JP2008030357A - 液滴吐出ヘッド - Google Patents

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Abstract

【課題】低コストで高精度かつ性能の安定した液滴吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】ダクト56を通じて送り込まれた外気は例えばスポンジなど溶媒57に耐性のある多孔質素材からなる加湿材52を通過する際に、加湿材52に含まれている溶媒57を含有し加湿空気51となり、送風口58からノズル16(流路部材12)に向けて送られる。溶媒を豊富に含有した加湿空気51を送ることによりノズル16近傍の空気中における溶媒57の濃度を高く保つことができるため、ノズル16近傍の流路部材12内インクの溶媒蒸発を防ぐことができる。加湿空気51は、インクミストと共に排気口60から吸引回収する。
【選択図】図10

Description

本発明は液滴吐出ヘッドに関し、特に走査幅方向に複数のノズルを配置した液滴吐出ヘッドに関する。
現在市販されている水性インクジェットプリンターは、概ね粘度5cps前後、高々10cpsオーダの染料インクや顔料インクを採用している。媒体に着弾した際のインク滲み防止や、光学的な色濃度向上、含水量低減による媒体の膨潤抑制や短時間乾燥、あるいは、そうした高品質インクをトータル設計するに当たり自由度が大きくとれる等の理由から、インク粘度を増加することによってプリント性能は向上できることが知られている。
反面、高粘度インクを吐出するには、高出力な圧力発生機構が必要であり、コストやヘッドサイズ増加等の弊害を招く。従来からイジェクターにヒーターを別途設け、吐出時のインク粘度を強制的に下げる技術は公知である(例えば、特許文献1参照)。インクを加熱する上記の方法はインク劣化や流路のダメージを早める根本課題があり、また使用できるインクも熱による劣化のないものに制限される。
このほか、インク吐出する際の逆方向へのインク流を梁状の弁で抑制し、より高粘度なインクを吐出する技術(例えば、特許文献2参照)が開示されている。大変形が得られる座屈曲がりを利用し、圧力発生機構自体をパワーアップする方法として、発熱体層との熱膨張差で変形するダイヤフラム状アクチュエータを使用した技術(例えば、特許文献3参照)、同様の構成で片持ち梁状のアクチュエータを用いた技術(例えば、特許文献4参照)が開示されている。しかしながら、上記の従来技術でも、粘度10cpsを大きく上回る50〜100cpsのような高粘度インクは、吐出することが困難である。
特に、上記のような高粘度インクは溶媒である水分の蒸発や乾燥に伴って粘度が急激に増加し、インク特性が変化するため、安定的に吐出することが難しい。
またインク滴の後方に長い尾引きと、それに伴うサテライト滴が生じるため、印刷媒体である用紙へミストが着弾して印字品質の低下や、ノズル周囲へのインクミスト付着による吐出方向のバラツキ等が生じやすい課題がある。
これに対して、加湿した(溶媒を高濃度に含む)空気をノズル付近に供給し、乾燥を防ぐ技術が知られている(例えば、特許文献5参照)。
上記の記録ヘッドは図11(A)に示すように、インク滴103を吐出するノズル101の乾燥を防ぐためブロアー106から圧送した空気を加湿器108にて加湿し、エアダクト104からインク滴103と一緒に吐出させる構造となっている。
本願発明者が上記の課題に対する検討を進めた結果、上記のヘッドでインク乾燥やミストの悪影響を防ぐには前述の従来技術を応用した構造(図11(B))では、印刷媒体である用紙Pの移動で生じる空気流に対し、ノズルの極近傍に効率よく湿気を供給することができない、あるいは大量の湿気供給が必要になる、さらにインクミストを含む多量の湿気が印刷媒体(用紙P)にも噴射されてしまう、などの課題を解決できないことが解っている。
すなわち、図11(C)に示すように夫々の梁の隙間からインク溶媒を高濃度に含む気体を供給し、吐出側でインクミストを含めて前記気体を回収する方法が最も有効であることが分かった。これにより本発明は従来法に比べ、安定的に高粘度インクを吐出することができる。
特開2003-220702号公報 特開平9-327918号公報 特開2003-118114号公報 特開2004-34710号公報 特開2003−165230号公報
本発明は上記事実を考慮し、低コストで高精度かつ性能の安定した液滴吐出ヘッドを提供することを目的とする。
請求項1に記載の液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出するノズルと、前記ノズルを含む液流路部材と、前記液流路部材と接合もしくは液流路部材を含む複数の梁部材と、を備え、前記梁部材を液滴吐出方向に凹から凸となるように弾性変形させることで座屈反転変形させ、前記ノズル近傍の液に吐出方向の慣性を与え、前記ノズルより液滴として吐出させる駆動手段を有し、前記ノズルに対して前記液滴の溶媒を含む空気を供給する空気供給手段と、前記空気供給手段より供給された前記溶媒を含む空気を回収する回収手段と、を備えたことを特徴とする。
上記構成の発明では、インクの溶媒を含んだ空気を供給する機構と、前記空気を回収する機構とをノズルの近傍に備えたことにより、ノズル内のインクの乾燥を防止し吐出性能劣化やインクミストの悪影響を防ぐことができる。
請求項2に記載の液滴吐出ヘッドは、前記空気供給手段は前記梁部材の隙間から液滴吐出方向に前記空気を供給することを特徴とする。
上記構成の発明では、梁部材の隙間から溶媒を含んだ空気を供給することで、ノズル位置に近い場所から溶媒を含んだ空気を供給できる。
請求項3に記載の液滴吐出ヘッドは、前記回収手段は前記梁部材と印刷媒体の間で前記溶媒を含む空気を回収することを特徴とする。
上記構成の発明では、梁部材と用紙の間から溶媒を含む空気を回収することでノズル位置に近い場所から溶媒を含んだ空気とインクミストを回収できる。
請求項4に記載の液滴吐出ヘッドは、前記空気供給手段は、前記空気供給手段に外気を圧送する空気ポンプと前記外気が内部を通過する際に前記外気に前記溶媒を供給する溶媒供給体と、前記溶媒供給体に溶媒を供給する溶媒供給路からなることを特徴とする。
上記構成の発明では、簡便な構造で空気に高濃度の溶媒を含ませることができ、この空気を効率よくノズル近傍に供給することができる。
請求項5に記載の液滴吐出ヘッドは、前記回収手段は前記ノズルよりも印刷媒体の搬送方向下流側に設けられたことを特徴とする。
上記構成の発明では、印刷媒体の搬送に伴って生じる空気流に逆らわず、溶媒を含んだ空気を回収するので効率よくインクミストも含めて回収することができる。
請求項6に記載の液滴吐出ヘッドは、前記回収手段は前記梁部材の長さ方向両端部を支持する支持部に設けられたことを特徴とする。
上記構成の発明では、梁部材の支持部に回収手段を設けたことで溶媒を含んだ空気やインクミストに加えて印刷媒体である用紙から出る紙粉なども回収できる。
本発明は上記構成としたので、低コストで高精度かつ性能の安定した液滴吐出ヘッドとすることができた。
<装置全体>
図1には、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録ヘッドが示されている。
図1に示すようにインクジェット記録ヘッド10は、内部にインク流路13を備え長さ方向略中央にノズル16を備えた流路部材12と、流路部材12を支持する梁部材14とが接合され、両端を保持部材18が支持する構造となっている。
梁部材14にはピエゾ素子30が接合され、さらにピエゾ素子30には信号電極32が形成され梁部材14、ピエゾ素子30、信号電極32でアクチュエータ36を構成している。梁部材14はピエゾ素子30の共通電極を兼ねており、梁部材14と信号電極32とでピエゾ素子30を挟む構造となっている。信号電極32の一方の端には電極パッド33が設けられ、配線34にて図示しないスイッチングICと接続されている。このスイッチングICからの信号によりピエゾ素子30は駆動され、梁部材14を撓ませる/撓ませないの制御が行われる。
流路部材12は、インク吐出方向(図中上)および逆方向に撓み可能であり、インクプール24から供給されインク流路13を通ってノズル16まで達したインクを慣性によって吐出方向にインク滴として吐出する。
ここで用いられるインクは前述のように、媒体に着弾した際のインク滲み防止や、光学的な色濃度向上、含水量低減による媒体の膨潤抑制や短時間乾燥、あるいは、そうした高品質インクをトータル設計するに当たり自由度が大きくとれる等の理由から、インク粘度の極めて高い、具体的には粘度10cpsを大きく上回るような(例えば50〜100cps)高粘度インクである。
保持部材18は回転エンコーダ20に設けられたアーム22に固定され、回転エンコーダ20の回転中心からアーム22の長さ分だけオフセットされた位置にて両側から押圧され、あるいは曲げ方向に力が加えられインク吐出方向あるいは逆方向に梁部材14と接合した流路部材12を撓ませる。
保持部材18は図1(b)のように、保持部材18に複数の流路部材12が設けられた梯子状の構造であってもよい。
<動作>
以下に実際の動作について説明する。
図2、図3には、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの動作が示されている。
図2(b)のように流路部材12が予めインク吐出方向(図中上)に撓みを持たせた状態であり、吐出を指示する信号がスイッチングICより送られない場合はアクチュエータ36が駆動されず、図2(c)のように回転エンコーダ20を矢印方向に回動させると、図2(c)、図2(d)のように流路部材12はインク吐出方向に撓むのみであって、撓み量が最大となる図2(d)に至るまで流路部材12は常にインク吐出方向に凸であり続ける。
すなわち図2(b)から図2(d)まで変位するまでの間に流路部材12内部のインク1に吐出方向への十分な加速度が加わらないため、インク滴としてノズル16から吐出されることはない(拡大図(e))。
さらに図2(d)で撓み量が最大となり回転エンコーダ20が停止したのち、逆回転して流路部材12を平坦にする(図2(a))ことで流路部材12は初期位置図2(b)へ復帰する。
一方、図3(b)に示すように、吐出を指示する信号がスイッチングICより送られ、アクチュエータ36が駆動されることによって流路部材12がインク吐出方向に対して凹(図中下)に撓みを持たせるようにされた状態では、図3(c)のように回転エンコーダ20を正転(図中矢印方向)させると流路部材12は回転エンコーダ20に近い方、すなわち両端から次第に吐出方向(図中上)に凸へと撓み方向が変化する。
この変化が両端から中央に近付くと、流路部材12(あるいは梁部材14)はある点で急峻な座屈反転を起こし、インク吐出方向(図中上)へと急激に変形する(図3(d)に中央部の変形を強調して記載)。
流路部材12の長さ方向略中央にはノズル16が設けられているため、ノズル16まで達しているインク1はこの座屈反転による流路部材12の吐出方向への変形に伴い、ノズル16からインク滴2として吐出される(拡大図(e))。
さらに図3(d)で撓み量が最大となり回転エンコーダ20が停止したのち、逆回転して流路部材12を平坦にする(図3(a))ことで流路部材12は初期位置へ復帰し、インク吐出方向において上に撓みを持った状態(図2(b))に戻る。
この座屈反転による変形の速度は通常のアクチュエータなどによる変位と比較すれば非常に大きなものであり、本発明に採用した高粘度インクであっても十分にインク滴2として吐出することが可能である。
図3(a)から図3(d)間の流路部材12(梁部材14)の変位とインク滴2の吐出の関係を図4に示す。
図4には流路部材12が座屈反転を起こす直前からインク滴を吐出した直後までのインクジェット記録ヘッド10の動作、アクチュエータ36に印加される電圧、回転エンコーダ20の動作の時間による変化が示されている。
図4(a)で回転エンコーダ20が逆転(流路部材12を両端から引っ張る方向)駆動され、押圧によって変形した流路部材12を伸ばし、初期状態に戻すことで流路部材12は初期撓みを与えられた状態(この場合は吐出方向:図中上に凸)となる。
続いて図4(b)で回転エンコーダ20が一旦停止し、この前後のタイミングで吐出を指示する信号がスイッチングICより送られ、アクチュエータ36が駆動されると流路部材12は吐出方向に凹となる。この変形は印加電圧/時間変化のグラフに示されているように、例えば1V/μs以下程度の非常に緩やかな立ち上がり波形で駆動する。また、波形自体も急峻なピークを備える必要はなく、角になまりのある波形でよい。故に高価なスイッチングICを用いる必要がない。
アクチュエータ36による変形が終了し、流路部材12が規定の撓み量となると図4(c)のように回転エンコーダ20が正転(流路部材12を両端から押圧する方向)駆動され、流路部材12は回転エンコーダ20に近い方、すなわち両端から次第に吐出方向(図中上)に凸へと撓み方向が変化する。この時点でアクチュエータ36はOFFされるが、立ち下がり特性もまた緩やかな波形でよい。
流路部材12の撓み変化が両端から中央に近付くと、流路部材12(あるいは梁部材14)はある点で急峻な座屈反転を起こし(図4(d))、インク吐出方向(図中上)へと急激に変形する。
このとき流路部材12内部のインクは慣性のため等速度で吐出方向に進もうとするので、両者の速度差によりノズル16からインク滴2が突出する。梁部材14の変形が最大量となれば吐出方向への変位は停止するので、インク滴2のみがノズル16から突出し(d)、そのまま慣性に従ってインク滴2は吐出方向に撃ち出される。
ここで回転エンコーダ20は停止し、次のサイクルに備える。この一連の動作は図4において、1サイクルあたり3Hz程度、アクチュエータ36への信号電圧は最大40V程度で駆動した例を説明したが、梁部材14の座屈反転による変位は短い時間のあいだに起こるので、インクの粘性が高い本発明においても極めて良好な吐出性能が得られる。
具体的には、梁部材14は20μm厚のSUSプレート、梁の長さは10mm、流路部材12は50μm厚の樹脂フィルムを使用し、フォトリソ法でインク流路13をパタニングした後、梁部材14に積層接合する。インク流路13のエッチング除去後の幅は50μmとする。次に、30μm厚のフィルム状ピエゾ素子30にスパッタ電極を形成し、梁部材14に接合しダイシングで梁間分離を行った。
ノズル16は25μm厚のポリイミドフィルムにレーザ加工を利用してφ30μmの孔を穿孔加工する。フィルム間はエポキシ系接着剤を用いて接合し、さらに剛体で製作した保持部材18にエポキシ系接着剤で接合した。回転エンコーダ20と保持部材18は回転エンコーダ20の回転中心から2.5mmオフセットさせた状態で接合し、インク滴2を吐出させる時(梁を座屈反転させる時)は回転エンコーダ20を20度回転させている。梁部材14の中央部は、インク吐出方向に約10m/sの速度で、1mm程移動する。
上記の条件では、グリセリンの混合比を増加させて50cps粘度に調整したインクを吐出させ、ストロボ法によってインク滴2の吐出を観察したところ、約25μm径のインク滴となった。100cps粘度のインクでは約20μm径のインク滴2がノズル16から吐出した。以上の実施例では、吐出周期は3Hzで駆動したが、100cpsの方が少し小滴となった。
<他の形式の駆動形態例>
図5には、本発明に係るインクジェット記録ヘッドの、他の駆動形態が示されている。
すなわち、1サイクルの動作中に梁部材14が座屈反転を2回行う形態であって、インク流路13内のインクに慣性流を発生させ、ノズル16からインク滴を吐出した際のリフィル特性を向上させるものである。
図5に示すように梁部材14を支持する保持部材18が回転エンコーダ20の回転中心からオフセットしない位置に保持されている場合、吐出動作1サイクルで座屈反転を2回起こすことができる。
このとき図5(a)に示すように、回転エンコーダ20がニュートラルの位置にあるとき、梁部材14が真っ直ぐに伸びている場合は上下どちらに回転エンコーダ20を回動させても座屈反転を起こさないため、予め図5(b)に示すように両端から、つまり回転エンコーダ20から梁部材14を長さ方向に圧縮し、初期撓みを付加しておく必要がある。
すなわち図5(b)のように例えば下凸となるよう初期撓みをもたせ、図5(c)のように回転エンコーダ20を回動させると下凸の撓み量が増大する。
更に回転エンコーダ20を回動させると図5(d)のように下凸から上凸に座屈反転が起こり、図示しないノズル16よりインク滴2を吐出する。
この状態で梁部材14は上方向に凸となっているので、回転エンコーダ20を逆転させ、図5(e)のように上凸の撓みを増加させることで下方向、すなわち吐出方向とは反対方向に座屈反転させることができる。つまり図5(f)のように回転エンコーダ20をさらに逆回転(吐出動作時とは逆の方向に回転)させることで梁部材14は座屈反転を起こし、梁部材14の長さ方向中央近傍に設けられた図示しないノズル16に向けて流路13内のインクに慣性流を発生させる。
これによりノズル16から射出されたインク滴2のために消費されたノズル16近傍にある流路13内部のインクは速やかにリフィルされ、インク滴吐出間隔の短縮、すなわち吐出周波数の向上にともなう不吐出などの画像故障を防止することができる。
<ノズル位置>
図6には、本発明に係るインクジェット記録ヘッドの、他の構造例が示されている。
図6(A)に示すようにノズル16の位置は流路部材12の長さ方向略中央部に設けることで、両端側のインクプール24からインク流路13内を経由してノズル16にインクを供給、あるいは循環供給することができるが、この他にも図6(B)に示すように流路部材12の端面にノズル16を設け、梁部材14/アクチュエータ36の長さ方向略中央にノズル16が位置するようにしてもよい。
この場合は図6(A)の構造に比較して単純な構成かつノズル16の形成を後述のようにダイシングやレーザ加工で簡単に行うことができるメリットがある。
<構造と製法>
図7には、本発明に係るインクジェット記録ヘッドの基本構造が示されている。
図7(a)、(b)に示すようにインクジェット記録ヘッド10は、内部にインク流路13を備え先端にノズル16を備えた流路部材12と、流路部材12を支持する梁部材14とが接合され、両端を保持部材18が支持する構造となっている。
流路部材12のノズル16近傍は例えば図7(c)のように先端が角度を持ってカットされ、インク滴吐出方向に向けて解放されている。
本実施形態においては、上記の構造を備えた流路部材12の製造方法として、図8に示すように樹脂反転写によりチューブ状構造の流路部材12を形成する。
図8(a)に示すように、予めエッチング方法によって凹凸状の溝を形成したガラス基板にフッ素系などの剥離層をコーティングし、この原版11の表面に、流路部材12となる材料を成膜する。ここではスプレー式の噴射機40より溶剤で希釈した液状のエポキシ樹脂材料を原版11の表面に複数回に分けて噴射、乾燥、硬化し、厚み10から20μmの薄膜を形成する。
この方法以外にも、流路部材12となる材料を液状希釈することなく、微粒子状にして成膜するスパッタ法や蒸着法、本形態と同様に液状の樹脂材料を利用し、原版11をこの液体に浸漬して表面に膜を形成するディップ塗工法やメッキ法、予め薄膜状に形成した部材を型に押圧して凹凸形状に加工するスタンプ成型法のほか、モールド等の成型方法により加工してもよい。本実施形態では外幅約65μm、高さ(図8における凹凸の高さ)約60μmの四角形状に加工したが、流路13の断面形状は図8のように四角以外にもカマボコ型、台形、三角形など様々な形状が適用できる。
次いで図8(b)のように一旦、原版11から薄膜として形成された流路部材12を剥離する。このとき図示しない中間保持部材を接合し、この中間保持部材ごと剥離することで薄膜状の流路部材12を確実に剥離・保持させておくことができる。また、中間保持部材の代わりに梁部材14を直接接合してもよい。
次に図8(c)のように梁部材14と流路部材12とを接合する。流路部材12を接着剤あるいは圧着による接合にて梁部材14に密着接合し、流路13をシールする。ここでは、梁部材14の表面に予めエポキシ接着剤を塗布しておき、流路部材12を密着させた後、中間保持部材ごと加圧加熱して接合する。さらに図示しない中間保持部材を剥離する。
次に図8(d)に示すように梁部材14をノズル16ごとに分離し、ドットごとのインク滴吐出が行えるようにする。例えばブレード44で梁部材14を流路方向に切断し、流路ごとに独立してアクチュエータ36による動作を可能にする。ここでは、20μm厚のダイシングブレードを用い、図示しないインクプールが損傷しないよう、図8における下側から切込む方式によって梁部材14を約85μmピッチで切断する。
さらにレーザ42などでスキャン加工を行い、流路ごとに分離された流路部材12にノズル16を形成することで流路部材が形成される。
本実施形態は上記の構成としたことにより、ノズル16を含む流路部材12を、略等ピッチの凹凸が設けられた膜と梁部材14とを接合して製造することで、チューブを配列して形成する方法に比較して流路13を一括形成できるため、高精度な位置合わせ作業を必要とせず低コスト化が可能であり、また流路壁や隣接隙間を薄くできるため、ノズル16を高密度化できる。
また、流路を絞った複雑な供給孔は構造上不要なためチューブ状の流路13と、共通のインクプール24だけで簡略構成でき、転写成形で流路13を容易に製造できる。また供給路などによる流路13内の段差が無く、液充填性・気泡排出性にも優れる。
<送風機構1>
図9には本発明の第一形態に係る送風機構を備えたインクジェット記録ヘッドの基本構造が示されている。
図9(A)はインクジェット記録ヘッドの側面図、図9(B)は斜視図、印刷媒体である用紙Pと排気ダクトを含む側面図を図9(C)に示す。
送風機構50を構成する送風口58は保持部材18に設けられ、図示しないブロワにより加圧された外気を溶媒57を含む加湿空気51としてノズル16方向へ送る。
これにより、装置自体の使用頻度が低くノズル16近傍の流路部材12内インクが消費されないためにノズル16からの溶媒蒸発で高濃度化し、粘度が上昇するなどの可能性がある場合でも、溶媒を豊富に含有した加湿空気51を送ることによりノズル16近傍の空気中における溶媒57の濃度を高く保つことができるため、ノズル16近傍の流路部材12内インクの溶媒蒸発を防ぐことができる。
図9(C)に示すように、送風機構50は加圧され溶媒を含んだ外気を送風口58から加湿空気51として流路部材12近傍に送り、流路部材12の特にノズル16近傍における溶媒57の濃度を高める。
このとき、溶媒57濃度の高い加湿空気51をそのまま流路部材12/用紙P近傍に滞留させたまま放置すれば結露/吸収などの弊害発生が考えられる。また、インク滴吐出時に発生するインクミストがノズル16の周囲や用紙Pに付着する等の可能性も考えられる。
そのため、流路部材12を通過した先(図中上方向)にて加湿空気51を回収し、多量に溶媒57を含む空気をインクミスト等と一緒に排気口60より回収することで上記の弊害を防ぐことができる。
図9(C)に示すように排気口60は例えばインクジェット記録ヘッドの吐出方向逆側(図中上)に設けられ、図示しない排気ファンにより負圧が掛けられている。これにより流路部材12近傍の加湿空気51は回収され、ノズル16近傍を浮遊するインクミスト共々、用紙Pに付着して画像故障を起こすことはなくなる。
図9(B)に示すように本発明はノズル16を含む流路部材12が細長い棒状の部材を複数並べた形態となっているため、他の形状のインクジェット記録ヘッドとは異なり、流路部材12の間隙から加湿空気51をノズル16の隙間から他方向へ排気することができる。これにより前述のように自由な空気流の設計を行うことができる。
また、このとき排気口60、あるいはその下流の排気ダクト内にフィルタを設け、インクミストや紙粉等をトラップして機外へ出さない構成とするようにしてもよい。
<送風機構2>
図10には本発明の第二形態に係る送風機構を備えたインクジェット記録ヘッドの基本構造が示されている。
図10(A)は斜視図、矢印B方向(用紙搬送方向)からの側面図を図10(B)に、矢印C方向(用紙幅方向)からの側面図を図10(C)に示す。
保持部材18に近接して設けられた送風機構50は送風部54、図示しないブロワから送られた外気を送風部54に導くダクト56、外気に溶媒57を含ませる加湿材52から構成されている。
ダクト56を通じて送り込まれた外気は例えばスポンジなど溶媒57に耐性のある多孔質素材からなる加湿材52を通過する際に、加湿材52に含まれている溶媒57を含有し加湿空気51となり、送風口58からノズル16(流路部材12)に向けて送られる。
また加湿材52は溶媒57に耐性のある素材からなるので、余剰インクがノズル16から漏出した際、図5を用いて説明した駆動形態のように、反吐出方向に梁部材14を座屈変形させて吐出方向と反対の方向(図中上)に吹き飛ばす構成とした時に、飛ばされた余剰インクを吸収する吸収体を兼ねる構成とすることができる。
上記の構成により、装置自体の使用頻度が低くノズル16近傍の流路部材12内インクが消費されないためにノズル16からの溶媒蒸発で高濃度化し、粘度が上昇するなどの可能性がある場合でも、溶媒を豊富に含有した加湿空気51を送ることによりノズル16近傍の空気中における溶媒57の濃度を高く保つことができるため、ノズル16近傍の流路部材12内インクの溶媒蒸発を防ぐことができる。
さらに、本発明はノズル16を含む流路部材12が細長い棒状の部材を複数並べた形態となっているため、他の形状のインクジェット記録ヘッドとは異なり、流路部材12の間隙から加湿空気51をノズル16方向へ送ることができる。これによりインク滴吐出方向に加湿空気51を送ることができるので、インク滴着弾精度などへの影響を抑えることもできる。
また、送風口58をノズル16の極近傍に設置することができる。これは本発明においては流路部材12の吐出方向背後に構造物が存在しない構成となっているためで、これにより加湿空気51を加湿直後にノズル16へ向け送ることができるので溶媒57が無駄にならず効率がよい。
図10(C)に示すように、加湿材52には溶媒流路55から溶媒57のみを供給し、ダクト56を通じて送られる外気を通すことで加湿空気51として流路部材12近傍に送り、流路部材12の特にノズル16近傍における溶媒57の濃度を高める。
このとき、溶媒57濃度の高い加湿空気51をそのまま流路部材12/用紙P近傍に滞留させたまま放置すれば結露/吸収などの弊害発生が考えられる。また、インク滴吐出時に発生するインクミストがノズル16の周囲や用紙Pに付着する等の可能性も考えられる。
そのため、流路部材12を通過した先(用紙P側)にて加湿空気51を回収し、多量に溶媒57を含む空気をインクミスト等と一緒に排気口60より回収することで上記の弊害を防ぐことができる。
図10(C)に示すように保持部材18に設けられた排気口60は、図示しない排気ダクトに接続され、図示しない排気ファンにより負圧が掛けられている。これにより流路部材12近傍の加湿空気51は回収され、ノズル16近傍を浮遊するインクミスト共々、用紙Pに付着して画像故障を起こすことはなくなる。
さらに、第1実施形態では図9(C)に示すように用紙P近傍の空気は用紙Pの搬送(図中白矢印)に連れて渦を発生させ、梁部材14と用紙Pの間を廻る気流となる。このためノズル16近傍に加湿空気を供給しようとすると上記の気流が妨げとなり、大量の溶媒57を必要とするため用紙Pへの悪影響が考えられる。
あるいはインクミストや用紙Pに付着した紙粉などの異物もまた空気流に乗って移動してしまう。このためノズル16近傍に紙粉が浮遊し、場合によってはノズル16に付着して吐出を妨げるなどの弊害も考えられる。
加えて、高粘度のインク滴を吐出した際に吐出されたインク滴の後方には糸を引いたインクが微細なインク滴となって用紙Pへ打ち出される、いわゆるサテライトが発生するが、上記の空気流にサテライトが乗り、移動する事態も考えられる。
これに対して本実施形態では保持部材18に排気口60を設けたので、上記の気流に妨げられずに効率よくノズル16近傍に溶媒57を含んだ加湿空気51を供給することができる。さらに排気口60はノズル16と用紙Pの間に設けるため、紙粉なども同時に保持部材18に設けられた排気口60で回収でき、ノズル16への異物付着を抑えることもできる。
また、このとき排気口60あるいはその下流の排気ダクト内にフィルタを設け、インクミストや紙粉等をトラップして機外へ出さない構成とするようにしてもよい。
<まとめ>
本発明は上記の構成により、従来技術では極めて困難であった常温で50cps〜100cpsの高粘度インクを、加熱することなくオンデマンド吐出することが可能となるメリットはそのままに、溶媒を多量に含んだ空気をノズル近傍に供給することでノズルにおけるインクの固化や粘度増大による吐出性能劣化を防ぎ、またインク滴の尾引きによるミストの影響に起因する画質低下などを防ぐこともできる。
さらに溶媒を含んだ空気をノズル近傍から吸引/回収することで周辺部位および用紙への悪影響を防ぎ、同時に紙粉などの回収も行えるので印字品質や吐出性能の更なる改善が期待できる。
本発明の第1形態に係るインクジェット記録ヘッドを示す図である。 本発明の第1形態に係るインクジェット記録ヘッドの動作を示す図である。 本発明の第1形態に係るインクジェット記録ヘッドの動作を示す図である。 本発明の第1形態に係るインクジェット記録ヘッドの動作とアクチュエータの動作の関係を示す図である。 本発明の第1形態に係るインクジェット記録ヘッドの他の動作を示す図である。 本発明に係るインクジェット記録ヘッドの詳細構造 を示す図である。 本発明に係るインクジェット記録ヘッドの他の詳細構造 を示す図である。 本発明に係るインクジェット記録ヘッドの製造方法 を示す図である。 本発明に係るインクジェット記録ヘッドの構造を示す図である。 本発明に係るインクジェット記録ヘッドの構造を示す図である。 従来技術と本発明に係るインクジェット記録ヘッドの差異を示す図である。
符号の説明
10 インクジェット記録ヘッド
12 流路部材
13 流路
14 梁部材
16 ノズル
18 保持部材
20 回転エンコーダ
22 アーム
24 インクプール
36 アクチュエータ
50 送風機構
51 加湿空気
52 加湿材
54 送風部
55 溶媒流路
56 ダクト
57 溶媒
58 送風口
60 排気口

Claims (6)

  1. 液滴を吐出するノズルと、
    前記ノズルを含む液流路部材と、
    前記液流路部材と接合もしくは液流路部材を含む複数の梁部材と、
    を備え、
    前記梁部材を液滴吐出方向に凹から凸となるように弾性変形させることで座屈反転変形させ、前記ノズル近傍の液に吐出方向の慣性を与え、前記ノズルより液滴として吐出させる駆動手段を有し、
    前記ノズルに対して前記液滴の溶媒を含む空気を供給する空気供給手段と、
    前記空気供給手段より供給された前記溶媒を含む空気を回収する回収手段と、
    を備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  2. 前記空気供給手段は前記梁部材の隙間から液滴吐出方向に前記空気を供給することを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
  3. 前記回収手段は前記梁部材と印刷媒体の間で前記溶媒を含む空気を回収することを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
  4. 前記空気供給手段は、前記空気供給手段に外気を圧送する空気ポンプと、
    前記外気が内部を通過する際に前記外気に前記溶媒を供給する溶媒供給体と、
    前記溶媒供給体に溶媒を供給する溶媒供給路からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
  5. 前記回収手段は前記ノズルよりも印刷媒体の搬送方向下流側に設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
  6. 前記回収手段は前記梁部材の長さ方向両端部を支持する支持部に設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
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