JP2008050033A - 包装材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリパラキシリレン誘導体膜を用いることにより、充分なガスバリア性を有し、かつ良好な外観を有した樹脂包装材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸を主材料とする包装材本体と、この包装材本体を被覆する式(1)で表されるポリパラキシリレン誘導体膜とからなる樹脂包装材である。ポリ乳酸を主材料とする包装材本体に、CVD蒸着法を用いてポリパラキシリレン誘導体膜を被覆形成することを特徴とする樹脂包装材の製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は包装材およびその製造方法に関し、特に生分解性とガスバリア性とを有した包装材およびその製造方法に関する。
従来各種包装材として紙、プラスチック、金属などが用いられている。紙は、安価ではあるが強度、耐久性、耐水性など点での問題がある。金属は、耐久性や強度などの性能は良いが、加工が困難であることや透明性に問題がある。
プラスチックでは、環境保全の見地から、生分解性を有する樹脂が最近注目を浴びており、中でもポリ乳酸は、透明性が良く、大量生産可能で低コストであることから、有用性が高い樹脂である。しかしポリ乳酸は、ガスバリア性が低く、用途が制限されるという問題点がある。
ポリ乳酸のガスバリア性を高める方法として、例えば非特許文献1では、特定のアンモニウムイオンで有機化処理した膨潤性層状珪酸塩を樹脂100質量%に対して7.5質量%と多量に用いることで、酸素透過係数が54 ml・mm/m・day・MPaまで下がることが報告されている。しかし、これによって得られた樹脂は、アンモニウムイオンの影響により着色を生じることや、膨潤性層状珪酸塩としてのクレイの分散不良による外観の不良が起こるという問題点がある。
また、特許文献1、特許文献2にあるように、プラスチックの表面にDLC(Diamond Like Carbon)膜などの硬質炭素の薄膜を形成する技術が知られている。硬質炭素膜は、炭素間のSP結合を主体としたアモルファスな炭素である。これをポリ乳酸に適用した場合、ガスバリア性には優れていることがわかったが、茶色に着色するために外観に問題点が残った。
さらに、特許文献3では、酸化ケイ素(SiO)などのセラミック薄膜をCVD法により蒸着した生分解性プラスチック容器が提案されている。特に酸化珪素膜は外観も良く、酸素に対するガスバリア性にも非常に優れている。これをポリ乳酸に応用した場合には、良好な外観と酸素に対する高いガスバリア性が得られるが、水蒸気に対するバリア性は低かった。また、これらのDLC膜や酸化ケイ素膜は硬くて脆いという問題点があった。
高分子論文集、2002年59号12巻760〜766頁 特開平8−053116号公報 特開2001−018290公報 特開2002−068201号公報
上述したように、従来知られている技術では、充分なガスバリア性を有し外観に優れた包装材を簡便に得る手法は提供されていない。
そこで、本発明の目的は、ポリパラキシリレン誘導体膜を用いることにより、充分なガスバリア性を有し、かつ良好な外観を有した樹脂包装材およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリ乳酸を50質量%以上含有した生分解性脂肪族ポリエステルを材料とする樹脂包装材に、ポリパラキシリレン誘導体膜をCVD法により被覆することにより、優れたガスバリア性と良好な外観を有したものとすることができることを見出した。
すなわち本発明の要旨は、次のとおりである。
(i)ポリ乳酸を主材料とする包装材本体と、この包装材本体を被覆する式(1)で表されるポリパラキシリレン誘導体膜とからなる樹脂包装材。
Figure 2008050033
(ii)包装材本体はポリ乳酸を50質量%以上含有していることを特徴とする(i)の樹脂包装材。
(iii)ポリ乳酸を主材料とする包装材本体に、CVD蒸着法を用いて、式(1)で表されるポリパラキシリレン誘導体膜を被覆形成することを特徴とする樹脂包装材の製造方法。
Figure 2008050033
(iv)包装材本体はポリ乳酸を50質量%以上含有していることを特徴とする(iii)の樹脂包装材の製造方法。
本発明によれば、ガスバリア性に優れることで、各種内容物を収容するための優れた保存性を有する包装材を得ることができると共に、使用後に埋め立て処分などを施すことで環境中の微生物により分解され、このため環境に配慮した生分解性の樹脂包装材を、簡便に得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂包装材を構成する包装材本体は、ポリ乳酸を主材料とするものである。なかでも、ポリ乳酸を50質量%以上含有することが好ましい。ポリ乳酸の含有量は、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。ポリ乳酸の含有量が減ることは、環境への負荷も大きくなる。
包装材本体の主成分であるポリ乳酸としては、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)、およびこれらの混合物または共重合体を挙げることができる。このポリ乳酸は、通常公知の溶融重合法、あるいは必要に応じてさらに固相重合法を併用して、製造される。
包装材本体は、主成分であるポリ乳酸以外の生分解性樹脂を、構成材料の一部とすることができる。このような生分解性樹脂としては、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート−co−ブチレンアジペート)などに代表される、ジオールとジカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル;ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3−ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(3−ヒドロキシカプロン酸)などのポリヒドロキシカルボン酸;ポリ(ε−カプロラクトン)やポリ(δ−バレロラクトン)に代表されるポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)などが挙げられる。さらに、ポリ(ブチレンサクシネート−co−ブチレンテレフタレート)やポリ(ブチレンアジペート−co−ブチレンテレフタレート)の他、ポリエステルアミド、ポリエステルカーボネート、澱粉などの多糖類も、得られる樹脂包装材の物性、生分解性を損なわない程度に入っていても構わない。これらの成分は、1種でも2種以上用いてもよく、共重合されていてもよい。また、主成分であるポリ乳酸に単に混合されていてもよいし、共重合されていてもよい。さらに樹脂包装材の特性を損なわない限り、ポリアミド(ナイロン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸エステル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸エステル)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナノフタレート、ポリカーボネイト、およびそれらの共重合体などの非生分解性樹脂を添加してもよい。
本発明の樹脂包装材は、ポリ乳酸を主材料とする包装材本体がポリパラキシリレン誘導体膜で被覆されているものであるが、このポリパラキシリレン誘導体膜は、下記一般式(1)で表されるものである。
Figure 2008050033
一般的な薄膜形成方法としては、CVD法、スパッタリング法、スプレーコーティング法などがあるが、本発明におけるポリパラキシリレン誘導体膜はCVD法により成膜される。
成膜は下記化学式に示す化学反応に基づき行われる。下記の化学式において、ジパラキシリレン誘導体(I)が減圧下加熱により気化され、気化されたジパラキシリレン誘導体(I)は高温で熱分解され、キシリレンラジカル(II)を生じる。生成したキシリレンラジカル(II)が被着体表面で重合し、ポリパラキシリレン誘導体膜(III)を形成する。
Figure 2008050033
CVD法では被着体に熱がかからないという長所がある。
ポリパラキシリレン誘導体膜の形成に先立って、密着性を改善するために、包装材本体の表面に、カップリング処理、プラズマ処理、オゾン処理等を施してもよいが、ポリ乳酸を主材料とする包装材本体の場合には、特別な前処理を施さなくても十分な密着性が得られるという長所がある。
ポリパラキシリレン誘導体膜として、前述のX、Xが水素であるポリパラキシリレン膜;X、Xの両方あるいは一方がアルキル基である、例えば、Xが水素、Xがメチル基であるポリモノメチルパラキシリレン膜;X、Xの両方あるいは一方がハロゲンである、例えばXが水素、Xが塩素であるポリモノクロロパラキシリレン膜;X、Xが塩素であるポリジクロロパラキシリレン膜など、多くのものが存在する。なかでも、工業的に多く用いられているのは、ポリパラキシリレン膜、ポリモノクロロパラキシリレン膜、およびポリジクロロパラキシリレン膜である。
ポリパラキシリレン誘導体膜は、塩素の増加につれて膜の耐熱性が向上する。このため、ポリジクロロパラキシリレン膜は、ポリパラキシリレン誘導体膜の中で耐熱性グレードとして位置づけられている。
ポリパラキシリレン誘導体膜の厚みは、0.1μm以上かつ30.0μm以下であることが好ましい。30.0μmを超えると光透過性が低下しやすくなり、0.1μm未満であるとガスバリア性が低下しやすくなる。
本発明の包装材本体を構成する樹脂には、本発明の目的を大きく損なわない限りにおいて、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、末端封鎖剤、可塑剤、結晶核剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、充填材等を添加することも可能である。熱安定剤や酸化防止剤としては、たとえば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物を使用することができる。末端封鎖剤としては、カルボジイミド基、イソシアネート基、エポキシ基などを有する化合物を挙げることができ、それらを単独または2種類以上併用して使用してもよい。滑剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、オレフィン系ワックスなどが挙げられる。充填材としては、無機充填材と有機充填材とが挙げられる。このうち、無機充填材としては、タルク、層状珪酸塩、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。有機充填材としては、ケナフ、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品等が挙げられる。
なお、包装材本体を構成する樹脂に上記の熱安定剤、酸化防止剤、可塑剤、充填材等を混合する方法は、特に限定されない。
本発明において、樹脂から包装材本体を成形する方法としては、特に限定されず、公知の成形方法を採用することができる。たとえば、フィルム成形、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形などが挙げられる。また、シート成形後に真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の深絞り成形を行う方法なども挙げられる。これによって、種々の成形品を作製することができる。下記に、包装材本体を成形する場合の好ましい条件等を記載する。
フィルム成形法は、特に限定されるものではなく、例えば、Tダイ法、インフレーション法、チューブラー延伸法、カレンダー法等が挙げられるが、Tダイを用いて溶融混練して押出すTダイ法が好ましい。
フィルム成形の際には未延伸フィルムを2軸延伸することが好ましいが、その方法としては、縦方向に延伸した後に横方向に延伸処理する逐次2軸延伸法、または縦横同時に延伸処理を行う同時2軸延伸法のいずれでもよい。延伸温度は、特に限定されるものではないが、樹脂のガラス転移温度をTgとして、Tg〜Tg+50℃の範囲であることが好ましい。得られた延伸フィルムは、引き続いて、延伸のためのテンター内において100℃〜150℃の温度で熱処理が施され、必要に応じて弛緩処理が施される。
射出成形法としては、一般的な射出成形法のほか、ガス射出成形、射出プレス成形等も採用できる。射出成形時のシリンダ温度は、原料の樹脂の融点(Tm)または流動開始温度以上とし、好ましくは140〜230℃、さらに好ましくは160〜220℃の範囲である。成形温度が低すぎると、成形体にショートが発生したりして成形が不安定になったり、過負荷に陥りやすくなる。逆に成形温度が高すぎると、樹脂が分解して、得られる成形体の強度が低下したり、着色したりする等の問題が発生する。
ブロー成形法としては、樹脂原料を溶融させてパリソンを形成し、冷却固化することなく直接成形を行うダイレクトブロー法や、まず射出成形で予備成形体(有底パリソン)を成形後にブロー成形を行う射出ブロー成形法、さらには延伸ブロー成形等も採用することができる。また予備成形体成形後に連続してブロー成形を行うホットパリソン法、いったん予備成形体を冷却し取り出してから再度加熱してブロー成形を行うコールドパリソン法のいずれの方法も採用できる。ブロー成形金型温度は、室温または(Tg+20℃)以上かつ(Tm−20℃)以下とすることが好ましい。
押出成形法としては、Tダイ法、丸ダイ法等を適用することができる。押出成形温度は原料の樹脂の融点(Tm)または流動開始温度以上であることが必要であり、好ましくは180〜230℃、さらに好ましくは190〜220℃の範囲である。成形温度が低すぎると、操業が不安定になったり、過負荷に陥ったりしやすく、逆に成形温度が高すぎると、ポリ乳酸成分が分解し、押出成形体の強度低下や着色等の問題が発生しやすくなる。押出成形により、シートやパイプ等を作製することができる。
本発明の樹脂包装材の用途としては、食品用包装材、化粧品用包装材、農業・園芸用包装材、ブリスターパック、プレススルーパック、流動体用包装材等が挙げられる。
食品用包装材、農業・園芸用包装材、ブリスターパック、およびプレススルーパックについては、その形態は特に限定されないが、食品、物品、および薬品等を収容するために深さ2mm以上に深絞りされていてもよい。包装材の厚さは特に限定しないが、必要強度から考えて厚さは50μm以上、より好ましくは150μm〜2mmである。食品用包装材の具体的例としては、生鮮食品のトレー、インスタント食品容器、包装材、ファーストフード容器、弁当箱等が挙げられる。農業・園芸用容器の具体例としては、育苗ポット等が挙げられる。ブリスターパックの具体的例としては、食品以外にも事務用品、玩具、乾電池等の多様な商品群の包装材が挙げられる。プレススルーパックの具体例としては、医薬品容器等が挙げられる。こうした成形体は、前記したシートを用いて真空成形、圧空成形、および真空圧空成形等の深絞り成形を行うことによっても製造することができる。
包装材の厚さは、特に限定しないが、必要強度から考えて0.2mm以上、好ましくは0.5〜5mmである。流動体を収容するものでは、深さ20mm以上の容器に成形されていることが好ましい。流動体用容器の具体例としては、乳製品や清涼飲料水や酒類等の飲料用コップおよび飲料用ボトル、醤油、ソース、マヨネーズ、ケチャップ、食用油等の調味料の一時保存包装材、シャンプー・リンス等の容器、各種包装材、化粧品用容器、包装材、農薬用容器、包装材等が挙げられる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。しかし、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
下記の実施例および比較例の評価に用いた測定法は次のとおりである。
(1)包装材のバリア性:
成形した容器に純水を充填、密封し、50℃の乾燥機中にて30日間保存した後、内容物減少率が2%未満であるものをバリア性良好(○)と評価し、1.5%未満であるものをバリア性優良(◎)と評価し、2%以上であるものをバリア性不良(×)と評価した。
(2)包装材本体へのポリパラキシリレン膜の密着性:
JIS K5600に基づいて評価を行った。すなわち、ポリパラキシリレン誘導体膜の蒸着を施した包装材本体としての容器の表面に、カッターナイフで1mm間隔の直線状のキズを縦11本、横11本入れて、計100個の升目を作製し、この升目の部分にニチバン社製の粘着テープ(No.405)を密着してから、容器の表面に対し90℃の方向に強く引き剥がしたとき、包装材本体に残存する升目数により、密着性を評価した。そして、100〜80枡残存したものを密着性良好(○)と評価し、80枡未満しか残存しなかったものを密着性不良(×)とした。
(3)外観:
樹脂包装材について、目視で評価を行った。蒸着前後で透明性が全く変わらないものを外観良好(○)と評価した。
(4)メルトフローレート(g/10分)
JIS K7210に従い、付属書A表1のDの条件(190℃、2.16kg)にて測定した。
[原料]
次に、下記の実施例、比較例において用いた各種原料を示す。
(樹脂A)
ポリ乳酸(カーギルダウ社製、NatureWorks、重量平均分子量(Mw)=190、000、融点170℃)
(樹脂B)
テレフタル酸/アジピン酸/1,4−ブタンジオール共重合体(BASF社製、エコフレックス、融点108℃、メルトフローレート5g/10分)
(樹脂C)
ポリプロピレン(日本ポリプロ社製、ノバテックPP、メルトフローレート0.8g/10分)
[樹脂の製造]
溶融混練には、池貝社製PCM−30型2軸押出機を用いた。スクリュー径は30mm、平均溝深さは2.5mmであった。
(樹脂組成物D)
樹脂A90質量部、樹脂B10質量部を混合し、上記の2軸押出機を用いて、設定温度190℃、スクリュー回転数200rpm、滞留時間1.6分で溶融混練を行い、樹脂組成物Dを得た。
[包装材の製造]
樹脂A、樹脂C、樹脂組成物Dについて、射出ブロー成形機(日精ASB機械社製、ASB−50TH)を用い、シリンダ設定温度200℃で溶融して金型に充填し、10秒間冷却して5mm厚の予備成形体(有底パリソン)を得た。これを所定の温度に設定された低温金型または高温金型に入れ、圧力空気3.5MPaの条件下でブロー成形し、内容積130ml、厚み1.1mmの、包装材としての樹脂容器を作製した。金型はその温度を25℃に設定した。
[実施例1]
樹脂Aの容器について、CVD法によりポリパラキシリレン膜のコーティングを行った。
すなわち、ジクロロジパラキシリレンを用い、成膜条件は、被蒸着物である樹脂容器(以下、「被着体」と称する)を入れるチャンバー内の真空度を最大4Paとし、ジパラキシリレン誘導体を気化するための気化室温度を110〜180℃とし、ジクロロジパラキシリレンをラジカルに分解するための分解炉温度を700℃とした。
先ず、系内を減圧とし、すなわちチャンバー内圧を2Paとし、気化ジクロロジパラキシリレンをラジカルに分解するための分解炉温度を上記の700℃に上昇させた。
ジクロロジパラキシリレンを気化させるため、気化室の温度を、最初110℃まですばやく上昇させ、その後180℃まで所定のプログラムで上昇させた。蒸着の進行につれてチャンバー内の減圧度は変動するが、本実施例では最大4Paであった。
気化したジクロロジパラキシリレンは分解炉でラジカルに分解し、生成したラジカルはチャンバー内に移動し、被着体表面で重合し皮膜を形成した。
なお、被着体へのポリクロロパラキシリレン膜の密着性を高める目的で、被着体の気相カップリングを行った。
これにより表面と内面にポリクロロパラキシリレン膜が均一に蒸着された容器を得た。
[実施例2]
樹脂組成物Dの容器について実施例1と同様にしてポリパラキシリレン膜のコーティングを行い、同様に表面と内面にポリクロロパラキシリレン膜が均一に蒸着された容器を得た。
実施例1と実施例2で得られた樹脂容器についてのバリア性、外観、密着性の評価を表1に示す。
Figure 2008050033
[比較例1]
樹脂Aの容器であって、CVD法によりポリパラキシリレン膜のコーティングを行わなかったものについて、バリア性、外観、密着性の評価を行った。その結果を表1に示す。
[比較例2]
樹脂Cの容器について、何ら前処理を施すことなしに、樹脂Aの容器と同様にして、CVD法によりポリパラキシリレン膜のコーティングを行おうとした。しかし、前処理を施さなかったため、薄膜を蒸着することができなかった。このように薄膜を蒸着することができなかった樹脂Cの容器について、バリア性、外観、密着性の評価を行った。その結果を表1に示す。
実施例1、2の樹脂容器は、包装材本体としての樹脂製の容器がポリパラキシリレンの薄膜で被覆されているので、いずれもガスバリア性に優れており、しかも蒸着によって外観が損なわれることはなかった。また、蒸着膜の密着性は良好であった。
これに対し、ポリパラキシリレン膜のコーティングを行わなかった比較例1の樹脂容器は、透明性には優れていたが、ガスバリア性に劣っていた。また、比較例2の樹脂容器は、上記のように前処理を施さなかったため薄膜の蒸着ができず、このためコーティング処理の前後で透明性は変わらず外観は良好であったが、ガスバリア性に劣っていた。

Claims (4)

  1. ポリ乳酸を主材料とする包装材本体と、この包装材本体を被覆する式(1)で表されるポリパラキシリレン誘導体膜とからなる樹脂包装材。
    Figure 2008050033
  2. 包装材本体はポリ乳酸を50質量%以上含有していることを特徴とする請求項1記載の樹脂包装材。
  3. ポリ乳酸を主材料とする包装材本体に、CVD蒸着法を用いて、式(1)で表されるポリパラキシリレン誘導体膜を被覆形成することを特徴とする樹脂包装材の製造方法。
    Figure 2008050033
  4. 包装材本体はポリ乳酸を50質量%以上含有していることを特徴とする請求項3記載の樹脂包装材の製造方法。
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