JP2008052966A - メタルキーシート用積層材、メタルキーシートおよびメタルキーパッド - Google Patents

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Abstract

【課題】エッチング加工により抜き文字等を形成することができるメタルキーシート用積層材、デザインの自由度が高い抜き文字等が形成されたメタルキーシート、および簡易な方法により製造することができるメタルキーパッドを提供する。
【解決手段】情報端末機器の入力ボタン部に使用されるメタルキーシート用積層材であって、該積層材の表面側より金属板10と、該金属板に熱接着された樹脂シート20とを備えるものとし、該樹脂シート20をポリウレタン系樹脂により構成する。
【選択図】図3

Description

本発明は、メタルキーシート用積層材、メタルキーシート、およびメタルキーパッドに関する。特に、携帯電話機等の情報端末機器の入力ボタン部に使用されるメタルキーシート用積層材、メタルキーシート、およびメタルキーパッドに関する。
特許文献1には、携帯電話機等の情報端末機器の入力ボタン部に使用される部材として、合成樹脂製シートキーが記載されている。
また、近年では、同様の部材としてメタルキーシートが存在する(特許文献2)。メタルキーシートとしては、金属板単体からなるものと、金属板に接着剤層を介在させてPET等の合成樹脂シートを積層したものがあり、金属板を使用しているため、高級感を兼ね備えることができ、同時に薄膜化をはかることができる。
また、メタルキーシートには、押圧部が形成され、それぞれの押圧部には抜き文字が形成されている。該抜き文字は、例えば、情報端末機器の内部光源から放出される光をこの抜き文字から表出させて、暗所においても抜き文字を視認できるようにして、暗所における操作を可能とするという機能を有するものである。
特開2005−032622号公報 特開2006−156333号公報
メタルキーシートの一般的な構成を図1(a)に示す。メタルキーシート200は、複数の押圧部60と、該複数の押圧部を区切る区切部40、および、該押圧部60に形成された抜き文字50を備えて構成される。特許文献2においては、抜き文字50(表示部)および区切部40(仕切り溝)の形成を打ち抜きにより行っている(0015段落、0036段落)。打ち抜きで行うということは、樹脂シートと積層する前の金属板単体に対して、打ち抜きを行い、抜き文字50および区切部40を形成するということである。このため、例えば、図2(a)に示したように、数字の6を打ち抜きで形成しようとした場合、全周に溝が形成された部分Aは、他の部分と隔離されてしまい、該部分Aは脱離してしまう。従って、図2(b)に示すように、隔離部分を生じさせないように、金属板を部分的につなげてデザインする必要があった。このため、デザインや装飾面において限界が生じていた。
この点においては、特許文献2においても同様であって、特許文献2の図17に表示部の拡大図が示されているように、隔離部分が生じないようにデザインされている。また、図1、図12〜16に示してあるように、数字4、6、8、9、0、♯においては、隔離部分が生じないように、部分的につなげた構成としている。
また、特許文献2においては、あくまで、打ち抜きにより抜き文字および区切部を形成した操作板をベースシートに貼り付けて形成するものであるため、これらは、しっかりと固着できるように接着剤により固着される(段落0042)。本発明においては、上記のデザイン性を改善するために、金属板と樹脂シートとの積層板に対してエッチングを行い抜き文字および区切部を形成するものであるが、金属板と樹脂シートとが接着剤を用いて固着されていたのでは、エッチング時に接着部分が溶解して、上記の全周に溝が形成された部分A等が剥離してしまう等の問題が生じるおそれがあった。特許文献2は、エッチングを採用した場合のこのような問題については、なんら考慮されていないものである。
また、従来のメタルキーシートでは、金属板とキーパッド材料であるシリコーンゴムとの接着が難しいため、例えば、金属板の裏面にPET等の樹脂フィルムを接着剤等で積層した後に、樹脂フィルムとキーパッドである材料であるシリコーンゴムとを接着剤を介して接着している。よって、より簡易な方法により製造することができるメタルキーパッドが求められていた。
そこで、本発明は、上記課題を解決すべく、エッチング加工により抜き文字等を形成することができるメタルキーシート用積層材、デザインの自由度が高い抜き文字等が形成されたメタルキーシート、および簡易な方法により製造することができるメタルキーパッドを提供することを課題とする。
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、これにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
第1の本発明は、情報端末機器の入力ボタン部に使用されるメタルキーシート用積層材であって、該積層材の表面側より金属板(10)と、該金属板に熱接着された樹脂シート(20)とを備え、該樹脂シート(20)がポリウレタン系樹脂からなる、メタルキーシート用積層材(100)である。「情報末端機器」とは、例えば、携帯電話、PDA、携帯音楽プレーヤー、携帯ゲーム機等をいう。
第1の本発明のメタルキーシート積層材は、表面が金属板により形成されているので、積層材を薄層とすることができると共に、デザイン性および入力ボタン部のクリック感を優れたものとすることができる。また、金属板と樹脂シートとが熱接着されているので、エッチング加工において金属板と樹脂シートとが剥離することがなく、以下において示すメタルキーシートを作成するのに好適である。
第2の本発明は、第1の本発明のメタルキーシート用積層材(100)、および、該積層材の金属板(10)に対してエッチング加工を施すことで形成された抜き文字(50)および区切部(40)を備え、該区切部(40)が押圧部(60)を形成している、メタルキーシート(200)である。
第2の本発明のメタルキーシートは、上記積層材の金属板に対してエッチング加工を施して、抜き文字等を形成するものである。この時、金属板の裏面には樹脂シートが積層されており、この樹脂シートが金属板の支持体となっている。よって、例えば、全周に溝が形成された隔離部分を有するような抜き文字を形成したとしても、該隔離部分を脱落させずに保持することができ、メタルキーシートのデザインの幅を広げることができる。
第2の本発明のメタルキーシート(200)は、所定の輪郭(70)に打ち抜くことにより形成することができる。例えば、一枚の第1の本発明の積層材を母材として、この母材に複数個のメタルキーシートを配置して、エッチング加工をまとめて行い。最後に打ち抜き工程を行うことによって、複数個のメタルキーシートを、一度のエッチング加工により同時に製造することができる。
第3の本発明は、第2の本発明のメタルキーシート(200)、および、該メタルキーシートの樹脂シート(20)側に積層されたキーパッド(30)とを備えた、メタルキーパッド(300)である。第3の本発明のメタルキーパッドは、樹脂シートを介してキーパッドが金属板に積層されている。このため、抜き文字あるいは区切部から外部に露出しているのは樹脂シートであって、キーパット表面は樹脂シートにより保護されている。例えば、キーパッドをシリコーンゴムにより形成した場合、該シリコーンゴムからなるキーパッドが長時間、皮膚と接触していると、キーパッドが皮脂により変色するという問題がある。また、シリコーンゴム自体が耐傷性が低いという問題がある。本発明のメタルキーパッドは、樹脂シートを介在させることによって、このような問題を解決するものである。
また、第3の本発明において、キーパッド(30)は、ゴム前駆体を該メタルキーシート(100)の樹脂シート(20)側に接触させた状態で、硬化させることにより形成されたものであることが好ましい。この場合、接着剤を塗布しなくてもキーパッドを接着させることができるので、工程の簡略化を図ることができる。
第3の本発明において、樹脂シート(20)は区切部(40)の溝を埋める凸部を形成していることが好ましい。区切部は金属板の端部であり、操作時に指が該金属板の端部に触れると、指を切る等の怪我をするおそれがある。樹脂シートにより上記凸部を形成することによって、この問題を防ぐことができる。また、このような凸部は、例えば、上記のキーパッドの形成時において、メタルキーシートを暖めておいて、この状態でゴム前駆体を射出し、硬化させることにより、キーパッドと同時に形成することができる。
第4の本発明は、金属板(10)にポリウレタンからなる樹脂シート(20)を熱接着する工程、該金属板にエッチング加工を施して、抜き文字(50)および区切部(40)を形成する工程を備え、該区切部(40)が押圧部(60)を形成している、メタルキーシート(200)の製造方法である。
第5の本発明は、金属板(10)にポリウレタンからなる樹脂シート(20)を熱接着する工程、該金属板にエッチング加工を施して、抜き文字(50)および区切部(40)を形成する工程、および、ゴム前駆体を樹脂シート(20)側に接触させた状態で、硬化させることによりキーパッド(30)を形成する工程を備え、該区切部(40)が押圧部(60)を形成している、メタルキーパッド(300)の製造方法である。
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
<メタルキーシート用積層材>
図3(a)に、本発明のメタルキーシート用積層材100の層構成の概念図を示す。本発明のメタルキーシート積層材100は、表層側に金属板10を備え、この金属板10に樹脂シート20が積層されて構成されている。
(金属板10)
金属板10としては、アルミニウム板、ステンレス鋼板、洋白、銅板、真鍮、ニッケル鋼板等を使用することができる。中でも、薄くても剛性、クリック感を得やすいばね用のステンレス鋼板、ばね用の洋白を使用することが好ましい。
金属板10の厚みは、50〜200μmであり、好ましくは100〜180μmである。50μm以上であれば、操作時の押圧に耐えうる強度が得られる。200μm以下であれば、操作時のクリック感が出やすい。
また、樹脂シート20との密着性を向上させる目的で、金属板10にあらかじめクロメート処理、金属メッキ処理等を施してもよく、外観の意匠性を高める目的で、ヘアライン処理などの表面処理を施してもよい。
(樹脂シート20)
樹脂シート20としては、接着剤を用いなくてもキーパッド30と接着してメタルキーパッド300を形成することができることから、ポリウレタン系樹脂からなる樹脂シートであることが好ましい。
ポリウレタン系樹脂は、例えば、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物とを常法に従って反応させることにより製造される。ポリヒドロキシ化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリテトラメチレンセバケート、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、グリセリン等が挙げられる。
また、ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールエタンの付加物などが挙げられる。
樹脂シート20の厚みとしては、強度および加工上の点から、必要最低限の厚さであればよく、30〜200μmであることが好ましく、30〜100μmであることがより好ましい。
金属板10と樹脂シート20との接着は、公知の熱接着法で接着させることができる。熱接着法としては、金属板10を200〜350℃の加熱炉に通し、表面温度を100〜290℃に制御した状態で、樹脂シート20を加熱された金属板10に積層して、加圧ロールで押圧する方法、あるいは、加熱前の金属板10と樹脂シート20とを積層して、金属板10の表面が100〜290℃になるように加熱金属ロールで押圧しながら接着する方法、がある。また、樹脂シート20と金属板10との密着性を向上させる目的で、金属板10にシランカップリング剤等で表面処理を施しておいても良い。
このように本発明のメタルキーシート用積層材100においては、金属板10と樹脂シート20とを接着剤を用いないで、熱接着により接着している。このため、以下において説明するメタルキーシート200を製造する際におけるエッチング加工において、金属板10と樹脂シート20とが剥がれてしまうおそれがない。よって、樹脂シート20を支持体として、金属板10にエッチング加工して自由に抜き文字等をデザインすることができる。
以上説明したメタルキーシート用積層材100は、以下において説明するメタルキーシート200およびメタルキーパッド300に形成され、例えば、図1(a)に示すような携帯電話機等の情報端末機器の入力ボタン部として使用される。
<メタルキーシート200>
図3(b)に、本発明のメタルキーシート200の概念図を示す。図3(b)は、図1(a)の点線X部分の断面を模式的に示したものである。本発明のメタルキーシート200は、上記のメタルキーシート用積層材100にエッチング加工を施すことで形成された抜き文字50および区切部40を備えて構成される。また、エッチング加工の後に、抜き文字50および区切部40を含む所定の輪郭70に打ち抜くことによって、図1(a)に示すような携帯電話等の情報末端機器の入力ボタン部として使用するメタルキーシート200とすることができる。
(抜き文字50、区切部40)
区切部40は、金属板10を貫通してなる溝である。図1(a)においては、該区切部40により舌片状の押圧部60が形成されている。区切部40の形状は、舌片状の押圧部60を形成するものであれば特に限定されず、図1(a)に示すような、舌片状の押圧部60が上向、下向に交互に形成されるような、折れ線形状であってもよいし、また舌片の角部分が曲線となるような曲線形状であってもよい(図1(b))。
区切部40の幅は0.2〜3mmとすることが好ましい。区切部40の幅が広すぎると、表面から下層の樹脂シート20が見える部分が多くなり、外観が損なわれる場合がある。また、区切部40の幅が狭すぎると、以下において説明する下層の樹脂シート20に凸部を形成して区切部40を埋めるのが難しくなる。
抜き文字50は、押圧部60に形成される表示文字である。情報端末機器の入力ボタン部においては、通常、各押圧部60に割当てられた数字、アルファベット、記号等が、抜き文字50として押圧部60に形成される。従来のメタルキーシートにおいては、単層の金属板に対して、打ち抜き工程により抜き文字を形成していたので、例えば「○」等を形成しようとする場合、打ち抜いて形成した溝によって囲まれた中央部が脱離してしまうという問題があった。よって、従来においては、これを防ぐために、○の一部に切欠きを形成して、中央部が一部において外部とつながるようにして形成していた。このように、従来においては、抜き文字のデザインにおいて制限が課せられており、自由なデザインおよびより複雑なデザインを形成する際の障害となっていた。
本発明は、以下において説明するエッチング工程により抜き文字50を形成できる積層材100とすることにより、このような問題を解決したものであり、数字、アルファベットに限らず、ひらがな、漢字、記号等の複雑な形状であっても、抜き文字50として形成することができる。
(エッチング加工)
抜き文字50および区切部40は、エッチング加工により形成される。エッチング加工としては、処理効率、経済性の点から、ウエットエッチングにより行うことが好ましいが、使用する金属板10の種類、または形成する抜き文字50の複雑さによっては、ドライエッチングを採用してもよい。また、ウエットエッチングの処理方法としては、エッチング液を満たした容器内にメタルキーシート積層材100を浸すディップ式を採用するのが、簡便であるので好ましいが、処理効率等の点から、メタルキーシート積層材100にエッチング液を吹きつけるスプレー式、回転台に積層材100を取り付けて、エッチング液を滴下するスピン式を採用することもできる。
エッチング加工の具体例としては、金属板10の表面における抜き文字50および区切部40以外の部分にマスキングを行い、エッチング液に浸漬して、マスキング以外の部分(抜き文字50および区切部40の部分)の金属を溶解して、マスキングパターンと同様の形状に金属板10を加工し、その後、中和処理、リンス洗浄を行った後に、乾燥するとう方法を挙げることができる。エッチング液としては、例えば、酸性塩化第二鉄液等を用いることができる。
マスキングとしては、フォトリソグラフィーの技術を用いることができる。具体的には、全面にフォトレジストを塗布した後、所定のパターンを露光、現像し、抜き文字50および区切部40を形成する部分のみにレジストの開口部を形成することにより行うことができる。
(打ち抜き)
打ち抜き工程では、メタルキーシートの輪郭を所定の形状に打ち抜く。製作するメタルキーシートに対応する所定の金型および一般的な打ち抜き装置を用いて行うことができる。なお、この打ち抜き工程は、以下において説明するキーパッド30を形成してメタルキーパッド300としてから行ってもよく、製造の順序は特に限定されない。
本発明のメタルキーシート200を製造する際には、一枚のメタルキーシート用積層材100に対して複数のメタルキーシート200を割り当てて、これらを同時にエッチング加工に施し、その後、各メタルキーシート200に打ち抜くことによって、複数のメタルキーシート200を同時に形成することができる。
また、場合によっては、プレス成形工程が行われる。これにより、例えば、メタルキーシートに所定の絞り加工、折り曲げ加工等を施したりすることができる。プレス成形は、公知の冷間プレス成形により行うことができる。また、抜き型および曲げ型等を組み合わせて上記打ち抜き加工とプレス加工を同時に行ってもよい。
<メタルキーパッド300>
図3(c)および(d)に、本発明のメタルキーパッド300の概念図を示した。本発明のメタルキーパッド300は、上記の本発明のメタルキーシート200、および、該メタルキーシート200の樹脂シート20側に積層されたキーパッド30を備えて構成される。
(キーパッド30)
キーパッド30は、ゴム前駆体をメタルキーシート200の樹脂シート20側に接触させた状態で硬化させることにより形成することができる。キーパッド30を形成する材料としては、例えば、シリコーンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、等の弾性に優れ、耐久性に良好な材料を用いることができる。この中でも、加工性(加工歩留まりが高い)の点からシリコーンゴムを用いることが特に好ましい。
メタルキーシート200と、キーパッド30とは公知の方法で接着することができる。第1の方法は、メタルキーシート200の樹脂シート20とキーパッド30とを接着剤により接着する方法である。第2の方法は、メタルキーシート200を金型上に配置し、そこにキーパッド材料であるゴム前駆体を射出し、硬化させると同時に樹脂シートと接合させる方法である。接着剤層を省略できる点で、第二の方法の方が好ましい。
また、第二の方法においては、射出させる際に、あらかじめメタルキーシート200を加熱しておくことで、ゴム前駆体の射出時に樹脂シート20が伸び、区切部40を埋めることができる(図3(d))。
キーパッド材料としては、シリコーンゴムを用いることが特に好ましいが、この場合、ゴム前駆体としては、液状シリコーンゴム組成物を用いる。液状シリコーンゴム組成物としては、反応性基を有する液状ポリオルガノシロキサン、架橋剤および/または硬化触媒を主剤とする、常温で液状またはペースト状の組成物であり、常温で放置または加熱する硬化してゴム状弾性体になるものである。液状シリコーンゴム組成物の硬化温度は、80〜200℃、好ましくは130〜170℃である。80℃未満では液状シリコーンゴムの硬化に長時間を要し、200℃を超えるとスコーチの原因となる。
液状シリコーンゴムは、その硬化機構によって、付加反応型、ラジカル反応型、縮合反応型が挙げられるが、硬化の際に水分が関与せず、本発明の硬化条件で良好な成形体が得られることから、付加反応型またはラジカル反応型が好ましく、ポリウレタン層との間に優れた接着性が得られ、しかも加熱によって速い硬化速度が得られ、硬化の均一性に優れることから、付加反応型液状シリコーンゴム組成物が特に好ましい。
このような付加反応型液状シリコーンゴム組成物は、代表的には、(a)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン;(b)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン;および(c)白金化合物を含み、かつ、(a)成分と(b)成分の反応によって網状の分子骨格を形成するために、(a)成分の1分子あたりのアルケニル基の数、および(b)成分の1分子あたりのケイ素原子に結合した水素原子の数のうち少なくともいずれか、好ましくは後者が、平均2を越える数であり、射出成形品に適した優れた硬化性と物性のゴム状弾性体を与えるために、さらに好ましくは平均3以上であるような組成物である。
液状シリコーンゴムを用いたポリウレタン樹脂で被覆されたシリコーンゴム成形体および製造方法については、特開平8−118417に記載されており、本発明のキーパッド30は、該方法に基づいて形成することができる。
(実施例1)
コイル状の150μm厚のSUS304(H材)の片面に、アミノシランと界面活性剤の濃度がそれぞれ、0.3%、0.05%となるように調製した水溶液をコーターロールによって塗布し、290℃の加熱炉を通過させて、表面温度が230℃になるように制御した状態で、厚み50μmのポリウレタンシートを貼り合わせて、メタルキーシート用積層材を得た。
得られたメタルキーシート用積層材の金属板側の、抜き文字、区切部以外の部分にマスキングし、酸性塩化第二鉄水溶液(濃度40%、温度40℃)に浸漬させ、金属板の抜き文字、区切部を除去し、その後、アルカリ性液中に浸漬し中和、マスキングの剥離を行い、リンス洗浄を行った。その後、ギアオーブンで130℃で15分乾燥させ、打ち抜き加工、プレス成形を行い、図1(a)に示すような12個の舌片部を有するメタルキーシートを得た。なお、プレス成形においては、メタルキーシートの周囲に情報末端機器の筐体と組み合わせるための段差を形成した。
両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100部、ポリメチルハイドロジェンシロキサン1.1部、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン4部、および白金−ポリメチルビニルシロキサン錯体をポリジメチルシロキサンに対して10ppmになる量を添加し、キーパッド材料となるシリコーンゴム組成物を得た。次に得られたメタルキーシートを150℃に加熱した金型上に配置し、上述のシリコーンゴム組成物を射出し、150℃で加熱を行い、シリコーンゴム組成物の固化を行うとともに、メタルキーシートの樹脂面とキーパッドとの接着を行い、メタルキーパッドを得た。
(比較例1)
コイル状の150μm厚のSUS304(H材)の片面に、ポリエステル系接着剤を塗布して、厚み50μmのポリウレタンシートを貼り合わせて、積層材を得た。そして、実施例1と同じ方法で、メタルキーシートを作製し、メタルキーシートとキーパッドとを接着してメタルキーパッドを作製した。
(比較例2)
コイル状の150μm厚のSUS304(H材)を巻き出し、280℃の加熱炉を通し、表面温度を200℃に制御した状態で、50μmの片面易接着PETシートを易接着面が金属側に接するように張り合わせ、積層材を得た。そして、実施例1と同じ方法で、メタルキーシートを作製し、メタルキーシートとキーパッドとを接着してメタルキーパッドを作製した。
上記の実施例および比較例で作製したメタルキーシート、メタルキーパッドに対して、以下に示す評価を行った。それぞれの評価結果を表1に示す。
(耐エッチング性評価)
実施例1、比較例1、比較例2のメタルキーシートをそれぞれ20個作成し、抜き文字の評価を目視で行なった。さらに、65℃、90%RHの環境下で96時間放置し、腐食の有無を目視で確認した。
○:腐食、剥離が目視で確認できなかった。
×:腐食、剥離が目視で確認できた。
(シリコーンゴムとの接着性評価)
実施例1、比較例1、比較例2のメタルキーシートにシリコーンゴムを上記方法で接着した幅2cmの試験片をそれぞれ5個作成し、65℃、90%RHの環境下で96時間放置したのち、引張試験機を用いて、引張速度10mm/分の条件で、180°ピーリング試験を行った。
○:ポリウレタンとシリコーンゴムとの界面で剥離が生じず、シリコーンゴムの凝集破壊が生じた。
×:ポリウレタンとシリコーンゴムとの界面で剥離が生じた。
(区切部の埋め戻し評価)
実施例1、比較例1、比較例2のメタルキーパッドをそれぞれ20個作製し、区切部が樹脂で埋められており、シリコーン樹脂がポリウレタン、もしくはPETで覆われていることを目視で確認した。
○:区切部が樹脂で満たされており、その表面がポリウレタン、もしくは、PETで覆われていた。
×:区切部が樹脂で満たされていなかった、もしくは、シリコーンゴムが表層に露出していた。
Figure 2008052966
実施例1においては、全数において、抜き文字の溝で囲まれた隔離部分の剥離は確認されなかった。腐食も目視では確認されなかった。シリコーンゴムとの接着性評価では、シリコーンゴム層の凝集破壊を生じた。このことより、ポリウレタンシートとシリコーンゴム界面が強固に接着していることがわかった。区切部は樹脂で埋められており、ポリウレタンシートがシリコーンゴム表層を覆っていることが全数において、確認された。
比較例1においては、20個中9個において、抜き文字の隔離部分の剥離が確認された。また、抜き文字周辺では、腐食と思われる変色がみられた。この腐食は、接着剤層にエッチング液が浸透し、洗浄してもエッチング液が接着剤層に残ってしまうため生じたものと考えられる。シリコーンゴムとの接着性評価では、シリコーンゴム層の凝集破壊を生じた。このことより、ポリウレタンシートとシリコーンゴム界面が強固に接着していることがわかった。区切部は樹脂で埋められており、ポリウレタンシートがシリコーンゴム表層を覆っていることが全数において、確認された。
比較例2においては、全数において、抜き文字の隔離部分の剥離は確認されなかった。腐食も目視では確認されなかった。シリコーンゴムとの接着性評価では、65℃、90%RHの環境下で96時間放置した後においては、20個中2個でシリコーンゴムの自然剥離が見られた。また、ピーリング試験ではPETシートとシリコーンゴム界面で剥離が生じ、接着が不十分であることが分かった。区切部は、樹脂で埋められているものの、PETシートが変形に追従できずに破断し、シリコーンゴムが表面に露出していた。
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うメタルキーシート用積層材、メタルキーシート、メタルキーパッド、メタルキーシートの製造方法、メタルキーパッドの製造方法、もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
本発明のメタルキーシートの一実施形態の平面図である。 (a)は本発明のメタルキーシートに形成できる抜き文字の例である。(b)は従来のメタルキーシートに形成されていた抜き文字の例である。 (a)はメタルキーシート用積層材の層構成を示す断面図である。(b)はメタルキーシートの断面図である。(c)および(d)はメタルキーパッドの断面図である。
符号の説明
10 金属板
20 樹脂シート
30 キーパッド
40 区切部
50 抜き文字
60 押圧部
70 所定の輪郭
100 メタルキーシート用積層材
200 メタルキーシート
300 メタルキーパッド

Claims (9)

  1. 情報端末機器の入力ボタン部に使用されるメタルキーシート用積層材であって、該積層材の表面側より金属板と、該金属板に熱接着された樹脂シートとを備え、該樹脂シートがポリウレタン系樹脂から構成されている、メタルキーシート用積層材。
  2. 請求項1に記載のメタルキーシート用積層材、および、該積層材の前記金属板に対してエッチング加工を施すことで形成された抜き文字および区切部を備え、該区切部が押圧部を形成している、メタルキーシート。
  3. 所定の輪郭に打ち抜かれて形成された、請求項2に記載のメタルキーシート。
  4. 請求項2または3に記載のメタルキーシート、および、該メタルキーシートの前記樹脂シート側に積層されたキーパッドを備えた、メタルキーパッド。
  5. 前記キーパッドが、ゴム前駆体を前記メタルキーシートの前記樹脂シート側に接触させた状態で、硬化させることにより形成されたものである、請求項4に記載のメタルキーパッド。
  6. 前記キーパッドが、液状シリコーンゴム組成物を前記メタルキーシートの前記樹脂シート側に接触させた状態で、硬化させることにより形成されたシリコーンゴム製のキーパッドである、請求項4に記載のメタルキーパッド。
  7. 前記樹脂シートが区切部の溝を埋める凸部を形成している、請求項5または6に記載のメタルキーパッド。
  8. 金属板にポリウレタン系樹脂からなる樹脂シートを熱接着する工程、
    該金属板にエッチング加工を施して、抜き文字および区切り部を形成する工程を備え、
    該区切部が押圧部を形成している、メタルキーシートの製造方法。
  9. 金属板にポリウレタン系樹脂からなる樹脂シートを熱接着する工程、
    該金属板にエッチング加工を施して、抜き文字および区切り部を形成する工程、および、
    ゴム前駆体を前記樹脂シート側に接触させた状態で、硬化させることによりキーパッドを形成する工程を備え、
    該区切部が押圧部を形成している、メタルキーパッドの製造方法。
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