JP2008037007A - 射出成形のシュミレーションコンピュータ等と射出成形方法 - Google Patents

射出成形のシュミレーションコンピュータ等と射出成形方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 裏面が内側になる曲率部を有する成形品を射出成形する場合において、半凝固状態の材料の裏面と成形型の間を加圧流体が拡がるのに必要とされる流体圧力の大きさを知ることができる技術を提供すること。
【解決手段】 射出成形シュミレーションコンピュータ100は、複数の解析装置104〜108と複数のデータファイル120〜130等を有する。流動解析装置104は、基本データを利用して材料の流動解析を実行する。変形解析装置106は、流動解析結果を利用して半凝固状態の材料50の変形解析を実行する。剛性データファイル126は、材料の剛性データを記憶している。剛性解析装置108は、変形解析結果と剛性データと拘束条件とを利用して、半凝固状態の材料50が変形しようとすることに起因してその裏面54が成形型72に加える力を算出する。
【選択図】 図9

Description

本発明は、射出成形のシュミレーション技術に関する。また、本発明は、射出成形のシュミレーション結果を利用して射出成形する方法に関する。
本発明の背景となる事項を以下に列挙する。
(1)キャビティを持つ成形型に溶融状態の材料(例えば溶融樹脂)を充填することによって、成形品を射出成形することが広く行なわれている。例えば、自動車のバンパやインストルメントパネルが射出成形によって成形されている。
(2)射出成形品には、表面と裏面が存在する。例えば、バンパやインストルメントパネルが自動車に組みつけられた場合、それらの射出成形品には、視認することができる面と視認することができない面が存在する。視認することができる面が射出成形品の表面であり、視認することができない面が射出成形品の裏面である。
(3)射出成形に利用される多くの材料は、凝固するときに収縮する。キャビティに充填された溶融材料が凝固する過程で収縮すると、成形品の外形面がキャビティを形成する成形面から離反してしまい、成形品の外形を意図した形状に成形することができない。
(4)成形品の表面は、意図した形状に仕上げる必要がある。これに対し、成形品の裏面は、成形品の表面と比べて、形状が重視されない。下記の特許文献1に、成形品の表面を意図した形状に仕上げるための技術が開示されている。この技術では、溶融材料をキャビティに充填してから材料が完全に凝固する前に、キャビティ内の材料の裏面側に加圧流体(例えばエア)を注入する。材料の裏面側に加圧流体を注入すると、材料の表面よりも先に裏面が成形型から離反する。表面が成形型から離反しない状態で材料が収縮するために、成形品の表面を意図した形状に仕上げることができる。この場合、成形型から離反した状態で成形品の裏面が成形されるために、成形品の裏面はキャビティの形状からずれる。しかしながら、成形品の裏面は形状が重視されないために、成形品の裏面がキャビティ形状からずれても問題にならない。
(5)本発明者らは、裏面が内側になる曲率部を有する成形品を射出成形したいと考えている。図1は、裏面が内側になる曲率部を有する成形品の例を示す。成形品10は、表面12と裏面14を有する。成形品10は、裏面14が内側になる曲率部16を有する。
図2は、成形品10を射出成形する装置20を簡単に示す。射出成形装置20は、成形型22を有する。成形型22は、上型22aと下型22bを有する。上型22aと下型22bの間にキャビティ24が形成されている。上型22aは、溶融材料の充填口26を有する。充填口26は、成形品10の表面12に対応する位置に開口している。下型22bは、加圧流体の注入口28を有する。注入口28は、成形品10の裏面14に対応する位置に開口している。
(6)図3は、キャビティ24内に溶融材料が充填された直後の様子を示す。キャビティ24内に充填された溶融材料は、成形型22に接する部分10aが先に凝固し、成形型22から遠い部分10bが後で凝固する。本明細書では、凝固している部分10aと凝固していない部分10bが形成されている状態の材料のことを「半凝固状態の材料」と呼ぶ。
溶融材料の充填が完了すると、キャビティ24内での材料の収縮分を補うために、充填口26からキャビティ24内に溶融材料を加え続ける。キャビティ24内に溶融材料が充填された後に溶融材料を加え続けることを「保圧」と呼ぶ。
(7)溶融材料を充填している間及び/又は保圧の間に注入口28から加圧流体が注入される。このとき、キャビティ24内の材料は、半凝固状態である。半凝固状態の材料10の裏面14に向けて加圧流体が注入される。加圧流体の圧力が小さすぎると、材料10の裏面14と成形型22の間を加圧流体が拡がらず、裏面14が表面12より先に成形型22から剥離することが保証されない。加圧流体の圧力を十分に大きくすれば、材料10の裏面14が表面12より先に成形型22から剥離することが保証されるが、加圧流体を供給するための装置(例えばポンプ)が大型化してしまう。本発明者らは、材料10の裏面14が表面12より先に成形型22から剥離することが保証される最低限の大きさの圧力で加圧流体を注入したいと考えている。
(8)充填口26から溶融材料を注入(充填又は保圧)する場合、その注入圧力(充填圧力又は保圧力)がキャビティ24内の材料10に作用する。コンピュータを利用して材料の流動解析を実行すれば、溶融材料の注入に起因して半凝固状態の材料10の各位置(キャビティ24内の各位置)に作用する力の大きさ(ベクトル)を解析することができる。流動解析では、成形品10の形状(即ちキャビティ24の形状)が複数の微小な要素に分割される。本明細書では、この微小要素のことを「有限要素」と呼ぶ。
図4は、成形品10の一部が複数の有限要素mに分割されている図を示す。実際は、成形品10の全ての部分が有限要素mに分割される。流動解析を実行すれば、溶融材料の注入に起因して各有限要素mに作用する力ベクトルを得ることができる。この力ベクトルは、溶融材料の充填圧力、保圧力、材料の凝固状態等の影響を受けて経時的に変化する。本明細書では、溶融材料の注入に起因して1つの有限要素mに作用する力ベクトルのことを「注入起因力ベクトル」と呼ぶ。
特開2005−349683号公報
本明細書では、成形品10の裏面14を構成する各有限要素mのことを「裏面側有限要素mr」と呼ぶ。各裏面側有限要素mrについて得られた注入起因力ベクトルから、各裏面側有限要素mrが成形型22に対して垂直に加える力の大きさを得ることができる。本明細書では、溶融材料の注入に起因して1つの裏面側有限要素mrが成形型22に対して垂直方向に加える力のことを「注入起因垂直力」と呼ぶ。
本発明者らは、半凝固状態の材料10の裏面14と成形型22の間を加圧流体が拡がるためには、各裏面側有限要素mrの注入起因垂直力を上回る大きさの加圧流体を注入すればよいと考えていた。例えば、所定のタイミングにおいて全ての裏面側有限要素mrの中で最も大きい注入起因垂直力がPである場合、そのPより若干大きい加圧流体を注入すれば、上記の所定のタイミングにおいて半凝固状態の材料10の裏面14の全面に亘って加圧流体が拡がることができると考えていた。
しかしながら、裏面が内側になる曲率部16を有する成形品10を射出成形する場合、上記の手法で得られた大きさの加圧流体を材料10の裏面14に送り込んでみても、キャビティ24に加圧流体が入り込まない事象や、キャビティ24に加圧流体が入り込んでも材料10の裏面14の全面に亘って加圧流体が拡がらない事象が起こることがわかった。
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、裏面が内側になる曲率部を有する成形品を射出成形する場合において、半凝固状態の材料の裏面と成形型の間に加圧流体が拡がるのに必要とされる流体圧力の大きさを知ることができる技術を提供する。
本発明者らは、研究を重ねた結果、裏面が内側になる曲率部を有する成形品を射出成形する場合に以下の事象が起こることを見出した。
図5の実線は、キャビティ24内に存在する半凝固状態の材料10を示す。キャビティ24内の材料10は、凝固するにつれて矢印D1の方向に変形しようとする。即ち、材料10は、裏面14の側に回り込むように変形しようとする。この事象が起こる原因としては、次のいくつかの理由を推測することができる。(1)凝固する過程での材料の収縮。(2)成形型に近い溶融材料が先に凝固し、成形型から遠い溶融材料が後に凝固するという凝固スピードの相違。(3)凝固した材料の残留応力。
半凝固状態の材料10は、矢印D1方向に変形しようとしても、成形型22内に収容されているためにフリーに変形することができない。この場合、材料10が矢印D1方向に変形しようとすることに起因して、材料10の裏面14が成形型22を押す。即ち、材料10が変形しようとすることに起因して、材料10の裏面14が成形型22に加える力が存在する。本明細書では、半凝固状態の材料10が変形しようとすることに起因して、1つの裏面側有限要素mrが成形型22に対して垂直方向に加える力のことを「変形起因垂直力」と呼ぶ。図5では、6つの裏面側有限要素mrが存在するものとして、6種類の変形起因垂直力PL1〜PL6が示されている。本発明者らは、材料10の裏面14と成形型22の間を加圧流体が拡がらない事象が起こるのは、変形起因垂直力PL1〜PL6が原因であることをつきとめた。材料10に作用する注入起因垂直力と変形起因垂直力の両方を考慮してはじめて、材料10の裏面14と成形型22の間に加圧流体が拡がるために必要な流体圧力を求めることができる。
本発明のシュミレーションコンピュータは、裏面が内側になる曲率部を有する射出成形品を成形するキャビティを持つ成形型に溶融状態の材料を充填することによって成形品を射出成形する際に、キャビティ内で半凝固状態の材料が変形しようとすることに起因してその裏面が成形型に加える力を算出する。
このシュミレーションコンピュータは、基本データファイルと、流動解析装置と、流動解析結果データファイルと、変形解析装置と、変形解析結果データファイルと、剛性データファイルと、剛性解析装置を有する。
基本データファイルは、流動解析のための基本データを記憶している。基本データは、当業者が流動解析に必要であると考えるあらゆるデータを含む。一般的に、基本データファイルは、キャビティ形状のデータと、材料特性のデータと、射出条件のデータを記憶している。なお、基本データファイルは、上記に例示したデータを記憶していなくてもよい。また、基本データファイルは、上記に例示したデータ以外のデータを記憶していてもよい。例えば、基本データファイルは、成形型の温度分布のデータを記憶していてもよい。
流動解析装置は、基本データファイルに記憶されている基本データを利用して、キャビティ内での材料の流動解析を実行する。流動解析は、公知の様々な流動解析ソフトウェアを利用して実行することができる。流動解析では、後述の変形解析を行なうために必要なデータが算出される。流動解析によって算出されるデータは、当業者が変形解析に必要であると考えるあらゆるデータを含む。例えば、流動解析装置は、各有限要素の注入起因力ベクトルの経時的変化を算出してもよい。また、例えば、流動解析装置は、各有限要素の温度の経時的変化を算出してもよい。
例えば、流動解析装置は、溶融材料の充填を開始してから成形型を開くまでの間の流動解析を実行してもよい。一方において、流動解析装置は、後述する変形解析で必要とされる期間の流動解析を実行し、その他の期間の流動解析を実行しなくてもよい。例えば、流動解析装置は、溶融材料の充填を開始してから後述する所定のタイミングまでの間の流動解析を実行してもよい。
なお、本明細書における「有限要素」という用語は、最も広義に解釈されるべきものであり、公知の様々な解析手法で利用される有限要素を含むものである。本発明では、例えば、ソリッド有限要素やシェル有限要素等が利用されてもよい。
流動解析結果データファイルは、流動解析装置によって得られた流動解析結果を記憶している。
変形解析装置は、流動解析結果データファイルに記憶されている流動解析結果を利用して、少なくとも所定のタイミングにおける半凝固状態の材料の変形解析を実行する。
上記の「所定のタイミング」は、材料の裏面と成形型の間に加圧流体が拡がってほしいとユーザが考えるタイミングであり、ユーザが任意に設定することができる。なお、後で再び述べるが、複数のタイミングのそれぞれについて、半凝固状態の材料の変形解析を実行してもよい。
変形解析は、公知の様々な変形解析ソフトウェアを利用して実行することができる。変形解析では、後述の剛性解析を行なうために必要なデータが算出される。変形解析によって算出されるデータは、当業者が剛性解析に必要であると考えるあらゆるデータを含む。
図5を参照して変形解析の内容を説明する。上述したように、材料10は、凝固する過程で矢印D1方向に変形しようとするが、成形型22が存在するために変形することができない。即ち、材料10は、実線の形状を保持している。仮に、この時に成形型22を開いて材料10を取り出したとしたら、材料10は矢印D1方向に変形する。図5の破線は、変形後の材料10を示す。変形解析を実行すると、上記の所定のタイミングにおいて材料10をフリーに変形させた場合の変形後の材料の形状(図5の破線形状)を得ることができると言える。以下では、この変形後の材料の形状が変形解析によって得られるものとして説明を続ける。後述する剛性解析の内容を理解しやすいからである。しかしながら、変形解析では、後述する剛性解析に利用することができる形式のデータであれば、どのような形式のデータを得るようにしてもよい。例えば、変形解析では、上記の所定のタイミングで材料10をフリーに変形させた場合の各有限要素mの体積収縮率(収縮の程度と方向)を得るようにしてもよい。
変形解析結果データファイルは、変形解析装置によって得られた変形解析結果を記憶している。
剛性データファイルは、材料の剛性データを記憶している。剛性データは、材料に加えられる応力と歪の関係を定義するデータであると言うことができる。また、剛性データは、材料に加えられる荷重と変形量の関係を定義するデータであると言うこともできる。剛性データファイルに記憶されている剛性データは、後述の剛性解析で利用される。
前記の所定のタイミングにおける材料(即ち半凝固状態の材料)の剛性データが利用されることが好ましい。しかしながら、半凝固状態の材料の剛性データを利用する代わりに、完全に凝固している状態の材料の剛性データを利用してもよい。この場合、剛性データファイルは、材料が完全に凝固している状態の剛性データを記憶している。この場合であっても、相当程度に精度のよい剛性解析結果が得られることが本発明者らによって確認されている。
図5を利用して、剛性解析の内容を説明する。剛性解析は、公知の様々な剛性解析ソフトウェアを利用して実行することができる。
上記の変形解析結果データファイルは、破線で示す材料10の形状データ(変形解析結果)を記憶している。剛性解析装置は、変形解析結果データファイルに記憶されている変形解析結果と剛性データファイルに記憶されている剛性データを利用する。また、剛性解析装置は、キャビティ24内に材料10を拘束する条件を利用する。即ち、図5の実線の位置に材料10を拘束するという条件を利用する。剛性解析装置は、変形解析結果と剛性データと拘束条件を利用して剛性解析を実行することによって、上記の所定のタイミングでの半凝固状態の材料10が変形しようとすることに起因して材料10の裏面14が成形型22に加える力を算出することができる。これは、次のように考えると理解しやすい。
図5の破線の位置に存在する材料10を実線の位置に戻すために必要な力(以下では「戻し力」と呼ぶ)の大きさは、剛性データから得ることができる。剛性解析は、実線の位置に材料10を拘束する条件の下で、上記の戻し力と逆の力を材料10に加えた場合に、材料10の裏面14を構成する各裏面側有限要素mrに作用する力ベクトルを算出するものであると考えると理解しやすい。この力ベクトルは、上記の所定のタイミングにおいて半凝固状態の材料10が変形しようとすることに起因して、1つの裏面側有限要素mrに作用する力ベクトルであると言える。本明細書では、この力ベクトルのことを「変形起因力ベクトル」と呼ぶ。各裏面側有限要素mrの変形起因力ベクトルがわかると、各裏面側有限要素mrが成形型22に対して垂直方向に加える力(図5の例ではPL1〜PL6)を求めることができる。変形解析結果と剛性データと拘束条件を利用して剛性解析を実行すると、変形起因垂直力PL1〜PL6を求めることができる。
剛性解析装置は、上記の所定のタイミングにおいて半凝固状態の材料が変形しようとすることに起因してその裏面が成形型に加える力を算出する。剛性解析装置によって算出される「力」は、変形起因垂直力であることが好ましいが、変形起因力ベクトルでもよい。変形起因力ベクトルがわかれば、変形起因垂直力を求めることができるからである。
また、剛性解析装置は、全ての裏面側有限要素のそれぞれについて変形起因垂直力(又は変形起因力ベクトル)を算出してもよい。一方において、剛性解析装置は、全ての裏面側有限要素の中の一部(1つ又は複数の裏面側有限要素)のみについて変形起因垂直力(又は変形起因力ベクトル)を算出してもよい。例えば、変形起因垂直力は、半凝固状態の材料の曲率部で比較的に大きくなることが予想される。このために、曲率部の裏面を構成する各裏面側有限要素のみについて変形起因垂直力(又は変形起因力ベクトル)を算出するようにしてもよい。また、曲率部の裏面を構成する1つの裏面側有限要素のみについて変形起因垂直力(又は変形起因力ベクトル)を算出するようにしてもよい。これらのいずれも、「半凝固状態の材料が変形しようとすることに起因してその裏面が成形型に加える力を算出する」ことに相当する。
また、剛性解析装置は、有限要素の単位で剛性解析結果を算出しなくてもよい。例えば、有限要素より大きい単位の部分(例えば曲率部)について、その部分の裏面が成形型に加える力を算出してもよい。これは、その部分の裏面を構成する各裏面側有限要素の変形起因垂直力を算出し、それらの平均を計算することによって求めてもよい。
本発明のコンピュータによると、キャビティ内で半凝固状態の材料が変形しようとすることに起因してその裏面が成形型に加える力(例えば図5の例では、変形起因垂直力PL1〜PL6)を算出することができる。変形起因垂直力PL1〜PL6を考慮することによって、半凝固状態の材料の裏面と成形型の間に加圧流体が拡がるのに必要とされる流体圧力の大きさを精度よく求めることができる。
上記のコンピュータは、流動解析と変形解析と剛性解析を実行する。いずれの解析手法も公知であるために、上記のコンピュータは公知の複数の解析を組み合わせて実行するものに過ぎないと思えるかもしれない。しかしながら、従来は、材料がキャビティ内で完全に凝固した後に変形解析を実行することによって、完全に凝固した材料が成形型を開いた後にどのように変形するのかが解析される。これに対し、本発明では、半凝固状態の材料の変形解析を実行する。さらに、この変形解析結果を利用して剛性解析を実行することによって、半凝固状態の材料の裏面が成形型に加える力を算出する。このことは、本発明者らによって創作された斬新な技術思想であり、公知の解析手法を単に組み合わせたものでは決してない。
なお、上記のコンピュータは、剛性解析装置によって算出された剛性解析結果を出力する装置を有していることが好ましい。ここでの「出力」とは、剛性解析結果を表示すること、剛性解析結果を他の装置に向けて送信すること等を含む。ここでの「表示すること」又は「送信すること」は、剛性解析結果を他の演算に利用してその演算結果を表示すること又は送信することを含む。
上記の剛性解析装置は、半凝固状態の材料の裏面を構成する複数の裏面側有限要素のそれぞれについて、上記の所定のタイミングにおいて半凝固状態の材料が変形しようとすることに起因して当該裏面側有限要素が成形型に対して垂直方向に加える力を算出してもよい。即ち、剛性解析装置は、上記の所定のタイミングにおける各裏面側有限要素の変形起因垂直力を算出してもよい。
なお、上記の裏面側有限要素は、ソリッド有限要素でもよいし、シェル有限要素でもよい。
上記のコンピュータは、剛性解析装置によって得られた剛性解析結果を記憶している剛性解析結果データファイルと、流動解析結果データファイルに記憶されている流動解析結果と剛性解析結果データファイルに記憶されている剛性解析結果を利用して演算する演算装置をさらに備えていてもよい。
この場合、流動解析装置は、半凝固状態の材料の裏面を構成する複数の裏面側有限要素のそれぞれについて、上記の所定のタイミングにおいて材料の充填又は保圧に起因して当該裏面側有限要素が成形型に対して垂直方向に加える力を算出してもよい。即ち、流動解析装置は、上記の所定のタイミングにおける各裏面側有限要素の注入起因垂直力を算出してもよい。
演算装置は、半凝固状態の材料の裏面を構成する複数の裏面側有限要素のそれぞれについて、上記の所定のタイミングにおいて材料の充填又は保圧に起因して当該裏面側有限要素が成形型に対して垂直方向に加える力(注入起因垂直力)と、上記の所定のタイミングにおいて半凝固状態の材料が変形しようとすることに起因して当該裏面側有限要素が成形型に対して垂直方向に加える力(変形起因垂直力)の和を算出してもよい。
例えば、上記の所定のタイミングにおける裏面側有限要素mr1の注入起因垂直力がPT1であって変形起因垂直力がPL1である場合、PT1とPL1の和が算出される。他の各裏面側有限要素mrについても、注入起因垂直力と変形起因垂直力の和が算出される。各裏面側有限要素の演算結果(注入起因垂直力と変形起因垂直力の和)を上回る加圧流体が注入されると、上記の所定のタイミングにおいて半凝固状態の材料の裏面と成形型の間を加圧流体が拡がることができる。
この構成によると、必要とされる流体圧力の大きさを精度よく算出することができる。
上記の演算結果を利用して射出成形する方法が有用である。即ち、この射出成形方法は、裏面が内側になる曲率部を有する成形品に対応するキャビティを持つ成形型に溶融状態の材料を充填する工程と、上記の射出成形シュミレーションコンピュータの演算装置によって得られた各値を上回る加圧流体を上記の所定のタイミングと同時又はそれより前に半凝固状態の材料の裏面側に注入する工程を備える。
なお、上記の「演算装置によって得られた各値を上回る」とは、演算装置によって得られた最大値と同じ数値を採用することも含む。
この射出成形方法を利用すると、上記の所定のタイミングにおいて、半凝固状態の材料の裏面と成形型の間を加圧流体が拡がることができる。成形品の表面より先に裏面が成形型から剥離することが保証される。このために、成形品の表面を意図した形状に仕上げることができる。
剛性解析装置は、全ての裏面側有限要素のそれぞれについて、上記の所定のタイミングにおける変形起因垂直力(又は変形起因力ベクトル)を算出してもよい。一方において、剛性解析装置は、一部の裏面側有限要素のみについて、変形起因垂直力(又は変形起因力ベクトル)を算出してもよい。例えば、半凝固状態の材料の曲率部の裏面は、その他の部分と比べて変形起因垂直力が大きくなる傾向がある。このために、曲率部の裏面は、その他の部分と比べて変形起因垂直力と注入起因垂直力の和(以下では「演算結果」と呼ぶ)が大きくなる。各裏面側有限要素の中で曲率部を構成する裏面側有限要素の演算結果が最大になることが予想される場合、曲率部の裏面について演算結果を求めればよく、他の部分の演算結果を求める必要がない。このために、剛性解析装置は、半凝固状態の材料の曲率部の裏面を構成する少なくとも1つの裏面側有限要素のみについて、前記の所定のタイミングにおいて半凝固状態の材料が変形しようとすることに起因して当該裏面側有限要素が成形型に加える力を算出してもよい。
この場合、他の裏面側有限要素については、変形起因垂直力(又は変形起因力ベクトル)が算出されない。コンピュータの計算量を少なくすることができる。
材料の裏面と成形型の間を加圧流体が拡がってほしいタイミングがわかっている場合は、そのタイミングの剛性解析結果のみが得られればよい。しかしながら、そのタイミングがわからない場合、変形解析装置や剛性解析装置は、複数のタイミングのそれぞれについて、変形解析や剛性解析を実行してもよい。
この構成によると、各タイミングにおける剛性解析結果が得られる。ユーザは、各タイミングにおける剛性解析結果を考慮して、材料の裏面と成形型の間を加圧流体が拡がってほしいタイミングを決定することができる。
上記の「複数のタイミング」の始期から終期までの期間は、任意に設定することができる。例えば、キャビティ内に材料の充填を開始してから成形型を開くまでの期間が設定されてもよい。また、例えば、キャビティ内に材料の充填を開始してから成形型を開くまでの期間の中の一部の期間が設定されてもよい。例えば、保圧の間に加圧流体を注入することが決まっている場合、保圧の開始から終了までの期間に設定されてもよい。
以下の方法も有用である。この方法は、裏面が内側になる曲率部を有する成形品に対応するキャビティを持つ成形型に溶融状態の材料を充填することによって成形品を射出成形する場合に、キャビティ内で半凝固状態の材料が変形しようとすることに起因してその裏面が成形型に加える力をコンピュータによって算出する射出成形シレーション方法である。この方法では、以下の各工程をコンピュータが実行する。
(1)流動解析のための基本データを記憶している基本データファイルを作成する工程。(2)基本データファイルに記憶されている基本データを利用して、キャビティ内での材料の流動解析を実行する流動解析工程。
(3)流動解析工程で得られた流動解析結果を記憶している流動解析結果データファイルを作成する工程。
(4)流動解析結果データファイルに記憶されている流動解析結果を利用して、少なくとも所定のタイミングにおける半凝固状態の材料の変形解析を実行する変形解析工程。
(5)変形解析工程で得られた変形解析結果を記憶している変形解析結果データファイルを作成する工程。
(6)材料の剛性データを記憶している剛性データファイルを作成する工程。
(7)変形解析結果データファイルに記憶されている変形解析結果と、剛性データファイルに記憶されている剛性データと、キャビティ内に半凝固状態の材料を拘束する条件とを利用して、前記の所定のタイミングにおいて半凝固状態の材料が変形しようとすることに起因してその裏面が成形型に加える力を算出する剛性解析工程。
本方法によって算出された力(剛性解析結果)を考慮することによって、半凝固状態の材料の裏面と成形型の間を加圧流体が拡がるのに必要とされる流体圧力の大きさを精度よく求めることができる。
なお、上記の各工程(1)〜(7)をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムも、本発明者らによって創作された技術の一つである。
次の射出成形方法も、本発明の技術に含まれる。この射出成形方法は、裏面が内側になる曲率部を有する射出成形品の裏面側に加圧流体を注入することによって、射出成形品の裏面を成形型の成形面から離反させた状態で成形する。この方法では、シュミレーションコンピュータによって加圧流体を注入しない場合のシュミレーションを実施する。これにより、少なくとも所定のタイミングにおいて曲率部の裏面とそれに向かいあう成形面との間に作用する最大圧力が算出される。次いで、上記の所定のタイミングと同時又はそれより前に、曲率部の裏面とそれに向かいあう成形面との間に、前記の最大圧力以上の加圧流体を注入する工程が実施される。
この方法によると、曲率部の裏面とそれに向かいあう成形面との間に作用する最大圧力が算出される。この最大圧力以上の加圧流体が射出成形品(半凝固状態の材料)の裏面側に注入されるために、加圧流体が曲率部を超えて射出成形品の裏面の全域に亘って拡がることができる。射出成形品の裏面が成形面から離反した状態になることが保証される。
上記のシュミレーションコンピュータは、板状の射出成形品の曲率部をはさむ両サイドにおいて射出成形品が成形型で拘束されている状態で射出成形品が面に沿って収縮することに起因して曲率部の裏面とそれに向かいあう成形面との間で生じる圧力と、材料の充填又は保圧に起因して前記曲率部の裏面とそれに向かいあう成形面との間で生じる圧力を加味して、曲率部の裏面とそれに向かいあう成形面との間に作用する最大圧力を算出することが好ましい。
この方法によると、変形起因垂直力と注入起因垂直力の両方が加味されて、曲率部の裏面とそれに向かいあう成形面との間に作用する最大圧力が算出される。
下記の実施例に記載の技術の主要な特徴を列挙する。
(形態1)裏面が内側になる成形品は自動車部品である。
(形態2)基本データファイルは、キャビティ形状データと材料特性データと射出条件データを少なくとも記憶している。キャビティ形状データは、キャビティ(成形品)の形状が複数の有限要素に分割されたデータである。材料特性データは、材料の温度−粘度特性と材料の冷却特性のうちの少なくとも1つを含む。射出条件データは、射出圧力と射出速度と保圧力と保圧時間と材料初期温度のうちの少なくとも1つを含む。
(形態3)剛性解析で利用される拘束条件は、半凝固状態の材料の端部をキャビティ内に拘束するという条件である。
図面を参照して本発明の実施例を説明する。本実施例では、射出成形シュミレーションを実行するコンピュータについて説明する。このコンピュータの構成を説明する前に、射出成形される成形品の形状と射出成形装置の構成を説明しておく。
図6は、本実施例の成形品50の斜視図を示す。本実施例の成形品50は、自動車のバンパである。成形品50は、表面52と裏面54を有する。表面52は、成形品50が自動車本体に組みつけられた場合に視認することができる面である。裏面54は、成形品50が自動車本体に組みつけられても視認することができない面である。成形品50は、裏面54が内側(谷)になる2つの曲率部56,58を有する。
図7は、成形品50のための射出成形装置70を示す。射出成形装置70は、成形型72とプランジャ78とポンプ82等を有する。
成形型72は、上型72aと下型72bを有する。上型72aと下型72bの間にキャビティ74が形成されている。キャビティ74は、成形品50に対応する形状を有する。上型72aは、ゲート76を有する。ゲート76の一端は、キャビティ74に開口している。ゲート76の一端は、成形品50の表面52に対応する位置に開口している。ゲート76の他端は、プランジャ78に連通している。下型72bは、エア注入経路80を有する。エア注入経路80の一端は、キャビティ74に開口している。エア注入経路80の一端は、成形品50の裏面54に対応する位置に開口している。エア注入経路80の他端は、ポンプ82に連通している。
プランジャ78は、ゲート76に溶融樹脂を注入する。プランジャ78には様々な射出条件を設定することができる。例えば、射出圧力、射出速度、射出時間、保圧力、保圧時間等を設定することができる。プランジャ78は、設定された射出条件に従って溶融樹脂を注入する。プランジャ78からゲート76に注入された溶融樹脂は、キャビティ74に充填される。
ポンプ82は、エア注入経路80に加圧エアを注入する。ポンプ82には様々なエア注入条件を設定することができる。例えば、エア注入タイミング、エア注入時間、エア圧力等を設定することができる。ポンプ82は、設定されたエア注入条件に従ってエアを注入する。ポンプ82からエア注入経路80に注入されたエアは、キャビティ72内の成形品(半凝固状態の樹脂)50の裏面54と成形型72の間を拡がる。
図8は、射出成形装置70が実行する各工程のタイムチャートを示す。射出成形装置70は、プランジャ78によって溶融樹脂をキャビティ74内に充填する充填工程を実施する。キャビティ74内が溶融樹脂で満たされると充填工程は終了する。
射出成形装置70は、充填工程が終了すると、プランジャ78から樹脂を射出し続ける保圧工程を実施する。
射出成形装置70は、保圧工程中にエア注入工程を開始することができる(図8のG1)。エア注入工程は、保圧工程を開始するのと同時に開始されてもよい(図8のG2)。また、エア注入工程は、保圧工程を開始する前(充填工程中)に開始されてもよい(図8のG3)。エア注入工程は、図8の矢印trの範囲のいずれのタイミングで開始されてもよい。なお、以下では、図8の符号tsに示すタイミングでエア注入工程が開始されるものとして説明する。即ち、図8の矢印G1で示すエア注入工程が実施されるものとして説明する。
エア注入工程が終了すると、上型72aと下型72bが開かれて成形品50が取り出される。
続いて、本実施例の射出成形シュミレーションコンピュータの構成を説明する。図9は、コンピュータ100が実現する機能を示す。図示省略しているが、コンピュータ100は、CPU、ROM、RAM等のハードウェアを有する。コンピュータ100は、後述する各解析や演算を実行するためのプログラム(ソフトウェア)を記憶している。ハードウェアとプログラムが協働して動作することによって、コンピュータ100は、図9に示す各機能を実現する。
コンピュータ100は、入力装置102と複数の解析装置104,106,108と演算装置110と出力装置112と複数のデータファイル120,122,124,126,128,130を有する。
入力装置102は、例えば、キーボードやマウスである。入力装置102は、ユーザによって操作される。ユーザは、入力装置102を利用して様々なデータを入力することができる。
各解析装置104,106,108は、様々な解析を実行する。各解析装置104,106,108が実行する解析の内容は、後で詳しく説明する。演算装置110は、解析装置104,108によって得られたデータに基づいて演算処理を実行する。演算装置110が実行する演算の内容は、後で詳しく説明する。
出力装置112は、解析装置108によって得られたデータや演算装置110によって得られたデータを表示する。
各データファイル120,122等が記憶しているデータの内容と、そのデータを利用して実行される解析の内容を順に説明していく。
基本データファイル120は、流動解析に必要な基本データを記憶している。ユーザは、入力装置102を利用して基本データを入力することができる。コンピュータ100は、入力された基本データを記憶している基本データファイル120を作成する。本実施例の基本データファイル120は、キャビティ形状データと材料特性データと射出条件データと成形型温度分布データを記憶している。
キャビティ形状データは、キャビティ74の形状(即ち成形品の形状)を定義するデータである。本実施例のキャビティ形状データは、三次元のCADデータが複数の有限要素に分割されたものである。図10は、キャビティ形状データを示す。成形品50(キャビティ74)が複数の有限要素m(mf,mr)に分割されている。
本実施例のキャビティ形状データは、成形品50が厚み方向に2つの有限要素mに分割されている。しかしながら、キャビティ形状データは、成形品50が厚み方向に3つ以上の有限要素mに分割されたものでもよい。また、キャビティ形状データは、厚み方向に1つの有限要素mのみによって構成されたものでもよい。
成形品50は、表面52を構成する複数の有限要素mfと、裏面54を構成する複数の有限要素mrを有する。以下では、有限要素mfのことを「表面側有限要素mf」と呼び、有限要素mrのことを「裏面側有限要素mr」と呼ぶ。
材料特性データは、材料(即ち樹脂)の特性を定義するデータである。本実施例の材料特性データは、樹脂の温度−粘度特性と冷却特性を含む。温度−粘度特性は、樹脂の温度と粘度の関係を定義するデータである。通常、温度−粘度曲線が利用される。冷却特性は、樹脂の冷えやすさを定義するデータである。
射出条件データは、キャビティ74に樹脂を射出する際の射出条件を定義するデータである。本実施例の射出条件データは、射出圧力と射出速度と保圧力と保圧時間と樹脂初期温度を含む。射出圧力は、充填工程においてプランジャ78から射出される樹脂の圧力である。射出速度は、充填工程においてプランジャ78から射出される樹脂の射出速度である。保圧力は、保圧工程においてプランジャ78からキャビティ74内の樹脂に加えられる圧力である。保圧時間は、保圧工程の継続時間である。樹脂初期温度は、プランジャ78から射出される樹脂の初期温度である。
成形型温度分布データは、成形型72の温度分布を定義するデータである。成形型72の内部には、冷却水の通過経路(図示省略)が形成されている。このために、成形型72は、冷却水経路に近い部分が低温になっており、冷却水経路から遠い部分が高温になっている。成形型72の内部には温度差が形成されており、この情報が成形型温度分布データとして保存されている。
流動解析装置104は、流動解析ソフトウェアが動作することによって機能する。本実施例の流動解析ソフトウェアは、3D−TIMON(東レエンジニアリング株式会社)の高精度反り変形バージョンである「3D−TIMON−AWARP」である。
流動解析装置104は、基本データファイル120に記憶されている基本データを利用して、キャビティ74内での樹脂の流動解析を実行する。流動解析装置104は、充填工程を開始してから保圧工程が終了するまでの各タイミングにおいて、樹脂の充填又は保圧に起因して各有限要素mに作用する力ベクトル(注入起因力ベクトル)を算出する。即ち、流動解析装置104は、各有限要素mの注入起因力ベクトルの経時的変化を算出する。また、流動解析装置104は、充填工程を開始してから保圧工程が終了するまでの各タイミングにおいて、各有限要素mの温度を算出する。即ち、流動解析装置104は、各有限要素mの温度の経時的変化を算出する。
図9に示す流動解析結果データファイル122は、流動解析装置104によって算出された流動解析結果を記憶する。図11は、流動解析結果データファイル122の記憶内容の一例を示す。流動解析結果データファイル122は、各有限要素mの注入起因力ベクトルの経時的変化と、各有限要素mの温度Tの経時的変化を記憶している。例えば、タイミングtsでは、裏面側有限要素mrxの注入起因力ベクトルはArx(ts)であり、温度はTrx(ts)である。
流動解析結果データファイル122に記憶されている流動解析結果は、次に説明する変形解析で利用される。
図9に示す変形解析装置106は、変形解析ソフトウェアが動作することによって機能する。上記した流動解析ソフトTIMON−AWARPは、変形解析ソフトウェアを兼用している。本実施例では、TIMON−AWARPが変形解析ソフトウェアとして利用される。
変形解析装置106は、基本データファイル120に記憶されている基本データと、流動解析結果データファイル122に記憶されている流動解析結果とを利用して、変形解析を実行する。変形解析装置106は、充填工程を開始してから保圧工程が終了するまでの各タイミングにおいて、変形解析を実行する。以下では、上記の図8のタイミングtsにおいて実行される変形解析の内容を説明する。他の各タイミングにおいても、同様に変形解析が実行される。
図12は、タイミングtsにおけるキャビティ74内の材料50を示す。材料50は、キャビティ74内で実線の形状を維持している。しかしながら、様々な原因によって材料50には変形しようとする力D2(以下では「変形力」と呼ぶ)が働く。変形力D2が作用する理由としては、材料50の収縮、材料50内での凝固スピードの相違、残留応力等が推測される。材料50には変形力D2が作用しているために、タイミングtsにおいて仮に成形型72を開くと、材料50は破線の形状に変形する。変形解析は、材料50をフリーに変形させた場合の変形後の形状を算出するものと考えると理解しやすい。実際の変形解析では、タイミングtsで材料50をフリーに変形させた場合の各有限要素mの体積収縮率(収縮の程度と方向)を算出している。これは、タイミングtsで材料50をフリーに変形させた場合の変形後の形状を算出していることに他ならない。
変形解析装置106は、他の各タイミングについても、各有限要素mの体積収縮率を算出する。即ち、変形解析装置106は、各有限要素mの体積収縮率の経時的変化を算出する。
図9に示す変形解析結果データファイル124は、変形解析装置106によって算出された変形解析結果を記憶する。即ち、変形解析結果データファイル124は、各有限要素mの体積収縮率の経時的変化を記憶している。これは、各タイミングにおいて材料50をフリーに変形させた場合の変形後の形状を記憶していることに等しい。
変形解析結果データファイル124に記憶されている変形解析結果は、後述する剛性解析で利用される。
剛性データファイル126は、樹脂の応力−歪特性データを記憶している。ユーザは、入力装置102を利用して応力−歪特性データを入力することができる。コンピュータ100は、入力された応力−歪特性データを記憶している剛性データファイル126を作成する。
本実施例では、樹脂が完全に凝固している場合の応力−歪特性データを利用する。実際に型開きする前の樹脂は半凝固状態であり、樹脂が半凝固状態の場合の応力−歪特性データを利用することが好ましい。しかしながら、樹脂が完全に凝固している場合の応力−歪特性データを利用しても、ある程度は精度のよい剛性解析結果が得られることが本発明者らによって確認されている。
剛性データファイル126に記憶されている剛性データは、後述する剛性解析で利用される。
拘束条件データファイル128は、後述する剛性解析で利用される拘束条件を記憶している。ユーザは、入力装置102を利用して拘束条件データを入力することができる。コンピュータ100は、入力された拘束条件データを記憶している拘束条件データファイル128を作成する。
図12を参照して、拘束条件データファイルに記憶されている拘束条件を説明する。本実施例の拘束条件は、材料50の端部50a,50bをその位置に固定するという条件である。この拘束条件がどのようにして利用されるのかは、後で詳しく説明する。
図9に示す剛性解析装置108は、剛性解析ソフトウェアが動作することによって機能する。本実施例の剛性解析ソフトウェアは、Nastran(エムエスシーソフトウェア株式会社)である。
剛性解析装置108が利用するデータを以下に列挙する。
(1)基本データファイル120に記憶されているキャビティ形状データ(成形品形状データ)。
(2)変形解析結果データファイル124に記憶されている変形解析結果。
(3)剛性データファイル126に記憶されている応力−歪特性データ。
(4)拘束条件データファイル128に記憶されている拘束条件データ。
剛性解析装置108は、上記の各データを利用して材料50の剛性解析を実行する。剛性解析装置108は、充填工程を開始してから保圧工程が終了するまでの各タイミングにおいて、剛性解析を実行する。
以下では、図8のタイミングtsにおいて実行される剛性解析の内容を説明する。他の各タイミングにおいても、同様に剛性解析が実行される。
変形解析結果データファイル124は、タイミングtsで材料50をフリーに変形させた場合の各有限要素mの体積収縮率を記憶している。即ち、図12の破線形状の材料50を記憶している。剛性解析では、材料50の端部50a,50bをその位置に固定するという拘束条件が利用される。この拘束条件の下で、タイミングtsにおける各有限要素mの体積収縮率に基づいて、材料50を収縮させる。この場合に各有限要素mに作用する力ベクトルが、剛性データファイル126に記憶されている応力−歪特性データから得られる。これは、次のように考えると理解しやすい。
即ち、破線形状の材料50の端部50a’を端部50aに戻すとともに、破線形状の材料50の端部50b’を端部50bに戻すように、破線形状の材料50に力(以下では「戻し力」と呼ぶ)を与える。この戻し力の大きさは、剛性データファイル126に記憶されている応力−歪特性データから得られる。剛性解析装置108は、上記の拘束条件の下で戻し力と逆の力を実線形状の材料50に与えた場合に、各有限要素mに作用する力ベクトルを算出すると考えればよい。この力ベクトルが、実線形状の材料50が破線形状に変形しようとすることに起因して各有限要素mに作用する力ベクトル(変形起因力ベクトル)である。
図12には、曲率部56の裏面54を構成する1つの裏面側有限要素mrxが示されている。裏面側有限要素mrxの変形起因力ベクトルはBrx(ts)である。
本実施例の剛性解析装置108は、各裏面側有限要素mrの変形起因力ベクトルを算出する。一方において、剛性解析装置108は、各表面側有限要素mhの変形起因力ベクトルを算出しない。これにより、計算量を少なくすることができる。
各裏面側有限要素mrの変形起因力ベクトルがわかると、各裏面側有限要素mrが成形型72に対して垂直方向に加える力(変形起因垂直力)を計算することができる。例えば、図12に示す裏面側有限要素mrxの場合、変形起因力ベクトルBrx(ts)から変形起因垂直力BPrx(ts)を計算することができる。剛性解析装置108は、各裏面側有限要素mrについて変形起因垂直力を算出する。
剛性解析装置108は、他の各タイミングにおいても剛性解析を実行し、各裏面側有限要素mrの変形起因垂直力を算出する。これにより、各裏面側有限要素mrの変形起因垂直力の経時的変化が得られることになる。
図9に示す剛性解析結果データファイル130は、剛性解析装置108によって算出された剛性解析結果を記憶する。即ち、剛性解析結果データファイル130は、各裏面側有限要素mrの変形起因垂直力の経時的変化を記憶している。
剛性解析結果データファイル130に記憶されている剛性解析結果は、次に説明する演算装置110によって利用される。
演算装置110は、流動解析結果データファイル122に記憶されている各裏面側有限要素mrの注入起因力ベクトルから、各裏面側有限要素mrの注入起因垂直力を算出する。図13は、1つの裏面側有限要素mrxを示す。例えば、タイミングtsでは、裏面側有限要素mrxの注入起因力ベクトルは、Arx(ts)である。演算装置110は、注入起因力ベクトルArx(ts)から、裏面側有限要素mrxの注入起因垂直力(成形型72に対して垂直方向に加える力)APrx(ts)を算出する。演算装置110は、他の各裏面側有限要素mrについても、その裏面側有限要素mrの注入起因力ベクトルから注入起因垂直力を算出する。これにより、タイミングtsにおける各裏面側有限要素mrの注入起因垂直力が算出される。
演算装置110は、他のタイミングについても、各裏面側有限要素mrの注入起因垂直力を算出する。これにより、各裏面側有限要素mrの注入起因垂直力の経時的変化が算出される。
演算装置110は、各裏面側有限要素mrの注入起因垂直力と変形起因垂直力の和を算出する。各裏面側有限要素mrの注入起因垂直力は、上記の計算によって得られたものである。各裏面側有限要素mrの変形起因垂直力は、剛性解析結果データファイル130に記憶されている。
例えば、タイミングtsにおいて、裏面側有限要素mrxの注入起因垂直力は、APrx(ts)である。また、タイミングtsにおいて、裏面側有限要素mrxの変形起因垂直力は、BPrx(ts)である(図13参照)。演算装置110は、注入垂直力APrx(ts)と変形垂直力BPrx(ts)の和を算出する。演算装置110は、他の各裏面側有限要素mrについても、その裏面側有限要素mrの注入起因垂直力と変形起因垂直力の和を算出する。これにより、タイミングtsにおける各裏面側有限要素mrの注入起因垂直力と変形起因垂直力の和が算出される。
演算装置110は、他のタイミングについても、各裏面側有限要素mrxの注入起因垂直力と変形起因垂直力の和を算出する。これにより、各裏面側有限要素mrの注入起因垂直力と変形起因垂直力の和の経時的変化が算出される。
なお、以下では、注入起因垂直力と変形起因垂直力の和のことを「演算結果」と呼ぶ。
出力装置112は、演算装置110によって得られた演算結果を表示する。出力装置112は、各タイミングにおける各裏面側有限要素mrの演算結果を表示することができる。出力装置112は、例えば、タイミングtsにおける各裏面側有限要素mrの演算結果を表示することができる。ユーザは、これを見ることによって、タイミングtsにおいて材料50の裏面54の全面に亘ってエアが拡がるのに必要なエア圧力を知ることができる。例えば、タイミングtsの各裏面側有限要素mrの演算結果の中で裏面側有限要素mrxの演算結果(APrx(ts)+BPrx(ts))が最大であった場合、その値を上回るエア圧を採用すれば、タイミングtsにおいて材料50の裏面54の全面に亘ってエアが拡がることがわかる。ユーザは、出力装置112の表示内容を見ることによって、最低限必要なエア圧の大きさを知ることができる。これにより、このエア圧を実現することができるポンプ82を採用すればよいことがわかる。
上述したように、本実施例の剛性解析では、材料50が完全に凝固している場合の応力−歪特性データを利用する。しかしながら、実際は、タイミングtsでは材料50は半凝固状態である。従って、本実施例の剛性解析で得られた裏面側有限要素mrxの変形起因垂直力BPrx(ts)は、実際の変形起因垂直力より大きくなる。このために、APrx(ts)とBPrx(ts)の和と同じ値をエア圧として採用しても、タイミングtsにおいて材料50の裏面54の全面に亘ってエアが拡がるはずである。ユーザは、APrx(ts)とBPrx(ts)の和と同じ値をエア圧として採用してもよい。
上述したように、出力装置112は、タイミングtsにおける演算結果のみならず、各タイミングにおける演算結果を表示することができる。このために、ユーザは、各タイミングにおける演算結果を考慮して、材料50の裏面54の全面に亘ってエアが拡がって欲しいタイミングを決定することができる。
本実施例では、上記のコンピュータ100によって得られた演算結果に基づいて、成形品50を射出成形する。この射出成形方法では、上記のタイミングtsにおいてエアを注入するものとする。また、タイミングtsでは、裏面側有限要素mrxの演算結果が最大であるとする。
この射出成形方法は、キャビティ74に樹脂を充填する工程を実施する。ここで利用される樹脂は、上記の基本データファイル120に記憶されている材料特性データによって定義される樹脂である。また、充填工程は、基本データファイル120に記憶されている射出条件データに従って実施される。また、射出成形装置70は、基本データファイル120に記憶されている金型温度分布を有する。
充填工程が終了すると保圧工程が実施される。保圧工程は、基本データファイル120に記憶されている射出条件データに従って実施される。
保圧工程の間のタイミングtsにおいて、エアを注入する工程が実施される。エアの圧力は、タイミングtsにおける裏面側有限要素mrxの演算結果と同じ値が採用される。これにより、タイミングtsにおいて材料50の裏面54の全域に亘ってエアが拡がる。タイミングts以後は、裏面54が成形型72から離反した状態で材料50が凝固することが保証される。即ち、表面52が成形型72に接している状態で材料50が凝固することが保証される。
この射出成形方法を実施すると、成形品50の表面52を意図した形状に仕上げることができる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
上記の実施例の変形例を以下に列挙する。
(1)材料50の裏面54の全面に亘ってエアが拡がって欲しいタイミング(例えばts)をユーザが決定している場合、流動解析装置104は、タイミングtsまでの流動解析を実行し、それより後の流動解析を実行しなくてもよい。この場合、変形解析装置106は、タイミングtsのみについて変形解析を実行し、それ以外のタイミングでは変形解析を実行しない。また、剛性解析装置108は、タイミングtsのみについて剛性解析を実行し、それ以外のタイミングでは剛性解析を実行しない。
(2)また、全ての裏面側有限要素mrについて、注入起因垂直力と変形起因垂直力を算出しなくてもよい。半凝固状態の材料50が変形しようとする力は、材料50の曲率部56,58に集中する。曲率部56,58の裏面54を構成する裏面側有限要素mrは、他の部分の裏面側有限要素mrと比べて変形起因垂直力が大きくなる。従って、注入起因垂直力と変形起因垂直力の和も、曲率部56,58の各裏面側有限要素mrでは大きくなることが予想される。このために、曲率部56,58の各裏面側有限要素mrについては注入起因垂直力と変形起因垂直力を算出し、他の部分の各裏面側有限要素mrについては注入起因垂直力と変形起因垂直力を算出しなくてもよい。
(3)また、曲率部56,58の各裏面側有限要素mrの中から、注入起因垂直力と変形起因垂直力の和が最大になる1つの裏面側有限要素mr(例えばmrx)を予め特定することができる場合、その裏面側有限要素mrxについては注入起因垂直力と変形起因垂直力を算出し、それ以外の各裏面側有限要素mrについては注入起因垂直力と変形起因垂直力を算出しなくてもよい
上記の(1)から(3)の変形例を採用すると、コンピュータ100の計算量を少なくすることができる。
(4)上記の実施例の剛性解析では、材料50が完全に凝固している場合の応力−歪特性データを利用する。しかしながら、上記のタイミングtsにおける応力−歪特性データがわかっている場合、それを利用してタイミングtsにおける剛性解析を実行してもよい。このようにすると、精度のよい剛性解析結果が得られる。
また、例えば、タイミングtsでは、材料50の約半分が凝固していると仮定してもよい。材料50が完全に凝固している場合の応力−歪特性データから、材料50の約半分が凝固している場合の応力−歪特性データを求めてもよい。この応力−歪特性データを利用して、タイミングtsにおける剛性解析を実行してもよい。
また、材料50が完全に凝固している場合の応力−歪特性データを利用する場合、実際に射出成形を実施して得られた実験結果からその応力−歪特性データを補正するようにしてもよい。
(5)図6に示すように、キャビティ74内の材料50は、D2方向に変形しようとする。キャビティ74内の材料50は、D3方向にも変形しようとするが、その変形量は非常に小さい。このために、D3方向の変形を無視することができる。
上記の実施例の剛性解析では、材料50が矢印D2方向と矢印D3方向の両方に変形しようとすることに起因して各裏面側有限要素mrに作用する力ベクトル(変形起因力ベクトル)を算出している。しかしながら、剛性解析装置108は、矢印D3方向の変形力を無視して剛性解析を実行してもよい。この場合、剛性解析装置108は、図6の二点鎖線Lに沿った方向(いわゆる面方向)に材料50を収縮させる。この場合、矢印D2方向の変形力のみが材料50に作用することになり、矢印D3方向の変形力が無視されることになる。
(6)上記の実施例では、材料50の端部50a,50bを拘束する条件を利用して剛性解析を実行する。しかしながら、拘束条件は、様々に変更することができる。例えば、端部50a,50bのみならず、他の部分も拘束する条件を利用してもよい。また、端部50a,50bを拘束せずに、他の部分のみを拘束する条件を利用してもよい。
(7)出力装置112は、演算装置110によって得られた演算結果のみならず、剛性解析結果データファイルに記憶されている剛性解析結果も表示してもよい。また、コンピュータ100が演算装置110の機能を実現しない場合、出力装置112は、剛性解析結果のみを表示してもよい。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
裏面が内側になる曲率部を有する成形品の例を示す。 図1の成形品を射出成形するための装置を簡単に示す。 半凝固状態の材料を示す。 成形品の一部が有限要素に分割された図を示す。 半凝固状態の材料が変形しようとする様子を説明するための図を示す。 実施例の射出成形品(バンパ)の一例を示す。 バンパを射出成形するための装置を簡単に示す。 射出成形装置が実施する各工程のタイムチャートを示す。 射出成形シュミレーションコンピュータが実現する各機能を示す。 バンパが有限要素に分割された図を示す。 流動解析結果データファイルの記憶内容の一例を示す。 半凝固状態の材料が変形しようとする様子を説明するための図を示す。 1つの裏面側有限要素に作用する力を説明するための図を示す。
符号の説明
10:成形品
12:表面
14:裏面
16:曲率部
20:射出成形装置
22:成形型
24:キャビティ
50:成形品
52:表面
54:裏面
56:曲率部
58:曲率部
70:射出成形装置
72:成形型
74:キャビティ
100:射出成形シュミレーションコンピュータ
102:入力装置
104:流動解析装置
106:変形解析装置
108:剛性解析装置
110:演算装置
112:出力装置
120:基本データファイル
122:流動解析結果データファイル
124:変形解析結果データファイル
126:剛性データファイル
128:拘束条件データファイル
130:剛性解析結果データファイル

Claims (10)

  1. 裏面が内側になる曲率部を有する射出成形品を成形するキャビティを持つ成形型に溶融状態の材料を充填することによって前記射出成形品を射出成形する際に、キャビティ内で半凝固状態の材料が変形しようとすることに起因して前記裏面が成形型に加える力を算出するシュミレーションコンピュータであり、
    流動解析のための基本データを記憶している基本データファイルと、
    基本データファイルに記憶されている基本データを利用して、キャビティ内での材料の流動解析を実行する流動解析装置と、
    流動解析装置によって得られた流動解析結果を記憶している流動解析結果データファイルと、
    流動解析結果データファイルに記憶されている流動解析結果を利用して、少なくとも所定のタイミングにおける半凝固状態の材料の変形解析を実行する変形解析装置と、
    変形解析装置によって得られた変形解析結果を記憶している変形解析結果データファイルと、
    材料の剛性データを記憶している剛性データファイルと、
    変形解析結果データファイルに記憶されている変形解析結果と、剛性データファイルに記憶されている剛性データと、キャビティ内に半凝固状態の材料を拘束する条件とを利用して、前記所定のタイミングにおいて半凝固状態の材料が変形しようとすることに起因して前記裏面が成形型に加える力を算出する剛性解析装置と
    を備える射出成形用のシュミレーションコンピュータ。
  2. 前記剛性解析装置は、半凝固状態の材料の裏面を構成する複数の裏面側有限要素のそれぞれについて、前記所定のタイミングにおいて半凝固状態の材料が変形しようとすることに起因して当該裏面側有限要素が成形型に対して垂直方向に加える力を算出することを特徴とする請求項1のシュミレーションコンピュータ。
  3. 前記剛性解析装置によって得られた剛性解析結果を記憶している剛性解析結果データファイルと、
    流動解析結果データファイルに記憶されている流動解析結果と、剛性解析結果データファイルに記憶されている剛性解析結果を利用して演算する演算装置をさらに備え、
    流動解析装置は、半凝固状態の材料の裏面を構成する複数の裏面側有限要素のそれぞれについて、前記所定のタイミングにおいて材料の充填又は保圧に起因して当該裏面側有限要素が成形型に対して垂直方向に加える力を算出し、
    演算装置は、半凝固状態の材料の裏面を構成する複数の裏面側有限要素のそれぞれについて、前記所定のタイミングにおける材料の充填又は保圧に起因して当該裏面側有限要素が成形型に対して垂直方向に加える力と、前記所定のタイミングにおいて半凝固状態の材料が変形しようとすることに起因して当該裏面側有限要素が成形型に対して垂直方向に加える力の和を算出することを特徴とする請求項2のシュミレーションコンピュータ。
  4. 裏面が内側になる曲率部を有する射出成形品を成形するキャビティを持つ成形型に溶融状態の材料を充填する工程と、
    請求項3のシュミレーションコンピュータの演算装置によって得られた各値を上回る加圧流体を前記所定のタイミングと同時又はそれより前に半凝固状態の材料の裏面側に注入する工程と
    を備える射出成形方法。
  5. 前記剛性解析装置は、半凝固状態の材料の曲率部の裏面を構成する少なくとも1つの裏面側有限要素のみについて、前記所定のタイミングにおいて半凝固状態の材料が変形しようとすることに起因して当該裏面側有限要素が成形型に加える力を算出することを特徴とする請求項1のシュミレーションコンピュータ。
  6. 前記変形解析装置は、複数のタイミングのそれぞれについて、半凝固状態の材料の変形解析を実行し、
    前記剛性解析装置は、複数のタイミングのそれぞれについて、半凝固状態の材料が変形しようとすることに起因して前記裏面が成形型に加える力を算出することを特徴とする請求項1のシュミレーションコンピュータ。
  7. 裏面が内側になる曲率部を有する射出成形品を成形するキャビティを持つ成形型に溶融状態の材料を充填することによって前記射出成形品を射出成形する際に、キャビティ内で半凝固状態の材料が変形しようとすることに起因して前記裏面が成形型に加える力をコンピュータによって算出するシュミレーション方法であり、
    流動解析のための基本データを記憶している基本データファイルを作成する工程と、
    基本データファイルに記憶されている基本データを利用して、キャビティ内での材料の流動解析を実行する流動解析工程と、
    流動解析工程で得られた流動解析結果を記憶している流動解析結果データファイルを作成する工程と、
    流動解析結果データファイルに記憶されている流動解析結果を利用して、少なくとも所定のタイミングにおける半凝固状態の材料の変形解析を実行する変形解析工程と、
    変形解析工程で得られた変形解析結果を記憶している変形解析結果データファイルを作成する工程と、
    材料の剛性データを記憶している剛性データファイルを作成する工程と、
    変形解析結果データファイルに記憶されている変形解析結果と、剛性データファイルに記憶されている剛性データと、キャビティ内に半凝固状態の材料を拘束する条件とを利用して、前記所定のタイミングにおいて半凝固状態の材料が変形しようとすることに起因して前記裏面が成形型に加える力を算出する剛性解析工程と
    をコンピュータが実行する射出成形シュミレーション方法。
  8. 裏面が内側になる曲率部を有する射出成形品を成形するキャビティを持つ成形型に溶融状態の材料を充填することによって前記射出成形品を射出成形する際に、キャビティ内で半凝固状態の材料が変形しようとすることに起因して前記裏面が成形型に加える力を算出するためのコンピュータプログラムであり、
    流動解析のための基本データを記憶している基本データファイルを作成する工程と、
    基本データファイルに記憶されている基本データを利用して、キャビティ内での材料の流動解析を実行する流動解析工程と、
    流動解析工程で得られた流動解析結果を記憶している流動解析結果データファイルを作成する工程と、
    流動解析結果データファイルに記憶されている流動解析結果を利用して、少なくとも所定のタイミングにおける半凝固状態の材料の変形解析を実行する変形解析工程と、
    変形解析工程で得られた変形解析結果を記憶している変形解析結果データファイルを作成する工程と、
    材料の剛性データを記憶している剛性データファイルを作成する工程と、
    変形解析結果データファイルに記憶されている変形解析結果と、剛性データファイルに記憶されている剛性データと、キャビティ内に半凝固状態の材料を拘束する条件とを利用して、前記所定のタイミングにおいて半凝固状態の材料が変形しようとすることに起因して前記裏面が成形型に加える力を算出する剛性解析工程と
    をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
  9. 裏面が内側になる曲率部を有する射出成形品の裏面側に加圧流体を注入することによって、射出成形品の裏面を成形型の成形面から離反させた状態で成形する射出成形方法であり、
    シュミレーションコンピュータによって前記加圧流体を注入しない場合のシュミレーションを実施し、少なくとも所定のタイミングにおいて前記曲率部の裏面とそれに向かいあう成形面との間に作用する最大圧力を算出する工程と、
    前記所定のタイミングと同時又はそれより前に、前記曲率部の裏面とそれに向かいあう成形面との間に、前記最大圧力以上の加圧流体を注入する工程
    を備える射出成形方法。
  10. 前記シュミレーションコンピュータが、板状の射出成形品の曲率部をはさむ両サイドにおいて射出成形品が成形型で拘束されている状態で射出成形品が面に沿って収縮することに起因して前記曲率部の裏面とそれに向かいあう成形面との間で生じる圧力と、材料の充填又は保圧に起因して前記曲率部の裏面とそれに向かいあう成形面との間で生じる圧力を加味して、前記曲率部の裏面とそれに向かいあう成形面との間に作用する最大圧力を算出することを特徴とする請求項9の射出成形方法。
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