JP2008062184A - セレン吸着剤及びそれを用いたセレン含有水からのセレンの吸着除去並びに回収方法。 - Google Patents

セレン吸着剤及びそれを用いたセレン含有水からのセレンの吸着除去並びに回収方法。 Download PDF

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Abstract

【課題】6価セレンの処理困難性の問題に鑑み、4価、6価セレンの何れに対しても高い吸着性能を有し、且つ、再生繰返しが可能で耐久性に優れる吸着剤を開発し、セレン含有水からの簡便なセレン除去方法及び、回収方法を提供することを目的とする。
【解決手段】親水性有機高分子材料に非晶質な構造を持ったジルコニウム水和酸化物を担持造粒させて成るセレン吸着剤及び、該吸着剤を充填した塔に4価又は6価のセレン含有水を通水することでセレンを吸着させることを特徴とするセレンの吸着除去方法。
【選択図】図5

Description

本発明は、セレンの吸着剤及びその利用に関し、詳しくは、工業廃水、地下水などに含まれる4価及び6価のセレンを同時に吸着除去できるセレン吸着剤及び、それを用いたセレン含有水からのセレンの吸着除去並びに回収方法に関する。
排水基準物質に含まれるセレンは、一部地域の地表水及びセレン化合物製造業、例えば都市ガス製造の際の汚泥、乾式複写機の感光ドラムの製造時及び廃棄時のスクラップ等の排水に含まれており、セレンの排水基準は0.1mg/L以下と定められている。水中に溶存するセレンは4価及び6価のオキシアニオンであることが知られているが、6価セレンに対して、現時点で効果的な廃水処理技術が見つかっておらず、セレン化合物製造業者に対しては現在も0.3mg/L以下の暫定基準が設けられている。
セレンの処理に対し、現状で多く用いられている方法は鉄塩、アルミニウム塩による共沈処理であるが、この方法は4価セレンに対しては十分な効果が得られるが、6価セレンに対しては効果が低く除去率は10%程度とされている。6価のセレンを処理できる方法として、セレンを含む廃水に第一鉄化合物と第二鉄化合物を添加して液性をアルカリ性に調整し、生成した水酸化第一鉄および水酸化第二鉄と共に4価のセレンと6価のセレンを沈澱させる廃水処理方法、又金属鉄を用いた電解還元により6価セレンを4価セレンに還元して処理する技術など提唱されているが、使用薬品量やスラッジ発生量、運転管理の難しさなど、まだ問題点が多い。
上記の一次処理後に残留するセレンを除去する目的で、吸着剤による高次処理法が開示されている。チタン、ジルコニウムなどの金属化合物をイオン交換樹脂に担持させた吸着剤(特許文献1)、ジルコニウムの含水酸化物結晶を多孔質材料表面に5〜70重量%担持させた吸着剤(特許文献2)を用いたセレンの吸着除去法が開示されている。これらは共に4価セレンを対象とするもので、6価セレンに対する吸着性能は開示されていないこと、更には、既成の交換基を有する高分子粒子にジルコニウム化合物の塩を交換担持する方法(特許文献1)、及び多孔質な高分子粒子表面にジルコニウム含水酸化物結晶を晶析させる方法(特許文献2)によるため、ジルコニウム化合物の担持量が制約されることから吸着容量が低いこと、繰返し使用時に担持成分が脱離し耐久性が低いことなどの問題がある。一方、6価セレンを吸着できる吸着剤として、鉛と鉄を含んでX線的に非晶質である酸化物の粉末を6価セレンを含有するセレン廃水中に添加し、セレンを吸着処理する方法(特許文献3)があるが、有害な鉛を使用していること、操作が煩雑であり、繰返し使用も困難なことから実用化には問題がある。
特開平8−196804号公報 特開2000−334443公報 特開2001−276604号公報
本発明は、上記した6価セレンの処理困難性の問題に鑑み、4価、6価セレンの何れに対しても高い吸着性能を有し、且つ、再生繰返しが可能で耐久性に優れる吸着剤を開発し、セレン含有水からの簡便なセレンの除去方法及び、回収方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、4価及び6価セレンを含む廃水処理に使用可能な優れた吸着性能と再生性能を有する吸着剤について鋭意研究し、特定の非晶質なジルコニウム水和酸化物が4価及び6価セレンに対して高い吸着性能を有することを発見し、この粉末を親水性高分子材料の有機溶媒溶液に分散させた懸濁液の球状液滴を凝固させて、球状粒子を得ることにより、ジルコニュウム水和酸化物粉末と同等の吸着速度と吸着性能及び再生性能を有するセレン吸着剤が得られることを見出し、次いで、本吸着剤を使用したセレン含有水からの実用的な吸着除去及び再生使用に適した諸条件を確立して本発明を完成させた。
即ち本発明は、下記(1)〜(9)である。
(1)親水性有機高分子材料に非晶質な構造を持ったジルコニウム水和酸化物を担持させて成るセレン吸着剤。
(2)該ジルコニウム水和酸化物の熱減量が10〜20重量%の粉末であることを特徴とするセレン吸着剤。
(3)前記の親水性有機高分子材料がビニルアルコール系樹脂であるセレン吸着剤。
(4)前記のセレン吸着剤は親水性有機高分子材料の多孔質膜で覆われたジルコニウム水和酸化物の球状粒子であり、該粒子が平均粒子径0.4〜1.0mm、空隙率40〜70容積%及び粒子内部に多数の微細な筋状空隙を有することを特徴とする。
(5)前記のジルコニウム水和酸化物の担持量が該ジルコニウム水和酸化物と前記の親水性有機高分子材料を合わせた全体重量の90〜60重量%であることを特徴とするセレン吸着剤。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のセレン吸着剤を充填した塔に4価及び又は6価のセレン含有水を通水することでセレンを吸着分離させることを特徴とするセレンの吸着除方法。
(7)上記(6)に記載のセレン含有水のpHを2.0〜4.0に調整して通水することを特徴とするセレンの吸着除去法。
(9)前記に記載のセレンを吸着させた充填塔にアルカリ液を通水させてセレンを溶離させ、セレンの濃縮液として回収することを特徴とするセレンの回収方法。
本発明の吸着剤は、特定のジルコニウム水和酸化物を吸着体とし、これを親水性高分子材料により特定の構造を有する球状粒子に成型した物で、4価及び6価セレンが共存する廃水においても6価セレンの前処理を必要とせずに同時に高い吸着容量で吸着除去できる。本発明の方法により、通常の吸着操作により簡便にセレン含有水中のセレンを排水基準の0.1mg/L以下に吸着除去し、アルカリの使用により吸着セレンを溶離回収し、吸着剤は安定に繰返し使用ができる。
本発明のセレン吸着剤を構成する吸着体であるジルコニウム水和酸化物は、非晶質な構造を持った熱減量が10〜20重量%の粉末である。ここで、ジルコニウム水和酸化物とは、一般式がZrO・nHO(n=0.76〜1.7の整数)及びZrO(OH)・nHO(n=0又は0.7以下の整数)で表されるジルコニウム化合物の双方を含む水和酸化物の粉末である。また、本発明のジルコニウム水和酸化物には、ジルコニウム以外の金属元素の水和酸化物、例えば、ハフニウム、チタン、セリウム、ランタン、鉄、錫などの水和酸化物又は水酸化物が10重量%以下含まれても良い。
上記の非晶質な構造を持ったジルコニウム水和酸化物とは、X線回折分析において立方晶系又は単斜晶系ZrOのシャープな回折ピークが認められないことから定義される。本発明で使用する非晶質な構造を持ったジルコニウム水和酸化物のX線回折図の一例を図1に示す。また、対比図として、結晶性の高いジルコニウム水和酸化物のX線回折図の一例を図2に示す。図2と比較して図1はブロードなピークが見られ、結晶性が低いことを示している。非晶質であることに限定する理由は、結晶性が高い場合は、4価、6価いずれのセレンに対しても吸着性が極めて低いのに対し、非晶質な場合には大幅に吸着性が向上するという発見に基づくもので、非晶質であることと同時に、結合水分量として測定される熱減量も重要である。
上記のジルコニウム水和酸化物の熱減量は10〜20重量%であり、より好ましくは10〜15%である。熱減量が10重量%より低いと吸着能力が著しく低下し、20重量%より高いと吸着操作において、被処理液のpHが低い場合にジルコニウムの溶出が起こること、更には後述する親水性高分子を用いた担持造粒処理において望ましい粒子径と粒子構造を得ることが難しくなる。ここで定義する熱減量は、重量測定済みの磁性るつぼに測定物を入れ重量を測定した後、800℃の高温にて1時間加熱し、25℃放冷後に重量を測定してその蒸発重量減少分を当初測定物(ジルコニウム水和酸化物重量)で除した値を重量%で表示する。
上記のジルコニウム水和酸化物の平均粒子径は、1〜25μmである。この平均粒子径は、粒子が0.1〜2μmからなる一次粒子の凝集した粒子の粒子径である。粒子径は小さい程吸着性能を高めることができるが、1μm以下では粉体の取扱いが極めて困難になることと、後述する親水性高分子を用いた担持造粒処理の際に高分子溶液にこの粉体を混合すると分散液の粘度が高くなるため、本発明で必要とするジルコニウム水和酸化物の担持量を有する吸着剤が得られなくなる。また25μm以上では比表面積が減少し、それに伴って吸着性能が低下するとともに、吸着剤の内部空隙が大きくなり、担持造粒処理により得られた吸着剤の物理強度が低下する。2次粒子の平均粒子径については、島津製作所製レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−2000を用いた測定による。
上記の非晶質な構造を持ったジルコニウム水和酸化物の製造方法は、例えば、日本特許公開2000−247641号公報に示された方法によることができる。一般的には、可溶性ジルコニウム塩水溶液を加水分解し、生成したスラリーをろ過、洗浄、乾燥、粉砕の工程を経て製造することができるが、特に重要なのは、乾燥工程における温度管理であり、過熱しすぎると結晶質の物が生成してしまうため、好適な乾燥温度は100〜140℃である。
本発明のセレン吸着剤は、親水性有機高分子材料に上記のジルコニウム水和酸化物を担持造粒処理法により製造する。この担持造粒処理法は、日本特許出願2005−210054号に詳しく説明されている。本発明で使用する親水性有機高分子材料は、親水性ビニルアルコール樹脂及びその誘導体樹脂の総称であり、これらの樹脂には、例えばエチレンと酢酸ビニルとの共重合体の加水分解樹脂(エチレンビニルアルコール系樹脂)、エチレンとアリルアルコール、イソプロペニルアルコール、ビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等との共重合樹脂等があり、これらの混合樹脂も有用であり、その数平均分子量は500以上、2000〜50000が好ましい。これらの樹脂の中で、特にエチレンビニルアルコール系樹脂(以下EVOHと称す)が、親水性でありながら耐水性、耐化学薬品を有し、曲げや衝撃特性に優れることから、吸着剤粒子として成型した際の耐久性及び強度も高い。特に、EVOHではエチレン含有量は30モル%以上のものを用いることが好ましい。
上記の親水性有機高分子材料の量は、ジルコニウム水和酸化物と有機高分子材料を合わせた全体重量の10〜40重量%(ジルコニウム水和酸化物の量的割合が90〜60重量%)、より好ましくは15〜30重量%(ジルコニウム水和酸化物の量的割合が85〜70重量%)である。10重量%以下では、担持造粒処理の際に均一な球状粒子の生成が難しいことと、吸着剤粒子の強度が弱く吸着操作時の耐久性が不足する。又40重量%を超えると担持造粒処理の際にジルコニウム水和酸化物と有機高分子材料とを溶媒に分散する際の粘度が増加して造粒が困難になることと、単位体積当りの吸着容量が低下するので好ましくない。
本発明のセレン吸着剤として有機高分子材料を用いて担持造粒処理により粒状構造体を成形する方法は重要であり、その製造方法の概要を説明すれば、上記の有機高分子材料を適当な有機溶媒に溶解させた樹脂溶液に上記のジルコニウム水和酸化物粉末を添加し、均一に混合分散させた分散液を水浴中に滴下し、凝固させることにより、ほぼ球形に近い粒状に成型されて、ジルコニウム水和酸化物が樹脂により担持された平均粒子径が0.4〜1.0mmの造粒体が得られる。ここで、平均粒子径の測定方法は、湿式にて粒子径を測定し、その粒度分布から数平均50%粒子径を平均粒子径とする。
本発明の粒状構造体であるセレン吸着剤粒子の空隙率は40〜70容積%である。粒子内空隙部は粒子内部に被処理液が侵入して粒子内部に固定されているジルコニウム水和酸化物粒子の吸着座と接触させるために必要で、空隙率が大きい程吸着速度は増すが、吸着剤の物理強度が低下するため、40〜70容積%、より好ましくは50〜70容積%に調節する。この空隙率は、担持造粒処理の際のジルコニウム水和酸化物粉末と有機高分子材料の配合割合や、造粒時の温度条件、液滴のサイズなどにより調節できる。ここで、空隙率は、吸着剤粒子が水中で平衡状態にある粒子体積に対する粒子内部で水分が占める体積分率と定義する。
担持造粒処理に使用する有機溶媒としては、有機高分子材料を溶解せしめる溶媒、例えば、メタノール、エタノール、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、n−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等から選ばれた1種又は2種以上を用いることができるが、取扱いの容易さと本発明の望ましい構造を持った粒子を作るにはジメチルスルホキシドを用いるのが良い。また、分散液の温度は任意に設定することができるが、好ましくは40〜70℃で、凝固させる水浴の温度は、15〜30℃で行うのが良い。この操作は熱による有機高分子材料の分解を抑えると共に、水浴と溶媒の温度差を持たせることで、成型時に本発明の好ましい形態、強度のある粒子状吸着剤を作ることができるためである。
図3、4に本発明のセレン吸着剤の顕微鏡写真を示す。図3は外観であり、図4は割断面の写真である。これらの写真から本吸着剤は、ジルコニウム水和酸化物の粒子が樹脂の多孔質膜で覆われた球状の形状であり、表面は薄いスキン層で覆われ、粒子内部に多数の微細な筋状空隙を有する構造からなっていることを示している。
成型された粒子状吸着剤は球状であることにより、接触による磨耗を抑えることができ、また内部構造が微細空隙部を有することでスポンジ状になっていることから弾力性を有することで吸着剤が破損することを防止できるため、実際の使用において目詰まりなどによる吸着処理に障害を起こすことがなく、又粒子内部からジルコニウム粒子が脱落することも無い。
本発明のセレン吸着剤は4価及び6価セレンに対して高い吸着性能を有するので、本発明のセレン吸着剤を充填した塔に4価及び6価が共存するセレン含有水を通水することで、セレンを吸着し、セレン含有水中のセレン濃度を排水基準の0.1mg/L以下に除去することができる。本吸着剤を使用してセレンを除去するのに望ましいセレン含有水の濃度は、Seとして10〜0.1mg/Lの程度の濃度範囲であり、4価セレン、6価セレンのいずれかでも、又その両方が共存する場合でも特別な前処理なしで塔に通水することができる。通水するセレン含有水のpHは2.0〜4.0の範囲、より好ましくは2.5〜3.5の範囲に調整することが必要であり、pHが2.0以下の場合はジルコニウム成分が溶出し、またpH4.0以上では吸着剤の吸着性能が低下するため本発明の効果を低下させ好ましくない。
本発明の処理方法によりセレン含有水からセレンを吸着させた後の吸着剤は、アルカリ液を使用することにより吸着セレンが溶離され、吸着剤を再生することができる。また、アルカリ雰囲気において、本吸着剤は極めて安定であり、ジルコニュウム成分が溶出することがないため、繰り返し使用を行っても性能の低下が起こらず、長期間安定して使用することができる。溶離再生に使用するアルカリの濃度は0.1〜1モル/Lが好適で、アルカリの種類としては苛性ソーダ、苛性カリなどを使用する。溶離されたセレンを高濃度で含む再生液は一般的なセレン廃液の一次処理法、例えば鉄化合物等による凝集沈殿法により固形物として分離回収することができる。
本発明の吸着剤による4価セレンと6価セレンに対する吸着等温線図を図5に示す。溶存するセレンに対して価数によらずに高い吸着量を示している。従って、従来のアルミナ等の一般的な吸着剤では直接には処理を行うことが出来ない6価セレンについても、還元処理などの前処理を行うことなく吸着除去できる。また、セレン含有廃水を工業的に実施する場合の通水速度は、充填塔の空塔速度(SV)として10〜20/時間程度で通液することが好適である。
以下、この発明を具体的に説明するが、実施例はこの発明の理解を容易とするためのものであり、この発明を限定するものではない。実施例中%とあるのは重量%を表す。
文中のSVとは、空塔速度(スペースヴェロシテイ)であり、吸着剤単位容量当たりの単位時間通水量であり、例えばSV=10では、吸着剤1L当たり10L/Hrで通水することを言う。
また、処理倍率とは、被処理水のセレン濃度を目的の濃度に低下させるために吸着剤容量当たり何倍の水が通水できるかを意味するもので、例えば、1Lの吸着剤を使用して処理倍率1000というと、水を1000L通水したことを言う。
ジルコニウム濃度は誘導結合高周波プラズマ(Inductively coupled plasma)装置、リガク製CIROS・120EOP型装置を、セレン濃度は同装置及び同装置に水素化物発生装置、日本ジャーレル製HYD−10を接続したものを用いて測定を行った。
ジルコニウム水和酸化物の平均粒子径は、島津製作所製SALD−2000装置にて測定し、測定結果より粒度50%点を読み取り平均粒子径とした。
製造例1
(ジルコニウム水和酸化物の調製)
オキシ塩化ジルコニウム溶液を硫酸で加水分解し、塩基性硫酸ジルコニウムのスラリーを得た後、このスラリーに水酸化ナトリウム溶液をpH13となるまで添加し、水酸化物の沈殿を生成させた。沈殿物をろ過し、水洗した後、固形分を回収し水酸化ジルコニウム前駆体を得た。この前駆体を真空乾燥機中120℃で4時間乾燥を行ったところ、熱減量13.5重量%、平均粒子径14.3μm、X線回折ピーク図1参照の非晶質なジルコニウム水和酸化物の粉末を得た。
(樹脂担持造粒体:本発明の吸着剤の調製)
エチレンビニルアルコール共重合体38.5重量部をジメチルスルホキシド255重量部に溶解した樹脂溶液を60℃に加熱した中に、上記ジルコニウム水和酸化物240重量部を添加し、均一に攪拌分散させたところ、分散液の粘度は700mPa・s(50℃)であった。この分散液を20℃の水浴中に滴下し、凝固させて平均粒径0.69mm、ジルコニウム水和酸化物の担持量410g/Lの球状の樹脂担持造粒体(本発明の吸着剤)を得た。ここで担持量は、造粒体の一定容積を計量し、重量測定済みの磁性るつぼに測定物を入れ、800℃の高温にて1時間加熱し、25℃放冷後に重量を測定してその焼成重量減少分を当初容積量で除した値を単位容積当りの担持量として測定する。
この樹脂担持造粒体の顕微鏡写真を図3、図4に示す。この写真から、ジルコニウム水和酸化物を樹脂で担持造粒した本発明の吸着剤は、樹脂の多孔質膜(スキン層)で覆われた球状粒子であり、粒子内部には多数の微細な筋状空隙を有していることが分かる。この吸着剤の空隙率は68容積%であった。
製造比較例1
(ジルコニウム水和酸化物の調製)
製造例1と同様にして調製した水酸化ジルコニウム前駆体の真空乾燥時間を120℃で2時間に変えることにより、熱減量が23.8重量%平均粒子径10.6μmの非晶質なジルコニウム水和酸化物の粉末を得た。
(樹脂担持造粒体の調製)
上記の樹脂担持造粒体調製方法と同様にして、エチレンビニルアルコール共重合体38.5重量部をジメチルスルホキシド255重量部に溶解した樹脂溶液を60℃に加熱した中に、上記ジルコニウム水和酸化物240重量部を添加し、均一に攪拌分散させたところ、分散時の粘度が1000mPa・s(50℃)を超え、20℃の水浴中に滴下した際に球状の吸着剤を得ることができなかった。
製造比較例2:ジルコニウム水和酸化物と樹脂担持造粒体の調製
製造例1と同様にして調製した水酸化ジルコニウム前駆体を、焼成炉を用いて400℃で4時間熱処理させたところ、熱減量が3.7重量%の結晶質ジルコニウム水和酸化物の粉末を得た(X線回折ピーク図2参照)。この粉末から製造例1と同様にして樹脂担持造粒体を調整したところ球状の吸着剤は得られたが、吸着剤の空隙率は73容積%であった。
参考例
製造例1及び製造比較例1、2にて得られたジルコニウム水和酸化物粉末について、4価及び6価セレンの吸着性能を調べた。吸着操作は、亜セレン酸ナトリウム(以下
Se(IV)と表記する)及びセレン酸ナトリウム(以下Se(VI)と表記する)をそれぞれ水道水にセレン濃度100mg/Lで溶解し、希塩酸でpH3.0に調整したセレン溶液1L中に、これらのジルコニウム水和酸化物粉末をZrO基準で1.0gずつ投入し、20時間攪拌した後にろ過して、ろ液中のセレン濃度を測定した。また、それぞれの粉末を用いて造粒性を比較した。それぞれの結果を表1に示す。この結果、製造例1及び製造比較例2では、4価、6価セレンに対して高い吸着量を示すことが分かる。しかし、製造比較例2のジルコニウム水和酸化物粉末からは前述の通り樹脂担持造粒体が得られなかった。
実施例1
製造例1にて得られた樹脂担持造粒体(セレン吸着剤)を、亜セレン酸ナトリウム及びセレン酸ナトリウムをそれぞれ水道水にセレン濃度100mg/Lで溶解し、希塩酸でpH3.0に調整したセレン溶液1L中に湿潤体積で1、2、4、8mlを投入し、90時間攪拌した後に液相のセレンの濃度を測定し、それぞれの添加量における平衡吸着量を求めた。その結果を表2に示す。得られた結果から、セレン4価、6価の液相濃度と本発明の吸着剤吸着量との関係をセレン吸着等温線図として図5に示す。
実施例2〜7、比較例1、2
実施例1と同様の方法で製造例1の吸着剤15mlをSe(IV):100mg/L、pH4.0及び、Se(VI):100mg/L、pH4.0のセレン含有水3L中にそれぞれ投入し、90時間攪拌してセレンを飽和吸着させた後回収した。それぞれの吸着剤を実施例として、0.2、0.5、1.0規定のNaOH溶液、比較例として0.5規定のHSO溶液に投入し、1時間攪拌を行った後の液相のセレン及びジルコニウム濃度を測定した。結果を表3に示す。この結果、アルカリ濃度が低くても十分な脱着率が得られることが明らかで、また、酸での再生ではジルコニウムの溶出が多く、実用的ではないことが分かる。
実施例8、9、比較例3
製造例1にて得られた吸着剤を直径10mmΦのカラムに15ml充填し、Se(VI)の濃度1mg/L液のpHをそれぞれ2.1(実施例8)、3.0(実施例9)、4.2(比較例3)に調整したセレン含有水を、SV=10(150ml/hr)で通水を行い、処理水のセレン濃度が0.1mg/L時点の通水量から処理倍率(通水量ml/吸着剤ml)を求めた。通水液量に対する処理液のセレン濃度の関係を図6に示す。この結果、処理倍率で比較すると、pH=2.1の場合2,750倍、pH=3.0の場合2,100倍、pH=4.2の場合1,000倍となり、pH4以上の場合は処理倍率が低下することが分かる。またこの際の出口液中のジルコニウムの溶出量を確認したところ、いずれのpHでもジルコニウムが0.01mg/L以上検出されることはなかった。
実施例10、11、12
製造例1にて得られた吸着剤を10mmΦのカラムに15ml充填し、Se(IV)(実施例10)、Se(VI)(実施例11)のセレン濃度1mg/Lの液、及び4価と6価セレンを1対1の比率で含む混合セレン(実施例12)濃度1mg/Lの液をそれぞれpH3.0に調整して、これらの液をそれぞれSV=10(150ml/hr)で通水した結果を図7に示す。この結果、出口セレン濃度が0.1mg/L時点の通水量から処理倍率で表すと、4価、6価セレン液及び両液の等量混合液、いずれの場合も約2,100倍となり、高い処理性能を示した。
実施例13、14
実施例11において6価セレンを通水してセレンを吸着した充填カラムに引き続いて、表4に示す再生条件1の方法により1回目の再生処理を行った(実施例13)。再生処理後、実施例13と同条件にて再度通水処理を行い、吸着カラムを再度表4に示す条件2の方法により繰返し2回目の再生処理を行った(実施例14)。その結果、再生1回目のセレン脱着率は83.7%、2回目は、90.6%となった。また、この後更に、同条件で通水を行った際の出口セレン濃度が0.1mg/L時点での処理倍率は2,200倍となり、吸着、再生の繰返しによっても吸着性能が変わらないことが分かった。
以上の参考例及び実施例から、本発明の非晶質な構造のジルコニウム水和酸化物が4価、6価いずれのセレンに対しても高い吸着性能を有すること、又このジルコニウム粉末を樹脂で担持造粒させた多孔質な球状造粒体は、セレン吸着剤としてカラム吸着処理によりセレン含有水から高い処理倍率で0.1mg/Lの濃度以下にセレンを除去でき、更にアルカリで再生させることにより、繰返し吸着、再生が可能なことが明らかである。
本発明のセレン吸着剤は、4価、6価の何れにも高い吸着性能を有し、吸着セレンはアルカリにより容易に溶離され、繰返し吸着、再生使用が出来るため、セレン含有廃水からのセレンの除去、回収方法として有効であり、特に、産業廃水、地下水などに含有するセレンの除去方法として好適に利用できる。
本発明に使用する非晶質ジルコニウム水和酸化物のX線回折ピーク図 対比例である結晶質ジルコニウムのX線回折ピーク図 本発明のセレン吸着剤の外観を示す顕微鏡写真 本発明のセレン吸着剤の割断面を示す顕微鏡写真 本発明のセレン吸着剤による4価及び6価セレンの吸着等温線図 本発明の吸着剤を充填したカラムにpHの異なるセレン含有水を通水した吸着破過曲線図 本発明の吸着剤を充填したカラムにセレン価数の異なるセレン含有水を通水した吸着破過曲線図

Claims (8)

  1. 親水性有機高分子材料に非晶質な構造を持ったジルコニウム水和酸化物を担持させて成るセレン吸着剤。
  2. 該ジルコニウム水和酸化物の熱減量が10〜20重量%の粉末であることを特徴とする請求項1に記載のセレン吸着剤。
  3. 前記の親水性有機高分子材料がビニルアルコール系樹脂である請求項1又は2に記載のセレン吸着剤。
  4. 前記のセレン吸着剤は親水性有機高分子材料の多孔質膜で覆われたジルコニウム水和酸化物の球状粒子であり、該粒子が平均粒子径0.4〜1.0mm、空隙率40〜70容積%及び粒子内部に多数の微細な筋状空隙を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセレン吸着剤。
  5. 前記のジルコニウム水和酸化物の担持量が該ジルコニウム水和酸化物と前記の親水性有機高分子材料を合わせた全体重量の90〜60重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセレン吸着剤。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のセレン吸着剤を充填した塔に4価及び又は6価のセレン含有水を通水することでセレンを吸着分離させることを特徴とするセレンの吸着除方法。
  7. 請求項6に記載のセレン含有水のpHを2.0〜4.0に調整して通水することを特徴とするセレンの吸着除去法。
  8. 請求項6又は7に記載のセレンを吸着させた充填塔にアルカリ液を通水させてセレンを溶離させ、セレンの濃縮液として回収することを特徴とするセレンの回収方法。
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