JP2008045160A - 透光性積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】基材からの保護膜の剥離が十分に抑制され、かつ、十分に高い透明度を有する透光性積層体を提供する。
【解決手段】上記目的を達成する本発明の透光性積層体1は、透光性基材10と、その透光性基材10の主面上にプラズマCVD法により形成されかつ酸化チタンを主成分とする第1保護膜20とを備え、第1保護膜20は下記式(1)で表される条件を満足するものである。
6%≦A/(ATi+A+A)×100≦15% (1)
ここで、式(1)中、Aは第1保護膜における炭素原子の含有質量、ATiは第1保護膜におけるチタン原子の含有質量、Aは第1保護膜における酸素原子の含有質量をそれぞれ示す。
【選択図】 図1

Description

本発明は、透光性積層体に関するものである。
一般に、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等の樹脂は、紫外線に対する耐性が低いため、太陽光線により変色、変形、強度低下を起こしやすい。そこで、このような樹脂を材料とし、主に屋外で使用される自動車などの外装用部材に対して、従来、紫外線による劣化を防止する手段が模索されている。例えば、特許文献1、2には、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition;化学蒸着)法により自動車用プラスチック部品の表面に保護膜を形成する方法が開示されている。これらの方法によると、紫外線遮断性に加え、耐擦傷性にも優れた保護膜を形成することが可能となる。
ところが、保護膜の材料として特許文献1で用いられている酸化ケイ素系の材料、及び、特許文献2で用いられている酸化亜鉛系の材料は、基材に対する密着性が十分ではなく、更に改善の余地がある。そこで、保護膜の材料として酸化チタンを採用する方法が考えられる。酸化チタンは、紫外線遮断性に優れると共に、高い耐水性も有するため、主に屋外で使用される樹脂製部材の保護膜として適している。酸化チタンを樹脂製基材のコーティング膜の材料として用いた表面処理法としては、特許文献3に記載されたものが挙げられる。特許文献3によると、具体的なコーティング膜として、酸化ケイ素層と酸化チタン層とを交互に積層してなるコーティング膜が開示されている。
特開2000−345347号公報 特開2002−260412号公報 特開2004−35941号公報
しかしながら、本発明者らは、上記特許文献3に記載の従来技術について詳細に検討を行ったところ、特許文献3記載のコーティング膜であっても、基材に対する密着性が不十分であり、基材から容易に剥離してしまうことを見出した。また、本発明者らは、特許文献3記載のコーティング膜は、透光性の基材上に形成した場合に、透明度を著しく低下させてしまうことを見出した。
そこで、本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、基材からの保護膜の剥離が十分に抑制され、かつ、十分に高い透明度を有する透光性積層体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、透光性基材と、その透光性基材の主面上にプラズマCVD法により形成されかつ酸化チタンを主成分とする第1保護膜とを備え、第1保護膜は下記式(1)で表される条件を満足する透光性積層体を提供する。
6%≦A/(ATi+A+A)×100≦15% (1)
ここで、式(1)中、Aは第1保護膜における炭素原子の含有質量、ATiは第1保護膜におけるチタン原子の含有質量、Aは第1保護膜における酸素原子の含有質量をそれぞれ示す。
酸化チタンからなる保護膜は、それ自体が柔軟性に乏しいことに加え、酸化チタンが備える光触媒能に起因して、その保護膜と接している基材を変質させてしまう。その結果、基材から保護膜が剥離しやすくなると共に、基材の透明度を低下させてしまう。また、基材の変質を防止するために、基材と酸化チタンからなる保護膜との間に酸化ケイ素からなる膜を設ける手段が考えられる。しかし、この場合、酸化ケイ素からなる膜の基材に対する密着性が高くないため、保護膜が容易に剥離してしまう。
一方、上述の本発明の透光性積層体は、酸化チタンを主成分とする第1保護膜における炭素原子の含有質量を上記範囲の特定量にすることで、保護膜の剥離を十分に防止し、しかも、十分に優れた透明度をも確保することができる。第1保護膜の剥離を十分に防止できるのは、プラズマCVD法を用いることにより第1保護膜の透光性基材に対する密着性を高めることができ、第1保護膜の主成分として酸化チタンを採用すると共に特定量の炭素原子を含有させることにより、第1保護膜に適度な柔軟性を付与でき、非晶性部分の割合を大きくした薄膜となるため、酸化チタンの光触媒能を低減できることに起因すると考えられる。また、十分に優れた透明度を確保できるのは、プラズマCVD法を用いて酸化チタンを主成分とする第1保護膜を形成することで第1保護膜における光散乱性を十分に低減でき、しかも、炭素原子の含有質量を特定の範囲内に収めることで炭素原子に起因する着色を十分に抑制できることに起因すると考えられる。ただし、要因はこれらに限定されない。
本発明の透光性積層体は、第1保護膜が紫外線領域の波長を有する光を十分に遮断するため、透光性基材の紫外線による劣化を十分に防止することができる。その上、第1保護膜は可視光領域の光を十分に透過することが可能であるため、本発明の透光性積層体は、車両用灯具のレンズとして十分に有用なものとなる。また、第1保護膜は適度な柔軟性を有するため、クラックが発生し難い。さらには、本発明に係る第1保護膜は耐候性にも優れているため、屋外で使用する部材に用いると効果的である。また、第1保護膜はプラズマCVD法により形成されるため、例えばスプレー法等の湿式成膜法により形成される保護膜と比較して、膜厚が均一であり、薄膜化が可能であると共に、有機溶剤を使用する必要がないため、環境保護の観点からも優れている。
本発明の透光性積層体は、第1保護膜の透光性基材と反対側の主面上にプラズマCVD法により形成されかつ酸化ケイ素を主成分とする第2保護膜を更に備えると好ましい。これにより、透光性積層体の耐候性及び耐擦傷性が一層向上する。また、第2保護膜も紫外線吸収能を有するので、保護膜の紫外線遮断性が更に向上する。
第2保護膜は、下記式(2)で表される条件を満足することが好適である。
6%≦B/(BSi+B+B)×100≦20% (2)
ここで、式(2)中、Bは第2保護膜における炭素原子の含有質量、BSiは第2保護膜におけるケイ素原子の含有質量、Bは第2保護膜における酸素原子の含有質量をそれぞれ示す。
この透光性積層体は、酸化ケイ素を主成分とする第2保護膜における炭素原子の含有質量を上記範囲の特定量にすることで、第1保護膜からの第2保護膜の剥離を防止し、しかも、優れた透明度をも確保することができる。第2保護膜の剥離を防止できるのは、プラズマCVD法を用いることにより第2保護膜の第1保護膜に対する密着性を高めることができ、第2保護膜の主成分として酸化ケイ素を採用すると共に特定量の炭素原子を含有させることにより、第2保護膜に適度な柔軟性を付与できることに起因すると考えられる。また、優れた透明度を確保できるのは、プラズマCVD法を用いて酸化ケイ素を主成分とする第2保護膜を形成することで第2保護膜における光散乱性を十分に低減でき、しかも、炭素原子の含有質量を特定の範囲内に収めることで炭素原子に起因する着色を十分に抑制できることに起因すると考えられる。更に、この透光性積層体が優れた耐擦傷性を有するのは、第2保護膜自体が高い耐擦傷性を示すことに加えて、柔軟性の高い第1保護膜を透光性基材と第2保護膜との間に設けることで、その第1保護膜がクッションの役割を果たしていることに起因すると考えられる。ただし、要因はこれらに限定されない。
また、上記第2保護膜は、第1保護膜と近似した熱膨張率を有するため、幅広い温度範囲において、第1保護膜に対する密着性が高く維持される。さらには、第2保護膜は適度な柔軟性を有するため、クラックが生じ難い。
本発明の透光性積層体において、第2保護膜が6000MPa以下の残留応力を有すると好ましい。これにより、第2保護膜から透光性基材及び第1保護膜にかかるストレスが緩和されるため、透光性積層体の耐衝撃性等の機械的強度が更に高くなる。ここで「残留応力」は、例えば市販の触針式表面形状測定器により測定されるものである。
本発明の透光性積層体において、第1保護膜は0.3〜1.0μmの膜厚を有し、第2保護膜は0.75〜2.0μmの膜厚を有すると好ましい。これにより、透光性積層体における透光性基材の劣化がより十分に抑制され、耐候性及び耐擦傷性に一層優れると共に、透光性積層体の機械的強度が向上し、透光性基材及び第1保護膜間並びに第1保護膜及び第2保護膜間の剥離が更に有効に抑制される。また、かかる透光性積層体の作製コストを抑えることが可能となる。
本発明によれば、基材からの保護膜の剥離が十分に抑制され、かつ、十分に高い透明度を有する透光性積層体を提供することができる。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
図1は、本発明の好適な実施形態に係る透光性積層体を示す模式断面図である。透光性積層体1は、透光性基材10と、その透光性基材10の主面上に設けられた第1保護膜20と、第1保護膜20の透光性基材1と反対側の主面上に設けられた第2保護膜30とを備える。
透光性基材10は、自動車等の車両用灯具のレンズ(カバー)の用途に適した形状を有している。その材料としては可視光を透過可能なものであれば特に限定されない。材料の具体例としては、例えば樹脂、又は石英ガラス等のガラスが挙げられ、加工や取扱いが容易で耐衝撃性が高く、しかも軽量であるため、樹脂が好適に用いられる。樹脂としては、例えば、ポリカーボネート及び/又はポリメチルメタクリレートが好ましい。
第1保護膜20は、酸化チタン(TiO)を主成分として含有し、更に炭素原子を含有している。本実施形態において、第1保護膜20は後述するプラズマCVD法により形成されているため、大部分はアモルファス状になっているが、多少の酸化チタン微結晶(ルチル型、アナターゼ型の)が混在している場合もある。第1保護膜20は、紫外線遮断性に十分優れている他、透光性基材10に対する密着性(耐剥離性)が高く、その膜自体の耐クラック性にも優れている。さらに、後述する第2保護膜30との密着性の向上にも寄与している。
第1保護膜20に含まれる炭素原子の形態は、プラズマCVD法で用いられる原料に依存し、例えばアルコキシ基、アルキル基、又はエチレンガス等の炭化水素ガス内の炭素原子であってもよい。第1保護膜20は、その炭素原子の含有割合R1が、下記式(1a)で表される条件を満足する。
6%≦R1≦15% (1a)
ここで、R1は、下記式(I)で表される条件を満足する値である。
R1=A/(ATi+A+A)×100 (I)
式(I)中、Aは第1保護膜20における炭素原子の含有質量、ATiは第1保護膜20におけるチタン原子の含有質量、Aは第1保護膜20における酸素原子の含有質量をそれぞれ示す。
含有割合R1が6%を下回ると、第1保護膜20の柔軟性が低下し、透光性基材10から第1保護膜20が容易に剥離するため、紫外線遮断性などの保護膜としての機能を十分に果たせなくなる。また、含有割合R1が6未満であると、透光性基材10の材料が樹脂である場合、第1保護膜20の熱膨張率が透光性基材10の熱膨張率よりも著しく小さくなるため、温度変化に伴い第1保護膜20が容易に剥離する傾向にある。さらには、含有割合R1が6%を下回ると、第1保護膜20における酸化チタンが透光性基材10の変質に対する光触媒として有効に機能する。特に透光性基材10の材料が樹脂である場合、酸化チタンが顕著に光触媒として機能する。そのため、透光性基材10の着色及びクラック、並びに第1保護膜20の剥離が生じやすくなる傾向にある。
一方、含有割合R1が15%を超えると、第1保護膜20の脆性が高くなり、機械的強度が十分でなくなるため、第1保護膜20の剥離やクラックが容易に発生する傾向にある。また、含有割合R1が15%を超えると、第1保護膜20が著しく着色するため、可視光を十分に透過させ難くなる。
また、第1保護膜20は、剥離やクラックを一層抑制する観点から、下記式(1b)で表される条件を満足すると好ましい。
10%≦R1≦14% (1b)
第1保護膜20の膜厚は、0.3〜1.0μmであると好ましく、0.4〜0.7μmであるとより好ましい。この膜厚が0.3μmを下回ると、第1保護膜20の紫外線吸収能が低下して、透光性基材10の変質に伴う着色及び脆化、並びに第1保護膜20の剥離が生じやすくなる傾向にある。また、この膜厚が1.0μmを上回ると、そのストレスが高くなる傾向にあると共に、透光性積層体1が十分な特性を有しているにも関わらず、作製コストが高くなる傾向にある。
第1保護膜20の残留応力は、6000MPa以下であると好ましく、3000MPa以下であるとより好ましい。この残留応力が6000MPaを超えると、第1保護膜20から透光性基材10にかかるストレスが大きくなるため、透光性積層体1の耐衝撃性等の機械的強度が低下する傾向にある。
第1保護膜20の残留応力は、シリコン基板の断面曲線から導出されたストレス曲線と、そのシリコン基板上に第1保護膜20を形成して得られる積層体の断面曲線から導出されたストレス曲線との差から導き出される。
第1保護膜20を透光性基材10の表面上に設けた際、第1保護膜20自体の着色及びクラックの程度、並びに透光性基材10からの第1保護膜20の剥離の程度を評価するのにヘイズが用いられる。この第1保護膜のヘイズは、透光性基材10のヘイズと、透光性基材10と第1保護膜20とからなる積層体のヘイズとを用いて導出される。第1保護膜20は、そのヘイズが0〜2%、好ましくは0〜1%であると、その透明性が更に十分になり、透光性積層体1が、より有効にその機能を発揮できる。
なお、第1保護膜20中には、本発明の作用効果、並びに第1保護膜20を設けるコトによる特有の効果を阻害しない範囲において、酸化チタン及び炭素原子以外の他の成分を添加してもよい。そのような成分としては、例えば亜鉛、窒素、硫黄、シリコン、鉛及び塩素が挙げられる。
第2保護膜30は、酸化ケイ素(SiO)を主成分として含有し、更に炭素原子を含有している。本実施形態において、第2保護膜30は後述するプラズマCVD法により形成されているため、大部分はアモルファス状になっているが、多少の酸化ケイ素微結晶が混在している場合もある。第2保護膜30は、耐擦傷性に非常に優れているほか、紫外線遮断性も高く、その膜自体の耐クラック性にも優れている。
第2保護膜30に含まれる炭素原子の形態は、プラズマCVD法で用いられる原料に依存し、例えば、アルコキシ基、アルキル基、又はエチレンガス等の炭化水素ガス内の炭素原子であってもよい。第2保護膜30は、その炭素原子の含有割合R2が、下記式(2a)で表される条件を満足すると好ましい。
6%≦R2≦20% (2a)
ここで、R2は、下記式(II)で表される条件を満足する値である。
R2=B/(BSi+B+B)×100 (II)
式(II)中、Bは第2保護膜30における炭素原子の含有質量、BSiは第2保護膜30におけるケイ素原子の含有質量、Bは第2保護膜30における酸素原子の含有質量をそれぞれ示す。
含有割合R2が6%を下回ると、第2保護膜30の柔軟性が低下し、第1保護膜20から第2保護膜30が容易に剥離するため、耐擦傷性などの保護膜としての機能を十分に果たせなくなる。また、含有割合R2が6%未満であると、第1保護膜20及び第2保護膜30間の熱膨張率の差異が大きくなるため、温度変化に伴い第2保護膜30が容易に剥離する傾向にある。
一方、含有割合R2が20%を超えると、第2保護膜30の脆性が高くなり、機械的強度が十分でなくなるため、第2保護膜30の剥離やクラックが容易に発生する傾向にある。また、含有割合R2が20%を超えると、第2保護膜30が著しく着色するため、可視光を十分に透過させ難くなる。
また、第2保護膜30は、着色、剥離及びクラックを一層抑制する観点から、下記式(2b)で表される条件を満足すると好ましい。
7%≦R2≦15% (2b)
第2保護膜30における炭素原子の含有割合R2は、第1保護膜20における炭素原子の含有割合R1に対して、下記式(3a)で表される条件を満足すると好ましく、下記式(3b)で表される条件を満足するとより好ましい。これにより、第1保護膜20及び第2保護膜30の熱膨張率を更に近づけることができるので、温度変化による第2保護膜30の剥離やクラックを一層低減することができる。
0%≦|R2−R1|≦14% (3a)
1%≦|R2−R1|≦7% (3b)
第2保護膜30の膜厚は、0.5μm以上であると好ましく、0.75〜2.0μmであるとより好ましく、0.8〜1.2μmであると更に好ましい。この膜厚が0.5μmを下回ると、第2保護膜30の紫外線吸収能が低下して、透光性基材10の変質に伴う着色及び脆化、並びに第1保護膜20の剥離が生じやすくなる傾向にある。また、この膜厚が0.75μm未満であると、耐擦傷性が低下する傾向にある。一方、第2保護膜30の膜厚が2.0μmを上回ると、そのストレスが高くなる傾向にあると共に、透光性積層体1が十分な特性を有しているにも関わらず、作製コストが高くなる傾向にある。
第2保護膜30の残留応力は、6000MPa以下であると好ましい。この残留応力が6000MPaを超えると、第2保護膜30から第1保護膜20及び透光性基材10にかかるストレスが大きくなるため、透光性積層体1の耐衝撃性等の機械的強度が低下する傾向にある。
第2保護膜30の残留応力は、シリコン基板上に第1保護膜20を形成して得られる積層体の断面曲線から導出されたストレス曲線と、その第1保護膜20上に更に第2保護膜30を形成して得られる積層体の断面曲線から導出されたストレス曲線との差から導き出される。
第2保護膜30を第1保護膜20の表面上に設けた際、第2保護膜30自体の着色及びクラックの程度、並びに第1保護膜20からの第2保護膜30の剥離の程度を評価するのにヘイズが用いられる。この第2保護膜30のヘイズは、透光性基材10と第1保護膜とからなる積層体のヘイズと、透光性積層体1のヘイズとを用いて導出される。第2保護膜30は、そのヘイズが0〜2%、好ましくは0〜1%であると、その透明性が更に十分になり、透光性積層体1が、より有効にその機能を発揮できる。
なお、第2保護膜30中には、本発明の作用効果、並びに第2保護膜30を設けることによる特有の効果を阻害しない範囲において、酸化ケイ素及び炭素原子以外の他の成分を添加してもよい。そのような成分としては、例えば亜鉛、窒素、硫黄、チタン、鉛及び塩素が挙げられる。
次に、本実施形態に係る透光性積層体30の製造方法について説明する。透光性積層体30は、透光性基材10の主面上にプラズマCVD法により第1保護膜20を形成する工程(第1保護膜形成工程)と、更に第1保護膜20の主面上にプラズマCVD法により第2保護膜30を形成する工程(第2保護膜形成工程)とを有する製造方法によって製造される。
図2は、本実施形態に係るプラズマCVD装置の模式図である。このプラズマCVD装置は、真空ポンプ(図示せず。)に接続された真空排気管5に接続され、その内部を高真空の状態にできる反応室11を備えている。反応室11は、上部にカソード電極2を配置している。このカソード電極2は、少なくとも一部の表面形状が、第1保護膜20を形成すべき透光性基材10の主面の形状と一致した形状であることが好ましい。このカソード電極2には、透光性基材10を、透光性基材10の第1保護膜20を形成すべき主面の裏面と、その主面の形状と一致した形状を有するカソード電極2の表面とが接するように取り付けることができるようになっている。
図3に、その取り付けた状態の一例を示す模式断面図を示す。この図3は、図2におけるA−A面に沿った断面図である。透光性基材10の第1保護膜20を形成すべき主面Saの裏面Sbと、カソード電極2の表面Scとが接した状態で、透光性基材10がカソード電極2に取り付けられている。透光性基材10の主面Saとカソード電極2の表面Scとは、その形状が一致している。この例では、透光性基材10の厚さが一様であるため、透光性基材10の裏面Sbとカソード電極2の表面Scとはその全体に亘って接している。カソード電極2において透光性基材10が取り付けられていない表面部分は、保護膜の成分の堆積を防ぐため、反応室11にアースされたシールド部材8で覆われ、かつ、シールド部材8とカソード電極2との間には絶縁フィルム9が挟まれている。
カソード電極2には、反応室11の外側にある高周波電源装置6から高周波電力(13.56MHz)を供給できるようになっている。カソード電極2と高周波電源装置6との間にはバイアスコンデンサ7が配置されている。また、反応室11内には、反応室11内の温度を調整するためのヒータ22が備えられている。
反応室11内には、第1保護膜20及び第2保護膜30の原料ガスである、有機チタン化合物ガス、有機ケイ素化合物ガス、酸素(O)ガス及びエチレン(C)ガス、並びに、キャリアガスであるArやHeガスを導入できるようになっている。酸素ガスは、流量制御器12を通過した後に、ガス導入管3により反応室1内へ導入される。また、エチレンガスは、流量制御器12を通過した後に、ガス導入管17により反応室1内に導入される。また、ArやHeガスは、後述する有機チタン化合物及び有機ケイ素化合物を反応室11内に導入するためのキャリアガスとして機能する。したがって、ArやHeガスはその他の希ガスあるいは窒素ガスなどの不活性ガスに代えてもよい。
容器15は有機チタン化合物、あるいは、有機ケイ素化合物を収容するための容器である。本実施形態で第1保護膜20及び第2保護膜30を形成するための原料となる有機チタン化合物及び有機ケイ素化合物は、それ自体が液体又は固体の状態で用いる。したがって、これらの原料を収容した容器15を水槽16内で水浴又はオイル浴させ、温度制御装置20で水槽16内の水温を調節して、有機チタン化合物又は有機ケイ素化合物を適当な温度に加熱して蒸気圧を高めることができるようになっている。また、Arガスは、流量制御器12を通過した後にキャリアガス導入管18によって容器15内に導入される。Arガスにより有機チタン化合物又は有機ケイ素化合物をバブリングすることにより、それらの混合ガスを得る。この混合ガスは、圧力制御弁13と圧力制御器14を通過した後に、原料導入管4により反応室11内に導入されるようになっている。
第1保護膜20の原料となる上記有機チタン化合物としては、例えば、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラブトキシド等の金属チタンアルコキシド;テトラジメチルアミノチタン等のアルキルアミン系の有機チタン化合物;二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタン等のハロゲン化チタンが挙げられる。これらの中では、蒸気圧の大きさ、材料コスト、酸化力(安全性)の高さの観点から、金属チタンアルコキシドが好ましく、チタニウムテトライソプロポキシドがより好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
第2保護膜30の原料となる上記有機ケイ素化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン;ジメチルシラン、テトラメチルシラン、ヘキサメチルジシラン等のアルキルシラン;二塩化シラン、三塩化シラン等のハロゲン化シラン;モノシラン、ジシラン等のシラン;ヘキサメチルシロキサン等のシロキサン化合物が挙げられる。これらの中では、蒸気圧の大きさ、材料コスト、酸化力(安全性)の高さの観点から、2官能以上のアルキルシラン及び/又はアルキルシロキサンが好ましく、ヘキサメチルジシラン及び/又はヘキサメチルジシロキサンがより好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
次に、このプラズマCVD装置を用いた透光性積層体の製造方法について説明する。ここでは、有機チタン化合物として、チタニウムテトライソプロポキシド(以下、「TTIP」と表記する。)、有機シラン化合物としてヘキサメチルジシラン又はヘキサメチルジシロキサン(以下、「HMDS」と表記する。)を用いた場合について説明するが、本発明はこの場合に限定されない。
まず、カソード電極2の所定位置に透光性基材10を取り付ける。次に、反応室11内の空気を真空ポンプで排気して反応室11を高真空とする。その後、第1保護膜形成工程において、反応室11内に、酸素ガスと、エチレンガスと、He及びTTIPの混合ガスとを導入する。
次いで、必要に応じて、反応室11内の温度及び圧力を調整する。反応室11内の温度及び圧力は、第1保護膜20の原料であるガスがプラズマ化可能なものであればよく、例えば、20〜120℃、5〜140Pa程度であってもよい。
次に、高周波電力をカソード電極2に供給する。これにより、カソード電極2を通じて反応室11内にグロー放電が生じ、反応室11内のガスがプラズマ化される。この際、反応室11内のガスがプラズマ化され、酸素ラジカルの働きによりTTIPのガス分子と反応し、TiOを生成させる。酸素ラジカルを用いたプラズマCVDでは、TTIPは酸素ラジカルと反応し、Ti−C結合及びC−H結合が切断され、TiO、Ti(OH)のような前駆体が生じる。そして、これらの前駆体が次第に透光性基材10の表面上に堆積していくことにより、透光性基材10の表面上に、酸化チタンを主成分とし、炭素原子を含む第1保護膜20が形成されていく。
この際、炭素原子の含有割合R1は、酸素ガス、TTIPガス、Arガス及びエチレンガスの混合比を調節することで、上記式(1a)で表される条件を満足するように調整される。また、含有割合R1は、プロセス圧力及び高周波電力量(高周波出力)を調節することによって、上記式(1a)で表される条件を満足するように調整することができる。
また、第1保護膜20の残留応力は、高周波電力を例えば100W以下で調節すると同時に、炭素原子の含有割合R1を上述のようにして調節することで、所望の数値範囲内に収まるよう調整することができる。さらには、第1保護膜20の膜厚は、上記各ガスの反応室11内への導入量、プロセス圧力、高周波電力量(高周波出力)、透光性基材10の温度及びプラズマ発生時間(高周波電力供給時間)を調節することによって、所望の数値範囲内に入るよう調整することができる。
次に、高周波電力の供給を停止すると同時に、第1保護膜20の原料となるガスの反応室11内への供給を停止する。続いて、反応室11内をパージした後、反応室11内の残存ガスを真空ポンプで排気して反応室11を再び高真空とする。この際の反応室11内の温度及び圧力は第2保護膜30の原料であるガスがプラズマ化可能なものであればよく、例えば、20〜120℃、5〜140Pa程度であってもよい。
また、容器15には、TTIPに代えて、第2保護膜30の原料となるHMDSを収容する。
次いで、第2保護膜形成工程において、上記温度及び圧力で保持された反応室11内に、酸素ガスと、エチレンガスと、Heガス及びHMDSの混合ガスとを導入すると共に、高周波電力をカソード電極2に供給する。なお、He及びHMDSの混合ガスは、液状のHMDSにHeをバブリングすることにより得られるものである。すると、カソード電極2を通じて反応室11内にグロー放電が生じ、反応室11内のガスがプラズマ化される。この際、反応室11内のガスがプラズマ化され、酸素ラジカルの働きによりHMDSのガス分子と反応し、SiOを生成させる。酸素ラジカルを用いたプラズマCVDでは、HMDSは酸素ラジカルと反応し、Si−C結合及びC−H結合が切断され、SiO、Si(OH)のような前駆体が生じる。そして、これらの前駆体が次第に第1保護膜20の表面上に堆積していくことにより、第1保護膜20の表面上に、酸化ケイ素を主成分とし、炭素原子を含む第2保護膜30が形成されていく。
この際、炭素原子の含有割合R2は、酸素ガス、HMDSガス、Heガス及びエチレンガスの混合比を調節することで、上記式(1a)で表される条件を満足するように調整される。また、含有割合R2は、プロセス圧力及び高周波電力量(高周波出力)を調節することによって、上記式(2a)で表される条件を満足するように調整することができる。
また、第2保護膜30の残留応力は、高周波電力を例えば100W以下で調節すると同時に、炭素原子の含有割合R2を上述のようにして調節することで、所望の数値範囲内に収まるよう調整することができる。さらには、第2保護膜30の膜厚は、上記各ガスの反応室11内への導入量、プロセス圧力、高周波電力量(高周波出力)、透光性基材10の温度及びプラズマ発生時間(高周波電力供給時間)を調節することによって、所望の数値範囲内に入るよう調整することができる。
こうして、透光性基材10の主面上に、第1保護膜20及び第2保護膜30がこの順に積層された透光性積層体1が得られる。第1保護膜20及び第2保護膜30は、密閉された反応室11内でプラズマCVDにより形成されているため、有機溶剤等が大気中に無駄に放出されることは十分に防止される。また、この第1保護膜20及び第2保護膜30の形成は低温で行えるので、透光性基材10が第1保護膜20及び第2保護膜30の形成時における熱による変形や劣化を受け難い。
ところで、カソード電極2周囲においては、電子の速度はイオンの速度に比較して非常に早い。そのため、電子のみがカソード電極2に速やかに流入して、カソード電極が負に帯電してわずかに負のセルフバイアス電位となる一方、カソード電極2周囲全体にカソード電極に到達できないイオンが集中したイオンシース(イオンさや)が均一に形成される。カソード電極2が負バイアス電位になると、カソード電極2と高周波電源装置6との間に配置されたバイアスコンデンサ7が、カソード電極2の負バイアス電位を保持する。そして、イオンシース内では、TTIPやHMDSが解離し、更に電離したイオンが高密度に存在する。これらのイオンが、カソード電極2のわずかな負バイアス電位によってカソ−ド2に向かって均一にゆっくりと吸引され、透光性基材10又は第1保護膜20表面にほぼ均一な厚さに堆積することにより、第1保護膜20及び第2保護膜30が形成されると考えられる。
こうして得られた透光性積層体1は、自動車用等の車両用灯具のレンズに好適に用いられる。車両用灯具のレンズは、その使用環境に起因して高い耐衝撃性及び耐候性が要求される。本実施形態の透光性積層体1は、長時間に亘る太陽光の照射を受けても、透光性基材10の着色が十分に防止される。その上、衝撃を受けたり、苛酷な気候に曝されたりしても、第1保護膜20及び第2保護膜のクラックや剥離が抑制される。したがって、透光性積層体1は、特に安全性の観点から高い透光性が要求される車両用灯具のレンズとして適している。
更に、耐擦傷性に優れた第2保護膜30は、車両用灯具レンズのハードコートとして効果的に機能するため、この第2保護膜30を最外層に備えた透光性積層体1は、そのような観点からも車両用灯具のレンズとして好適に用いられる。
また、透光性積層体1を車両用灯具のレンズとして用いた場合、複雑な形状のレンズ面においても、膜厚が均一な薄膜を作製することが可能となる。そのため、膜厚に依存する性能であるガソリン等の耐薬品性能も向上できるという有利な効果も認められる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
例えば、本発明の透光性基材は、車両用灯具のレンズに限定されず、可視光を透過可能な基材であれば、その形状及び用途は限定されない。車両用灯具のレンズ以外の透光性基材の用途としては、例えば、車両用窓ガラス、一般用窓ガラス、パーソナルコンピュータなどに備えられる表示素子用レンズ、船舶用窓ガラス、航空機用窓ガラスが挙げられる。ただし、プラズマCVD法により均一な膜厚の保護膜を精度よく形成するためには、カソード電極表面と、保護膜を形成すべき表面との距離が、その全体に亘って同程度であることが好ましい。よって、透光性基材は、その厚さが全体に亘って一様であることが好ましい。
また、透光性基材の材料である樹脂としては、上述のポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートの他、ポリアルキルアクリレート;ポリメチルメタクリレート以外のポリアクリルメタクリレート;ポリプロピレン;透明ポリスチレン;透明エポキシ樹脂;メチルメタクリレート・スチレンモノマー共重合体;ポリアレート;ポリサルフォン;ポリエーテルサルフォン;ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート等のポリアルキレンテレフタラート;ポリイミドなどが挙げられる。また透光性基材の材料としては、上記樹脂及びガラス以外に、ハードコート処理サンプル(二重サンプル)が挙げられる。
さらには、第2保護膜は設けなくてもよく、あるいは、第2保護膜に代えて、別の材料を主成分とする保護膜を設けてもよい。また、第2保護膜の表面上に更に別の保護膜を設けてよい。
また、透光性積層体の用途としては、上述の車両用灯具のレンズ以外に、車両用窓ガラス、一般用窓ガラス、パーソナルコンピュータなどに備えられる表示素子用レンズ、船舶用窓ガラス、航空機用窓ガラスが挙げられる。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
上述と同様のプラズマCVD装置を用いて、下記のようにして透光性積層体を作製した。まず、カソード電極をプラズマCVD装置の所定位置に設置した。なお、カソード電極の透光性基材と接する部分の表面面積は400cmであった。次に、カソード電極の一部の表面に接するように、平板状のポリカーボネート製透光性基材(厚み:3mm)を取り付けた。
なお、この透光性基材に特定時間光を照射した後のイエローインデックス(以下、「YI」と表記する。)を、分光光度計(ミノルタ社製、商品名「CM−3700d」、光源:D65)を用いて測定したところ、図5に示すようになった。図5の横軸は照射光の分光波長を示す。図5から、この透光性基材は、特に紫外領域で劣化しやすいことがわかった。
次いで、反応室内の圧力が0.1Paになるまで、そこに存在する空気を真空ポンプで排気した。その後、反応室内に、酸素ガス、アルゴンガス、TTIPガス及びヘリウムガスを導入した。酸素ガスの流量は20sccm、アルゴンガスの流量は10sccm、ヘリウムガスの流量は5sccmとした。また、TTIPガスの流量は、下記計算方法を用い、キャリアガスとの混合分圧を調節することにより、40Torr(約5.3kPa)となるよう制御された。なお、液状のTTIPガスは、TTIPにキャリアガスをバブリングすることにより得られた。
すなわち、TTIPの流量をFs、蒸気圧をPs、キャリアガスであるArやHeガスの流量をFc、圧力(分圧)をPc、全圧をPaとすると、
Pc/Ps=Fc/Fs
の関係が成立する。ここで、
Pc=Pa−Ps
なので、
Fs=Fc×Ps/(Pa−Ps)
となる。したがって、各温度におけるTTIPの蒸気圧と、キャリアガスの流量と、全圧とを測定した上で、これらを調節することによって、TTIPガスの流量を制御した。
次に、反応室内の圧力は上述と同様に維持し、温度が100℃になるようヒータを調整した。そして、RF出力100Wで、高周波電力をカソード電極に供給し、反応室内のガスをプラズマ化して、第1保護膜の形成を開始した。
そして、第1保護膜を15分間形成した後、高周波電力の供給を停止した。こうして、透光性基材の表面上に第1保護膜を設けてなる透光性積層体を得た。
この透光性積層体における第1保護膜の膜厚を、表面粗さ計(日本真空技術社製、商品名「DEKTAK6M」)により測定した。また、第1保護膜における炭素原子、チタン原子及び酸素原子の含有割合をXPS装置(アルバック・ファイ社製、商品名「Quantera SXM」)を用いて測定した。これらの結果を表1に示す。
Figure 2008045160

また、SMカラーコンピュータ(スガ試験機社製、商品名「SM−3」)を用いて、透光性積層体のイエローインデックス(以下、「YI」と表記する。)を測定した。更に、ヘイズコンピュータ(スガ試験機社製、商品名「Hz−2」)を用いて、透光性積層体のヘイズを測定した。これらの結果を表1に示す。
(実施例2〜6、比較例1、2)
酸素ガス、アルゴンガス又はエチレンガス、TTIPガス及びヘリウムガスの流量を表2に示すように代えた以外は実施例1と同様にして、透光性積層体を得た。得られた透光性積層体の第1保護膜における炭素原子、チタン原子及び酸素原子の含有割合、YI及びヘイズを実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
Figure 2008045160

(実施例7〜12)
まず、実施例1と同様にして、透光性基材の表面上に第1保護膜を形成してなる積層体を得た。次に、反応室内をパージして、再びその中の圧力が0.1Paになるまで、そこに存在するガスを真空ポンプで排気した。その後、反応室内に、酸素ガス、エチレンガス、HMDSガス及びヘリウムガスを導入した。酸素ガス、エチレンガス、HMDSガス及びヘリウムガスの流量は、表3に示す。なお、HMDSガスは、液状のHMDSにヘリウムガスをバブリングすることにより得られた。
Figure 2008045160

次に、反応室内の圧力は上述と同様に維持し、温度が100℃になるようヒータを調整した。そして、RF出力100Wで、高周波電力をカソード電極に供給し、反応室内のガスをプラズマ化して、第2保護膜の形成を開始した。
そして、第2保護膜を15分間形成した後、高周波電力の供給を停止した。こうして、透光性基材の表面上に第1保護膜及び第2保護膜をこの順で設けてなる透光性積層体を得た。
この透光性積層体における第2保護膜の膜厚を、上記表面粗さ計により測定した。また、第2保護膜における炭素原子、チタン原子及び酸素原子の含有割合を上述のXPS装置を用いて測定した。これらの結果を表4に示す。
Figure 2008045160

また、上述のSMカラーコンピュータを用いて、透光性積層体のYIを測定した。更に、上記ヘイズコンピュータを用いて、透光性積層体のヘイズを測定した。これらの結果を表4に示す。
[耐熱性評価]
上述の各透光性積層体を、大気雰囲気下、120℃で240時間静置した。その後の透光性積層体のヘイズを測定して、その耐熱性を評価した。結果を表5に示す。ヘイズの上昇は、保護膜の剥離やクラックの発生により拡散透過率が低下することに起因すると考えられる。
Figure 2008045160

[耐湿熱性評価]
実施例3、10の透光性積層体を、大気雰囲気、120℃、95%RHの環境下に15時間静置してPCTを行った。その後の透光性積層体のヘイズを測定して、その耐湿熱性を評価した。その結果、いずれの透光性積層体もPCT前後でのヘイズにほとんど変化が認められず、耐湿熱性が良好であることが確認できた。
[耐水性評価]
実施例3、10の透光性積層体を、40℃のイオン交換水中に240時間浸漬した。その後の透光性積層体のヘイズを測定して、その耐水性を評価した。その結果、いずれの透光性積層体も水中への浸漬前後でのヘイズにほとんど変化が認められず、耐水性が良好であることが確認できた。
[耐温水性評価]
実施例3、10の透光性積層体を、80℃のイオン交換水中に240時間浸漬した。その後の透光性積層体のヘイズを測定して、その耐温水性を評価した。その結果、いずれの透光性積層体も水中への浸漬前後でのヘイズにほとんど変化が認められず、耐温水性が良好であることが確認できた。
[耐湿性評価]
実施例3、10の透光性積層体を、大気雰囲気、60℃、95%RHの高湿環境下に240時間静置した。その後の透光性積層体のヘイズを測定して、その耐湿性を評価した。その結果、いずれの透光性積層体も高湿環境下への静置前後でのヘイズにほとんど変化が認められず、耐湿性が良好であることが確認できた。
[耐候性評価]
実施例3、10の透光性積層体に対して、2000時間のSWOM(サンシャインウェザオメーター)による促進耐候性試験を行った。その後の透光性積層体のヘイズを測定して、その耐候性を評価した。その結果、いずれの透光性積層体もこの試験前後でのヘイズにほとんど変化が認められず、耐候性が良好であることが確認できた。
(比較例3)
第1保護膜を設けず、透光性基材の表面上に直接第2保護膜を形成した以外は実施例10と同様にして、比較例3の透光性積層体を得た。
[紫外線遮断性評価]
実施例3、10、及び比較例3の透光性積層体、並びに保護膜を設けていない上記透光性基材に対して、所定時間のSWOMによる促進耐候性試験を行った。そして、促進耐候性試験後の各透光性積層体及び透光性基材のYIを測定した。結果を図6に示す。b1は実施例3、b2は実施例10、b3は比較例3の透光性積層体を用いた場合のYIであり、b4は透光性基材を用いた場合のYIである。なお、横軸は促進耐候性試験の時間を示す。
(実施例13、14)
第1保護膜の形成時間を変更して、その膜厚を0.3μm、1.0μmに代えた以外は、実施例1と同様にして、それぞれ実施例13、14の透光性積層体を得た。
[光透過率の測定]
分光光度計(日立製作所社製、商品名「U−4100」、光源:D2及びWI)を用いて、実施例3、13、14の透光性積層体の光透過率を測定した。結果を図4に示す。図4中、a1は実施例13(第1保護膜膜厚:0.3μm)、a2は実施例3(第1保護膜膜厚:0.5μm)、a3は実施例14(第1保護膜膜厚:1.0μm)の透光性積層体に係る結果である。これらの結果より、第1保護膜の膜厚が0.3μm以上であると、優れた紫外線遮断性を示すことが確認できた。
(実施例15、16)
第1保護膜及び第2保護膜の形成時間を変更して、第1保護膜の膜厚を0.5μm、第2保護膜の膜厚をそれぞれ1.0μm、0.3μmに代えた以外は実施例7と同様にして、それぞれ実施例15、16の透光性積層体を得た。
(比較例4〜6)
第2保護膜の形成時間を変更して、その膜厚をそれぞれ0.5μm、1.0μm、2.0μmに代えた以外は比較例3と同様にして、それぞれ比較例4〜6の透光性積層体を得た。
[耐擦傷性評価]
実施例15、16、及び比較例4〜6の透光性積層体、上記透光性基材、及び参考例として出願人による自動車灯具用ハードコートをサンプルとして、市販のラビングテスターを用い、耐擦傷性評価を行った。評価は、荷重:510g、擦り距離:片道60mm、擦り速度:11往復/分、擦り回数:50往復、研磨材:スチールウール000番、の条件でサンプルの表面を擦傷した前後に、サンプルのヘイズを上述のヘイズコンピュータで測定して、擦傷前後でのヘイズの変化分(Δヘイズ)を導出することにより行った。結果を表6に示す。
Figure 2008045160

本発明に係る透光性積層体の模式断面図である。 本発明の実施形態に係るプラズマCVD装置の模式図である。 図2のA−A線に沿った模式断面図である。 実施例に係る透光性積層体の分光透過率曲線である。 透光性基材の分光照射によるYI曲線を示す図ある。 透光性積層体及び透光性基材の耐候性を評価する図である。
符号の説明
1…透光性積層体、2…カソード電極、3、17、18…ガス導入管、4…原料導入管、5…真空排気管、6…高周波電源装置、7…バイアスコンデンサ、8…シールド部材、9…絶縁フィルム、10…透光性基材、11…反応室、12…流量制御器、13、14…圧力制御器、15…容器、16…水槽、20…第1保護膜、22…ヒータ、24…温度制御装置、30…第2保護膜。

Claims (5)

  1. 透光性基材と、その透光性基材の主面上にプラズマCVD法により形成されかつ酸化チタンを主成分とする第1保護膜と、を備え、
    前記第1保護膜は下記式(1)で表される条件を満足する、透光性積層体。
    6%≦A/(ATi+A+A)×100≦15% (1)
    (式(1)中、Aは前記第1保護膜における炭素原子の含有質量、ATiは前記第1保護膜におけるチタン原子の含有質量、Aは前記第1保護膜における酸素原子の含有質量をそれぞれ示す。)
  2. 前記第1保護膜の前記透光性基材と反対側の主面上にプラズマCVD法により形成されかつ酸化ケイ素を主成分とする第2保護膜を更に備える、請求項1記載の透光性積層体。
  3. 前記第2保護膜は下記式(2)で表される条件を満足する、請求項2記載の透光性積層体。
    6%≦B/(BSi+B+B)×100≦20% (2)
    (式(2)中、Bは前記第2保護膜における炭素原子の含有質量、BSiは前記第2保護膜におけるケイ素原子の含有質量、Bは前記第2保護膜における酸素原子の含有質量をそれぞれ示す。)
  4. 前記第2保護膜は、6000MPa以下の残留応力を有する、請求項2又は3に記載の透光性積層体。
  5. 前記第1保護膜は0.3〜1.0μmの膜厚を有し、前記第2保護膜は0.75〜2.0μmの膜厚を有する、請求項2〜4のいずれか一項に記載の透光性積層体。

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