以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、各図中、同一の機能を有する部材または要素には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
図1は、本発明に用いられるDC/DCコンバータにおける負荷の駆動時の基本的な構成に対応する構成を説明するためのものである。図中、図26〜図28と同様の部分には同じ符号を付して、説明を省略する。THa,THbは、半導体スイッチング素子であり、この半導体スイッチング素子の一例としては、上述したIGBTや、弁作用のある整流素子、例えばサイリスタ等が用いられる。図28の回路では、DC/DCコンバータ不動作時において、スイッチSwがなければ、常にバッテリーBaからダイオードDda,Ddbを通して負荷LRに電流が流れた状態になり、回路動作上好ましくない。スイッチSwを図28に示すように、ダイオードDda,Ddbと負荷LRの間に入れれば問題ないが、無接点回路として構成した回路に機械的スイッチを入れるのは保護用遮断器以外、回路構成上好ましくない。単巻変圧器Trの巻線の両側端子に接続されているダイオードDda,Ddbを、半導体スイッチング素子THa,THbで置き換えることによって、この問題を解消できるだけでなく、半導体スイッチング素子THa,THbをトランジスタTRa,TRbと関連付けて制御すること、すなわち、「同期点弧方式」と呼ぶことができる新しい方式を提供するもので、幅広い応用が可能となる。しかし、図1の回路では、同期点呼方式を採用しても、出力電圧は2Eであり、半導体スイッチング素子THa,THbをダイオードとした図28の回路と変わりはない。
図2は、本発明の第1の実施の形態を説明するための構成図であり、図3は、その動作説明図である。図中、Baはバッテリー、TRa,TRbはトランジスタ、Trは変圧器、LRは負荷、THa1〜THa3,THb1〜THb3,THnは半導体スイッチング素子である。トランジスタTRa,TRbとしては、上述したものと同様に絶縁ゲート型バイポーラー・トランジスタ(IGBT)を用いることができる。本発明の実施の形態の説明においても、特に断らない限り、IGBTには、逆並列にダイオードが接続されているものとして説明し、このダイオードの図示は省略している。半導体スイッチング素子THa1〜THa3,THb1〜THb3,THnの一例としては、上述したIGBTや、弁作用のある整流素子、例えばサイリスタ等を用いることができる。負荷LRとしては、直流電動機に限られるものではなく、インバータ電動機等も含まれるが、要は、DC/DCコンバータの直流出力によって駆動でき、回生制動時に直流電圧が出力できれば足りるものである。
第1の実施の形態の回路動作について説明する。この回路は、図1に示したDC/DCコンバータの単巻変圧器Trの巻線の両側端子に加えて、巻線の中間に幾つかのタップ端子(この例では、C点とP,Q,R,S点の4箇所であるが、タップ端子の数と位置は、これに限られるものではなく、この例よりも多くても少なくてもよく、中間点のタップ端子は必ずしも設けなくてもよい。)を設けるとともに、巻線両端端子A,P,R,C,B,Q,Sのそれぞれに半導体スイッチング素子THa1〜THa3,THb1〜THb3,THnを接続し、これらの半導体スイッチング素子を、単巻変圧器Trの巻線両端端子A,Bとバッテリー(−)端子間に接続されたトランジスタTRa、TRbと関連を持たせてON−OFFするようにしたものである。高調波成分を増やすことなくDC/DCコンバータの出力電圧を制御することができる。
なお、この例では、タップ端子間の巻線数が均等となるように、タップ端子を設けた。しかし、必ずしも均等となるようにしなければならないものではなく、適度の巻線数でタップ端子を設ければよい。また、アース側を(−)電位としたから、半導体スイッチング素子THa1〜THa3,THb1〜THb3,THnは、負荷LRに正電圧を与える方向となるように接続している。もちろん、逆方向でもよい。また、タップ端子PとQ,RとSは、それぞれ中間点のタップ端子Cに対して、対称の位置にある。
まず、トランジスタTRa,TRbと半導体スイッチング素子THa1,THb1が同期して開閉される場合の動作について説明する。この動作形態は、図1に示したDC/DCコンバータの動作と同様であり、単巻変圧器Trの両端は、選択回路、この実施の形態では、半導体スイッチング素子THa1,THb1を介して負荷(電動機)に接続されている。トランジスタTRa,TRbは、交互に所定の時間Tだけ導通し、単巻変圧器Trに矩形波の交流電圧を誘起する。図3の最上段に示すように、トランジスタTRaと同期して半導体スイッチング素子THb1を閉じ、次の半サイクルは、トランジスタTRbと同期して半導体スイッチング素子THa1を閉じるように制御すれば、負荷LRには2Eの電圧が加わる。すなわち、図1の動作と同様に2Eの電圧が出力される。
次に、トランジスタTRaと同期して、半導体スイッチング素子THb1に代えて半導体スイッチング素子THb2を閉じ、トランジスタTRbと同期して、半導体スイッチング素子THa1に代えて半導体スイッチング素子THa2を閉じるように制御すれば、図3の上から2段目に示すように、負荷LRには、5E/3の電圧が加わる。
以下同様に、トランジスタTRaと同期して半導体スイッチング素子THb3を閉じ、トランジスタTRbと同期して半導体スイッチング素子THa3を閉じるように制御すれば、図3の上から3段目に示すように、負荷LRには4E/3の電圧が加わる。
さらに、トランジスタTRaと同期して半導体スイッチング素子THnを閉じ、トランジスタTRbと同期して半導体スイッチング素子THnを閉じるように制御すれば、図3の上から4段目に示すように、負荷LRにはEの電圧が加わる。なお、出力電圧Eを得るためには、トランジスタTRa,TRbを開のままで、半導体スイッチング素子THnを閉じたままとしてもよい。
さらに、トランジスタTRaと同期して半導体スイッチング素子THa3を閉じ、トランジスタTRbと同期して半導体スイッチング素子THb3を閉じるように制御すれば、図3の上から5段目に示すように、負荷LRには2E/3の電圧が加わる。
さらに、トランジスタTRaと同期して半導体スイッチング素子THa2を閉じ、トランジスタTRbと同期して半導体スイッチング素子THb2を閉じるように制御すれば、図3の最下段に示すように、負荷LRにはE/3の電圧が加わる。
この電圧制御方法を「ステップ電圧制御」と呼ぶことにする。ステップ電圧制御では、出力電圧波形は、ほぼ直流でサイクルの切り替わり点で電圧の切れ込みが出るが、僅かのキャパシタを接続することで、吸収可能で、導通率制御のように大きなフィルタを必要としない。さらに、出力電圧制御に使用される半導体スイッチの数が増えるが、任意の瞬間に通電している素子は1個のみであるので、単純な整流回路の2個の場合と比較して、損失の増加はない、したがって、構成的にも1個の冷却フィンに全部の半導体スイッチを取り付けるような方法が採用可能である。
上述したステップ電圧制御では、電圧を連続的に変えることはできないが、ステップ電圧制御に導通率制御を併用すれば、連続的な電圧制御も可能である。図4に電圧制御の一実施例における中途の経過を示す。トランジスタTRaと同期して半導体スイッチング素子THa3が導通し、トランジスタTRbと同期して半導体スイッチング素子THb3が導通して、電圧2E/3を出力している状態から、上のステップに電圧を上げる場合、トランジスタTRaに同期して先ず半導体スイッチング素子THa3を導通させ、その後、時間をおいて導通率tで半導体スイッチング素子THnを導通させる。次の半サイクルは、トランジスタTRbに同期して先ず半導体スイッチング素子THb3を導通させ、その後、導通率tで半導体スイッチング素子THnを導通させる、このときの出力電圧eは、次式で与えられる。
e=(E/3)・(t/T)+(2E/3)
導通率tを0から100%に順次変化させることにより電圧を2E/3からEへ連続的に制御できる。他のステップについても同様である。このように導通率を制御する方法では、出力電圧に高調波成分を含むが、その大きさは(1/ステップ数)小さく、したがって、フィルタも小さくてすむ。
図5は、第1の実施の形態における他の実施例を説明するための構成図である。図中、THa0,THb0は半導体スイッチング素子である。この実施例では、単巻変圧器Trの両端の端子よりも内側であって中間点の端子に対して対称の位置に設けられた端子に、トランジスタTRa,TRbが接続されている。換言すれば、図2で説明した単巻変圧器の両端A,Bのそれぞれ外側に、同じ巻線数で出力側の端子F,Gが設けられているものである(すなわち、タップ端子F,Gは端子Cを対称点として対称の位置にある。)。この実施例では、この外側の巻線の巻線比に応じた電圧が加算できるので、2Eの電圧よりも高い出力電圧を得ることができる。動作については、図2で説明した実施例と同様であるので、説明を省略する。
上述した電動機駆動回路の応用例について以下に説明する。
誘導電動機の回転数は、電源周波数と電動機の極数により決まる、しかし、周波数を変えるだけで、電動機に加わる電圧をそのままにしておけば、電動機の本来の目的であるトルクの発生させるために必要な磁束が、周波数の増加と共に減少するので、発生可能なトルクも減少する。したがって、周波数に対して電動機の発生トルクを一定に維持しようとすれば、周波数を変えるだけでなく、電動機に加わる電圧についても周波数に比例して変える必要がある(別の見方をすれば、加えられる交流電圧の半波の面積が一定になるようにする)。この目的のために開発されたのがVVVF(Variable Voltage Variable Frequency )インバータである。電源電圧の制約がなく、周波数に比例して電圧をどこまでも増加させることができるならば、発生するトルクもどこまでも一定に維持できる、しかし、実際の応用を考えた場合、電源電圧に限りがあるので、電動機に加える電圧をどこまでも周波数に比例して増加して行くことはできない。
一般的には、次のような方法によっている、図6にしたがって説明する。先ず、周波数(電動機回転数に略比例)と電圧を比例して変化させることができる領域Aでは、トルク一定になるように(略電動機電流一定)、周波数と電圧を比例させて増加させ(V/F一定)電動機を加速する。これ以上は、電圧を増加させることはできないので、以後は電圧一定で周波数のみを変える。
領域Bでは、出力パワー一定になるように周波数を変える、電動機に加わる電圧は変えることができないので、電動機の出すことのできるトルクは、周波数の増加と共に低下する。したがって、一定パワー制御のままでは、やがて、必要なトルクより、電動機の出し得るトルクが小となり、電動機は失速してしまう。
領域Cでは、これを避けるために、失速する手前で、出力一定とするパワー制御を、トルクを電動機が失速しない範囲で出し得るトルク内に抑える制御、すなわち、電動機の特性を考慮した制御に切換える(電動機トルクを周波数の自乗に比例して下げる)。電動機の加速が終了すれば、加速トルクは必要なくなり、電動機は負荷トルクとバランスした一定周波数、一定電圧で回転するようにVVVFインバータは制御する。
VVVFインバータをV/F一定で制御したときの誘導電動機の回転数とトルクの関係図7に示す。各カーブに示されて周波数は夫々のカーブに対するVVVFインバータの周波数を意味する。カーブと横軸(トルク0の軸)との交点が各周波数に対応した同期速度を示し、同期速度ではトルクは零である。同期速度より左側のカーブは駆動トルクを示し、同期速度と電動機回転数の差(すなわち、すべり周波数)が増加するに従って、トルクは増加し、あるすべり周波数で最大となり、それから先はすべり周波数の増加と共にトルクは減少する。この最大トルクを停動トルクと呼び、最大トルクより右側が安定域で電動機としての使用範囲である。同期速度より右側のカーブは回生ブレーキトルクを示し、駆動トルクと同じように、トルクは同期速度と電動機の回転数の差(この場合は負のすべり周波数の絶対値)が増加するに従って増加し、あるすべり周波数で最大となり、それから先は減少する。最大トルクより左側が安定域でブレーキとしての使用範囲である。
停止している誘導電動機を起動、加速するためには、負荷トルクだけでなく被駆動体の慣性に打勝って加速できるだけの加速トルクが必要で、このトルクを発生できる周波数と電圧を与える必要がある。例えば、図7の例では、必要なすべり周波数は10Hz程度であるので、起動時はすべり周波数の10Hzに等しい周波数とV/F一定を満足する電圧を与えれば、必要なトルクを出せることがわかる。これによって電動機は回転を始め、VVVFインバータの周波数、電圧が変化しないとすると、動作点はトルクカーブ上をすべり周波数が小となる方向(右向き)に移動し、発生するトルクは回転の上昇とともに低下する。これに対して、VVVFインバータの発生周波数を、すべり周波数が常に一定になるように上げて行けば、トルク一定線上を右に移動し、一定トルク加速を行うことができる。
高速で回転している電動機に、例えば、図7のブレーキ減速トルクを発生させるためには、電動機の回転数において、図7のブレーキ減速トルクを発生させるトルクカーブに対応する周波数と電圧をVVVFインバータから与える必要がある。電動機は、このブレーキトルクにより減速される。VVVFインバータの周波数、電圧が変化しないとすると、トルクカーブ上の動作点は左に移動し発生するトルクは回転の低下とともに低下する。これに対してVVVFインバータの発生周波数を、負のすべり周波数が常に一定になるように下げて行けば、トルク一定線上を左に移動し、一定トルクでの回生ブレーキを作動できる。なお、回生ブレーキを安定に作動させるためには、VVVFインバータの直流側に回生エネルギーを吸収する能力が要求される。
一般に、電動機の速度制御を行う場合、電圧と周波数の関係は、V/Fを一定に保つように制御が行われる。電圧の制御には、大きく分類すると、PWM(Pulse width modulation)とPAM(Pulse amplitude modulation)の2種類がある。
PWM方式のVVVFインバータで誘導電動機等の交流電動機を駆動する場合、どのような制御が行われるかを図8,図9に従って説明する。図9の波形図は、各部の波形を纏めて示したものてある。最上段に三角波と120°の位相差を持った、3相U,V,W相のVVVFインバータの出力相電圧に対応する3つの正弦波の波形を示す。三角波は変調波、3つの正弦波は被変調波とも呼ばれる。三角波は一定振幅で、周波数は、1kHz以上の一定周波数の場合(非同期)、あるいは、正弦波周波数と一定の比を持ち、変調波と同期した波形の場合とがある。電動機Mの起動時は必要な加速トルクを発生するすべり周波数と電圧(振幅)に対応した、120°の位相差を持った、3つの正弦波を被変調波として与えられる。以後、電動機Mのすべり周波数が一定になるように、3つの被変調正弦波の電圧(振幅)と周波数の比を一定に保ちながら、正弦波の振幅が三角波の振幅に略等しくなるまで、電動機Mの加速に応じて変えるように制御する。図9は、三角波のパルス数(パルス数とは被変調波の正弦波の半波の中に含まれる三角波の±の山の数を言う)9で、正弦波と同期している場合を示したものである。
図9のA点についてみると、U相の正弦波の瞬時値のみが、三角波より大で、V相とW相の正弦波の瞬時値は三角波より小である。この瞬間におけるVVVFインバータの各構成素子の導通状態は図8(A)に示してある。(U相正弦波>三角波)であるので、トランジスタTRuはON、トランジスタTRxはOFFである。電動機MのU相端子は(+)側に接続される。(V相正弦波<三角波)、(W相正弦波<三角波)であるので、トランジスタTRy,TRzはON、トランジスタTRv,TRwはOFFで、電動機MのV相及びW相の各端子は零電位に落とされる。これによって、図8(A)に示した太線の回路で、電源Baから電動機Mに電流が流れ、電動機Mにはトルクを発生する。
図9のB点にくると、U,V,W各相の正弦波全てが三角波より小となり、点Aで、ONであったトランジスタTRuもOFFとなり、トランジスタTRxがONとなる、電動機Mは電源から切り離され、今までトランジスタTRuを通って電動機MのU相に流れ込んでいた電流は、トランジスタTRuがOFFになっても電動機Mのインダクタンスがあるので直ぐには零とならず、トランジスタTRxの逆並列ダイオードを通って図8(B)に太線で示した回路で閉ループができ、電流が流れ次第に減衰する。一方、インダクタンスに蓄えられていたエネルギーは太線の回路でキャパシタCaの電圧を突き上げる。時間が経過して、再びU相正弦波が三角波より高くなると、図8(A)の状態に戻る。
三角波とV相正弦波の交点C点においては、今までON状態にあった、トランジスタTRyがOFFする。今までトランジスタTRyを通って電動機MのV相巻線に流れていた電流は、図8(C)に示す様に、電動機Mのインダクタンス、TRvの逆並列ダイオードを通して上向きに流れ、トランジスタTru経由で閉ループができ時間とともに減衰する。一方、電源から電動機Mに流れ込む電流はV相に流れていた分減少する。
この点を経過すると、V相正弦波も三角波より大となり、D点においては、トランジスタTRu,TRvが夫々ONとなり、電源(+)側に接続される。トランジスタTRx,TRyはOFFである。トランジスタTRzはON状態を継続しているので、図8(D)の太線で示した回路で電動機Mに電流が流れる。この状態はW相正弦波と三角波が交差し、U、V、W相の正弦波が何れも三角波より大になる点までの時間継続する。
時間が経過して、動作点がこの交点より右側に移動すると、例えばE点においては、U,V,W相の正弦波が何れも三角波より大となるので、今までONであったトランジスタTRzもOFFとなる。今まで、トランジスタTRzを通して流れていた電流は、電動機Mのインダクタンスのために直ぐには零とならず、トランジスタTRwの逆並列ダイオードを通して太線で示した閉ループを形成する電流は徐々に減衰する。この状態は、W相正弦波と三角波の交点まで継続し、交点を超えると図8(D)の状態に戻る。
以後、U,V,W相正弦波と三角波の交点がくるごとに作動するトランジスタが切換わる。この関係を纏めて示したのが、図9の上から2番目から4番目の波形で、電動機MのU,V,W相各端子の電位の時間的変化を示している。移相差120°を持った3つの矩形粗密波である。例えば、U相の波形についてみれば、矩形粗密波の上側の線がトランジスタTRuがONの状態を示し、電動機MのU相端子は、電源(+)側に接続されるので(+)電位、下側の線はトランジスタTRxがONの状態を示し、電動機MのU相端子は電源(−)側に接続されるので零電位を示す。
図9の下側の3つの波形は、上から、U−V、V−W、W−Uの端子間電圧を示す。中央が密で、両端が粗の矩形波で与えられる。近似的には正弦波とみることができる。
再び、図6に戻り、変調波とVVVF出力周波数の関係がどのようになっているかを説明する。図6の領域A、一定トルク加速領域で誘導電動機MはVVVFインバータにより、V/F一定加速される。一般に、低速度域では変調波は非同期でkHzオーダーの比較的高い周波数が使用される。加速に従い変調波は同期に切換えられ、9パルス、3パルスとなり、領域Aの最後に1パルスとなり領域Bに入る。領域Bの一定パワー加速領域は、電圧一定、周波数のみが変えられる。変調波は同期方式の1パルスである。領域Cは、電動機特性領域制御で1パルス変調、トルクが電動機の停動トルクを超えないように1/F2 に比例してトルクを下げる。
9パルス、3パルス及び1パルスの各部波形を 図10、図11及び図12に示す。
図9と同様に、変調波である三角波と被変調波U、V、W相電圧に対応する120度の位相差を持った正弦波との切りあいを示す。次の2〜4段目までの三つの波形は図9と同様に図8の電動機MのU,V,W端子の電位の変化を示した矩形の粗密波で、最上段の波形の切りあいに対応しており、正弦波>三角波で、VVVFの電動機各相アームに対応する上側のトランジスタがONでバッテリーの(+)電位、正弦波<三角波で、VVVFの電動機各相アームに対応する下側のトランジスタがONでバッテリーのG電位となる。次の5〜7段目までの三つの波形は、図9と同様に、図8の電動機MのU−V,V−W,W−U端子間の電圧の変化を示した波形で、U−V端子間電圧は2段目のU端子の電位を示した波形と3段目のV端子の電位を示した波形との差である。以下同様である。最後の3段は電動機端子と三相巻線の中性点との間の電圧で電動機の相電圧を示す。
PWM制御の最も大きいメリットは、1つのPWM変換器で電圧制御と周波数制御を同時に行うことができるので、回路構成が簡単になることである。PWMで切り出された電圧波形には、上述したように基本波成分に加えて、多くの高調波成分が含まれ、電動機の内部損失増加の原因となる。汎用機を使用した一般の応用では、電動機の枠番を上げる方法で対応しているが、車両搭載用では、重量、寸法の点からこのような方法をとることができない。また、一般的な電動機では、巻線のインダクタンスがフィルタの役目をして、流れる電流は正弦波に近い形に整形される。しかし、電源電圧12V程度の低電圧で使用する高速電動機の場合は、巻線の巻数が非常に少なくなり、インダクタンスも小さいので、定格回転に近い領域(定格周波数付近)は別として、回転数の低い領域(周波数の低い領域)では、巻線のインダクタンスによる平滑効果が期待できない。このため、電圧波形に含まれる高調波成分により、流れる電流、さらには、空隙磁束にも高調波成分が含まれ、回転子には、この高調波磁束を打ち消すための反作用磁束を発生させるために、高調波電流が流れ回転子に抵抗損を発生し、回転子発熱の原因となる。
一方、PAM制御の場合は、電圧制御と周波数制御がそれぞれ別個の変換器で行われ、回路構成が複雑となる。電圧制御変換器には、チョッパーあるいはDC/DCコンバータが使用され、周波数制御変換器には、180°矩形波、120°矩形波、あるいは、含有割合の高い第5、第7等の低次高調波を除去した変調方式を使用したインバータが使用される。インバータ出力電圧の基本波に対する高調波の含有割合は変調方式で決まり、電圧に関係ないが、周波数の低い領域では、電圧制御変換器によりインバータに加わる電圧は低く抑えられるので、高調波の絶対値は低く抑えられ、回転子に発生する損失も僅かである。回転の上昇とともに、電圧は上昇し、高調波の絶対値は増加し、損失も増加傾向を示すが、周波数が定格周波数に近づくに従って、インダクタンスは小さいとは言いながらも、高い周波数成分の、高調波電流に対してはフィルタ効果が期待できる。したがって、含有割合の多い低次高調波を除去するような変調方式をとれば、回転子の損失は全速度域に亘り低<抑えることができる制御方式が実現できる、しかし、どんなに性能が良くても、大型のものでは自動車に搭載は困難である。したがって、電圧制御変換器をいかに小さくできるかがポイントとなる。かかる観点から、上述した単巻変圧器方式のDC/DCコンバータを用いた電動機駆動回路は、自動車搭載用として、有利である。
図13は、自動車のバッテリーを電源として、PAM方式のVFインバータと、ここで提案するDC/DCコンバータを、高速交流電動機の可変電圧(VV:Variable Voltage)電源に使用する場合の本発明の電動機制御回路の1例である。図中の符号は図2と同様であり、THc1,THd1も図2の半導体スイッチング素子THa1,THb1と同様である。また、VFインバータを構成するTRu〜TRzはスイッチングトランジスタである。なお、図14はDC/DCコンバータの各部電圧電流波形を示したものである。図14の最上段の交流電圧は、単巻変圧器の中間点の端子Cを基準としたA点の電圧を示す。バッテリー電圧をEとすれば、トランジスタTRaがON時のA点電位は−E、トランジスタTRbがON時のA点電位は+Eである。単巻変圧器のタップ端子Xの位置を端子Aと中間点のタップ端子Cの中間点とし、タップ端子Yの位置を端子Bと中間点のタップ端子Cの中間点とした(しかし、タップ端子の位置および数はこの実施例に限られるものではない。)。また、単巻変圧器Trは、図5で説明したように、入力側よりも外側に、端子F,Gが設けられてもよい。以下の実施例でも同様である。
第1のモードでは、トランジスタTRaと同期して半導体スイッチング素子THa2、トランジスタTRbと同期して半導体スイッチング素子THb2に点弧信号が与えられる。D点の電位はE/2となる。半導体スイッチング素子THa2,THb2に流れる電流をIとすると、単巻変圧器の巻線Y−B間には上向きにI、巻線C−B間には下向きにY−B間電流Iとアンペアターンが等しくなる電流I/2が流れ、結果的に巻線Y−B間には上向きにI/2、巻線C−Y間には下向きにI/2、すなわち、トランジスタTRb,TRaには逆並列に接続されたダイオード部にI/2、バッテリ−にI/2の電流が流れる。電動機が加速するに従って電流は変化するが、図14では一定として示してある。PAMインバータは、加速に応じてトルク一定になるような周波数制御が行われる。
第2のモードでは、半導体スイッチング素子THnに点弧信号が与えられ、D点はバッテリーに直結され、その電位はEである。半導体スイッチング素子THnに流れる電流をIとすると、負荷へはバッテリーから直接電流が流れるので、単巻変圧器の巻線C−B、C−A間には励磁電流のみが流れる。負荷電流と比べて、小さいので、図9には示してない。バッテリーにはIの電流が流れる。
第3のモードでは、半導体スイッチング素子THa2,THb2に点弧信号が与えられるが、ここでは最初のモードのように、半導体スイッチング素子THa2、THb2の点弧信号は、トランジスタTRb、TRaと必ずしも同期する必要なく、自由に与えることができるし、また、半導体スイッチング素子THa2,THb2に同時に与えてもよい。トランジスタTRaの導通時、半導体スイッチング素子THb2が導通し、仮に、半導体スイッチング素子THa2に点弧信号が与えられていても、電位の低い方は逆電位が加わるので、電位の高いほうのみが導通する。D点の電位は3E/2、巻線A−Y間には下向きに電流I、巻線C−A間には上向きに3I/2が流れ、結果的に巻線C−A間にはI/2、C−Y間にはIが流れる。
第4のモードでは、半導体スイッチング素子THa1、THb1に点弧信号が与えれる。トランジスタTRaの導通時に半導体スイッチング素子THb1が導通し、D点電位は2E、巻線A−B間には下向きに電流I、巻線C−A間には上向きに2Iが流れ、結果的に巻線C−A間にはI、巻線C−B間にはIが流れる。
図13の電動機制御回路における逆変換モード、すなわち、回生制動モードについて、波形図である図15を参照して説明する。DC/DCコンバータのトランジスタTRa、TRbには点弧信号が与えられ、交互に導通し動作状態にあるとする。電動機は高速回転中でキャパシタCaは最大電圧で充電された状態にあり、減速指令が与えられると、VFインバータはその周波数を下げる方向に制御され、キャパシタCaの電位は突き上げられる。トランジスタTRbが導通中であるとすると、半導体スイッチング素子THb1と逆並列に接続されている半導体スイッチング素子THd1を点弧すると、キャパシタCa(+)→インダクタンスL→半導体スイッチング素子THd1→トランジスタTRb→キャパシタCa(−)なる回路で電流が流れ、インダクタンスLにエネルギーが蓄えられる(図15のTRb電流)。トランジスタTRbの点弧信号がOFFされ、流れていた電流が切られると、インダクタンスLにL・dI/dtなる電流を流し続けようとする電圧が発生する。キャパシタCa(+)→半導体スイッチング素子THd1→端子B→巻線B−C→バッテリー→キャパシタCa(−)なる回路で電流が流れ、同時に、巻線A−C間にB−C間に流れた電流とアンペアターンの等しい電流Iが、端子A→巻線A−C→バッテリー→トランジスタTRaのダイオード部→端子Aの回路で、A→Cの方向に流れ、バッテリーは結果的に2Iの電流で充電される。トランジスタTRaのダイオード側にのみ電流が流れるが、トランジスタTRaには点弧信号を与えておく。インダクタンスLに発生する電圧L・dI/dtは時間とともに減衰するので、バッテリーへの充電電流も時間とともに減少する、図15では一定値で示してある。
電流が規定値まで減少したところで、半導体スイッチング素子THa1に点弧信号を与えると、今まで導通していた半導体スイッチング素子THd1に逆電圧が加わり、半導体スイッチング素子THd1はOFFする。同時に、バッテリーへの充電電流は零となる。今度は、キャパシタCa(+)→インダクタンスL→半導体スイッチング素子THa1→トランジスタTRa→キャパシタCa(−)なる回路で電流が流れ、インダクタンスLにエネルギーが蓄えられる。トランジスタTRaの点弧信号がOFFされ、流れていた電流は切られる、したがって、インダクタンスLにL・dI/dtなる電流を流し続けようとする電圧が発生する。キャパシタCa(+)→半導体スイッチング素子THa1→巻線A−C→バッテリー→キャパシタCa(−)なる回路で電流が流れ、同時に、巻線B−C間にA−C間に流れた電流とアンペアターンの等しい電流Iが巻線B−C→バッテリー→トランジスタTRbのダイオード部→巻線B−Cの回路で、B→Cの方向に流れ、バッテリーは結果的に2Iの電流で充電される。以後、同様な経過が交互に繰り返され、バッテリの充電によって回生制動が行われる。
回転速度の低下とともに、電動機の誘起電圧は低下するので、キャパシタCaの電圧も低下する。したがって、インダクタンスLへの充電パワーも低下する。このため、エネルギー量を確保するために充電時間を長く取る必要がある。しかし、蓄えられるエネルギーの絶対量は速度の低下とともに減少するので、L・dI/dtの減衰勾配が大となり、バッテリーへの充電は電動機速度の低下とともに短くなる。
図16は、本発明の電動機制御回路を電気鉄道車両に応用した一実施例である。なお、図16では、電動機の駆動時に用いられるタップ端子と半導体スイッチング素子よりなる回路の図示を省略してあるが、図2や図13と同様に適宜の数と位置にこれらが設けられているものである。図16において、PTは架線からパワーを受けるためのパンタグラフ、FilLはEMI(電磁干渉)の原因となる高調波電流が外部(架線側)に流出するのを阻止するためのフィルタリアクトルで、キャパシタCaと対でEMIフィルターを構成する。最近の直流電車の駆動システムは、インバータ電動機として誘導電動機を用いで構成される。VVVFインバータと誘導電動機の関係について、説明を簡単にするために、誘導電動機は2極とすると、VVVFインバータの発生する周波数fと、誘導電動機の回転周波数fmの関係を、f>fmとすれば、パワーはVVVFインバータから誘導電動機方向に流れ、誘導電動機は電動機として動作し電車は加速する。逆に、f<fmであれば、誘導電動機は発電機となり、パワーは誘導電動機からVVVFインバータ方向に流れ、誘導電動機には、ブレーキ力が働き電車は減速する。所謂、回生制動である。
誘導電動機にブレーキ力が働き、電車が円滑に減速するためには、誘導電動機に発生するパワーを吸収してくれる受け皿があってのことである。現在の直流架線給電システムでの回生制動方式は、この回生パワーの受け皿を、パンタグラフPTを介して、たまたま同じ架線給電システム内で、架線からパワーをとり加速運転している電車に期待している。電車が架線からパワーをとり走行している状態を、鉄道用語では力行という。以後、力行という言葉を使用する。したがって、運良く、力行中で、回生パワーを吸収してくれる電車がある場合は良いが、このような電車がない場合は、キャパシタCaの電圧を突き上げ、過電圧検知が動作し、回生ブレーキを諦め、車上搭載の抵抗器を受け皿としたダイナミックブレーキに、あるいは、摩擦ブレーキに切り替えられる。回生失効と呼ばれ、現実に相当高い頻度で発生している。
この回生失効で無駄に熱となるエネルギーの回収、および、摩擦ブレーキの多用による摩擦ブレーキ部品の消耗に対する保守費用の低減等のために、車上にバッテリーを搭載しようという提案がなされている。構成をシンプルにするには、バッテリー電圧と架線給電システムの電圧を等しくするのが望ましいが、最も一般的である1500V直流架線給電方式に適用する場合、高圧のバッテリーは扱いが難しく、バッテリーは非常に大きなバックパワーを持っているため、安全面でも危険が伴う、このため、各所でなされている提案は、バッテリー電圧を比較的低く設定している。上述した単巻変圧器を使用したDC/DCコンバータを用いた電動機制御回路はこの要求にマッチしたものである。
VVVFインバータでの回生制動は、VVVFインバータ自体が制御能力を持っており、一般的にはブレーキ力がブレーキ開始から停止付近まで一定になるように、実際には電動機電流一定の制御が行われ、回生電流は、ブレーキ開始点が最大で速度の低下とともに直線的に減少し速度0で回生電流も0となる。これに対して、DC/DCコンバータの制御は、導通率制御のような対応は一切不要で、周期的にトランジスタTRa,TRbを交互にON−OFFし、これに同期して半導体スイッチング素子THa1,THb1のゲートに信号を与え、キャパシタCaの電圧に拮抗する電圧を端子D点にひたすら発生させておけば、VVVFインバータの制御に応じて回生電流は巻線B−C経由でバッテリー、巻線A−C経由でバッテリーへ自動的に流れ込み、バッテリーに吸収される。
バッテリーに吸収されたエネルギー量は、次の運転時の電車の加速エネルギーとして再利用される。都市内交通の場合、ブレーキ時にバッテリーに回収されるエネルギー量はバッテリーの充放電効率を考慮に入れても、加速に必要な全エネルギー量の30〜40%に相当し、電車の空調、照明等で消費するには多すぎる量である。したがって、次の力行時に充電分を加速エネルギーの一部に利用する方法が最も望ましい解決方法である。バッテリーからの放出方法としては、架線とバッテリーから同時に並列に給電する方法がある。架線とバッテリーからの夫々のパワーの分担は、架線電圧に対して、DC/DCコンバータの出力電圧を制御することにより変えることができる。DC/DCコンバータの電圧は、DC/DCコンバータで一般に行われるトランジスタTRa,TRbの導通率を制御する方法、半導体スイッチング素子THc1,THd1の点弧位置をトランジスタTRa,TRbに対して制御する方法があるが、どちらもDC/DCコンバータの出力電圧の脈動が大きく、安定な制御のためには電流の脈動を小さく抑えることが必要で、そのためフィルタインダクタンスが大きくなる。
図16の電動機制御回路では、半導体スイッチング素子THnのアノード側をバッテリーの(+)端子に接続し、カソード側を電動機制御回路THa1、THb1のカソードと一括してD点に接続している。これにより、力行時に、半導体スイッチング素子THnが導通状態にあれば、D点には常時バッテリー電圧が印加され、半導体スイッチング素子THa1、THb1の点弧位置を、トランジスタTRa,TRbに対して制御すれば、バッテリー電圧Eとその2倍の2Eの中間の任意の電圧を得ることができる。DC/DCコンバータの出力電圧の脈動は、前述の方法と比べて1/2となるのでフィルタインダクタンスを小型化できる利点がある。
図16の電動機制御回路の力行時の動作を説明する。図17は、力行100%導通時の電圧波形を示す。DC/DCコンバータはトランジスタTRa,TRbが交互に導通を繰り返し、A点の電位はトランジスタTRbのON時は2E、トランジスタTRaのON時はG電位である。D点の電位は、力行時には、例えば、半導体スイッチング素子THnには、点弧信号が与えられ導通状態にあるので、ベースとしてバッテリー電圧Eが与えられている。半導体スイッチング素子THa1,THb1をトランジスタTRb,TRaに同期して導通させること、あるいは、半導体スイッチング素子THa1,THb1に同時に点弧信号を与えることにより100%の出力電圧2Eが得られる。
図18は、半導体スイッチング素子THa1,THb1をトランジスタTRb,TRaに同期させず、αなる位相角を以って導通させる。位相角αを変えることにより、D点電圧をEと2Eの間で自由に変えることができる。
図19は、回生制動のための半導体スイッチング素子をタップ端子に接続した実施例の電動機制御回路を示す。図19においても、電動機の駆動時に用いられるタップ端子と半導体スイッチング素子よりなる回路の図示を省略してある。単巻変圧器Trの巻線端子AとC、BとCの間に設けられたタップ端子X,Yに、図13で説明したDC/DCコンバータの逆変換動作をさせるための半導体スイッチング素子THc1、THd1を巻線両端端子A,Bから、タップ端子X,Yに接続変更したものである。タップ端子X,Yに図13と同様に、半導体スイッチング素子THa2,THb2が並列に接続されていてもよい。バッテリーは、充電電圧と放電電圧との間に比較的大きな電圧差があり、バッテリー放電時のDC/DCコンバータの出力電圧を正常時の架線給電電圧変動範囲の上限付近に選定した場合、回生充電時のDC/DCコンバータの出力端子電圧は、回生制動時の制限電圧を超えて過電圧検知回路を動作させ、回生打切りとなる可能性も考えておかなければならない。図19の電動機制御回路では、X,Yなる中間タップを設けることにより、バッテリーの放電充電電圧の変動を補償して、DC/DCコンバータの出力電圧を負荷電動機側から見て、略一定にしようとするものである。これにより力行、回生共安定な動作が可能となる。
図20の波形図で、図19の電動機制御回路の逆変換動作について説明する、巻線A−Cと巻線X−C(巻線B−Cと巻線Y−C)の巻線比をrとする。端子Xの電位はトランジスタTRbのON時はE+rE、トランジスタTRaのON時はE−rEである。逆変換時、半導体スイッチング素子THnはOFFとする。トランジスタTRb,TRaに同期して、半導体スイッチング素子THc1、THd1を導通させれば、端子Dは、電圧E+rEに対向する。ここで、電動機駆動用VVVFインバータが回生ブレーキ動作に入れば、キャパシタCaの電圧は突き上げられ、E+rEを超えたところで、インダクタンスLを通して、仮にトランジスタTRaが導通、半導体スイッチング素子THd1に点弧信号が加えられているとすると、キャパシタCa(+)→インダクタンスL→半導体スイッチング素子THd1→端子Y→巻線Y−C→端子C→バッテリー→キャパシタCa(−)なる回路で電流Iが流れる、巻線A−Cには、巻線Y−Cに流れた電流Iとアンペアターンの等しい電流rIが、A−Cの方向に流れ、バッテリーにはI+Irなる電流が流れ込む。次の半サイクルに切り替わる手前で、半導体スイッチング素子THc1を点弧すると、半導体スイッチング素子THd1に流れていた電流がTHc1に移り、キャパシタCa(+)→インダクタンスL→半導体スイッチング素子THc1→端子X→巻線X−A→端子A→トランジスタTRa→キャパシタCa(−)なる回路で電流Iが流れる。バッテリー充電電流も零となる。次の、サイクルに入るとトランジスタTRaがOFFされ、インダクタンスにL・di/dtが誘起し、キャパシタCaの電圧に加算され、キャパシタCa(+)→インダクタンスL→半導体スイッチング素子THc1→端子X→巻線X−C→端子C→バッテリー−キャパシタCa(−)なる回路で電流Iが流れる、巻線B−Cには、巻線X−Cに流れた電流Iとアンペアターンの等しい電流rIが、B−Cの方向に流れ、バッテリーにはI+Irなる電流が流れ込む。以下同様な経過をたどる。
図21は、図19と同じ効果を持たせるための、もう一つの実施例である。バッテリー充電時のDC/DCコンバータの出力電圧を正常時の架線給電電圧変動範囲の上限付近に選定し、力行時の電圧低下を補償するために、単巻変圧器の巻線両側端子A、Bの外側に夫々巻線A−X’、B−Y’を追加し、DC/DCコンバータの出力電圧を負荷電動機側からみて、略一定にしようとするものである。
図22は、直流直巻電動機の速度制御に本発明の電動機制御回路を用いた実施例を示す。直流直巻電動機は回転子である電機子Mと、固定子である界磁巻線MFから構成される。界磁巻線MFに電流を流すことにより磁界が作られ、この磁界と電機子電流の間で回転力を発生し電動機は回転する。電動機を逆転させるためには、逆転器RVを切替え、今まで閉じていた接点を開き、開いていた接点を閉じる。これによって界磁巻線MFに流れる電流の方向を変える。さらに、電流の流れる方向が逆になることにより、磁界の方向も逆転し、回転子に逆回転方向の回転力を発生させる。また、ブレーキ時は、電動機の誘起電圧の方向を変えないで電流の方向を逆にする必要があるので、やはり逆転器RVによる界磁の接続を切替える。
直流直巻電動機の速度制御には、加える電圧を電動機の加速に従って徐々に上昇させる制御が必要である、図22において、加速運転を行うには、各巻線端子に接続されている半導体スイッチング素子THa1,THa2,THb1,THb2,THnを選択して使用する。トランジスタTRa,TRbを1/2周期毎に交互に導通させることにより、インバータを作動させ、トランジスタTRaに同期して半導体スイッチング素子THa2、トランジスタTRbに同期して半導体スイッチング素子THb2を交互に導通させることにより、直流電動機には最低のステップ電圧E/2を直接(図23)、あるいは、トランジスタTRa、半導体スイッチング素子THa1とTHa2の導通率制御、および、トランジスタTRb、半導体スイッチング素子THb1とTHb2の導通率制御を交互に行うことより零から最低ステップ電圧E/2までの電圧を徐々に与える(図24)。
電動機の加速に応じて、電流が減少するので、基準の電流値まで減少したことを目安に、次のステップ、すなわち、トランジスタTRa、半導体スイッチング素子THn、および、トランジスタTRb、半導体スイッチング素子THnを交互に導通させることにより、直流電動機には次のステップ電圧Eを直接、あるいは、トランジスタTRa、半導体スイッチング素子THa2と半導体スイッチング素子THnの導通率制御、および、トランジスタTRb、半導体スイッチング素子THb2と半導体スイッチング素子THnの導通率制御を交互に行い、次ステップ電圧Eまでの電圧を徐々に与える、同様に、トランジスタTRa、半導体スイッチング素子THb2、および、トランジスタTRb、半導体スイッチング素子THa2を交互に導通させることにより、直流電動機には次のステップ電圧3E/2を直接、あるいは、トランジスタTRa、半導体スイッチング素子THnと半導体スイッチング素子THb2の導通率制御、および、トランジスタTRb、半導体スイッチング素子THnと半導体スイッチング素子THa2の導通率制御を交互に行い、さらなるステップ電圧3E/2までの電圧を徐々に与える。最後は、トランジスタTRa、半導体スイッチング素子THb1、および、トランジスタTRb、半導体スイッチング素子THa1を交互に導通させ直接、あるいは、トランジスタTRa、半導体スイッチング素子THb2と半導体スイッチング素子THb1の導通率制御、および、トランジスタTRb、半導体スイッチング素子THa2と半導体スイッチング素子THa1の導通率制御を交互に行い、最大電圧2Eが加えられ、電動機は電圧2Eでさらに加速され、負荷とバランスした速度、電流で回転を継続する。
回生制動への切り替えは、一旦、半導体スイッチング素子THa,THbをOFFして電流を零とし、但し、DC/DCコンバータは無負荷で動作を継続する。界磁巻線の接続を切替え、次いで、トランジスタTRaの導通時は半導体スイッチング素子THc1を、トランジスタTRbの導通時は半導体スイッチング素子TRd1を夫々同期して導通させ、直流電動機の残留磁気により、直流電動機電機子M(+)端子→直巻界磁MF→電流断続防止インダクタL→半導体スイッチング素子THc1→トランジスタTRa(あるいは、半導体スイッチング素子THd1→トランジスタTRbを半周期毎交互に)→点G→直流電動機(−)端子なる回路で、電流を立ち上げる(図25)。電流断続防止用インダクタンスLに流れる電流Iは次第に増加し、インダクタンスLにエネルギーが蓄えられる、規定値まで増加したところで、図25では、たまたま、トランジスタTRbが導通の1/2周期で、X点に対応、X点では、トランジスタTRaの導通に同期して半導体スイッチング素子THc1を導通せず、半導体スイッチング素子THd1を導通したままとする。
インダクタンスLに蓄えられたエネルギーにより、単巻変圧器のB端子電圧は突き上げられ、巻線B−A間には、キャパシタCaの電圧+L・dI/dtなる電圧が加わり、キャパシタCa(+)端子→電流断続防止インダクタL→半導体スイッチング素子THd1→単巻変圧器Tr巻線B−A→トランジスタTRa→点G→キャパシタCa(−)端子なる径路で電流Iが流れる。これに対して、単巻変圧器にはA−Cなる方向に、B−A方向の電流Iとアンペアターンの等しい電流、C点は単巻変圧器の中間点であるので巻数はB−A間の1/2、したがって2Iなる電流が流れ、結果的に、単巻変圧器B−C間にB−C方向にI,A−C間にA−C方向にIなる電流が流れ、両者の和2Iなる電流がバッテリーBaに充電電流として流入する。 この電流は、L・dI/dtが時間とともに減少するので、Lに流れる電流は減少傾向を示す。
トランジスタTRaの導通の1/2周期の末期、図25のY点、半導体スイッチング素子THc1を導通,半導体スイッチング素子THd1には逆電圧が加わるので直ちに電流零、バッテリー充電電流も零となる。キャパシタCa(+)端子→電流断続防止インダクタL→半導体スイッチング素子THc1→トランジスタTRa→点G→キャパシタCa(−)端子なる径路で電流が流れ、Lにエネルギーが蓄えられ、電流は増加する。
TRaの導通信号をOFFすると単巻変圧器Trの巻線A−C間には、キャパシタCaの電圧+L・dI/dtなる電圧とバッテリーBaの電圧の差電圧が、C−A方向に加わり、巻線B−C間にB−C方向の電圧を発生、巻線B−C→バッテリーBa→G点→トランジスタTRbのダイオード部→巻線B−C方向に電流が流れる、この電流に対して、単巻変圧器Trの巻線A−C間には、B−C間に流れる電流によって単巻変圧器内に発生する磁界を打消す方向に、アンペアターンの等しい電流が流れ、バッテリーには両電流の和が充電電流として流れる。この電流は、L・dI/dtが時間とともに減少するので、Lに流れる電流は減少傾向を示す。
以後、1/2周期毎に同様な経過をたどる。電動機から見れば、回生制動が作動するので、その速度は次第に低下し、誘起起電力も速度の低下とともに低下する。電動機の制動力は速度の低下とは無関係に一定に保つ必要があるので、電動機電流を一定にするように制御する必要がある。一方、バッテリー電圧は、ほぼ一定であるので、インダクタンスLによる突き上げ電圧を大きくしてやる必要がある。したがって、電動機の電流が一定になるように、Lへのエネルギー蓄積時間を長くするように制御を行う必要がある。電動機速度の低下とともに、バッテリーへの充電電流の時間幅は狭くなり充電電流は減少してゆく。
なお、回生制動に用いる半導体スイッチング素子(上述した実施例では、THc1,THd1)は、電動機の駆動電圧を得るための半導体スイッチング素子(上述した実施例では、THa0〜THa3,THb0〜THb3,THn等)の複数に並列に設けて、選択して用いてもよい。もちろん、すべての電動機の駆動電圧を得るための半導体スイッチング素子に並列に設けて、選択して用いてもよい。これらの場合は、中間タップCに対して対称のタップに接続した半導体スイッチング素子が選択される。また、図19で説明したように、電動機の駆動電圧を得るための半導体スイッチング素子が接続されるタップ端子とは別異のタップ端子に、回生制動に用いる半導体スイッチング素子を接続するようにしてもよい。
Ba:バッテリー、TRa,TRb…トランジスタ、THa0〜THa3,THb0〜THb3,THn:半導体スイッチング素子、Tr:単巻変圧器、LR:負荷、L:インダクタンス、Ca:キャパシタ、M:電動機、TRu〜TRz:トランジスタ。