JP2008060433A - レーザアレイ - Google Patents

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Abstract

【課題】隣接レーザ光同士の干渉を抑えることができ、それにより、被照射物の表面におけるレーザ光の強度のむらを抑えることができるレーザアレイを提供する。
【解決手段】最隣接のレーザ素子間(レーザ素子211と212の間)において、発振されるレーザ光の偏光の方向が互いに異なるようにする。又は、最隣接のレーザ素子間(レーザ素子221と222の間)において、発振されるレーザ光の波長が異なるようにする。このように偏光又は波長が異なるレーザ光同士は干渉しないため、被照射物の表面においてレーザ光の強度のむらが生じることを抑えることができる。また、偏光の方向をレーザ素子の配列方向に対して45°傾けることにより、シェーディングを抑制することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、レーザ光走査装置等に用いられるレーザアレイに関する。
近年、レーザプリンタや複写機等において、印刷速度を向上させるために、複数のレーザビームを用いて複数のドットを同時に書き込むマルチビーム方式のレーザ光走査装置が用いられている。
図1を用いて、マルチビーム方式のレーザ光走査装置10の構成の概略を説明する。レーザ光走査装置10は、レーザアレイ11、コリメータレンズ12、アパチャ13、シリンドリカルレンズ14、ポリゴンミラー15、f-θレンズ16を有する。レーザプリンタ等の装置において、レーザ光走査装置10により、レーザ光のスポットはドラム感光体17の表面で走査される。
レーザアレイ11の各発光点で発振された複数のレーザ光のビームは、コリメータレンズ12を通過することにより平行ビームになる。次に、これらのレーザビームはアパチャ13及びシリンドリカルレンズ14を通過する。アパチャ13は後述のドラム感光体17の面上におけるビームの形状を整形するためのものであり、シリンドリカルレンズ14はレーザ光の断面を、主走査方向に延びる線状に成形するためのものである。シリンドリカルレンズ14を通過したレーザ光は、回転するポリゴンミラー15の側面において反射され、f-θレンズ16を通過してドラム感光体17に照射される。f-θレンズ16は、ドラム感光体17の表面に照射されるレーザビームスポットの移動速度を等速にすると共に、ビームの焦点をドラム感光体17の面上に合わせる役割を有する。このような構成により、レーザビームスポットはドラム感光体17の表面で主走査方向に繰り返し走査される。
マルチビーム方式のレーザ光走査装置においては、各ビームが可干渉状態となり、その影響が感光体上で濃度ムラとなって現れてしまうという問題がある。
特許文献1及び2には、そのような干渉を防ぐための構成が記載されている。
特許文献1には、2個の発光点を有するマルチビームレーザ光走査装置において、アパチャの開口幅W、2個の発光点の間隔d、コリメータレンズの焦点距離f及びレーザ光の波長λという4つのパラメータが所定の関係を満たす時に干渉を防ぐことができる、と記載されている。しかし、特許文献1に記載の構成では、スリットの開口幅やコリメータレンズの焦点距離が制限されてしまう。
特許文献2には、2個の発光点を有するマルチビームレーザ光走査装置において、一方の発光点にシングル縦モードのレーザ光を発振するレーザを、他方の発光点にマルチ縦モードのレーザ光を発振するレーザを、それぞれ用いることにより干渉を防ぐことができることが記載されている。しかし、このマルチビームレーザ光走査装置は、マルチ縦モードのレーザ光を発振させるための高周波回路が必要になるため、コストが高くなるという欠点を有する。
また、マルチビーム方式を含むレーザ光走査装置において、レーザ光がポリゴンミラーにより反射される際、あるいはレンズ入射時に一部が反射される際に、レーザビームの入射角に依存して反射率の変動が生じる。それにより、被照射物の表面に入射するレーザ光の強度にむらが生じるおそれがある(シェーディング)。例えば、ポリゴンミラー表面の法線と光の進行方向を含む面内で電界が振動する直線偏光であるp偏光は、この表面への入射角が特定の値(ブリュースター角、約55°)で反射率が極小値を持つ強度変化を示す。また、p偏光に垂直な直線偏光であるs偏光は、入射角が増加するに従って反射率が増加する強度変化を示す。
特許文献3には、半導体レーザを1個のみ用いたレーザ光走査装置において、半導体レーザから発信されるレーザ光の偏光方向を走査方向に対して45°傾斜させた構成が記載されている。これにより、p偏光の成分とs偏光の成分が50%ずつ含まれる光がポリゴンミラーやレンズ等の表面に入射し、入射角がブリュースター角よりも小さい範囲内でこれら2種の偏光の強度が打ち消し合うため、反射角に対する強度変化を抑制することができる。特許文献4には、1/4波長板等を用いてレーザ光の直線偏光を円偏光に変換することにより、シェーディングを補正することができる、と記載されている。
特開2004-109588号公報([0022]〜[0033], 図3, 図7〜10) 特開2005-055538号公報([0055], [0056], 図3, 図9) 特開平05-019191号公報([0010]〜[0020], 図1〜図3) 特開平06-148547号公報([0005])
本発明の課題は、隣接レーザ光同士の干渉を抑えることができ、それにより、被照射物の表面におけるレーザ光の強度のむらを抑えることができるレーザアレイを提供することにある。併せて、シェーディングによるレーザ光の強度のむらも抑えることができるレーザアレイを提供する。
上記課題を解決するために成された本発明に係るレーザアレイの第1の態様のものは、複数のレーザ素子が配列されて成るレーザアレイにおいて、
各レーザ素子が、最隣接のレーザ素子から発振されるレーザ光とは偏光の方向が異なるレーザ光が発振されるように配置されていることを特徴とする。
本発明に係るレーザアレイの第2の態様のものは、複数のレーザ素子が配列されて成るレーザアレイにおいて、
各レーザ素子が最隣接のレーザ素子から発振されるレーザ光とは波長が異なるレーザ光が発振されるように配置されていることを特徴とする。
第1の態様及び第2の態様のレーザアレイにおいて、各レーザ素子の偏光の方向は、最隣接のレーザ素子が並ぶ方向に対して45°傾いていることが望ましい。
第1及び第2の態様のレーザアレイは、前記レーザ素子に、活性層と、該活性層の一方の側に設けた2次元フォトニック結晶と、を有する2次元フォトニック結晶面発光レーザ素子を用いることにより好適に実現される。
第1の態様においては、スラブ状の部材内に該部材とは屈折率の異なる非円形の領域が多数配列され、最隣接するレーザ素子同士で異屈折率領域の向きが異なるように形成された2次元フォトニック結晶を用いることができる。
第2の態様においては、スラブ状の部材内に該部材とは屈折率の異なる領域が多数配列され、最隣接するレーザ素子同士で異屈折率領域の配列周期が異なるように形成された2次元フォトニック結晶を用いることができる。
上述の2次元フォトニック結晶面発光レーザ素子を用いたレーザアレイにおいて、複数のレーザ素子は一体のものとして作製することができる。そのようなレーザアレイは、1個の活性層と、1個のスラブ状部材が複数の結晶領域に分けられ最隣接の結晶領域同士で異屈折率領域の配列が異なるように形成されて成る1個の2次元フォトニック結晶と、前記結晶領域毎に該活性層及び該2次元フォトニック結晶を挟むように配置された電極対と、を有する。
第1の態様のレーザアレイによれば、最隣接の2個のレーザ素子から発振されるレーザ光は互いに偏光方向が異なるため、それらのレーザ光同士が干渉することを抑えることができる。そのため、ドラム感光体等の被照射物に照射されるレーザ光の強度が設計値からずれることを防ぐことができ、その結果、画像のむらが生じることを防ぐことができる。
特に、各レーザ素子が、最隣接のレーザ素子から発振されるレーザ光とは偏光の方向が90°異なる直線偏光のレーザ光が発振されるように配置されると、このような干渉が生じないため望ましい。
第2の態様のレーザアレイにおいても同様に、最隣接の2個のレーザ素子から発振されるレーザ光は互いに波長が異なるため、発振光同士が干渉せず、第1の態様のものと同様の効果を奏する。
第1の態様及び第2の態様のレーザアレイにおいて、各レーザ素子の偏光の方向を最隣接のレーザ素子が並ぶ方向に対して45°傾けることにより、この配置方向を走査方向に平行又は垂直に配置した時に、p偏光の成分とs偏光の成分が50%ずつ含まれるレーザ光がポリゴンミラーやレンズ等の表面に入射させることができる。これにより、入射角の変化による反射率の変化を抑えることができ、それによりシェーディングを抑えることができる。
面発光レーザ素子が2次元フォトニック結晶を用いたものである場合、その2次元フォトニック結晶における異屈折率領域の向きを変化させることにより、偏光の方向を容易に制御することができる。そのため、2次元フォトニック結晶面発光レーザ素子を用いることにより、互いに最隣接であるレーザ素子から発振されるレーザ光同士を異なる偏光にすることが容易となり、第1の態様のレーザアレイを容易に形成することができる。
また、2次元フォトニック結晶面発光レーザ素子は、異屈折率領域の配列周期を変化させることにより、発光されるレーザ光の波長を制御することができる。そのため、2次元フォトニック結晶面発光レーザ素子を用いることにより、互いに最隣接であるレーザ素子から発振されるレーザ光同士を異なる波長とすることも容易となり、第2の態様のレーザアレイを容易に形成することができる。
更に、2次元フォトニック結晶面発光レーザ素子では、活性層やフォトニック結晶層等を一体で形成し、電極対のみを分離して形成することにより、複数のレーザ素子を含むレーザアレイを容易に一体形成することができる。この場合、多数の小さい単一素子を集合実装する工程が不要となり、レーザアレイのコストを削減することができると共に、レーザアレイを小型化することができる。
図2(a)に、第1の態様のレーザアレイの概念図を示す。図中の正方形の枠はレーザ素子を表す。このレーザアレイでは、隣接するレーザ素子211と212は、発振されるレーザ光の偏光方向が互いに90°異なっている。また、レーザ素子211と212はいずれも、それらが並ぶ方向に対して、レーザ光の偏光方向は45°傾いている。
図2(a)のレーザアレイにおいては、隣接するレーザ素子から発振される2つのレーザ光が干渉することがない。そのため、画像上で濃度ムラが現れることを防ぐことができる。
また、レーザ素子211と212の並ぶ方向に対してレーザ光の偏光方向を45°傾けることにより、いずれのレーザ素子からも、図3に示すように、ポリゴンミラーやレンズ等の表面31に、入射面32(表面31の法線と入射レーザ光の経路を含む面)に対して45°の角度に直線偏光(偏光の方向を図中に矢印33で示す)したレーザ光が入射する。これにより、入射レーザ光の入射面32への入射角の変化による反射率の変化、即ちシェーディングを抑制することができる。図4に、屈折率が1.5である材料から成るレンズの表面を例に、入射角と反射率の関係を計算で求めた結果を示す。この図には、直線偏光の偏光方向と入射面32の成す角度φが0°、45°及び90°である場合を示した。この図より、入射角が50°以下の範囲内において、角度φが45°の時に最も入射角の変化による反射率の変化が小さい、といえる。
図2(b)に、第2の態様のレーザアレイの概念図を示す。このレーザアレイでは、隣接するレーザ素子221と222に、それぞれ異なる波長のレーザ光が出射されるものを用いる。そのため、第1の態様のレーザアレイと同様に、一方のレーザ光の反射光と他方のレーザ光が干渉することや、2つのレーザ光が直接干渉することがない。
レーザプリンタや複写機等の印刷機器用のレーザ光走査装置に第1の態様又は第2の態様のレーザアレイを用いることにより、レーザアレイの各レーザ素子からのレーザ光の干渉による強度変化を抑えることができるため、画素毎の強度偏差を小さくして画質を向上させることができる。
図5に、第1の態様及び第2の態様の特徴を共に備えるレーザアレイの他の例を示す。この例では、最隣接のレーザ素子231、232同士で、発振波長及び偏光は共に異なる。そのため、最隣接のレーザ素子からのレーザ光が干渉することを一層抑制することができる。
上記の例のレーザアレイではレーザ素子を2個のみ示したが、本発明は例えば正方格子配列のような、周期的な2次元配列を有するレーザアレイにも適用することができる。そのような2次元配列を有するレーザアレイの例を、図6を用いて説明する。
図6(a)に示したレーザアレイの一例は、レーザ素子を縦に3個、横に3個、正方格子状に配列した3×3レーザアレイである。図中の符号41mn(4111、4123等)はレーザ素子を指し、mはレーザ素子が格子の上からm行目にあることを、nはレーザ素子が格子の左からn列目にあることを、それぞれ示す。また、図中の矢印は、各レーザ素子から発振されるレーザ光の直線偏光の方向を示す。
このレーザアレイでは、縦方向に隣り合うレーザ素子同士、及び横方向に隣り合うレーザ素子同士が最隣接のレーザ素子である。この例では、これら最隣接のレーザ素子同士で、発振されるレーザ光の偏光方向が互いに90°異なっている。そのため、最隣接のレーザ素子から発振される2つのレーザ光同士が干渉することを抑えることができる。また、mが奇数である列にあるレーザ素子と、mが偶数である列にあるレーザ素子からは、異なる波長(λ1, λ2)のレーザ光が発振される。これにより、斜め方向に隣り合う次隣接のレーザ素子同士から発振される2つのレーザ光同士は互いに波長が異なるため、それらが干渉することを抑えることができる。
また、図6(b)に示すように、ある点を中心に周回するような偏光(以下、これを「接線偏光」と呼ぶ)を発振するレーザ素子と、直線偏光を発振するレーザ素子とを組み合わせて用いてもよい。図7に、接線偏光の例を示す。図中の矢印は偏光の方向である。このような偏光は、特開2000-332351号公報に記載の2次元フォトニック結晶面発光レーザにより得られる。図6(b)には、レーザ素子42mnのうち(m+n)が奇数のものには接線偏光を発振するレーザ素子を、偶数のものには直線偏光を発振するレーザ素子を、それぞれ用いた。これにより、最隣接のレーザ素子同士は一方が直線偏光のレーザ光を、他方が接線偏光のレーザ光を、それぞれ発振するため、これら2つのレーザ光が干渉することを抑制することができる。また、mが奇数である列と偶数である列で、直線偏光を発振するレーザ素子は偏光方向が互いに90°異なるように、接線偏光を発振するレーザ素子は周回方向が互いに異なるように、それぞれ配置した。これにより、次隣接のレーザ素子同士から発振される2つのレーザ光同士は互いに偏光の方向が異なるため、それらが干渉することを抑えることができる。
図8に示した3×3レーザアレイでは、波長が777nm〜782nmの間で1nmずつ異なる6種類のレーザ素子を用い、最隣接及び次隣接のレーザ素子の波長が少なくとも1nm異なるように、各レーザ素子を配置している。これにより、最隣接及び次隣接のレーザ素子から発振されるレーザ光同士が干渉することを抑えることができる。なお、この例のように2つのレーザ光の波長が1nm異なれば、両者が干渉することはほとんどない。
なお、図6及び図8ではレーザ素子が縦に3個、横に3個、正方格子状に配列された3×3レーザアレイを例として説明したが、配列の大きさ(縦横の素子数)はもちろん任意である。
レーザ素子は、図9に示すように、直線状に配列してもよい。(a)は最隣接のレーザ素子同士が互いに異なる偏光を発振するように複数のレーザ素子441、442、443...を1次元状に配列したものであり、(b)は最隣接のレーザ素子同士が互いに異なる波長の光を発振するように複数のレーザ素子451、452、453...を1次元状に配列したものである。
なお、ここまではシェーディングを抑制するために、直線偏光のレーザ光を発するレーザ素子はいずれも偏光方向が素子の配列方向に対して45°傾くように配置しているが、用途によっては、最隣接のレーザ素子同士のレーザ光の干渉を抑制することのみを目的として、この傾きの角度を45°以外にしてもよい。例えば、図10に示すように、素子の配列方向に対して0°の方向に偏光したレーザ素子461と90°の方向に偏光したレーザ素子462を並べて用いることができる。
本発明のレーザアレイにおけるレーザ素子には、2次元フォトニック結晶面発光レーザを好適に用いることができる。2次元フォトニック結晶面発光レーザは、活性層とその一方の側に設けた2次元フォトニック結晶層とを有する。活性層に電荷が注入されることにより発せられる所定波長の光は、2次元フォトニック結晶において、その周期構造により定在波が形成されることにより増幅される。この増幅作用により、レーザ発振が得られる。
2次元フォトニック結晶面発光レーザでは、スラブ状の部材に周期的に形成された異屈折率領域の向きを調整することにより、偏光の方向を容易に調整することができるため、本発明の第1の態様のレーザアレイにおけるレーザ素子に好適に用いることができる。ここで異屈折率領域の向きとは、異屈折率領域を配列した格子に対する、異屈折率領域の特定の軸(例えば楕円の長軸や多角形の特定の1辺)の成す角をいう。
また、2次元フォトニック結晶面発光レーザは、その周期構造の周期を調整することにより、発振波長を容易に調整することができるため、本発明の第2の態様のレーザアレイにおけるレーザ素子にも好適に用いることができる。
以下、実施例として、2次元フォトニック結晶面発光レーザを用いたレーザアレイを詳細に説明する。
まず、図11を用いて、レーザアレイの構成要素としてのレーザ素子に用いられる2次元フォトニック結晶面発光レーザの一例を説明する。陽電極51と陰電極52の間に、Al0.1Ga0.9As/Al0.3Ga0.7Asから成り多重量子井戸(Multiple-Quantum Well; MQW)を有する活性層53を設ける。活性層53の上に、p型Al0.3Ga0.7Asから成るスペーサ層561を介して、同じくp型Al0.3Ga0.7As又はp型In0.49Ga0.51Pから成る2次元フォトニック結晶層54を設ける。2次元フォトニック結晶層54は板材(スラブ)に空孔55を正方格子状に周期的に配置したものである。空孔55の形状や周期等については後述する。なお、この図の例ではスペーサ層561と2次元フォトニック結晶層54は1枚の一体の層として形成され、上側にある2次元フォトニック結晶層54の方にのみ空孔55が形成されている。活性層53と陽電極51の間に、p型Al0.3Ga0.7As又はp型In0.49Ga0.51Pから成るスペーサ層562、p型Al0.3Ga0.7As又はp型In0.49Ga0.51Pから成るクラッド層571及びp型GaAsから成るコンタクト層58を設ける。また、活性層53と陰電極52の間に、n型Al0.3Ga0.7As又はp型In0.49Ga0.51Pから成るスペーサ層563及びn型AlGaAsから成るクラッド層572を設ける。
なお、空孔55の代わりに、前記スラブとは屈折率の異なる部材(異屈折率部材)をスラブ内に周期的に配置してもよい。また、上に挙げた各層の材料は一例にしか過ぎない。活性層53には従来の半導体レーザに用いられている活性層材料を用いることができ、2次元フォトニック結晶層54の材料にはGaN、AlGaInPやGaInAsP等を用いることができる。スペーサ層562、クラッド層571及びコンタクト層58には種々のp型半導体を用いることができ、スペーサ層563及びクラッド層572には種々のn型半導体(例えばクラッド層572にAl0.6Ga0.4As)を用いることができる。
2次元フォトニック結晶面発光レーザの動作を説明する。陽電極51と陰電極52の間に電圧を印加すると、陽電極51側から正孔が、陰電極52側から電子が、それぞれ活性層53に注入され、正孔と電子の再結合により発光する。この光が2次元フォトニック結晶層54によりフィードバックを受けてレーザ発振する。このレーザ光はコンタクト層58(出射面)から外部に取り出される。
2次元フォトニック結晶面発光レーザは、直線偏光のレーザ光を得ることができ、その偏光方向を容易に制御することができるため、第1の態様のレーザアレイにおけるレーザ素子に好適に用いることができる。また、発振される光の波長を±5nm程度の範囲内で微調整することも容易であるため、第2の態様のレーザアレイにおけるレーザ素子にも好適に用いることができる。以下、偏光及び波長が制御された2次元フォトニック結晶面発光レーザ等の例を示す。
(1)偏光の制御
図12に、偏光の方向が制御された2次元フォトニック結晶面発光レーザの2次元フォトニック結晶層54の平面図を示す。図12(a)に示す2次元フォトニック結晶層541及び図12(b)に示す2次元フォトニック結晶層542は、スラブに楕円形の空孔551を正方格子(図中の破線)状に配列したものである。2次元フォトニック結晶層541と542では、空孔551の形状や大きさは同じであり、向きのみが異なる。楕円の長軸は、2次元フォトニック結晶層541では図の左下から右上に向かう方向に、2次元フォトニック結晶層542では図の左上から右下に向かう方向に、それぞれ向いている。
このような2次元フォトニック結晶層54を有する2次元フォトニック結晶面発光レーザでは、2次元フォトニック結晶に4つのフォトニックバンドが形成され、そのうち最もエネルギー(周波数)の小さいバンドがレーザ発振に寄与する。そのバンドから発振されるレーザ光は、空孔551の楕円の長軸に平行な方向に直線偏光したレーザ光を発振する。従って、図12の2次元フォトニック結晶層54からは、空孔551の楕円の長軸方向、即ち2次元フォトニック結晶層541では図の左下から右上に向かう方向、2次元フォトニック結晶層542では図の左上から右下に向かう方向、への直線偏光がそれぞれ得られる。
2次元フォトニック結晶層541を有する2次元フォトニック結晶面発光レーザを図2(a)のレーザ素子211に、2次元フォトニック結晶層542を有する2次元フォトニック結晶面発光レーザを図2(a)のレーザ素子212に、それぞれ用いることにより、第1の態様のレーザアレイを得ることができる。
2次元フォトニック結晶層541及び542の楕円の楕円率([短軸長]/[長軸長]×100(%))は90%以上であることが望ましい。
楕円率が90%未満の場合には、長軸方向に溝が形成された状態に近くなり、長軸方向の光の閉じ込めが弱い。それに対して、楕円率が90%以上になるとそのような異方性が弱まり、面内のいずれの方向にも十分な光の閉じ込めが行われるようになり、レーザ発振が得られやすくなる。
次に、図13(a)、(b)に、スラブに三角形の空孔552を正方格子状に配列した2種の2次元フォトニック結晶層543及び544を示す。第1の2次元フォトニック結晶層543(図13(a))は空孔552の三角形の1辺を正方格子の1辺に平行に配置したものであり、第2の2次元フォトニック結晶層544(図13(b))は各三角形空孔552の向きを2次元フォトニック結晶層543の三角形空孔の向きから90°回転したものである。このような2次元フォトニック結晶層を有する2次元フォトニック結晶面発光レーザは、三角形の、格子に平行な辺の方向に直線偏光したレーザ光を発振する。なお、この図では正三角形の空孔を示したが、それ以外の形状の三角形空孔も用いることができる。
第1の2次元フォトニック結晶層543を有する2次元フォトニック結晶面発光レーザを例えば図2(a)のレーザ素子211に、第2の2次元フォトニック結晶層544を有する2次元フォトニック結晶面発光レーザを図2(a)のレーザ素子212に、それぞれ用いることにより、第1の態様のレーザアレイを得ることができる。
(2)波長の調整
図14(a)に、スラブに円形の空孔553を正方格子状に配列した2次元フォトニック結晶層545を示す。空孔553の周期(正方格子の1辺の長さ)が235.5nm〜237.0nmの範囲内で0.3nmずつ異なる2次元フォトニック結晶を有する6種類の2次元フォトニック結晶面発光レーザを作製する。それら6種類のレーザからは、図14(b)に示すように、発振波長が777nm〜782nmの範囲内で1nmずつ異なるレーザ光が発振される。これら6種類のレーザを、例えば図14(b)に示したレーザ素子番号に合わせて、図8(b)の各レーザ素子に適用することにより、第2の態様のレーザアレイを得ることができる。なお、このレーザから発振されるレーザ光は特定の方向には偏光していない。
(3)複数の2次元フォトニック結晶面発光レーザを一体化したレーザアレイ
図15に、2個の2次元フォトニック結晶面発光レーザ素子を一体化したレーザアレイの例を示す。
図15(a)に、この一体型レーザアレイに用いられる2次元フォトニック結晶層54の例を示す。1個のスラブが複数の結晶領域621、622、...に分かれ、各結晶領域にそれぞれ、楕円形の空孔55が形成されている。隣接する結晶領域では、互いに空孔55の楕円の長軸が90°異なる方向を向いている。
図15(b)の斜視図に示すように、2次元フォトニック結晶層54の下部には1個の活性層53が形成されている。また、上述の2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様にスペーサ層561〜563、クラッド層571及び572、コンタクト層58が形成されている。そして、結晶領域621、622毎に、その直上のコンタクト層58の表面に、陽電極611、612が配置されている。一方、クラッド層572の下部には1枚の陰電極52が配置されている。
図15(b)の一体型レーザアレイでは、陽電極611、612のいずれか1つと陰電極52の間に電圧を印加すると、活性層53において発光し、その光が、電圧印加に係る陽電極の直下にある結晶領域内において増幅され、その陽電極の周囲から外部へ、その結晶領域の楕円の長軸方向に直線偏光したレーザビームが発振する。即ち、この一体型レーザアレイは、単体のレーザ素子を多数並べたレーザアレイと同様の動作をする。そして、陽電極611と陰電極52の間及び陽電極612と陰電極52の間の双方に電圧を印加すると、陽電極611及び612の周囲からそれぞれ、互いに偏光方向が90°異なり、その偏光方向の違いにより互いに干渉することのないレーザビームが発振する。
図15には結晶領域及び陽電極を2個ずつ設けた構成を示したが、図16に示すように、結晶領域62mn(m、nは正の整数)を2次元状に多数配列し、各結晶領域毎に、その直上のコンタクト層58の表面に陽電極61mnを配置してもよい。この場合、図6のレーザアレイと同様の構成にするために、mが奇数である結晶領域と偶数である結晶領域の空孔を異なる周期で配列することができる。
また、図15及び図16には、図12に示した2次元フォトニック結晶と同様の空孔を各結晶領域に設ける例を示したが、もちろん、各結晶領域において、本実施例で示した図13や図14の2次元フォトニック結晶と同様に空孔を配列することもできる。
レーザアレイを用いたレーザ光走査装置の一例の概略構成図。 本発明の(a)第1の態様及び(b)第2の態様の例のレーザアレイの概略構成図。 ポリゴンミラー、レンズ等の表面31と偏光方向33の関係を示す斜視図。 入射角と反射率の関係を計算で求めた結果を示すグラフ。 第1の態様と第2の態様の特徴を共に備えるレーザアレイの一例の概略構成図。 本発明のレーザアレイの他の例を示す概略構成図。 発光面の中心を取り巻く偏光の例を示す図。 本発明のレーザアレイの他の例を示す概略構成図。 レーザ素子を1次元状に配列した、(a)第1の態様及び(b)第2の態様のレーザアレイを示す概略構成図。 本発明のレーザアレイの他の例を示す概略構成図。 2次元フォトニック結晶面発光レーザの基本的な構成を示す斜視図。 第1の態様のレーザアレイに用いられる、楕円形の空孔451を有する2次元フォトニック結晶の例を示す平面図。 第1の態様のレーザアレイに用いられる、三角形の空孔452を有する2次元フォトニック結晶の例を示す平面図。 第2の態様のレーザアレイに用いられる、円形の空孔453を異なる周期で配置した2次元フォトニック結晶の例を示す平面図(a)、及び空孔243の周期と発振波長の関係を示す表(b)。 2個の2次元フォトニック結晶面発光レーザを一体化したレーザアレイの例を示す平面図。 複数の2次元フォトニック結晶面発光レーザを一体化したレーザアレイの例を示す平面図。
符号の説明
10…レーザ光走査装置
11…レーザアレイ
12…コリメータレンズ
13…アパチャ
14…シリンドリカルレンズ
15…ポリゴンミラー
16…θレンズ
17…ドラム感光体
211、212、221、222、231、232、41mn、42mn、43mn(m、nは正の整数)、441、442、...、451、452、...461、462…レーザ素子
31…ポリゴンミラー等の表面
32…入射面
33…偏光方向を示す矢印
51、611、612、...、61mn(m、nは正の整数)…陽電極
52…陰電極
53…活性層
54、541〜547…2次元フォトニック結晶層
55、551、552、553…空孔
561〜563…スペーサ層
571、572…クラッド層
58…コンタクト層
621、622、...、62mn(m、nは正の整数)…結晶領域

Claims (11)

  1. 複数のレーザ素子が配列されて成るレーザアレイにおいて、
    各レーザ素子が、最隣接のレーザ素子から発振されるレーザ光とは偏光の方向が異なるレーザ光が発振されるように配置されていることを特徴とするレーザアレイ。
  2. 各レーザ素子が、最隣接のレーザ素子から発振されるレーザ光とは偏光の方向が90°異なる直線偏光のレーザ光が発振されるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のレーザアレイ。
  3. 複数のレーザ素子が配列されて成るレーザアレイにおいて、
    各レーザ素子が、最隣接のレーザ素子から発振されるレーザ光とは波長が異なるレーザ光が発振されるように配置されていることを特徴とするレーザアレイ。
  4. 各レーザ素子の偏光の方向が、最隣接のレーザ素子が並ぶ方向に対して45°傾いていることを特徴とする請求項2又は3に記載のレーザアレイ。
  5. 前記レーザ素子が2次元的に配列されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレーザアレイ。
  6. 前記レーザ素子が、活性層と、該活性層の一方の側に設けた2次元フォトニック結晶と、を有する2次元フォトニック結晶面発光レーザ素子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のレーザアレイ。
  7. 前記2次元フォトニック結晶がスラブ状の部材内に該部材とは屈折率の異なる非円形の領域を多数配列したものであり、最隣接するレーザ素子同士で異屈折率領域の向きが異なることを特徴とする請求項6に記載のレーザアレイ。
  8. 前記異屈折率領域が楕円形であることを特徴とする請求項7に記載のレーザアレイ。
  9. 前記異屈折率領域が三角形であることを特徴とする請求項7に記載のレーザアレイ。
  10. 前記2次元フォトニック結晶がスラブ状の部材内に該部材とは屈折率の異なる領域を多数配列したものであり、最隣接するレーザ素子同士で異屈折率領域の配列周期が異なることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載のレーザアレイ。
  11. 前記複数のレーザ素子が、1個の活性層と、1個のスラブ状部材が複数の結晶領域に分けられ最隣接の結晶領域同士で異屈折率領域の配列が異なるように形成されて成る1個の2次元フォトニック結晶と、前記結晶領域毎に該活性層及び該2次元フォトニック結晶を挟むように配置された電極対と、を有することを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載のレーザアレイ。
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