JP2008037721A - ゼオライト成形体及びその製造方法 - Google Patents

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達也 小川
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Abstract

【課題】ゼオライト表面のポーラス性を保ちつつ、高い吸着能力と充分な硬さを有するゼオライト成形体、該ゼオライト成形体を良好な生産性で提供することである。
【解決手段】 ゼオライト粉末から成形されたゼオライト成形体であって、該ゼオライト成形体の嵩密度が0.8〜1.5g/cm、硬さが5〜50N/mmであることを特徴とするゼオライト成形体、或いは
ゼオライト粉末を大気雰囲気下での放電プラズマ焼結により成形する工程を有するゼオライト成形体の製造方法であって、該ゼオライト成形体の嵩密度が0.8〜1.5g/cm、硬さが5〜50N/mmであることを特徴とするゼオライト成形体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ゼオライト成形体及びその製造方法に関し、より詳しくは、ゼオライトのみで成形され、表面のポーラス特性を生かした吸着剤に用いられるゼオライト成形体及びその製造方法に関する。
これまでにゼオライトを含有させた成形体として、バインダー樹脂にゼオライトを混練させた成形品や(特許文献1)、ゾルゲル法でゼオライトを含有させた成形品が開発されてきたが(特許文献2)、ゼオライト表面のポーラスが他の材料に覆われてしまい、充分な吸着量を実現することができていなかった。また、ゼオライトを高含有させたため成形体が脆くなり、作業性に難点が発生するものであった。
そこで、ゼオライトのみからなり充分な硬さの成形体を開発するために、ホットプレス焼結法による製造が試みられてきたが、成型時に大きな圧力がかかることでゼオライトが潰れて表面のポーラス性が失われてしまうため、期待されるガス吸着量を実現することが出来なかった。
特開昭62−297211号公報 特開平5−293371号公報
本発明の目的は、ゼオライト表面のポーラス性を保ちつつ、高い吸着能力と充分な硬さを有するゼオライト成形体を提供することである。
本発明の別の目的は、上記ゼオライト成形体を良好な生産性で提供することである。
本発明に従って、ゼオライト粉末から成形されたゼオライト成形体であって、該ゼオライト成形体の嵩密度が0.8〜1.5g/cm、硬さが5〜50N/mmであることを特徴とするゼオライト成形体が提供される。
また、本発明に従って、ゼオライト粉末を大気雰囲気下での放電プラズマ焼結により成形する工程を有するゼオライト成形体の製造方法であって、
該ゼオライト成形体の嵩密度が0.8〜1.5g/cm、硬さが5〜50N/mmであることを特徴とするゼオライト成形体の製造方法が提供される。
本発明により、ゼオライト表面のポーラス性を保ちつつ、高い吸着能力と充分な硬さを有するゼオライト成形体を良好な生産性で提供することが可能となった。
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のゼオライトの成形体は、嵩密度が0.8〜1.5g/cm、硬さが5〜50N/mmであることが必須である。嵩密度が0.8〜1.5g/cmの範囲内、好ましくは0.9〜1.4g/cmにあることにより、ゼオライト表面のポーラス性は保たれ、充分な吸着量を有することができる。原料となるゼオライトの嵩密度は粗密度が0.2〜0.4g/cm、密密度が0.3〜0.53g/cm、のものが好ましく、結晶粒子密度が1.8g/cm程度が好ましい。硬さが5N/mm未満であると成形体が脆く粉末状に壊れ易くなり、50N/mmを超えると嵩密度が1.5g/cmを超えてしまいゼオライト表面のポーラス性は失われる。
本発明の成形体は、バインダーを使用せずゼオライトからなっている。ゼオライトの中でもモレキュラーシーブは、分子の大きさの違いによって物質を分離するのに用いられる多孔質の粒状物質であり、均一な細孔をもつ構造であって、細孔の空洞に入る小さな分子を吸着して一種のふるいの作用をする。
本発明において吸着口径は、吸水性のモレキュラーシーブとしては0.3nm〜1nmが好ましい。通常、細孔径が0.3nm、0.4nm、0.5nm、1nmのモレキュラーシーブを、それぞれモレキュラーシーブ3A、モレキュラーシーブ4A、モレキュラーシーブ5A、モレキュラーシーブ13Xと称する。被吸着物を水分とする場合には、モレキュラーシーブ3A又はモレキュラーシーブ4Aが好適な吸着剤として用いられる。また、モレキュラーシーブの平均粒子径は、10μm前後のものが用いられる。
また、疎水性のゼオライトを用いてもよく、疎水性のゼオライトとは、ゼオライトの結晶骨格内のアルミニウム原子を脱アルミニウム処理して減少させ、シリカアルミナ比を高めて、いわゆるハイシリカゼオライトとしたものを総称する。疎水性のゼオライトは、水等の極性物質に対する親和性を失い、臭い成分等の非極性物質をより強く吸着する吸臭性のゼオライトでもある。
吸臭性のゼオライト、特にモレキュラーシーブとしては、細孔径0.6〜0.9nmが好ましく、ABSCENTS1000、ABSCENTS2000、ABSCENTS3000(以上ユニオン昭和(株)製)等が挙げられる。また、ABSCENTSの平均粒径は3〜5μmのものが好ましく用いられる。
本発明におけるゼオライト粉体の焼結方法は、放電プラズマ焼結にて行うことが好ましい。放電プラズマ焼結は、粉体に直接パルス電圧を加えると、粉体粒子間隔にミクロ放電が起きてプラズマが発生する、この衝撃により、粒子表面の酸化被膜や吸着ガス等の不純物が蒸発すると同時に、粒子表面に熱や歪みのエネルギーが蓄積して活性化され、続いて電源により、活性化した粒子と粒子との接触部にジュール熱を発生させ、熱拡散を起こさせる。この時、電圧による電界拡散が平行して生じるために、数十秒から数分程度の短時間で焼結が可能となる。
このように放電プラズマ焼結は、材料の粉体間に発生するプラズマ放電を利用して焼結しているため、プラズマ放電時の材料の激しい酸化による爆発を防止する目的で放電プラズマ焼結を行うチャンバー内を真空ポンプを用いて真空環境下にして行ってきた。しかしながら、真空ポンプによるポンプ引きに時間を要することから1サイクルにかかる時間が15〜20分であり、生産性向上が望まれていた。そこで本発明者らは、まず始めにポンプ引き時間の削減を目指し、高真空下(10−4Pa)から低真空下(10−1Pa)にして行っても激しい酸化による爆発が無く放電プラズマ焼結が行えることを確認したが、1サイクルにかかる時間の減少は僅かであった。そこで再度検討した結果、今まで当業者間で言われていた「プラズマ放電時の材料の激しい酸化による爆発」が本当に起こるのかを1気圧の大気雰囲気下にて微量の材料で行ったところ爆発は起こらず、徐々に増量し、最終的に通常量にしても爆発は起こらないことを確認した。ポンプ引き時間を削減できることにより1サイクルにかかる時間が大幅に削減でき、本発明では1サイクル3〜4分で行うことが可能となり生産性を向上させることができる。
ゼオライトを放電プラズマ焼結して小さな成形体を製造する場合、型の各スポットごとにゼオライト粉末を入れていくのは煩雑であり、スポットごとの粉量のばらつきや成形体が小さいため型から取り出すことが困難になることがあることから、好ましくは板状の成形体の表裏の一方又は両方の面に分離溝が入るように設計した金型を用いて放電プラズマ焼結をすることにより、型から取り出しが容易になり、かつ板状の成形体に応力をかけて分離溝に沿って分割させることで、個々の成形体が製造可能となり生産性を向上させることができる。
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ゼオライト粉末として疎水性ゼオライト(ABSCENTS1000、ユニオン昭和(株)製)0.2gを片面に分離溝を有するグラファイト製モールド内に充填し、チャンバー内を真空ポンプを用いて真空環境下(10−4Pa)にし、10MPaの圧力を加え、パルス電圧の通電により680℃に昇温させ、同条件下で3分間保持して、φ20mm×5mmの円盤状の成形体を得られ、この円盤状の成形体に応力をかけ分割溝に沿って分割させ2mm×2mm×5mmのゼオライト成形体を得た。
得られた成形体のゼオライト表面のポーラス性を確認するために、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、ゼオライトの粒子間の接触部であるゼオライト粒子の角と角が溶着状態になっていてゼオライト表面のポーラス性は保たれ、空孔部が多く吸着物質が成形体内に入り易くなっていた。
<評価>
「嵩密度」
重量と体積を測定して算出した。
「吸着性」
成形体の気体成分の吸着特性を調べるために、減圧脱圧下の密閉容器内に得られたゼオライト成形体をバネで吊し、バネの伸びを測定する。次に、ノルマルブタン気体を流し、時間によるバネの伸びを測定する。バネ定数を換算することで吸着容量を算出することができる。ゼオライト成形体100g当たりの吸着容量が8g以上は○、8g未満5g以上は△、5g未満は×、と評価した。結果を表1に示す。
「硬さ」
得られたゼオライト成形体の硬さをデジタルフォースゲージ(FGC−50、SHIMPO社製)を用いて、押し潰し破壊時でのピーク値を測定した。測定値は測定回数N=7の平均値である。
「作業性」
得られたゼオライト成形体を取扱う際の作業性を検討した。
(実施例2)
実施例1において、30MPaの圧力を加え、パルス電圧の通電により760℃に昇温させた以外は、実施例1と同様にしてゼオライト成形体を得て、評価した。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、チャンバー内を真空環境下から大気圧下(1.01×10Pa)、23℃の環境下とした以外は、実施例1と同様にしてゼオライト成形体を得て、評価した。結果を表1に示す。得られた成形体を実施例1と同様にSEMで観察したところ、図1に示すようにゼオライトの粒子間の接触部であるゼオライト粒子の角と角が溶着状態になっており、ゼオライト表面のポーラス性は保たれていた。
(実施例4)
実施例2において、チャンバー内を真空環境下から大気圧下(1.01×10Pa)、23℃の環境下とした以外は、実施例2と同様にしてゼオライト成形体を得て、評価した。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、パルス電圧の通電により910℃に昇温させた以外は、実施例1と同様にしてゼオライト成形体を得て、評価した。結果を表1に示す。
得られた成形体をSEMで観察したところ、図2に示すように、ゼオライトが押し潰されたようにゼオライトの粒子の表面が面と面で溶着状態になっていて表面のポーラス性は失われており、空孔部が少なく吸着物質が成形体内に入り難くなっていた。
(比較例2)
実施例1において、パルス電圧の通電により630℃に昇温させた以外は、実施例1と同様にしてゼオライト成形体を得て、評価した。結果を表1に示す。
(比較例3)
ゼオライト粉末としてABSCENTS1000(ユニオン昭和(株)製)2gを型内に充填し、10MPaの圧力を加え、830℃に昇温させ、同条件下で30分間保持するホットプレス焼結によりゼオライト成形体を得て、評価した。結果を表1に示す。
(比較例4)
ゼオライト粉末としてABSCENTS1000(ユニオン昭和(株)製)8gをメラミン樹脂2gと混合させ型に入れプレス成形してゼオライト成形体を得て、評価した。結果を表1に示す。
実施例1及び2は、チャンバー内を真空ポンプで真空環境下にするために1サイクル20分間かかっていたが、チャンバー内を大気圧下で行っている実施例3及び4は1サイクル3分間で完了させることができ、生産性を著しく向上させることができた。
成形体の硬さと嵩密度とが本発明で規定した範囲外となった比較例1及び3は、ゼオライト粉末が押し固められたためか表面のポーラス性が失われて吸着性に劣るものとなった。
比較例2及び4は、円盤状の成形体までは成形できたが、分離溝に沿って分割させようと応力を掛けると硬さが乏しいため、バラバラと粉末状になり分割溝に沿って分割することが困難で歩留まり率が低いものであった。
本発明のゼオライト成形体は、高い吸着能力と充分な硬度を有することから気体成分の吸着が必要な分野に広く用いることが可能である。
走査型電子顕微鏡を用いて実施例3のゼオライト成形体表面を観察した時の写真である(倍率8000倍)。 走査型電子顕微鏡を用いて比較例1のゼオライト成形体表面を観察した時の写真である(倍率8000倍)。

Claims (5)

  1. ゼオライト粉末から成形されたゼオライト成形体であって、該ゼオライト成形体の嵩密度が0.8〜1.5g/cm、硬さが5〜50N/mmであることを特徴とするゼオライト成形体。
  2. ゼオライト粉末のみを放電プラズマ焼結により成形されたゼオライト成形体であって、該ゼオライト成形体の嵩密度が0.8〜1.5g/cm、硬さが5〜50N/mmであることを特徴とするゼオライト成形体。
  3. 前記放電プラズマ焼結が大気雰囲気下で行われた請求項2に記載のゼオライト成形体。
  4. 前記ゼオライト成形体の表裏の一方又は両方の面に分離溝が入っている請求項1〜3のいずれかに記載のゼオライト成形体。
  5. ゼオライト粉末を大気雰囲気下での放電プラズマ焼結により成形する工程を有するゼオライト成形体の製造方法であって、
    該ゼオライト成形体の嵩密度が0.8〜1.5g/cm、硬さが5〜50N/mmであることを特徴とするゼオライト成形体の製造方法。
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