JP2008061545A - 黄色ブドウ球菌のコアグラーゼ型別用オリゴヌクレオチド - Google Patents

黄色ブドウ球菌のコアグラーゼ型別用オリゴヌクレオチド Download PDF

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Abstract

【課題】黄色ブドウ球菌のコアグラーゼ型別の迅速かつ簡便な判別方法の提供。
【解決手段】コアグラーゼI〜VIII型それぞれの遺伝子にほぼ特異的なオリゴヌクレオチド鎖をプライマーとした遺伝子増幅を行なうことで型別が可能となる。コアグラーゼ型について少なくとも2種のオリゴヌクレオチドをプライマーとして、試料中のDNAにおける標的コアグラーゼ遺伝子の一部を特異的に増幅させることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、黄色ブドウ球菌のコアグラーゼ型別用オリゴヌクレオチドに関する。また、オリゴヌクレオチドによる、黄色ブドウ球菌のコアグラーゼ型別の簡便かつ迅速な型別法およびコアグラーゼ型別用試薬に関する。
コアグラーゼは黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)と他のブドウ球菌属との鑑別に古くから用いられてきた細胞外分泌タンパク質で、ヒト、サル、ウサギの血漿を凝固する作用がある。このコアグラーゼには抗原性に違いがあることが知られており、黄色ブドウ球菌のコアグラーゼ型については10個の型(IからX型)の存在が報告されている。ブドウ球菌食中毒においては、コアグラーゼVII型が全体の6〜7割を占め、次いでII型、III型がそれぞれ約1割程度認められることが報告されている。このように、黄色ブドウ球菌でも食中毒原因菌となるのは特定の型のものに限られる傾向が報告されており、各種材料から分離される菌株を型別することは、食中毒原因菌を決定付けるためにも大いに参考となる。また、ファージ型や毒素型などの他の疫学マーカーとの相互関係を検討することで、汚染源を追及することができる。実際に、食中毒の疫学調査用や黄色ブドウ球菌関連疾患の診断用に型別用抗血清が市販されており、I〜VIII型までの型別法が確立されている。
市販の抗血清を用いたコアグラーゼ型別法を以下に述べる。被検菌株の黄色ブドウ球菌1コロニーをBrain Heart Infusion (BHI)液体培地に接種し、好気条件下37℃で一夜静置培養する。培養液を3000rpm、30分間遠心分離して上清を採取し、試験用抗原液とする。小試験管9本に試験用抗原液を0.1mLずつ分注した後、各コアグラーゼ型に対する抗血清(I〜VIII型)および対照となる希釈した正常ウサギ血清を0.1mLずつ各試験管に添加し、37℃で1時間反応させる。全ての試験管に希釈したウサギ血漿を0.2mLずつ加え、37℃で反応させる。血漿の凝固を小試験管を傾けて判定し、9本の試験管のうち1本だけが凝固しなくなるまで1、2、4、24、48時間観察を続ける。凝固が阻止された試験管の血清型が被検菌株のコアグラーゼ型を表す。このように黄色ブドウ球菌株を単離してからコアグラーゼ型を決定するまでには、多くの時間を要する。また、菌株によってはコアグラーゼの産生が弱く、判定が困難な場合がある。その場合は、コアグラーゼの産生を高めるための振とう培養やウサギ血漿加液体培地での培養、ウサギ血漿加寒天培地によるコアグラーゼ産生の高いコロニーの選択、などの工夫が必要となる。また、菌株によってはコアグラーゼ産生が非常に強く、1時間の反応時間で全ての試験管に凝固が認められ、判定が困難な場合がある。その場合は、試験用抗原液を2倍階段希釈してコアグラーゼ試験を行い、凝固の見られる最高希釈倍数に試験用抗原を希釈して、コアグラーゼ型別試験を再び実施しなくてはならない。
このように、抗血清を用いたコアグラーゼ型別試験には多くの時間と熟練した技術を要するため、疫学的に極めて有用であるにも関わらず、日本以外での使用実績は低い。
黄色ブドウ球菌に係る試薬キットに関連して、コアグラーゼ遺伝子内に存在する各コアグラーゼ型間に共通する核酸配列とハイブリダイズすることを特徴とするオリゴヌクレオチドおよび該オリゴヌクレオチドを標識化した標識オリゴヌクレオチド、および該オリゴヌクレオチドおよび該標識オリゴヌクレオチドをプローブあるいはプライマーとして使用する黄色ブドウ球菌の検出法および検出用試薬キットが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。これは、試料中の黄色ブドウ球菌を検出する方法および検出用試薬キットに関するもので、コアグラーゼI〜VIII型別を可能とするものではない。
コアグラーゼI〜X型の遺伝子構造は、最近明らかにされた(例えば、非特許文献1参照。)。それによると、それぞれの型のコアグラーゼ遺伝子塩基配列は、67.2〜90.2%の高い相同性を有していた。
しかし、コアグラーゼI〜VIII型それぞれの遺伝子にほぼ特異的な塩基配列を見出し、そのオリゴヌクレオチド鎖をプライマーとした遺伝子増幅を行なうことで型別が可能となる技術については報告されていない。
特開平6-253845号公報 Watanabe S. et al., Journal of Bacteriology, Vol. 187, p. 3698-3707, 2005
本発明は、検体中の黄色ブドウ球菌のコアグラーゼ型を型別することにより、黄色ブドウ球菌のコアグラーゼI〜VIII型の迅速かつ簡便な型別方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、黄色ブドウ球菌のコアグラーゼ型別について鋭意研究の結果、コアグラーゼI〜VIII型それぞれの遺伝子にほぼ特異的な塩基配列を見出し、そのオリゴヌクレオチド鎖をプライマーとした遺伝子増幅を行なうことで型別が可能となる技術を確立し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、コアグラーゼI〜VIII型の遺伝子を特異的に増幅するためのオリゴヌクレオチド、該オリゴヌクレオチドを使用して検体中の黄色ブドウ球菌のコアグラーゼ型を判別することによる、黄色ブドウ球菌コアグラーゼ型別の迅速かつ簡便な型別方法に関する。
黄色ブドウ球菌のコアグラーゼI型遺伝子を特異的に検出するオリゴヌクレオチドは、配列表配列番号1〜4で表される塩基配列の少なくとも連続した10塩基以上を含むことを特徴とするオリゴヌクレオチドまたはその相補配列からなるオリゴヌクレオチドである。
また、黄色ブドウ球菌のコアグラーゼII型遺伝子を特異的に検出するオリゴヌクレオチドは、配列表配列番号5〜9で表される塩基配列の少なくとも連続した10塩基以上を含むことを特徴とするオリゴヌクレオチドまたはその相補配列からなるオリゴヌクレオチドである。
また、黄色ブドウ球菌のコアグラーゼIII型遺伝子を特異的に検出するオリゴヌクレオチドは、配列表配列番号10〜11で表される塩基配列の少なくとも連続した10塩基以上を含むことを特徴とするオリゴヌクレオチドまたはその相補配列からなるオリゴヌクレオチドである。
また、黄色ブドウ球菌のコアグラーゼIV型遺伝子を特異的に検出するオリゴヌクレオチドは、配列表配列番号12〜20で表される塩基配列の少なくとも連続した10塩基以上を含むことを特徴とするオリゴヌクレオチドまたはその相補配列からなるオリゴヌクレオチドである。
また、黄色ブドウ球菌のコアグラーゼV型遺伝子を特異的に検出するオリゴヌクレオチドは、配列表配列番号21〜24で表される塩基配列の少なくとも連続した10塩基以上を含むことを特徴とするオリゴヌクレオチドまたはその相補配列からなるオリゴヌクレオチドである。
また、黄色ブドウ球菌のコアグラーゼVI型遺伝子を特異的に検出するオリゴヌクレオチドは、配列表配列番号25〜30で表される塩基配列の少なくとも連続した10塩基以上を含むことを特徴とするオリゴヌクレオチドまたはその相補配列からなるオリゴヌクレオチドである。
また、黄色ブドウ球菌のコアグラーゼVII型遺伝子を特異的に検出するオリゴヌクレオチドは、配列表配列番号31〜33で表される塩基配列の少なくとも連続した10塩基以上を含むことを特徴とするオリゴヌクレオチドまたはその相補配列からなるオリゴヌクレオチドである。
また、黄色ブドウ球菌のコアグラーゼVIII型遺伝子を特異的に検出するオリゴヌクレオチドは、配列表配列番号34〜35で表される塩基配列の少なくとも連続した10塩基以上を含むことを特徴とするオリゴヌクレオチドまたはその相補配列からなるオリゴヌクレオチドである。
さらに、本発明は、配列表配列番号1〜35に表した各コアグラーゼ型別用オリゴヌクレオチドのうち、それぞれのコアグラーゼ型について少なくとも2種のオリゴヌクレオチドをプライマーとして、試料中のDNAにおける標的コアグラーゼ遺伝子の一部を特異的に増幅させることを特徴とするコアグラーゼ型別法である。
また本発明は、配列表配列番号1〜35に表した各コアグラーゼ型別用オリゴヌクレオチドのうち、それぞれのコアグラーゼ型について少なくとも2種のオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、耐熱性DNAポリメラーゼ、dNTPおよび緩衝液を含むことを特徴とするコアグラーゼ型別用試薬キットである。
本発明では、黄色ブドウ球菌のコアグラーゼI〜VIII型別に遺伝子増幅を用いることで、簡便で迅速かつ正確な型別試験が実施可能となる。また、検体として分離した菌株や生菌だけではなく、黄色ブドウ球菌の死菌体を含む検体、すなわち黄色ブドウ球菌のDNAを含んだ食品検体や臨床検体からも、遺伝子増幅作用による高い検出感度によりコアグラーゼ型別が可能である。したがって、ブドウ球菌食中毒時の汚染源追及や疫学調査、黄色ブドウ球菌関連疾患の検査・診断に際して実施するコアグラーゼ型別試験において、本発明は有用な手法として利用することができる。また、プライマーセット、耐熱性DNAポリメラーゼ、dNTPおよび緩衝液を含むことを特徴とするコアグラーゼ型別用試薬キットが提供されることは、現場における分子疫学解析に極めて有用である。
本発明のオリゴヌクレオチドを用いたコアグラーゼ型別には、核酸増幅法として一般的に使用するPolymerase Chain Reaction法(PCR法)が用いられる。PCRのプライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの鎖長は、鋳型DNAに対する選択性やPCRの検出感度、および再現性などを考慮すると、少なくとも10塩基以上の長さが必要となるが、一般的には20塩基前後の長さが望ましい。本発明のオリゴヌクレオチドをPCRのプライマーとして使用する場合、配列番号1〜35に示した配列またはそれらの相補配列の全域を使用する必要はない。プライマーの3'末端側に本発明のオリゴヌクレオチドの少なくとも連続した10塩基以上を含んだ約20塩基から成るプライマーを合成し、その解離温度(Tm値)に合わせてPCR反応を行うことで、それぞれの型に特異的な増幅産物を得ることができる。
プライマーに用いるオリゴヌクレオチドは、ホスホアミダイド法を使用した市販のDNA合成装置、例えばApplied Biosystems 3400 DNA合成機を用いて合成する。合成したオリゴヌクレオチドは、ゲルろ過法や逆相カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより精製する。
PCRには耐熱性DNAポリメラーゼが用いられるが、この酵素の起源については90〜95℃の温度で活性を保持していれば、どのような生物種由来でもよい。熱変性温度は90〜95℃、プライマーをハイブリダイズさせるアニーリング温度は37〜65℃、重合反応は50〜75℃で、この熱変性から重合反応までの操作を1サイクルとしたPCRを20〜45サイクル行なって、検体中に含まれる黄色ブドウ球菌DNAのコアグラーゼI〜VIII型遺伝子断片を増幅させる。
目的増幅産物の検出は、PCRを終えた反応液をそのままアガロースゲル電気泳動にかける。増幅されたヌクレオチド断片の長さから、プライマーが認識すべき配列の有無を確認する。この結果が、検体における黄色ブドウ球菌のコアグラーゼI〜VIII型の型別結果となる。増幅されたヌクレオチド断片の検出には、その他の電気泳動やクロマトグラフィーを用いることも有効である。
本発明における検体としては、単離培養された菌体から粗抽出または精製されたDNAなどの核酸検体が用いられる。また、PCR法は標的遺伝子を特異的に増幅するため、食品や臨床検体、または環境検体など様々な微生物が存在する検体から、菌の単離培養を経ずに直接用いることも可能である。また、上記全ての検体について検体中の菌は生菌である必要は無く、死菌体でもDNAさえ存在すれば検査が可能である。
また、配列表配列番号1〜35に表したオリゴヌクレオチドの1つをプローブとして機能させ、膜上またはその他支持体上の標的ヌクレオチド配列を選択的に検出しても良い。この場合、オリゴヌクレオチドは標識物で修飾するのが好ましい。
以下に実施例及び試験例を示し、本発明をより詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
(PCR法によるコアグラーゼ型別)
(1) 試料の調製
黄色ブドウ球菌は、コアグラーゼI〜VIII型の標準株を用いた(表1の横の見出し)。それぞれの菌株は、BHI (Brain Heart Infusion)液体培地(BBL社)で35℃、24時間培養した。培養液1mLから菌体を集菌し、162μLのTris-EDTA Bufferに懸濁した。菌懸濁液に15mg/mlのリゾスタフィン(和光純薬工業社)を18μL添加し37℃で30分間インキュベートした。このリゾスタフィン処理液からBlood & Cell Culture DNA kit(キアゲン社)によりDNAを調製した。
(2) プライマーの設計
コアグラーゼI〜VIII型遺伝子の塩基配列から、それぞれの遺伝子に特異的な配列を見出し、その領域を含むオリゴヌクレオチド鎖をプライマーとして設計した。プライマーとして用いるオリゴヌクレオチド鎖は、化学的に合成した。それぞれのコアグラーゼ型を検出するためのプライマーの組合せと増幅産物の推定される塩基数は、表2の縦の見出しに示した。
(3) PCR
PCR反応液は、タカラバイオ社の試薬を用いて調製した。すなわち、0.2UのEx Taq Polymerase、0.2mMのdNTP mixture、1.5μLの10×Ex Taq Buffer、それぞれ0.5μMのコアグラーゼ型別用プライマー、および1〜1000ngの試料DNAを含む全量15μLのPCR反応液を調製した。PCR反応は、Gene Amp 9700 (Applied Biotechnology社)を用い、94℃で4分間の初期変性の後、94℃で30秒、52℃で30秒、72℃で60秒を1サイクルとし、これを30サイクル行い、さらに72℃で7分間保持後、4℃で保持した。
(4) 検出
増幅されたヌクレオチド断片を検出するために、PCR反応液を3%アガロース電気泳動に供した。PCR反応液4.5μLを3%アガロースにて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色した後、紫外線照射下での蛍光を検出した。同時に分子量マーカーも泳動し、相対移動度の比較により検出されたヌクレオチド断片の長さを算出した。
(5) 結果
プライマーとして用いた本発明のオリゴヌクレオチドは、既知のコアグラーゼI〜VIII型遺伝子塩基配列の情報をもとに設計したため、PCRにより増幅されるべきヌクレオチド断片の長さは推定可能である。表1の縦の見出しに示した増幅産物の推定される塩基数と、実際にPCR反応から検出されたヌクレオチド断片の長さが一致した場合、各プライマーは標的としている領域を正しく増幅していると判断し、表1中に「+」と示した。一方、ヌクレオチドの増幅が見られなかったものには「−」と示した。その結果、表1に示した39のプライマーの組合せについて、増幅産物から判断されるコアグラーゼ型と黄色ブドウ球菌コアグラーゼ標準株の示すコアグラーゼ型とは全て一致した。また、プライマーの標的とは異なるコアグラーゼ型のDNAテンプレートとは全く反応しなかった。すなわち、それぞれのコアグラーゼ型を検出するために設計したオリゴヌクレオチドは、標的遺伝子を特異的に増幅し、正確にコアグラーゼ型を判断することが可能となった。
(マルチプレックスPCRによるコアグラーゼ型別)
実施例1で示したPCRによるコアグラーゼ型別では、1試料につき8回のPCR反応が必要となり、多検体の検査には不向きである。そこで、1回のPCR反応液に4つのコアグラーゼ型を検出するためのプライマーを混合したマルチプレックスPCRを検討した。この方法によれば、2回のPCR反応でコアグラーゼI〜VIII型の型別が可能となる。
(1)試料の調製
実施例1で調製したDNAを鋳型として用いた。
(2)PCR
マルチプレックスPCRに用いるプライマーは、2組のセットに分けた。すなわち、プライマーセット1はコアグラーゼIII、IV、VII、VIII型検出用のプライマー、プライマーセット2はI、II、V、VI型検出用のプライマーからなり、各プライマーがPCR反応液中で5μMとなるように調製した。それぞれのコアグラーゼ型検出用プライマーの組合せと、推定される増幅産物塩基数は、以下の表2に示した。
また、ここではPCR反応が正しく行われたことを確認するための陽性対照マーカーを導入した。すなわち、黄色ブドウ球菌のfemA遺伝子を検出するプライマー(Forward primer: aaaaaagcac ataacaagcg, Reverse Primer: gataaagaag aaaccagcag, 増幅産物132bp、: Mehrotra M. et al, J. Clin. Microbiol. 38, 1032-1035, 2000)を0.05μMとなるように各反応液に加えた。その他のPCRに用いた試薬およびPCR反応条件は、実施例1と同様に行なった。
(3)検出
実施例1と同様の手法で行なった。
(4)結果
マルチプレックスPCR産物を3%アガロースゲル電気泳動に供した結果を図1に示した。プライマーセット1を用いたPCRでは、コアグラーゼIII、IV、VII、VIII型標準菌株のDNAを含む反応液からのみ、推定される塩基数と同じ大きさのヌクレオチド断片が検出された。一方、プライマーセット2を用いたPCRでは、コアグラーゼI、II、V、VI型標準株のDNAを含む反応液からのみ、推定される塩基数と同じ大きさのヌクレオチド断片が検出された。各プライマーの標的とは異なるコアグラーゼ型のDNAとは全く反応しなかった。一方、陽性対照マーカーであるfemA遺伝子は、陰性対照(試料なし)を除くすべての検体において検出され、PCRが正しく行われたことが確認された。すなわち、本マルチプレックスPCRは、標的遺伝子を特異的に増幅し、1試料につき2回のPCR反応で正確にコアグラーゼ型を判断することが可能となった。
(抗血清法とマルチプレックスPCR法の比較)
(1)検体
食中毒由来黄色ブドウ球菌40株、臨床由来黄色ブドウ球菌36株、生乳由来黄色ブドウ球菌50株の計126株を用いた。各菌株は、実施例1と同様の方法でDNAを調製した。
(2)PCR
実施例2と同様の方法で、マルチプレックスPCRを実施した。
(3)検出
実施例1と同様の方法で実施した。
(4)抗血清を用いたコアグラーゼ型別
供試菌の培養液を3000rpm、30分間遠心分離して上清を採取し、試験用抗原液とした。市販されている抗血清を用いたコアグラーゼ型別キット(ブドウ球菌コアグラーゼ型別用免疫血清「生研」、デンカ生研社)を用い、添付の使用説明書に従い試験を実施した。
(5)結果
検体として用いた黄色ブドウ球菌126株について、抗血清を用いて判定したコアグラーゼ型とマルチプレックスPCRにより判定したコアグラーゼ型との関係を、表3に示した。両方法で判定したコアグラーゼ型が一致したのは125株であり、一致率は99.2%であった。
以下のパーツからなるコアグラーゼ型別用試薬キットを作成した。
(1)コアグラーゼ型プライマーセット
それぞれのコアグラーゼ型について少なくとも2種のオリゴヌクレオチドからなる表2に示したプライマーセット(各10μM)。
(2)耐熱性DNAポリメラーゼ
Ex Taq Polymerase (5U/μL,タカラバイオ社)
(3)dNTP
dNTP Mixture溶液(各2.5mM, タカラバイオ社)
(4)緩衝液
10× Ex Taq Buffer(タカラバイオ社)
マルチプレックスPCR産物を3%アガロースゲル電気泳動に供した結果を示す。(実施例2)

Claims (10)

  1. 黄色ブドウ球菌のコアグラーゼI型遺伝子を特異的に検出することを特徴とするオリゴヌクレオチドであって、配列表配列番号1〜4で表される塩基配列の少なくとも連続した10塩基以上を含むオリゴヌクレオチドまたはその相補配列からなるオリゴヌクレオチド。
  2. 黄色ブドウ球菌のコアグラーゼII型遺伝子を特異的に検出することを特徴とするオリゴヌクレオチドであって、配列表配列番号5〜9で表される塩基配列の少なくとも連続した10塩基以上を含むオリゴヌクレオチドまたはその相補配列からなるオリゴヌクレオチド。
  3. 黄色ブドウ球菌のコアグラーゼIII型遺伝子を特異的に検出することを特徴とするオリゴヌクレオチドであって、配列表配列番号10〜11で表される塩基配列の少なくとも連続した10塩基以上を含むオリゴヌクレオチドまたはその相補配列からなるオリゴヌクレオチド。
  4. 黄色ブドウ球菌のコアグラーゼIV型遺伝子を特異的に検出することを特徴とするオリゴヌクレオチドであって、配列表配列番号12〜20で表される塩基配列の少なくとも連続した10塩基以上を含むオリゴヌクレオチドまたはその相補配列からなるオリゴヌクレオチド。
  5. 黄色ブドウ球菌のコアグラーゼV型遺伝子を特異的に検出することを特徴とするオリゴヌクレオチドであって、配列表配列番号21〜24で表される塩基配列の少なくとも連続した10塩基以上を含むオリゴヌクレオチドまたはその相補配列からなるオリゴヌクレオチド。
  6. 黄色ブドウ球菌のコアグラーゼVI型遺伝子を特異的に検出することを特徴とするオリゴヌクレオチドであって、配列表配列番号25〜30で表される塩基配列の少なくとも連続した10塩基以上を含むオリゴヌクレオチドまたはその相補配列からなるオリゴヌクレオチド。
  7. 黄色ブドウ球菌のコアグラーゼVII型遺伝子を特異的に検出することを特徴とするオリゴヌクレオチドであって、配列表配列番号31〜33で表される塩基配列の少なくとも連続した10塩基以上を含むオリゴヌクレオチドまたはその相補配列からなるオリゴヌクレオチド。
  8. 黄色ブドウ球菌のコアグラーゼVIII型遺伝子を特異的に検出することを特徴とするオリゴヌクレオチドであって、配列表配列番号34〜35で表される塩基配列の少なくとも連続した10塩基以上を含むオリゴヌクレオチドまたはその相補配列からなるオリゴヌクレオチド。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の各コアグラーゼ型遺伝子を特異的に検出することを特徴とするオリゴヌクレオチドのうち、それぞれのコアグラーゼ型について少なくとも2種のオリゴヌクレオチドをプライマーとして、試料中のDNAにおける標的コアグラーゼ遺伝子の一部を特異的に増幅させることを特徴とするコアグラーゼ型別法。
  10. 請求項1から8のいずれかに記載の各コアグラーゼ型遺伝子を特異的に検出することを特徴とするオリゴヌクレオチドのうち、それぞれのコアグラーゼ型について少なくとも2種のオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、耐熱性DNAポリメラーゼ、dNTPおよび緩衝液を含むことを特徴とするコアグラーゼ型別用試薬キット。
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