JP2008055618A - フッ素ポリマーの印刷方法及び印刷物 - Google Patents
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Abstract
【課題】フッ素ポリマーからなる基体に対してインク層の撥きや剥がれを伴うことなくインク層を形成することができ、しかも、基体の伸長時にもインク層が追従できる印刷方法を提供すること。
【解決手段】フッ素ポリマーからなる基体にインクジェット法によりインクを印刷するとともに、そのフッ素ポリマーは、分子中のフッ素原子の一部が水素化されておりかつ280℃以下の融点を有しているように、また、インクは、紫外線の照射により硬化可能なインク組成物からなるように、構成する。
【選択図】図2
【解決手段】フッ素ポリマーからなる基体にインクジェット法によりインクを印刷するとともに、そのフッ素ポリマーは、分子中のフッ素原子の一部が水素化されておりかつ280℃以下の融点を有しているように、また、インクは、紫外線の照射により硬化可能なインク組成物からなるように、構成する。
【選択図】図2
Description
本発明は、印刷方法及びそれにより得られる印刷物に関し、さらに詳しく述べると、フッ素ポリマーからなる基体(被印刷物)に対してインク層の撥きや剥がれを伴うことなくインク層を形成することができ、しかも、基体の伸長時にもインク層が追従でき、剥離などの不具合を生じることがないような改良された印刷方法と、それにより得られる印刷物に関する。
フッ素ポリマーは、周知のとおり、耐熱性、耐薬品性、機械的強度などに優れており、いろいろな技術分野で広く使用されている。また、撥水性、撥油性などがあるにも係らず、かかるフッ素ポリマーからなる基体に印刷を行うこともかなり以前から試みられている。
例えば、特許文献1は、フッ素ポリマーをベースとする印刷インキ(ポリマーを溶媒中に含むエマルジョン)で、グラビア印刷、オフセット印刷、コーティング法などで、四フッ化系フッ素ポリマーフィルムに柄印刷面を形成した後、その柄印刷面を金属板の表面に接着層を介して貼り合せてなることを特徴とするフッ素ポリマーフィルム直貼り金属板を記載している。しかし、この発明の場合、柄印刷面の形成のために溶媒の除去とその後の高められた温度での定着工程が必要であり、工程が煩雑であり、各種の処理装置も必要であった。また、四フッ化系フッ素ポリマーフィルムも、高められた温度に耐えうる特定のもの、例えばテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体(ETFE)に限られていた。さらに、柄印刷層を金属板の表面に貼り合せるに当って、焼結設備も必要であった。
また、特許文献2は、ポリフッ化ビニル(PFV)、PTFE等のフッ素ポリマーに例えばグラビア印刷などによって印刷を行うものであって、インキ用バインダ樹脂組成物中にポリフッ化ビニリデン(A)とフッ化ビニリデンと他のフッ素モノマーを共重合してなる溶剤可溶なフッ素共重合体(B)とを併用してなることを特徴とするインキ組成物を記載している。しかし、この発明の場合にも、溶剤のための乾燥工程が必要である。
また、湿式エッチング処理を用いた印刷方法も知られている。例えば、特許文献3は、ケミカルエッチング処理されたフッ素ポリマー成形体の表面に、着色材料を混合したインクで所定の識別表示を、好ましくはバーコード印刷などの熱転写法で印刷する工程を含む識別表示体の製造法を記載している。印刷工程後、フッ素ポリマー成形体の表面に透明な樹脂のシートを積層した後、得られた積層体を金型で熱圧縮成形して融着する工程を含む。しかし、この発明の場合、湿式処理のために複雑な加工設備(排液処理設備を含む)が必要であり、着色化などの品質問題が存在し、さらには加熱圧縮工程も煩雑である。
さらに、フッ素ポリマーの本来の特徴である耐候性及び防汚性を生かす使用方法として、フッ素ポリマーが透明である場合には、フッ素ポリマーからなる基体の片面にそれに適当なインキで印刷を施した後、その基体の印刷面を下側に向けて配置すること(すなわち、基体の非印刷面を外部の雰囲気にさらすこと)がしばしば提案されている。具体的には、例えば特許文献4は、図1にその典型例を模式的に示すように、厚さ40μm程度のクリア単層フッ素ポリマーフィルム(PVDFポリマーフィルム)102の裏面にフッ素樹脂インク組成物を用いてグラビア印刷等により任意の意匠を印刷した印刷層103を形成してなることを特徴とする装飾用仕上げシート101を記載している。しかし、この仕上げシート101は、透明で薄く、破損し易いため、それをそのままコンクリートやモルタルに貼り付けるのに適していない。よって、通常、それを支持する肉厚のポリマーフィルムやその他の基体をさらに用意することが必要である。図1では、ポリマーフィルム104としてアクリルポリマーフィルムを用意してこれを接着剤又は粘着シートで貼付した後、下地のコンクリートや金属(図示せず)に貼り付ける手法を採用している。
したがって、本発明の目的は、上述のような従来技術の欠点を排除して、フッ素ポリマーの特徴を最大限に発揮できる方法、具体的には、フッ素ポリマーからなる基体に対してインク層の撥きや剥がれを伴うことなくインク層を形成することができ、しかも、基体の伸長時にもインク層が追従でき、剥離などの不具合を生じることがないような改良された印刷方法を提供することにある。
また、本発明のもう1つの目的は、インク層を備えたフッ素ポリマーからなる基体の印刷物であって、インク層の撥きや剥がれがなく、基体の伸長時にもインク層が追従でき、剥離などの不具合を生じることがないような印刷物を提供することにある。
本発明のこれらの目的やその他の目的は、以下の詳細な説明から容易に理解することができるであろう。
本発明は、その1つの面において、フッ素ポリマーからなる基体にインクジェット法によりインクを印刷する方法であって、
前記フッ素ポリマーは、その分子中のフッ素原子の一部が水素化されておりかつ280℃以下の融点を有していること、及び
前記インクは、紫外線の照射により硬化可能なインク組成物からなること
を特徴とするフッ素ポリマーの印刷方法にある。
前記フッ素ポリマーは、その分子中のフッ素原子の一部が水素化されておりかつ280℃以下の融点を有していること、及び
前記インクは、紫外線の照射により硬化可能なインク組成物からなること
を特徴とするフッ素ポリマーの印刷方法にある。
また、本発明は、そのもう1つの面において、フッ素ポリマーからなる基体と、その上にインクジェット法により印刷されたインク層とを含む印刷物であって、
前記フッ素ポリマーは、その分子中のフッ素原子の一部が水素化されておりかつ280℃以下の融点を有していること、及び
前記インクは、紫外線の照射により硬化可能なインク組成物からなること
を特徴とする印刷物にある。なお、分子中のフッ素原子の一部が水素化されているフッ素ポリマーは、以下、「部分水素化フッ素ポリマー」とも呼ぶ。
前記フッ素ポリマーは、その分子中のフッ素原子の一部が水素化されておりかつ280℃以下の融点を有していること、及び
前記インクは、紫外線の照射により硬化可能なインク組成物からなること
を特徴とする印刷物にある。なお、分子中のフッ素原子の一部が水素化されているフッ素ポリマーは、以下、「部分水素化フッ素ポリマー」とも呼ぶ。
本発明によれば、以下の詳細な説明から理解されるように、インクのなじみが悪いフッ素ポリマーからなる基体(被印刷物)に対してインク層を容易に形成することができる。インク層の形成に当って、紫外線硬化性インクを使用しているので、紫外線照射装置があれば容易に硬化させかつ基体に対して強固に付着させることができ、従来の印刷法におけるように、溶剤除去のための乾燥工程やインクの溶融定着工程が不要となる。また、基体についても、その表面の透明性や光沢性が損なわれることもなければ、黄ばんだり着色したりすることもない。
また、インク層は、基体からの撥きや剥がれを伴うことなく形成することができ、しかも、基体の伸長時にもインク層が追従でき、剥離などの不具合を生じることがない。さらに、基体に対するインク層の強固な結合は、使用中、安定に継続することができる。特に、従来の同様な印刷物では、通常の使用では一般に剥がれたりしないけれども、厳しい使用条件にさらされた場合には爪などで擦ったときなどには傷が付いたり剥がれたりするけれども、本発明の印刷物は、厳しい条件下で使用しても、インク層の傷つきや剥がれといった問題を解消することができる。
さらに、本発明で使用する基体はフッ素ポリマーからなるので、それに特有の特性、すなわち、耐熱性、耐薬品性、機械的強度、耐候性、防汚性、撥水性、撥油性などを生かして、印刷物を各種の利用分野で有利に使用することができる。また、インクの適用のためにインクジェット法を採用したことにより、微細なパターンを任意にかつ容易に印刷することができる。この印刷法によると、3次元曲面を含めたいろいろな表面形状の基体でも印刷できる上に、オンデマンドでデータ処理が可能なので、少品種多量生産はもちろんのこと、多品種少量生産も可能である。また、基体にあわせて色調や硬化後の硬度等のインクの種類の選択が可能である。さらには、家庭においても、所有するインクジェットプリンタを使用することで、満足のいく印刷物を形成することができる。
本発明の印刷物は、上記したようにいろいろな優れた特性を有しているので、インク層を最上層にして任意の被着体に貼付することができ、また、その被着体に3次元曲面がある場合でも、インク層の剥離を伴うことなく容易に貼付することができる。なお、使用する基体によってはインク層の引っ掻き傷や剥がれを生じるかもしれないが、そのような場合には、以下に説明するように、インク層を基体で覆うようにして、適当な被着体の表面に積層することができる。
本発明による印刷方法及びそれにより得られる印刷物は、それぞれ、いろいろな形態で有利に実施することができる。以下、好ましい形態を参照して本発明を説明するが、本発明は以下の形態に限定されるものではないことを理解されたい。
図2は、本発明による印刷物の好ましい1形態を示した断面図である。印刷物10は、図示される通り、部分水素化フッ素ポリマーからなる基体2と、その表面にインクジェット法により印刷したインク層3とを含んでいる。インク層3は、理解を容易にするために簡単に描画されているが、実際にはその印刷パターンが限定されることはなく、インク層3の厚さも、基本的には任意に変更可能である。また、図示の印刷物10は、湾曲した表面を有する被着体6に接着層5を介して貼付されているが、被着体6の種類、形状、サイズ等も、基本的には任意に変更可能である。なお、もしもインク層3が比較的に引っ掻き傷や剥離に弱いと考えられるようなときには、基体2を透明にして、インク層3を被着体6に貼付する方法を採用し、基体2を保護手段として機能させてもよい。
本発明において、被印刷物として用いられる基体は、従来印刷目的で一般的に使用されてきたフッ素ポリマーからなるのではなくて、特定のフッ素ポリマーからなっている。すなわち、本発明の実施において用いられるフッ素ポリマーは、その分子中のフッ素原子の一部が水素化されていること、及びその融点が280℃以下であることを特徴としている。
本発明の実施において、部分水素化フッ素ポリマーは、好ましくは、多元系のフッ素ポリマーであり、さらに好ましくは、二元系、三元系又は四元系のフッ素ポリマーである。このような多元系のフッ素ポリマーとしては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、例えば、THV系フッ素ポリマー、HTE系フッ素ポリマー、FEVE系フッ素ポリマー、PVDF系フッ素ポリマー、ETFE系フッ素ポリマーなどである。すなわち、これらの部分水素化フッ素ポリマーは、より詳細には、少なくともテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びビニリデンフルオライドを含む共重合体(THV系フッ素ポリマー)、少なくともヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン及びエチレンを含む共重合体(HTE系フッ素ポリマー)、少なくともフルオロオレフィン、シクロヘキシルビニルエーテル、アルキルビニルエーテル及びヒドロキシアルキルビニルエーテルを含む共重合体(FEVE系フッ素ポリマー)、少なくともビニリデンフルオライドを含む重合体及び共重合体(PVDF系フッ素ポリマー)、エチレン及びテトラフルオロエチレンを含む共重合体(ETFE系フッ素ポリマー)などを包含することができる。これらの部分水素化フッ素ポリマーは、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
FEVE系フッ素ポリマーは、フルオロオレフィン、シクロヘキシルビニルエーテル、アルキルビニルエーテル及びヒドロキシアルキルビニルエーテルを必須の構成成分として含むフッ素含有共重合体である。かかる共重合体において、フルオロオレフィン、シクロヘキシルビニルエーテル、アルキルビニルエーテル及びヒドロキシアルキルビニルエーテルは、それぞれ、40〜60モル%、5〜45モル%、3〜15モル%及び0〜30モル%である。フルオロオレフィンとしては、パーハロオレフィン、特にクロロトリフルオロエチレン又はテトラフルオロエチレンが使用される。また、フルオロオレフィン、シクロヘキシルビニルエーテル及びグリシジルビニルエーテルを必須の構成成分として含むフッ素含有共重合体もFEVE系フッ素樹脂の例である。
PVDF系フッ素ポリマーは、それがゴム(エラストマー系)である場合、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン及びプロピレンの共重合体からなるフッ素ゴム、フッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンの共重合体からなるフッ素ゴム、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン及びテトラフルオロエチレンの共重合体からなるフッ素ゴムなどを包含する。また、それが樹脂系である場合、PVDF系フッ素フッ素ポリマーは、フッ化ビニリデン重合体、フッ化ビニリデン及びテトラフルオロエチレンの共重合体などを包含する。
本発明の実施にとりわけ有用な部分水素化フッ素ポリマーは、THV系フッ素ポリマー、特に、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)及びビニリデンフルオライド(VdF)を少なくとも含む多元系フッ素ポリマーである。かかる多元系フッ素ポリマーは、典型的には、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)及びビニリデンフルオライド(VdF)からなる二元系フッ素ポリマーや、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)及びビニリデンフルオライド(VdF)からなる三元系フッ素ポリマーである。とりわけTHV系フッ素ポリマーは、耐水性、絶縁性、耐紫外線分解性といった特性に特に優れている。
上述の二元系もしくは三元系フッ素ポリマーにおいて、そのフッ素ポリマーのTFE、HFPおよびVdFの組成比は、広い範囲で変更することができる。かかる部分水素化フッ素ポリマーの組成比は、例えば、約36〜72重量%のTFE、約0〜56重量%のHFP及び約30〜65重量%のVdFであることが好ましい。
THV系フッ素ポリマーは、例えば米国ダイニオン社(Dyneon)からTHVシリーズとして商業的に入手可能である。使用可能なTHVの一例を示すと、THV220、THV415、THV500などを挙げることができる。ここで、THVの後の三桁の数字は、部分水素化の程度の目安として考慮することができ、この数字が小さくなればなるほど、部分水素化の程度も増加している。下記の第1表は、典型的なTHV系フッ素ポリマーについて、その融点範囲及び伸び(破断点)をまとめたものである。なお、これら及びその他のTHV系フッ素ポリマーの諸特性は、ダイニオン社の技術資料に詳細に記載されている。
本発明において被印刷物として使用される部分水素化フッ素ポリマーは、いろいろな融点を有することができるが、好ましくは、約280℃以下の融点を有し、さらに好ましくは、約110〜230℃の融点を有する。部分水素化フッ素ポリマーの融点がこのように比較的低い範囲にあるため、本発明の印刷方法は、高い温度での処理(もしもあれば)に悩まされることがなく、得られる印刷物の使用においても同様である。
また、部分水素化フッ素ポリマーの分子量は、広い範囲で変更することができるが、通常、約10,000もしくはそれ以上である。部分水素化フッ素ポリマーの分子量は、好ましくは、約50,000以上であり、さらに好ましくは、約50,000〜約1,000,000の範囲である。部分水素化フッ素ポリマーの分子量がこのように高分子量であると、成形体における機械的特性がより良好に発現される。
基体、すなわち、被印刷物は、それが上記したような部分水素化フッ素ポリマーからなる限り、いろいろな形態で使用することができる。特に本発明ではインクジェット印刷法を使用してインク層を形成するので、被印刷物は、フィルム、シート、平板などの平滑な表面を有する基体はもちろんのこと、3次元曲面等の複雑な表面を有する基体も包含する。好ましくは、被印刷物は、フィルムあるいはシートの形態をとり、その厚さは少なくとも10μmである。フィルム状あるいはシート状被印刷物の厚さは、通常、約15μm〜10mmである。本発明の場合、被印刷物をこのように比較的に厚くしても、印刷特性やその他の性質に悪影響がでることはない。また、被印刷物は、そのままで使用してもよいけれども、必要ならば、インク層が形成されるべき表面に任意の表面処理が施されていてもよい。適当な表面処理は、例えば、下塗り層、化学的エッチング処理などである。これらの表面処理は、慣用の手法を使用して実施できる。
被印刷物は、常用の手法を使用して上述のような任意の形状、例えばシートや3次元立方体などを形成することができる。一般的にはカレンダー成形法、射出成形法等のプラスチック成形法が有利であるが、必要に応じてその他の方法を使用してもよい。例えば、成形法を例にとると、THV系フッ素ポリマー等の部分水素化フッ素ポリマーは、一般にペレット、ビーズ、粉末などの形態で入手可能であるので、これらの出発原料の適当量を溶剤に溶解した後に成形するか、さもなければ、溶融させて成形し、固化させてもよい。部分水素化フッ素ポリマーを溶解する溶剤は、特に限定されるものではなく、例えばケトン系溶剤、エステル系溶剤、フラン系溶剤、極性溶媒などを包含する。また、出発原料には、必要に応じて、任意の添加剤を含ませることができる。適当な添加剤としては、例えば、可塑剤、成形助剤、着色剤などを挙げることができる。
本発明の実施には、インクジェット法を印刷手段として使用する。インクジェット法は、いろいろな表面形状のものに対して簡便に任意のパターンのインク層を形成することができるうえに、オンデマンドでデータ処理が可能なので、少品種多量生産も多品種少量生産も可能である。また、被印刷物に合わせて、色調や硬化後の硬度等も、インク組成物の種類の選択を通じて容易に可能である。インクジェット法は、周知の通り、インクジェットプリンタのノズルから、ピエゾ素子等の振動によりインク組成物をオンデマンドで液滴の状態で被印刷物に向けて吐出し、印刷するものである。インクジェットプリンタの構成及び使用は、印字の分野において広く知られているので、本明細書での詳細な説明を省略することとする。なお、必要ならば、例えば高橋恭介監修「インクジェットプリンタの応用と材料」(株)シーエムシー出版、などの文献を参照されたい。
また、本発明の実施には、インクジェット法を印刷手段として使用するするとともに、インクジェット法及び上記した部分水素化フッ素ポリマーからなる基体と相性のよいインクを使用することが必要である。かかるインクは、少なくとも、インクジェット法により噴射可能でありかつ紫外線の照射により硬化可能なインク組成物からなることが必要である。このような特定のインク組成物を使用することによって、印刷が簡単になるとともに、従来の印刷法で必要であった印刷工程後の溶剤除去及びインク硬化のための乾燥工程、インク層の定着工程などを省略することができる。ここで使用するインク組成物には溶媒を使用する必要がないので、インク層の硬化及び定着には、使用した紫外線硬化性インク組成物に適合した紫外線照射装置があればよく、また、紫外線照射量もインク組成物に応じて任意に変更可能である。
本発明で使用する紫外線硬化性インク組成物は、上記した条件が満たされるかぎり特に限定されるものではない。しかし、インクジェット法を使用するため、その粘度は一般的に約13mPa.sもしくはそれ以下であることが好ましい。インク組成物の粘度が13mPa.sよりも高くなると、ヘッドノズルから吐出することが困難となる。インク組成物の粘度は、好ましくは、約10mPa.s以下である。また、形成されるインク層の層厚(硬化後の層厚)は、広い範囲で変更しうるというものの、通常、約1〜80μmの範囲であり、さらに好ましくは、約10〜60μmの範囲である。必要なら、80μmを上回る厚さでインク層を形成してもよい。
次いで、本発明の実施に有利に使用しうる紫外線硬化性インク組成物について説明する。紫外線硬化性インク組成物は、例えば、瞬間的な硬化とそれによる生産性の向上、微細なパターン印刷の可能性、プラスチック、金属等の被吸収性材料に対する良好な印刷性、強固な印刷層に由来する優れた耐摩擦性、耐ブロッキング性、耐溶剤性など、その他の長所を挙げることができるが、これらの長所に限定されるものではない。
紫外線硬化性インク組成物は、一般に2つの反応機構にもとづいて硬化可能である。すなわち、印刷後のインク層は、インク組成物の組成に応じて、ラジカル重合により硬化する場合と、カチオン重合により硬化する場合とがあるが、本発明のインク組成物は、両者を包含する。例えば、ラジカル重合によるインク層の硬化は、次のようなメカニズムで進行する。
(1)重合反応の開始
例えばベンゾフェノンのような光重合開始剤の存在下、紫外線を照射する。光重合開始剤が紫外線を吸収し、励起状態を経て開始剤ラジカルとなる。
(2)成長反応による分子量の増大
生成した開始剤ラジカルが紫外線硬化性化合物のモノマー、オリゴマー、プレポリマー等に付加し、成長ラジカルとなる。さらに、この成長ラジカルが別のモノマー、オリゴマー、プレポリマー等に連鎖的に反応し、分子量の増大が図られる。
(3)連鎖移動反応
成長ラジカルは、さらに、例えば光重合開始剤、モノマー、オリゴマー、プレポリマー等の他の化学種と反応し、別のラジカルを生成する。
(4)硬化の完了
開始ラジカルと成長ラジカルが結合したり両者間で電子のやりとりが行われる結果、一連の反応が停止し、よって、紫外線硬化性化合物において目的とする硬化反応が完了する。
例えばベンゾフェノンのような光重合開始剤の存在下、紫外線を照射する。光重合開始剤が紫外線を吸収し、励起状態を経て開始剤ラジカルとなる。
(2)成長反応による分子量の増大
生成した開始剤ラジカルが紫外線硬化性化合物のモノマー、オリゴマー、プレポリマー等に付加し、成長ラジカルとなる。さらに、この成長ラジカルが別のモノマー、オリゴマー、プレポリマー等に連鎖的に反応し、分子量の増大が図られる。
(3)連鎖移動反応
成長ラジカルは、さらに、例えば光重合開始剤、モノマー、オリゴマー、プレポリマー等の他の化学種と反応し、別のラジカルを生成する。
(4)硬化の完了
開始ラジカルと成長ラジカルが結合したり両者間で電子のやりとりが行われる結果、一連の反応が停止し、よって、紫外線硬化性化合物において目的とする硬化反応が完了する。
紫外線硬化性インク組成物は、通常、紫外線硬化性化合物及び光重合開始剤をもって構成され、任意に添加剤を含有することができる。適当な添加剤としては、例えば、増感剤、着色剤などを挙げることができる。それぞれの成分は、各成分の性状などに応じて最適な比率で配合し、インク組成物とすることができる。例えば、光重合開始剤は、紫外線硬化性化合物に対して約1〜20重量%の量で添加することができる。
紫外線硬化性化合物は、いろいろな化合物を包含する。例えば、ラジカル重合性の好適な紫外線硬化性化合物は、(メタ)アクリレートであり、この(メタ)アクリレートは、単官能性であってもよく、多官能性であってもよい。また、これらの(メタ)アクリレートは、単独で使用してもよく、2種以上の(メタ)アクリレートを組み合わせて使用してもよい。多官能性の(メタ)アクリレートをとりわけ有利に使用することができる。
単官能性の(メタ)アクリレートは、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、グリシジル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニロキシエチルなどの置換基を有する(メタ)アクリレートを包含する。
また、多官能性の(メタ)アクリレートは、例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキルリン酸(メタ)アクリレートを包含する。
さらに、光重合開始剤は、例えば、上記したベンゾフェノンのほか、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドなど、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン及び2−メチル1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンなど、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィドなどを包含する。
さらに、増感剤は、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミン及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどを包含する。
さらにまた、着色剤は、好ましくは顔料を包含する。顔料は、有機顔料が好ましく、必要に応じて無機顔料を使用もしくは併用してもよい。有機顔料の例としては、例えば、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、ジオキサンジン系、ジケトピロロピロール系などを挙げることができる。通常、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(B)の各プロセスカラーが用いられる。また、無機顔料の例としては、例えば、カーボンブラック、チタンホワイト、シリカ、マイカ、酸化亜鉛などを挙げることができる。
上記したような紫外線硬化性インク組成物を部分水素化フッ素ポリマーからなる基体にインクジェット印刷した後、得られた未硬化のインク層に紫外線を照射してインク層を硬化させる。ここで使用する紫外線照射装置は、市販のものでよく、その構造や使用条件なども特に限定されるものではない。本発明の実施に当っては、紫外線照射装置の仕様に従い、未硬化のインク層の組成や厚さなどに応じて使用条件などを任意に変更することができる。例えば、紫外線照射装置の光源としては、高圧水銀ランプ、金属ハライドランプ、ブラックライト、冷陰極管、LEDなどを挙げることができる。紫外線の照射エネルギーは、通常数百mJ/cm2であり、かつ照射時間は、通常、数秒間である。
本発明の印刷物は、いろいろな形状をもった被着体に貼付して使用することができる。例えば、図2に示して先に説明したように、曲面をもった被着体に貼付してもよく、平面をもった被着体に付着してもよい。特に本発明の印刷物は、印刷物の基体を伸ばしてもインク層が剥離することが避けられ、かつ曲面に対する追従性も良好であるので、複雑な形状を有する被着体に対して有利に適用することができる。被着体の素材は、特に限定されるものではなく、したがって、プラスチック類、例えばアクリル樹脂、ポリエステル等、金属類、例えば鋼板、銅板、ステンレス板等、ガラス、コンクリート、モルタル、木材、その他を包含する。このような被着体に印刷物を貼付するに当っては、任意の接着剤あるいは粘着剤、例えば感圧粘着剤又は感熱接着剤、例えばアクリル系粘着剤、エポキシ系接着剤等を使用することができる。具体的な用途としては、例えば、屋上サイン、壁面サイン、ウインドサイン、自動車マーキング、鉄道マーキングなどを挙げることができる。
本発明の印刷物では、より好ましくは、その基体を構成する部分水素化ポリマーとして、ETFE、PVDF、HTE、THVなどを使用できることを上記した。これらの部分水素化フッ素ポリマーは、以下の実施例で説明するように、爪によるスクラッチもされ難く、粘着テープによるスナップテストでも剥がれないからである。また、これらの完全フッ素化されていない熱可塑性のフッ素ポリマーのなかでは、水素の割合の多いものほどインクの密着性が良好であるとの知見を得ており、とりわけTHVが有用である。
本発明において、別法によれば、すなわち、使用するフッ素ポリマーの種類によっては、図2のものとは対照的に、基体を最上層にもってきて、インク層の支持体の機能に追加して保護膜としての機能を合わせて奏するように構成することも可能である。例えば、PTFE、変性PTFE、PFA、FEPなどの完全フッ素化されたフッ素ポリマーの場合には、それを基体として使用して紫外線硬化性インク組成物をインクジェット印刷した場合、インク層の硬化後においてそのインク層が剥がれやすい傾向を避けることができない。この欠点を補うため、得られた印刷物を反転させて、基体を最上層にもってくることが推奨される。
引き続いて、本発明をその実施例を参照して説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものでないことは言うまでもない。なお、本実施例では、基体に対するインク層の密着性を、(1)スコッチテープスナップテスト及び(2)爪による引っ掻きテストの2試験方法によって下記の手順及び評価基準に従って評価した。
(1)スコッチテープスナップテスト
供試印刷物を形成した後、1週間の経過後、供試印刷物のインク層にカッターナイフで下地の基体に達する合計25個の碁盤目の切り込み(2mm角)を入れた。次いで、柔軟で粘着力が適当な粘着テープ、スコッチ(登録商標)シーリング・マスキングテープ(サイズ:30mm×10mm、商品名「2479H」、住友スリーエム社製)を貼付し、その後ただちにその一端から剥がし、剥がした後のインク層の状態(碁盤目がどの程度残っているか否か)を目視により観察し、インク層の残留率(%)を記録した。なお、残留部分が1つの碁盤目よりも小さいときには、目測で面積を案分した。下記の第2表に評価基準を示す。
供試印刷物を形成した後、1週間の経過後、供試印刷物のインク層にカッターナイフで下地の基体に達する合計25個の碁盤目の切り込み(2mm角)を入れた。次いで、柔軟で粘着力が適当な粘着テープ、スコッチ(登録商標)シーリング・マスキングテープ(サイズ:30mm×10mm、商品名「2479H」、住友スリーエム社製)を貼付し、その後ただちにその一端から剥がし、剥がした後のインク層の状態(碁盤目がどの程度残っているか否か)を目視により観察し、インク層の残留率(%)を記録した。なお、残留部分が1つの碁盤目よりも小さいときには、目測で面積を案分した。下記の第2表に評価基準を示す。
(2)爪による引っ掻きテスト
供試印刷物を形成した後、そのまま放置した。1週間の経過後、供試印刷物のインク層の表面を爪の先で引っ掻き、インク層に剥離があるか否かを目視により評価し、記録した。下記の第2表に評価基準を示す。
供試印刷物を形成した後、そのまま放置した。1週間の経過後、供試印刷物のインク層の表面を爪の先で引っ掻き、インク層に剥離があるか否かを目視により評価し、記録した。下記の第2表に評価基準を示す。
実施例1
下記の第3表に記載したように、部分水素化フッ素ポリマー及び完全フッ素化フッ素ポリマーからなるフィルム(A4サイズ)を基体として用意した。それぞれのフッ素ポリマーフィルムの表面の全体にインクジェット印刷した。本例で使用したインクジェットプリンタは、商品名「Vutek PressVu UV200W+」(Vutek社製)であり、また、紫外線硬化性インク組成物は、PRESS VU UV200/600シリーズインク(Inkware社製)であった。インクジェット印刷により形成されたインク層に露光装置からの紫外線を照射量170mJ/cm2で照射したところ、目的とする供試印刷物が得られた。
下記の第3表に記載したように、部分水素化フッ素ポリマー及び完全フッ素化フッ素ポリマーからなるフィルム(A4サイズ)を基体として用意した。それぞれのフッ素ポリマーフィルムの表面の全体にインクジェット印刷した。本例で使用したインクジェットプリンタは、商品名「Vutek PressVu UV200W+」(Vutek社製)であり、また、紫外線硬化性インク組成物は、PRESS VU UV200/600シリーズインク(Inkware社製)であった。インクジェット印刷により形成されたインク層に露光装置からの紫外線を照射量170mJ/cm2で照射したところ、目的とする供試印刷物が得られた。
それぞれの供試印刷物において、基体に対するインク層の密着性を、(1)スコッチテープスナップテスト及び(2)爪による引っ掻きテストによって上記した手順により評価した。下記の第3表に記載する結果が得られた。
上記第3表の評価結果から理解できるように、水素原子を含まないフッ素ポリマーであるTF1750(PTFE)、TFM1700(変性PTFE)、PFAxxxx、FEP6307はいずれも、悪い密着性を示した。しかし、水素原子を含むフッ素ポリマーであるET6235(ETFE)、HTExxxx、THVxxxは、水素原子を含まないフッ素ポリマーに比較して明らかに向上した密着性を示した。特に、THVは、xxxで表される数字が減少するほど水素原子の割合がフッ素原子に比べて多くなっていると考えられるが、水素原子の含有率が高くなればなるほど、密着性が向上していることがわかる。とりわけ、THV221は、通常の樹脂である対照のPETとほとんど変わらない良好な密着性を示していることがわかる。
実施例2
前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、下記の第4表に記載したように、部分水素化フッ素ポリマー及び完全フッ素化フッ素ポリマーからなるフィルムならびに塩化ビニルフィルム及びアクリル樹脂フィルムを基体として用意した。また、紫外線硬化性インク組成物は、商品名「ピエゾインクジェットインク2295 UV」(3M社製)であった。インクジェット印刷及び紫外線照射により目的とする供試印刷物が得られた。それぞれの供試印刷物において、基体に対するインク層の密着性を、(1)スコッチテープスナップテスト及び(2)爪による引っ掻きテストによって上記した手順により評価した。下記の第4表に記載する結果が得られた。
前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、下記の第4表に記載したように、部分水素化フッ素ポリマー及び完全フッ素化フッ素ポリマーからなるフィルムならびに塩化ビニルフィルム及びアクリル樹脂フィルムを基体として用意した。また、紫外線硬化性インク組成物は、商品名「ピエゾインクジェットインク2295 UV」(3M社製)であった。インクジェット印刷及び紫外線照射により目的とする供試印刷物が得られた。それぞれの供試印刷物において、基体に対するインク層の密着性を、(1)スコッチテープスナップテスト及び(2)爪による引っ掻きテストによって上記した手順により評価した。下記の第4表に記載する結果が得られた。
上記第4表の評価結果から理解できるように、水素原子を含まないフッ素ポリマーでは、結果に変化は見られないけれども、水素原子を含むフッ素ポリマーでは、全体的に密着度が増加していることがわかる。使用する紫外線硬化性インク組成物の改良で、密着性をさらに向上させ得たことがわかる。また、THVのような柔軟なフッ素ポリマー、具体的にはTHV200では、得られた供試印刷物を無理やり引き伸ばしても、インク層における剥離はほとんど認められなかった。この事実から、本発明の印刷物は、印刷後においても成形加工が可能であるということがわかる。
実施例3
前記実施例2に記載の手法を繰り返したが、本例では、下記の第5表に記載したように、2種類のPVDFフィルム(いずれも3M社製)を基体として用意した。また、紫外線硬化性インク組成物は、商品名「ピエゾインクジェットインク2295 UV」(3M社製)であった。インクジェット印刷及び紫外線照射により目的とする供試印刷物が得られた。それぞれの供試印刷物において、基体に対するインク層の密着性を、(1)スコッチテープスナップテスト及び(2)爪による引っ掻きテストによって上記した手順により評価した。下記の第5表に記載する結果が得られた。
前記実施例2に記載の手法を繰り返したが、本例では、下記の第5表に記載したように、2種類のPVDFフィルム(いずれも3M社製)を基体として用意した。また、紫外線硬化性インク組成物は、商品名「ピエゾインクジェットインク2295 UV」(3M社製)であった。インクジェット印刷及び紫外線照射により目的とする供試印刷物が得られた。それぞれの供試印刷物において、基体に対するインク層の密着性を、(1)スコッチテープスナップテスト及び(2)爪による引っ掻きテストによって上記した手順により評価した。下記の第5表に記載する結果が得られた。
上記第5表の評価結果から理解できるように、PVDFフィルムを紫外線硬化性インク組成物と組み合わせて使用した場合に、PVDFフィルムが塩素原子を含んでいると、塩素原子を含んでいないPVDFフィルムに比較して、印刷がし易くなることがわかる。
比較例1
本例では、比較のため、通常のインクジェット用溶剤インクでフッ素ポリマーからなる基体に印刷することを想定して実験を行った。なお、本例で使用したフッ素ポリマーは、THV220、TFM1705及びPVDF31508/0003の3種類であった。
本例では、比較のため、通常のインクジェット用溶剤インクでフッ素ポリマーからなる基体に印刷することを想定して実験を行った。なお、本例で使用したフッ素ポリマーは、THV220、TFM1705及びPVDF31508/0003の3種類であった。
それぞれの基体の表面にインクジェット用溶剤インク、商品名「J5730(ライトマゼンタ)」(3M社製)を一滴たらし、そのまま乾燥させた。1日後、乾燥後のインク層を拭き取り紙で擦り、除去可能であるか否かを目視により観察した。その結果、次のような結果が得られた。
THV220:
インク層が完全に拭き取れたので、溶剤タイプのインクジェットインクでは印刷できないことがわかる。
TFM1705:
インク層が完全に拭き取れたので、溶剤タイプのインクジェットインクでは印刷できないことがわかる。
PVDF31508/0003:
インク層が拭き取れなかったので、溶剤タイプのインクジェットインクでも印刷できることがわかる。
インク層が完全に拭き取れたので、溶剤タイプのインクジェットインクでは印刷できないことがわかる。
TFM1705:
インク層が完全に拭き取れたので、溶剤タイプのインクジェットインクでは印刷できないことがわかる。
PVDF31508/0003:
インク層が拭き取れなかったので、溶剤タイプのインクジェットインクでも印刷できることがわかる。
上記した結果からわかるように、通常の溶剤タイプのインクジェットインクでは、フッ素ポリマーからなる基体には印刷できないが、フッ素ポリマーがPVDF31508/0003のように塩素原子を含有しているものであれば、印刷可能であることがわかる。
2 基体
3 インク層
5 接着層
6 被着体
10 印刷物
3 インク層
5 接着層
6 被着体
10 印刷物
Claims (8)
- フッ素ポリマーからなる基体にインクジェット法によりインクを印刷する方法であって、
前記フッ素ポリマーは、その分子中のフッ素原子の一部が水素化されておりかつ280℃以下の融点を有していること、及び
前記インクは、紫外線の照射により硬化可能なインク組成物からなること
を特徴とするフッ素ポリマーの印刷方法。 - 前記インク組成物は溶剤を含まないことを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
- 前記部分水素化フッ素ポリマーは、少なくともテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びビニリデンフルオライドを含む共重合体(THV系フッ素ポリマー)、少なくともヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン及びエチレンを含む共重合体(HTE系フッ素ポリマー)、少なくともフルオロオレフィン、シクロヘキシルビニルエーテル、アルキルビニルエーテル及びヒドロキシアルキルビニルエーテルを含む共重合体(FEVE系フッ素ポリマー)、少なくともビニリデンフルオライドを含む重合体及び共重合体(PVDF系フッ素ポリマー)ならびにエチレン及びテトラフルオロエチレンを含む共重合体(ETFE系フッ素ポリマー)からなる群から選ばれた一員であることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷方法。
- 前記部分水素化フッ素ポリマーは、少なくともテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びビニリデンフルオライドを含む共重合体(THV系フッ素ポリマー)又は少なくともヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン及びエチレンを含む共重合体(HTE系フッ素ポリマー)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷方法。
- フッ素ポリマーからなる基体と、その上にインクジェット法により印刷されたインク層とを含む印刷物であって、
前記フッ素ポリマーは、その分子中のフッ素原子の一部が水素化されておりかつ280℃以下の融点を有していること、及び
前記インクは、紫外線の照射により硬化可能なインク組成物からなること
を特徴とする印刷物。 - 前記インク層が最上層で露出していることを特徴とする請求項5に記載の印刷物。
- 前記基体が最上層にあり、透明もしくは半透明であり、かつ前記インク層を該基体を介して透視可能であることを特徴とする請求項5に記載の印刷物。
- 3次元曲面を備えた被着体に貼付されることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の印刷物。
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JP2006231781A JP2008055618A (ja) | 2006-08-29 | 2006-08-29 | フッ素ポリマーの印刷方法及び印刷物 |
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JP6870128B1 (ja) * | 2020-01-30 | 2021-05-12 | 住友化学株式会社 | フッ素樹脂封止剤及びその製造方法 |
JP2021512809A (ja) * | 2018-01-27 | 2021-05-20 | ヘリオソニック ゲーエムベーハー | レーザー印刷プロセス |
US11932041B2 (en) | 2018-03-12 | 2024-03-19 | Heliosonic Gmbh | Laser printing process |
-
2006
- 2006-08-29 JP JP2006231781A patent/JP2008055618A/ja active Pending
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