JP2008058495A - 液晶表示素子および投射型液晶表示装置 - Google Patents

液晶表示素子および投射型液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】液晶セル内のイオン性不純物の量を減少させることが可能で、焼きつき現象の発現を抑止でき、ひいてはより高品位な画質を得ることができる液晶表示素子および投射型液晶表示装置を提供する。
【解決手段】配向膜が所定間隙で対向するようにシール材15で貼り合わせた一対の基板11,12間に液晶層16が挟持された液晶表示素子10であって、液晶層16の材料は、測定温度70℃における誘電率異方性Δεの範囲が−4.5から0未満である。
【選択図】図2

Description

本発明は、配向膜が所定間隙で対向するようにシール材で貼り合わせた一対の基板間に液晶層が挟持された液晶表示素子およびこの液晶表示素子を用いた投射型液晶表示装置に関するものである。
液晶プロジェクタ等の投射型液晶表示装置では、光源から出射される光を赤、緑、青に分離し、各色光を液晶表示素子(以下、LCDという)により構成される3つのライトバルブにより変調し、変調された後の色光束を再び合成して、投射面に拡大投射している。
液晶プロジェクタ等に搭載されるライトバルブとしては、一般に薄膜トランジスタ(以下TFTという)駆動によるアクティブマトリクス駆動方式のLCDが用いられる。
アクティブマトリクス駆動方式の表示方式としては、90度捩れた分子配列を持つツイステッドネマティック(TN型)液晶があげられる。
ところで、近年においては、液晶プロジェクタ装置の高輝度化、高コントラスト化、高精細化、高寿命化を図るべく、垂直配向型の液晶素子が検討され始めている。
ここで、垂直配向液晶材料とは、負の誘電率異方性を有する(液晶分子長軸に平行な誘電率ε=と垂直な誘電率ε⊥との差が負である)液晶材料であり、液晶に印加される電圧がゼロのときに基板面にほぼ垂直に液晶分子が配向するため、この垂直配向型の液晶表示素子は、非常に高いコントラスト比を得ることができる。
この垂直配向型の液晶表示素子は、透過型および反射型いずれにも用いられ、高寿命化を目的とした配向膜の無機化とともに、今後、液晶プロジェクタの主流となっていくと思われる。
アクティブマトリクス駆動方式のLCDの表示を均一に行うためには、基板表面全面に液晶分子を均一に配向させることが必要である。
配向膜が形成され、電極が形成された2枚の基板は、各基板の配向膜が対向して配置されており、実際に画像が表示される画素表示領域の周囲に位置するシール領域において、シール材により貼り合わされる。
基板間隙を制御するために、近年では、レジストにより形成される柱状スペーサが用いられる。
これらの工程を経ることで、空セルが製造される。その後、この空セル内に液晶が封入されて、液晶セルが製造される。
なお、前述した液晶は、数種類の単体液晶材料からなり、液晶組成物ともよばれる。製造された液晶セルに偏光板が取り付けられて液晶表示素子が製造される。
液晶表示素子については材料を含めて種々提案されている(特許文献1〜4参照)。
特開2005−306949号公報 特開2003−119248号公報 特開2003−119249号公報 特開2006−22228号公報 特開2001−255562号公報
しかしながら、これらの液晶表示素子においては、同一の画面を長時間表示した場合は、表示を切り替えた際に、表示が残ってしまういわゆる焼きつきといった問題が発生することがあった。
図1(A)〜(D)は、焼きつきの発生の想定モデルの一例を示す図である。
図1において、1はTFTアレイ基板を、2は対向基板を、3、4は配向膜層を、5は液晶層をそれぞれ示している。
液晶セル内には、液晶層5の液晶材料中、配向膜層3,4やシールなどの周辺材料に含まれるイオン性不純物、その他に工程内にて付着するさまざまなイオン性不純物が混入していると考えられる(図1(A))。
図1(B)に示すように、基板1の配向膜3上にイオン性不純物が吸着すると配向膜層3と不純物層で成る電気二重層が形成される。
そして、2枚の基板、たとえばTFT基板1と対向基板2の作製においては、全く同一の処理をすることが困難であり、各々の不純物の吸着力は同一ではない。前述したように吸着量が各々の基板で異なることから、対向電極に印加する電圧(以下、Vcom電圧)がずれてくる。信号電圧の正負逆転時には、液晶分子に実際に印加される電界の強さ(実効電圧)が、反転周期に対応して異なってしまう。
その結果、液晶分子のゆらぎが発生し、フリッカといった画面のちらつき現象が発生する。
フリッカが発生するようなVcom電圧において表示を続けた場合は、図1(C)に示すように、信号バランスが正負信号において崩れるので、液晶分子に直流成分が印加される。一方の基板に常に直流成分が印加されていることで、上記液晶セル内のイオン性不純物が、液晶層5の一方の基板1側に蓄積される。
そして、図1(D)に示すように、全ての電極の電圧をオフ(OFF)にしても、イオン性不純物は配向膜層3近傍に蓄積されたままになっており、液晶分子に微少な電界を印加する状態を保持するために、焼きつき現象が見られる。
この焼きつき現象が現出するという課題を解決するためには、液晶セル内のイオン性不純物の量を減少させることが有効である。
ここで、材料からの液晶セル内へのイオン性不純物侵入ルートについて述べる。
たとえば、周辺材料においてはシール剤があげられる。近年は、シール材料として光硬化型シール剤、もしくは光硬化熱硬化併用型シール剤を用いる。
一般的には、アクリル樹脂やエポキシ樹脂が用いられており、これらの樹脂を重合させるためには、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤が用いられる。これらの重合剤の反応が不十分だった場合は、イオン性不純物と化す。液晶材料とシール材は接触しているため、液晶セル内のイオン性不純物は、劇的に増加することとなる。
また、液晶材料においては、合成時に残留している不純物が上げられる。一般的に液晶材料は、その誘電率異方性Δεが大きくなるほど、液晶の極性が大きくなり、液晶中にイオン性不純物を溶解しやすくなり、画質品位、信頼性は厳しい方向に向かっている。
外部からのイオン性不純物侵入ルートとしては、さまざまであり、たとえば、配向膜を特にスピンコートや蒸着などの手法で形成する場合は、基板端部にまで膜が形成されるため、配向膜とシールの界面を通じて水分やイオン性不純物が液晶中に侵入し、問題発生が顕著となる。
また液晶材料の保存中や注入工程において、周囲のイオン性不純物を溶解してしまうケースも考えられる。
プロジェクタに用いる投射型LCDにおいては、これらの課題の深刻さがより顕著である。拡大投影するため画質異常が目立ちやすいこと、パネルに入射する光の量が直視型に比べ非常に多いのでパネルが高温になり、微量のイオン性不純物混入による劣化も見えやすい傾向にある。
水や温度以外にも光に対する耐性が求められ、微小な汚染も大きな課題となりうる。特に、光照射により焼きつきの悪化だけでなく、イオン性不純物から引き起こされるさまざまな課題は、特に投射型LCDにおいては、より厳しい方向にある。
本発明は、液晶セル内のイオン性不純物の量を減少させることが可能で、焼きつき現象等の発現を抑止でき、ひいてはより高品位な画質を得ることができる液晶表示素子および投射型液晶表示装置を提供することにある。
本発明の第1の観点は、配向膜が所定間隙で対向するようにシール材で貼り合わせた一対の基板間に液晶層が挟持された液晶表示素子であって、上記液晶層の材料は、測定温度70℃における誘電率異方性Δεの範囲が−4.5から0未満である。
好適には、上記液晶層の液晶材料は、垂直配向型液晶であり、屈折率異方性をΔn、セルギャップをdとしたときのΔndの範囲が0.55μmより小さい。
好適には、上記液晶材料は、Δndの範囲が0.34μmから0.55μmであり、測定温度70℃における誘電率異方性Δεの範囲が−4.5から−2である。
好適には、シール剤の母体100重量部に対して、光ラジカル重合開始剤の含有量は、0.05重量%未満である。
好適には、前記液晶表示素子は、フレーム毎に各画素電極に印加する電圧を同一極性で反転させるフレーム反転駆動を行うアクティブマトリクス型液晶表示素子である。
本発明の第2の観点の投射型液晶表示装置は、光源と、少なくとも一つの液晶表示素子と、上記光源から出射された光を上記液晶表示素子に導く集光光学系と、上記液晶表示素子で光変調した光を拡大して投射する投射光学系と、を有し、上記液晶表示素子は、配向膜が所定間隙で対向するようにシール材で貼り合わせた一対の基板間に液晶層が挟持され、上記液晶層の材料は、測定温度70℃における誘電率異方性Δεの範囲が−4.5から0未満である。
本発明によれば、液晶セル内のイオン性不純物の量を減少させることが可能で、焼きつき現象等の発現を抑止でき、ひいてはより高品位な画質を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に関連付けて説明する。
本実施形態においては、アクティブマトリクス型液晶表示素子の特徴的な構成および機能を説明した後、この液晶表示素子が適用される好適な電子機器である投射型液晶表示装置に概略構成および機能について説明する。
図2は、本実施形態に係るアクティブマトリクス型液晶表示素子の概略構成を示す断面図である。
本実施形態に係る液晶表示素子10は、図2に示すように、TFTアレイ基板11と、TFTアレイ基板11に対向配置される透明な対向基板12とを備えている。
TFTアレイ基板11は、たとえば透過型の場合、石英基板、反射型の場合、たとえばシリコン材料に基板により形成される。対向基板12は、たとえばガラス基板や石英基板により形成される。TFTアレイ基板11には、透過型の場合、画素電極13が設けられている。
画素電極13は、たとえばITO膜(インジウム・ティン・オキサイド膜)などの透明導電性薄膜により形成される。反射型の場合、画素電極13としては、たとえば金属材料からなる反射電極を用いる。金属材料としては、可視域で高い反射率を有するアルミニウムを用いるのが一般的である。より詳しくは、銅やシリコンを数wt%添加したアルミニウム金属膜が一般に使用される。その他に、たとえば、白金、銀、金、タングステン、チタンなどを用いることも可能である。対向基板12には、前述した全面ITO膜14が前面に設けられている。
TFTアレイ基板11と対向基板12とには、液晶を所定方向に配向させるための図示しない配向膜が形成されており、配向膜が所定間隙で対向するようにシール材15で貼り合わせた一対の基板間に垂直配向液晶層16が挟持されている(封入されている)。
図3は、本実施形態に係るアクティブマトリクス型液晶表示素子のアレイ基板(液晶パネル部)における配置例を示す図である。
図3に示すように、液晶表示素子10Aは、画素がアレイ状に配列された画素表示領域21、水平転送回路22、垂直転送回路23−1,23−2、プリチャージ回路24、およびレベル変換回路25を含んで形成されている。
画素表示領域21には複数のデータ線26と複数の走査線(ゲート配線)27が格子状に配線され、各データ線26の一端側は水平転送回路22に接続され、他端側はプリチャージ回路24に接続され、各走査線27の端部が垂直転送回路23−1,23−2に接続されている。
液晶表示素子10Aの画素表示領域21を構成するマトリクス状に複数形成された画素PXには、スイッチング制御する画素スイッチング用トランジスタ28、液晶29、および補助容量(蓄積容量)30が設けられている。
画素信号が供給されるデータ線26がトランジスタ28のソースに電気的に接続されており、書き込む画素信号を供給している。また、トランジスタ28のゲートに走査線27が電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線27にパルス的に走査信号を印加するように構成されている。
画素電極13は、トランジスタ28のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるトランジスタ28を一定期間だけそのスイッチをオンさせることにより、データ線26から供給される画素信号を所定のタイミングで画素信号を書き込む。
画素電極13を介して液晶29に書き込まれた所定レベルの画素信号は、対向基板12に形成された対向電極との間で一定期間保持される。液晶29は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にする。
ノーマリホワイト表示であれば、印加された電圧に応じて入射光がこの液晶部分を通過可能とされ、全体として液晶表示素子から画素信号に応じたコントラストを持つ光が出射する。
ここで、保持された画素信号がリークされるのを防ぐために、画素電極と対向電極との間に形成される液晶容量と並列に補助容量(蓄積容量)30を付加してある。これにより、保持特性はさらに改善され、コントラスト比の高い液晶表示素子が実現できる。
また、このような保持容量(蓄積容量)30を形成するために、抵抗化されたコモン配線31が設けられている。
本実施形態の液晶表示素子10は、たとえば、フレーム毎に各画素電極に印加する電圧を同一極性で反転させるフレーム反転駆動を行うアクティブマトリクス型液晶表示素子として構成される。
図4は、本実施形態に係るアクティブマトリクス型液晶表示素子のTFTアレイ基板側の具体的な構成例を示す断面図である。
この液晶表示素子10Aは、TFTアレイ基板11と、TFTアレイ基板11上に形成された第一遮光膜32と、TFTアレイ基板11および第一遮光膜32上に形成された第一層間膜33と、第一層間膜33上に形成された多結晶Si膜(p-Si)34と、多結晶Si膜(p-Si)34上に形成されたゲート絶縁膜35と、ゲート絶縁膜35上に形成されたゲート電極36と、第一層間膜33、ゲート絶縁膜35、およびゲート電極36上に形成された第二層間膜37と、第二層間膜37に形成された第一コンタクト38と、第一コンタクト38内を含めて形成された第一配線膜39と、第二層間膜37および第一配線膜40上に形成された第三層間膜40と、第三層間膜40に形成された第二コンタクト41と、第二コンタクト41内を含めて第三層間膜40上に形成された導電性を有する第二遮光膜42と、第三層間膜40および第二遮光膜42上に形成された第四層間膜43と、第四層間膜43に形成された第三コンタクト44と、第三コンタクト44内を含めて第四層間膜43上に選択的に形成された透明電極45と、透明電極45および第四層間膜43上に形成された柱状スペーサ46とを有する。
そして、図4には図示していないが、図2に関連付けて説明したように、TFTアレイ基板11と対向基板12とには、液晶を所定方向に配向させるための図示しない配向膜が形成されており、配向膜が所定間隙で対向するようにシール材15で貼り合わせた一対の基板間に垂直配向液晶層16が挟持される(封入される)。
以上の構成を有する本実施形態に係る液晶表示素子10(10A)は、液晶セル内のイオン性不純物の量を減少させることが可能で、焼きつき現象等の発現を抑止でき、ひいてはより高品位な画質を得ることができるように、以下に示すような特徴的な構成を有する。
液晶表示素子10は、基本的に、マトリクス状の画素を形成すべく各基板の対向する面に電極13,14が形成され、フレーム毎に各画素電極に印加する電圧を同一極性で反転させるフレーム反転駆動を行うアクティブマトリクス型液晶表示素子であって、二枚の基板11,12上には液晶を所定方向に配向させるための配向膜が形成されており、二枚の基板11,12が所定間隙で対向するようにシール材15で貼り合わされ、互いに対向して貼り合わされた一対の基板11,12間に垂直配向液晶層16が狭持されている。
そして、液晶表示素子10においては、以下の特徴的な構成を有する。
液晶表示素子10において、液晶層16を形成する液晶材料は、屈折率異方性Δnとセルギャップdとの積として与えることが可能なリタデーションΔndの範囲が0.55μmより小さく、測定温度70℃における誘電率異方性Δεの範囲が−4.5から0未満であることを特徴としている。
また、より好適には、液晶表示素子10における液晶材料のΔndの範囲が0.34μm〜0.55μmであり、測定温度70℃における誘電率異方性Δεの範囲が−4.5から−2である。
また、シール剤の母体100重量部に対して、光ラジカル重合開始剤の含有量は、0.05重量%未満であることを特徴としている。
また、以上の3つの特徴部うちの2つのいずれかを組み合わせた構成あるはい3つを組み合わせた構成を採用することが可能である。
さらに、液晶パネルは、透過型の液晶パネルであり、また、画素ピッチは20μm以下である。また、配向膜に無機配向膜を用いることを特徴としている。
以上の特徴的な構成についてさらに詳述する。
液晶セル内のイオン性不純物による焼きつき等の不良を抑止する対策としては、イオン性不純物が存在しても溶解しにくくするか、イオン性不純物の混入を低減するといった対策がある。
前者は、液晶材料の誘電率異方性Δεを低減し、液晶の極性を小さくすることが有効であり、後者は、不純物発生の原因物質を除去することが有効である。
まず、イオン性不純物が存在しても溶解しにくくするために、液晶の誘電率異方性Δεを制御する。
誘電率異方性Δεが−4より小さい場合、特に−4.5よりも小さい場合は、極性が高くなるため、焼きつきを含めた各種信頼性課題が顕著となった。詳細は実施例で示す。
一方、誘電率異方性Δεが0の場合は液晶としての機能を失い、さらに−2よりも大きい場合は、提示した課題に対しては良い方向であるものの、しきい値電圧Vthが高くなってしまい、実用的範囲から外れてしまう可能性がある。
垂直配向のしきい値電圧Vthの式は、以下で示されるように、屈折率異方性Δεに大きく依存する。
Figure 2008058495
図5、図6、および図7は、誘電率異方性ΔεおよびK33の条件を変更させた場合の、電圧 対 透過率特性曲線を示す図であって、図5はK33が10の場合の電圧 対 透過率特性曲線を示し、図6はK33が15の場合の電圧 対 透過率特性曲線を示し、図7はK33が20の場合の電圧 対 透過率特性曲線を示している。
図5〜図7において、横軸が電圧を、縦軸が相対的な透過率をそれぞれ示している。また、図5〜図7において、Aで示す曲線はΔεが−1のときの特性を、Bで示す曲線はΔεが−2のときの特性を、Cで示す曲線はΔεが−3のときの特性を、Dで示す曲線はΔεが−4のときの特性を、それぞれ示している。
また、図8は、誘電率異方性Δεと透過率が100%になる飽和電圧との関係を示す図である。図8において、横軸が屈折率異方性Δεを、縦軸が飽和電圧Vsatをそれぞれ示している。また、図8において、Aで示す曲線はK33が10の場合の特性を、Bで示す曲線はK33が15の場合の特性を、Cで示す曲線はK33が20の場合の特性を、それぞれ示している。
なお、図5〜図8は、セルギャップ3.8μm、プレチルト角が80°の場合の各特性を示している。
図5〜図8においては、一般的な垂直配向型液晶のとりうるK33の範囲は10から20について結果を提示した。その他の物性値やセルパラメータは図に示す通り、同一条件とした。
特に注目すべきは、図8に示すように、デバイスの飽和電圧(以下Vsat:透過率が100%になる電圧)である。図8は、屈折率異方性Δεと飽和電圧Vsatとの関係をK33を10から20の範囲で示している。
図8に示すように、Δεが−2よりも大きくなると、飽和電圧Vsatは5V以上となってしまい、駆動電圧が高くなる傾向にある。
したがって、実用デバイスに即した屈折率異方性Δεとしては、上限を−2とすることが望ましい。
次に、不純物発生の原因物質を除去するための対策の一つとして、シールの重合開始剤に着目し、以下に考察する。
重合開始剤は、硬化後に少量の残渣が発生することから、液晶表示素子の使用中に残渣が液晶中に溶け出し、イオン性不純物が増加し、焼きつきやムラなどの表示不良を引き起こすと想定されるためである。
シールの重合開始剤には、ラジカル重合開始剤と、カチオン重合開始剤の2つがある。
カチオン重合開始剤には、たとえば、特許文献1(特開2005-306949号公報)に開示された化合物が用いられている。
ラジカル重合開始剤には、たとえば、特許文献2(特開2003-119248号公報)、特許文献3(特開2003-119249号公報)、特許文献4(特開2006-22228号公報)、特許文献1(特開2005-306949号公報)に開示された化合物が用いられている。
特に、特許文献4(特開2006-22228号公報)においては、ラジカル重合開始剤の添加量を0.1-1重量%以上の範囲で規定している。
しかしながら、詳細は、実施例で述べるが、焼きつきなどの表示不良が発生したパネルを分析したところ、不良に対する寄与の大分は、ラジカル重合開始剤であることが明らかとなった。さらに、0.05重量%未満であれば、問題ないことも明らかにした。
一方のカチオン重合開始剤は、不良にほとんど寄与することがなく、一定量添加すれば、樹脂の重合は進み、シールとしての密着機能に問題ないことも明らかにした。
次に、本実施形態において指定したリタデーションΔndの範囲について説明する。
偏光板PLと検光板DLが直交配置で、非点灯時において黒表示であるノーマリブラック(NB)モードの場合、最大透過率が得られるリタデーション(Δnd)は、以下の理論式で定義されている。
[数2]
T=sin(2Θ)sin(πΔnd/λ)
ここで、Θは偏光と長軸のなす角度であり、第1項は、Θ=45°のとき最大となる。第2項は、Δnd=(2n−1)×(λ/2)のとき最大となる。
すなわち、最大透過率を得ることができるのはΔnd=λ/2である。
本デバイス(液晶表示素子)の垂直配向液晶は、液晶分子長軸が、印加電圧ゼロのときに、ほぼ基板に垂直方向に配向し、電圧を印加すると面内方向に対して傾くことにより透過率を変化されるものである。駆動時に液晶分子が傾斜する方向が一様でないと、ムラなどの表示不良が発生してしまうため、これを避けるためにあらかじめ、わずかなプレチルトを一定方向に付与させる必要がある。これらのプレチルトや、屈折率異方性Δεなどの物性値を考慮した場合、液晶分子の相互作用などから、最大透過率が得られるΔndは計算値とは異なってくる。
図9は、印加電圧=5VのときのΔεおよびK33の条件を変更させた場合の、波長550nmの緑(Green)色光におけるΔnd 対 透過率特性曲線を示す図である。
図9において、横軸がΔndを、縦軸が透過率を示している。また、図9において、Aで示す曲線は33が10でΔεが−2.0の場合の特性を、Bで示す曲線はK33が10でΔεが−4.0の場合の特性を、Cで示す曲線はK33が10でΔεが−4.5の場合の特性を、Dで示す曲線は33が20でΔεが−2.0の場合の特性を、Eで示す曲線はK33が20でΔεが−4.0の場合の特性を、Fで示す曲線はK33が20でΔεが−4.5の場合の特性を、それぞれ示している。
また、図10は、図9の特性から導き出せる誘電率異方性ΔεとリタデーションΔndとの関係を示す図である。
図10において、横軸が誘電率異方性Δεを、縦軸がリタデーションΔndをそれぞれ示している。また、図10において、Aで示す曲線はK33が10の場合の特性を、Bで示す曲線がK33が20の場合の特性をそれぞれ示している。
この場合、一般的な垂直配向型液晶のとりうるK33の範囲として、10から20について計算を行った。また、誘電率異方性Δεは−2,−4,−4.5とした。その他の物性値やセルパラメータは図に示す通り、同一条件とした(信号電圧Vsig=5V)。なお、本計算は、2DMASTERを用いた。
図9より、K33が10のときと、K33が20のときで、以下の条件式を導くことができる。
Figure 2008058495
本結果から、−4.5≦Δε<0の範囲において、最大透過率が得られるΔndの範囲はΔnd≦0.55μmとなり、望ましくは−4.0≦Δε≦−2.0の範囲において、最大透過率が得られるΔndの範囲を0.34μm≦Δnd≦0.55μmと指定した。
投射型表示装置の小型化に伴い、液晶表示素子も小型化され、基板サイズが22.9mm(対角0.9インチ)XGAタイプで画素(ピクセル)ピッチは、20μm以下と、高精細化が進んでいる。
そのため、横電界によるリバースチルトドメインによる配向乱れに対しては非常に厳しい方向にある。
対策としては、狭ギャップ化、すなわちセルギャップを薄くして、TFTアレイ基板と対向基板の上下方向の電界を強め、横方向の電界の影響を防止することも効果的である。狭ギャップ化については、特に遮光部などに選択的にスペーサを作成することがギャップ制御に非常に有効である。
図11は、ピクセルピッチと配向乱れ、並びにセルギャップとの関係を示す図である。
図11において、黒い四角で示すプロット点はセルギャップdが4.5μmの場合のピッチと配向乱れとの関係を、白い四角で示すプロット点はセルギャップdが4.2μmの場合のピッチと配向乱れとの関係を、黒い三角で示すプロット点はセルギャップdが4.0μmの場合のピッチと配向乱れとの関係を、黒い丸で示すプロット点はセルギャップdが3.7μmの場合のピッチと配向乱れとの関係を、白い三角で示すプロット点はセルギャップdが3.5μmの場合のピッチと配向乱れとの関係を、黒い丸で示すプロット点はセルギャップdが2.5μmの場合のピッチと配向乱れとの関係を、それぞれ示している。
図11からわかるように、20μmピッチで配向乱れが発生させないためには、セルギャップdが4.0μm以下が望ましい。
その場合、最大透過率が得られる屈折率異方性Δnの範囲は、前述した特徴であるΔnd≧0.34μmより、[Δn≧0.34μm÷4.0μm]の式から、0.085以上が望ましい。
なお、物性値の規定においては、特許文献5(特開2001-255562号公報)で示されるようにディスクリネーションのような配向乱れを軽減することを目的として、Δεが−7.0から−4.3の範囲で規定をしている。
しかしながら、前述した理由から、ディスクリネーションがたとえ軽減したとしても、焼きつき含む表示不良が発生する。
本実施形態においては、ディスクリネーションのおよび焼きつきなどの表示不良をともに解決できるような液晶表示素子を提供することができる。
また、本実施形態においては、前述したように、配向膜材料は、無機系配向膜であることを特徴とする。
プロジェクタに用いる投射型LCDにおいては、拡大投影するため画質異常が目立ちやすいこと、パネルに入射する光の量が直視型に比べ非常に多いのでパネルが高温になり、微量のイオン性不純物混入による劣化も見えやすい傾向にある。水や温度以外にも光に対する耐性が重要になってくるからである。
無機配向膜は、代表的に蒸着で形成されるシリコン等があげられるが、ゲルマニウムなどのIV属元素の単体または混合物または化合物、蒸着によって成膜が可能なほとんどすべての物質が使用可能であると考えられる。
その他に、印刷やスピンコート、インクジェット法で形成されるシロキ酸骨格を有する材料などもあげられる。
以下に、本発明の実施例を示す。
<実施例>
まず、図4に関連付けて本実施形態に係るアクティブマトリクス型液晶表示素子の製造方法を説明する。
石英からなるTFTアレイ基板11上に、第一遮光膜32として、高融点の金属(本実施形態ではWSi)を形成した。
その後、第一層間膜33としてSiO2を積層し、CVD法を用いて、多結晶Si膜(p-Si)34を形成し、エッチングによりパターン形成をした。
その後、ゲート絶縁膜35を形成し、ゲート電極36として、多結晶Si膜(p-Si)を形成し、エッチングによりパターン形成を行った。
その後、第二層間膜37として、SiO2を積層し、ソース、ドレイン電極として第一コンタクト38を形成した。
第一配線膜39として金属材料(本実施形態ではAl)をスパッタなどの成膜により形成し、エッチングによりパターニングを行った。
その後、第三層間膜40として、SiO2を積層し、第二コンタクト41を形成した後に、第二遮光膜42として、金属膜(本実施例ではTi)を形成した。
第四層間膜43としてSiO2を積層し、第三コンタクト44を形成し、透明電極45としてITOをエッチングによりパターニングした。
次いで、柱状スペーサ46となる透明レジスト層を形成した。
基板上にフォトレジストとして、PMER(東京応化工業株式会社製)をスピンコート法により3μmの厚さに塗布した後、フォトマスクを用いて紫外線照射による露光処理を行い、その後、現像し、焼成を行って、柱状スペーサ46を形成する。柱状スペーサ46は、隣接する画素電極の間の所望の位置に配置される。
次いで、作製したTFTアレイ基板11および対向基板12を洗浄する。
次いで、各基板に配向膜を形成する。
配向膜材料は、無機配向膜を用いた。代表的に蒸着で形成されるシリコン等があげられるが、ゲルマニウムなどのIV属元素の単体または混合物または化合物、蒸着によって成膜が可能なほとんどすべての物質が使用可能であると考えられる。
その他に、印刷やスピンコート、インクジェット法で形成されるシロキ酸骨格を有する材料などもあげられる。もちろん無機材料だけではなくポリイミドなどの有機材料でも構わない。
各基板の配向膜形成を行った。それぞれの基板を蒸着装置に導入し、それぞれに配向膜として、SiO2を斜め蒸着して形成した。膜厚は、約50nmの厚さに塗布した。
次いでシールパターンを形成した。
本実施例に用いたシール剤を表1に示す。
Figure 2008058495
アクリレート系オリゴマーとして、たとえば特許文献1(特開2005-306949号公報)に示されるような市販品であるALBIFLEX712(以下、AF712、hanse chemie社製)を1%用いた。なおこの市販品に関しては、限定されるものではない。
エポキシ系オリゴマーとしては、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エピクロン830S・大日本インキ化学工業(株)製を99%用いた。特許文献4(特開2006-22228号公報)の段落[0018]に示されるような市販品でも構わない。
光ラジカル開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア184を0.1%用いたが、特許文献1(特開2005-306949号公報)の段落[0032],[0033]に示されるような材料でも構わない。
また、光カチオン開始剤としては、和光純薬製PI−113を1%用いたが、特許文献1(特開2005-306949号公報)の段落[0031]に示されるような材料でも構わない。
液晶層に用いる液晶材料は、誘電率異方性Δεが負の垂直型液晶材料でΔε=−5とし、屈折率異方性Δnが0.13とし、液晶層の厚みであるセルギャップdを3.5μmに設定し、液晶表示素子10を作製した。
以下に比較例1〜3を示す。
<比較例1>・・・液晶材料のΔεの低減
シール形成までは、上述したと同様に行い、液晶材料のみ変更して本発明の液晶表示素子を作成した。
液晶材料は、誘電率異方性Δεが−4.7、−4.5、−4、−3.5の4条件を用い、屈折率異方性Δnを0.13とし、液晶層の厚みであるセルギャップdを3.5μmに設定し、フレキ等でパッケージ外装をして画出しできるような液晶表示素子を作製し、下記評価を実施し、一般的な構成を有する従来例と比較することとした。上記表1および図12に結果を示す。なお、図12は|Δε|とフリッカとの関係を示す。
[評価]
(焼きつき)
70℃の投射型表示装置に本実施例の液晶表示素子を入れ、一松模様のパターンを8時間保持させた。
その後、ラスタパターンに切り替えて画質評価を行った。ランクは、一松模様のパターンがはっきり残っているものをばつ(×)、一部が残っているものを三角(△)、ほとんど見えないものを丸(○)、全く見えないものを二重丸(◎)とした。
(フリッカ値)
スペクトルアナライザーを用いて測定を行った。
なお、フリッカ値の合格基準について図13に示した。焼付き画像を見て、NG−OKのアンケートを50名に実施した。
その結果、フリッカ値14dB以上でNGと判断された。
換言すれば、図12からもわかるように、70℃における|Δε|<4.5に設計することにより、14dB以下の焼付きに制御可能である。
(光照射試験)
250WのUHPランプを備えた90℃の光照射試験装置に本発明の液晶表示素子を入れ、一定時間後の周辺ムラの発生の様子を観察した。
画面全体にムラやシミが発生するものをばつ(×)、一部が見えるものを三角(△)、ほとんど見えないものを丸(○)、全く異常が見られないものを二重丸(◎)とした。
誘電率異方性Δεが−4.5以下のものは、焼きつきやフリッカ値、光照射試験結果が非常に良好であった。
このように、本発明の液晶表示素子を用いることにより、より信頼性のよい高品質の液晶表示素子を得ることができた。
<比較例2>・・・ラジカル開始剤の低減
シール形成前までは、上述したと同様に行い、シール材料の条件変更を実施した。
ラジカル開始剤を0.08%、0.06%、0.05%、なしの条件で本発明の液晶表示素子を作成した。
液晶材料は、誘電率異方性Δεが−5、屈折率異方性Δnを0.13とし、液晶層の厚みであるセルギャップdを3.5μmに設定し、フレキ等でパッケージ外装をして画出しできるような液晶表示素子を作成し、下記評価を実施し、一般的な構成を有する従来例と比較することとした。表1および図14に結果を示す。なお、図14はラジカル開始剤量とフリッカとの関係を示す。
[評価]
(焼きつき)
70℃の投射型表示装置に本実施例の液晶表示素子を入れ、一松模様のパターンを8時間保持させた。
その後、ラスタパターンに切り替えて画質評価を行った。ランクは、一松模様のパターンがはっきり残っているものをばつ(×)、一部が残っているものを三角(△)、ほとんど見えないものを丸(○)、全く見えないものを二重丸(◎)とした。
(フリッカ値)
スペクトルアナライザーを用いて測定を行った。
なお、焼付き画像を見て、NG−OKのアンケートを50名に実施した。
その結果、フリッカ値14dB以上でNGと判断された。
図14からもわかるように、70℃における|Δε|=5.0の液晶で、ラジカル開始剤量を低減すると、焼付きレベルが低減する。
(光照射試験)
250WのUHPランプを備えた90℃の光照射試験装置に本発明の液晶表示素子を入れ、一定時間後の周辺ムラの発生の様子を観察した。
画面全体にムラやシミが発生するものをばつ(×)、一部が見えるものを三角(△)、ほとんど見えないものを丸(○)、全く異常が見られないものを二重丸(◎)とした。
誘電率異方性Δεが−4.5以下のものは、焼きつきやフリッカ値、光照射試験結果が非常に良好であった。
(接着強度)
実施例のシール剤をスライドガラスに定量塗布し、100mW/cmで60秒加圧硬化させ、その後130℃のオーブンで1時間焼成したサンプルをテンションゲージを用いて強度測定を行った。一般的な構成を有する従来例を1としたときの相対値を示した。
その後、60℃、90%の500時間の保存試験を実施し、再度強度測定を行った。
ラジカル開始剤が0.05wt%以下であれば、焼きつきやフリッカ値、光照射試験結果が非常に良好であることがわかった。
ラジカル開始剤を低減することによる接着強度の低下リスクは全くなかった。特に、ラジカル開始剤が0の場合でも問題はなかった。
カチオン開始剤が一定量導入されておれば十分な接着効果があることが明らかになった。
このように、本発明の液晶表示素子を用いることにより、より信頼性のよい高品質の液晶表示素子を得ることができた。
<比較例3>・・・相乗効果Δεの低減ラジカル開始剤の低減
シール形成前までは、上述したと同様に行い、シール材料の条件変更を実施した。
ラジカル開始剤をなしの条件、液晶材料は、誘電率異方性Δεが−3.5、屈折率異方性Δnを0.13とし、液晶層の厚みであるセルギャップdを3.5μmに設定し、フレキ等でパッケージ外装をして画出しできるような液晶表示素子を作成し、下記評価を実施し、一般的な構成を有する従来例と比較することとした。表1および図15に結果を示す。なお、図15は|Δε|とフリッカとの関係を示す。
[評価]
(焼きつき)
70℃の投射型表示装置に本実施例の液晶表示素子を入れ、一松模様のパターンを8時間保持させた。
その後、ラスタパターンに切り替えて画質評価を行った。ランクは、一松模様のパターンがはっきり残っているものをばつ(×)、一部が残っているものを三角(△)、ほとんど見えないものを丸(○)、全く見えないものを二重丸(◎)とした。
(フリッカ値)
スペクトルアナライザーを用いて測定を行った。
なお、焼付き画像を見て、NG−OKのアンケートを50名に実施した。
その結果、フリッカ値14dB以上でNGと判断された。
(光照射試験)
250WのUHPランプを備えた90℃の光照射試験装置に本発明の液晶表示素子を入れ、一定時間後の周辺ムラの発生の様子を観察した。
画面全体にムラやシミが発生するものをばつ(×)、一部が見えるものを三角(△)、ほとんど見えないものを丸(○)、全く異常が見られないものを二重丸(◎)とした。
誘電率異方性Δεが−4.5以下のものは、焼きつきやフリッカ値、光照射試験結果が非常に良好であった。
(接着強度)
実施例のシール剤をスライドガラスに定量塗布し、100mW/cmで60秒加圧硬化させ、その後130℃のオーブンで1時間焼成したサンプルをテンションゲージを用いて強度測定を行った。一般的な構成例(従来例)を1としたときの相対値を示した。
その後、60℃、90%の500時間の保存試験を実施し、再度強度測定を行った。
ラジカル開始剤の低減および誘電率異方性Δεの低減を組み合わせることで、全ての評価項目において良好な結果を得ることができた。
このように、本発明の液晶表示素子を用いることにより、より信頼性のよい高品質の液晶表示素子を得ることができた。
次に、上記の液晶表示素子を用いた電子機器の一例として、投射型液晶表示装置の構成について、図16の概略構成図に関連付けて説明する。
図16に示すように、投射型液晶表示装置(液晶プロジェクタ)300は、光軸Cにそって光源301と透過型の液晶表示素子302と投影光学系303とが順に配設されて構成されている。
光源301を構成するランプ304から射出された光はリフレクタ305によって後方に放射される成分が前方に集光され、コンデンサレンズ306に入射される。コンデンサレンズ306は、光をさらに集中して、入射側偏光板307を介し液晶表示素子302へ導く。
導かれた光は、シャッタもしくはライトバルブの機能を有する液晶表示素子302および射出がエア偏光板308により画像に変換される。表示された画像は、投影光学系303を介してスクリーン310上に拡大投影される。
なお、光源301とコンデンサレンズ306との間にはフィルタ314が挿入されており、光源に含まれる不用な波長の光、たとえば赤外光および紫外光を除去する。
次に、上記の液晶表示素子を用いた電子機器の一例として、投射型液晶表示装置の構成について、図17に関連付けて説明する。
図17に示す投射型液晶表示装置500は、上述した液晶表示素子を3個用意し、各々RGB用の液晶表示素子562R、562Gおよび562Bとして用いた投射型液晶装置の光学系の概略構成図を示す。
投射型液晶表示装置500は、光学系として、光源装置520と、均一照明光学系523が用いられている。
この均一照明光学系523から出射される光束Wを赤(R)、緑(G)、青(B)に分離する色分離手段である色分離光学系524と、各色光束R、G、Bを変調する変調手段である3つのライトバルブ525R、525G、525Bと、変調された後の色光束を再合成する色合成手段である色合成プリズム510と、合成された光束を投射面600の表面に拡大投射する投射手段である投射レンズユニット506とを備えている。さらに、青色光束Bを対応するライトバルブ525Bに導く導光系527を備えている。
均一照明光学系523は、2つのレンズ板521、522と反射ミラー531を備えており、反射ミラー531を挟んで2つのレンズ板521、522が直交する状態に配置されている。均一照明光学系523の2つのレンズ板521、522は、それぞれマトリクス状に配置された複数の矩形レンズを備えている。
光源装置520から出射された光束は、第1のレンズ板521の矩形レンズによって複数の部分光束に分割される。そして、これらの部分光束は、第2のレンズ板522の矩形レンズによって3つのライトバルブ525R、525G、525B付近で重なる。
したがって、均一照明光学系523を用いることにより、光源装置520が出射光束の断面内で不均一な照度分布を有している場合でも、3つのライトバルブ525R、525G、525Bを均一な照明光で照明することが可能となる。
各色分離光学系524は、青緑反射ダイクロイックミラー541と、緑反射ダイクロイックミラー542と、反射ミラー543から構成される。
まず、青緑反射ダイクロイックミラー541では、光束Wに含まれている青色光束Bおよび緑色光束Gが直角に反射され、緑反射ダイクロイックミラー542の側に向かう。赤色光束Rは、この青緑反射ダイクロイックミラー541を通過して、後方の反射ミラー543で直角に反射されて、赤色光束Rの射出部544からプリズムユニット510の側に射出される。
次に、緑反射ダイクロイックミラー542では、青緑反射ダイクロイックミラー541で反射された青色光束Bおよび緑色光束Gのうち、緑色光束Gのみが直角に反射されて、緑色光束Gの射出部545から色合成光学系の側に射出される。緑反射ダイクロイックミラー542を通過した青色光束Bは、青色光束Bの射出部546から導光系527の側に射出される。
ここでは、均一照明光学系523の光束Wの射出部から、色分離光学系524における各色光束の射出部544、545、546までの距離がほぼ等しくなるように設定されている。色分離光学系524の赤色光束Rの出射部544および緑色光束Gの出射部545の各射出側には、それぞれ集光レンズ551および集光レンズ552が配置されている。したがって、各射出部から射出した赤色光束R、緑色光束Gは、これらの集光レンズ551、集光レンズ552に入射して平行化される。
このように平行化された赤色光束Rおよび緑色光束Gは、それぞれライトバルブ525Rおよびライトバルブ525Gに入射して変調され、各色光に対応した画像情報が付加される。
すなわち、これらの液晶表示素子は、図示していない駆動手段によって画像情報に応じてスイッチング制御されて、これにより、ここを通過する各色光の変調が行われる。一方、青色光束Bは、導光系527を介して対応するライトバルブ525Bに導かれ、ここにおいて、同様に画像情報に応じて変調が施される。
なお、本例のライトバルブ525R、525G、525Bは、それぞれさらに入射側偏光板561R、561G、561Bと、これらの間に配置された液晶表示素子562R、562G、562Bとからなる液晶ライトバルブである。
導光系527は、青色光束Bと射出部546の射出側に配置した集光レンズ554と、入射側反射ミラー571と、射出側反射ミラー572と、これらの反射ミラーの間に配置した中間レンズ573と、ライトバルブ525Bの手前側に配置した集光レンズ553とから構成されている。
集光レンズ546から射出された青色光束は、導光系527を介して液晶表示素子562Bに導かれて変調される。各色光束の光路長、すなわち、光束Wの射出部から各液晶表示素子562R、562G、562Bまでの距離は青色光束Bが最も長くなり、したがって、青色光束の光量損失が最も多くなる。
しかし、導光系527を介在させることにより、光量損失を抑制することができる。各ライトバルブ525R、525G、525Bを通って変調された各色光束R、G、Bは、色合成プリズム510に入射され、ここで合成される。そして色合成プリズム510によって合成された光が投射レンズユニット506を介して所定の位置にある投射面600の表面に拡大投射されるようになっている。
なお、本発明は投射型の液晶表示素子だけでなく、反射型液晶表示素子、LCOS、有機EL、いずれの方式のデバイスに適用しても上述した効果が得られる。
また、駆動内蔵型の液晶装表示素子、駆動回路を外付けする形の液晶表示素子、対角1インチから15インチ程度あるいはそれ以上のさまざまなサイズの液晶表示素子、単純マトリクス方式、TFDアクティブマトリクス方式、パッシブマトリクス駆動方式、旋光モード、複屈折モードなど、いずれの方式の液晶表示素子に適用しても、上述した効果が期待できる。
以上説明したように、本実施形態によれば、マトリクス状の画素を形成すべく各基板11,12の対向する面に電極13,14が形成され、フレーム毎に各画素電極に印加する電圧を同一極性で反転させるフレーム反転駆動を行うアクティブマトリクス型液晶表示素子であって、二枚の基板11,12上には液晶を所定方向に配向させるための配向膜が形成されており、二枚の基板11,12が所定間隙で対向するようにシール材15で貼り合わされ、互いに対向して貼り合わされた一対の基板11,12間に垂直配向液晶層16が狭持され、液晶層16を形成する液晶材料は、屈折率異方性Δnとセルギャップdとの積として与えることが可能なリタデーションΔndの範囲が0.55μmより小さく、測定温度70℃における誘電率異方性Δεの範囲が−4.5から0未満であることから、以下の効果を得ることができる。
信頼性が大幅に向上にすることで、高画質化の実現ができる。また、高精細化に伴う、高屈折率異方性液晶による狭セルギャップによる配向異常の防止、高コントラスト、高速応答が実現できる。またプロジェクタ等の投射型LCDにおいては、長寿命化のほかに、ランプ高照射量可能による高輝度化を実現できること、パネル小型化もしくは有効画素領域拡大による高開口率化を実現できる利点がある。
焼きつきの発生の想定モデルの一例を示す図である。 本実施形態に係るアクティブマトリクス型液晶表示素子の概略構成を示す断面図である。 本実施形態に係るアクティブマトリクス型液晶表示素子のアレイ基板(液晶パネル部)における配置例を示す図である。 本実施形態に係るアクティブマトリクス型液晶表示素子のTFTアレイ基板側の具体的な構成例を示す断面図である。 誘電率異方性ΔεおよびK33の条件を変更させた場合の、電圧 対 透過率特性曲線を示す図であって、K33が10の場合の電圧対透過率特性曲線を示す図である。 誘電率異方性ΔεおよびK33の条件を変更させた場合の、電圧 対 透過率特性曲線を示す図であって、K33が15の場合の電圧対透過率特性曲線を示す図である。 誘電率異方性ΔεおよびK33の条件を変更させた場合の、電圧 対 透過率特性曲線を示す図であって、K33が20の場合の電圧対透過率特性曲線を示す図である。 誘電率異方性Δεと透過率が100%になる飽和電圧との関係を示す図である。 印加電圧=5VのときのΔεおよびK33の条件を変更させた場合の、波長550nmの緑(Green)色光におけるΔnd 対 透過率特性曲線を示す図である。 図9の特性から導き出せる誘電率異方性ΔεとリタデーションΔndとの関係を示す図である。 ピクセルピッチと配向乱れ、並びにセルギャップとの関係を示す図である。 比較例1における|Δε|とフリッカとの関係を示す図である。 フリッカ値の合格基準について示す図である。 ラジカル開始剤量とフリッカとの関係を示す図である。 比較例3における|Δε|とフリッカとの関係を示す図である。 本実施形態に係る投射型液晶表示装置の一例を示す概略構成図である。 本実施形態に係る3板式投射型液晶表示装置のより具体的な一例を示す構成図である。
符号の説明
10・・・液晶表示素子、11・・・TFTアレイ基板、12・・・対向基板、13・・・画素電極、14・・・対向電極、15・・・シール材、16・・・液晶層、46・・・スペーサ、21・・・画素表示領域、22・・・水平転送回路、23−1,23−2・・・垂直転送回路、24・・・プリチャージ回路、25・・・レベル変換回路、26・・・データ線、27・・・走査線、28・・・画素スイッチング用トランジスタ、29・・・液晶、30・・・補助容量(蓄積容量)、300,500・・・投射型液晶表示装置、301,520・・・光源、525R,525G,525B・・・ライトバルブ、303,506・・・投射光学系。

Claims (16)

  1. 配向膜が所定間隙で対向するようにシール材で貼り合わせた一対の基板間に液晶層が挟持された液晶表示素子であって、
    上記液晶層の材料は、測定温度70℃における誘電率異方性Δεの範囲が−4.5から0未満である
    液晶表示素子。
  2. 上記液晶層の液晶材料は、垂直配向型液晶であり、屈折率異方性をΔn、セルギャップをdとしたときのΔndの範囲が0.55μmより小さい
    請求項1記載の液晶表示素子。
  3. 上記液晶材料は、Δndの範囲が0.34μmから0.55μmであり、測定温度70℃における誘電率異方性Δεの範囲が−4.5から−2である
    請求項2記載の液晶表示素子。
  4. シール剤の母体100重量部に対して、光ラジカル重合開始剤の含有量は、0.05重量%未満である
    請求項1記載の液晶表示素子。
  5. シール剤の母体100重量部に対して、光ラジカル重合開始剤の含有量は、0.05重量%未満である
    請求項2記載の液晶表示素子。
  6. シール剤の母体100重量部に対して、光ラジカル重合開始剤の含有量は、0.05重量%未満である
    請求項3記載の液晶表示素子。
  7. 前記液晶表示素子は、フレーム毎に各画素電極に印加する電圧を同一極性で反転させるフレーム反転駆動を行うアクティブマトリクス型液晶表示素子である
    請求項2記載の液晶表示素子。
  8. 前記液晶表示素子は、フレーム毎に各画素電極に印加する電圧を同一極性で反転させるフレーム反転駆動を行うアクティブマトリクス型液晶表示素子である
    請求項5記載の液晶表示素子。
  9. 前記画素電極が設けられた液晶パネルは透過型の液晶パネルである
    請求項2記載の液晶表示素子。
  10. 前記液晶表示素子の画素ピッチは20μm以下である
    請求項2記載の液晶表示素子。
  11. 前記配向膜に無機配向膜を用いる
    請求項2記載の液晶表示素子。
  12. 光源と、
    少なくとも一つの液晶表示素子と、
    上記光源から出射された光を上記液晶表示素子に導く集光光学系と、
    上記液晶表示素子で光変調した光を拡大して投射する投射光学系と、を有し、
    上記液晶表示素子は、
    配向膜が所定間隙で対向するようにシール材で貼り合わせた一対の基板間に液晶層が挟持され、
    上記液晶層の材料は、測定温度70℃における誘電率異方性Δεの範囲が−4.5から0未満である
    投射型液晶表示装置。
  13. 上記液晶層の液晶材料は、垂直配向型液晶であり、屈折率異方性をΔn、セルギャップをdとしたときのΔndの範囲が0.55μmより小さい
    請求項12記載の投射型液晶表示装置。
  14. 上記液晶材料は、Δndの範囲が0.34μmから0.55μmであり、測定温度70℃における誘電率異方性Δεの範囲が−4.5から−2である
    請求項13記載の投射型液晶表示装置。
  15. シール剤の母体100重量部に対して、光ラジカル重合開始剤の含有量は、0.05重量%未満である
    請求項13記載の投射型液晶表示装置。
  16. 前記液晶表示素子は、フレーム毎に各画素電極に印加する電圧を同一極性で反転させるフレーム反転駆動を行うアクティブマトリクス型液晶表示素子である
    請求項13記載の投射型液晶表示装置。

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