JP4452672B2 - 射出成形中に樹脂がキャビティ面から剥離しやすい箇所を予測する方法とそれを利用した射出成形型と射出成形方法 - Google Patents
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Description
樹脂は収縮しながら固化する。キャビティに充填した溶融樹脂がキャビティ内で収縮することに対して対策を施さないと、樹脂が収縮する結果、樹脂がキャビティ面から剥離してしまう。キャビティ面から剥離した状態で樹脂が固化すると、射出成形品の形状はキャビティ形状からずれてしまい、正確な形状に成形することができない。そこで、キャビティに溶融樹脂を充填し終えた後も、キャビティに充填する溶融樹脂に圧力を加え続ける技術が開発されている。通常は保圧工程といわれる。保圧工程を実施すると、キャビティ内で樹脂が収縮することを補償するように樹脂がキャビティに追加充填される。
しかしながら、保圧工程では樹脂が冷却して流動しづらくなっており、樹脂が収縮することを補償するように追加充填するためには、キャビティに追加充填する樹脂に強大な圧力を加える必要がある。このために、射出成形型は強大な圧力に耐えられるように製作する必要があり、射出成形型がひどく大型化しやすい。
特許文献1の技術では、キャビティに充填した溶融樹脂がキャビティ内で収縮することによって、樹脂が意匠面を成形するキャビティ面から剥離する前に、非意匠面と非意匠面を成形するキャビティ面の間に加圧流体を注入して樹脂の非意匠面とキャビティ面を剥離させる。射出成形品の非意匠面とキャビティ面の間に加圧流体を注入すると、射出成形品の非意匠面がキャビティ面から剥離し、樹脂の収縮によって生じる「ひけ」を非意匠面側に集中させることができる。射出成形品の意匠面については、意匠面を成形するキャビティ面に密着した状態を維持することができる。特許文献1の技術によると、保圧工程でキャビティに追加充填する樹脂に掛ける圧力を顕著に低減することができる。射出成形型が大型化するのを抑制することができる。なお、特許文献1の技術は、本出願の出願時点ではまだ公開されていないことに留意されたい。
これを避けるためには、非意匠面の様々な箇所に向けて加圧流体を注入すればよいが、そうすると、射出成形型に加圧流体注入用流路を何本も形成しなければならず、射出成形型が複雑なものとなってしまう。収縮する樹脂がキャビティ面から剥離しやすい箇所を予測する技術が必要とされている。
この数値計算プログラムを利用することによって、射出成形中に生じる樹脂の挙動をシミュレーションすることができ、良好に射出成形するための射出成形条件の算出過程等が大幅に簡単化された。
本発明では、キャビティに充填した樹脂がキャビティ面から剥離しやすいか否かを示す評価値を算出する方法を提供する。本発明では、その評価値を利用して樹脂がキャビティ面から剥離しやすい箇所を予測する方法を提供する。本発明では、樹脂が意匠面を成形するキャビティ面から剥離しやすい箇所の裏面に向けて選択的に加圧流体を注入することによって、樹脂が意匠面を成形するキャビティ面から剥離しない状態で射出成形する方法を提供する。あるいは、そのために用いる射出成形型を提供する。
この方法は、射出成形型のキャビティに充填した樹脂が射出成形中にキャビティ面から剥離しやすい箇所を予測するための方法である。この方法は、従来から既知の数値計算工程を備えている。この数値計算工程では、キャビティを複数個に分割した微小空間毎に、キャビティに溶融樹脂を充填し始めてから、キャビティに追加充填する溶融樹脂に圧力を加え続けながらキャビティに充填した溶融樹脂が冷却して成形されるまでの間に、各微小空間内に存在する樹脂に生じる流動速度と圧力と温度の経時的変化をコンピュータを利用して数値計算する。
この方法は、その数値計算結果に基づいて、キャビティ面に接する微小空間毎に、溶融樹脂の流動が停止した時の圧力と溶融樹脂の流動が停止した時から樹脂が固化した時までの圧力の積分値を算出する工程と、前記工程で算出された流動停止時圧力と圧力積分値の両者から剥離しやすさの程度を示す評価値Mを算出する工程と、キャビティ面に接する微小空間毎に算出された評価値Mを剥離しやすさの限界を示す基準値と比較し、その基準値を超えて剥離しやすい評価値Mを示している微小空間を特定する工程を備えている。
本発明の評価方法を用いれば、樹脂がキャビティ面から剥離いやすい箇所を容易に特定することができる。すなわち、「ひけ」が発生し易い箇所を、容易に特定することができる。本発明の評価方法によれば、射出成形型を実際に製造する前に、「ひけ」が発生するか否かを予測することができ、「ひけ」は発生する場合には、「ひけ」の発生を防止する対策を事前に講じることができる。あるいは、特許文献1の技術に対しては、加圧流体を注入することが有効な範囲が事前に判明する。良好な射出成形型を製作するまでの過程が大幅に簡単化される。
M=A*P+B*AP+C
上記において、A,B,Cは、予め実験結果によって決定されている定数であり、A>0であり、B>0であり、Pは、流動停止時圧力であり、APは、圧力積分値である。
本発明によると、特許文献1に記載されている射出成形技術に適した射出成形型を簡単に製作することができる。
本発明によって得られる射出成形型は、射出成形品の意匠面を成形するキャビティ面と、射出成形品の非意匠面を成形するキャビティ面と、その非意匠面を成形するキャビティ面に開口している加圧流体注入用流路を備えている。本発明によって得られる射出成形型は、その開口の位置が下記のプロセスによって決定されている。
そのプロセスは、射出成形型のキャビティを複数個に分割した微小空間毎に、キャビティに溶融樹脂を充填し始めてから、キャビティに追加充填する溶融樹脂に圧力を加え続けながらキャビティに充填した溶融樹脂が冷却して成形されるまでの間に、各微小空間内に存在する樹脂に生じる流動速度と圧力と温度の経時的変化をコンピュータを利用して数値計算する工程と、意匠面を成形するキャビティ面に接する微小空間毎に、溶融樹脂の流動が停止した時の圧力と、溶融樹脂の流動が停止した時から樹脂が固化した時までの圧力の積分値を算出する工程と、前記工程で算出された流動停止時圧力と圧力積分値の両者から剥離しやすさの程度を示す評価値Mを算出する工程と、意匠面を成形するキャビティ面に接する微小空間毎に算出された評価値Mを剥離しやすさの限界を示す基準値と比較し、その基準値を超えて剥離しやすい評価値Mを示している微小空間微小空間を特定する工程と、非意匠面を成形するキャビティ面のうち、特定された微小空間が存在する範囲内に加圧流体注入用流路の開口を設定する工程を備えている。評価値Mは、前述の式:M=A*P+B*AP+Cによって算出する。
こうして得られる射出成形型は、意匠面を成形するキャビティ面から樹脂が剥離しやすい範囲に加圧流体注入用流路が開口しており、特許文献1に記載されている射出成形方法に適している。意匠面を成形するキャビティ面から樹脂が剥離するよりも前に、その裏面側をキャビティ面から剥離することができ、成形品の意匠面の形状が意図したものからズレることを効果的に抑制する。
本発明によると、特許文献1に記載されている射出成形方法を確実に実施することができる。本発明の方法は、意匠面と非意匠面を有する成形品を射出成形する方法であり、実際に射出成形するに先立って、下記の分析段階を実施する。分析段階では、射出成形型のキャビティを複数個に分割した微小空間毎に、キャビティに溶融樹脂を充填し始めてから、キャビティに追加充填する溶融樹脂に圧力を加え続けながらキャビティに充填した溶融樹脂が冷却して成形されるまでの間に、各微小空間内に存在する樹脂に生じる流動速度と圧力と温度の経時的変化をコンピュータを利用して数値計算する工程と、意匠面を成形するキャビティ面に接する微小空間毎に、溶融樹脂の流動が停止した時の圧力と、溶融樹脂の流動が停止した時から樹脂が固化した時までの圧力の積分値を算出する工程と、その工程で算出された流動停止時圧力と圧力積分値の両者から剥離しやすさの程度を示す評価値Mを算出する工程と、意匠面を成形するキャビティ面に接する微小空間毎に算出された評価値Mを剥離しやすさの限界を示す基準値と比較し、その基準値を超えて剥離しやすい評価値Mを示している微小空間を特定する工程を実施する。評価値Mは、前述の式:M=A*P+B*AP+Cによって算出する。
実際の射出成形時には、溶融樹脂の充填工程に続けて、特定した微小空間が存在する範囲に向いあう非意匠面に向けて加圧流体を注入する工程を実施する。
本発明の射出成形方法によると、意匠面を成形するキャビティ面から樹脂が剥離するよりも前に、その裏面側をキャビティ面から剥離することができ、成形品の意匠面の形状が意図したものからズレることを効果的に抑制することができる。
(第1形態) 射出成形型のキャビティに充填した樹脂が射出成形中にキャビティ面から剥離しやすいか剥離しづらいかを示すレベルを面張りレベルという。面張りレベルが高ければ、樹脂がキャビティ面から剥離しづらい。計算された面張りレベルが低い箇所が意匠面で検出された場合には、意匠面では低い面張りレベルが計算されなくなるまで、キャビティの形状を変更する。
(第2形態) 面張りレベルが低い箇所が計算された場合には、保圧工程における圧力を高める。
図1は、本実施例で射出成形された射出成形品10の斜視図を示す。図2は、射出成形品10を成形する射出成形型2の断面図と、加圧エアー注入装置50のブロック構成図を示す。図3は、本実施例の射出成形方法の工程図を示す。図4は、射出成形過程をシミュレーションする数値計算(CAE)プログラムが実行する処理のフローチャートを示す。図5には、成形型2のキャビティに樹脂を充填し始めてから、キャビティに追加充填する溶融樹脂に圧力を加え続けながらキャビティに充填した溶融樹脂が冷却して成形されるまでの間に、樹脂に生じると圧力と温度の経時的変化の一例を示す。これは、CAEプログラムで計算された結果を示している。図6、図7には、図5とは相違する微小空間(メッシュ)における樹脂の圧力と時間の経時的変化を示す。
射出成形型2は、第1型20と第2型30を有している。図2では、第1型20と第2型30が組み合わされることによって、成形型2が閉じた状態を示している。成形型2が閉じた状態では、第1型20の第1キャビティ面21と、第2型30の第2キャビティ面31によって、キャビティ2aが形成される。成形型2を開くときには、第1型20と第2型30を分離する。キャビティ2aの形状は、射出成形品10(図1参照)の形状に対応している。すなわち、第1型20の第1キャビティ面21は、射出成形品10の意匠面11を成形する。第2型30の第2キャビティ面31は、射出成形品10の非意匠面12と端面を成形する。
成形型2の第1型20と第2型30は、それぞれ型の支持部材(図示省略)に取り付けられている。第2型30の支持部材は、射出成形装置の制御装置により、第1型20に対して接近する方向あるいは離間する方向にスライド移動可能に構成されている。これにより、成形型2が開閉される。
第2型30には、流路32と流路33が形成されている。流路32は、その一端が第2キャビティ面31に開口するとともに、他端が外部に開口している。流路33も流路32と同様に、その一端が第2キャビティ面31に開口するとともに、他端が外部に開口している。流路32の第2キャビティ面31における開口部には、ベント部材32aが挿入されている。流路33の第2キャビティ面31における開口部にも、ベント部材33aが挿入されている。ベント部材32a、33aは、キャビティ2aに溶融樹脂が充填された際に、溶融樹脂が流路32,33に入り込まないように構成されている。なお、流路32,33の配設位置は、予めCAEシステムを利用して決定している。その詳細については後述する。
なお、流体配管54の一端54aには、高圧な工場エアーが供給されている。
加圧エアー注入装置50のバルブ53が開かれると、フィルタ51により異物が除去され、レギュレータ52により圧力が所定値(例えば、0.5MPa)に調圧された加圧エアーが流路32,33に供給される。
射出成形品10を成形するときには、まず成形型2を閉じる工程を実行する。この型閉じ工程を開始する時刻を時刻s0とする。射出成形装置の制御装置は、第2型30(併せて、図2参照)が取り付けられている支持部材を第1型20方向に移動し、第2型30と第1型20を組み合わせ、成形型2を閉じる。これによって、キャビティ2aが形成される。
成形型2のキャビティ2aの形状はCADを用いて設計されており、形状を記述するデータが既知である。そのデータを利用して、実際に成形型2を製造する前に、CAEシステムを用いて、キャビティ2aに充填する樹脂の挙動をシミュレーションすることができる。成形型2のゲート22から注入される溶融樹脂は、キャビティ2a内を流動しながらキャビティ2aを充填してゆく。この際、キャビティ2a内の場所によって、溶融樹脂の流動と固化の状況が相違する。そこで、CAEシステムでは、キャビティ2a内の空間を格子状に多数の微小空間(メッシュ)に分割する。メッシュ内では、樹脂の流動速度と圧力と温度が一定であるとできる程度に細かなメッシュに分割する。CAEプログラムを利用すると、メッシュ毎に、キャビティに溶融樹脂を充填し始めてから、保圧工程と冷却工程を経て、溶融樹脂が固化して射出成形品に成形されるまでの間に、各メッシュ内に存在する樹脂に生じる流動速度と圧力と温度の計時的変化を数値計算することができる。CAEシステムによって実行される数値計算の手法は、既知の手法であり、詳細な説明は省略する。
本実施例のCAEシステムに、成形型2のキャビティ2aの形状が入力されると、CAEシステムは、図4のフローチャートに示す処理を実行する。このプログラムは、CAEシステムの記憶手段に記憶されており、制御手段により適宜読み出されて実行される。
ステップA10で、CAEシステムに、メッシュデータや、成形条件(溶融樹脂の射出速度、成形型2や樹脂の温度等)や、材料データ(樹脂固有のpvt特性、樹脂固有の粘度特性等)が入力される。メッシュデータには、キャビティ2aを細かな多数の微小空間(メッシュ)に分割するためのデータが入力される。ステップA10で必要なデータが入力されると、CAEプログラムは、ステップA11で、メッシュ毎に、各メッシュ内に存在する樹脂に生じる流動速度と圧力と温度を数値計算する。CAEプログラムは、キャビティに溶融樹脂を充填し始めてから、保圧工程と冷却工程を経て、溶融樹脂が固化して射出成形品に成形されるまでの間、各微小空間内に存在する樹脂に生じる流動速度と圧力と温度を数値計算する。これによって、各微小空間毎に、流動速度と圧力と温度の経時的変化を示すデータが計算される。
当該メッシュの樹脂の圧力P(Pa)は、時刻s3で充填工程が終了し、保圧・冷却工程に進行して少し時間が経過した時にピーク値を向かえる。そして、工程が進行するにつれて樹脂は収縮しながら固化し、圧力P(Pa)はピーク値から低下し続ける。そして、時刻sYで樹脂の温度がT1(℃)となって樹脂の流動が停止する。樹脂の流動が停止する時の樹脂の圧力はp1(Pa)となっている。そして、時刻s5で樹脂の温度がT2(℃)となって樹脂が固化する。樹脂が固化する時の樹脂の圧力はp2(Pa)となっている。
ステップA12で、CAEシステムの制御手段は、メッシュの順番を示す変数xに1を代入してステップA14に進む。なお、変数xに対応する樹脂の位置は、CAEシステムの記憶手段に記憶されている。
ステップA14では、ステップA12で指定されたメッシュの面張りレベルM(x)を式1:M(x)=A*P+B*AP+Cに従って算出する。式1において、A,B,Cは、予め実験結果によって決定されている定数であり、A>0であり、B>0である。
Pは、ステップA12で指定されたメッシュに存在する樹脂が流動を停止した時の圧力であり、図5に例示した場合には、p1(Pa)である。
APは、ステップA12で指定されたメッシュに存在する溶融樹脂の流動が停止した時から樹脂が固化した時までの圧力の積分値である。図5に例示した場合には、時刻sYで樹脂の流動が停止しており、時刻s5で樹脂が固化している。従って図5のハッチに示す面積が、溶融樹脂の流動が停止した時から樹脂が固化した時までの圧力の積分値である。
以上のことから、樹脂の流動が停止した時の圧力と、樹脂の流動停止時から固化時までの圧力の積分値が、面張りレベルに大きく影響することが確認された。
そこで、M(x)を目的変数とする回帰式を、上記した式1のように、樹脂の流動停止時の圧力と、樹脂の流動停止時から固化時までの圧力の積分値を説明変数として表す。そして、定数A,B,Cについては、実験データに基づいて予め決定しておく。
ステップA18では、制御手段は、算出したM(x)の値を変数xの位置に対応させて記憶手段(特に図示していない。)に記憶する。そして、ステップA20に進む。
ステップA20で、制御手段は、変数xに1を加算しステップA22に進む。
ステップA22で、制御手段は、ステップA20で1を加算したxがメッシュの総数nを超えているか否かを判別する。メッシュの総数nを超えている場合(ステップA22のYes)には、終了する。メッシュの総数をnを超えていない場合(ステップA22のNo)には、ステップA14に戻る。
本実施例では、これらの箇所の裏面12に、空気注入工程(併せて、図3参照)で加圧エアーが注入されるように、流路32,33(併せて、図2参照)を配設する。これにより面張りレベルが小さく、意匠面11に「ひけ」が発生し易い箇所の樹脂の裏面12に効果的に加圧エアーを注入することができる。これにより、当該箇所の樹脂を第2キャビティ面31から剥離し、樹脂の収縮による「ひけ」を裏面側に集中させることができる。それとともに、当該箇所の意匠面(表面)11を第1キャビティ面21に密着した状態を維持することができる。意匠面11が第1キャビティ面21に密着した状態を維持すると、当該箇所の意匠面11を意図した形状に仕上げることができる。したがって、射出成形品10を容易に意図した形状に仕上げることができる。
本実施例では、樹脂の面張りレベルM(x)を評価して、M(x)が基準値に達していないメッシュを検出し、当該メッシュが意匠面11側にあれば、意匠面11に「ひけ」が発生することを防止している。具体的には、本実施例では、「ひけ」が発生し易い箇所の裏面12に加圧エアーを注入する流路32,33を第2型30に配設して対策している。しかしながら、別の対策を講じるようにしてもよい。例えば、意匠面11に「ひけ」が発生し易い箇所に、より樹脂が供給され易いように、キャビティ2aの形状を変更して成形型を製造するようにしてもよい。また、保圧工程を長く設定するようにしてもよい。あるいは、保圧工程で掛ける圧力を増大することも可能である。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
2a キャビティ
10 射出成形品
11 意匠面
12 非意匠面
20 第1型
21 第1キャビティ面
22 ゲート
30 第2型
31 第2キャビティ面
32,33 流路
32a,33a ベント部材
50 加圧エアー注入装置
51 フィルタ
52 レギュレータ
53 バルブ
54 流体配管
54a 流体配管の一端
Claims (3)
- 射出成形型のキャビティに充填した樹脂が射出成形中にキャビティ面から剥離しやすい箇所を予測する方法であり、
前記キャビティを複数個に分割した微小空間毎に、前記キャビティに溶融樹脂を充填し始めてから、前記キャビティに追加充填する溶融樹脂に圧力を加え続けながら前記キャビティに充填した溶融樹脂が冷却して成形されるまでの間に、各微小空間内に存在する樹脂に生じる流動速度と圧力と温度の経時的変化を、コンピュータを利用して数値計算する工程と、
キャビティ面に接する微小空間毎に、溶融樹脂の流動が停止した時の圧力と、溶融樹脂の流動が停止した時から樹脂が固化した時までの圧力の積分値を算出する工程と、
前記工程で算出された流動停止時圧力と圧力積分値の両者から、剥離しやすさの程度を示す評価値Mを次式:
M=A*P+B*AP+C;ここで、
A,B,Cは、予め実験結果によって決定されている定数であり、
A>0であり、
B>0であり、
Pは、流動停止時圧力であり、
APは、圧力積分値である、
に従って算出する工程と、
前記キャビティ面に接する微小空間毎に算出された評価値Mを、剥離しやすさの限界を示す基準値と比較し、その基準値を超えて剥離しやすい評価値Mを示している微小空間を特定する工程、
を備えていることを特徴とする、射出成形中に樹脂がキャビティ面から剥離しやすい箇所を予測する方法。 - 射出成形品の意匠面を成形するキャビティ面と、射出成形品の非意匠面を成形するキャビティ面と、その非意匠面を成形するキャビティ面に開口している加圧流体注入用流路を備えている射出成形型であり、
その開口の位置が下記のプロセス、すなわち、
前記射出成形型のキャビティを複数個に分割した微小空間毎に、前記キャビティに溶融樹脂を充填し始めてから、前記キャビティに追加充填する溶融樹脂に圧力を加え続けながら前記キャビティに充填した溶融樹脂が冷却して成形されるまでの間に、各微小空間内に存在する樹脂に生じる流動速度と圧力と温度の経時的変化を、コンピュータを利用して数値計算する工程と、
意匠面を成形するキャビティ面に接する微小空間毎に、溶融樹脂の流動が停止した時の圧力と、溶融樹脂の流動が停止した時から樹脂が固化した時までの圧力の積分値を算出する工程と、
前記工程で算出された流動停止時圧力と圧力積分値の両者から、剥離しやすさの程度を示す評価値Mを次式:
M=A*P+B*AP+C;ここで、
A,B,Cは、予め実験結果によって決定されている定数であり、
A>0であり、
B>0であり、
Pは、流動停止時圧力であり、
APは、圧力積分値である、
に従って算出する工程と、
意匠面を成形するキャビティ面に接する微小空間毎に算出された評価値Mを、剥離しやすさの限界を示す基準値と比較し、その基準値を超えて剥離しやすい評価値Mを示している微小空間を特定する工程、
非意匠面を成形するキャビティ面のうち、特定された微小空間が存在する範囲内に、加圧流体注入用流路の開口を設定する工程を経て決定されていることを特徴とする射出成形型。 - 意匠面と非意匠面を有する射出成形品を射出成形する方法であり、
実際に射出成形するに先立って、下記の分析、すなわち、
射出成形型のキャビティを複数個に分割した微小空間毎に、前記キャビティに溶融樹脂を充填し始めてから、前記キャビティに追加充填する溶融樹脂に圧力を加え続けながら前記キャビティに充填した溶融樹脂が冷却して成形されるまでの間に、各微小空間内に存在する樹脂に生じる流動速度と圧力と温度の経時的変化を、コンピュータを利用して数値計算する工程と、
意匠面を成形するキャビティ面に接する微小空間毎に、溶融樹脂の流動が停止した時の圧力と、溶融樹脂の流動が停止した時から樹脂が固化した時までの圧力の積分値を算出する工程と、
前記工程で算出された流動停止時圧力と圧力積分値の両者から、剥離しやすさの程度を示す評価値Mを次式:
M=A*P+B*AP+C;ここで、
A,B,Cは、予め実験結果によって決定されている定数であり、
A>0であり、
B>0であり、
Pは、流動停止時圧力であり、
APは、圧力積分値である、
に従って算出する工程と、
意匠面を成形するキャビティ面に接する微小空間毎に算出された評価値Mを剥離しやすさの限界を示す基準値と比較し、その基準値を超えて剥離しやすい評価値Mを示している微小空間を特定する工程を実施しておき、
実際の射出成形時には、溶融樹脂の充填工程に続けて、特定された微小空間が存在する範囲に向いあう非意匠面に向けて加圧流体を注入する工程を実施することを特徴とする射出成形方法。
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