以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するためのレーザ加工装置、レーザ加工条件設定装置、レーザ加工条件設定方法、レーザ加工条件設定プログラム、コンピュータで読み取り可能な記録媒体及び記録した機器を例示するものであって、本発明はレーザ加工装置、レーザ加工条件設定装置、レーザ加工条件設定方法、レーザ加工条件設定プログラム、コンピュータで読み取り可能な記録媒体及び記録した機器を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
本明細書においてレーザ加工装置とこれに接続される操作、制御、入出力、表示、その他の処理等のためのコンピュータ、プリンタ、外部記憶装置その他の周辺機器との接続は、例えばIEEE1394、RS−232x、RS−422、RS−423、RS−485、USB、PS2等のシリアル接続、パラレル接続、あるいは10BASE−T、100BASE−TX、1000BASE−T等のネットワークを介して電気的に接続して通信を行う。接続は有線を使った物理的な接続に限られず、IEEE802.1x、OFDM方式等の無線LANやBluetooth(登録商標)等の電波、赤外線、光通信等を利用した無線接続等でもよい。さらに観察像のデータ保存や設定の保存等を行うための記録媒体には、メモリカードや磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が利用できる。
以下の実施の形態では、本発明を具現化したレーザ加工装置の一例として、レーザマーカについて説明する。ただ、本明細書においてレーザ加工装置は、その名称に拘わらずレーザ応用機器一般に利用でき、例えばレーザ発振器や各種のレーザ加工装置、穴あけ、マーキング、トリミング、スクライビング、表面処理等のレーザ加工や、レーザ光源として他のレーザ応用分野、例えばDVDやBlu−ray(登録商標)等の光ディスクの高密度記録再生用光源や通信用の光源、印刷機器、照明用光源、ディスプレイ等の表示装置用の光源、医療機器等において、好適に利用できる。
また、本明細書においては加工の代表例として印字について説明するが、上述の通り印字加工に限られず、溶融や剥離、表面酸化、切削、変色などのレーザ光を使ったあらゆる加工処理においても利用できる。また印字とは文字や記号、図形等のマーキングの他、上述した各種の加工も含む概念で使用する。さらに本明細書において加工パターンは、ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベットや数字、記号、絵文字、アイコン、ロゴ、バーコードや2次元コード等のグラフィック等、さらに直線、曲線等の図形も含める意味で使用する。
図1はレーザ加工装置100を構成するブロック図を示す。この図に示すレーザ加工装置100は、レーザ制御部1とレーザ出力部2と入力部3とを備える。
(入力部3)
入力部3はレーザ制御部1に接続され、レーザ加工装置を操作するための必要な設定を入力してレーザ制御部1に送信する。設定内容はレーザ加工装置の動作条件や具体的な印字内容等である。入力部3はキーボードやマウス、コンソール等の入力デバイスである。また、入力部3で入力された入力情報を確認したり、レーザ制御部1の状態等を表示する表示部82を別途設けることもできる。表示部82はLCDやブラウン管等のモニタが利用できる。またタッチパネル方式を利用すれば、入力部と表示部を兼用することもできる。これによって、コンピュータ等を外部接続することなく入力部でレーザ加工装置の必要な設定を行うことができる。
(レーザ制御部1)
レーザ制御部1は、制御部4とメモリ部5とレーザ励起部6と電源7とを備える。入力部3から入力された設定内容をメモリ部5に記録する。制御部4は必要時にメモリから設定内容を読み込み、印字内容に応じた印字信号に基づいてレーザ励起部6を動作させてレーザ出力部2のレーザ媒質8を励起する。メモリ部5はRAMやROM等の半導体メモリが利用できる。またメモリ部5はレーザ制御部1に内蔵する他、挿抜可能なPCカードやSDカード等の半導体メモリカード、カード型ハードディスク等のメモリカードを利用することもできる。メモリカードで構成されるメモリ部5は、コンピュータ等の外部機器で容易に書き換え可能であり、コンピュータで設定した内容をメモリカードに書き込み、レーザ制御部1にセットすることで、入力部をレーザ制御部に接続することなく設定を行うことができる。特に半導体メモリはデータの読み込み・書き込みが高速で、しかも機械的動作部分がないため振動等に強く、ハードディスクのようなクラッシュによるデータ消失事故を防止できる。
さらに制御部4は、設定された印字を行うようレーザ媒質8で発振されたレーザ光Lを印字対象物(ワーク)W上で走査させるため、レーザ出力部2の走査部9を動作させる走査信号を走査部9に出力する。電源7は、定電圧電源として、レーザ励起部6へ所定電圧を印加する。印字動作を制御する印字信号は、そのHIGH/LOWに応じてレーザ光LのON/OFFが切り替えられ、その1パルスが発振されるレーザ光Lの1パルスに対応するPWM信号である。PWM信号は、その周波数に応じたデューティ比に基づいてレーザ強度が定められるが、周波数に基づいた走査速度によってもレーザ強度が変化するよう構成することもできる。
(レーザ励起部6)
レーザ励起部6は、光学的に接合されたレーザ励起光源10とレーザ励起光源集光部11を備える。レーザ励起部6の内部の一例を図4の斜視図に示す。この図に示すレーザ励起部6は、レーザ励起光源10とレーザ励起光源集光部11をレーザ励起部ケーシング12内に固定している。レーザ励起部ケーシングは、熱伝導性の良い真鍮等の金属で構成され、レーザ励起光源10を効率よく外部に放熱する。レーザ励起光源10は半導体レーザやランプ等で構成される。図4の例では、複数の半導体レーザダイオード素子を直線状に並べたレーザダイオードアレイを使用しており、各素子からのレーザ発振がライン状に出力される。レーザ発振はレーザ励起光源集光部11の入射面に入射されて、出射面から集光されたレーザ励起光として出力される。レーザ励起光源集光部11はフォーカシングレンズ等で構成される。レーザ励起光源集光部11からのレーザ励起光は光ファイバケーブル13等によりレーザ出力部2のレーザ媒質8に入射される。レーザ励起光源10とレーザ励起光源集光部11、光ファイバケーブル13は、空間あるいは光ファイバを介して光学的に結合されている。
(レーザ出力部2)
レーザ出力部2は、レーザ発振部50を備える。レーザ光Lを発生させるレーザ発振部50は、レーザ媒質8と、レーザ媒質8が放出する誘導放出光の光路に沿って所定の距離を隔てて対向配置された出力ミラー及び全反射ミラーと、これらの間に配されたアパーチャ、Qスイッチ等を備える。レーザ媒質8が放出する誘導放出光を、出力ミラーと全反射ミラーとの間での多重反射により増幅し、Qスイッチの動作により短周期にて通断しつつアパーチャによりモード選別して、出力ミラーを経てレーザ光Lを出力する。図1に示すレーザ出力部2は、レーザ媒質8と走査部9を備える。レーザ媒質8は光ファイバケーブル13を介してレーザ励起部6から入射されるレーザ励起光で励起されて、レーザ発振される。レーザ媒質8はロッド状の一方の端面からレーザ励起光を入力して励起され、他方の端面からレーザ光Lを出射する、いわゆるエンドポンピングによる励起方式を採用している。
(レーザ媒質8)
上記の例では、レーザ媒質8としてロッド状のNd:YVO4の固体レーザ媒質を用いた。また固体レーザ媒質の励起用半導体レーザの波長は、このNd:YVO4の吸収スペクトルの中心波長である809nmに設定した。ただ、この例に限られず他の固体レーザ媒質として、例えば希土類をドープしたYAG、LiSrF、LiCaF、YLF、NAB、KNP、LNP、NYAB、NPP、GGG等も用いることもできる。また、固体レーザ媒質に波長変換素子を組み合わせて、出力されるレーザ光Lの波長を任意の波長に変換できる。また、レーザ媒質としてバルクに代わってファイバーを発振器として利用した、いわゆるファイバーレーザにも適用可能である。
さらに、固体レーザ媒質を使用せず、言い換えるとレーザ光を発振させる共振器を構成せず、波長変換のみを行う波長変換素子を使用することもできる。この場合は、半導体レーザの出力光に対して波長変換を行う。波長変換素子としては、例えばKTP(KTiPO4)、有機非線形光学材料や他の無機非線形光学材料、例えばKN(KNbO3)、KAP(KAsPO4)、BBO、LBOや、バルク型の分極反転素子(LiNbO3(Periodically Polled Lithium Niobate :PPLN)、LiTaO3等)が利用できる。また、Ho、Er、Tm、Sm、Nd等の希土類をドープしたフッ化物ファイバを用いたアップコンバージョンによるレーザの励起光源用半導体レーザを用いることもできる。このように、本実施の形態においてはレーザ発生源として様々なタイプを適宜利用できる。
さらにまた、レーザ発振部は、固体レーザに限られず、CO2やヘリウム−ネオン、アルゴン、窒素等の気体を媒質として用いる気体レーザを利用することもできる。例えば炭酸ガスレーザを用いた場合のレーザ発振部は、レーザ発振部の内部に炭酸ガス(CO2)が充填され、電極を内蔵しており、レーザ制御部から与えられる印字信号に基づいて、レーザ発振部内の炭酸ガスを励起し、レーザ発振させる。
(走査系)
次に、レーザ加工装置のレーザ光走査系を図5、図6、図7に示す。これらの図において、図5はレーザ加工装置のレーザ光走査系の構成を示す斜視図を、図6は図5を逆方向から見た斜視図を、図7は側面図を、それぞれ示している。これらの図に示すレーザ加工装置は、レーザ光Lを発生させるレーザ発振部と光路を一致させたZ軸スキャナを内蔵するビームエキスパンダ53と、X軸スキャナ14aと、X軸スキャナ14aと直交するよう配置されたY軸スキャナ14bとを備える。このレーザ光走査系は、レーザ発振部より出射されるレーザ光LをX軸スキャナ14a、Y軸スキャナ14bで作業領域WS内で2次元的に走査させ、さらにZ軸スキャナ14cで高さ方向にワーキングディスタンスすなわち焦点距離を調整することができ、3次元状に印字加工が可能となる。なお図において集光レンズであるfθレンズは図示を省略している。
レーザ加工装置においては一般に、第2のミラー(Y軸スキャナ)で反射されたレーザ光を作業領域に照射させるよう集光するために、第2のミラーと作業領域の間には、fθレンズと呼ばれる集光レンズを配置している。fθレンズは、Z軸方向の補正を行う。具体的には、図8に示すように、作業領域WSの端部に近付くほど焦点位置を伸ばし、ワークWの加工面上に位置させる補正である。
レーザマーカにおいて、例えばスポット径を約50μmより小さいビームを形成したい場合は、fθレンズを配置することが好ましい。一方、上述の小スポット径よりも大きい、スポット径が約100μm程度(通常良く使用されるスポット径)のビーム径を採用する場合は、Z軸スキャナ側のビームエキスパンダに備えられたZ軸集光レンズをZ軸方向に移動させることにより、fθレンズが行うべきZ軸方向の補正を、補正制御として行うことができる。これにより、スポット径が大きい場合はfθレンズを省略することも可能となる。上述した図8の例では、fθレンズが行うべきZ軸方向の補正を、Z軸スキャナの補正制御に行わせることができる。
各スキャナは、光を反射する反射面として全反射ミラーであるガルバノミラーと、ガルバノミラーを回動軸に固定して回動するためのガルバノモータと、回動軸の回転位置を検出して位置信号として出力する位置検出部を備える。またスキャナは、スキャナを駆動するスキャナ駆動部に接続される。スキャナ駆動部はスキャナ制御部に接続され、スキャナを制御する制御信号をスキャナ制御部から受けて、これに基づいてスキャナを駆動する。例えばスキャナ駆動部は、制御信号に基づいてスキャナを駆動する駆動電流を調整する。またスキャナ駆動部は、制御信号に対する各スキャナの回転角の時間変化を調整する調整機構を備える。調整機構は、スキャナ駆動部の各パラメータを調整する可変抵抗等の半導体部品で構成される。
(Z軸スキャナ14c)
Z軸スキャナ14cはレーザ光Lのスポット径を調整し、これによって焦点距離を調整するビームエキスパンダ53を構成している。すなわち、ビームエキスパンダで入射レンズと出射レンズとの相対距離を変化させることでレーザ光のビーム径を拡大/縮小し、焦点位置も変化させることができる。ビームエキスパンダ53は、小スポットへの集光を効果的に行わせるため、図5に示すようにガルバノミラーの前段に配置され、レーザ発振部から出力されるレーザ光Lのビーム径を調整すると共に、レーザ光Lの焦点位置を調整可能としている。Z軸スキャナ14cがワーキングディスタンスを調整する方法を、図9〜図11に基づいて説明する。図9、図10はレーザ光走査系の側面図であり、図9はレーザ光Lの焦点距離を長くする場合、図10は焦点距離を短くする場合をそれぞれ示している。また図11はZ軸スキャナ14cの正面図及び断面図を示している。これらの図に示すように、Z軸スキャナ14cはレーザ発振部側に面する入射レンズ16と、レーザ出射側に面する出射レンズ18を含んでおり、これらのレンズ間の距離を相対的に変化可能としている。図9〜図11の例では、出射レンズ18を固定し、入射レンズ16を光軸方向に沿って駆動モータ等で摺動可能としている。図11は出射レンズ18の図示を省略して、入射レンズ16の駆動機構を示している。この例では、コイルと磁石によって軸方向に可動子を摺動可能とし、可動子に入射レンズ16を固定している。ただ、入射レンズ側を固定して出射レンズ側を移動可能としたり、入射レンズ、出射レンズを共に移動可能とすることもできる。
図9に示すように、入射レンズ16と出射レンズ18との間の距離を近付けると、焦点位置が遠ざかり、焦点距離(ワーキングディスタンス)が大きくなる。逆に図10に示すように入射レンズ16と出射レンズ18との距離を離すと、焦点位置が近付き焦点距離が小さくなる。
なお、3次元加工、すなわちワークの高さ方向への加工が可能なレーザ加工装置は、上記図9、図10のようにZ軸スキャナを調整する方式の他、例えば物理的に集光レンズを移動させる、あるいはレーザ出力部やマーキングヘッド自体を移動可能とする等、他の方式を利用することも可能である。
上記実施例では、ビームエキスパンダには、入射レンズと出射レンズの2つのレンズを搭載する構造を採用し、この2つの入射レンズと出射レンズの間の相対距離を変化させることにより、レーザ光の焦点距離を調整可能とした。ただ、いずれか一方のレンズは、レーザ発振部から照射されるレーザ光の光軸上の固定側に配置されてもよく、その場合は他方のレンズのみをビームエキスパンダの機構によって、レーザ発振部から照射されるレーザ光の光軸に沿って移動させるようにすればよい。
(ディスタンスポインタ)
また、3次元加工可能なレーザマーカの作業領域の中心に焦点位置を調整するために、レーザ光を作業領域WS内に走査させる際の照射位置を示すガイドパターンを表示することができる。図5〜図6に示すレーザマーカのレーザ光走査系は、ディスタンスポインタとして、ガイド用光源60と、ガイド用光源60からのガイド光Gをレーザ光走査系の光軸と一致させるためのガイド光光学系の一形態としてハーフミラー62を備えると共に、ポインタ光調整系として、ポインタ光Pを照射するためのポインタ用光源64と、Y軸スキャナ14bの裏面に形成された第3のミラーとしてポインタ用スキャナミラー14dと、ポインタ用スキャナミラー14dで反射されたポインタ用光源64からのポインタ光Pをさらに反射させて焦点位置に向かって照射する固定ミラー66とを備えている。このディスタンスポインタは、レーザ光の焦点位置を示すポインタ光Pをポインタ用光源64から照射し、ガイド光Gで表示されるガイドパターンのほぼ中心に、ポインタ光Pを照射するよう調整することで、レーザ光の焦点位置が指示される。
なお、上記の例ではレーザ光走査系に、レーザ光の焦点距離を調整可能な機構を設けることで3次元加工を可能としている。ただ、ワークを載置するステージの位置を上下方向に調整可能とすることで、レーザ光の焦点がワークの作業面で結ぶようにステージの高さを調整する制御を行うことでも、同様に3次元加工を行うこともできる。また、ステージをX軸あるいはY軸方向に移動可能とすることで、レーザ光走査系の該当するスキャナを省略できる。これらの構成は、ワークをライン上に搬送する形態でなく、ステージ上に載置して加工する形態において好適に利用できる。
(レーザマーカのシステム構成)
次に図12に、3次元印字可能なレーザマーカのシステム構成を示す。この図に示すレーザ加工システムは、マーキングヘッド150と、マーキングヘッド150と接続されてこれを制御するレーザ制御部1であるコントローラ1Aと、コントローラ1Aとデータ通信可能に接続され、コントローラ1Aに対して印字パターンを3次元のレーザ加工データとして設定するレーザ加工データ設定装置180とを備える。レーザ加工データ設定装置180は、図12の例においてはコンピュータにレーザ加工データ設定プログラムをインストールして、レーザ加工データ設定機能を実現させている。レーザ加工データ設定装置は、コンピュータの他、タッチパネルを接続したプログラマブルロジックコントローラ(PLC)や、その他専用のハードウェア等を利用することもできる。またレーザ加工データ設定装置は、レーザ加工装置の動作を制御する制御装置として機能させることもできる。例えば、一のコンピュータにレーザ加工データ設定装置としての機能と、レーザ出力部を備えるマーキングヘッドのコントローラとしての機能を統合してもよい。さらにレーザ加工データ設定装置は、レーザ加工装置と別部材で構成する他、レーザ加工装置に統合することもでき、例えばレーザ加工装置に組み込まれたレーザ加工データ設定回路等とすることもできる。
さらにコントローラ1Aには、必要に応じて各種外部機器190を接続できる。例えばライン上に搬送されるワークの種別、位置等を確認するイメージセンサ等の画像認識装置、ワークとマーキングヘッド150との距離に関する情報を取得する変位計等の距離測定装置、所定のシーケンスに従って機器の制御を行うPLC、ワークの通過を検出するPDセンサその他各種のセンサ等を設置し、これらとデータ通信可能に接続できる。
平面状の印字データを3次元状に印字するための設定情報であるレーザ加工データは、レーザ加工データ設定装置180により設定される。図13Aは、レーザ加工データ設定装置180の一例としてブロック図を示している。この図に示すレーザ加工データ設定装置180は、各種設定を入力するための入力部3と、入力部3から入力された情報に基づいてレーザ加工データを生成する加工データ生成部80K、及び加工対象面上にレーザ加工データを配置する初期位置を決定する初期位置設定手段80lを構成する演算部80と、設定内容や演算後のレーザ加工データを表示するための表示部82と、各種設定データを記憶するための記憶部5Aとを備える。また記憶部5Aは、複数の加工パラメータの組み合わせを関連付けて保持した参照テーブル5aを含む。表示部82は、加工対象面のイメージを3次元的に表示可能な加工イメージ表示部83と、加工イメージ表示部83に加工対象面のイメージを3次元的に表示させる際に、マーキングヘッドのイメージを表示可能なヘッドイメージ表示手段84を備える。入力部3は、所望の加工パターンで加工する加工条件を入力するための加工条件設定部3Cとして、ワークの印字面の3次元形状を示すプロファイル情報を入力するための加工面プロファイル入力手段3Aと、印字パターン情報を入力するための加工パターン入力手段3Bと、作業領域内に複数の加工ブロックを設定し、加工ブロック毎に加工パターンを設定可能な加工ブロック設定手段3Fと、ブロック設定手段3Fで設定された複数の加工ブロックを纏めた加工グループを設定するためのグループ設定手段3Jの機能を実現する。記憶部5Aは、図1のメモリ部5に相当し、入力部3で設定されたプロファイル情報や印字パターン情報等の情報を記憶する部材であり、固定記憶装置等の記憶媒体や半導体メモリ等が利用できる。表示部82は、専用のディスプレイを設ける他、システムに接続されたコンピュータのモニタを利用してもよい。
(演算部80)
演算部80は、加工条件設定部3Cで設定された加工条件に基づいて、実際の加工を行うための加工データを生成するための加工データ生成部80Kとして機能する。また必要に応じて、印字面に印字パターンを仮想的に一致させるように、印字パターン情報を平面状から3次元空間座標データに変換する座標変換手段を実現させることもできる。この演算部80はFPGAやLSI等のIC等で構成される。
また図13Aの例では、レーザ加工データ設定装置180を専用のハードウェアで構成したが、これらの部材はソフトウェアでも実行できる。特に、図12に示すように汎用のコンピュータにレーザ加工データ設定プログラムをインストールして、レーザ加工データ設定装置180として機能させることもできる。また図13Aの例では、レーザ加工データ設定装置180とレーザ加工装置100とを個別の機器としたが、これらを一体的に統合することもできる。例えばレーザ加工装置に自体にレーザ加工データ設定機能を付加することもできる。
図13Aの例では加工データ生成部80Kは、レーザ加工データ設定装置180側に配置している。例えば汎用のコンピュータにレーザ加工データ設定プログラムをインストールして、レーザ加工データ設定装置180として機能させるコンピュータで加工データ生成部80Kの機能を実現している。一方、加工データ生成部は、レーザ加工装置のコントローラ側に設けることもできる。図13Bのブロック図に、コントローラに加工データ生成部180Kを備えた例を示す。加工データ生成部80K、180Kをレーザ加工装置100側とレーザ加工データ設定装置180側に各々設けることにより、レーザ加工装置100、レーザ加工データ設定装置180のいずれにおいてもレーザ加工データを生成可能としたり、レーザ加工データの受け渡しや編集、表示を各々で可能とできる。図13Bの例では、レーザ加工装置100側の加工データ生成部180Kでレーザ加工データを生成し、このレーザ加工データをレーザ加工データ設定装置180側の加工データ生成部80Kで受信し、表示部82において表示可能としている。
あるいは、加工データ生成部をレーザ加工装置側にのみ設けて、レーザ加工データ設定装置側に設けない構成としてもよい。この例を図13Cのブロック図に示す。レーザ加工装置100は、加工データ生成部180Kで生成したレーザ加工データに基づいて加工と表示を行う。
(レーザ加工データ設定プログラム)
次に、レーザ加工データ設定プログラムを用いて、加工条件設定部3Cから入力された文字情報に基づいて加工パターンを生成する手順を、図14〜図50のユーザインターフェース画面に基づいて説明する。なおこれらのプログラムのユーザインターフェース画面の例において、各入力欄や各ボタン等の配置、形状、表示の仕方、サイズ、配色、模様等は適宜変更できることはいうまでもない。デザインの変更によってより見やすく、評価や判断が容易な表示としたり操作しやすいレイアウトとすることもできる。例えば詳細設定画面を別ウィンドウで表示させる、複数画面を同一表示画面内で表示する等、適宜変更できる。またこれらのプログラムのユーザインターフェース画面において、仮想的に設けられたボタン類や入力欄に対するON/OFF操作、数値や命令入力等の指定は、プログラムを組み込んだコンピュータに接続された入力部3で行う。本明細書において「押下する」とは、ボタン類に物理的に触れて操作する他、入力部によりクリックあるいは選択して擬似的に押下することを含む。入力部等を構成する入出力デバイスはコンピュータと有線もしくは無線で接続され、あるいはコンピュータ等に固定されている。一般的な入力部としては、例えばマウスやキーボード、スライドパッド、トラックポイント、タブレット、ジョイスティック、コンソール、ジョグダイヤル、デジタイザ、ライトペン、テンキー、タッチパッド、アキュポイント等の各種ポインティングデバイスが挙げられる。またこれらの入出力デバイスは、プログラムの操作のみに限られず、レーザ加工装置等のハードウェアの操作にも利用できる。さらに、インターフェース画面を表示する表示部82のディスプレイ自体にタッチスクリーンやタッチパネルを利用して、画面上をユーザが手で直接触れることにより入力や操作を可能としたり、または音声入力その他の既存の入力手段を利用、あるいはこれらを併用することもできる。
レーザ加工データ設定プログラムは、3次元レーザ加工データの編集が可能である。ただ、3次元レーザ加工データの編集が不得手なユーザを考慮し、平面上での設定のみ可能で、3次元上での編集ができない「2D編集モード」を用意し、3次元レーザ加工データの加工が可能な「3D編集モード」と切り替え可能としてもよい。このような複数の編集モードを備える場合は、現在の編集モードを示す編集モード表示欄270と、編集モードを切り替える編集モード切替ボタン272を備える。この例では、レーザ加工データ設定プログラムの起動時は「2D編集モード」とし、画面右上に設けられた編集モード表示欄270に、現在の編集モードが「2D編集中」であることを表示させている。また編集モード表示欄270の右側に設けられた編集モード切替ボタン272には、3D編集モードに切り替え可能であることを示す「3D」の文字が表示されている。この状態から、編集モード切替ボタン272を押下すると、「3D編集モード」に切り替えられると共に、編集モード表示欄270の表示が「3D編集中」に変更される。さらに編集モード切替ボタン272は3D編集モードから2D編集モードに切り替え可能であることを示す「2D」の文字が表示される。このように、3D表示や編集を制限又は排除した「2D編集モード」を設けることで、ユーザが2次元的加工面に対する加工データの設定・編集を行いたい場合、2次元的加工面に対する加工データの設定・編集のみが行えるユーザインターフェースを提供することで、ユーザインターフェースの簡素化とそれに伴う操作性の向上を図ることができる。また、ユーザが3次元的加工平面に対する加工データの設定・編集を行いたい場合においても、いきなり不慣れな3D表示を行うのではなく、上述したこれまで慣れ親しんだ「2D編集モード」にて2次元的加工面に対する加工データの設定・編集を行い、この「2D編集モード」にて設定・加工された2次元加工データを「3D編集モード」にて更に、所望の3次元レーザ加工データに加工・編集し直す工程をとることにより、「3D編集モード」も、ユーザにとって判り易いユーザインターフェースとそれに伴う操作性の向上を図ることができる。
加工条件設定部3Cの一例を、図14に基づいて説明する。図14は、レーザ加工データ設定プログラムのユーザインターフェース画面の一例を示しており、画面の左側にワーク上に印字される加工パターンのイメージを表示する編集表示欄202、右側に具体的な加工条件として各種データを指定する印字パターン入力欄204を設けている。印字パターン入力欄204では、設定項目を選択するタブとして「基本設定」タブ204h、「形状設定」タブ204i、「詳細設定」タブ204jを切り替えることができる。図14の例では「基本設定」タブ204hが選択されており、ここには加工種類指定欄204aと、文字データ指定欄204d、文字入力欄204b、詳細設定欄204cを設けている。加工種類指定欄204aは、加工パターンの種別として、加工パターンである文字列、あるいはロゴや図等の模様といった印字パターン、若しくは加工機としての動作を行うかを指定する。図14の例では、加工種類指定欄204aからラジオボタンで文字列、ロゴ・図、加工機動作の別を選択する。また文字データ指定欄204dは、文字データの種別を指定する。ここでは文字、バーコード、2次元コード、RSS・コンポジットコード(Composite Code:CC)のいずれかをプルダウンメニューから選択する。さらに選択された文字データの種別に応じて、さらに詳細な種別を種別指定欄204qで選択する。例えば文字を選択した場合はフォントの種別、バーコードを選択した場合は、CODE39、ITF、2 of 5、NW7、JAN、Code 28等のバーコード種別、2次元コードを選択した場合は、QRコード、マイクロQRコード、DataMatrix等の2次元コード種別、RSS・コンポジットコードを選択した場合は、RSS-14、RSS-14 CC-A、RSS Stacked、RSS Stacked CC-A、RSS Limited、RSS Limited CC-A等のRSSコード種別、又はRSSコンポジットコード種別を指定する。文字入力欄204bでは、印字したい文字情報を入力する。入力された文字は、文字データ指定欄204dで文字を選択した場合、そのまま文字列として印字される。一方、シンボルが指定された場合は、選択されたシンボルの種別に従って入力された文字列がエンコードされた加工パターンが生成される。加工パターンの生成は、加工条件設定部3Cで行う他、加工データ生成部で行ってもよい。この例では演算部80が行っている。また詳細設定欄204cは、タブを切り替えて「印字データ」タブ204e、「サイズ・位置」タブ204f、「印字条件」タブ204g等、印字条件の詳細を指定する。
図14の例では文字データ指定欄204dでQRコードが指定されており、「印字データ」タブ204eでセルサイズ、印字線幅、誤り訂正率、バージョン等を数値で指定する。また必要に応じてモード自動、白黒反転、パスワード等を指定できる。
(加工ブロック設定手段)
以上のようにして、一つの印字ブロックに関する印字パターン情報を設定する。また、印字ブロックを複数設定することもできる。すなわち、加工領域において複数の印字ブロックを設定し、異なる印字条件で印字加工を行うことができる。印字ブロックは、一のワーク又は加工(印字)対象面に対して複数設定する他、加工領域内に存在する複数のワークに対して各々設定することもできる。
加工ブロックの設定は、加工ブロック設定手段で行う。図14の例では、加工ブロック設定手段の一形態として、印字パターン入力欄204の上欄にブロック番号選択欄216が設けられる。ブロック番号選択欄216にはブロック番号を表示する番号表示欄と、番号指定手段として、「>」ボタン、「>>」ボタン、「<」ボタン、「<<」ボタンが設けられる。「>」ボタンを押下すると、ブロック番号が1インクリメントされて、新たな印字ブロックの設定が可能となる。また、設定済みの印字ブロックの設定を変更する際も、同様に「>」ボタンを操作してブロック番号を選択し、該当する印字ブロックの設定を呼び出すことができる。また「>>」ボタンを押下すると最終のブロック番号にジャンプする。さらに「<」ボタンを押下するとブロック番号が1つ戻り、「<<」ボタンを押下すると先頭のブロック番号にジャンプする。さらに、ブロック番号選択欄216の数値表示欄に直接数値を入力してブロック番号を指定することもできる。このようにして、ブロック番号選択欄216で印字ブロックを選択し、各印字ブロックについて印字パターン情報を指定する。この例では、ブロック番号を0〜255まで設定可能としている。
図15に、3つの印字ブロックを設定した例を示している。ブロック番号000として、図14で設定したQRコードが表示されており、ブロック番号001としてバーコード、ブロック番号002として文字列が各々表示される。図15の例では文字データ指定欄204dでバーコードが指定されており、「印字データ」タブ204eでバーコードの高さ、ナロー幅、印字線幅、細太比等を数値で指定する。また必要に応じてチェックデジットの有無、白黒反転等を指定できる。
また印字ブロックの配置について、配置位置の調整(中心軸に対するセンタリング、右寄せ、左寄せ等)、複数の印字ブロックが重複した場合の重ね順や、位置合わせ等のレイアウトを設定することもできる。例えば、図16では、各印字ブロックを画面左右方向の中央の位置に移動させた例を示している。同様に、上下方向の中央に位置合わせを行うこともできる。このようにして、複数の印字ブロックの配置を自動的に調整できる。
さらに各印字ブロックの配置を座標等で指定することもできる。図16の例では、ブロック番号002の文字列について、「サイズ・位置」タブ204fからブロック座標のX座標、Y座標を数値で指定する。またこの画面から、文字サイズとして文字高さ、文字幅、文字間隔等を指定できる。さらにブロック形状として、横書き、縦書きの別や、3次元印字の際の円柱内周、外周の別等を指定する。
(印字ブロックの設定一覧表)
このようにして設定された印字ブロックは図17に示すように設定項目を一覧表示させることもできる。図15の例では、メニューの「編集」から「ブロック一覧」を選択することで、図17のブロック一覧画面が別ウィンドウで表示される。この一覧画面から、設定済みの印字ブロックを削除したり、複写して新たな印字ブロックを追加することができる。また所望の印字ブロックを選択して、設定項目を調整するように構成してもよい。
(印字グループ)
また、複数の印字ブロックを纏めた印字グループを設定し、印字グループ単位でレーザ光の出力値や走査速度等の印字条件の設定を行うこともできる。この様子を図57〜図65に基づいて説明する。この内図57は、複数の印字ブロックをブロック設定手段3Fで設定し、編集表示欄202で2次元状に表示させた状態、図58はこれを3次元状の表示に切り替えた状態を、それぞれ示している。上記の例では、図14等に示すように一の印字ブロックには1行分のデータのみ印字可能としている。このため、複数行の印字を行いたい場合は、複数の印字ブロックを設定して、これらの印字ブロックを並べて配置することにより対応する。図57及び図58の例では、円筒状のワークに対して、上段に文字列「abcde」の円柱状印字ブロックB1(ブロック番号000)を設定し、その下段に文字列「ABCDE」の円柱状印字ブロックB2(ブロック番号001)を設定し、これらを上下に重ねて配置している。これらの印字ブロックB1、B2に対しては、各々印字条件が設定される。このため従来は、印字ブロック毎にユーザが個別に印字条件を設定していた。しかしながら、この場合は印字ブロック1と2は同一のワーク上への印字であるため、レーザ光の出力や走査速度など、印字条件としては共通する項目が多い。これらについて従来は同一の印字条件を個別に設定しなければならないため、作業が繁雑であった。特に印字ブロック数が多くなると、それだけ設定に時間がかかる。このような問題に対応するため、複数の印字ブロックを纏めて印字グループとし、印字グループ単位での印字条件設定を可能としている。具体的には、グループ設定手段3Jで印字グループ設定を行う。
(グループ設定手段3J)
グループ設定手段3Jとして図59に示す例では、印字パターン入力欄204にグループ設定欄250を設けている。より具体的には、グループ設定欄250の「グループ設定を行う」欄251のチェックボックスをONにして、グループ化したい印字ブロックを選択すると共に、グループ番号指定欄252でグループ番号を指定する。印字ブロックの選択には、例えば図60に示すように、編集表示欄202からマウスなどのポインティングデバイスで選択したい印字ブロックを含ませるように範囲指定する、あるいは、CTRLキーを押しながらマウスで左クリックする等の手段が適宜利用できる。このようにしてグループ化したい印字ブロックを選択した後、グループ設定欄250の「グループ化」ボタン253を押下することでグループ化が設定される。また、図61に示すように範囲指定やマウスクリックなどでグループ化したい印字ブロックを複数指定した後、マウスの右クリックメニュー256から「グループ化」メニュー257を選択し、「グループ化」を選択する。またグループ番号は、新たなグループを設定する度に000から1ずつインクリメントされて自動的に付与される。この例では254個までグループを設定できる。このようにしてグループ化を行うと、印字条件等はグループ単位で一括して行えるようになる。図59の例では、編集表示欄202を2次元表示させた状態で、印字ブロックB1とB2を指定し、印字パターン入力欄204のグループ設定欄250で印字グループG1(グループ番号000)として設定する。これにより、編集表示欄202において印字グループG1の範囲を示すように、2段の文字列を囲む枠GWが表示される。図61及び図62に、枠の表示が印字ブロックの枠BWから印字グループの枠GWに変化する様子を示す。このように、印字ブロック単位で表示されていた枠が、印字グループを示す枠GWに変化する。これにより文字列「abcde」と「ABCDE」の全体で、1つの印字ブロックのように扱うことが可能で、レーザ光の出力値や走査速度、印字ブロックのサイズやオフセット位置の調整などを一括して設定できる。
また枠の表示方法は、印字ブロックと印字グループとを同様に表示する他、これらを異ならせて表示してもよい。例えば印字ブロックを示す枠BWを細線で、印字グループGWを示す枠を太線で、各々表示することにより、印字ブロックと印字グループとを区別できる。また、線のパターンを実線、破線などとしたり、線の表示色を緑、青、赤に変更すること等によっても、これらを区別できる。
このようなグループ設定の作業は、図59に示すように編集表示欄202を2次元表示とした状態で行うことが好ましい。平面図による表示では印字ブロックをシンプルに表示でき、選択が容易だからである。ただ、図63に示すように編集表示欄202を3次元表示(詳細は後述)とした状態で行えるように設定することも可能である。2次元、3次元いずれの状態からもグループを設定できるようにすることで、使い勝手を向上できる。
またグループ化を解除するには、図59のグループ設定欄250から「グループ解除」ボタン254を押下する、あるいは図60のグループ化メニュー257から「グループ解除」を選択する。これによって一旦グループ化した印字ブロックを再度分解できるので、グループ化した一部について個別の印字条件を設定したい場合等に有益である。
なお、印字グループは、隣接する印字ブロック同士をグループ化するのみならず、離れた位置にある印字ブロックをグループ化することもできる。例えば、図64に示すように文字列「abcde」と「ABCDE」を2列に並べたものを3組、缶状のワークの側面に印字する場合において、文字列「abcde」の印字ブロックB3、B4、B5の3個を纏めて印字ブロックG2、文字列「ABCDE」の印字ブロックB6、B7、B8の3個を纏めて印字ブロックG3に設定する。これにより、文字列「abcde」に対する印字の濃さと、文字列「ABCDE」の印字の濃さを、各々独立して設定でき、同じ文字列については同じ濃さで、異なる文字列については異なる濃さで印字できる。このように、グループ化は単に隣接する文字列やロゴなどのイメージを纏める他、印字条件の設定のし易さ等に応じて任意に設定することができる。
以上は、作業領域に配置された一のワークに対して、複数の印字ブロックを設定する例について説明したが、一の作業領域内に複数のワークが配置されている場合に、各ワーク毎に個別の印字を設定する場合等においても、グループ化を適宜設定できる。図65は、作業領域内に3つのワークW1〜3が配置されている場合に、各ワークに対して異なる印字を行うと共に、ワークW1について文字列「abcde」と「ABCDE」を2列に並べたものをグループ化した例を示している。またこの例において、ワークW2とワークW3に、同じ印字条件を設定することもできる。このように、複数のワークと複数の印字ブロックの、任意の組み合わせに対してグループを設定できるので、印字目的や用途に応じた適切な設定を簡単に行うことができ、ユーザの設定作業の負担を軽減できる。
(ワークのプロファイル情報)
次に図14に戻り、ワークのプロファイル情報を設定する手順について説明する。図14の例では、平面状のワークに印字する例を示している。このレーザ加工データ設定プログラムでは、加工対象面が平面状に限られず、3次元形状の加工対象面の設定も可能である。ワークの加工対象面の3次元形状に関するプロファイル情報は、図13Aの加工面プロファイル入力手段3Aから設定される。プロファイル情報を指定する方法としては、以下のような方法が考えられる。
(1)3次元形状を入力可能なプログラム上から、ワークを作画して指定する方式
プログラム上からワークの形状を作図して指定するものである。例えば既存の3次元CADや3次元モデリングツール、ドローソフトのように、平面や直線等の描画ツールを用意し、3次元形状をユーザに直接作画させる。この方法は、3次元形状の作図に慣れたユーザであれば容易に利用できる反面、このような作図に不得手なユーザには敷居が高いという問題がある。
(2)ワークの形状を特定するためのパラメータを、対話形式でユーザに入力させる方式
ウィザード方式のように、必要な情報を対話形式でユーザに指定させることで形状を特定する方法である。この方法は、3次元作図に関する知識が不要であるため、利用しやすいという利点がある。例えば、ワークの形状を指定し、該形状を特定するパラメータを指定する。具体的には、ワークの形状を予め選択肢として提示し、選択された形状に応じて、これを特定する入力パラメータの設定項目をさらに提示して入力させる。例えば、加工対象面が斜面状であれば、基準点の座標位置や法線ベクトルの方向等を指定する。また円柱状であれば、基準点の座標位置、円柱半径、円柱中心軸の方向等を指定する。あるいは球状であれば、中心点の座標位置、球半径等を指定する。
(3)ワークの形状に予め作成された3Dデータのデータファイルを入力して変換する方式
予め3次元CAD等の別プログラムで作成されたワークのデータファイルを変換して利用するものである。この方法では、既に作成されたデータを利用できるので、ワークの形状指定作業を大幅に省力化できる。読み込み可能なデータファイル形式は、DXF、IGES、STEP、STL、GKS等、各種の汎用的なフォーマットが利用できる。またDWG等、特定のアプリケーションの専用フォーマットを直接入力して変換することもできる。
(4)ワークの形状を実際にイメージセンサ等の画像認識装置で読み込んで取得する方式
ワークをイメージセンサ等で読み込んで画像認識等の方法で自動的にデータを取得する。
以上の内、ここでは(2)と(3)の方法を採用している。具体的には、予め用意された基本図形から選択する手段と、3D形状を記録したファイルを入力する手段が利用できる。この様子を、図18〜図20に基づいて説明する。図14の画面から、印字パターン入力欄204の設定項目を選択するタブを「基本設定」タブ204hから「形状設定」タブ204iに切り替えると図18に示す画面となり、プロファイル指定欄205が表示される。図18のプロファイル指定欄205では、基本図形、ZMAP、加工機動作のいずれかをラジオボタンで選択する。
基本図形から選択する方法では、予め用意された基本図形の形状を選択する。基本図形としては、平面、円柱、球、円錐等がある。図18の例ではデフォルト画面としてプロファイル指定欄205で基本図形が、その下欄に設けられた形状選択欄206で「平面」が、それぞれ選択されている。ここで、図19に示すように円柱を選択すると、編集表示欄202の表示が平面状から円柱状に切り替えられる。すなわち、円柱状のワークに印字されるQRコードのXY座標平面図が表示されるため、QRコードの右側に向かうほど横幅が狭くなるよう変形して表示される。
(3D表示)
また、加工対象面を立体的に表示することもできる。この例では、編集表示欄202の表示形式を、2次元状の表示と3次元状の表示とを切り替え可能としている。図19の画面に設けられた表示切替ボタン(3D)207を押下すると、図20に示すように編集表示欄202が3次元表示に切り替えられ、加工対象面の3D形状が立体的に確認できる。なお図20の画面から表示切替ボタン(2D)207を押下すると、図19の画面に切り替えられる。このように、表示切替ボタン207を押下する毎に、2D表示と3D表示が切り替えられ、またこれに応じて表示切替ボタン207の表示も、他方の表示形態を示す2Dと3Dとに切り替えられる。また図20の3D表示画面においても、図19の2D表示画面と同様に、加工パターンの領域は、枠Kで囲まれて表示される。
また図20の例では、2D表示と3D表示の表示切替ボタン207は、フローティングツールバーに設けられている。フローティングツールバーは任意の位置に移動可能である。またフローティングツールバーの表示/非表示を切り替えたり、通常のツールバーに組み込むよう構成してもよい。
(基本図形の高さ)
2次元加工データは、以上のように基本図形を選択して3次元データに変換する際、その基本図形の高さが、2次元印字データで設定された高さと同一になるように設定される。この3次元データに変換されたレーザ加工データを加工イメージ表示部で表示する例を図21に示す。このように、加工データの高さを基本図形の高さと一致させることにより、3次元表示させる際、基本図形の印字に要する高さを視覚的に捉えやすくなり、視認性も高くなる。また、図22に示すように複数の印字ブロックを設定する際、基本図形同士の縦方向の積み重ねや、整列などのレイアウトが容易となる。特に基本図形は仮想的な図形であるため、任意の高さで表示させることができるが、短くすると印字イメージをすべて表示できず、また長くすぎると、ワークの形状から外れて実際の印字ブロックが不明瞭となる。そこで、本実施の形態では基本図形の高さを印字データと同じ高さとすることで、印字ブロックのイメージを把握し易くできる。特に図22のように、円筒状のワークに複数の印字を行う際などは、印字ブロック同士の間隔も把握しやすくできる。また、印字ブロック同士の間隔を自動的に演算して表示する機能を設けてもよい。なおレーザ加工データの高さ又は基本図形の高さとは、図21等に示すようにXY平面から見た場合のY方向を指す。またレーザ加工データの幅又は基本図形の幅とは、XY平面から見た場合のX方向を指す。
さらに、基本図形の高さを印字ブロックを同じとする他、若干のマージンを設定することもできる。図23に、マージンを設定したレーザ加工データを3次元表示する例を示す。このように、基本図形の高さを印字ブロックの高さよりも高く設定することで、印字ブロックの上下にマージンが設定される。このようなマージンは、印字加工の際の位置決めや加工精度に対する余裕として設定する他、上下に配置する他の印字ブロックとの間隔や位置関係を調整するため等に利用できる。
また、マージンは高さ方向のみならず、幅方向に設定することもできる。マージンを設定する加工条件設定部の一例を、図24に示す。図24の例では、印字パターン入力欄204に余白設定欄204pを設けており、「マージンを設定する」欄のチェックボックスをONすると共に、所望の数値でマージンを設定できる。また、マージン幅を絶対値で指定する他、印字ブロックの高さに対する比率(例えば10%)等の相対値で指定することもできる。設定されたマージンの設定に応じて、編集表示欄202における加工イメージが更新され、ユーザは設定内容が反映された結果を速やかに確認できる。
マージンの設定は、図23(a)に示すようにマージンのサイズで設定する他、図23(b)に示すように基本図形の高さとして設定することもできる。また、基本図形の高さや幅を印字ブロックよりも大きく設定し、ここに配置する印字ブロックの配置位置を調整することもできる。例えば、設定された基本図形に対して、高さ方向に印字ブロックをセンタリングして配置したり、あるいは幅方向に対して右寄せ、左寄せ、等の相対位置を指定する他、上から50mmの位置、水平面から−90°の位置に印字ブロックの左下が位置するように、等、絶対値や座標、角度などで指定することもできる。さらに、基本図形自体をワークと同様の形状に表示させることもできる。図25に、缶状のワークWKに印字ブロックを設定する例を示す。この例では、基本図形詳細指定欄204Qを設けており、缶状のワークの形状と一致するように基本図形の高さ及び直径を設定する。さらに、このワークWKのどの位置に印字を行うかを、印字ブロック位置設定欄204Rで指定することで、加工イメージ表示部にワークWKと、その表面に配置された印字ブロックとを表示させて、ユーザに印字の状態を視覚的に把握させることができる。
なお、以上は3次元表示における例を説明したが、2次元表示においても同様である。すなわち、図19などに示すように、平面図での表示においても基本図形の高さを印字ブロックの高さと同じ、或いは適宜マージンを設定して表示させることができ、レイアウトの確認などに好適である。
(印字開始位置のデフォルト位置)
2次元状の印字データを円柱状などの3次元形状に変形、あるいは3次元形状のワークに貼り付ける際のデフォルトの位置は、初期位置設定手段80lにより予め設定される。初期位置設定手段80lは、加工イメージ表示部に3次元レーザ加工データを表示する際に加工対象面上にレーザ加工データを配置する初期位置を決定する。図19に示す例では、開始角度θを−90°としている。ここでの開始角度は、後述する図44に示すYZ平面を基準として、時計回りを正として規定している。これにより、視認性と印字精度に優れた配置とできる。
上記は円錐状のワークについてデフォルト位置を説明したが、3次元レーザ加工データを生成する基本図形に対して、各々デフォルトの基準位置を設定することができる。図26に、ワークの基本図形として円柱状、円錐状、球状を選択した場合の、初期位置をそれぞれ示す。これらの基本図形は、上述した図18の形状選択欄206で選択可能な図形である。また座標軸は、作業領域における平面をXY平面、高さ方向をZ軸としたXYZ座標を基準としている。図26(a)は半径Rの円柱状であり、レーザ加工データの基準位置はX=0、Y=0、θ=90°となる。また図26(b)に示す円錐状(半径=R)の基本図形を選択した場合、レーザ加工データの基準位置はX=0、Y=0、θ=90°となる。同様に図26(c)に示す球(半径=R)を基本図形として選択した場合、基準位置はX=0、Y=0、θ=90°となる。このように、デフォルトの開始角度θをいずれも90°とすることで、レーザ加工データが印字されやすい場所に配置され、さらにレーザ加工データの視認性が高まるという利点が得られる。
また、印字ブロックを新規に作成すると、印字ブロックの印字開始位置は図27のようにマーキングヘッドからのレーザ光の原点と一致する。このため、新規作成時のデフォルト位置をマーキングヘッドに対して最良の位置とすることができる。
このように円柱等の頂点の位置を印字開始のデフォルト位置とすることで、ワークの上方に位置するレーザマーカのマーキングヘッドからの印字が容易で、デフォルトで高精度な印字結果を得ることができる。また、円柱の頂点は印字内容の視認性が高く、マーキングヘッドとワークとの相対位置の把握が容易となる。特に、平面状の印字データを3次元形状に変形すると、変形後の位置を見失うおそれがあるため、視認性の高い位置をデフォルト位置に設定することで、このような事態を回避でき、操作性のよい印字設定が行える。特に、後述するように印字不可能領域を非表示とする設定においては、デフォルト位置でレーザ加工データが印字不可能領域にかかると、初期状態でレーザ加工データが表示されなくなるという不都合が生じる。このため、初期状態では印字の精度の高い位置とすることで、レーザ加工データを表示できる可能性も高くなり、視認性と加工精度に優れたレイアウトをデフォルトに設定できる。
基本形状に応じてデフォルトの基準位置を各々設定する他、基本形状に対して一律に初期位置を決定することもできる。図28〜図30に、このような例を示す。図28は、基本形状に対してレーザ加工データを右詰めで配置する右寄せレイアウトを示している。また図29は、逆に基本形状に対して左詰めで配置する左寄せレイアウト、図30は基本形状の中央に配置するセンタリングレイアウトをそれぞれ示している。例えば、長さの異なる文字列を印字する場合は、左寄せとし、また数値データは右寄せとすることで、ユーザに読みやすくできる。このように、印字目的や用途に応じて適切なレイアウトパターンを選択することもできる。
さらに、印字不可能領域を考慮して初期位置のレイアウトを行うこともできる。例えば、作業領域から、予め基本形状に対して印字不可能領域、あるいは印字不良となるおそれのある印字不良領域を除いた加工可能領域を確定した状態で、加工可能領域において右詰め、左詰め、中央配置等を行うことができる。これにより、初期位置が印字不能あるいは印字不良となるおそれを回避でき、確実な印字結果を得ることができる。または、レーザ加工データが加工可能領域よりも大きい場合に、自動配置を中止し、加工イメージ表示部においてレーザ加工データを表示しない、印字不可能領域を赤色で示す、あるいは自動配置不可能である旨のメッセージを表示して再設定を促すように構成してもよい。
あるいは、初期位置をユーザが指定可能とすることもできる。図31に示すように、(a)指定した基本形状にレーザ加工データを変換した後、(b)初期位置をユーザが調整し、(c)初期位置を決定すると、この内容を初期位置設定手段80lが記憶し、(d)以降の初期位置を、記憶された状態として設定する。初期位置の調整は、数値で指定する他、3次元表示画面上からユーザがマウスのドラッグ等により指定することもできる。また初期位置のユーザ設定は、基本形状毎に記憶させる他、すべての基本形状に一律に適用することもできる。また複数の初期位置を保存し、用途に応じて切り替えて適用することもできる。この方法であれば、用途毎に適切な初期位置をユーザが指定できるので、柔軟かつ適切な配置が実現できる。このような設定データには、名前を付けて保存することにより呼び出して使用できる。
あるいはまた、レーザ光の照射角度に応じて初期位置を決定することもできる。例えば図32に示すように、複数のワークあるいは複数の印字対象面に対して、一のマーキングヘッドからレーザ光を照射するような場合は、マーキングヘッドと印字対象面との位置関係や角度等によって印字可能領域が異なる。このような場合に、各印字対象面に一律に初期位置を設定するのでなく、印字可能領域に応じて適切な初期位置を各々設定することで、印字精度や視認性を高めたレイアウトが可能となる。
(印字開始位置の調整)
さらに、このようなデフォルトの初期位置から、ユーザはレーザ加工データを所望の位置に配置するように、初期位置を適宜調整することができる。図33に、このような印字開始位置の手動調整の例を示す。図33(a)はデフォルト位置として、レーザ加工データを円柱面状にセンタリングして配置した例、図33(b)は印字開始位置を図33(b)において右側に移動させた例を、それぞれ示す。このようなレーザ印字データの配置位置の調整は、基本図形の面に沿った配置パラメータを操作することによって行われる。配置パラメータとして、例えば図20の「3D設定タブ」204iに設けられた配置パラメータ設定欄208で印字の開始角度をユーザが指定する。さらに、印字ブロックの座標位置もXYZ座標におけるオフセット量として指定できる。これらから印字データの配置位置を変更することによって、レーザ光の照射角度が変わるため、印字精度の良くない領域に印字データが配置される場合もありうる。このため、ユーザが任意に配置位置を調整することによって、印字結果が最良となる位置に調整することができる。
なお、配置パラメータ設定欄208で指定される開始角度θは、XYZ座標におけるオフセット量等、ワークの位置や姿勢、角度などを変更させても、維持される。特に開始角度θを、デフォルトの印字開始位置として−90°に指定することにより、視認性と印字品質を維持できる。
(3次元ビューワ260)
上記の例では、編集表示欄202を2次元表示と3次元表示のいずれかに切り替えている。ただ、同じワークの2次元表示と3次元表示を並べて表示させたい場合もある。このような要求に応えるため、別ウィンドウで開く3次元ビューワ260を用意している。図34に、3次元ビューワ260を表示させた例を示している。上記図19の例では、3次元ビューワ260を開くための3次元別画面呼出手段として、2画面表示ボタン207Cをフローティングツールバーに設けている。図19のように編集表示欄202で2次元表示させている状態で、2画面表示ボタン207Cを押下すると、図34に示すように3次元ビューワ260が別ウィンドウで表示される。3次元ビューワ260はドラッグして任意の位置に配置可能である。またウィンドウサイズも変更できる。さらに、3次元ビューワ260で表示されるワークWの姿勢や角度の変更、回転等の操作を可能としてもよい。これらの3次元表示においては、グリッドやスケールを表示させており、視点の把握を容易にしている。これらグリッドやスケール表示をON/OFFすることもできる。
なお、図20に示すように編集表示欄202で3次元表示させている状態では、さらに3次元表示画面を開く必要がないので、3次元ビューワ260を呼び出すフローティングツールバーの2画面表示ボタンはグレーアウトされ、選択できないようになっており、誤操作を防止している。ただ、2次元表示を別画面で表示させたい場合に、別途2次元ビューワ欄を表示可能とすることもできる。なおこれらの表示は一例であり、各欄のレイアウトや大きさ、位置関係等は任意に変更可能であることは言うまでもない。例えば設定欄を含めた各欄を別ウィンドウで表示させてもよい。このように表示部82に、加工対象面の3D形状イメージを表示させる加工イメージ表示部83として、編集表示欄202や3次元ビューワ260等が利用できる。
(作業領域の設定時の3次元表示)
作業領域(印字エリア)を3次元形状のワークに設定し、ワーク形状を含めた印字エリアを3次元的に表示する場合、ここでは以下のようにして印字エリアがワークに対して適切な印字可能な位置にあることを目視できるよう構成している。
まずワークについては、レーザマーカのマーキングヘッドの出射位置からレーザ光を出射した場合、レーザ光と印字対象面とのなす角度が所定の角度範囲(適切に印字が可能と判断できる所定の角度範囲)にある場合と、印字は可能であるものの、印字品質の低下のおそれがある場合(上記所定角度以下または未満の場合)とで、印字対象面に対する色分けを行う。具体的には、適切に印字が可能と判断できる角度範囲には着色を行わず、印字は可能であるものの、印字品質の低下のおそれがある角度範囲には赤色に着色している。これにより、設定された印字エリアが適切な範囲のみに設定されているか、または印字エリアのどの部分が赤色(印字品質低下のおそれがある角度範囲)になっているかを、3次元表示画面から目視により判断できる。
また、マーキングヘッドのレーザ出射位置からワークに設定されている印字エリアを見て、ワークの加工面(印字エリア設定領域)が裏側に位置する場合、印字不可能と判断し、ワークに設定された印字エリア(印字内容)を3次元表示画面上で非表示としている。これにより、ユーザはワークに対して自らが設定した印字エリアがどのような状態(位置関係など)にあるかを速やかに把握でき、その印字エリアの位置修正等も容易に行うことができる。
また、3次元表示画面で表示させる手段に限られず、何らかの方法で「最適な印字状態を提供できる角度範囲」、印字品質低下角度範囲を示す「印字不良領域」、「印字不可能領域」等を目視できる手法が適宜採用できる。例えば、「最適な印字状態を提供できる角度範囲」、「印字不良領域」、「印字不可能領域」等に該当することをテキストでユーザインターフェース画面上に表示したり、音声や警告音、ダイヤログボックス等を利用することもできる。またいずれかの項目のみを表示させることも可能で、例えば印字品質を問わず印字ができれば良いユーザに対しては、「印字不可能領域」に対する情報のみを提供すれば足りる。
このように、ワークの形状や印字エリアによってレーザ光が届かない影になる部分が生じる等、3次元印字においてはワークの形状やワークとマーキングヘッドとの位置関係等により、印字が不可能あるいは不十分となる領域が生じ得る。したがって、予めこれらの要因に基づいて印字可能な領域を演算しておき、印字不可能領域にレーザ加工データが設定されると、ユーザに警告を発する等して、再設定を促すように構成できる。このような演算は、演算部80で行うことができる。演算部80を作業領域においてレーザ光を照射できず加工できない、あるいは加工が不良となる加工不良領域を検出する加工不良領域検出手段、加工不良領域における加工条件を加工可能となるように調整する加工条件調整手段、加工不良領域検出手段で検出された加工不良領域に対して、加工可能な領域と異なる態様にて表示するためのハイライト処理を行うハイライト処理手段、加工条件設定部で加工パターンを設定する際、加工不良領域を含む領域に何らかの加工が行われるよう設定されていることを検出して、警告を発するための設定警告手段等の機能を実現させることができる。
さらに、上述した例では「最適な印字状態を提供できる角度範囲」と「印字品質低下角度範囲」とを区別する角度は、装置側でデフォルトの初期値を使用する構成の他、その角度をユーザが入力再設定できるようにユーザインターフェース上に入力項目を設定してもよい。具体的には、レーザ光がワークの加工面に対して照射される角度によって加工に制限が生じ、レーザ光と印字面の法線の方向のなす角θが90°に近付く程、加工が困難となり加工精度が低下する。θの上限(加工限界角度)は臨界角度と呼ばれ、通常60゜が指定される。この数値を、固定式とする他、ユーザが調整可能とすることもできる。
(印字不可能領域)
また、編集表示欄202において、加工対象面の内で、角度や影などの原因により印字ができない領域を表示させることもできる。図20の例では、円柱の側面付近で印字することは可能であるが印字角度が浅く印字が不良となる印字不良領域を赤色で示している。またレーザ照射点から見て裏側に位置するためレーザ光を物理的に照射できず印字が不可能となる領域、すなわちXY平面を真上からワークを見た場合、ワークの加工対象面が裏側に位置するエリアを印字不可能領域としている。設定された加工パターンが印字不可能領域にかかり、印字が不可能である場合に、編集表示欄202において加工パターンを非表示として、ユーザに再設定を促すこともできる。例えば、設定した印字対象面の裏側に印字パターンが回り込んだ場合には加工パターンを非表示とし、印字は可能であるが最適な印字が可能な角度範囲外(印字不良領域)となった場合は赤色表示する。このように、単に印字可能、不可能の2種類で区分けするのでなく、最適な印字ができない範囲として、印字不良領域、印字不可能領域といった複数の区分で段階的に印字品質の低下を表示させることで、ユーザに対して詳細な情報を提示でき、より適切なレイアウトや配置を検討できる。図35、図36の例では、加工パターンの一部が印字不可能領域にかかっているため、加工パターンであるバーコードを編集表示欄202で非表示としている。そこで、加工パターンが印字可能領域に位置するよう、印字位置を調整する。例えば、図35の「3D設定タブ」204i内の画面内配置設定欄208で印字の開始角度を調整し、デフォルト値の−90°から−120°に変更することで、図36に示すように加工パターンのバーコードが表示される。このように、印字の開始位置や範囲、あるいはバーコードのナロー幅、印字線(バー)幅等の設定を調整し、正しく印字できるように設定する。なお編集表示欄202における加工パターンの表示/非表示のON/OFFや閾値は、任意に設定できる。
(3D表示画面の視点の変更)
3D表示画面においては、視点を任意に変更することが可能である。図19に示すQRコードを円柱状のワークに印字する印字面を様々な視点から3D表示画面に表示させた例を、図38〜図45に示す。図19の2D表示画面から、フローティングツールバーの表示切替ボタン(3D)207を押下すると、図20の3D表示画面に切り替えられる。この3D表示画面からスクロールバー209を操作することで、図38〜図45に示すように3次元表示画面の視点を自由に変更できる。図38は、作業領域を斜め上方から見た斜視図であり、図39は、図38の状態から作業領域を回転させて、ワークを裏側から表示した例を示している。視点の変更には、スクロールバーを用いる他、マウスで3D表示画面上の任意の点をドラッグすること等によってワークを回転させるように構成してもよい。
また、フローティングツールバーに設けられた「スクロールバーの移動/回転切替」を押下すると、スクロールバーの用途がワークの回転から、画面の移動に切り替えられる。図38の画面から水平方向のスクロールバーを操作すると、図40や図41に示すように、3次元表示の表示角度を維持したまま、視野を左右に平行移動できる。また垂直方向のスクロールバーを操作すると、図42に示すように上下方向に視野を移動できる。このように、スクロールバーを画面の移動と回転に切り替えて使用することで、3D表示の操作に不慣れなユーザでも比較的簡単に視野を変更できる。
さらに、3D表示画面を規定の視点からの表示に切り替えることもできる。図38の例では、フローティングツールバーに、「表示位置」変更欄207Bが設けられ、ここで視点をXY平面等、規定の表示に変更できる。例えば図43はXY平面で印字面を表示した例を示しており、図19に示す2D表示画面と対応する平面図が表示される。また図44はYZ平面、図45はZX平面における表示例を、それぞれ示している。また、各画面からもスクロールバーを操作する等して表示の視点を変更することもできる。このように、3次元表示においても、規定の方向から見た表示画面に速やかに切り替えることができ、表示の変更、復帰や確認の際等に有益である。
(レーザ出射方向の表示)
さらに、3D表示画面において、レーザ出射方向の表示を表示することもできる。図38の例において、編集表示欄202においてレーザマーカのマーキングヘッドをアイコン状のイメージMKで表示し、かつマーキングヘッドから出射されるレーザ光LKの軌跡を直線状に表示している。これによって印字の方向を示すことができるので、上述した印字不可能領域との関係が把握し易くなる。またマーキングヘッドのイメージMKは表示と非表示を切り替えることもできる。図46に、各種設定を行う設定画面として、マーキングヘッドイメージMKの表示/非表示の設定画面210の一例を示す。このように、「レーザマーカを表示する」欄のチェックボックスをON/OFFすることによって、表示/非表示を容易に切り替えることができる。このようにマーキングヘッドイメージMKは、加工対象面の3次元イメージを加工イメージ表示部83に表示させる際に、マーキングヘッドとの位置を3次元的に表示するヘッドイメージ表示手段84として機能する。
(座標軸の表示)
また、作業領域の座標軸を表示することで、座標位置の確認を容易にできる。図38等の例では、作業領域のXYZ座標軸を表示している。これらの座標軸は異なる色で表示することによって、表示を回転させてもXYZ座標軸を容易に区別できる。なお図38等の例において、Z軸はマーキングヘッドのレーザ光の軌跡と一致するよう、マーキングヘッドをXY座標の原点上に位置させている。これにより、座標空間におけるマーキングヘッドの位置関係をユーザに判り易くイメージさせることができる。
また、座標軸の表示のON/OFFを切り替えることもできる。図46の設定画面から、「軸を表示する」欄のチェックボックスをON/OFFすることによって、座標軸の表示/非表示を容易に切り替えることができる。この例では、XYZ座標軸の表示/非表示は一括で設定されるが、X軸、Y軸、Z軸につき、個別に表示のON/OFFを切り替えるよう構成してもよい。さらに、このようなXYZ座標軸以外に、任意の基準線を表示させることもできる。例えば、円柱状ワークの側面に対して印字を行う際、基準位置を明確にするために長手方向に沿って側面に基準線を表示させることもできる。基準線は、任意の位置に1又は複数設定でき、ベクトルの方向や座標などを指定する。
(マーキングヘッドのアイコン)
図のマーキングヘッドは、マーキングヘッドの形状を模したアイコン状に表示している。形状や色は、実物のマーキングヘッドに従っている。ただ、マーキングヘッドの裏面側の色については、表面側と異なる色で表示させることが好ましい。上述した図39では、マーキングヘッドイメージMKの裏面を白色としており、図38等に示すマーキングヘッドイメージMKの上面の灰色と異なる色に着色している。これにより、3D表示画面の視点を変更し、印字面を回転させて裏側からの表示になっても、裏側を観察していることをユーザは容易に把握できるようになる。図39の例では白色としたが、異なる色としてもよいことはいうまでもない。さらに、各表示色を任意にユーザが指定、変更するよう構成してもよい。図47に、3D表示画面の配色を変更する画面例を示す。また配色のみならず、実線、破線等、線のパターンや塗り潰しのハッチングパターンといった表示のパターンを変更することもできる。図48に2D表示画面における表示の変更画面、図49に2D表示画面における配色の変更画面の例を、それぞれ示す。これらの画面から、ユーザは所望の色やパターン、表示/非表示などを設定できる。
このように、加工対象面と共にレーザマーカのマーキングヘッドのイメージも併せて3次元的に表示することで、両者の位置関係をユーザは視覚的に把握できる。このため設定内容のイメージを容易に確認でき、設定ミスを低減できる。この例では、加工面の移動や視点変更に応じてマーキングヘッドのイメージも対応して表示を更新される。なお、図39等の例では、2D表示においては拡大/縮小など表示倍率を変更できるが、3D表示においては倍率を固定としている。3D表示に操作に不慣れなユーザを考慮して、変更可能な項目を制限したものである。ただ、3D表示においてもワークのイメージの拡大/縮小を可能とし、またこれに応じてマーキングヘッドのイメージも拡大/縮小するよう構成できることはいうまでもない。なお、ワークの拡大/縮小と無関係に、マーキングヘッドのイメージの大きさを固定してもよい。マーキングヘッドの表示は位置関係の確認が一の目的であるため、マーキングヘッドの大きさを固定することで縮小表示の際にマーキングヘッドの位置を見失わないようにできる。
また、上記の例ではワークが静止した状態での印字を説明しているため、3D表示においては作業領域を中心に表示している。ただ、後述するように移動するワークに対しても印字可能なレーザマーカを利用することもでき、このような移動印字の際には、静止印字の作業領域よりも広い範囲に3D表示することもできる。すなわち、移動印字の場合には印字可能なエリアが実質的に広くとれるため、広い印字可能なエリアの全体を3D表示することで、印字設定の確認を容易にできる。特に、長尺のワークが長手方向に搬送される際などは、ワークの全体を一画面で表示させることで全体の把握が容易となる。また、必要に応じて画面をスクロールさせて全体を表示させることも可能であることはいうまでもない。
(印字ブロックの配置)
さらにまた、レーザ加工データ設定プログラムは、加工対象面の配置を調整する機能も有する。図50の例では、「形状設定」タブ204iを選択した状態で詳細設定欄204cの「ブロック形状・配置」タブ211を選択すると、印字ブロックの基準位置の座標や回転角、ブロック形状の詳細が指定できる。これによって、加工対象面の配置を任意に変更できる。またブロック形状の詳細は、図50のように円柱の加工対象面が指定されている場合は、「ブロック形状」欄212で円柱の半径と、印字面が円柱の内面か外面の別を指定できる。
(レーザ加工データの設定手順)
以上のレーザ加工データ設定プログラムを用いて、加工条件設定部3Cから印字条件を設定して加工データ生成部80Kが加工パターンを生成する手順を、図51のフローチャートに基づいて説明する。まず図51のステップS21において、加工パターンを設定する。ここでは、加工条件設定部3Cから文字列を入力し、さらにエンコードするシンボルの種別を指定する。図14の例では、加工種類指定欄204aで文字列を選択し、文字入力欄204bから文字列として「012345」を入力すると共に、文字データ指定欄204の「文字データの種類」欄から、シンボルの種別として「バーコード」、さらにバーコードの詳細種別として「CODE39」を指定している。このようにして指定された情報に基づき、演算部80は加工パターンを生成する。ここでは文字列でなくバーコードが選択されているので、バーコードが生成され、バーコードのイメージが編集表示欄202に表示される。
なお、この例では加工条件設定部3Cから入力された文字情報に基づいて、演算部80が自動的に加工パターンとしてシンボルを生成しているが、直接シンボルを入力することも可能である。例えば、既に作成されたシンボルの画像データを加工条件設定部で選択して入力したり、他のプログラムで作成したシンボルを加工条件設定部から貼り付ける等の手段が採用できる。
またステップS22で、加工条件設定部3Cからプロファイル情報を入力する。図14の例では、印字パターン入力欄204のタブを「基本設定」タブ204hから「形状設定」タブ204iに切り替えて、図18のプロファイル指定欄205から基本図形を円柱を選択する。これにより、図19に示すように編集表示欄202の表示が平面状から円柱状に切り替えられる。また、編集表示欄202の表示形式を3D表示に切り替えると、図20に示すように加工対象面の3D形状が立体的に確認できる。
このように、ステップS21で印字パターン情報を指定し、この加工パターンの平面図を編集表示欄202で表示させた後、ステップS22でプロファイル情報を指定して3次元の加工パターンに変換して編集表示欄202で確認することで、加工パターンの変化を視覚的に確認できる。なお、上記ステップS21とステップS22は、順序を入れ替えてもよい。すなわち、先に加工対象面の形状を指定した後、印字パターン情報を指定することもできる。
以上のようにして、加工データとして3次元空間座標データが得られた後、必要に応じて調整作業が行われる。例えばレイアウトの調整や高さ方向(z方向)への微調整が挙げられる。微調整には、プログラム上に設けられたバーでのスライド調整やマウスのホイール回転等の手段が利用できる。
以上の手順で最終的なレーザ加工データが生成され設定作業が終了した後、得られたレーザ加工データをレーザ加工データ設定プログラムから、図12に示すレーザ加工装置のコントローラ1Aに転送する。転送の実行には、レーザ加工データ設定プログラムの画面左下に設けられた「転送・読出し」ボタン215を押下する。
レーザ加工装置では、レーザ加工データに基づいて印字加工を行う。また実際の加工開始に先立って、テスト印字を行わせてもよい。これにより、所望の印字パターンの印字が得られるかどうかを事前に確認することができる。またテスト印字結果に基づいて、さらにレーザ加工データを再設定することもできる。
以上の例では、一のワークに一の印字パターンを指定する例を説明したが、同様の手順を繰り返すことにより一のワークに複数の印字パターンを指定することもできる。また、レーザ加工データ設定プログラムの一画面にワークを一のみを表示する構成に限られず、一画面に複数のワークを表示させて、それぞれのワークに印字パターンを指定することもできる。
(移動印字の設定方法)
またレーザ加工装置で、静止したワークへの可能のみならず、移動するワークに対しても加工データ生成部80Kで適切な条件を演算して印字を行うよう構成できる。一例として平面状のワークが移動する印字の設定方法について、図52に基づいて説明する。2次元的な移動印字では、移動するワークに対して、2次元的な印字対象面に印字する。このような印字の場合は、(1)印字する印字内容を決定し、(2)平面移動の加工条件を設定した上で、(3)印字を開始し、(4)さらに印字内容のXY座標に、ワークの移動量に応じた座標を加算する。図52(a)の例では、印字内容として文字列「ABC」を指定している。また平面移動の加工条件としては、移動方向、移動条件、印字範囲等がある。以下、平面移動加工条件について順次説明する。
(移動方向)
平面移動加工条件の一である移動方向として、ワークの移動方向を指定する。この例では、印字対象のワークが左から右へ移動するため、この移動方向を移動加工条件設定部から指定する。図53に移動加工条件設定部の一例として、加工ライン条件設定画面240を示す。この図において、「移動/印字方向」タブ241を選択し、ワークのXY移動方向及び/又はZ移動方向を設定する。この例では、レーザ加工装置のマーキングヘッドを平面図及び側面図で示し、これに対してワークのラインの向き及び移動方向を指定する。このような視覚的な表示例から選択させることによって、ユーザは相互の位置関係を容易に把握でき、設定を容易にすると共に設定ミスを低減できる。図52の例では、マーキングヘッドの長手方向に対して印字の向きが図52(a)に対して直交する場合、ワークの移動方向に応じて上又は下方向を選択する。選択後、印字内容である「ABC」が上下方向に並んで表示される。
(移動条件)
移動条件は、所定の速度での移動(フィードバック無しのオープン制御)か、エンコーダによるフィードバック制御かを指定するものである。ここではワークが等速移動かエンコーダ制御かを選択する。
(印字範囲)
印字できる範囲は、X方向とY方向に対応させて設けられたスキャナの可動範囲によって定められるものであり、その最大の印字可能範囲は、図14や図20に示す編集表示欄202で表示される部分が、これに対応するよう設定されている。ユーザは、その編集表示欄202内に、印字対象文字等を設定することで、自動的に印字範囲を設定できる。
これらの平面移動加工条件を指定すると、印字開始後のXY座標位置及び各座標位置におけるレーザ光のON/OFFを演算できる。XY座標は、印字内容の文字に応じたXY座標に、ワークの移動方向の座標に対してワーク移動量分を加算して計算できる。図52の例では、ワークがX方向に移動するため、X座標についてのみワークの移動速度を加算し、Y座標については維持する。
また、平面が移動する例に限られず、回転体など、3次元的な移動印字を行うことも可能である。この場合も上記平面移動印字と同様、(1)印字する印字内容を決定し、(2)回転移動の加工条件を設定した上で、(3)印字を開始し、(4)さらに印字内容のXY座標に、ワークの移動量に応じた座標を加算する。
(デフォーカス量の設定)
以上の加工データ生成部は、加工条件設定部で設定された加工条件に基づいて、3次元状の加工対象面と一致する基本設定条件となるように加工データを生成している。ただ、意図的に加工対象面と一致しないようにデフォーカス量を設定することも可能である。
意図的に特定のデフォーカス量を印字面に対して設定するには、印字面に対してフォーカスが合う基本設定条件に対して、デフォーカス量を指定する。図54に、このような設定を行う加工パラメータ設定画面の一例を示す。図54において、加工パラメータ設定欄204nにデフォーカス値を指定するデフォーカス設定欄204oが設けられており、ユーザが所望の値を入力する。デフォーカス値として、例えばプラスの値を入力すれば、焦点位置が印字面よりも設定された値分、レーザ加工装置に対して離れた位置に設定される。逆にマイナスの値として入力すれば、印字面よりさらに設定された値だけ焦点位置がレーザ加工装置に対して近い位置に設定される。
また、加工条件を設定する際の設定項目として、レーザ光のデフォーカス量としてのスポット径、ワークの材質等の加工パラメータを設定することもできる。この際、指定された一の加工パラメータの変更に追従させて他の加工条件を自動的に変更することにより、ユーザは特定の設定項目のみを変化させた条件出しが容易に行える。図54に示すレーザ加工データ設定プログラムの画面においては、画面右側の「詳細設定」タブ204jの下段において、ワーキングディスタンス、レーザ光のデフォーカス量としてのスポット径、加工対象ワークの設定欄が設けられている。ワーキングディスタンスは、レーザ加工装置によって決まるため、通常は自動で設定される。デフォーカス量は、レーザ光の焦点位置(ワーキングディスタンス)からのオフセット量を指定する。またスポット径は焦点位置のスポット径を基準として比率で指定される。さらに、加工対象ワークは、加工対象のワークの材質や加工目的を、選択肢から選択することで、選択されたワークの加工に適したレーザ光のパワー密度に調整される。この例では、鉄への黒色印字、ステンレスへの黒色印字、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂といったワークの材質、及び樹脂溶着、表面粗しといった加工目的が列挙されており、ユーザは所望の加工目的に応じてラジオボタンを選択する。
これらの設定項目は、相互に関連している。すなわち、デフォーカス量を調整することにより、レーザ光のパワー密度を調整できるが、同時にスポット径も変化する。またワークの材質や加工目的を選択すると、目的に合致したレーザ光のパワー密度が選択されるため、レーザ光のデフォーカス量としてのスポット径が変化することになる。このため、スポット径を一定に維持しつつレーザ光のパワー密度を調整したい場合には、従来はデフォーカス量を設定するのみならず、スポット径が変化しないような加工パラメータの組み合わせを探すべく、レーザ光の出力値や走査速度といった他の設定項目を調整する必要があった。この作業は、実際にワークにレーザ光を走査して加工した結果を見ながら各項目値を調整するという試行錯誤を繰り返して、最適な加工パラメータの組み合わせを見つけ出すものであるため、極めて煩雑で手間がかかる。
そこで、予め一の加工パラメータに対応して変更すべき他の加工パラメータ値の組み合わせを参照テーブル5aに登録しておき、一の加工パラメータを調整する際には、参照テーブル5aを参照して該当する他の加工パラメータの組み合わせを抽出し、この値を自動設定することによって、必要な設定項目のみを変化させることを可能としている。具体的には、図54の画面からレーザ光のデフォーカス量としてのスポット径、加工対象ワークのいずれかを設定すると、他の設定項目には対応する値が自動的に入力される。また、この状態からデフォーカス量を変更しても、加工対象ワークが一定に維持されるよう、他の加工パラメータ(例えばレーザ出力や走査速度)等が自動的に調整される。これにより、ユーザは所望の項目のみを速やかに変更できるので、所望の加工結果に極めて容易に調整することができる。
(デフォーカス量の連続変化)
さらに、加工パラメータをレーザ加工中に連続的に変化させることもできる。これによって、図55に示すような加工パターンに加工することができる。図55(a)は、ワーク表面の彫り込み加工において傾斜面を形成した例を示す断面図であり、図55(b)はワーク表面に筆書き調のロゴを印字加工した平面図である。このような加工を行うには、スポット径を連続的に変化させるように設定することで実現できる。この際も、上記と同様にスポット径の連続変化に追従させるように、加工データ生成部が他の加工パラメータも連続的に調整し、指定された設定項目のみが連続変化するように自動調整される。この結果、加工位置や大きさといった、変更を要しない設定項目は従前の値を維持するような加工が行われ、ユーザが望む設定項目のみを変化させるような加工条件を容易に設定できる。
図56に、このようなレーザ加工の連続変化を設定する設定画面の一例を示す。図56の例では、「連続変化を行う」欄のチェックボックスをONにすると、連続変化の設定画面に切り替えられる。ここでは、連続変化を行う範囲を座標位置で指定する。また、変化させたい設定項目のチェックボックスをONにすると、範囲の入力欄が表示され、数値を指定可能となる。図56の例では、デフォーカス量のチェックボックスを選択しており、開始位置のデフォーカス量と終了位置のデフォーカス量を指定する。指定されたデフォーカス量は、指定された範囲内において、均等に連続変化するように自動設定される。また、開始値または終了値のみを指定し、変化の増分・減分や変化率を指定することもできる。また、デフォーカス量を設定すると、スポット径の欄も対応する数値が参照テーブル5aから参照されて、入力欄に自動的に入力される。このように、いずれかの設定項目が指定されると、他の設定項目にも自動的に対応値が入力されるので、ユーザは各設定項目の加工パラメータ同士の相関関係を意識することなく、必要な項目のみを設定するだけで所望の加工条件に変更することが可能となる。
なお、図56の例では、文字データ指定欄204dで「RSS&CC(RSS・コンポジットコード)」が選択され、編集表示欄202及び3次元ビューワ260にコンポジットコードが表示されている。「RSS&CC」では、RSSコード、またはRSSコードの上方にマイクロPDFコードを付加したコンポジットコードが設定できる。この例では種別指定欄204qでコンポジットコードとして「RSS-14 CC-A」が選択されている。また、文字入力欄204bにおいて付加情報の入力に必要な区切り文字やその他制御コード、特殊文字コード、外字等の入力を容易にするため、これらの入力用ボタンを備えた第2のフローティングツールバー296を設けることもできる。これにより、ユーザは特殊なコードの入力作業を容易に行うことができる。
以上のようにして、加工対象のワークの材質、加工内容、仕上げ状態、加工時間等の設定項目について、レーザ光のビーム径を自由に変化させることにより、簡単に短時間で変更できる。
(設定の保存・読み込み)
さらに、一旦設定された加工条件の加工パラメータを設定データとして保存し、必要時に呼び出すこともできる。例えば、ファイルメニューから「名前をつけて保存」を選択し、任意の名称をつけて設定情報を保存しておくことで、将来同じワークに同じ加工を行う際に、保存された設定データを呼び出すことで、段取り替えに要する時間や手間を大幅に簡略化できる。また、よく使われる設定については、予め登録しておくことにより、これを利用すれば初心者でも容易に加工条件の設定を行える。また登録・保存されたデータの設定条件をベースにして調整を行うことによって、設定の手間を大幅に省力化できる。このように、設定情報の再利用を可能とすることでも、設定作業の省力化に大きく貢献できる。