JP2008061361A - 電流バランサおよび低圧配電システム - Google Patents

電流バランサおよび低圧配電システム Download PDF

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Abstract

【課題】従来型のバランサトランスでは、ステップダウントランスの機能を含むものの各相の電圧調整が不十分であるにもかかわらず、機器は大型で重く、設置工事における取り扱いも難しい。電流バランス機能も不十分であった。
【解決手段】異なる相から流れるバランサ電流が1つの相においてそれぞれ逆方向の磁束を発生させるような2つのコイルを、重ね巻きして1つのコイル対を構成する。1つの相から流れるバランサ電流は、1つの相のコイル対のコイル、およびこのコイルに接続された異なる相の他のコイル対のコイルを流れ、それぞれの相において逆方向の磁束を発生させる。これらのコイル対は、コイル対の1つのグループを形成する。さらに複数のコイル対のグループの各々のコイルが、各相端から中性点端の間で直列に多段接続され、グループごとに分割された分割巻き方法を採用する。
【選択図】図1

Description

本発明は、電流バランサおよび配電システムに関し、より詳細には、三相電圧のアンバランスを平均化する電流バランサとこれを用いた三相4線式低圧配電システム関する。
従来、三相交流電力を4本の電線やケーブルを使用して供給する方法として、三相4線式低圧配電システムが用いられている。三相4線式低圧配電システムは、日本国内においてはさほど広く利用されていないものの、他の配電システムと比較した場合、電線・ケーブル数が少なくてすむこと、動力トランスと電灯トランスが共用できること等の利点があることから、発展途上国を含めた諸外国において幅広く利用されている。
この配電システムは上述の利点はあるものの、各相の負荷電流に不平衡が生じやすく、負荷点における各相電圧に大きなアンバランスが生じるという問題がある。各相の負荷は均一ではないために、負荷電流は各相で異なる。したがって、負荷電圧は各相で異なってくる。さらに、本来、中性点のN相には電流は流れないはずであるが、上述のアンバランスにより大きなN相電流が共同帰線を流れる。このN相電流とN相(共同帰線)の配線抵抗による電圧降下によって、ある相の負荷電圧は極端に低下する。一方で、他の相の負荷電圧は逆に上昇する。このように、需要家によって供給電圧に大きなバラツキが生じ、負荷点において電力品質が著しく劣化する結果となる。
負荷点における電圧の不平衡は、負荷点に接続される電気機器の動作や寿命にさまざまな悪影響を与える。例えば、三相誘導電動機においては、回転の銅損が発生し、誘導機の機械出力は減少し、さらに力率の低下、温度上昇の問題が発生する。全体として、電動機における使用電力が増大し無駄な電力を消費することとなる。また、トランスからの配電電圧においては、上述の負荷点における極端な電圧低下に対応するため、三相全体に高めの電圧を供給している例もある。
上述のように、三相電圧の不平衡のために、ある需要家においては公称電圧値よりも相当に高い電圧が供給されることがある。このような場合、この需要家の負荷(機器)における消費電力は増大し、電力を無駄に消費してしまうという問題もあった。従って、需要家においては消費電力の節減のために、負荷点において、高すぎる供給電圧を機器が正常に動作しつつできる限り消費電力を抑えるような適切な電圧値に下げる調整を行ないたいという別の要請があった。
さらに、三相の各負荷が平衡している場合であっても、何らかの原因で中性線が切断されて中性線に電流が流れなくなることがある。このような場合、外側線と中性線との間にあるそれぞれの負荷の端子電圧には、大きな不平衡を生じ、ときには機器に致命的な損害を与える。このような理由から、中性線には配線用遮断器や、ヒューズ等を入れることができないという制限があり、三相の負荷の不平衡による電圧アンバランスの発生を抑制することが求められていた。
本発明の出願人は、上述の問題点を解決するために、特許文献1および特許文献2に記載されているようなステップダウントランス機能と一体化をしたバランサトランスの提案を行なった。電流バランサは、三相4線式低圧配電システムに限らず、多相交流電源における電圧不平衡を是正する手段として知られている。
図11は、三相4線式低圧配電システムにおける電流バランサを説明する図である。三相4線式電源の配電変圧器30は、U、V、Wの各相を持っており、それぞれ負荷32a、32b、32cが接続されている。負荷32a、32b、32cに不平衡があれば、配電変圧器30から各相の負荷へ流れ込む電流に差異が生じる。この時、配電変圧器30と各負荷までの配線抵抗により、電圧降下が生じ、各相の電圧には差異が生じる。この結果、共同帰線のN相には、本来各相がバランスしているときには流れない不平衡に起因する電流Iが流れる。
ここで、負荷の接続された線路の末端点に電流バランサ31を並列に接続する。電流バランサは、変圧比が1:1の単巻変圧器であり、アンバランスな各相の電流を平均化するように動作する。一般に、電流バランサ31を設置した後の各負荷に掛かる相電圧は、電流バランサ31設置前の状態の各相電圧の平均値に近づく。
図12は、特許文献1に開示されたバランサトランスの構成を示す図である。このバランサトランスは、直列コイル部20と分路コイル部23から成る分電変圧器の構成を持ち、電流バランサの機能と出力電圧調整を行なうステップダウントランスの機能とを合わせ持つものである。直列コイル部20は、巻き数が等しく巻き線方向が逆の第1の直列コイル21a、21b、21cと第2の直列コイル22a、22b、22cを備え、同様に、分路コイル部23においても、巻き数が等しく巻き線方向が逆の第1の分路コイル24a、24b、24cと第2の分路コイル25a、25b、25cを備えている。隣り合う相に順次コイルを巡回的に接続して三相各相に電流を流し、逆方向の電流により磁束をキャンセルすることによって、電流バランサとしての機能を改善している。
図13は、特許文献1のバランサトランスの接続構成を示す図である。直列コイル部20と分路コイル23との接続点を負荷が接続される出力部とすることで、ステップダウントランスとして機能させる。すなわち、出力電圧の調整機能を兼ね備えるものであった。ステップダウン機能により、上述した個々の需要家における節電のための電圧調整を行なうこともできる。
特開平11−32437号公報 実用新案登録3047691号公報
しかしながら、上述の特許文献1の構成のバランサトランスでは、次のような問題点があった。ステップダウントランスにおいては、直列コイル部においてタップ部の調整が必要と成る。ステップダウントランスでは直列コイル部の巻き数が少ないため、コイル巻き数辺りの電圧変化量が大きく、出力電圧を微調整できるタップの製作は困難である。従って、各相において電圧の細かな調整を行なうのは困難であった。また、ステップダウントランスの機能を取り込んでいるため、電流バランサ全体の構成は大規模なものとなり、機器全体が大きく重くなる。このため、設置場所に制約が生じるとともに、設置工事時の取り扱いが難しい等の問題があった。
また、電流バランサとステップダウントランスの機能を一体としていたため、各相に対する個別の電圧調整までを必要としない場合には、不要な機能を含むこととなる。需要家の希望する必要な機能を取捨選択ができないという点で、構成上の柔軟性に欠けていた。さらに、このバランサトランスは配電回路に直列に挿入される構成であるため、バランサトランスに故障が発生すると停電事故に至る場合がある。電力供給の安定性、保守性の点で問題があった。
発展途上国においては、三相4線方式配電網における配電ロスの削減および配電網における省エネルギーが課題になっている。特に、N相におけるアンバランス電流の低減による配電ロスの削減の実現が要請されている。負荷の不平衡に起因するN相電流および共同帰線の配線抵抗によって、配電された電力の一部は共同帰線中で熱として消費されてしまう。この配電ロスを低減させるために、さらに相電圧を均一化させて共同帰線を流れる電流を減らすことができるよう、電流バランサのさらなる性能向上の要請があった。図13に示した従来構成のバランサトランスでは、入力側から流れ込む電流、負荷が接続される出力側に流れ出す電流、並びに入力側へ向かって共同帰線を流れる電流がベクトル的に複雑となるため、電流バランサのバランス効果を妨げる問題がある。
発展途上国においては、先にも述べたように、機器の小型化、単純化、設置の容易さ、必要に応じた機能の取捨選択性が要求され、導入コストの低減させることもあわせて望まれている。電流バランサのバランス機能を改善し、配電システム全体を簡略化する要請があった。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、従来よりもさらに電流バランス性能を向上させた電流バランサを提供することにより、配電ロスを低減させて給電システムの質を向上させるとともに、電流バランサをより小型で取り扱いやすいものとすることにある。さらに、給電システムに必要とされる電流バランサ機能をより柔軟に選択することを可能とする。また、電流バランス性能の向上により電圧調整部を不要とし、既存設備である配電変圧器を利用して電圧調整を可能とすることで、全体の給電システムを簡略化し、コストを低減させることが可能となる。
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、中性点との間で3つの相電圧を供給する配電システムにおいて、各相電圧に接続される第1の相端、第2の相端および第3の相端ならびに前記中性点に接続される中性点端を有し、前記第1の相端、第2の相端および第3の相端と前記中性点端との間をそれぞれバランサ電流が流れることによって前記各相電圧の不平衡を低減する電流バランサであって、第1の相のバランサ電流が流れるコイルおよび第2の相のバランサ電流が流れるコイルは、前記各々のバランサ電流が第1の相の鉄心において互いに逆方向の磁束を発生させるように前記第1の相の鉄心に密着して重ね巻きされて、第1の相のコイル対を構成し、前記第1の相のバランサ電流が流れるコイルの一端は、第3の相の鉄心に密着して重ね巻きされた第3の相のコイル対の1つのコイルの一端へ接続され、前記第1の相のバランサ電流は前記第1の相および前記第3の相を経由して流れるとともに、前記第1の相の鉄心および前記第3の相の鉄心においてそれぞれ逆方向の磁束を発生させ、前記第2の相のバランサ電流が流れるコイルの一端は、第2の相の鉄心に密着して重ね巻きされた第2の相のコイル対の1つのコイルの一端へ接続され、前記第2の相のバランサ電流は前記第1の相および前記第2の相を経由して流れるとともに、前記第1の相の鉄心および前記第2の相の鉄心においてそれぞれ逆方向の磁束を発生させ、前記第1の相のコイル対、前記第2の相のコイル対および前記第3の相のコイル対は、第1のコイル対グループを形成するとともに、各前記コイル対を構成する各々のコイルは巻き数が等しく、各相間で巡回的に対称に接続されており、前記第1のコイル対グループにおける前記第2の相のコイル対の前記1つのコイルの他端は、次のコイル対グループを形成する第1の相のコイル対の1つのコイルにさらに接続され、前記第1の相端および前記中性点端間において、分割された複数のコイル対グループに渡って、前記第1の相のバランサ電流が前記第1の相および前記第2の相間を交互に経由しながら流れるように各コイルが直列接続され、前記複数のコイル対グループを構成する各コイル対は各相間で巡回的に対称に接続されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、R相、S相およびT相からの出力電力を利用した三相4線式低圧配電システムであって、各相の負荷に並列に、前記R相、S相およびT相および中性線間に、請求項1に記載の電流バランサを配置したことを特徴とする三相4線式低圧配電システムである。
以上説明したように、本発明によれば、従来よりもさらに電流バランスを向上させた電流バランサを提供することが可能となり、配電ロスを低減させて給電システムの質を向上させる。電流バランサをより小型で取り扱いやすいものとすることができる。さらに、給電システムに必要とされる電流バランサ機能をより柔軟に選択することを可能とする。また、電流バランス性能の向上により相ごとの電圧調整部を不要とすることができる。既存設備である配電変圧器を利用して電圧調整を可能とすることで、全体の給電システムを簡略化して、コストを低減させる効果がある。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。本願発明の電流バランサは、異なる相から流れるバランサ電流がある1つの相においてそれぞれ逆方向の磁束を発生させるよう2つのコイルを重ね巻きして1つのコイル対を構成する。1つの相から流れるバランサ電流は、1つの相のコイル対のコイル、およびこのコイルに接続された異なる相のコイル対のコイルを流れ、それぞれの相において逆方向の磁束を発生させる。これらのコイル対は、1つのコイル対のグループを形成する。さらにこのコイル対のグループの各々のコイルは、各相端から中性点端の間で直列に多段接続され、コイル対のグループごとに分割された分割巻き方法を採用している。
図1は、本発明の電流バランサにおける各コイルの接続を示す図である。後述する、電流バランサのより物理的なイメージを示す構成図である図2と対応している。両図を対照しながら参照することで、本発明の電流バランサの構成の理解がより容易となる。図1の本発明の電流バランサは、三相4線式低圧配電システムに最も適合したものである。各コイルは電流バランサの各脚(鉄心)に対応するU相14、V相15、W相16のいずれかに属する。三相4線式低圧配電システムの各相電圧に接続される接続端であるU相端17、V相端18およびW相端19は、直列接続された複数の各コイルを経て、それぞれ中性線端N20に接続されている。中性点端20は、三相4線式低圧配電システムの中性線に接続される。U相端17、V相端18およびW相端19と中性点端20との間を、それぞれ各相のバランサ電流が流れる。
次に、各コイル対の接続関係について、詳細に説明する。コイル対の各コイルに流れる電流は、説明の便宜上、中性線端N20からU相端17、V相端18およびW相端19へ流れる方向を基準としている。ここで、U相14に配置されるコイル1a、コイル1bを起点として説明する。
第1のグループ101のコイル1aおよびコイル1bは、コイル対となってU相14の鉄心に重ね巻きされている。コイル1cとコイル1d並びにコイル1eとコイル1fも、それぞれV相15およびW相16の鉄心に、コイル対として重ね巻きされている。同様に、コイル2aとコイル2b、コイル2cとコイル2d、コイル2eとコイル2f、コイル3aとコイル3b、コイル3cとコイル3d、並びにコイル3eとコイル3fも、それぞれ重ね巻きされている。各コイル対は、第1のグループ101、第2のグループ102、および第3のグループ103に分けられる。
コイル1aの一端1は中性点端N20に接続され、他端2は、W相16においてコイル対を構成するコイル1e、コイル1fのうちのコイル1fの一端4に接続される。コイル1fの他端3は、第2のグループ102のU相14にあるコイル2aの一端5に接続される。ここで、中性点端N20からコイル1aを流れるバランサ電流は、U相14のコイル1aからW相16のコイル1fを経て、再びU相14へ戻ってコイル2aを流れることに注目されたい。また、相異なる2つのU相14およびW相16において、電流バランサの脚方向に対してお互いに逆方向の磁束を発生させるようバランサ電流がコイル1aおよびコイル1fに流れるように、コイル対の各々の端子が接続されていることに注目されたい。
同様の接続方法が、第2のグループ102のコイル2a、コイル2fおよび第3のグループ103のコイル3a、コイル3fにおいて、繰り返される。したがって、中性点端N20からW相端19までは、U相、W相、U相、W相、U相、W相の順に、2つの異なる相間を交互にバランサ電流が流れることになる。第1のグループ101のU相14のコイル1aは、最終的に第3のグループ103のW相16のコイル3fの一端11を経てW相端19に接続される。
U相14において、コイル1aと重ね巻きされているコイル1bの一端4は、一端1が中性点端N20に接続されたV相15のコイル1cの他端2に接続されている。そして、コイル1bの他端3は、第2のグループ102のV相15にあるコイル2cの一端5に接続される。ここで、中性点端20からコイル1cを流れるバランサ電流は、V相15のコイル1cからU相14のコイル1bを経て、再びV相15へ戻ってコイル2cを流れることに注目されたい。また、相異なる2つのV相15およびU相14において、電流バランサの脚方向に対してお互いに逆方向の磁束を発生させるようバランサ電流がコイル1cおよびコイル1bに流れるように、コイル対の各々の端子が接続されていることに注目されたい。
同様の接続方法が、第2のグループ102のコイル2b、コイル2cおよび第3のグループ103のコイル3b、コイル3cにおいて繰り返される。したがって、中性点端20からU相端17までは、今度はV相、U相、V相、U相、V相、U相の順に、2つの異なる相間を交互にバランサ電流が流れることになる。第1のグループのV相15のコイル1cは、最終的に第3のグループのU相14のコイル3bの一端11を経てU相端17に接続される。
上の説明では、第1のグループ101のU相14に配置されたコイル1a、コイル1bから成るコイル対を起点として説明をした。コイル1c、コイル1dから成るコイル対およびコイル1e、コイル1fから成るコイル対を起点としても、同様にU相、V相、W相の3つの相間で、巡回的に対称な関係が成り立つ。すなわち、1つのコイル対のグループ内において、ある相の1つのコイル対を構成する1つのコイルと、他の相のコイル対を構成する1つのコイルとが、それぞれの相において逆方向の磁束を生じさせるバランサ電流が流れるように接続されている。そして、この2つの相の間の接続は、次のグループ以降のコイル対の各コイル対して、繰り返される。U相端17、V相端18、W相端19のそれぞれと中性点端N20との間で、2つの相間に渡って交互にコイルが直列接続される構成となっている。U相、V相、W相の各相に対して、巡回的に対称な接続となっている。
以上の説明から容易に理解できるように、重ね巻きされたコイル対の各コイルについても、同じ鉄心内でお互いに逆方向の磁束を発生するようにそれぞれバランサ電流が流れるような接続関係となっていることがわかる。コイル1a、コイル1bから成るコイル対では、U相14の鉄心内において、お互いに逆方向の磁束が発生するようにコイル1a、コイル1bそれぞれにバランサ電流が流れる。コイル1c、1dおよびコイル1e、1fについても同様である。
図2は、本発明の電流バランサの各コイルの物理的な接続形態をより具体的に表現した接続図である。図1の各コイルと対応しており、例えば、コイル1aおよびコイル1bが重ね巻きされて、1つのコイル対を形成している。図2において、U相14、V相15、W相16は、それぞれ各コイル対が巻きつけられる各相の鉄心脚に対応している。鉄心の形状は、各相の磁束の帰路を共有している三相変圧器を構成する三脚形磁心であれば、後述する磁束のバランス効果を生じうるものである限り、どのようなものでもかまわない。
また、図2においては、各コイル対のグループ101、102、103の各コイル対は、1つの相の鉄心の軸上に沿って並べて配置されるように記載してあるが、このような構成に限定されるものではない。すなわち、各相の鉄心の周りに、まず第1のグループのコイル対を巻きつけて、その上にさらに第2のグループ102のコイル対、第3のグループ103のコイル対の順に、同心上に順次積層して形成する構造であっても良い。
図3は、本発明の電流バランサの構成を示すコイル結線図である。各コイルの端子番号は、図1および図2の端子番号と共通である。U相、V相、W相の各相に対して、巡回的に対称に各コイルが接続されている構成であることがわかる。
図4は、本発明の電流バランサの各コイル対における磁束を説明する図である。図4では、第1のグループのU相のコイル対のコイル1a、1bを模式的に示したものである。図4では説明のために2つのコイルを離して記載してあるが、本発明のコイル対は重ね巻きされるので、図4のような位置関係に配置されるわけではない。図1において説明したように、1つのコイル対においては、それぞれのコイル1a、コイル1bは逆方向に電流I、Iが流れるように重ね巻きされている。したがって、それぞれのコイル内に発生する磁束Φ、Φは互いに逆方向となる。
図5は、コイルの重ね巻きにより1つの脚内で磁束がキャンセルされることを説明する図である。本発明の電流バランサにおけるコイル対は、図5のように2本のコイル線を平行に密着させて重ねて巻かれている。重ね巻きされたコイルの各々により発生する磁束Φ、Φは、1つの脚の中で相殺され無誘導回路を構成する。このため内部リアクタンス分は消去される。図5において、2つのコイル1a、1bに強い分流作用が働き、コイル1aに流れる電流とコイル1bに流れる電流を強制的に1/2ずつ分流し電流は平衡に保たれる。
上述のように、本願発明の電流バランサは、重ね巻きをしたコイル対を使用している点に1つの特徴がある。次に、本発明の電流バランサのもう1つの特徴である分割巻き方法について説明する。上述の重ね巻き法によりコイル対を形成すると、各コイル対の各々の巻き線は平行に密着して巻かれる。このため、コイル対の2つのコイル間の絶縁耐圧が低下する恐れがある。
図6各図は、本発明における分割巻き方法による効果を説明する図である。図6(a)は、理解をしやすくするために、図1におけるU相端と中性点端Nとの間に接続されるコイルだけを記載した図である。図6(a)から、図1において説明したようにU相とV相との間で、各コイルが交互に接続されていることがわかる。この接続方法により、U相端と中性点端Nとを流れる電流は、2つの相に等分して流れる。各相にまたがって交互に電流が流れることにより、電流は平衡化するように作用する。
図6(b)は、図6(a)の各コイルに印加される電圧分布を説明する図である。U相端と中性点端Nとの間には、U相の全相電圧Eが印加される。ここで、各グループのコイル1bとコイル1c、コイル2bとコイル2c、コイル3bとコイル3cが、同じ巻き数であれば、相電圧Eは、各々のコイルに等分され、それぞれのコイルにE/6の電圧が印加されることになる。従って、密着して重ね巻きされるコイル対において考慮すべき耐圧は、最大でもE/6となる。本発明の電流バランサのコイルは、各相端と中性点端との間で複数のグループのコイル対に分割されている。コイル対は、グループごとに絶縁材料などにより十分な絶縁が可能である。さらに1つのコイル対のグループ内では、2つの異なる相のコイル対の間を経由して接続される。コイルが直列に多段接続された構成の電流経路をバランサ電流が流れることにより、相印加電圧を分圧し、重ね巻きコイル対部分における絶縁耐圧の低下を防止することができる。
なお、図1および図2に示した本発明の実施例では、コイル対は第1のグループから第3のグループまでの3つのグループに分かれており、3分割した構成となっている。しかし、これに限定されることはなく、2分割または4分割した構成であっても良い。
図7aは、本発明の電流バランサおよび従来技術による電流バランサによる不平衡の是正効果を比較したデータを示す図である。R相、S相、T相の各相に可変試験負荷を接続して不平衡状態の負荷を形成し、電流バランサのない場合(No1,4)、従来型の電流バランサがある場合(No2,5)、および本発明の構成の電流バランサがある場合(No3,6)を比較した。従来型の電流バランサについては、図12の構成におけるステップダウン機能は除いて電流バランサ機能部分のみについて比較評価をしたものである。
図7bは、上述の比較データを取得した測定系の構成を示す図である。電源側の相間電圧、相電流は模擬配線抵抗71a、71b、71c、71dの配電変圧器70側において測定した。可変試験負荷75a、75b、75cにより不平衡状態の負荷を形成する。可変試験負荷75a、75b、75cには、配線用遮断機(MCCB)を介して、並列に被試験電流バランサ72が接続される。
図7aの比較データより、共同帰線を経由して電源側に流れるN相電流は、本発明の電流バランサを設置することで、電流バランサがない場合の16.7A(No1)から0.6A(No2)へと劇的に低減されていることがわかる。また、負荷側の相間電圧のばらつき幅は、電流バランサがない場合の54V(No1)から17V(No3)へと、1/3に大幅に減少している。出力電圧の10%以内程度のばらつき幅に抑えられていることがわかる。本発明の電流バランサを設置すると、相間電圧のなかで極端に低い電圧がなくなり、相間電圧を全体に増加させる効果があることがわかる。従来型の電流バランサを設置した場合(No2,5)と比較しても、電源側の共同帰線に流れるN相電流の低減と負荷側における相間電圧の不平衡の是正において大きな改善があることがわかる。
図7aにおけるデータ比較においては、従来型のバランサトランスは、電流バランサ機能部分のみを本発明の電流バランサと比較している。したがって、上述の効果は本発明特有の重ね巻きされたコイル対、コイル対のグループ内で相間をまたがった接続、並びに複数のコイル対グループによる分割巻き方法による効果ということができる。
上述したように、本発明の電流バランサを負荷側に設置することで、負荷点における各相電圧の不平衡を是正し、共同帰線を経由して電源側へ流れるN相電流を大幅に低減させる効果がある。これにより、配電変圧器から負荷までの共同帰線の配線抵抗によって発生する電力損失を大幅に低減させることができる。発展途上国等においては三相4線式による配電区間が長いため、本発明の電流バランサによりN相電流を低減させることで、N相の配線抵抗により発生する配電ロスを低減させる効果が大きい。
図8は、本発明の電流バランサを利用した三相4線式低圧配電システムの実施例を示す図である。配電変圧器50から供給される各相電圧は各相配線および中性線により分電盤51に接続される。分電盤51までの配線は、配線抵抗r、r、r、rを持っている。分電盤51からの出力は、電圧調整器53に接続される。電圧調整器53は各相に電圧調整用のタップを持っており、各相の出力タップは負荷55a、55b、55cの一端へ接続される。電圧調整器53の中性線端および各負荷55a、55b、55cの他端は、分電盤51の中性線端へ接続される。
本発明の電流バランサ52は、分電盤51の出力側近傍において、各相に並列に接続される。負荷55a、55b、55cの不平衡により生じた不平衡電流は、電流バランサ52内で吸収され、B点においては共同帰線の電流Iを著しく減らすことができる。したがって、配電変圧器50から分電盤51までの配線が長い場合であっても、共同帰線の配線抵抗による配電ロスを大幅に減らすことができる。
電圧調整器53は、一般に、負荷となる機器の安定動作を確保しながらできるだけ機器における消費電力を低減させて節電効果を得られるように、相電圧を調整するため使用される。しかし、本発明の電流バランサを使用することで、電圧調整器53を省略することも可能となる。本発明の電流バランサにより負荷点の相電圧は均一化されるため、個々の相ごとに電圧調整を行なう必要性が少なくなる。このような場合、配電変圧器50や分電盤51において、三相の電圧を一括して調整することにより、所望の節電効果を満足する電圧に調整をすることができる。
表1は、一般的な配電変圧器のタップ構成の一例を示す。配電変圧器においては、二次側電流が大きいため、一次側配線にタップが設けられており、最大で+5%から−5%まで電圧調整が可能である。10%程度の電圧を一括調整することができる。したがって、従来型のバランサトランスのステップダウン機能を含まなくても、各相間の電圧バラツキを本発明の電流バランサで抑えることによって、従来からの既存設備である配電変圧器を使用した電圧調整も可能となる。
Figure 2008061361
従来型のバランサトランスと本発明の電流バランサの機器容量の比較計算例を表2に示す。表2は、従来型のバランサトランスに関する各相容量の計算例である。従来型のバランサトランスでは、配電システム経路に直列に挿入されるので、全体の機器容量は各相の容量の合計となり168.3KVAが必要である。
Figure 2008061361
一方、本発明の電流バランサでは、表2の負荷条件でN相電流が69Aであったため、電流バランサの各相に1/3ずつ均等にバランサ電流が流れるとすると、1相辺りの容量は、220V×69/3=5.06KVAとなる。三相を合計した電流バランサ全体の容量は、15.2KVAとなる。表2の従来型のバランサトランスの場合と比較した場合、本発明の電流バランサは1/10以下の機器容量で済むことになる。各相の負荷に並列に挿入する本発明の電流バランサでは、機器の容量が小さくて済むため、機器全体の大きさおよび重量とも大幅に減らすことができる。さらに、並列に接続することより、電流バランサ本体に故障が生じた場合でも、電流バランサに備える保護回路等によって電力回路から切断して、停電などの重大な問題を回避できる。電流バランサの修理や交換などが容易であり、機器の保守性も良くなる。
以上述べたように、従来技術のバランサトランスと比較してさらに電流平均化の性能を向上させることにより、三相4線式低圧配電システムから電圧調整器53を省略可能とすることで、配電システム全体のコストを低減させることができる。また、電圧調整器53を省略することで、他の電気設備の設置場所に自由度が増し、設置・工事の簡便さを向上させることができる。尚、進相コンデンサ54は負荷の力率調整のために、必要に応じて使用される。
図9は、本発明の電流バランサを利用した三相4線式低圧配電システムの他の実施例を示す図である。配電変圧器60からの配電距離が長く、負荷が分散して配置される場合の応用例である。配電変圧器60から配線抵抗61a、61b、61c、61dをそれぞれ持つR線、S線、T線、N線を経て、負荷65aが接続されている。さらに、負荷65aから配線抵抗63a、63b、63c、63dを持つR線、S線、T線、N線が延長され、第2の負荷65bに接続されている。本発明の電流バランサ62a、62bは、負荷65aの近傍および第2の負荷65bの近傍に、それぞれ並列に接続される。配線抵抗の大きい長い配線区間ごとに、本発明の電流バランサを複数配置することによって、各配電区間における共同帰線を流れる電流を減らし、配電ロスを減らすことができる。発展途上国における配電網では、4線による配電部分の延長距離が長く、配電ロスの低減による電源の質の向上の効果は大きい。
図10は、本発明の電流バランサをさらに安定化する構成を示す図である。本発明の電流バランサに、さらに安定コイルを併置することできる。図10の構成は、図1の電流バランサにΔ接続されたコイル4a、4b、4cを追加したものである。Δ接続されたわずかのコイルを追加することで、電流バランサの性能を安定化させる。Δ巻き線コイルは、閉回路を構成し、電流バランサの励磁電源および負荷のいずれとも接続されない。中性点電位を安定させ、零層インピーダンスを低減させる。N相電流の吸収効果を高める効果がある。
以上詳細に説明したように、本発明によれば、従来よりもさらに電流バランスを向上させた電流バランサを提供することが可能となり、配電ロスを低減させて給電システムの質を向上させる。電流バランサをより小型で取り扱いやすいものとすることができる。また、電流バランス性能の向上により、既存の配電変圧器を利用して電圧調整を可能とすることで、電圧調整部を不要とすることができる。給電システム全体を簡略化して、コストを低減させる効果がある。給電システムに必要とされる電流バランサ機能だけを、柔軟に選択することを可能とする。
本発明の電流バランサは、電力配電システム、特に三相4線式低圧配電システムなどに利用可能である。
本発明の電流バランサのコイル接続を示す図である。 本発明の電流バランサのより物理的な構成を示す図である。 本発明の電流バランサの別の表現によるコイル結線図である。 コイル対における磁束を説明する図である。 重ね巻きしたコイル対における磁束を説明する図である。 (a)は本発明の電流バランサのU相端と中性点端間のコイル接続図、(b)はU相端と中性点端との間での各コイルに印加される電圧分布を説明する図である。 (a)は本発明の電流バランサによる相電圧不平衡の是正効果を示す図、(b)は電流バランサの効果比較データを取得した測定系を示す図である。 本発明の電流バランサを含む三相4線式低圧配電システムを示す図である。 本発明の電流バランサを含む他の三相4線式低圧配電システムを示す図である。 本発明の電流バランサの他の変形応用例を示す図である。 電流バランサの動作原理を説明する図である。 従来技術のバランサトランスの構成を示す図である。 従来技術のバランサトランスの構成を示す図である。
符号の説明
1a、1b、1c、1d、1e、1f、2a、2b、2c、2d、2e、2f、3a、3b、3c、3d、3e、3f、4a、4b、4c コイル
14 U相
15 V相
16 W相
17 U相端
18 V相端
19 W相端
20 中性点端
21a、21b、21c、22a、22b、22c 直列コイル
24a、24b、24c、25a、25b、25c 分流コイル
31、52、62a、62b、72 電流バランサ
32a、32b、32c、55a、55b、55c、65a、65b、65c 負荷
50、60、70 配電変圧器
51 分電盤
53 電圧調整器
54 進相コンデンサ
61a、61b、61c、61d、63a、63b、63c、63d、71a、71b、71c、71d 配線抵抗

Claims (2)

  1. 中性点との間で3つの相電圧を供給する配電システムにおいて、各相電圧に接続される第1の相端、第2の相端および第3の相端ならびに前記中性点に接続される中性点端を有し、前記第1の相端、第2の相端および第3の相端と前記中性点端との間をそれぞれバランサ電流が流れることによって前記各相電圧の不平衡を低減する電流バランサであって、
    第1の相のバランサ電流が流れるコイルおよび第2の相のバランサ電流が流れるコイルは、前記各々のバランサ電流が第1の相の鉄心において互いに逆方向の磁束を発生させるように前記第1の相の鉄心に密着して重ね巻きされて、第1の相のコイル対を構成し、
    前記第1の相のバランサ電流が流れるコイルの一端は、第3の相の鉄心に密着して重ね巻きされた第3の相のコイル対の1つのコイルの一端へ接続され、前記第1の相のバランサ電流は前記第1の相および前記第3の相を経由して流れるとともに、前記第1の相の鉄心および前記第3の相の鉄心においてそれぞれ逆方向の磁束を発生させ、前記第2の相のバランサ電流が流れるコイルの一端は、第2の相の鉄心に密着して重ね巻きされた第2の相のコイル対の1つのコイルの一端へ接続され、前記第2の相のバランサ電流は前記第1の相および前記第2の相を経由して流れるとともに、前記第1の相の鉄心および前記第2の相の鉄心においてそれぞれ逆方向の磁束を発生させ、前記第1の相のコイル対、前記第2の相のコイル対および前記第3の相のコイル対は、第1のコイル対グループを形成するとともに、各前記コイル対を構成する各々のコイルは巻き数が等しく、各相間で巡回的に対称に接続されており、
    前記第1のコイル対グループにおける前記第2の相のコイル対の前記1つのコイルの他端は、次のコイル対グループを形成する第1の相のコイル対の1つのコイルにさらに接続され、前記第1の相端および前記中性点端間において、分割された複数のコイル対グループに渡って、前記第1の相のバランサ電流が前記第1の相および前記第2の相間を交互に経由しながら流れるように各コイルが直列接続され、前記複数のコイル対グループを構成する各コイル対は各相間で巡回的に対称に接続されていること、
    を特徴とする電流バランサ。
  2. R相、S相およびT相からの出力電力を利用した三相4線式低圧配電システムであって、各相の負荷に並列に、前記R相、S相およびT相および中性線間に、請求項1に記載の電流バランサを配置したことを特徴とする三相4線式低圧配電システム。
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