JP2007010743A - 光フィルタの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 二酸化チタン膜と例えば酸化シリコン膜とを交互に積層した積層構造に真空中にて所定の熱処理を施すことにより、経時的に光学特性を安定化させることが可能な光フィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】 透明な基板34上に、屈折率が高い高屈折率誘電体膜34Aと、該高屈折率誘電体膜よりも屈折率が低い低屈折率誘電体膜34Bとを交互に積層してなる光学系デバイス2に用いる光フィルタ18の製造方法において、前記高屈折率誘電体膜の一部、または全部が二酸化チタン(TiO2 )よりなり、且つ前記高屈折率誘電体膜を非晶質の状態で成膜し、その後に、前記高屈折率誘電体膜がアナターゼ結晶構造に相変化しないように真空中にて所定の熱処理を施す。これにより、経時的に光学特性を安定化させる。
【選択図】 図2
【解決手段】 透明な基板34上に、屈折率が高い高屈折率誘電体膜34Aと、該高屈折率誘電体膜よりも屈折率が低い低屈折率誘電体膜34Bとを交互に積層してなる光学系デバイス2に用いる光フィルタ18の製造方法において、前記高屈折率誘電体膜の一部、または全部が二酸化チタン(TiO2 )よりなり、且つ前記高屈折率誘電体膜を非晶質の状態で成膜し、その後に、前記高屈折率誘電体膜がアナターゼ結晶構造に相変化しないように真空中にて所定の熱処理を施す。これにより、経時的に光学特性を安定化させる。
【選択図】 図2
Description
本発明は、特にビデオプロジェクタ、リアプロジェクション・テレビなどの大画面ディスプレイに多く使用される光学系デバイスに用いられる光フィルタの製造方法に関するものである。
一般に、大画面で映像を表示する装置として、液晶を用いたビデオプロジェクタ、リアプロジェクション・テレビ等の大画面ディスプレイが知られており、この種の大画面ディスプレイには、映像用の強い光を作成するための光学系デバイスが用いられている。そして、この光学系デバイスの光源としては、明るさを改善する目的で、低消費電力で高輝度が得られる放電形式のメタルハライドランプが用いられる傾向にあり、より高輝度化が追及されている。
ところで、このメタルハライドランプより出力される光には、かなり多くの紫外線や赤外線が含まれており、これらの紫外線や赤外線が光学系デバイスを構成する光学部品にダメージを与え、この大画面ディスプレイの信頼性を損なう恐れがある。そのため、このメタルハライドランプを光源として用いた場合には、このランプに対する耐久性及び信頼性を高めるために、画像表示に不必要な上記紫外線や赤外線をカットして表示に必要なRGB(赤緑青)の各色の光を通すためのバンドパスフィルタのような光フィルタが併せて設けられている。
この光フィルタは、透明な基板上に、高屈折率の誘電体膜と低屈折率の誘電体膜を交互に積層して形成されている。この時、上記2種の誘電体膜の屈折率差を大きくするほど、一般的には、少ない層数で所望の特性を実現できる。そして、屈折率nが2以上の高屈折率誘電体膜の材料としては酸化チタン(n=約2.4)、酸化ニオブ(n=約2.3)、酸化ジルコニウム(n=約2.2)、酸化タンタル(n=約2.1)などが良く知られている。また低屈折率誘電体膜の材料としては酸化シリコン(n=1.46)、フッ化マグネシウム(n=1.38)などが良く知られている。また空気と接する反射防止最表面膜には従来はフッ化マグネシウムが使われていたが、最近は応力に対する耐久性や安定性から酸化シリコンが多く用いられる。これらの各膜の成膜方法としては電子ビーム真空蒸着法、スパッタ法など真空成膜法が一般的であり、いずれにしても、透明な基板上に比較的低温で多層成膜される。この膜の形成方法は必要特性、生産性などを考慮して適宜選択される。
ここで上記した高屈折率誘電体材料の中で、酸化チタンは屈折率が最も高く、所望の膜設計ができることに加え、価格の面でも最も入手し易いことから広く用いられている。しかし、酸化チタン薄膜は一般的に次のような問題点がある。即ち、酸化チタンは周知のようにTiの価数が2価から4価の間で多く存在するために、真空度、酸素分圧、基板温度などの薄膜形成条件の変動により、化学量論組成であるTiO2 から僅かなずれが発生し、これに起因して光学多層膜に関して設計通りの光学特性が得られないことがある。加えて経時的に屈折率nや消衰係数kが変化し、波長シフトや光吸収の増加という問題が生じる場合がある。
これらの問題解決のために、特許文献1では酸化シリコン(通常アモルファス)に加えて酸化チタン(二酸化チタン)をアモルファス(非晶質)相とすることで、誘電体多層膜の成膜後の経時変化を無くし、安定で高精度の性能を得るようにした点が開示されている。更には特許文献2には酸化チタンを主成分として他の金属酸化物MO(Mはニオブ、タンタルなどの金属)を添加して非晶質とすることにより、経時的な光学特性の変化が少ない高屈折率誘電体膜を有する光フィルタを得ることが開示されている。
これらの問題解決のために、特許文献1では酸化シリコン(通常アモルファス)に加えて酸化チタン(二酸化チタン)をアモルファス(非晶質)相とすることで、誘電体多層膜の成膜後の経時変化を無くし、安定で高精度の性能を得るようにした点が開示されている。更には特許文献2には酸化チタンを主成分として他の金属酸化物MO(Mはニオブ、タンタルなどの金属)を添加して非晶質とすることにより、経時的な光学特性の変化が少ない高屈折率誘電体膜を有する光フィルタを得ることが開示されている。
ところで、前述のような光フィルタは、高性能化のために更なる多層化が要求され且つ前記メタルハライドランプの高光量に対してその耐久性の向上及び信頼性の向上が要求されている。この光フィルタの多層膜は、上述のように高屈折率の誘電体膜(酸化チタン)と低屈折率の誘電体膜(酸化シリコン)を主体としてこれらを交互に積層して所望の特性の多層膜を形成している。しかしながら、メタルハライドランプの長時間に亘る照射(暴露)により、ある波長の光を吸収し、それが熱に変換されて熱応力により画面上にムラを発生する場合があり、中には応力により薄膜が破断してしまう場合もあった。特に、10万時間以上の長期信頼性において、このような問題が解決されていないことは産業上極めて重大な問題である。
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、二酸化チタン膜と例えば酸化シリコン膜とを交互に積層した積層構造に真空中にて所定の熱処理を施すことにより、経時的に光学特性を安定化させることが可能な光フィルタの製造方法を提供することにある。
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、二酸化チタン膜と例えば酸化シリコン膜とを交互に積層した積層構造に真空中にて所定の熱処理を施すことにより、経時的に光学特性を安定化させることが可能な光フィルタの製造方法を提供することにある。
請求項1に係る発明は、透明な基板上に、屈折率が高い高屈折率誘電体膜と、該高屈折率誘電体膜よりも屈折率が低い低屈折率誘電体膜とを交互に積層してなる光学系デバイスに用いる光フィルタの製造方法において、前記高屈折率誘電体膜の一部、または全部が二酸化チタン(TiO2 )よりなり、且つ前記高屈折率誘電体膜を非晶質の状態で成膜する成膜工程と、この成膜工程の後に、前記高屈折率誘電体膜がアナターゼ結晶構造に相変化しないように、前記高屈折率誘電体膜に真空中にて所定の熱処理を施す熱処理工程と、を有することを特徴とする光フィルタの製造方法である。
本発明に係る光フィルタの製造方法によれば、透明な基板上に高屈折率誘電体膜と低屈折率誘電体膜とを交互に積層してなる光フィルタの製造方法において、高屈折率誘電体膜の材料に二酸化チタンを用いて、これがアナターゼ結晶構造(ルチル結晶構造)に変化しないように真空中で所定の熱処理を施すようにしたので、経時的に光学特性を安定化させて長寿命化させることができる。
以下に、本発明に係る光フィルタの一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る光フィルタを用いた光学系デバイスの一例を示す構成図、図2は光フィルタの断面を示す部分拡大断面図である。
図1はビデオプロジェクタに用いる光学系デバイスの一例を示しており、複数の例えば反射型液晶素子で映像信号に応じて光変調させ、この光変調された色光を合成してスクリーン等に投射することによりカラー映像を表示するようになっている。そして、この種のビデオプロジェクタにあっては、光源からの光を上記反射型液晶素子に入射させて光変調された色光を合成するために複数の偏光ビームスプリッタを組み合わせてなる光学系デバイス2を有している。
図1は本発明に係る光フィルタを用いた光学系デバイスの一例を示す構成図、図2は光フィルタの断面を示す部分拡大断面図である。
図1はビデオプロジェクタに用いる光学系デバイスの一例を示しており、複数の例えば反射型液晶素子で映像信号に応じて光変調させ、この光変調された色光を合成してスクリーン等に投射することによりカラー映像を表示するようになっている。そして、この種のビデオプロジェクタにあっては、光源からの光を上記反射型液晶素子に入射させて光変調された色光を合成するために複数の偏光ビームスプリッタを組み合わせてなる光学系デバイス2を有している。
この光学系デバイス2は、白色光Lを出射する例えばメタルハライドランプ等よりなる光源4と、入射光を映像信号に応じて変調することにより反射光として射出する反射型液晶素子を主として有する液晶ユニット6R、6G、6Bと、上記入射光と反射光とを分離するための分離用光学素子としての偏光ビームスプリッタ8−1、8−2、8−3を主として有する光束分離ユニット10と、上記変調された反射光をスクリーン12上へ投射して表示する投射光学系14とにより主に構成されている。
ここでは、カラー表示を行う装置例を示しているため、上記3つの液晶ユニット6R、6G、6Bは、それぞれ光の3原色である赤色光、緑色光、青色光に対応しており、また、上記光束分離ユニット10の最終段には、上記3色光を合成するための色合成用偏光ビームスプリッタ16が設けられている。そして、光源4からの光路の直ぐ下流側に本発明に係る光フィルタ18が設けられており、白色光に含まれる紫外線や赤外線をカットするようになっている。この光フィルタ18の構成については後述する。
ここでは、カラー表示を行う装置例を示しているため、上記3つの液晶ユニット6R、6G、6Bは、それぞれ光の3原色である赤色光、緑色光、青色光に対応しており、また、上記光束分離ユニット10の最終段には、上記3色光を合成するための色合成用偏光ビームスプリッタ16が設けられている。そして、光源4からの光路の直ぐ下流側に本発明に係る光フィルタ18が設けられており、白色光に含まれる紫外線や赤外線をカットするようになっている。この光フィルタ18の構成については後述する。
まず、光源4から出射された白色光Lは、上記光フィルタ18によって紫外線や赤外線がカットされてRGB光が通過し、インテグレータ光学系20で均一化されて平行光にされると共に、例えばS偏光光に変換され出射される。この出射された光は、特定の波長域の光のみを透過して他の波長域の光は反射するダイクロイックミラー22へ入射する。このダイクロイックミラー22では、G、B光が透過してR光が反射される。ここで反射されたR光は、偏光ビームスプリッタ8−1にて赤色用の液晶ユニット6Rに向けて反射されて、ここで映像信号に基づいて変調を受けることになる。上記液晶ユニット6Rにて反射された変調光は、上記偏光ビームスプリッタ8−1を透過して色合成用ダイクロイックミラー16に入射する。
一方上記ダイクロイックミラー22を透過したG、B光は、全反射ミラー28で反射された後に、ダイクロイックミラー30に入射する。このダイクロイックミラー30は、G光を反射し、B光を透過するようになっている。ここで反射されたG光は、偏光ビームスプリッタ8−2にて緑色用の液晶ユニット6Gに向けて反射されて、ここで映像信号に基づいて変調を受けることになる。上記液晶ユニット6Gにて反射された変調光は、上記偏光ビームスプリッタ8−2を透過して色合成用ダイクロイックミラー16に入射する。
またダイクロイックミラー30を透過したB光は、偏光ビームスプリッタ8−3にて青色用の液晶ユニット6Bに向けて反射されて、ここで映像信号に基づいて変調を受けることになる。上記液晶ユニット6Bにて反射された変調光は、上記偏光ビームスプリッタ8−3を透過して色合成用ダイクロイックミラー16に入射する。
そして、上記色合成用ダイクロイックミラー16に入射した各R、G、B光はここで合成されて、投射光学系14によりリスクリーン12上に投写されて映像が写されることになる。
またダイクロイックミラー30を透過したB光は、偏光ビームスプリッタ8−3にて青色用の液晶ユニット6Bに向けて反射されて、ここで映像信号に基づいて変調を受けることになる。上記液晶ユニット6Bにて反射された変調光は、上記偏光ビームスプリッタ8−3を透過して色合成用ダイクロイックミラー16に入射する。
そして、上記色合成用ダイクロイックミラー16に入射した各R、G、B光はここで合成されて、投射光学系14によりリスクリーン12上に投写されて映像が写されることになる。
さて、このように形成された光学系デバイス2の各構成部品を白色光に含まれる赤外線や紫外線から保護するために、上記光フィルタ18において上記赤外線や紫外線をカットするようにしている。
具体的には、図2にも示すように、上記光フィルタ18は、透明な基板34の光の入射面側に、屈折率の高い高屈折率誘電体膜34Aと、これよりも屈折率の低い低屈折率誘電体膜34Bとを交互に複数回繰り返して積層してなるバンドパス多層構造36により構成されている。またこの基板34の光の出射面側には、反射防止用多層構造38が形成されている。
ここで上記基板34としては、例えばガラス基板を用いることができる。また、上記高屈折率誘電体膜34Aとしては、一部または全部に二酸化チタン(TiO2 )を用いることができる。また上記低屈折率誘電体膜34Bとしては、例えば二酸化シリコン(SiO2 )を用いることができる。ここでは両膜34A、34B全体で例えば28層の薄膜が形成されている。
具体的には、図2にも示すように、上記光フィルタ18は、透明な基板34の光の入射面側に、屈折率の高い高屈折率誘電体膜34Aと、これよりも屈折率の低い低屈折率誘電体膜34Bとを交互に複数回繰り返して積層してなるバンドパス多層構造36により構成されている。またこの基板34の光の出射面側には、反射防止用多層構造38が形成されている。
ここで上記基板34としては、例えばガラス基板を用いることができる。また、上記高屈折率誘電体膜34Aとしては、一部または全部に二酸化チタン(TiO2 )を用いることができる。また上記低屈折率誘電体膜34Bとしては、例えば二酸化シリコン(SiO2 )を用いることができる。ここでは両膜34A、34B全体で例えば28層の薄膜が形成されている。
上述のように、バンドパス多層構造36は、周知のように屈折率の大きい膜と小さい膜とを交互に複数層重ね合わせて希望波長域の光を反射、または透過させるようになっており、ここでは紫外線や赤外線はカット(反射)して、R、G、B光(可視光)を透過し得るように設計されている。また、高屈折率誘電体膜34Aと低屈折率誘電体膜34Bの内のどちらの膜を最初に基板34に形成するようにしてもよい。
ここで本発明の特徴として、二酸化チタンよりなる上記高屈折率誘電体膜34Aを、成膜時に非晶質の状態で成膜し、その後、アナターゼ結晶構造(ルチル結晶構造)に相変化しないように真空中にて所定の熱処理を施すようにしており、非晶質状態を長期間に亘って維持できるようになっている。
ここで本発明の特徴として、二酸化チタンよりなる上記高屈折率誘電体膜34Aを、成膜時に非晶質の状態で成膜し、その後、アナターゼ結晶構造(ルチル結晶構造)に相変化しないように真空中にて所定の熱処理を施すようにしており、非晶質状態を長期間に亘って維持できるようになっている。
一方、上記反射防止用多層構造38は、上述のバンドパス多層構造36の材料と同じ材料の例えばSiO2 膜40AとTiO2 膜40Bとを交互に繰り返して複数積層して、全体で例えば9層の積層構造となっている。尚、この反射防止多層構造38に代えて、上記入射側とは別の特性を有するバンドパス多層構造を形成するようにしてもよい。
上記高屈折率誘電体膜34A及び低屈折率誘電体膜34Bの成膜は、例えば通常の電子ビーム真空蒸着法を用い、蒸着材料を交互に加熱蒸着して、回転ドーム上に具備されたガラス基板よりなる基板34上に交互に形成する。高屈折率誘電体膜34Aである上記二酸化チタン膜の形成時は背景とする酸素ガスを導入した雰囲気中で基本的に非晶質(アモルファス)相の二酸化チタン膜を形成し、低屈折率誘電体膜34Bである上記二酸化シリコン膜の形成時には、背景とするガスは導入せず非晶質相(周知のように真空成膜では結晶相は作れない)の二酸化シリコン膜を形成することで、主として非晶質のTiO2 と非晶質のSiO2 の交互積層よりなる誘電体多層膜(バンドパス多層構造36)を形成する。
上記高屈折率誘電体膜34A及び低屈折率誘電体膜34Bの成膜は、例えば通常の電子ビーム真空蒸着法を用い、蒸着材料を交互に加熱蒸着して、回転ドーム上に具備されたガラス基板よりなる基板34上に交互に形成する。高屈折率誘電体膜34Aである上記二酸化チタン膜の形成時は背景とする酸素ガスを導入した雰囲気中で基本的に非晶質(アモルファス)相の二酸化チタン膜を形成し、低屈折率誘電体膜34Bである上記二酸化シリコン膜の形成時には、背景とするガスは導入せず非晶質相(周知のように真空成膜では結晶相は作れない)の二酸化シリコン膜を形成することで、主として非晶質のTiO2 と非晶質のSiO2 の交互積層よりなる誘電体多層膜(バンドパス多層構造36)を形成する。
また、より緻密な膜質にするイオンアシスト蒸着(IAD)の場合は、上記背景のガス雰囲気中に不活性ガスと酸素混合ガス(不活性ガスのみでも可能)のイオンと電気的中和のための電子ビーム(ニュートラライザ)を上記回転ドームに照射しながら成膜形成する。尚、上記反射防止用多層構造38も同様の蒸着工程を経て形成する。ここで用いたバンドパス多層構造36のX線回折パターン(XRD)を図3に示す。図中、Glassはガラス基板を示し、ガラス基板にバンドパス多層構造(誘電体多層膜)を形成した試料の典型的なX線回折パターンをamorphousとして示す。尚、図3において横軸は測定角度を示し、縦軸は測定強度を示す。この結果、明らかにバンドパス多層構造は堆積した状態で非晶質相が主体の構造であることが判る。
従来の光フィルタでは、略非晶質相のTiO2 状態の薄膜を蒸着させたままの光フィルタを前述のように光フィルタとして使用していた。
従来の光フィルタでは、略非晶質相のTiO2 状態の薄膜を蒸着させたままの光フィルタを前述のように光フィルタとして使用していた。
しかしながら、このようにして作成した光フィルタは、約200倍の加速条件で信頼性試験を行った結果、400時間(実使用時間で約8万時間に対応)以上経過すると、P波透過率に吸収バンドが顕著になる場合があり、更に600時間(実使用時間で約12万時間に対応)以上経過すると画像にムラが観測され、製品保証時間にもよるが画像表示に関して問題を生じる恐れがあった。更に加速試験を800時間以上行った結果、明らかな焼けが観察された。その結果を図4に示す。図4は光フィルタに対して信頼性試験を行った時の透過率の変化を示すグラフであり、この結果、400〜700nmの可視光の範囲で、加速試験後には初期値に対して大きな劣化が生じているのが判明する。この原因を究明した結果、誘電体多層膜中の実質的に非晶質相であるTiO2 膜が劣化して上記特性劣化が生じていたことが判明した。
この場合、高屈折率誘電体膜としてTiO2 に比べて屈折率が少し低い酸化ニオブ(Nb2 O5 )膜を用いたが、この場合には、特性の劣化は見られなかったが、膜総数の増加をさせなければならないばかりか、コスト面からも問題となり、好ましくなかった。
図5は、上記信頼性試験により劣化した誘電体多層膜のX線回折パターンを示す。
図中、アナターゼ結晶構造の結晶面指数(hkl)も示すが、TiO2 結晶化膜はアナターゼ単相の微結晶構造であることは明らかである。ここで、結晶面指数(hkl)はミラー指数と呼ばれ、結晶格子面が任意の直交座標系(x、y、z軸)を横切る座標の逆数の最小公倍数である。
初期値を示す図3の場合と比較して明らかに結晶化(突起部分)が起きており、これにより光の吸収及び光の吸収による温度上昇が起きていることが判った。
図5は、上記信頼性試験により劣化した誘電体多層膜のX線回折パターンを示す。
図中、アナターゼ結晶構造の結晶面指数(hkl)も示すが、TiO2 結晶化膜はアナターゼ単相の微結晶構造であることは明らかである。ここで、結晶面指数(hkl)はミラー指数と呼ばれ、結晶格子面が任意の直交座標系(x、y、z軸)を横切る座標の逆数の最小公倍数である。
初期値を示す図3の場合と比較して明らかに結晶化(突起部分)が起きており、これにより光の吸収及び光の吸収による温度上昇が起きていることが判った。
次に、本発明のアナターゼ結晶構造への結晶化防止処理(熱処理)を施した場合について説明する。この熱処理は、具体的には真空中(〜数mmTorr)の雰囲気にて200℃で2時間の熱処理を施した。誘電体多層膜(バンドパス多層構造)のX線回折パターンを図6中の特性曲線aとして示す。図6は、アナターゼ結晶構造への結晶化防止処理(真空中での熱処理)を行った光フィルタのバンドパス多層構造の負荷前と負荷後の特性の変化を示すグラフである。
この結晶化防止処理を施した光フィルタのバンドパス多層構造(誘電体多層膜)に、大気雰囲気中において300℃で2時間晒す負荷をかけた。この時の誘電体多層膜のX線回折パターンを特性曲線bとして示す。ここで300℃で2時間、大気雰囲気中で晒す理由は以下の通りである。
この結晶化防止処理を施した光フィルタのバンドパス多層構造(誘電体多層膜)に、大気雰囲気中において300℃で2時間晒す負荷をかけた。この時の誘電体多層膜のX線回折パターンを特性曲線bとして示す。ここで300℃で2時間、大気雰囲気中で晒す理由は以下の通りである。
上述したように加速試験により劣化したTiO2 膜はアナターゼ結晶構造に変化していたが、誘電体多層膜を大気中で熱処理しても同様にアナターゼ結晶構造への相変化が起きていることを確認できたからであり、加速試験に代えて、この大気雰囲気中での高温処理を行っている。
図6に示すように、真空中で200℃の2時間保持の熱処理を施した本発明の光フィルタの誘電体多層膜(バンドパス多層構造)については、大気中の高温熱処理の負荷後でも、アナターゼへの結晶化がほとんど生じていないことが判明した。更に大気中での熱処理負荷を継続して行っても図6の特性曲線bと同様であり、結晶化は起きていないことが判った。また、本実施例では、熱処理温度を200℃としたが、これに限定されるものではなく、種々の熱処理温度について検討した結果、熱処理温度が180〜350℃の範囲内であれば、上述したと同様な効果が得られることを確認できた。
図6に示すように、真空中で200℃の2時間保持の熱処理を施した本発明の光フィルタの誘電体多層膜(バンドパス多層構造)については、大気中の高温熱処理の負荷後でも、アナターゼへの結晶化がほとんど生じていないことが判明した。更に大気中での熱処理負荷を継続して行っても図6の特性曲線bと同様であり、結晶化は起きていないことが判った。また、本実施例では、熱処理温度を200℃としたが、これに限定されるものではなく、種々の熱処理温度について検討した結果、熱処理温度が180〜350℃の範囲内であれば、上述したと同様な効果が得られることを確認できた。
次に、上記真空中での結晶化防止処理の時間について検討した。ここでは結晶化処理の時間を10分、20分、40分、60分のように変化させて、結晶化防止処理後に、前述のように大気雰囲気中において300℃で2時間の熱処理負荷を施し、結晶化が生ずるか否かを検討した。その結果を図7に示す。図7は光フィルタに対する真空中での結晶化防止処理の処理時間の依存性を示すグラフである。
その結果、結晶化防止処理時間が10分の場合は明らかにアナターゼ相へ変化しているが、20分、40分へと処理時間が増加すると共にそのピークが小さくなっており、40分以上の場合にはアナターゼ相への相変化がみられなかった。従って、結晶化防止処理時間は、20分以上行うのが好ましく、より好ましくは40分以上行うのがよいことが判った。また、SiO2 膜はこれらの条件での処理では非晶質構造を保持したままであることは周知のとおりである。
その結果、結晶化防止処理時間が10分の場合は明らかにアナターゼ相へ変化しているが、20分、40分へと処理時間が増加すると共にそのピークが小さくなっており、40分以上の場合にはアナターゼ相への相変化がみられなかった。従って、結晶化防止処理時間は、20分以上行うのが好ましく、より好ましくは40分以上行うのがよいことが判った。また、SiO2 膜はこれらの条件での処理では非晶質構造を保持したままであることは周知のとおりである。
このように非結晶のTiO2 膜の誘電体多層膜を作成して真空中で結晶化防止処理をし、上記加速条件の信頼性試験を行った結果、従来の光フィルタの一部で観測された吸収バンドの劣化は1000時間以上の試験においても全く発生せず、安定な特性となることを確認した。また、反射防止用多層構造も同じ過程を施すことで熱により結晶化しないTiO2 膜となり、安定化させることができる。
非晶質を主体とした薄膜の成膜後に真空中で結晶化防止処理を行うことは、以下の点からもメリットがある。すなわち、非晶質主体の緻密な膜構造で、当初より結晶膜TiO2 を形成したものに比べ、より緻密な構造が得られ、水分に起因するピークシフトが少ない。また、上記真空処理を蒸着工程に引き続きチャンバー内で行うことで、工程を容易にでき、コスト的及びエネルギー面で優位となる。
非晶質を主体とした薄膜の成膜後に真空中で結晶化防止処理を行うことは、以下の点からもメリットがある。すなわち、非晶質主体の緻密な膜構造で、当初より結晶膜TiO2 を形成したものに比べ、より緻密な構造が得られ、水分に起因するピークシフトが少ない。また、上記真空処理を蒸着工程に引き続きチャンバー内で行うことで、工程を容易にでき、コスト的及びエネルギー面で優位となる。
本発明によれば、分光特性の経時変化が無く、特に吸収バンドの劣化が無い安定な二酸化チタン及び酸化シリコンを主体に使った誘電体多層膜(バンドパス多層構造)を実現することができ、信頼性が高く且つ長寿命のプロジェクタなどの高輝度光源を使用する光学系デバイスを実現することができる。
2…光学系デバイス、4…光源、6R,6G,6B…液晶ユニット、8−1,8−2,8−3…偏光ビームスプリッタ、10…光束分離ユニット、12…スクリーン、18…光フィルタ、34…基板、34A…高屈折率誘電体膜、34B…低屈折率誘電体膜、36…バンドパス多層構造。
Claims (1)
- 透明な基板上に、屈折率が高い高屈折率誘電体膜と、該高屈折率誘電体膜よりも屈折率が低い低屈折率誘電体膜とを交互に積層してなる光学系デバイスに用いる光フィルタの製造方法において、
前記高屈折率誘電体膜の一部、または全部が二酸化チタン(TiO2 )よりなり、且つ前記高屈折率誘電体膜を非晶質の状態で成膜する成膜工程と、この成膜工程の後に、前記高屈折率誘電体膜がアナターゼ結晶構造に相変化しないように、前記高屈折率誘電体膜に真空中にて所定の熱処理を施す熱処理工程と、を有することを特徴とする光フィルタの製造方法。
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JP2005188108A JP2007010743A (ja) | 2005-06-28 | 2005-06-28 | 光フィルタの製造方法 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2008090913A1 (ja) * | 2007-01-24 | 2008-07-31 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | ガラス及び合わせガラス |
JP2019085482A (ja) * | 2017-11-06 | 2019-06-06 | トヨタ自動車株式会社 | 赤外線反射顔料の粉末を製造する方法 |
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-
2005
- 2005-06-28 JP JP2005188108A patent/JP2007010743A/ja active Pending
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