情報記録再生装置に用いられる記録媒体としては、780nm近傍の赤外の波長域の光によって記録再生されるコンパクトディスク(Compact Disk;略称:CD)、CDの記録再生に用いられる光の波長よりも短い波長、具体的には650nm近傍の赤色の波長域の光によって記録再生されるデジタルバーサタイルディスク(Digital Versatile Disk;略称:DVD)、405nm近傍の青紫色の波長域の光によって記録再生されるブルーレイディスク(Blu-ray Disc(登録商標))などがある。また、光を利用する記録媒体(以下「光記録媒体」という場合がある)には、1つの記録媒体に複数の記録層を形成し、多層構造とすることによって記録容量を増大したものが汎用化されている。
光記録媒体に対する情報の再生または記録は、再生専用の光記録媒体であれば記録層に形成される凹凸状のピット、また記録用の光記録媒体であれば記録層に形成されるランドおよびグルーブからなるトラックに、レーザ光を照射し、その反射光を受光素子で検出して、情報の再生または記録を行うとともにサーボ信号を検出してサーボ制御を行う。
しかし、多層構造の光記録媒体では、今まさに集光されている集光記録層によって反射される反射光だけでなく、集光記録層以外の記録層によって反射される反射光も発生する。集光記録層以外の記録層によって反射される反射光が迷光として、集光記録層による反射光とともに、受光素子に反射光を導く光分割手段であるホログラム素子に入射して回折され、さらに受光素子に入射すると、迷光がノイズとして作用するので、サーボ制御信号にノイズが重畳することになり、サーボ制御を安定して行うことができないという問題が生じる。
このような多層構造の光記録媒体における情報の記録または再生時に発生する迷光の問題を解決する光ピックアップ装置が提案されている(たとえば、特許文献1,2参照)。
図15は、従来技術の光ピックアップ装置1の構成を簡略化して示す図である。図16は、図15に示す光ピックアップ装置1に備わるホログラム素子4および光検出手段7の構成を簡略化して示す図である。以下の光ピックアップ装置1に関する説明では、記録媒体8に形成されるトラックに対する接線方向であるタンジェンシャル方向をX軸方向と定義し、記録媒体8の半径方向であるラジアル方向をY軸方向と定義する。またX軸方向およびY軸方向に垂直な方向であり、光源2から出射される出射光の光軸14に平行な方向をZ軸方向と定義する。
光ピックアップ装置1は、光を出射する光源2と、回折格子3と、ホログラム素子4と、コリメートレンズ5と、集光手段である対物レンズ6と、複数の受光素子を有する光検出手段7とを含み、記録媒体8に情報を記録する処理および記録媒体8に記録されている情報を再生する処理の少なくともいずれか一方の処理をする。
光源2には、たとえば半導体レーザ素子が用いられる。回折格子3は、光源2から出射される出射光を、メインビーム11と、第1および第2サブビーム12,13との少なくとも3つのビームに分割する。回折格子3は、周期的な凹凸が形成される構造を有し、出射光を回折させて複数のビームを生成する。メインビーム11は記録媒体8に記録されている情報を取得するための主光束であり、サブビーム12,13はメインビーム11の集光位置を制御するために用いられる副光束である。回折格子3によって分割された光は、ホログラム素子4を通過し、次いでコリメートレンズ5を通過して略平行光になり、対物レンズ6に導かれる。
対物レンズ6は、光源2から出射される光を、記録媒体8の情報を記録する記録層に集光させる。この対物レンズ6は、不図示のアクチュエータに支持されて出射光の光軸14に平行な方向および垂直な方向にそれぞれ変位可能に設けられている。対物レンズ6は、出射光の光軸14に平行な方向および垂直な方向への変位によって、出射光の記録媒体8に対する集光位置を変化させる。
メインビーム11と第1および第2サブビーム12,13とは、対物レンズ6によって記録媒体8上に集光される。記録媒体8によって反射されたメインビーム11と第1および第2サブビーム12,13とは、対物レンズ6を通過した後、コリメートレンズ5を通過して、ホログラム素子4に導かれる。
光分割手段であるホログラム素子4は、光検出手段7と対物レンズ6との間に設けられる。ホログラム素子4には、記録媒体8からの反射光を複数の光に分割するための複数の分割領域を有するホログラムパターンが形成される。
光ピックアップ装置1に備わるホログラム素子4のホログラムパターンは、Z軸方向一方から見た外形が略円形に形成される。ホログラム素子4のホログラムパターンは、情報記録再生装置に装着されて情報の記録または再生状態にある記録媒体8の半径方向であるY軸方向に略平行であって中央部に半円形の曲線部分16aを有する第1分割線16によって、第1分割領域21と、残余の分割領域とに分割される。残余の分割領域は、記録媒体8に形成されるトラックに対する接線方向であるX軸方向に平行な第2分割線17によって、さらに第2分割領域22と第3分割領域23とに分割される。
第1分割領域21は、第1分割線16の半円形の曲線部分16aにおいて第1分割線16の両端を結ぶ仮想分割線18よりも第2および第3分割領域22,23側に向かって突出する半円形の突出領域24を有するように形成される。したがって、第2および第3分割領域22,23は、略1/4円の円環形状に形成される。
光検出手段7は、8個の受光素子7a,7b,7c,7d,7e,7g,7f,7hを有する。各受光素子7a〜7hは、Z軸方向一方から見た形状が略長方形であり、長手方向をY軸方向に平行にして配置される。光検出手段7では、受光素子7e,7c,7f,7a,7b,7g,7d,7hが、この順番でX軸方向に配列して設けられる。各受光素子7a〜7dでは、メインビーム11の記録媒体8による反射光を受光し、各受光素子7e〜7hでは、サブビーム12,13の記録媒体8による反射光を受光する。
メインビーム11の記録媒体8による反射光がホログラム素子4に入射すると、第1分割領域21による回折光は受光素子7aと受光素子7bとの境界に落射し、第2分割領域22による回折光は受光素子7dに落射し、第3分割領域23による回折光は受光素子7cに落射する。また、サブビーム12,13の記録媒体8による反射光がホログラム素子4に入射すると、第1分割領域21による回折光は、受光素子7aと受光素子7bに落射することなく、受光素子7aと受光素子7bとの両側であって受光素子が存在しない位置に落射し、第2分割領域22による回折光は受光素子7gおよび受光素子7hに落射し、第3分割領域23による回折光は受光素子7eおよび受光素子7fに落射する。
フォーカシングを行うためのサーボ制御信号であるフォーカスエラー信号(略称:FES)は、受光素子7aと受光素子7bとによって検出される信号から生成する。トラッキングを行うためのサーボ制御信号であるトラッキングエラー信号(略称:TES)は、受光素子7c〜7hによって検出される信号から生成する。
前述のFESおよびTESの生成は、今まさに対物レンズ6によって集光されている集光記録層からの反射光による信号生成を示すものである。記録媒体8が多層構造を有する場合、集光記録層以外の記録層からの反射光も発生する。
図17は、記録層を2層有する記録媒体8における光の透過および反射の概要を説明するための図である。図17では、煩雑さを避け、理解を容易にするためにメインビーム11に関する透過と反射のみ図示し、さらに記録層の屈折率を空気と同一として図示する。2つの記録層を有する記録媒体8において、対物レンズ6に近い側に位置する記録層を第1記録層25aと呼び、対物レンズ6から遠い側に位置する記録層を第2記録層25bと呼ぶ。また、第1記録層25aと第2記録層25bとの間の距離(以下「記録層間距離」という場合がある)をtdとする。
対物レンズ6から出射されたメインビーム11は、集光記録層である第1記録層25aで反射され、その直接反射光である0次回折光11aは、再び対物レンズ6およびコリメートレンズ5を通過し、さらにホログラム素子4で回折され、光検出手段7の各受光素子7a〜7dへ落射する。これは上記の場合と同様である。
しかし、メインビーム11には、第1記録層25aを透過する成分もあり、第1記録層25aを透過した残りの光は、第2記録層25bに入射し、第2記録層25b上のトラックによって反射されて0次回折光11bおよび+1次回折光11cが生成される。以下の説明では、+1次回折光11cの符号「+」は省いて示す。
第2記録層25bによって生成される0次回折光11bは、記録層間距離tdの分だけ、第2記録層25bから離れた位置に集光点があるかのように、対物レンズ6に向けて反射される。0次回折光11bは、第2記録層25bに入射するメインビーム11の入射角度と同一角度で、対物レンズ6に向けて反射される。この0次回折光11bは、第1記録層25aを透過して再び対物レンズ6およびコリメートレンズ5を通過し、第1記録層25aからの反射光よりも一層集光されてホログラム素子4に入射する。
図18は、第2記録層25bによる回折光がホログラム素子4および光検出手段7に入射する状態を説明するための図である。第2記録層25bによる0次回折光11bは、ホログラム素子4における第1分割領域21の突出領域24内に入射し、0次回折光スポット26を形成する。光ピックアップ装置1のホログラム素子4では、落射した0次回折光スポット26が、TES生成のための光を回折する第2および第3分割領域22,23にはみ出さないように、突出領域24を第2および第3分割領域22,23と隔する半円形の曲線部分16aの半径を定めている。
このように、第2記録層25bからの0次回折光11bを突出領域24に全て入射させることによって、0次回折光11bがTES生成用の受光素子7c〜7hに向けて回折されることがなくなるので、0次回折光11bが迷光として受光されることがなく、集光記録層である第1記録層25aとは異なる第2記録層25bからの反射による迷光を除いたTESを取得することができる。
第1分割領域21に含まれる突出領域24に入射した0次回折光11bは、第1分割領域21で回折されてFESを生成するための受光素子7a,7bに迷光として落射するけれども、非常にぼけた落射スポット27となり、また迷光として入射する光強度分布も拡散されて第1記録層25aからの反射光に対して充分小さい信号量であるとともに、FESは受光素子7aと受光素子7bとの差動を取るので、双方の受光素子7a,7bに入射する場合、打消し合ってノイズとして作用することが抑制される。
特開2004−303296号公報
特開2004−288227号公報
以下に、本発明を実施するための複数の形態について説明する。各形態において、先行する形態で説明している事項に対応する部分については同一の参照符を付し、重複する説明を省略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。
図1は、本発明の実施の第1形態である光ピックアップ装置40の構成を簡略化して示す図である。図2は、光ピックアップ装置40に備わるホログラム素子43および光検出手段46の構成を示す図である。以下の実施の形態において、光ディスク状記録媒体(以下、単に「記録媒体」という)47に形成されるトラックに対する接線方向であるタンジェンシャル方向をX軸方向と定義し、記録媒体47の半径方向であるラジアル方向をY軸方向と定義する。記録媒体47の半径方向とは、光ピックアップ装置40から出射される光の光軸と記録媒体47の記録面との交点と記録媒体47の中心とを結ぶ一半径線に沿う方向をいう。またラジアル方向は、記録媒体47の記録面内においてタンジェンシャル方向に垂直である。またX軸方向およびY軸方向に垂直な方向であり、光源41から出射される出射光の光軸54に平行な方向をZ軸方向と定義する。X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は、互いに直交する3次元の直交座標系を構成する。
光ピックアップ装置40は、コンパクトディスク(Compact Disk;略称:CD)およびデジタルバーサタイルディスク(Digital Versatile Disk;略称:DVD)などの記録媒体47に対して光を照射することによって、記録媒体47に記録されている情報を再生する処理および記録媒体47に情報を記録する処理の少なくともいずれか一方の処理をする。
光ピックアップ装置40は、光を出射する光源41と、回折格子42と、ホログラム素子43と、コリメートレンズ44と、対物レンズ45と、複数の受光素子を有する光検出手段46とを含んで構成される。光源41は、半導体レーザ素子によって実現される。回折素子である回折格子42は、光源41から出射される出射光を、メインビーム51と、第1および第2サブビーム52,53との少なくとも3つのビームに分割する。回折格子42は、周期的な凹凸が形成される構造を有し、出射光を回折させて複数のビームを生成する。メインビーム51は、記録媒体47に記録されている情報を取得するための主光束であり、第1および第2サブビーム52,53は、メインビーム51の集光位置を制御するために用いられる副光束である。回折格子42によって分割された光は、ホログラム素子43を通過し、次いでコリメートレンズ44を通過して略平行光になり、対物レンズ45に導かれる。
集光手段である対物レンズ45は、光源41から出射される光を、記録媒体47の情報を記録する記録層に集光させる。この対物レンズ45は、不図示のアクチュエータに支持され、出射光の光軸54に平行であり、記録媒体47の記録層に対して垂直な方向であるフォーカス方向、および出射光の光軸54に垂直なラジアル方向にそれぞれ変位可能に設けられている。対物レンズ45は、前記フォーカス方向およびラジアル方向への変位によって、出射光の記録媒体47に対する集光位置を変化させる。
メインビーム51と第1および第2サブビーム52,53とは、対物レンズ45によって記録媒体47上に集光される。記録媒体47によって反射されたメインビーム51と第1および第2サブビーム52,53とは、対物レンズ45を通過した後、コリメートレンズ44を通過して、ホログラム素子43に導かれる。
光分割手段であるホログラム素子43は、光検出手段46と対物レンズ45との間の光経路上に設けられる。ホログラム素子43には、記録媒体47からの反射光を複数の光に分割するための複数の分割領域を有するホログラムパターンが形成される。
ホログラム素子43のホログラムパターンは、Z軸方向一方から見た外形が略円形に形成される。ホログラム素子43のホログラムパターンは、記録媒体47の半径方向であるY軸方向に略平行であって中央部に半円形の曲線部分55aを有する第1分割線55によって、第1分割領域60と、残余の分割領域とに分割される。第1分割領域60は、第1分割線55の半円形の曲線部分55aにおいて第1分割線55の両端を結ぶ仮想分割線56よりも前記残余の分割領域側に向かって突出する半円形の突出領域65を有するように形成される。
前記残余の分割領域は、Y軸方向に平行で、かつ第1分割線55の直線部分からX軸方向に間隔G1をあけて設けられる第2分割線57a,57bによって、Y軸方向に並んで配列される2個の分割領域である第4分割領域63と第5分割領域64と、さらなる残余の分割領域とに分割される。第2分割線57a,57bは、突出領域65を形成する第1分割線55の曲線部分55aに掛かるようにして、2本に分かれて形成される。
前記さらなる残余の分割領域は、X軸方向に平行な第3分割線58によって、さらに第2分割領域61と第3分割領域62とに分割される。したがって、ホログラム素子43は、5つの分割領域、具体的には第1〜第5分割領域60〜64を有するように形成される。ホログラム素子43の各分割領域60〜64は、光を回折させる方向が異なるので、ホログラムパターンを形成する凹凸の向き、形状、ピッチが異なる。
まず、対物レンズ45によって光が集光されている1記録層(以下「集光記録層」という場合がある)からの反射光に対するホログラム素子43の回折動作について説明する。集光記録層で反射されてホログラム素子43に入射するメインビーム51は、第1分割領域60によって第1受光素子46aと第2受光素子46bとの境界に向けて回折されて第1落射点66に落射され、第2分割領域61によって第4受光素子46dに向けて回折されて第2落射点67に落射され、第3分割領域62によって第3受光素子46cに向けて回折されて第3落射点68に落射され、第4および第5分割領域63,64によって受光素子が存在しない位置である第4落射点69に落射される。
集光記録層で反射されてホログラム素子43に入射する第1および第2サブビーム52,53は、第1分割領域60によって回折され、第1受光素子46aと第2受光素子46bとの両側であって受光素子が存在しない位置に落射され、第2分割領域61によって第6受光素子46fおよび第8受光素子46hに向けて回折されて落射され、第3分割領域62によって第5受光素子46eおよび第7受光素子46gに向けて回折されて落射され、第4および第5分割領域63,64によってメインビーム51と同様に受光素子が存在しない位置である第4落射点69近傍に照射される。
次に、集光記録層からの反射光に基づく、たとえば光ピックアップ装置40の情報再生動作について説明する。光源41は、たとえばDVDの再生に用いられ、波長が650nmの赤色光を出射する。光源41から出射された出射光は、回折格子42を通過することによって、メインビーム51と第1および第2サブビーム52,53とに分かれる。以下の説明において、メインビーム51および第1および第2サブビーム52,53を、単に「光」という場合がある。回折格子42で回折された光は、ホログラム素子43を通過してコリメートレンズ44に入射する。コリメートレンズ44に入射した光は略平行光となり、対物レンズ45を通過して記録媒体47の1つの記録層に集光される。このとき、メインビーム51は主トラックに集光され、第1および第2サブビーム52,53は副トラックに集光される。
記録媒体47における集光記録層の主トラックおよび副トラックによって反射された反射光は、再度、対物レンズ45、コリメートレンズ44を通過して、ホログラム素子43に入射し、前述のように各分割領域60〜64で回折され、受光素子上へまたは受光素子が存在しない位置へ落射される。受光素子に落射した反射光から信号情報が読取られる。
本実施の形態では、集光記録層からの反射光が入射する各受光素子46a〜46hから得られる光信号に基づいて、不図示の信号生成部によって、フォーカスエラー信号(略称:FES)、トラッキングエラー信号(略称:TES)および情報再生(略称:RF)信号が生成される。信号生成部のうちサーボ信号生成部によって、FESおよびTESが生成される。これらのサーボ信号によって、不図示のサーボ信号処理部が、フォーカスサーボ制御およびトラックサーボ制御を行い、記録媒体47の集光記録層における所定のトラックに対して、対物レンズ45による集光点が追従するように、アクチュエータに搭載される対物レンズ45のフォーカス方向およびトラック方向の位置制御が行われる。
第1受光素子46aによって検出される信号をSaとし、第2受光素子46bによって検出される信号をSbとすると、FESは式(1)によって与えられる。
FES=Sa−Sb …(1)
式(1)は、ホログラム素子43において、曲線部分55aを含む第1分割線55を境界としたナイフエッジを利用して、ナイフエッジ法によってフォーカスサーボ制御を行うことを意味する。ただし、第1分割領域60は、半円状に突出する突出領域65を有するので、突出領域65が突出していない場合と比較して、FESの振幅は小さくなり、また正成分と負成分とのアンバランスが生じる。さらに、第1分割線55がX軸方向にシフトすると、FESの信号振幅および正負成分のバランスが悪化する。
したがって、本実施の形態のホログラム素子43では、FESの振幅の縮小およびアンバランスを防ぐため、第1分割線55が、ホログラム素子43に入射する反射光スポット70の光軸71を通りY軸方向に延びる軸線α上に位置するように設定する。
TESの検出に位相差(Differential Phase Detection;略称:DPD)法を用いる場合、第3受光素子46cによって検出される信号をScとし、第4受光素子46dによって検出される信号をSdとすると、TESは式(2)によって与えられる。これは、記録媒体47の記録層に形成されたピットで回折された±1次のピット回折光が反射光スポット70上に重畳され、干渉して明暗のパターンである+1次のピット回折光70aおよび−1次のピット回折光70bを形成することを利用している。
すなわち、レーザ光がピットの中心に一致する場合、±1次のピット回折光70a,70bは、ホログラム素子43において、前記光軸71に関して互いに対称な位置に入射するので、TES検出用受光素子から出力される信号の位相差は0となる。これに対して、レーザ光がピットの中心からずれている場合、+1次のピット回折光70aとピットで反射された0次回折光である反射光スポット70との干渉の度合いと、−1次のピット回折光70bと前記反射光スポット70との干渉の度合いとが異なるため、TES検出用受光素子から出力される信号に位相差が生じる。その結果、第3受光素子46cおよび第4受光素子46dによって検出されるメインビーム51の位相差から、レーザ光がラジアル方向であるY軸方向に信号ピットからどの程度ずれているかを表すTESが得られることを意味する。
TES(DPD)=Sc−Sd …(2)
TESの検出に差動プッシュプル(Differential Push Pull;略称:DPP)法を用いる場合、第3〜第8受光素子46c〜46hによって検出される信号をそれぞれSc,Sd,Se,Sf,Sg,Shとすると、TESは式(3)によって与えられる。
TES(DPP)=(Sc−Sd)−k×{(Se−Sf)+(Sg−Sh)}
…(3)
式(3)の第1項の(Sc−Sd)は、メインビーム51のプッシュプル信号であり、第2項の(Se−Sf)および(Sg−Sh)は、第1および第2サブビーム52,53のプッシュプル信号である。kは、メインビーム51と第1および第2サブビーム52,53との光強度比であり、回折格子42の凹凸の深さで決めることができる。また、DPP法を用いる場合、メインビーム51から得られるプッシュプル信号に対して、第1および第2サブビーム52,53から得られるプッシュプル信号の位相が、180度ずれている必要があるので、たとえば記録媒体47の主トラックとなるランドに集光されているメインビーム51に対して、第1および第2サブビーム52,53はその隣接トラックとなるグルーブに集光するように、回折格子42の凹凸のピッチが定められる。
式(1)によって得られるFESに基づいてフォーカスサーボ制御を行い、式(2)または式(3)によって得られるTESに基づいてトラックサーボ制御を行う。これによって記録媒体47の所定のトラックに、光源41から出射された光を集光させることができる。
情報再生信号であるRF信号は、第1〜第4受光素子46a〜46dによって検出される信号Sa,Sb,Sc,Sdから、式(4)によって与えられる。
RF=Sa+Sb+Sc+Sd …(4)
次に、集光記録層とは異なる他の記録層によって回折される0次回折光と高次回折光とに対するホログラム素子43の回折動作について説明する。以下の説明では、高次回折光のうち、0次回折光に比べて回折次数が高い1次回折光についてのみ説明する。
図3は、対物レンズ45側にある集光記録層とは異なる他の記録層からの回折光がホログラム素子43に入射して回折される概要を説明するための図である。集光記録層(以下「第1記録層」という場合がある)とは異なる他の記録層(以下「第2記録層」という場合がある)で回折された0次回折光は、ホログラム素子43における第1記録層からの反射光の光軸71付近であって、第1分割領域60の突出領域65に含まれる位置に入射して、メインビーム51の0次回折光スポット75となる。このとき、メインビーム51の0次回折光だけではなく、図示していない第1および第2サブビーム52,53の0次回折光をも第1分割領域60の突出領域65に落射するように、突出領域65を形成する第1分割線55の半円形の曲線部分55aの半径を定めることによって、第2記録層で回折された0次回折光は、第1分割領域60で第1および第2受光素子46a,46bに向けて回折される。このように第2記録層で回折された0次回折光は、TESを生成するための第3〜第8受光素子46c〜46hに迷光として落射しないので、TESに、0次回折光によるノイズが含まれないようにすることができる。
また、第1分割領域60の突出領域65の大きさは、以下の点を考慮して定められる。第1記録層と第2記録層との間の屈折率をndとし、記録層間の厚み寸法をtdとすると、屈折率ndが最大でかつ厚み寸法tdが最小となるとき、第2記録層による0次回折光スポット75が最も大きくなるので、この最も大きくなる0次回折光スポット75をも包含できるように、第1分割領域60の突出領域65の大きさ、すなわち第1分割線55の曲線部分55aの半径が定められる。
また、対物レンズ45のY軸方向への変位に応じて、Y軸方向における位置が変動する0次回折光スポット75を、その変動位置にかかわらず包含することができるように、第1分割線55の曲線部分55aの半径が定められる。突出領域65の大きさは、第1分割線55の曲線部分55aの半径を変化させることに限定されるものではなく、Y軸方向における位置が変動する0次回折光スポット75を包含することができるように、突出領域65の形状をY軸方向に延びる半楕円形状としてもよい。
さらに、突出領域65の形状は、半円形、半楕円形に限定されるものではなく、第2記録層で回折された0次回折光スポット75が、第1分割領域60からはみ出さないようにして、第3〜第8受光素子46c〜46hのいずれかに落射しないような形状寸法であればよく、もしくは一部が第3〜第8受光素子46c〜46hに落射するような場合であっても、その落射による受光量が、第1記録層の反射光による受光量に比べて充分小さければ、前述の形状に限定されることはない。
第2記録層で回折された0次回折光は、FESを生成するための第1および第2受光素子46a,46bに迷光として落射するけれども、非常にぼけた落射スポット77となり、迷光として入射する光強度分布が拡散されるとともに、第1記録層からの反射光に対して光量が充分に小さく、またFESは、第1受光素子46aと第2受光素子46bとの差動を取るので、双方に照射される場合は、打消し合ってノイズとなりにくい。
次に、第2記録層で回折されたメインビーム51の1次回折光は、ホログラム素子43上に、メインビーム51の0次回折光スポット75を間に挟み、Y軸方向に並ぶ1次回折光の第1光スポット76および1次回折光の第2光スポット77として入射する。1次回折光の第1光スポット76は、ホログラム素子43上で第1分割領域60と第4分割領域63とに跨り、軸線αにも一致する直線である第1分割線55上に入射する。1次回折光の第2光スポット77は、ホログラム素子43上で第1分割領域60と第5分割領域64とに跨り、軸線αにも一致する直線である第1分割線55上に入射する。
第2記録層で回折された1次回折光が入射するホログラム素子43の第4および第5分割領域63,64は、出射光の光軸54に平行な方向に関する出射光の記録媒体47に対する集光位置の情報であるフォーカス位置情報を検出するための第1および第2受光素子46a,46b、および出射光の光軸54に垂直な方向に関する出射光の記録媒体47に対する集光位置の情報であるトラック位置情報を検出するための第3〜第8受光素子46c〜46hに向けて回折しない分割領域である。
第4および第5分割領域63,64は、第2記録層によるメインビーム51および第1および第2サブビーム52,53のいずれの図示しない1次回折光をも、受光素子が存在しない位置に向けて回折し、1次回折光落射スポット79を形成する。第2記録層で回折された1次回折光のうち、第1分割領域60に入射したメインビーム51の1次回折光は、第1および第2受光素子46a,46bに向けて回折され、第1および第2サブビーム52,53の1次回折光は、第1受光素子46aと第2受光素子46bとの両側であって受光素子が存在しない位置に向けて回折される。
このように、光ピックアップ装置40のホログラム素子43は、第2記録層で回折されるメインビーム51ならびに第1および第2サブビーム52,53の1次回折光を、TESを生成するための第3〜第8受光素子46c〜46hに向けて回折することがない第4および第5分割領域63,64を有するように形成される。したがって、第2記録層で回折された1次回折光が、TESを生成するための第3〜第8受光素子46c〜46hに迷光として落射しないので、TESに、第2記録層で回折された1次回折光によるノイズが含まれないようにすることができ、安定してTESを生成することが可能になる。
次に、第4および第5分割領域63,64の大きさについて説明する。第1分割線55の直線部分と第2分割線57a,57bとの間隔、換言すれば軸線αと第2分割線57a,57bとの間隔G1は、大きくし過ぎると、第1記録層からの反射光の光量も減少し、TESおよびRF信号の振幅も減少してしまうので、その大きさにはある程度の制約がある。
しかし、軸線αにも一致する直線である第1分割線55に跨って落射する光であって、第2記録層で回折されるメインビーム51および第1および第2サブビーム52,53の1次回折光のうち、第1および第2サブビーム52,53の1次回折光は、メインビーム51に対する第1および第2サブビーム52,53の光量比およびトラックによる0次回折光に対する1次回折光の回折効率比の双方を考慮すると、第1記録層からの反射光の光量に対して充分小さく、その及ぼす影響も小さい。
したがって、前記間隔G1の大きさを規定するにあたって、第4および第5分割領域63,64が、第2記録層で回折された3ビームの1次回折光のうち、少なくともメインビーム51の1次回折光の入射光スポットを含むことができるようにし、第1および第2サブビーム52,53の1次回折光の入射光スポットについては、ある程度含まれなくてもやむを得ないような大きさに間隔G1を定めることによって、第1記録層で反射された0次回折光の信号量の減少を抑え、TESおよびRF信号の振幅減少を抑えることができる。
さらに、本実施形態のホログラム素子43では、対物レンズ45がY軸方向にシフトした場合であっても、ホログラム素子43に入射するメインビーム51の1次回折光の第1および第2光スポット76,77が、第2および第3分割領域61,62に入射しないように、第4および第5分割領域63,64が、ホログラムパターンの最外周にまで達するように形成される。しかし、たとえばホログラム素子43上でホログラムパターンの最外周を形成する円の半径に対して、記録媒体47の回転中心とトラックとの偏芯のためにトラックを追従するために、対物レンズ45がY軸方向にシフトし、1次回折光の第1および第2光スポット76,77がホログラムパターンの最外周方向へシフトした場合のスポット移動量が小さければ、第4および第5分割領域63,64は、本実施形態の形状に限定されることなく、ホログラムパターンの最外周まで達していないような形状であってもよい。また第2分割線57a,57bが、ホログラムパターンの外周へ近づくに従って間隔G1が狭くなるような直線もしくは曲線形状に形成されてもよい。
ホログラム素子43を、前述のような5つの分割領域60〜64を有する構成にすることによって、対物レンズ45からの入射光が第1記録層に集光したとき、第2記録層で回折された0次回折光および1次回折光が迷光となり、TESを生成する第3〜第8受光素子46c〜46hに入射する量を低減させることができる。これによって、TESに含まれる迷光ノイズを低減させ、安定したTESを生成し、安定してトラックサーボ制御を行うことが可能になる。さらに、FESの振幅およびその正負成分のバランス悪化をも抑えることができ、安定してフォーカスサーボ制御を行うことが可能になる。
図4は、本発明の実施の第2形態である光ピックアップ装置に備わるホログラム素子81の構成を示す図である。本実施の形態の光ピックアップ装置は、前述の実施の第1形態の光ピックアップ装置40と類似しているので、異なる部分についてのみ説明し、実施の第1形態と対応する部分には同一の参照符を付し、共通する説明を省略する。
本実施の形態の光ピックアップ装置は、前述の実施の第1形態のホログラム素子43に代えて、別のホログラム素子81を備えて構成される。本実施の形態のホログラム素子81は、第2記録層で回折された1次回折光が入射する第4および第5分割領域82,83が、1次回折光を回折することなく透過させるように形成される。すなわち、第4および第5分割領域82,83は、光を回折するための凹凸形状が形成されることなく、入射した第2記録層で回折された1次回折光、特にメインビーム51の1次回折光をそのまま透過させて、TESを生成するための第3〜第8受光素子46c〜46hへ落射させないようにしている。これによって、本実施の形態の光ピックアップ装置は、前述の実施の第1形態の光ピックアップ装置40と同様の効果を得ることができる。
図5は、本発明の実施の第3形態である光ピックアップ装置に備わるホログラム素子43および光検出手段85の構成を示す図である。本実施の形態の光ピックアップ装置は、前述の実施の第1形態の光ピックアップ装置40と類似しているので、異なる部分についてのみ説明し、実施の第1形態と対応する部分には同一の参照符を付し、共通する説明を省略する。
本実施の形態の光ピックアップ装置は、前述の実施の第1形態の光検出手段46に代えて、別の光検出手段85を備えて構成される。本実施の形態の光検出手段85は、フォーカス位置情報を検出するための第1および第2受光素子85a,85bおよびトラック位置情報を検出するための第3〜第8受光素子85c〜85h以外の情報検出用受光素子85iをさらに含み、ホログラム素子43の第4および第5分割領域63,64が、対物レンズ45によって光が集光されている第1記録層とは異なる第2記録層によって反射されて回折される回折光のうちの1次回折光を、情報検出用受光素子85iに向けて回折する。
すなわち、情報検出用受光素子85iは、Z軸方向一方から見たとき、フォーカス位置情報を検出するための第1および第2受光素子85a,85bとホログラム素子43との間に、第1および第2受光素子85a,85bに対してY軸方向に並ぶようにして設けられ、第4および第5分割領域63,64によって回折された光が集光落射する第4落射点69に位置する。ただし、情報検出用受光素子85iの位置は、第1〜第8受光素子85a〜85h以外の位置であれば、上記例に限定されることはない。
本実施の形態では、第4および第5分割領域63,64で回折されて、情報検出用受光素子85iによって検出される信号をRF信号として利用する。したがって、第1〜第4受光素子85a〜85dおよび情報検出用受光素子85iによって検出される信号をそれぞれSa,Sb,Sc,Sd,Siとすると、RF信号は、式(5)によって与えられる。
RF=Sa+Sb+Sc+Sd+Si …(5)
これによって、本実施の形態の光ピックアップ装置は、前述の実施の第1形態の光ピックアップ装置40と同様の効果を得ることができるとともに、第4および第5分割領域63,64による回折光をRF信号として有効に利用できるので、品質の優れたRF信号を得ることができ、安定した情報再生を実現することができる。
図6は、本発明の実施の第4形態である光ピックアップ装置に備わるホログラム素子91および光検出手段85の構成を示す図である。本実施の形態の光ピックアップ装置は、前述の実施の第3形態の光ピックアップ装置と類似しているので、異なる部分についてのみ説明し、実施の第1形態と対応する部分には同一の参照符を付し、共通する説明を省略する。
本実施の形態の光ピックアップ装置は、前述の実施の第3形態のホログラム素子43に代えて、別のホログラム素子91を備えて構成される。本実施の形態のホログラム素子91は、対物レンズ45によって集光されている第1記録層とは異なる第2記録層によって回折される回折光のうち、0次回折光が入射する分割領域と、1次回折光が入射する分割領域とが同じ領域になるように形成される。すなわち、ホログラム素子91のホログラムパターンは、Z軸方向一方から見た外形が略円形に形成され、Y軸方向に略平行であって軸線αにも一致する直線である第1分割線92によって、半円形状の第1分割領域96と、残余の分割領域とに分割される。
残余の分割領域は、Y軸方向に平行、かつ第1分割線92からX軸方向に間隔G1をあけて形成される第2分割線93によって、第4分割領域96と、さらなる残余の分割領域とに分割される。第2分割線93は、その両端を結ぶ仮想分割線94よりも、前記さらなる残余の分割領域側に向って突出する弓形の曲線部分93aを有する。第4分割領域96は、第2分割線93の弓形の曲線部分93aによって、さらなる残余の分割領域へ突出する突出領域97を有するように形成される。
さらなる残余の分割領域は、前述の実施の第1〜第3形態と同様に、X軸方向に平行な第3分割線58によって、さらに第2分割領域61と第3分割領域62とに分割される。したがってホログラム素子91は、4つの分割領域、具体的には第1分割領域95、第2分割領域61、第3分割領域62および第4分割領域96を有するように形成される。
本実施形態のホログラム素子91は、前述の実施の第3形態のホログラム素子43における第4および第5分割領域63,64と、第1分割領域60の半円形の突出領域65とを合わせた形状の分割領域として、第4分割領域96を有する。
ホログラム素子91の第4分割領域96には、第2記録層で回折された0次回折光および1次回折光が入射する。第4分割領域96は、第2記録層で回折された0次回折光および1次回折光を光検出手段85の情報検出用受光素子85iに向けて回折し、落射させる。情報検出用受光素子85iで受光される光は、前述の実施の第3形態と同様に、RF信号に利用される。したがって、本実施の形態の光ピックアップ装置においても、第1〜第4受光素子85a〜85dおよび情報検出用受光素子85iによって検出される信号をそれぞれSa,Sb,Sc,Sd,Siとすると、RF信号は式(6)によって与えられる。
RF=Sa+Sb+Sc+Sd+Si …(6)
これによって本実施の形態の光ピックアップ装置は、前述の実施の第3形態の光ピックアップ装置と同様の効果を得ることができる。
図7は、本発明の実施の第5形態である光ピックアップ装置に備わるホログラム素子101の構成を示す図である。本実施の形態の光ピックアップ装置は、前述の実施の第1形態の光ピックアップ装置40と類似しているので、異なる部分についてのみ説明し、実施の第1形態と対応する部分には同一の参照符を付し、共通する説明を省略する。
本実施の形態では、記録媒体47は、たとえば厚み寸法が0.6mmのディスクを2枚はり合わせた2層記録構造を有するDVDである。2層の記録層のうち、対物レンズ45に近い側に位置する記録層を第1記録層47aと呼び、対物レンズ45から遠い側に位置する記録層を第2記録層47bと呼ぶ。
本実施の形態の光ピックアップ装置は、前述の第4形態のホログラム素子91に代えて、別のホログラム素子101を備えて構成される。本実施の形態のホログラム素子101は、光検出手段46と対物レンズ45との間の光経路上に設けられる。ホログラム素子101には、記録媒体47からの反射光を複数の光に分割するための複数の分割部が形成される。具体的に述べると、ホログラム素子101は、出射光の光軸54に垂直な方向に関する出射光の記録媒体47に対する集光位置の情報であるトラック位置情報の取得に用いるための光を分割するトラッキング用分割部と、出射光の光軸54に平行な方向に関する出射光の記録媒体47に対する集光位置の情報であるフォーカス位置情報の取得に用いるための光を分割するフォーカス用分割部とを有する。
以下に、図7を参照してホログラム素子101に形成される分割部について説明する。ホログラム素子101に複数の分割部を有するように形成されるホログラムパターン102は、Z軸方向一方から見た外形が円形である。
ホログラムパターン102は、まず、対物レンズ45が中立位置にある状態でホログラム素子101に入射される第1記録層(集光記録層)47aからの反射光103の光軸104を通り、ホログラム素子101上で記録媒体47のラジアル方向であるY軸方向に対して平行な一仮想直線105に平行で、かつ一仮想直線105からX軸方向一方に予め定める距離dだけ離隔して形成される第1分割線106によって、トラッキング用分割部107と残余の分割部とに分割される。
トラッキング用分割部107は、略1/2円から、前記光軸104を円中心とし、半径が前記距離dより大きくかつホログラムパターン102全体の半径よりも小さい半径rで形成される半円形の軸付近部108が除かれ、Z軸方向一方から見て、略1/2円の円環形状に形成される。このトラッキング用分割部107は、前記光軸104を通り、一仮想直線105に直交する方向、すなわちX軸方向に平行な第2分割線109によって、第1分割部111と第2分割部112とに2等分される。したがって、第1分割部111と第2分割部112とは、略1/4円相当の円環形状を有するように形成される。
前記半円形の軸付近部108は、一仮想直線105上に短半径が位置し、第2分割線109の延長線上に長半径が位置し、その長半径の長さ寸法がホログラムパターン102の半径寸法よりも小さい半楕円形を有する半楕円部115と、前記光軸104を含む一仮想直線105上で合体される。半円形の軸付近部108と、半楕円部115とが、一仮想直線105上で合体されて、前記残余の分割部内に第3分割部116が形成される。この第3分割部116は、フォーカス用分割部を構成し、前記光軸104をその内部に含むように形成される。
ホログラムパターン102の第1〜第3分割部111,112,116を除く残余の部分は、さらに、一仮想直線105に平行で、かつ一仮想直線105からX軸方向他方に予め定める距離dだけ離隔して形成される第3分割線118a,118bによって、もう一つのトラッキング用分割部119と、さらなる残余の部分とに分割される。前記もう一つのトラッキング用分割部119は、第2分割線109の延長線上に位置する第4分割線120によって、第4分割部121と第5分割部122とに2等分される。したがって、本実施の形態のホログラム素子101では、一仮想直線105を挟んで、そのX軸方向両側に、トラッキング用分割部107と、もう1つのトラッキング用分割部119との2つのトラッキング用分割部が形成される。
ホログラムパターン102には、第1〜第5分割部111,112,116,121,122を除くと、一仮想直線105を挟んでY軸方向に延び、Z軸方向一方から見た形状が略長方形の2つの分割部が残される。前記略長方形の2つの分割部のうち、第1分割部111と第3分割部116と第5分割部122とによって囲まれる分割部を第7分割部126とし、第2分割部112と第3分割部116と第4分割部121とによって囲まれる分割部を第6分割部125とする。したがって、円形のホログラムパターン102を構成する各分割部は、第1分割部111、第2分割部112、第6分割部125、第4分割部121、第5分割部122および第7分割部126が、時計まわりにこの順序で配置され、中央部分に第3分割部116が配置される。
第1〜第7分割部111,112,116,121,122,125,126には、複数の溝がそれぞれ形成される。これらの溝は、ホログラムパターン102の回折効率および光検出手段46の配置などに基づいて、深さおよび間隔が設定される。
図8は、ホログラムパターン102によって分割された光が光検出手段46へ入射する概要を示す図である。記録媒体47の集光記録層である第1記録層47aによって反射され、ホログラム素子101に入射した反射光103は、第1〜第7分割部111,112,116,121,122,125,126によって分割され、第1〜第5分割部111,112,116,121,122によって回折された光が光検出手段46に導かれる。本実施の形態の光分割手段46は、第1および第2受光素子46a,46bを含む第1受光部46A、第4,第6,第8受光素子46d,46f,46hを含む第2受光部46B、ならびに第3,第5,第7受光素子46c,46e,46gを含む第3受光部46Cを有する。
フォーカス用分割部である第3分割部116で回折された光は、第1受光部46Aの第1および第2受光素子46a,46bによって受光される。トラッキング用分割部である第1分割部111および第5分割部122で回折された光は、第2受光部46Bによって受光される。トラッキング用分割部である第2分割部112および第4分割部121で回折された光は、第3受光部46Cによって受光される。
第6および第7分割部125,126で回折された光は、光検出手段46によって受光されない位置、すなわち受光素子が存在しない位置に落射する。このように本実施の形態のホログラム素子101は、一仮想直線105上に形成される分割部であって、入射する光をトラック位置情報の取得に用いるための光を受光する受光素子およびフォーカス位置情報の取得に用いるための光を受光する受光素子のいずれに向けても回折しない第6および第7分割部125,126を有する。
第3分割部116によって回折された反射光は、FESを検出するための第1受光部46Aに導かれ、第1および第2受光素子46a,46bの両方、またはいずれか一方の受光素子によってFESが検出される。対物レンズ45による集光位置の光軸方向に関する位置情報であるFESは、ナイフエッジ法によって取得される。ナイフエッジ法では、第1および第2受光素子46a,46bが受光したそれぞれの光強度の差を取ることによって、FESを得ることができる。具体的には、第1および第2受光素子46a,46bによって検出される光強度をそれぞれIa,Ibとすると、FESは式(7)によって与えられる。
FES=Ia−Ib …(7)
本実施の形態におけるホログラム素子101と光検出手段46との配置では、光源41から出射された光が記録媒体47よりも手前(ニア側)で焦点を結んでいるとき、記録媒体47からの反射光は第1受光部46Aの手前で焦点を結ぶので、第2受光素子46bで受光する光強度Ibは、第1受光素子46aで受光する光強度Iaよりも大きくなり、FESは負の符号となる。
これに対して記録媒体47に関して対物レンズ45の反対側である奥側(ファー側)に仮想焦点を結ぶ場合、記録媒体47からの反射光は第1受光部46Aよりも遠い位置で合焦点となるので、第1受光素子46aで受光する光強度Iaは、第2受光素子46bで受光する光強度Ibよりも大きくなり、FESは正の符号となる。
ホログラムパターン102の第1分割部111および第5分割部122で回折された反射光のうち、メインビーム51による反射光は、第2受光部46Bの第4受光素子46dによって受光される。また第1サブビーム52と第2サブビーム53による反射光は、第2受光部46Bの第8および第6受光素子46h,46fによってそれぞれ受光される。
ホログラムパターン102の第2分割部112および第4分割部121で回折された反射光のうち、メインビーム51による反射光は、第3受光部46Cの第3受光素子46cによって受光される。また第1サブビーム52と第2サブビーム53による反射光は、第3受光部46Cの第7および第5受光素子46g,46eによってそれぞれ受光される。
トラック位置情報は、第2および第3受光部46B,46Cによる各受光結果に基づいて、たとえばDPD法に従って検出される。前記DPD法では、第3受光部46Cのうち、メインビーム51の反射光を受光した第3受光素子46cによる光強度Icと、第2受光部46Bのうち、メインビーム51の反射光を受光した第4受光素子46dによる光強度Idとの位相差によって検出される。すなわち、DPD法によるTESを表すI(DPD)は、式(8)によって与えられる。式(2)中で、phはそれぞれの光強度の位相差を取ることを意味する。
I(DPD)=ph(Ic−Id) …(8)
記録媒体47上に形成されたピットが、光ビームのどの位置を通過するかによって発生する位相差が変化する。光ビームのちょうど中央を通過する場合、その位相差は0となる。また、トラック位置情報を示すTESは、前述のDPD法の代わりに、DPP法によって検出されてもよい。DPP法では、TESが第2および第3受光部46B,46Cによる各受光結果によって検出される。
第3〜第8受光素子46c〜46hによって検出される光強度をそれぞれIc,Id,Ie,If,Ig,Ihとすると、DPP法によるTESを表すI(DPP)は、式(9)によって与えられる。
I(DPP)=(Ic−Id)−k×((Ig−Ih)+(Ie−If))
…(9)
式(9)の第1項の(Ic−Id)は、メインビーム51のプッシュプル信号であり、第2項の(Ig−Ih)および(Ie−If)は、それぞれ±1次回折光の第1および第2サブビーム52,53のプッシュプル信号である。TESに現れる対物レンズシフトによるオフセットをキャンセルするように、第1および第2サブビーム52,53のプッシュプル信号である(Ig−Ih)および(Ie−If)の位相と、メインビーム51のプッシュプル信号である(Ic−Id)の位相とが180度異なるように、3ビームの位置が記録媒体47のトラック上に配置される。
前記式(3)における係数kは、0次回折光であるメインビーム51と、+1次回折光である第1サブビーム52および−1次回折光である第2サブビーム53との光強度の違いを補正するためのものであり、強度比が、0次回折光:+1次回折光:−1次回折光=a:b:bならば、係数k=a/(2b)である。
情報の再生信号であるRF信号を表すI(RF)は、式(10)によって与えられる。
I(RF)=Ic+Id+Ia+Ib …(10)
図9は、ホログラムパターン102に迷光が入射する状態を示す図である。図9では、第1記録層47aに情報を記録、または第1記録層47aに記録されている情報を再生する場合について、ホログラムパターン102における一仮想直線105と第1分割線106との間隔距離dと、第2記録層47bによって回折される回折光である迷光の関係を表す。
ここで、前記間隔距離dは、第1記録層47aに情報を記録、または第1記録層47aに記録されている情報を再生するとき、第2記録層47bからの迷光である±1次回折光スポット130,131を、一仮想直線105と第1分割線106との間に可能な限り含むことができるような値に設定する。このことを、本実施の形態において換言すれば、第6および第7分割部125,126のX軸方向の幅寸法である2dを、第2記録層47bからの迷光である±1次回折光スポット130,131が、第6および第7分割部125,126に可能な限り含まれるような値に設定する。
しかし、前記間隔距離dを大きくすると、ホログラムパターン102のトラッキング用分割部107である第1および第2分割部111,112に含まれる信号光のプッシュプル成分が減少するので、TESの特性が悪くなる。そこで本実施の形態のホログラム素子101では、一仮想直線105を挟んでトラッキング用分割部107の反対側に、もう一つのトラッキング用分割部119である第4および第5分割部121,122を形成している。
第4および第5分割部121,122に入射する光を、トラック位置情報に関する信号を検出する第2および第3受光部46B,46Cへ落射させ、第1および第2分割部111,112に入射する光と合わせてTESを生成することによって、TES強度、特にサブビームの光強度を増加させ、TES特性を向上させることができる。
第2記録層47bによって回折される回折光である迷光のうち、0次回折光スポット132は、ホログラムパターン102の中央付近部、すなわち対物レンズ45が中立位置にある状態で、第1記録層47aによって反射される反射光103がホログラムパターン102に入射する光軸104付近に合焦状態に近い形状で入射する。第1記録層47aと第2記録層47bとの層間隔が変化したとき、この0次回折光スポット132の直径寸法も変化するが、光軸104を中心とした半円形の軸付近部108の半径rと、半楕円部115の長半径とは、層間隔が規格値に対して±15μm程度変化したときのスポットをも含むことができるような寸法に形成される。
このようにホログラムパターン102の分割領域を形成することによって、第1記録層47aに情報を記録、または第1記録層47に記録されている情報を再生する場合、第2記録層47bからの迷光のうち、TES生成用のトラッキング用分割部107およびもう一つのトラッキング用分割部119に入射する迷光成分を低減できるので、安定したトラッキングサーボを行うことができる。
また、ホログラム素子101は、ホログラム素子101に入射する光の偏光方向に応じて回折効率が異なるように構成されてもよい。これによって、たとえばホログラム素子101と記録媒体47との間に1/4波長板を配置し、光源41から出射した光の偏光方向と記録媒体47によって反射された反射光の偏光方向とを、90度回転させることによって、光源41からの出射光に対してはホログラム素子101をほぼ透過させ、記録媒体47からの反射光に対してのみ回折光を発生させることができる。ホログラム素子101に、前述のような偏光特性を持たせることによって、光の利用効率が増大するので、記録媒体47に対する高速記録も可能となる。
図10は、本発明の実施の第6形態である光ピックアップ装置に備わるホログラム素子135の構成を示す図である。本実施の形態の光ピックアップ装置は、前述の実施の第5形態の光ピックアップ装置と類似しているので、異なる部分についてのみ説明し、実施の第5形態と対応する部分には同一の参照符を付し、共通する説明を省略する。
本実施の形態の光ピックアップ装置は、前述の実施の第5形態のホログラム素子101に代えて、別のホログラム素子135を備えて構成される。前述の実施の第5形態のホログラム素子101では、第3分割部116と第6および第7分割部125,126とに分かれていた3つの分割部が、本実施の形態のホログラム素子135のホログラムパターン136では、前記3つの分割部が合体されて1つの結合第3分割部137を有するように構成される。
結合第3分割部137は、フォーカス用分割部として、入射する光をFES生成のための光を受光する第1受光部46Aに向けて回折する。結合第3分割部137は、前述の実施の第5形態における第6および第7分割部125,126に相当する領域に入射する光をも第1受光部46Aに向けて回折し落射させることができる。したがって、第1受光部46Aが受光する光量、すなわちRFおよびFES生成に利用できる光量を増大することが可能であり、光の有効活用を実現することができる。
また第2記録層47bで回折された0次回折光スポット132および±1次回折光スポット130,131は、いずれも結合第3分割部137へ入射し、第1受光部46Aに落射される。しかし、0次回折光スポット132および±1次回折光スポット130,131の第1受光部46Aへの落射スポットは、非常にぼけたものとなり、迷光として入射する光強度分布が拡散されるとともに、第1記録層47aからの反射光に対して光量が充分に小さく、またFESは、第1受光素子46aと第2受光素子46bとの差動を取るので、双方に照射される場合は、打消し合ってノイズとなりにくく、特に問題となることはない。
図11は、本発明の実施の第7形態である光ピックアップ装置に備わるホログラム素子140の構成を示す図である。本実施の形態の光ピックアップ装置は、前述の実施の第5形態の光ピックアップ装置と類似しているので、異なる部分についてのみ説明し、実施の第5形態と対応する部分には同一の参照符を付し、共通する説明を省略する。
本実施の形態の光ピックアップ装置は、前述の実施の第5形態のホログラム素子101に代えて、別のホログラム素子140を備えて構成される。本実施の形態のホログラム素子140は、半円形の軸付近部108に合体して第3分割部142を構成する部分(以下「合体部」という)145が、半楕円形に代えて、略長方形に形成される。すなわち、合体部145は、一仮想直線105からホログラムパターン141の外周部分までX軸方向に平行に延びて第4および第5分割部143,144との境界をそれぞれ隔する第5および第6分割線146,147と、一仮想直線105と、ホログラムパターン136の外周部分とによって囲まれる略長方形の領域として形成される。
したがって、第4分割部143は、第3分割線118bと第5分割線146とホログラムパターン141の外周部分とによって囲まれる扇形の領域として形成され、第5分割部144は、第3分割線118aと第6分割線147とホログラムパターン141の外周部分とによって囲まれる扇形の領域として形成される。このように構成されるホログラム素子140を備える本実施の形態の光ピックアップ装置では、第2記録層47bからの迷光成分を除去することに関して、前述の実施の第5形態の光ピックアップ装置と同様の効果を得ることができる。
図12は、本発明の実施の第8形態である光ピックアップ装置に備わるホログラム素子150の構成を示す図である。本実施の形態の光ピックアップ装置は、前述の実施の第5形態の光ピックアップ装置と類似しているので、異なる部分についてのみ説明し、実施の第5形態と対応する部分には同一の参照符を付し、共通する説明を省略する。
本実施の形態の光ピックアップ装置は、前述の実施の第7形態のホログラム素子140に代えて、別のホログラム素子150を備えて構成される。前述の実施の第7形態のホログラム素子140では、第3分割部142と第6および第7分割部125,126とに分かれていた3つの分割部が、本実施の形態のホログラム素子150のホログラムパターン151では、前記3つの分割部が合体されて1つの結合第3分割部152を有するように構成される。
このように構成されるホログラム素子150を備える本実施の形態の光ピックアップ装置では、前述の実施の第6形態の光ピックアップ装置と同様の効果を得ることができる。
図13は、本発明の実施の第9形態である光ピックアップ装置に備わるホログラム素子155の構成を示す図である。本実施の形態の光ピックアップ装置は、前述の実施の第5形態の光ピックアップ装置と類似しているので、異なる部分についてのみ説明し、実施の第5形態と対応する部分には同一の参照符を付し、共通する説明を省略する。
本実施の形態の光ピックアップ装置は、前述の実施の第5形態のホログラム素子101に代えて、別のホログラム素子155を備えて構成される。
本実施の形態のホログラム素子155では、メインビーム51の±1次回折光または、第1および第2サブビーム52,53の±1次回折光が、TESの取得に用いるための光を受光する第2および第3受光部46B,46Cに向けて回折しない第6および第7分割領域125,126へ入射するように構成されている。前記第6分割領域125を形成する第3分割線118aおよび第1分割線106は、いずれもY軸方向に平行であり、一仮想直線105からX軸方向に予め定める間隔距離d1だけ離隔して形成されている。また前記第7分割領域126を形成する第3分割線118bおよび第1分割線106は、いずれもY軸方向に平行であり、一仮想直線105からX軸方向に予め定める間隔距離d1だけ離隔して形成されている。
すなわち、本実施の形態のホログラム素子155では、ホログラムパターン156における第6および第7分割部125,126のX軸方向の寸法を定める一仮想直線105と第1分割線106との間隔距離d1が、前述の実施の第5形態のホログラム素子101における一仮想直線105と第1分割線106との間隔距離dよりも大きく設定される。第6および第7分割部125,126のX軸方向の長さ寸法は、2×d1(以下「2d1」という)となる。
すなわち、ホログラム素子155において、第6および第7分割部125,126のX軸方向の長さ寸法2d1は、第2記録層47bで回折されたメインビーム51と第1および第2サブビーム52,53との両方の迷光成分の入射光スポットを包含することができる寸法に設定される。
対物レンズ45が中立位置にあるとき、ホログラムパターン156上では、第1記録層47aからの反射光のうち、メインビーム51の反射光スポット103がホログラムパターン156のほぼ中央でかつ一仮想直線105上に光軸が位置するように入射し、また第1および第2サブビーム52,53の反射光スポット103a,103bが、メインビーム51の反射光スポット103に一部重なり、かつメインビームの反射光スポット103に対してX軸方向両側にそれぞれ少しずれた位置に入射する。
第2記録層47bで回折された0次回折光は、メインビーム51の0次回折光スポット132が第3分割部116の軸付近部108へ入射し、第1および第2サブビーム52,53の0次回折光スポット132a,132bが、メインビーム51の0次回折光スポット132に一部重なり、かつメインビーム51の0次回折光スポット132に対してX軸方向両側にそれぞれ少しずれた位置に入射する。第3分割部116は、メインビーム51の0次回折光スポット132、ならびに第1および第2サブビーム52,53の0次回折光スポット132a,132bのすべてを包含することができる大きさに設定される。
第2記録層47bで回折された±1次回折光は、第6分割部125においては、メインビーム51の+1次回折光スポット130が一仮想直線105上へ入射し、第1および第2サブビーム52,53の+1次回折光スポット130a,130bが、メインビーム51の+1次回折光スポット130に対してX軸方向両側にそれぞれ少しずれた位置に入射する。第7分割部126においては、メインビーム51の−1次回折光スポット131が一仮想直線105上へ入射し、第1および第2サブビーム52,53の−1次回折光スポット131a,131bが、メインビーム51の−1次回折光スポット131に対してX軸方向両側にそれぞれ少しずれた位置に入射する。
第6および第7分割部125,126のX軸方向の長さ寸法2d1は、メインビーム51の+1次回折光スポット130、第1および第2サブビーム52,53の+1次回折光スポット130a,130b、メインビーム51の−1次回折光スポット131、ならびに第1および第2サブビーム52,53の−1次回折光スポット131a,131bのすべてをそれぞれ包含することができる寸法に設定される。
前述のようにホログラム素子155は、第2記録層47bによって回折されるメインビーム51ならびに第1および第2サブビーム52,53の±1次回折光を、トラック位置情報の取得に用いるための光を受光する第2および第3受光部46B,46C、ならびにフォーカス位置情報の取得に用いるための光を受光する第1受光部46Aのいずれに向けても回折しない第6および第7分割部125,126へ入射させる。
したがって、第2記録層47bからの反射光に起因するいわゆる迷光が、TES生成用受光素子およびFES生成用受光素子のいずれにも落射しないようにすることができる。これによって、TESおよびFESに迷光ノイズが入ることを防止することができ、安定してTESおよびFESを生成できる。
図14は、本発明の実施の第10形態である光ピックアップ装置に備わるホログラム素子160の構成を示す図である。本実施の形態の光ピックアップ装置は、前述の実施の第9形態の光ピックアップ装置と類似しているので、異なる部分についてのみ説明し、実施の第9形態と対応する部分には同一の参照符を付し、共通する説明を省略する。
本実施の形態の光ピックアップ装置は、前述の実施の第9形態のホログラム素子155に代えて、別のホログラム素子160を備えて構成される。
前述のように実施の第9の形態のホログラム素子155では、第6および第7分割部125,126を形成する第3分割線118a,118bおよび第1分割線106が、いずれもY軸方向に平行である場合のホログラム素子155について述べたが、前記第3分割線118a,118bおよび第1分割線106は、必ずしもY軸方向に平行である必要はない。
本実施の形態のホログラム素子160では、第3分割線118aと第1分割線106aとが、Y軸方向一方、換言すればY軸方向においてメインビーム51の反射光スポット103から遠ざかる方向に向かうにつれて、互いに近接するように傾斜している。第3分割線118aと第1分割線106aとを前述のように規定したとき、第1分割部111と第3分割部116と第5分割部122とによって囲まれ、Y軸方向一方に向かうに従って先細状に形成される分割部は、第7分割部126となる。
また本実施の形態のホログラム素子160では、第3分割線118bと第1分割線106bとが、Y軸方向他方、換言すればY軸方向においてメインビーム51の反射光スポット103から遠ざかる方向に向かうにつれて、互いに近接するように傾斜している。第3分割線118bと第1分割線106bとを前述のように規定したとき、第2分割部112と第3分割部116と第4分割部121とによって囲まれ、Y軸方向他方に向かうに従って先細状に形成される分割部は、第6分割部125となる。
このようなホログラム素子160を備える本実施の形態の光ピックアップ装置は、ホログラム素子155を備える前述の実施の第9形態の光ピックアップ装置と同様の効果を得ることができる。
前述の実施の各形態は、本発明の例示に過ぎず、発明の範囲内において構成を変更することができる。たとえば前述の実施の各形態では、記録媒体47が2つの記録層を有する場合の光ピックアップ装置の構成について述べたけれども、記録媒体47が3層以上の記録層を有する場合であっても、前述の実施の各形態と同様の効果を得ることができる。