JP2008070826A - 赤外線遮蔽レンズアレイ - Google Patents

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Abstract

【課題】不要な赤外光を吸収することで遮断し、且つ膜層数及び総膜厚を減らしながらも赤外線を大幅に遮蔽できる赤外線遮蔽膜を有するレンズアレイを提供する。
【解決方法】少なくとも一方の主面上に複数の微小レンズが形成されてなる透光性の基板と、前記基板の、前記主面及び裏面の少なくとも一方に、透明な赤外線吸収膜と誘電体膜とが交互に積層されてなる交互多層膜部分と、前記交互多層膜部分に隣接するようにして設けられた、少なくとも2種以上の誘電体膜が交互に積層してなる誘電体多層膜部分とから赤外線遮蔽レンズアレイを構成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、不要な赤外線、すなわち赤外波長域の光を遮蔽する、プロジェクタなどの投影装置に用いることのできる赤外線遮蔽レンズアレイに関する。
インテグレータレンズ又はフライアイレンズなどとも称されるレンズアレイは、例えば軟化状態のガラスを、マトリックス状にレンズアレイの形状が刻まれた金型で1つずつプレス成形した後、レンズの刻まれていない面を研磨することで例えば矩形板状に成形され、形成される。
一方、このようなレンズアレイが搭載される投影光学系においては、所定の光源から前記レンズアレイに対して可視光のみならず、紫外光及び赤外光をも含んだ、いわゆる白色光(自然光)が照射される。しかしながら、従来のレンズアレイにおいては、光の波長に対する遮蔽効果を有していないため、上述した総ての波長域の光を透過させてしまう結果となる。紫外光は、液晶装置を劣化させる原因となり、赤外光は装置内の温度上昇の原因となる。
かかる観点より、従来、レンズアレイの光透過面には、紫外光や赤外光を反射する誘電体多層膜よりなるフィルタが設けられている。前記誘電体多層膜は、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを複数積層したものであり、紫外光及び赤外光の波長を反射し、可視域の波長を透過するよう分光特性が調整されるものである(特許文献1)。
また、誘電体多層膜の高屈折率材料層又は低屈折率材料層の内、少なくとも1層を透明導電性材料層としたものなども用いられている。これにより、可視光の透過率を高く維持した上で、不要な紫外波長域の光(以下、「紫外光」という場合がある)及び赤外光をシャープに反射しながら、透明導電材料層により赤外光を吸収することができる(特許文献2)。
特開平06−75200号公報 特開2000−221322号公報
レンズアレイを光学部品として用いる投影表示装置は、近年の高輝度化により光源ランプの出力が高くなっており、光源より放射される赤外光の放射エネルギーは高くなっている。赤外光に起因する熱問題を防ぐためには、赤外光を広範囲で遮蔽したり、赤外光の透過率を下げたりする必要があり、そのためには誘電体多層膜の膜層数を増やす必要があった。しかしながら、膜層数が増えると総膜厚が増え、結果として成膜時に膜に付着する異物のサイズが大きくなるという問題がある。また成膜時間が長くなると、生産性・歩留まりが悪くなり低コストでの生産が困難となる。
なお、成膜時に誘電体多層膜に付着する異物のサイズは、総膜厚に比例して大きくなる。成膜工程において、成膜の前段階の排気、ガス導入時の真空チャンバ内に気体の流動があるとき、異物の核となる微小ダストが被成膜体に付着する。そして、この微小ダスト上に膜が堆積することで成長し異物を形成する。このため、総膜厚が多いほど、異物のサイズは大きくなる。
また、投影表示装置であるプロジェクタは、パーソナルコンピュータやDVDドライブなどの映像関連機器の普及に伴って、プレゼンテーションなどで利用される業務用から、一般家庭用に至るまで用途が拡大している。それに伴って、こうした装置の内部に使用されるレンズアレイなどの光学部品には低価格化が要求されている。しかし、前述のように積層数及び総膜厚が増大した誘電体多層膜からなる赤外線反射膜を用いた場合は、生産性及び歩留まりの低下から前記投影表示装置のコスト増となる問題がある。
さらに、誘電体多層膜と透明導電材料層とを用いた赤外線反射膜の場合、前記透明導電材料層により長波長域の赤外光は遮蔽できるものの、前記透明導電材料層を単層で用いると成膜時の屈折率変動に対して分光特性が安定せず、赤外光の分光透過率が増大してしまう恐れがある。また、可視光の分光透過率のリップルが大きくなるという問題がある。
本発明の目的は、上記の事情に基づきなされたものであり、不要な赤外光を吸収することで遮断し、且つ膜層数及び総膜厚を減らしながらも赤外線を大幅に遮蔽でき、さらには成膜時の屈折率変動に対しても分光特性を安定化させるとともに、可視光の分光透過率のリップルを減少させた赤外線遮蔽膜を有するレンズアレイを提供することである。
上記目的を達成するために、本発明は、
少なくとも一方の主面上に複数の微小レンズが形成されてなる透光性の基板と、
前記基板の、前記主面及び裏面の少なくとも一方に、透明な赤外線吸収膜と誘電体膜とが交互に積層されてなる交互多層膜部分と、
前記交互多層膜部分に隣接するようにして設けられた、少なくとも2種以上の誘電体膜が交互に積層してなる誘電体多層膜部分と、
を具えることを特徴とする、赤外線遮蔽レンズアレイに関する。
本発明の赤外線遮蔽レンズアレイは、従来のような誘電体多層膜部分に加えて交互多層膜部分を有している。そして、前記交互多層膜部分中には、透明な赤外線吸収膜と誘電体膜とが交互に積層されている。したがって、前記交互多層膜部分中では、前記赤外線吸収膜が、赤外線吸収作用を有することに加え、その透明性に起因して誘電体膜よりも屈折率の高い高屈折率材料層として機能し、前記交互多層膜部分全体として、赤外光に対して高い反射作用を有するようになる。
このように、本発明の赤外線遮蔽レンズアレイでは、上記誘電体多層膜部分は従来のように赤外光の反射の効果しか有さないが、前記交互多層膜部分は赤外光の吸収及び反射という両方の効果を有する。したがって、前記交互多層膜部分を上記誘電体多層膜部分に対して隣接して設けることにより、同様の赤外光反射効果を有する場合においても、前記誘電体多層膜部分の厚さを大幅に低減することができ、結果として、前記赤外線遮蔽膜の全体の厚さを低減することができる。
この結果、赤外線遮蔽膜の全体の厚さが増大したり、積層数が増大したりすることに起因した生産性及び歩留まりの低下によるコスト増という問題を回避することができる。
なお、本発明でいう「透明」とは、可視光域(380nm〜780nm)の分光透過率が45%以上を示す場合を意味する。本発明で用いる赤外線吸収膜の可視光域の分光透過率がこれより低いと、得られる赤外線遮蔽膜の可視光域の分光透過率も低くなり、目的とする赤外線遮蔽レンズアレイ用途としては好ましくない。
また、本発明の一態様においては、前記交互多層膜部分は、前記赤外線吸収膜を2層以上有するように構成することができる。赤外線吸収膜を単層となるように構成した場合は、長波長域の赤外光は遮蔽できるものの、成膜時の屈折率変動に対して分光特性が安定せず、赤外光の分光透過率が増大したり、可視光の透過率リップルが生じたりしてしまう恐れがある。
しかしながら、本態様のように、上記赤外線吸収膜を2層以上とすることにより、結果的に前記赤外線吸収膜を含む交互多層膜部分の積層数を細分化し、これらの細分化した層の膜厚や屈折率を調整することで屈折率変動に対する分光特性が安定する。よって、成膜方法などに起因して赤外線遮蔽膜の屈折率が初期の仕様に対して変動したとしても、分光特性の変化は少なく赤外光の分光透過率の増大が抑制される。
また、同様に赤外線吸収膜を2層以上とすることにより、結果的に前記赤外線吸収膜を含む交互多層膜部分の積層数を細分化し、その増加した層の膜厚や屈折率を調整することで赤外線遮蔽膜の分光特性が安定化することにより、可視光の透過率リップルの発生を抑制することができる。
なお、赤外光の分光透過率が増大すると、レンズアレイの一面側に配置された光源装置の照射光のうち、赤外光が多量にレンズアレイを透過し投影表示装置内に照射されることになり、装置内の温度が上昇したり、液晶パネル等が熱害を受ける恐れがあるが、本態様においてはこのような赤外光に起因する熱害を防止することができる。
また、可視光の透過率リップルを抑制することができるので、投影表示装置内で分光される各色の輝度のばらつきが少なく、投影される画面は正確な色再現が可能となる。
また、本願明細書でいう「屈折率変動」とは、成膜方法に起因するもので、以下の要因が挙げられる。誘電体膜等の成膜時において、成膜開始時は真空チャンバ内の残留ガスが多く、成膜中に残留ガスが徐々に減少していく。このため、残留ガスと導入ガスとの比が成膜中に変化する。また、成膜中、被成膜体はシーズヒータやランプヒータ(ハロゲンランプ等)などを単独もしくは組み合わせて加熱される。真空蒸着方法で、薄膜を形成する場合、蒸着源が加熱され、この輻射熱が被成膜体の温度や真空チャンバ内の雰囲気温度を変化させる。
例えば、蒸着物質が酸化物の場合、被成膜体の温度が高くなると屈折率は高く変動する。その他、成膜速度の変化や導入ガス圧の変化、成膜中の成膜物質の化学的組成の変化(変質)も屈折率変動の要因となる。以上の成膜時の様々な変動要因により成膜方法による違いはあるものの、成膜時には数%程度の屈折率変動が起こることがある。
また、本願明細書でいう「分光透過率のリップル」とは、赤外線遮蔽膜の分光透過率のばらつきをいう。撮像装置等に用いられる赤外線遮蔽膜は赤外光を確実に遮蔽し、且つ可視光の透過率が高いことが求められ、特に可視光域(380nm〜780nm)における透過率のばらつきが大きいと所期の分光特性が得られない。そのため、可視光の透過率のばらつきは限りなく少なく、分光透過率のグラフでは可視光域がフラットであることが求められる。
さらに、本発明の一態様においては、前記赤外線吸収膜の1層当たりの膜厚を10nm〜200nmの範囲とすることができ、前記赤外線吸収膜が2層以上存在する場合は、その全体の厚さを500nm以下とすることができる。1層当たりの膜厚の上限を200nm及び2層以上の全体の厚さの上限を500nmとしたのは、それ以上の厚さでは可視光の透過率が減少し、例えば上述した装置などに本発明の赤外線遮蔽レンズアレイを組み込んだ場合に、コントラストの高い投影像を得ることができなくなる場合があるためである。
また、前記赤外線吸収膜の1層当たりの膜厚の下限を10nmとしたのは、前記赤外線吸収膜が実際に膜状に存在し、その赤外線吸収及び反射の機能を十分に発揮させるようにするためである。
さらに、本発明の一態様においては、前記赤外線吸収膜の、波長1000nmにおける消衰係数を0.1以上とすることが好ましく、より好ましくは0.15以上、特に好ましくは0.2以上である。この消衰係数が0.1より小さくなると、赤外光の吸収性が小さくなり、所望の分光特性を得ることができなくなる場合がある。
また、本発明の一態様においては、前記赤外線吸収膜は、インジウム、インジウム系複合酸化物、錫、錫系複合酸化物、亜鉛、及び亜鉛系複合酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことができる。この場合、前記赤外線吸収膜は上述した赤外光の吸収及び反射という効果をより発揮することができるようになり、その作用効果を増大させることができるようになる。
さらに、本発明の一態様においては、前記交互多層膜部分及び前記誘電体多層膜部分は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンビーム法、イオンプレーティング法、及びCVD法によって形成することができる。これによって、前記交互多層膜部分や前記誘電体多層膜部分などの積層数が比較的多い場合でも、各層の厚さを高精度に制御しながら、前記交互多層膜部分及び前記誘電体多層膜部分を比較的容易に形成することができる。また、スパッタリング法やイオンプレーティング法はいわゆるプラズマ雰囲気処理であるので、前記交互多層膜部分及び前記誘電体多層膜部分間、さらには基板などへの密着性を向上させることができる。また、イオンビーム法やCVD法では、緻密であり剥がれ難い前記交互多層膜部分及び前記誘電体多層膜部分を形成することができる。
また、本発明の一態様においては、基板の前記主面及び前記裏面の少なくとも一方に形成した反射防止膜を設けることができる。この場合、前記反射防止膜の厚さを例えば可視域の光に対する反射防止条件を満足するように設定することにより、上記赤外線遮蔽レンズアレイ内に入射する可視光量を増大させることができるので、結果的に、前記赤外線遮蔽レンズアレイに対する可視光透過率を増大させることができる。
なお、前記反射防止膜を前記基板の前記主面側に設ける場合は、前記交互多層膜部分又は前記誘電体多層膜部分に接触するようにして形成することになる。具体的には、前記基板と前記交互多層膜部分との界面や、前記誘電体多層膜部分上に形成するが、もちろんその他の態様も適宜採用することができる。
また、微小な複数のレンズを形成するための透光性の基板は、硼珪酸ガラスなどの耐熱性が高いガラス素材から形成することができ、以下に詳述するように、これらの材料が軟化状態にある際に、金型加工などを施すことによって形成することができる。
以上説明したように、本発明によれば、不要な赤外光を吸収することで遮断し、且つ膜層数及び総膜厚を減らしながらも赤外線を大幅に遮蔽できる赤外線遮蔽膜を有するレンズアレイを提供することができるようになる。
以下、本発明のその他の特徴及び利点などに関し、発明を実施するための最良の形態に基づいて詳細に説明する。
(赤外線遮蔽レンズアレイ)
図1は、本発明の赤外線遮蔽レンズアレイの一例を概略的に示す構成図であり、図2は、図1に示すレンズアレイの透光性基板を拡大して示す図である。図1に示す赤外線遮蔽レンズアレイ10は、透光性の基板11と、その主面上において順次に形成された交互多層膜部分12及び誘電体多層膜部分13とを含む。そして、交互多層膜部分12と誘電体多層膜部分13とから赤外線遮蔽膜が構成されている。
また、図2に示すように、基板11の前記主面上には、微小な複数のレンズ11Aが形成されており、基板11単独で所定のレンズアレイを構成する。また、基板11の主面上に複数のレンズ11Aが形成されていることにより、交互多層膜部分12及び誘電体多層膜部分13はレンズ11Aを介して積層されていることになる。なお、本例では、基板11の一方の主面のみにレンズ11Aを形成している場合について示しているが、両面にレンズ11Aを形成することもできる。また、交互多層膜部分12及び誘電体多層膜部分13は、レンズ11Aが形成されている主面の裏面側に設けられていてもよい。
交互多層膜部分12は、赤外線吸収膜121と誘電体膜122とが交互に積層されている。なお、本態様では、赤外線吸収膜121及び誘電体膜122を2層交互に積層しているが、積層数はそれぞれ単層とすることもできるし、3層以上とすることもできる。また、単層の赤外線吸収膜121を誘電体膜122で挟み込むようにして構成することもできる。
但し、赤外線吸収膜121を2層以上とすることにより、交互多層膜部分12の積層数を細分化し、たとえ赤外線吸収膜121自体が成膜方法などに起因してその屈折率変動が生じたとしても、交互多層膜部分12の全体で見た場合は、赤外線吸収膜121の屈折率変動をキャンセルするように作用する。したがって、このような赤外線吸収膜の屈折率変動に起因した上記赤外光の分光透過率の増大が抑制される。
また、同様に赤外線吸収膜を2層以上とすることにより、結果的に前記赤外線吸収膜を含む交互多層膜部分の積層数を細分化し、その増加した層が分光特性の安定化に寄与することにより、可視光の透過率リップルの発生を抑制することができる。
赤外線吸収膜121は以下に説明するように、単体では赤外光の吸収機能を、誘電体膜と組み合わさることで反射機能を奏するものであり、かかる機能を考慮した場合、インジウム、インジウム系複合酸化物、錫、錫系複合酸化物、亜鉛、及び亜鉛系複合酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1つから構成されることが好ましい。具体的には、InやITO(酸化インジウム錫)、Sn、ZnO、AZO(酸化アルミニウム亜鉛)、GZO(GaドープのZnO)などを例示することができる。しかしながら、上記赤外光の吸収及び反射の機能を有する限り、その他の酸化物などの使用を妨げるものではない。
また、誘電体膜122は、所定の誘電体、例えば酸化珪素や酸化チタンなどの酸化物から構成することができる。但し、酸化チタンなどは酸化珪素に比較して一般に屈折率が高いので、赤外線吸収膜121としてITOなどを使用する場合は、誘電体膜122として酸化珪素などの比較的屈折率の低いものから構成することが好ましい。これによって、交互多層膜部分12の全体として、赤外光に対して高い反射機能を奏するようになる。
また、赤外線吸収膜121は1層当たり10nm〜200nmの厚さに設定することができる。1層当たりの膜厚の上限を200nmとすることにより、可視光の透過率減少を抑制することができ、図1に示す赤外線遮蔽レンズアレイ10を例えば投影表示装置などに組み込んだ場合に、コントラストの高い投影像を得ることができるようになる。なお、赤外線吸収膜121の1層当たりの膜厚を10nm以上とするのは、赤外線吸収膜121が実際に膜状に存在し、その赤外線吸収及び反射の機能を十分に発揮させるようにするためである。
なお、図1に示す構成のように赤外線吸収膜121を2層以上とする場合は、上記同様の理由から、その全体の厚さを500nm以下とする。
また、赤外線吸収膜121の、波長1000nmにおける消衰係数は0.1以上とすることが好ましい。この消衰係数が0.1より小さくなると、赤外光の吸収性が小さくなり、所望の分光特性を得ることができなくなる場合がある。上記ITOなどの複合酸化物は、この要求を満足するものであるので、かかる観点からも本例、すなわち本発明において好ましく用いることができる。
なお、消衰係数とは次のような物理的意義を有するものである。物質が光を吸収する場合に、その光の強度はI=I−αXなる関係式に従って減衰する。ここで、αは単位長さ当たりの減衰を示す吸収係数であり、Xは前記物質中を進行した前記光の距離を表す。光がある厚さの物質を透過した時の吸収量(光学濃度)は、OD=−log(I/I)と定義される。したがって、これら2つの式を比較すると、前記物質の厚さがLの場合に、ODとαとはα=2.303×OD/Lなる関係を満たすことになる。
ところで、αは上述したように吸収係数であるから、単位長さ当たりの吸収量を表すことになる。一方、光と物質との相互作用を理論的に扱う場合には、光の電磁場の振動1回当たりの吸収量の方が基準となる。このため、物質の光の吸収を定義する量として消衰係数kが定義されている。
一方、吸収係数αと消衰係数kとの間には、k=α×λ/4πという関係があることが知られている。但し、λは真空中での光の波長を示す。これより、ある波長領域で光学濃度が一定の試料があったとすると、吸収係数には波長依存性がないが、消衰係数は長波長ほど大きくなる。消衰係数は、層の各波長における吸収割合を示す数値であり、屈折率の虚数部分にあたる。具体的には、分光器で測定した透過、反射スペクトルにCauchyの式を適用することにより算出できる。また、光学異方性のない基材(珪素、ポリカーボネート、ガラスなど)上へ形成した薄膜を、エリプソメトリ(偏光解析法)を用いることによっても算出することができる。
また、誘電体多層膜部分13は、従来のように、異なる2種の材料層、すなわち低屈折率材料層131及び高屈折率材料層132が交互に積層されたものであり、赤外線反射膜として機能する。したがって、各材料層を構成する誘電体は従来同様の公知のものを用いることができる。例えば、酸化珪素や酸化チタンなどを用いることができる。この場合、酸化珪素が低屈折率材料層であり、酸化チタンが高屈折率材料層である。
さらに、基板11は、硼珪酸ガラスなどの耐熱性の高いガラス素材を本発明の赤外線遮蔽レンズアレイの構成材料として好適に用いることができる。但し、レンズ11Aを形成するに際しては、上述した材料を軟化状態の下に金型成形などを行って形成する。
なお、交互多層膜部分12及び誘電体多層膜部分13には、各層の屈折率を調整する目的で添加剤を含有させることもできる。このような添加剤としては、SiO、Al、CeO、FeO、HfO、In、MgF、Nb、SnO、Ta、TiO、Y、ZnO、ZrO、NiO、ITO、ATO、MgOなどを挙げることができる。
なお、上記添加剤を含有させることによる屈折率の増減は、前記添加剤の種類と添加すべき層の材料組成とに起因する。例えば、層の屈折率よりも小さい屈折率の添加剤を含有させた場合は、前記層全体の屈折率は低下するが、層の屈折率よりも大きい屈折率の添加剤を含有させた場合は、前記層全体の屈折率が増大する。
このような添加剤を含有させることによって層の屈折率は変化するようになるが、その際の屈折率変化は、例えば誘電体多層膜部分13中における低屈折率材料層131及び高屈折率材料層132間の屈折率差が増大するようにする。すなわち、前記添加剤は、低屈折率材料層131及び高屈折率材料層132間の屈折率差が増大するようにして添加する。
このような構成の赤外線遮蔽レンズアレイ10に対して、例えば図1に矢印で示すその厚さ方向に、例えば光源装置からの照射光などの光が入射した場合、交互多層膜部分12中では、赤外線吸収膜121が、赤外線吸収作用を有することに加え、誘電体膜122と積層することで、赤外光に対して高い反射作用を有するようになる。すなわち、誘電体多層膜部分13は従来のように赤外光の反射の効果しか有さないが、交互多層膜部分12は赤外光の吸収及び反射という両方の効果を有する。
したがって、図1に示すように、交互多層膜部分12を誘電体多層膜部分13に対して隣接して設けることにより、同様の赤外光反射効果を有する場合においても、誘電体多層膜部分13の厚さを大幅に低減することができ、結果として、赤外線遮蔽膜の全体の厚さを低減することができる。この結果、赤外線遮蔽膜の全体の厚さが増大したり、その構成要素である誘電体多層膜部分13の積層数が増大したりすることに起因した生産性及び歩留まりの低下によるコスト増という問題を回避することができる。
なお、交互多層膜部分12及び誘電体多層膜部分13は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンビーム法、イオンプレーティング法、及びCVD法によって形成することができる。これによって、交互多層膜部分12や誘電体多層膜部分13などの積層数が比較的多い場合でも、各層の厚さを高精度に制御しながら、交互多層膜部分12及び誘電体多層膜部分13を比較的容易に形成することができる。また、スパッタリング法やイオンプレーティング法はいわゆるプラズマ雰囲気処理であるので、交互多層膜部分12及び誘電体多層膜部分13の基板11への密着性を向上させることができる。
また、図1に示す構成では、基板11上に交互多層膜部分12及び誘電体多層膜部分13の順に形成しているが、その形成順序を逆転することもできる。すなわち、誘電体多層膜部分13及び交互多層膜部分12の順に形成することもできる。
図3は、図1に示す赤外線遮蔽レンズアレイの変形例を示す構成図である。本例においては、基板11の裏面に反射防止膜14が設けられている点で図1に関する例と異なり、その他の構成要素に関しては総て同様である。したがって、本例において、類似の構成要素に関する説明は省略する。
本例では、反射防止膜14の厚さを例えば可視域の光に対する反射防止条件を満足するように設定することにより、赤外線遮蔽レンズアレイ10内に入射する可視光量を増大させることができるので、結果的に、赤外線遮蔽レンズアレイ10に対する可視光透過率を増大させることができる。反射防止膜は、MgFの単層膜やAl・Ta・MgFの多層膜などで構成される。また、これらの単層・多層膜は真空蒸着やスパッタリング等の成膜方法にて形成される。
なお、反射防止膜14は、基板11の主面側に設けることもできる。この場合は、レンズ11Aを覆うようにして、交互多層膜部分12との間に設けることもできるし、誘電体多層膜部分13上に設けることもできる。また、それ以外の箇所においても、その反射防止という機能を奏する限り、可能である。
但し、本発明においては、このような反射防止膜を設けない場合においても、上述した本発明の作用効果を十分に奏することができる。
(赤外線遮蔽レンズアレイの製造方法)
次に、上記赤外線遮蔽アレイの製造方法について説明する。
[微小レンズを有する透光性基板の作製]
最初に、製品重量の1.3〜5倍のガラス素材を用意する。このガラス素材は、上述したように、硼珪酸ガラスなどの耐熱性の高いガラス素材から形成することができる。このようなガラス素材は周知の方法で溶融し、型内に鋳込む、又は溶融炉から連続的に引き出してロツド状に成形し、適当な長さに切断するなどの方法で得る。なお、ガラスの機械的強度及び耐熱強度を高めるために、風冷強化することもできる。但し、風冷強化は、強化処理後に切断するとガラスに割れが生じるおそれがあるため、成形体を各レンズアレイに分離した後に行うことが望ましい。
[金型]
次に、上述のようにして得たガラス素材をプレス成形して、透光性基板11を作製するとともに、その主面上に複数の微小レンズ11Aを形成する。図4は、上記プレス成形に使用する金型20の断面図であり、また、図5は、金型20を構成する上型25の底面図である。また、図6は、図4の金型20のプレス成形時の状態を模式的に示す断面図である。
図4に示すように、金型20は、上型25と下型26とから構成される。上型25は、レンズ11Aを成形するための複数のレンズ成形面27を持つプランジャ28と金型加工面を形成するリング29とを備える。また、金型20は、図4〜図6に示すように、製造すべきレンズ11A付き基板11の反転形状を複数個分(図5の例では4×2個分)有し、軟化状態のガラス材料を上型25及び下型26で協同してプレスし、複数個分の基板11が一体成形された後述する成形体20aを得る。
下型26と協働して製品の厚さを決める上型25のリング29のプレス部分は、所望の製品肉厚より若干厚めの高さに設定されている。なお、成形体における余剰の厚みは、後に研削及び研磨される。
また、図5に示すように、本例では、個々のレンズ成形面27は、基板11のレンズ11Aに対する反転形状で形成された4列×5行のセルを有する。また、レンズ形成面27は4つで一組をなし、合計で2組設けられている。しかしながら、これらのセル数及びセルの組数はあくまで例示であり、基板11の大きさ並びにレンズ11Aの数及び大きさなどに応じて適宜に決定することができる。
また、基板11の両面にレンズ11Aを形成する場合には、下型26にもレンズ11Aの反転形状を有するレンズ成形面を形成した金型を用い、両面に形成したレンズ同士の光軸を一致させるべく、上型と下型とに相互に係合するキー及びキー溝などを設け、上型及び下型の位置精度の向上を図る。
なお、図4及び図6に示すように、下型26は、上型25の各々のレンズ成形面27の中心部分と対向する位置に断面が台形状の凸部21が形成されている。このような凸部21を設けることにより、プレス成形時に下型26にガラス素材を搭載した際に、ガラス素材に対し上下方向の押圧力を十分に加えることを可能にし、凸部21の法線方向への反力で軟化状態のガラス素材を上型25の隅々にまで行き渡らせ、肉不足の防止及び転写精度の向上を図る。
また、軟化状態のガラスが冷却する過程で、厚肉部分は相対的に冷却速度が遅くなるため、先に冷却固化した部分よりも熱収縮の影響が大きく現われ、いわゆるひけが発生するが、下型26の凸部21により、成形体20aに凹部が形成されるため、全体の冷却速度が均一化され、ひけの発生が防止される。
[プレス成形工程]
次に、上記ガラス素材を、例えば炉内温度1200℃に設定した電気炉などにより加熱して、ガラス素材の表面温度がおよそ1000℃になるまで加熱する。次いで、加熱されたガラス素材を下型26に載置し、上型25を下降させて押圧力を加え、金型形状を転写しプレス成形する。この際、精度良く転写を行うために、上型25に押圧力を加えたまま、この状態を所定時間保持する。保持時間は、ガラスの材質や製品サイズにもよるが、例えば10数秒から数10秒程度である。上型25は、ガラスが冷却された後、上昇させる。
また、連続成形による金型の温度上昇に起因して、工程条件が変動することを回避するために、金型20の温度をモニタし、所定の温度を超えた場合には金型20の表面に空気(ブローエア)を吹き付けたり、金型20の内部に冷却媒体を循環させるなどして金型20の温度を管理する。
さらに、本プレス成形では、製品重量に比べ、過剰のガラス素材をプレスするため、上型25と下型26とは直接接触しない構成となる。このため、下型26の外縁の位置(外形サイズ)は、特に規定されるものではない。また、上型25のリング29は、成形部分を凸として外方に向かって後退する形状を持つ。このため、プレス時にガラス素材は、金型との接触によって急激に冷却固化することなく、金型20内に展延され、余剰のガラスは金型外にはみ出すことで流動抵抗が軽減され、高い転写精度を得ることができる。
ここで、本プレス成形工程では、リヒートプレスを適用している。このリヒートプレスでは、一旦冷却固化したガラス素材を外部から加熱軟化させるので、ガラス素材の表面付近の温度よりも内部の温度の方が相対的に低くなり、成形後の表面と内部との温度差が小さく、ひけの影響が小さくなる。さらに、このようにして成形された図6に示す成形体20aは、徐冷炉によって徐冷された後、はみ出し部分22が切除される。
[研磨工程]
次に、研磨工程について、図7〜図9に基づき説明を行う。ここで、図7は、はみ出し部分22切除後の四個分の基板11が一体となった成形体20bを例示した平面図であり、図8は、その断面図である。また、図9は、図8に示した成形体20bに研磨を施して得られた成形体20cを示す断面図である。
まず、図8に示すように、成形体20bのセル状レンズ5が形成されていない側の他方の光透過面3を研削及び研磨する。すなわち、下型26の凸部21により成形された凹部23を含む側の余剰肉厚部分24を研削及び研磨し、その後、ラッピングにより肉厚をほぼ製品形状に整え、さらにポリッシング加工によって光学研磨を行う。この結果、余剰肉厚部分24が成形体20bから除去され、図9に示すように、4個分の基板11が一体化された成形体20cが得られる。
[成膜工程]
次に、上述のようにして得た成形体20cに対して、交互多層膜部分12及び誘電体多層膜部分13、並びに必要に応じて反射防止膜14を形成するための成膜処理を実施する。この成膜処理は、上述したスパッタリング法、真空蒸着法、イオンビーム法、イオンプレーティング法、及びCVD法を用いて実施することができる。なお、交互多層膜部分12及び誘電体多層膜部分13の積層順序は、このような順序であっても良いし、逆転させても良い。
なお、成形体20cのレンズ11Aに対応した領域の外縁から、所定の間隔、例えば約1〜2mmの幅の後述する非成膜部分が残存するようにしてマスクを形成することができる。このような非成膜部分を設ける理由は、以下の分断工程において上述した交互多層膜部分12などが破損しないようにするためである。
交互多層膜部分12及び誘電体多層膜部分13は上述したように赤外光に対して遮蔽機能を有するものであり、成形体20cは赤外線遮蔽機能を有するようになる。
[分断工程]
次に、上述のようにして成膜工程が施され、交互多層膜部分12及び誘電体多層膜部分13が付着した成形体20cは、スライサ、ダイシングソーなどの精密切断装置を用いることにより分断し、それぞれ図1に示すような赤外線遮蔽レンズアレイ10を得る。なお、このような精密装置を用いる代わりに、カッタで成形体20cの表面に直線状の傷をつけ、これを折り曲げて破断することによる切り離しも可能である。
なお、分断面に対しては適宜研削、研磨などの加工を施すことによって、得られた複数の赤外線遮蔽レンズアレイ10のそれぞれの大きさを均一とすることができる。
(液晶プロジェクタ)
次に、上述した赤外線遮蔽レンズアレイを用いた応用例として液晶プロジェクタについて説明する。図10は、前記液晶プロジェクタの一例を示す構成図である。図10に示すように、投影表示装置の一つである液晶プロジェクタ70は、偏光照明装置90と、導光部99と、ダイクロイツクミラー71、74と、反射ミラー72と、三枚の液晶ライトバルブ73、75、81と、クロスダイクロイックプリズム83と、投射レンズ84と、から主に構成される。
ダイクロイツクミラー71、74は、白色光Wを赤色光R、緑色光G、青色光Bの三色の色光に分離するための色光分離部である。三枚の液晶ライトバルブ73、75、81は、与えられた画像信号に従って、三色の色光をそれぞれ変調して画像を形成する光変調部として機能する。クロスダイクロイックプリズム83は、三色の色光を合成してカラー画像を形成する色光合成部として機能する。投射レンズ84は、合成されたカラー画像を表す光をスクリーン85上に投射する投射光学系である。
ダイクロイツクミラー71は、偏光照明装置90から出射された白色光Wの光束の赤色光Rの成分を透過させるとともに、青色光Bの成分と緑色光Gの成分とを反射する。透過した赤色光Rは、反射ミラー72で反射されて赤色光用の液晶ライトバルブ73に入光する。一方、ダイクロイツクミラー71で反射された青色光Bと緑色光Gのうちで、緑色光Gは、ダイクロイツクミラー74によって反射され、緑色光用の液晶ライトバルブ75に入光する。他方、青色光Bは、ダイクロイツクミラー74を透過し導光部99に入光する。
ここで、この構成の液晶プロジェクタ70では、図10に示すように、青色光Bの光路長が三つの色光のうち最も長くなる。そこで、ダイクロイツクミラー74の後段には、リレーレンズ系で構成された上述した導光部99が設けられている。すなわち、青色光Bは
ダイクロイックミラー74を透過した後に、まず、入射レンズ76及び反射ミラー77を経て、リレーレンズ78に導かれる。さらに、リレーレンズ78を通過した青色光Bは、反射ミラー79によって反射されて出射レンズ80に導光され、青色光用の液晶ライトバルブ81に入光する。
三つの液晶ライトバルブ73、75、81は、図示しない外部の制御回路から与えられた画像情報である画像信号にしたがって、それぞれの色光を変調し、それぞれの色成分の画像情報を含む色光を生成する。変調された三つの色光は、クロスダイクロイツクプリズム83に入射する。クロスダイクロイツクプリズム83には、赤色光Rを反射する誘電体多層膜と、青色光Bを反射する誘電体多層とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー映像を表す光が形成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ84によってスクリーン85上に投射され、映像が拡大されて表示される。
また、液晶プロジェクタ70の偏光照明装置90は、光源部91と偏光発生装置92とから構成されている。光源部91は、S偏光成分とp偏光成分とを含むランダムな変偏光方向の光束を出射する。光源部91から出射された光束は、偏光発生装置92によって偏光方向がほぼ揃った一種類の直線偏光、例えばs偏光光に変換される。
また、光源部91は、光源ランプと、放物面リフレクタとを備えている。光源ランプから放射された光は、放物面リフレクタによって一方的に反射され、略平行な光束となって偏光発生装置92に入射する。なお、モバイル用など小型の液晶プロジェクタでは、反射鏡からの光束を絞って光学系を小型化する目的で、楕円面反射鏡が用いられることが多い。
偏光発生装置92は、第1の光学要素93と、第2の光学要素98とを備えている。第1の光学要素93及び第2の光学要素98は、互いの中心が光軸と一致するように配置されている。また、第2の光学要素98は、光学素子94と出射側レンズ97とを備えている。そして、光学素子94及び出射側レンズ97は、各々の中心が光軸と一致するように配置されている。
光学素子94は、集光レンズアレイ95と二つの偏光変換素子アレイ96とを備えている。集光レンズアレイ95は、第1の光学要素93と同一構造のレンズアレイであり、相対する向きに配置される。また、集光レンズアレイ95は、第1の光学要素93とともに、各光束分割レンズで分割された複数の分割光束を集光する役割を有する。偏光変換素子アレイ96は、入射された光束を一種頬の直線偏光光、例えばs偏光光に変換して出射する機能を有する。
ここで、集光レンズアレイ95及び第1の光学要素93として上述した赤外線遮蔽レンズアレイ10が適用されている。赤外線遮蔽レンズアレイ10は、矩形板状の輪郭を有する微小な光束分割レンズ(レンズ11A)が、縦方向にM行、横方向にN列のマトリックス状に配列された構成を有する。赤外線遮蔽レンズアレイ10を適用することで、光源部91からの照射光に含まれる赤外光を確実に遮蔽することができるため、液晶プロジェクタ70内の液晶ライトバルブ73、75、81等に熱害を及ぼすことがない。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は当然に以下の内容に限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例では、図1に示す構成の赤外線遮蔽レンズアレイを作製した。なお、交互多層膜部分は、赤外線吸収膜としてITO膜(波長1000nmにおける消衰係数:0.2)を用い、誘電体膜として酸化珪素(SiO)膜を用いた。また、誘電体多層膜部分は、高屈折率材料層として酸化チタン(TiO)膜を用い、低屈折率材料層として酸化珪素(SiO)膜を用いた。また、それぞれの層はスパッタリング法により形成した。なお、具体的な構成態様(積層数及び順序、並びに各層の厚さ、総膜厚)は表1に示した。さらに、基板は硼珪酸ガラスを用い、上述した製造工程にしたがってその主面に複数の微小レンズを形成した。このような赤外線遮蔽レンズアレイの分光特性を図11に示した。
Figure 2008070826
(比較例)
本比較例では、図1に示す構成の赤外線遮蔽レンズアレイにおいて、交互多層膜部分を有せず、誘電体多層膜部分のみからなる従来の構成のレンズアレイを作製した。なお、高屈折率材料層として酸化チタン(TiO)膜を用い、低屈折率材料層として酸化珪素(SiO)膜を用いた。また、それぞれの層はスパッタリング法により形成した。なお、具体的な構成態様(積層数及び順序、並びに各層の厚さ、総膜厚)は表2に示した。さらに、このようなレンズアレイの分光特性を図12に示した。
Figure 2008070826
以上、実施例及び比較例から明らかなように、本発明に従って得た実施例の赤外線遮蔽レンズアレイにおいては、その全体の積層数及び厚さが比較例で得た従来のレンズアレイに比較して減少しているにも拘らず、特に1100nm以上の赤外光の領域の遮蔽効果が優れていることが分かる。
したがって、交互多層膜部分を誘電体多層膜部分に対して隣接して設けることにより、特に1100nm以上の赤外光に対して優れた遮蔽効果を奏するとともに、前記誘電体多層膜部分の厚さを大幅に低減することができ、結果として、赤外線遮蔽レンズアレイに設けられる赤外線遮蔽膜の全体の厚さを低減することができる。この結果、前記赤外線遮蔽膜の生産性及び歩留まりの低下によるコスト増という問題を回避することができることが分かる。
(実施例2)
本実施例では、実施例1に示す構成の赤外線遮蔽レンズアレイの交互多層膜部分における赤外線吸収膜を2層から1層に変更した。具体的には、表1の膜構成において基板から2番目のSiO膜(誘電体膜)を成膜しないことで、ITO膜を1層とした。但し、ITO膜の膜厚は、実施例1の2層の膜厚を合計したものと同じである。
赤外線吸収膜が2層の場合(実施例1)と1層の場合(実施例2)の屈折率変動に対する分光透過率の安定性及び可視域のリップルの発生を確認するため、各実施例の分光透過率を調べた。図13は、実施例1の赤外線遮蔽レンズアレイについて、屈折率変動が起こった場合の分光透過率であり、太線は屈折率変動がない場合を、2本の細線は屈折率変動がある場合(+4%、−4%)をそれぞれ示すグラフである。図14は実施例2の赤外線遮蔽膜について、図13と同様に屈折率変動がない場合及び屈折率変動がある場合(+4%、−4%)の分光透過率を示すグラフである。
図13及び図14から明らかなように、図13(実施例1)に示す構成の赤外線遮蔽レンズアレイでは、可視域(380nm〜780nm)における分光透過率はほぼフラットでありばらつきは少なく、リップルは抑制されている。これに対し、図14(実施例2)に示す構成の赤外線遮蔽レンズアレイでは、可視域の分光透過率のばらつきが大きく(特に、600nm〜650nm)、リップルが発生している。
(実施例3)
本実施例では、実施例2における分光透過率の可視域のリップルを抑制するため、実施例2と同様の膜構成で膜厚のみを調整した。図15は実施例3の赤外線遮蔽レンズアレイについて、図13及び図14と同様に屈折率変動がない場合及び屈折率変動がある場合(+4%、−4%)の分光透過率を示すグラフである。
図13、図14及び図15から明らかなように、図15(実施例3)示す赤外線遮蔽レンズアレイでは、図13(実施例1)と同程度に分光透過率の可視域のリップルが抑制されている。しかし、図13(実施例1)及び図14(実施例2)に示す赤外線遮蔽レンズアレイでは、屈折率変動がある場合の波長800nm〜1100nmの赤外光領域での最大透過率が約10%以下であるのに対し、図15(実施例3)の構成の赤外線遮蔽レンズアレイでは、屈折率変動がある場合の波長800nm〜1100nmの赤外光領域での最大透過率が約20%以上にまで増大していることが分かる。
これらより、赤外線遮蔽レンズアレイの赤外線吸収膜が1層の場合、長波長域の赤外線遮蔽効果を有するものの、赤外線遮蔽レンズアレイの成膜時の屈折率変動に対する分光透過率の安定化及び分光透過率の可視域のリップル抑制という効果を同時に得ることはできない。これに対して、実施例1のように赤外線遮蔽レンズアレイの赤外線吸収膜を2層以上に細分化することで、これら両方の効果が得られる。
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
本発明の赤外線遮蔽レンズアレイの一例を概略的に示す構成図である。 図1に示すレンズアレイの透光性基板を拡大して示すである。 図1に示す赤外線遮蔽レンズアレイの変形例を概略的に示す構成図である。 図1に示す透光性基板を得るための、プレス成形で使用する金型の断面図である。 図4に示す金型の上型を示す底面図である。 図4に示す金型のプレス成形時の状態を模式的に示す断面図である。 図1に示す透光性基板を得るための、プレス成形後の研磨工程を示す図である。 同じく、図1に示す透光性基板を得るための、プレス成形後の研磨工程を示す図である。 同じく、図1に示す透光性基板を得るための、プレス成形後の研磨工程を示す図である。 図1に示す赤外線遮蔽レンズアレイを用いた液晶プロジェクタの一例を示す構成図である。 本発明の赤外線遮蔽レンズアレイの一例(実施例1)における分光特性を示すグラフである。 従来のレンズアレイの一例における分光特性を示すグラフである。 本発明の赤外線遮蔽レンズアレイの一例(実施例1)における分光特性を示すグラフである。 本発明の赤外線遮蔽レンズアレイの一例(実施例2)における分光特性を示すグラフである。 本発明の赤外線遮蔽レンズアレイの一例(実施例3)における分光特性を示すグラフである。
符号の説明
10 赤外線遮蔽レンズアレイ
11 (ガラス)基板
12 交互多層膜部分
13 誘電体多層膜部分
14 反射防止膜
121 赤外線吸収膜
122 誘電体膜
131 高屈折率材料層
132 低屈折率材料層

Claims (9)

  1. 少なくとも一方の主面上に複数の微小レンズが形成されてなる透光性の基板と、
    前記基板の、前記主面及び裏面の少なくとも一方に、透明な赤外線吸収膜と誘電体膜とが交互に積層されてなる交互多層膜部分と、
    前記交互多層膜部分に隣接するようにして設けられた、少なくとも2種以上の誘電体膜が交互に積層してなる誘電体多層膜部分と、
    を具えることを特徴とする、赤外線遮蔽レンズアレイ。
  2. 前記交互多層膜部分は、前記赤外線吸収膜を2層以上有することを特徴とする、請求項1に記載の赤外線遮蔽レンズアレイ。
  3. 前記赤外線吸収膜の1層当たりの膜厚が10nm〜200nmの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の赤外線遮蔽レンズアレイ。
  4. 前記赤外線吸収膜の1層当たりの膜厚が10nm〜200nmの範囲であることを特徴とする、請求項2に記載の赤外線遮蔽レンズアレイ。
  5. 前記赤外線吸収膜の全体の厚さが500nm以下であることを特徴とする、請求項4に記載の赤外線遮蔽レンズアレイ。
  6. 前記赤外線吸収膜の、波長1000nmにおける消衰係数が0.1以上であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載の赤外線遮蔽レンズアレイ。
  7. 前記赤外線吸収膜は、インジウム、インジウム系複合酸化物、錫、錫系複合酸化物、亜鉛、及び亜鉛系複合酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載の赤外線遮蔽レンズアレイ。
  8. 前記交互多層膜部分及び前記誘電体多層膜部分は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンビーム法、イオンプレーティング法、及びCVD法からなる群より選ばれる少なくとも1つの方法を用いて形成されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一に記載の赤外線遮蔽レンズアレイ。
  9. 前記基板の前記主面及び前記裏面の少なくとも一方に形成した反射防止膜を具えることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一に記載の赤外線遮蔽レンズアレイ。
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