルも持たない患者群は、いずれか1つのメジャーアレルを持つ患者群、両方のメジャーアレルを持つ患者群と比較して、鎮痛薬投与必要回数が有意に多かった。
Figure 2008079607
また、GIRK2サブユニット遺伝子多型(A1032GおよびG-1250A)と、総鎮痛薬量との相関を調べた。その結果、総鎮痛薬量に関しても、下記表16および図6に示すように、遺伝子多型(A1032G)でのアレルGの有無と、遺伝子多型(G-1250A)でのアレルAの有無とは、有意な交互作用を示した。
すなわち、遺伝子多型(A1032GおよびG-1250A)での両方のメジャーアレルも持たない患者群は、いずれか1つのメジャーアレルを持つ患者群、両方のメジャーアレルを持つ患者群と比較して、総鎮痛薬量が有意に多かった。
Figure 2008079607
以上の結果より、GIRK2サブユニット遺伝子5´フランキング領域の連鎖不平衡ブロックを代表するTag SNPである遺伝子多型(G-1250A)を、GIRK2サブユニット遺伝子の遺伝子多型(A1032G)に加えて判定することで、鎮痛薬投与必要回数、および総鎮痛薬量をより容易に予測しうることが示された。すなわち、GIRKチャネル遺伝子における複数の遺伝子多型の判定結果から、鎮痛薬投与必要回数、および総鎮痛薬量を容易に予測できることが分かった。
<GIRK3サブユニット遺伝子多型とメタンフェタミン感受性との相関>
GIRKチャネル遺伝子多型と薬物依存脆弱性に関する薬物感受性との相関を調べるため、メタンフェタミン依存患者197名と健常者360名の血液よりゲノムDNAを抽出し、GIRK3サブユニット遺伝子多型(C1339T)を判定した。その結果を下記表17に示す。
表17から分かるように、健常者に比べてメタンフェタミン依存患者では非同義置換である遺伝子多型(C1339T)のマイナーアレル(T)頻度が有意に高いことが示され、遺伝子型頻度および対立遺伝子(アレル)頻度のいずれにおいても顕著な頻度差が認められた。
Figure 2008079607
また、GIRKチャネル遺伝子多型と覚醒剤精神病遷延化に関する薬物感受性との相関を調べるため、覚醒剤精神病が遷延化(1ヶ月以上)した患者群と健常者群とを比較した。その結果を下記表18に示す。ここで、メタンフェタミン依存患者を、妄想・幻覚の持続時間が1ヶ月未満であった早期消退型と、妄想・幻覚の持続時間が1ヶ月以上であった遷延・持続型の2群に分類した。
表18から分かるように、遺伝子多型(C1339T)に関して、遺伝子型頻度およびアレル頻度のいずれにおいても顕著な頻度差が認められた。
Figure 2008079607
以上の結果から、GIRKチャネル遺伝子多型における遺伝子型頻度およびアレル頻度を判定することにより、薬物依存脆弱性、および覚醒剤精神病遷延化に関する薬物感受性を容易に予測しうることが示された。
GIRK2サブユニット遺伝子多型のスクリーニング範囲および同定された遺伝子多型を示す概略図。図中、斜線部分は遺伝子の非翻訳領域を表し、黒色部分は遺伝子の翻訳領域を表す。図上方の矢印は健常者サンプルを用いた遺伝子多型のスクリーニング範囲を示す。図下方の矢印は同定された各遺伝子多型の名称および相対的な位置を示す。 GIRK3サブユニット遺伝子多型のスクリーニング範囲および同定された遺伝子多型を示す概略図。図中、斜線部分は遺伝子の非翻訳領域を表し、黒色部分は遺伝子の翻訳領域を表す。図下方の矢印は同定された各遺伝子多型の名称および相対的な位置を示す。 外科手術において鎮痛薬を投与された患者における、術後24時間の投与必要回数に対するGIRK2サブユニット遺伝子多型(A1032G)の効果(男女の平均±標準誤差)を示すグラフ。 外科手術において鎮痛薬を投与された患者における、ペンタゾシン換算総鎮痛薬量に対するGIRK2サブユニット遺伝子多型(A1032G)の効果(男女の平均±標準誤差)を示すグラフ。 外科手術において鎮痛薬を投与された患者における、術後24時間の投与必要回数に対するGIRK2サブユニット遺伝子多型(A1032GおよびG-1250A)の効果を示すグラフ。 外科手術において鎮痛薬を投与された患者における、ペンタゾシン換算総鎮痛薬量に対するGIRK2サブユニット遺伝子多型(A1032GおよびG-1250A)の効果を示すグラフ。
配列番号1:GIRK2サブユニット遺伝子の遺伝子多型(A-1361G)を含むオリゴヌクレオチド。塩基配列中のrは遺伝子多型(A-1361G)を示す。
配列番号2:GIRK2サブユニット遺伝子の遺伝子多型(G-1250A)を含むオリゴヌクレオチド。塩基配列中のrは遺伝子の遺伝子多型(G-1250A)を示す。
配列番号3:GIRK2サブユニット遺伝子の遺伝子多型(T-244C)を含むオリゴヌクレオチド。塩基配列中のyは遺伝子多型(T-244C)を示す。
配列番号4:GIRK2サブユニット遺伝子の遺伝子多型(C-227T)を含むオリゴヌクレオチド。塩基配列中のyは遺伝子多型(C-227T)を示す。
配列番号5:GIRK2サブユニット遺伝子の遺伝子多型(A-68G)を含むオリゴヌクレオチド。塩基配列中のrは遺伝子多型(A-68G)を示す。
配列番号6:GIRK2サブユニット遺伝子の遺伝子多型(IVS1C75167T)を含むオリゴヌクレオチド。塩基配列中のyは遺伝子多型(IVS1C75167T)を示す。
配列番号7:GIRK2サブユニット遺伝子の遺伝子多型(A1032G)を含むオリゴヌクレオチド。塩基配列中のrは遺伝子多型(A1032G)を示す。
配列番号8:GIRK2サブユニット遺伝子の遺伝子多型(C1569T)を含むオリゴヌクレオチド。塩基配列中のyは遺伝子多型(C1569T)を示す。
配列番号9:GIRK2サブユニット遺伝子の遺伝子多型(C1843G)を含むオリゴヌクレオチド。塩基配列中のsは遺伝子多型(C1843G)を示す。
配列番号10:GIRK3サブユニット遺伝子の遺伝子多型(A-1329C)を含むオリゴヌクレオチド。塩基配列中のmは遺伝子多型(A-1329C)を示す。
配列番号11:GIRK3サブユニット遺伝子の遺伝子多型(C-979G)を含むオリゴヌクレオチド。塩基配列中のsは遺伝子多型(C-979G)を示す。
配列番号12:GIRK3サブユニット遺伝子の遺伝子多型(C-968G)を含むオリゴヌクレオチド。塩基配列中のsは遺伝子多型(C-968G)を示す。
配列番号13:GIRK3サブユニット遺伝子の遺伝子多型(A-447G)を含むオリゴヌクレオチド。塩基配列中のrは遺伝子多型(A-447G)を示す。
配列番号14:GIRK3サブユニット遺伝子の遺伝子多型(C1211T)を含むオリゴヌクレオチド。塩基配列中のyは遺伝子多型(C1211T)を示す。
配列番号15:GIRK3サブユニット遺伝子の遺伝子多型(C1339T)を含むオリゴヌクレオチド。塩基配列中のyは遺伝子多型(C1339T)を示す。
配列番号16:GIRK3サブユニット遺伝子の遺伝子多型(C1781T)を含むオリゴヌクレオチド。塩基配列中のyは遺伝子多型(C1781T)を示す。
配列番号17:GIRK3サブユニット遺伝子の遺伝子多型(C1817T)を含むオリゴヌクレオチド。塩基配列中のyは遺伝子多型(C1817T)を示す。
配列番号18:GIRK3サブユニット遺伝子の遺伝子多型(G2069A)を含むオリゴヌクレオチド。塩基配列中のrは遺伝子多型(G2069A)を示す。
配列番号19:GIRK3サブユニット遺伝子の遺伝子多型(C2429T)を含むオリゴヌクレオチド。塩基配列中のyは遺伝子多型(C2429T)を示す。
配列番号20:GIRK2サブユニット遺伝子の遺伝子多型(G-1250A)を検出するためのプライマーの塩基配列。
配列番号21:GIRK2サブユニット遺伝子の遺伝子多型(G-1250A)を検出するためのプライマーの塩基配列。
配列番号22:GIRK2サブユニット遺伝子の遺伝子多型(A1032G)を検出するためのプライマーの塩基配列。
配列番号23:GIRK2サブユニット遺伝子の遺伝子多型(A1032G)を検出するためのプライマーの塩基配列。
配列番号24:GIRK3サブユニット遺伝子の遺伝子多型(C1339T)を検出するためのプライマーの塩基配列。
配列番号25:GIRK3サブユニット遺伝子の遺伝子多型(C1339T)を検出するためのプライマーの塩基配列。

Claims (22)

  1. GIRKチャネル遺伝子の遺伝子多型、または該遺伝子多型により構成されるハプロタイプと、個体の薬物感受性とを関連づけることを特徴とする、薬物感受性の評価方法。
  2. 以下の工程を含む、請求項1に記載の方法。
    (1)健常者における連鎖不平衡解析およびハプロタイプ解析を行い、連鎖不平衡ブロック内の遺伝子多型を選択する
    (2)被験者における該遺伝子多型の遺伝子型と薬物感受性との間の関連を解析する
    (3)被験者において薬物感受性と有意に関連した遺伝子多型を薬物感受性の評価に用いる
  3. GIRKチャネル遺伝子の遺伝子多型、または該遺伝子多型により構成されるハプロタイプと、個体の疾患脆弱性とを関連づけることを特徴とする、疾患脆弱性の評価方法。
  4. 以下の工程を含む、請求項3に記載の方法。
    (1)健常者における連鎖不平衡解析およびハプロタイプ解析を行い、連鎖不平衡ブロック内の遺伝子多型を選択する
    (2)被験者における該遺伝子多型の遺伝子多型頻度を、健常者における該遺伝子多型の遺伝子多型頻度と比較する
    (3)被験者と健常者とで遺伝子多型頻度に有意差のある遺伝子多型を疾患脆弱性の評価に用いる
  5. 疾患脆弱性が、疼痛感受性または薬物依存への脆弱性である請求項3または4に記載の方法。
  6. 遺伝子多型が、一塩基多型、挿入型多型、欠失型多型および塩基繰り返し多型からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 遺伝子多型がGIRK2遺伝子のA-1361G、G-1250A、T-244C、C-227T、A-68G、IVS1C75167T、A1032G、C1569TおよびC1843G、並びにGIRK3遺伝子のA-1329C、C-979G、C-968G、A-447G、C1211T、C1339T、C1781T、C1817T、G2069AおよびC2429Tから選ばれる少なくとも1つである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. ハプロタイプが以下の表に示されるものから選ばれる少なくとも1つである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
    Figure 2008079607
    Figure 2008079607
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法により評価された結果を指標として、個体に投与する薬物の種類、量および/または投与回数を決定する方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法により評価された結果を指標として、個体に投与する薬物の副作用を予測する方法。
  11. 薬物が、GIRKチャネル機能修飾薬および/またはミューオピオイド受容体機能修飾薬である、請求項1、2、5、9および10のいずれか1項に記載の方法。
  12. GIRKチャネル機能修飾薬が、モルヒネ、DAMGO、コデイン、メサドン、カルフェンタニール、フェンタニール、ヘロイン、ナロキソン、ナルトレキソン、ナロルフィン、レバロルファン、ペンタゾシン、ペチジン、ブプレノルフィン、オキシコドン、ヒドロコドン、レボルファノール、エトルフィン、ジヒドロエトルフィン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、トラマドール、ジクロフェナク、インドメタシン、フルルビプロフェンアキセチル、マーカイン、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、フルピルチン、笑気、F3(1クロロ1,2,2トリフルオロサイクロブタン)、ハロセン、エストラジオール、ジチオトレイトール、チオリダジン、ピモザイド、フルオキセチン、パロキセチン、デシプラミン、イミプラミン、クロミプラミン、テトラミド、イソフルレン、ギンセノシド、イフェンプロディール、ブピバカイン、テルチアピン、クロザピン、ハロペリドール、SCH23390、およびコカインからなる群から選択される少なくとも1つであり、ミューオピオイド受容体機能修飾薬が、メタンフェタミン、メチレンジオキシメタンフェタミン、アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、ドパミン、モルヒネ、DAMGO、コデイン、メサドン、カルフェンタニール、フェンタニール、ヘロイン、コカイン、ナロキソン、ナルトレキソン、ナロルフィン、レバロルファン、ペンタゾシン、ブプレノルフィン、オキシコドン、ヒドロコドン、レボルファノール、エトルフィン、ジヒドロエトルフィン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、エタノール、メタノール、ジエチルエーテルおよびトラマドールからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項11記載の方法。
  13. GIRKチャネル遺伝子の遺伝子多型を含むDNA断片に特異的にハイブリダイズしうる、配列番号1〜19のいずれか1に示す塩基配列のうち第51番目の塩基を含む少なくとも10塩基長の塩基配列または該塩基配列に相補的な配列からなるオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記オリゴヌクレオチドの長さが10〜150塩基長である請求項13に記載の方法。
  15. 前記オリゴヌクレオチドが配列番号1〜19のいずれか1に示す塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列からなる群から選択されるオリゴヌクレオチドである請求項13または14に記載の方法。
  16. GIRKチャネル遺伝子の遺伝子多型を含むDNA断片に特異的にハイブリダイズしうる、配列番号1、9、10、11および14のいずれか1に示す塩基配列のうち第51番目の塩基を含む少なくとも10塩基長の塩基配列または該塩基配列に相補的な配列からなるオリゴヌクレオチド。
  17. 10〜150塩基長の長さを有する、請求項16に記載のオリゴヌクレオチド。
  18. 配列番号1、9、10、11および14のいずれか1に示す塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド。
  19. 請求項16〜18のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドが支持体に固定されたマイクロアレイ。
  20. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法において、GIRKチャネル遺伝子多型の検出に用いる配列番号20〜25のいずれか1に示す塩基配列からなるプライマー。
  21. 請求項16〜18のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドおよび/または請求項19に記載のマイクロアレイおよび/または請求項20に記載のプライマーを含む、薬物感受性評価用キット。
  22. 請求項16〜18のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドおよび/または請求項19に記載のマイクロアレイおよび/または請求項20に記載のプライマーを含む、疾患脆弱性評価用キット。
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