JP2008019467A - クロメート処理後の表面品質が優れた缶蓋用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】クロメート処理を施す缶蓋用Al合金板として、クロメート処理後にムラ等の発生がなく、耳率も良好なものを提供する。
【解決手段】Mg2.0〜5.0、Mn0.1〜0.3%、Si0.01〜0.2%、Fe0.1〜0.5%、Ti0.005〜0.02%、B0.001〜0.01%、残部Alよりなり、板表面層において圧延方向に直角方向のサイズが5〜35μmの結晶粒の総面積が、板面積の60%以上を占めるAl合金板。熱間圧延板として、表面層の結晶粒サイズ条件が前記条件を満たし、表面のキューブ方位結晶粒が板面積の30%以上を占める。460〜530℃×0.5〜15時間の均質化処理後、熱間粗圧延において、(N-2)番目のパスからN番目のパスまでの平均圧延率を25〜50%、1番目のパスから、(N-3)番目のパスまでの平均圧延率が5〜13%、粗圧延終了直後の材料温度を280〜350℃とし、総圧下率87〜93%、圧延終了後の材料温度310〜340℃で圧延する。
【選択図】なし
【解決手段】Mg2.0〜5.0、Mn0.1〜0.3%、Si0.01〜0.2%、Fe0.1〜0.5%、Ti0.005〜0.02%、B0.001〜0.01%、残部Alよりなり、板表面層において圧延方向に直角方向のサイズが5〜35μmの結晶粒の総面積が、板面積の60%以上を占めるAl合金板。熱間圧延板として、表面層の結晶粒サイズ条件が前記条件を満たし、表面のキューブ方位結晶粒が板面積の30%以上を占める。460〜530℃×0.5〜15時間の均質化処理後、熱間粗圧延において、(N-2)番目のパスからN番目のパスまでの平均圧延率を25〜50%、1番目のパスから、(N-3)番目のパスまでの平均圧延率が5〜13%、粗圧延終了直後の材料温度を280〜350℃とし、総圧下率87〜93%、圧延終了後の材料温度310〜340℃で圧延する。
【選択図】なし
Description
この発明は飲料缶等の各種の缶における缶蓋材として使用されるアルミニウム合金板およびその製造方法に関するものであり、特に表面に化成処理としてクロメート処理を施して使用される缶蓋用アルミニウム合金板およびその製造方法に関するものである。
コーヒーや茶、果汁、ミネラルウォーターやノンアルコール炭酸飲料、またビールや酎ハイ等のアルコール飲料に使用される缶は、アルミニウム製もしくはスティール製の1ピースもしくは2ピースの缶胴に対して、アルミニウム合金製の缶蓋を巻締めすることによって作られるのが通常である。この種のアルミニウム合金製缶蓋材としては、一般に耐食性付与のためにアクリル系樹脂などの透明塗料により塗装されるのが通常であり、またその場合、アルミニウム合金板と塗料との密着性を高めると同時に、アルミニウム合金素地の耐食性を向上させ、しかも目視的に落ち着いた梨地状表面外観を与えるため、塗装前に化成処理としてクロメート処理を施して、表面に薄い化成皮膜(クロメート処理皮膜)を形成し、その後に主として透明塗料により塗装を施すことが多い。
ところでアルミニウム合金板に対するクロメート処理時においては、クロメート処理液中に含まれるフッ酸によりアルミニウム素地表面がエッチングされるが、アルミニウム合金板の表面層の材料組織が均一でなければ、エッチングにムラが生じたり、不均一な厚さのクロメート皮膜が形成されてしまう。そのような状態でクロメート処理された板材を観察すれば、表面にムラ等の模様が残存してしまい、その後に透明塗料で塗装した後の缶蓋としても表面にムラ等の模様が目視され、缶蓋としての商品価値(外観品質)を損なってしまう。
また一方、缶蓋用アルミニウム合金板には、缶蓋として成形された後の耳率が良好であることが必要とされる。耳率が悪ければ、成形された缶蓋体のカール部の高さ(カールハイト)が円周方向において均一とはならず、そのため缶胴体との勘合の際に、部分的にカールハイトの高い箇所で缶胴体と点接触して、巻締部が均一に勘合されないという不具合が生じてしまう。そのため缶蓋用アルミニウム合金板には、できるだけ耳率の低いことが要求されている。
以上のようなアルミニウム合金製蓋材におけるクロメート処理後の表面のムラ等の発生の問題、および耳率低減の要求のうち、耳率に関しては従来から既に種々検討、提案がなされていて、ある程度要求を満たし得るようになっているが、クロメート処理後の表面のムラ等に起因する外観不良の問題については、未だ充分な解決が図られていないのが実情である。
ここで、アルミニウム合金板に対するエッチング(粗面化処理)等の表面処理後の表面のムラ等の発生の問題の解決策としては、この発明で対象とする缶蓋の用途とは異なる用途の平版印刷版用アルミニウム合金板に関して、特許文献1あるいは特許文献2に示されるような提案がなされている。これらの特許文献1、2の提案は、いずれも熱間圧延工程における工程条件を厳密に規制することにより、熱間圧延上がり板の組織を最適化し、最終的に冷間圧延後の板についても、粗面化処理によってムラ(ストリークス)等が生じないようにしている。
前述のようにクロメート処理を施して使用されるアルミニウム合金製缶蓋材における表面のムラ等の外観不良の問題については、従来は充分な解決がなされていなかった。一方、平版印刷版用アルミニウム合金板の用途で提案されている特許文献1、2の方法では、缶蓋材としては不適切な純アルミニウム系(JIS 1000番系)のアルミニウム合金を対象としている。缶蓋用アルミニウム合金板としては、平版印刷版用アルミニウム合金板よりも高い強度が要求されるのが通常であり、そこで強度向上に有効なMgを添加したAl−Mg系合金を用いることが多いが、特許文献1、2に示される方法がAl−Mg系合金についても有効であるとは限らず、そのため特許文献1、2に示される方法をAl−Mg系合金からなる缶蓋用アルミニウム合金板にそのまま転用するは困難と考えられる。
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、クロメート処理を施して使用するAl−Mg系合金からなる缶蓋用アルミニウム合金板として、クロメート処理後の表面にムラ等の模様が生じて缶蓋としての外観品質を損なうようなことがなく、しかも耳率も低いアルミニウム合金板を提供することを目的とするものである。
本発明者等は、前述の課題を解決するべく、缶蓋用アルミニウム合金板について種々実験・検討を重ねた結果、その合金成分組成を適切に調整すると同時に、熱間圧延の条件、特に熱間粗圧延の条件を適切に制御することによって、熱間圧延上がり板の金属組織、ひいては製品板の金属組織を適切に制御すれば、クロメート処理後の表面にムラ等の模様の発生がなくかつ耳率も安定して低い缶蓋用アルミニウム合金板が得られることを見出し、この発明をなすに至ったのである。
具体的には、請求項1の発明は、表面にクロメート処理を施して使用される缶蓋用アルミニウム合金板において、Mg2.0〜5.0、Mn0.1〜0.3%、Si0.01〜0.2%、Fe0.1〜0.5%、Ti0.005〜0.02%、B0.001〜0.01%、残部Alおよび不可避的不純物よりなり、板表面における圧延方向に対して直角な方向の結晶粒サイズが5〜35μmの範囲にある結晶粒の総面積が、板面の面積の60%以上を占めることを特徴とするものである。
また請求項2の発明は、表面にクロメート処理を施して使用される缶蓋用アルミニウム合金板向けの熱間圧延板において、Mg2.0〜5.0、Mn0.1〜0.3%、Si0.01〜0.2%、Fe0.1〜0.5%、Ti0.005〜0.02%、B0.001〜0.01%、残部Alおよび不可避的不純物よりなり、板表面層における圧延方向に対して直角な方向の結晶粒サイズが5〜35μmの範囲内にある結晶粒の総面積が、板面の面積の60%以上を占め、かつ板表面におけるキューブ方位結晶粒が、板面の面積の30%以上を占めることを特徴とするものである。
さらに請求項3の発明は、表面にクロメート処理を施して使用される缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法において、Mg2.0〜5.0、Mn0.1〜0.3%、Si0.01〜0.2%、Fe0.1〜0.5%、Ti0.005〜0.02%、B0.001〜0.01%、残部Alおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金の鋳塊に対して均質化処理後、熱間圧延を行なうにあたり、熱間圧延上がり板の状態で、板表面層における圧延方向に対し直角な方向の結晶粒サイズが5〜35μmの範囲内にある結晶粒の総面積が、板面の面積の60%以上を占め、かつ板表面におけるキューブ方位結晶粒が、板面の面積の30%以上を占めるように熱間圧延を行ない、その後、再結晶のための焼鈍を施すことなく所定の製品板厚まで冷間圧延することを特徴とするものである。
また請求項4の発明は、請求項3に記載の缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法において、前記成分組成の鋳塊に対して均質化処理を行なうにあたり、460〜530℃の範囲内の温度で0.5〜15時間保持の条件で均質化処理を施し、その後に熱間粗圧延と熱間仕上圧延とからなる熱間圧延を施すにあたって、熱間粗圧延では、粗圧延最終パスから遡って2パス目のパスから粗圧延最終パスまでの合計3パスにおける平均圧延率が25〜50%の範囲内となり、かつ粗圧延の最初のパスから、粗圧延最終パスから遡って3パス目のパスまでの複数のパスにおける平均圧延率が5〜13%の範囲内となり、しかも粗圧延終了直後の材料温度が280〜350℃の範囲内となるように粗圧延を行ない、引続く熱間仕上圧延では、総圧下率が87〜93%の範囲内、圧延終了後の材料温度が310〜340℃の範囲内となるように仕上圧延を行なうことを特徴とするものである。
請求項1の発明の缶蓋用アルミニウム合金板によれば、クロメート処理後の表面にムラ等の模様が発生するおそれがなく、そのためクロメート処理後、透明塗料で塗装して使用される缶蓋として、その外観品質が優れ、また耳率も安定して低いところから、缶胴と巻締めるに際しても不都合が発生するおそれが少なく、したがって缶蓋材として優れたものを提供することができる。
また請求項2の発明の熱間圧延板は、缶蓋用アルミニウム合金板向けの材料として用いて、最終的に前述のように優れた性能を有する缶蓋用アルミニウム合金板を得ることができる。
さらに請求項3、請求項4の発明の缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法によれば、前述のようにクロメート処理後の外観品質が優れかつ耳率も安定して低い缶蓋用アルミニウム合金板を、量産規模で確実かつ安定して製造することができる。
先ずこの発明で規定している合金成分の作用および範囲限定の理由を述べる。
Mg:
Mgは、缶蓋材として必要な強度を与えるために必須であるばかりでなく、材料中に固溶して、加工時における材料中の転位駆動を容易にさせる機能を果たし、そのためMgの添加により材料全体にわたって均一に歪みを付与することが可能となって、熱間加工後の再結晶が容易となり、しかも再結晶後の結晶粒サイズを細かくすることができる。Mg量が2.0%未満では、これらの効果が不充分となって、熱間圧延後に再結晶化が阻害されたり、粗大結晶粒を生じさせてしまう。一方、Mg量が5.0%を越えれば、冷間圧延時に発達する集合組織が合金型に移行する影響により、缶蓋の耳が圧延方向に対して45°方向が発達し、結果的に製品板の耳率が悪くなってしまう。したがってMg量は2.0〜5.0%の範囲内とした。
Mgは、缶蓋材として必要な強度を与えるために必須であるばかりでなく、材料中に固溶して、加工時における材料中の転位駆動を容易にさせる機能を果たし、そのためMgの添加により材料全体にわたって均一に歪みを付与することが可能となって、熱間加工後の再結晶が容易となり、しかも再結晶後の結晶粒サイズを細かくすることができる。Mg量が2.0%未満では、これらの効果が不充分となって、熱間圧延後に再結晶化が阻害されたり、粗大結晶粒を生じさせてしまう。一方、Mg量が5.0%を越えれば、冷間圧延時に発達する集合組織が合金型に移行する影響により、缶蓋の耳が圧延方向に対して45°方向が発達し、結果的に製品板の耳率が悪くなってしまう。したがってMg量は2.0〜5.0%の範囲内とした。
Mn:
Mnは、Al−Mn−Fe系の第2相粒子の形成に影響を及ぼし、その結果再結晶状態および製品板の耳率に影響を及ぼす。Mn量が0.1%未満では、第2相粒子の分布密度が少なすぎるために、アルミニウム合金板の集合組織に影響を及ぼし、耳率が0−90°方向に発達してしまう。一方Mn量が0.5%を越えれば、第2相粒子が密に発生してしまうため、熱間圧延後の均一な再結晶化を阻害させてしまう。そこでMn量は0.1〜0.5%の範囲内とした。
Mnは、Al−Mn−Fe系の第2相粒子の形成に影響を及ぼし、その結果再結晶状態および製品板の耳率に影響を及ぼす。Mn量が0.1%未満では、第2相粒子の分布密度が少なすぎるために、アルミニウム合金板の集合組織に影響を及ぼし、耳率が0−90°方向に発達してしまう。一方Mn量が0.5%を越えれば、第2相粒子が密に発生してしまうため、熱間圧延後の均一な再結晶化を阻害させてしまう。そこでMn量は0.1〜0.5%の範囲内とした。
Si:
Siはアルミニウム地金中に不可避的に存在する不純物元素であるが、このSiは、Al(Fe、Mn)Si系化合物(α相)、Mg2Si等の第2相粒子の形成を通じて再結晶状態に影響を及ぼす。Si量が0.3%を越えれば、粗大な第2相粒子が発生してしまい、熱間圧延における均一な再結晶化を阻害させる。一方Si量が0.01%未満であれば、地金の精錬による過度なコストアップを招くため好ましくない。したがってSi量は0.01〜0.3%の範囲内とした。
Siはアルミニウム地金中に不可避的に存在する不純物元素であるが、このSiは、Al(Fe、Mn)Si系化合物(α相)、Mg2Si等の第2相粒子の形成を通じて再結晶状態に影響を及ぼす。Si量が0.3%を越えれば、粗大な第2相粒子が発生してしまい、熱間圧延における均一な再結晶化を阻害させる。一方Si量が0.01%未満であれば、地金の精錬による過度なコストアップを招くため好ましくない。したがってSi量は0.01〜0.3%の範囲内とした。
Fe:
FeもSiと同様にアルミニウム地金中に不可避的に存在する不可避的不純物元素であるが、このFeは、Mnと同様にAl−Mn−Fe系の第2相粒子の形成を通じて再結晶状態に影響を及ぼす。Fe量が0.5%を越えれば、第2相粒子の発生密度が高まってしまい、アルミニウム材料の均一な再結晶化を阻害させてしまう。一方Fe量が0.1%未満では、地金の精錬による過度なコストアップを招くため好ましくない。したがってFe量は0.1〜0.5%の範囲内とした。
FeもSiと同様にアルミニウム地金中に不可避的に存在する不可避的不純物元素であるが、このFeは、Mnと同様にAl−Mn−Fe系の第2相粒子の形成を通じて再結晶状態に影響を及ぼす。Fe量が0.5%を越えれば、第2相粒子の発生密度が高まってしまい、アルミニウム材料の均一な再結晶化を阻害させてしまう。一方Fe量が0.1%未満では、地金の精錬による過度なコストアップを招くため好ましくない。したがってFe量は0.1〜0.5%の範囲内とした。
Ti:
Tiは鋳造組織の結晶粒微細化に有効な元素であり、Ti添加により粗大結晶粒に起因するアルミニウム合金圧延板表面のスジ模様発生防止に有効となる。Ti量が0.005%未満では、その効果が充分に得られず、一方Ti量が0.02%を越えれば、微細化効果が飽和するばかりでなく、逆にAl−Ti系の金属間化合物が密に形成してしまい、均一な組織形成を阻害させてしまう。そこでTi量は0.005〜0.02%の範囲内とした。
Tiは鋳造組織の結晶粒微細化に有効な元素であり、Ti添加により粗大結晶粒に起因するアルミニウム合金圧延板表面のスジ模様発生防止に有効となる。Ti量が0.005%未満では、その効果が充分に得られず、一方Ti量が0.02%を越えれば、微細化効果が飽和するばかりでなく、逆にAl−Ti系の金属間化合物が密に形成してしまい、均一な組織形成を阻害させてしまう。そこでTi量は0.005〜0.02%の範囲内とした。
B:
Bは、Tiとともに添加されることにより、鋳造組織の結晶粒微細化に有効である。B量が0.001%未満では、その効果が充分でなく、一方B量が0.01%を越えれば、微細化効果が飽和するばかりでなく、逆にTi−B系の金属間化合物が密に形成してしまい、均一な組織形成を阻害させてしまう。そこでB量は0.005〜0.02%の範囲内とした。
Bは、Tiとともに添加されることにより、鋳造組織の結晶粒微細化に有効である。B量が0.001%未満では、その効果が充分でなく、一方B量が0.01%を越えれば、微細化効果が飽和するばかりでなく、逆にTi−B系の金属間化合物が密に形成してしまい、均一な組織形成を阻害させてしまう。そこでB量は0.005〜0.02%の範囲内とした。
以上の各元素のほかは、基本的にはAlおよび不可避的不純物とすればよいが、この発明の目的を損なわない範囲内で、Crを0.3%以下、Vを0.05%以下、Zrを0.05%以下、Znを0.15%以下、Cuを0.15%以下含有することは許容される。
請求項1の発明に係る缶蓋用アルミニウム合金板では、その成分組成を前述のように調整するばかりでなく、結晶粒径条件も重要である。すなわち板表面において、圧延方向に対して直角な方向の結晶粒サイズが5〜35μmの範囲内にある結晶粒の総面積が、板面の全面積の60%以上を占めることが必要である。ここで圧延方向に対し直角な方向の結晶粒サイズが35μmを越えるような結晶粒が高密度に存在すれば、クロメート処理を施した後の表面にスジ状模様が形成され、外観品質不良とされるおそれがある。一方、圧延方向に対し直角な方向の結晶粒サイズが5μm未満の結晶粒が多数存在すれば、35μmを越える結晶粒と隣接する確率が高くなって、前述のような35μmを越える結晶粒に起因する表面スジ状模様が際立って視認されやすくなってしまう。そして、圧延方向に対し直角な方向の結晶粒サイズが5〜35μmの範囲内にある結晶粒の総面積が、特に60%未満であれば、表面スジ状模様が視認されやすくなり、外観品質不良とされるおそれが強い。一方、板表面における圧延方向に対し直角な方向の結晶粒サイズが5〜35μmの範囲内にある結晶粒の総面積が、板面の全面積の60%以上を占める場合は、クロメート処理後もスジ状模様が目視により視認されたり、目立ったりするおそれが少なく、外観品質が良好な缶蓋とすることができる。
一方、請求項2の発明では、缶蓋用アルミニウム合金板向けの熱間圧延板を規定しており、この熱間圧延板においても、その成分組成を前述のように調整するばかりでなく、結晶粒条件および結晶方位密度条件も重要である。
すなわち、この発明の缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法では、熱間圧延後には改めて再結晶のための中間焼鈍を施さずに、冷間圧延のみによって最終板厚の製品板に仕上げることとしており、このようなプロセスでは、熱間圧延板の組織状態が製品板の組織に直接的な影響を与えるから、製品板についてクロメート処理を行なった後の表面品質には、熱間圧延板の段階での板の表面層の組織が大きな影響を及ぼす。
すなわち熱間圧延後は、前述のように改めて再結晶のための中間焼鈍を行なわずに、冷間圧延のみによって仕上げるから、熱間圧延板の段階での結晶粒は、ほとんどそのまま圧延方向に引伸ばされて、繊維状の加工組織となるだけであり、したがって製品板について請求項1で規定するような圧延方向に対し直角な方向の結晶粒サイズ条件を確保するためには、熱間圧延上がり板の段階で、板表面層における圧延方向に対し直角な方向の結晶粒サイズ条件が、製品板表面と同様な条件を満たしている必要がある。
すなわち、熱間圧延板の板表面層についても、圧延方向に対して直角方向の結晶粒サイズが5〜35μmの範囲内にある結晶粒の総面積が、板面の全面積の60%以上を占めることが必要である。ここで圧延方向に対し直角な方向の結晶粒サイズが35μmを越えるような結晶粒が熱間圧延板の表面層に高密度に存在すれば、その後に冷間圧延およびクロメート処理を施した後の表面にスジ状模様が形成されて、外観品質不良とされるおそれがある。一方、圧延方向に対し直角な方向の結晶粒サイズが5μm未満の結晶粒が熱間圧延板の表面層に多数存在すれば、粗圧延後においても35μmを越える結晶粒と隣接する確率が高まって、35μmを越える結晶粒に起因する表面スジ状模様が際立って視認されやすくなってしまう。そして、熱間圧延板において、板表面層における圧延方向に対し直角な方向の結晶粒サイズが5〜35μmの範囲内にある結晶粒の総面積が、特に60%未満であれば、冷間圧延およびクロメート処理を施した状態で表面スジ状模様が視認されやすくなって、外観品質不良とされるおそれが強い。一方、熱間圧延板の表面層において、圧延方向に対し直角な方向の結晶粒サイズが5〜35μmの範囲内にある結晶粒の総面積が板面の全面積の60%以上を占める場合は、その熱間圧延板に冷間圧延およびクロメート処理を施した後もスジ状模様が目視により視認されたり、目立ったりするおそれが少なく、外観品質が良好な缶蓋とすることができる。
一方熱間圧延板の結晶方位に関しては、熱間圧延板の表面におけるキューブ(Cube)方位結晶粒が板全体の面積の30%以上を占めることが必要である。すなわちキューブ方位結晶粒が板面の全面積の30%未満であれば、冷間圧延およびクロメート処理を施した状態で、表面スジ状模様として視認されてしまうおそれが強い。なおここで、この発明におけるキューブ方位の結晶粒とは、圧延面{001}、圧延方向<100>の結晶方位を中心として、±15°以内の方位差となる結晶を、キューブ方位結晶粒として定義することとする。
次にこの発明の缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法について説明する。
この発明の缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法では、基本的には請求項3において規定しているように、前述のように成分組成を調整したアルミニウム合金の鋳塊に対して均質化処理を施した後、熱間圧延を行なうにあたり、熱間圧延上がり板の状態で、板表面層における圧延方向に対し直角な方向の結晶粒サイズが5〜35μmの範囲内にある結晶粒の総面積が、板面の全面積の60%以上を占め、かつ表面におけるキューブ方位結晶粒が板面の全面積の30%以上を占めるように熱間圧延を行ない、その後、再結晶のための焼鈍を施すことなく所定の製品板厚まで冷間圧延すれば良いが、より好ましい製造条件について以下に説明する。
先ず前記成分組成のアルミニウム合金を、DC鋳造法(半連続鋳造法)等の常法により鋳造して鋳塊とする。鋳塊厚さは特に限定しないが、通常は450〜650mm程度とされる。鋳塊に対しては、その鋳塊最外殻の非定常組織部の除去を目的として、鋳塊の上下面及び側面の計6面を面削することが望ましい。その際の面削量は特に限定しないが、通常は5〜30mm程度が好ましい。
上述のようにして面削を行なった鋳塊に対しては、鋳造時に生じた偏析部の均質化、不安定化合物の安定化を目的として均質化処理を施す。この発明のように材料の表面組織を制御することが重要である場合、均質化処理が重要となる。すなわち、第2相粒子の偏析や鋳造時に生じた粗大結晶粒の残存があれば、続く熱間圧延においてミクロ的な応力集中が生じ、材料の再結晶化が不均一となって、部分的に粗大な結晶粒の発生を招いてしまう。この均質化処理の条件としては、460〜530℃の範囲内の温度に加熱し、0.5〜15時間保持することが好ましい。均質化処理温度が460℃未満では、前述のような材料組織の均質化効果が充分に得られず、熱間圧延途中または熱間圧延直後に再結晶する結晶粒が粗大化してしまう。一方均質化処理温度が530℃を越えれば、均質化の効果が飽和するだけでなく、鋳塊の一部が溶融化してしまうおそれがある。また均質化処理時間が0.5時間未満では、均質化の効果が充分に得られず、一方均質化処理時間が15時間を越えれば、均質化の効果が飽和してしまい、工業的な製法としてはコスト上昇を招いて好ましくなくなる。
均質化処理に引き続いては、熱間圧延を行なう。この熱間圧延は、比較的板厚の厚い段階での熱間粗圧延と、比較的板厚が薄くなった段階での熱間仕上圧延とに区分される。このような熱間圧延に使用する圧延機については特に限定しないが、熱間粗圧延を、熱間圧延機に対して被圧延材を往復運動させるリバース型の圧延機で行ない、熱間仕上圧延を、多段の圧延ロールを一直線に配置させたタンデム型圧延機で行なう方法が好ましいが、熱間粗圧延、熱間仕上圧延ともにリバース型の圧延機で行なう方法を適用しても良い。
ここで、この発明の方法の場合、材料の表面組織制御に関して特に熱間粗圧延条件が重要となる。すなわち、粗圧延終了時の材料表面に粗大な結晶粒が存在すれば、熱間仕上げ圧延及び冷間圧延によって繊維状に材料組織が引き伸ばされて、スジ状の模様(ストリーク)として残存してしまう。そしてこのようなストリークが冷間圧延後のアルミニウム合金板に残存していれば、クロメート処理時に材料が選択的にエッチングされるかまたは選択的に未エッチングとなってしまうため、スジ状の模様がくっきりと浮き出てしまう。ストリークを防ぐためには熱間粗圧延時に材料の結晶サイズを均一且つ細かく分布させることが必要となる。また一方、スジ状の模様となる部位は、周囲の部位と表面結晶方位が異なるために、光の入射、反射角に偏差が生じている部位であり、このような部位については、人間の目が感じ取るアルミニウム合金の表面色調に差が認められてしまう。したがってストリークの防止のためには、アルミニウム板表面の結晶方位を全て均一にすることが最も適切であるが、工業的な圧延方法では、全結晶の方位均一化は実際上不可能である。そこで工業的には、結晶方位をある程度均質化させることによって、缶蓋用アルミニウム合金板としてスジ状模様の形成を最小限に抑えることが可能となる。
上述のような観点から、この発明の方法では、先ず熱間圧延の特に粗圧延のパスを適切に制御することとした。すなわち、熱間粗圧延のパス数をNとすれば、最終パス(第N番目のパス)から遡って2パス目のパス(第(N−2)番目のパス)から、最終パス(第N番目のパス)まで(したがって(N−2)〜Nの合計3パス)の平均圧延率を25〜50%の範囲内とし、また粗圧延の最初のパス(第1番目のパス)から、粗圧延最終パス(第N番目のパス)から遡って3パス目のパス(第(N−3)番目のパス)までの間(したがってパス数にしてN−2の数のパス)における平均圧延率を5〜13%の範囲内とする。これは、比較的板厚が厚い段階においてはできるだけ材料の再結晶化を回避し、加工による歪みを蓄積させておき、その後第N−2番目のパスから第N番目のパス(最終パス)において急激に材料を再結晶化させることにより、材料表面の結晶を細かく且つ均一にすることを狙いとしている。そして粗圧延のラスト3パスを高圧下率にすることが、表面の結晶粒を均一にさせる点において最適となる。特にこの発明のように、Mgが添加量2.0〜5.0%であるようなアルミニウム合金では、Mg添加量の少ない純アルミニウム系に比べて材料の再結晶が生じやすく、粗圧延の各段階での圧下率、圧延後の温度制御が重要となる。
ここで、熱間粗圧延における第(N−2)番目のパスから第N番目のパス(最終パス)までの3パス(N−2〜N)における平均圧延率が25%未満であれば、材料全体において均一に再結晶化が起こらず、部分的に再結晶しない領域が残存してしまう。このような部分的な未再結晶領域の残存も前述のストリーク発生の原因となるため、避けなければならない。一方第(N−2)番目のパスから第N番目のパスまでの3パスの平均圧延率が50%を越えてしまえば、1パス当りの圧下率が高すぎるため、ロールと材料との接触部分において局部的に面荷重の高い領域が生じ、その領域において再結晶化が促進されてしまい、それ以外の領域との結晶粒サイズの違いを生じてしまい、これもストリーク発生の一因となる。
一方、熱間粗圧延における最初のパス(第1番目のパス)から、第(N−3)番目のパスまでの間の圧延において、平均圧延率が5%未満であれば、1パス当りの圧延量が少なすぎるため、パス数が多くなって時間がかかってしまい、材料温度の低下を招いて、材料の圧延加工性を損なうおそれがある。また最初のパスから第(N−3)番目のパスまでの間の平均圧延率が13%を越えてしまえば、圧延途中において部分的に再結晶の核が発生してしまい、周囲の高歪みの材料組織を巻き込んで粗大な結晶粒に成長してしまうおそれがある。
さらに、熱間粗圧延終了直後の温度(すなわち粗圧延最終パスの出側の材料温度)は280〜350℃の範囲内とする。ここで、熱間粗圧延終了直後の温度が280℃未満であれば、熱間粗圧延後の板表面が均一に再結晶化されない。一方、粗圧延終了直後の温度が350℃を越えてしまえば、結晶の成長駆動力が大きくなりすぎ、粗大な結晶粒を生じてしまう。
なお熱間粗圧延の開始温度は特に限定しないが、熱間粗圧延終了直後の材料温度を280〜350℃とするためには、粗圧延開始温度は440〜520℃程度とすることが好ましい。
前述のようにして熱間粗圧延を終了した後には、熱間仕上圧延を行なう。ここで、熱間粗圧延の終了温度は280〜350℃とやや低めであるところから、熱間仕上圧延の圧下量を高めとして、熱間仕上圧延およびその後に材料全体を再結晶化させるために必要な歪み量及び自己発熱による熱量を充分に確保することが必須となる。このような観点から、熱間仕上圧延の条件は、総圧下量の87〜93%とし、仕上圧延終了後の材料温度を310〜340℃の範囲内とする。
熱間圧延における総圧下量が87%未満では、材料の再結晶化が充分になされず、板表面にも部分的に再結晶化されていない領域が残存してしまい、製品板におけるストリークの原因となる。一方熱間仕上圧延の総圧下量が93%を越えるような圧延では、圧延ロールによる表面のむしり取り(ピックアップインクルージョン)が起こり、表面性状を悪化させてしまう。さらに仕上圧延終了後の材料温度が310℃未満であれば、材料の再結晶化が充分になされず、一方仕上圧延終了後の材料温度が340℃を越えれば熱間圧延板の表面品質の悪化および表面結晶粒の異常成長を招くおそれがあり、この場合も製品板の表面品質の低下を招く。なおここで、熱間仕上圧延終了後の材料温度とは、熱間仕上圧延の最終パスを通過してコイルに巻取った時点のコイル温度(特にコイル側面温度)を意味するものとする。
熱間仕上圧延終了後は、コイル状に巻取って通常は室温まで放置し、その後、所望の製品板厚まで冷間圧延する。ここで、この発明の方法では、熱間圧延からその後のコイルの段階で自己再結晶させており、熱間圧延後の冷間圧延前や冷間圧延途中においては、再結晶のための中間焼鈍を行なわないこととしている。
冷間圧延については特に限定されないが、1回当りの圧延率を30〜50%として、圧延可能且つ工業的な範囲にて複数回の圧延を行なうことが好ましい。
冷間圧延板に対しては、その表面に付着している圧延油を除去するため、水または有機溶剤等の液体をアルミニウム板にスプレーすることが通常であり、その後、清浄な梨地状表面を得るため、苛性または酸により表面をエッチングし、クロメート皮膜処理を施す。クロメート皮膜は、通常は200〜500Å程度の皮膜厚とすることが好ましい。
クロメート皮膜を形成したアルミニウム合金板については、その両面に塗料を塗装し、焼付処理を施すが、塗料の種類は、缶の用途により適宜選択すれば良い。主な塗料としては、塩ビオルガノゾル系塗料、エポキシアクリル系塗料等が用いられる。
以上のようにして、クロメート処理後に表面ムラ状の模様(ストリーク)等の外観欠陥のない良好な表面品質を有し、かつ耳率の良好な缶蓋用アルミニウム合金板を製造することが可能となる。
実施例1:
表1のNo.1〜No.15に示す種々の成分組成のアルミニウム合金について、半連続鋳造法により鋳塊を製造した。鋳塊の上下面及び側面の計6面を、15mm程度面削した後、490℃×1時間の均質化処理を施し、次いでリバース型圧延機を用いて熱間粗圧延を行なった。熱間粗圧延にて圧延する際には、第1番目のパスから第(N−3)番目のパスまでの間の平均圧延率を11%、第(N−2)番目のパスから第N番目のパスまでの平均圧延率を28%とし、熱間粗圧延終了直後の温度が300〜330℃となるように圧延した。その後4段タンデム型圧延機を用いて、総圧下量90%にて熱間仕上圧延を施し多。仕上圧延を終了してコイルに巻上げた後のコイル側面の温度(熱間仕上圧延終了温度)は320〜330℃となった。その後、中間焼鈍を行うことなく冷間圧延を施して、0.26mm厚の缶蓋用アルミニウム合金板を製造した。
表1のNo.1〜No.15に示す種々の成分組成のアルミニウム合金について、半連続鋳造法により鋳塊を製造した。鋳塊の上下面及び側面の計6面を、15mm程度面削した後、490℃×1時間の均質化処理を施し、次いでリバース型圧延機を用いて熱間粗圧延を行なった。熱間粗圧延にて圧延する際には、第1番目のパスから第(N−3)番目のパスまでの間の平均圧延率を11%、第(N−2)番目のパスから第N番目のパスまでの平均圧延率を28%とし、熱間粗圧延終了直後の温度が300〜330℃となるように圧延した。その後4段タンデム型圧延機を用いて、総圧下量90%にて熱間仕上圧延を施し多。仕上圧延を終了してコイルに巻上げた後のコイル側面の温度(熱間仕上圧延終了温度)は320〜330℃となった。その後、中間焼鈍を行うことなく冷間圧延を施して、0.26mm厚の缶蓋用アルミニウム合金板を製造した。
以上のところにおいて、熱間圧延板の段階で、その板表面層の結晶粒径を調べるとともに、結晶方位(キューブ方位結晶粒の面積率)を調べた。また冷間圧延を施した板についても、板表面の結晶粒径および耳率を調べた。さらに冷間圧延板について、その両面に水性エポキシアクリル系の塗料を100mg/m2の塗布量で塗布して、255℃×25秒で焼付け、塗装焼付け後の塗装板について、その表面外観品質として表面のスジ模様の発生状況を調べた。これらの測定・評価方法は次の通りである。
熱間圧延板の板表面結晶粒径および結晶方位:
熱間圧延板の板表面を機械/電解研磨し、SEM(日本電子社製、JEOL−JSM−5910)、EBSP測定システム(TSL社製、MSC2200)を用い、板表面の結晶粒サイズおよび方位を測定及び解析した。測定視野は圧延方向1200μm×圧延と垂直な方向600μmの長方形領域とし、測定間隔は2μmとした。EBSP測定システムに付属される解析ソフトを使用して、測定領域内の結晶粒サイズ(5μm間隔にて区間化)毎のヒストグラムを求め、5〜35μmの結晶粒サイズの総面積を計算し、測定視野面積に対する面積割合を求めた。また結晶方位については、±15°以内の方位差を許容した圧延面{001}、圧延方向<100>の結晶方位に該当する結晶の領域と、それ以外の結晶の領域を2値化させ、画像解析により、総面積に対する前者の割合をキューブ方位の面積率として求めた。
熱間圧延板の板表面を機械/電解研磨し、SEM(日本電子社製、JEOL−JSM−5910)、EBSP測定システム(TSL社製、MSC2200)を用い、板表面の結晶粒サイズおよび方位を測定及び解析した。測定視野は圧延方向1200μm×圧延と垂直な方向600μmの長方形領域とし、測定間隔は2μmとした。EBSP測定システムに付属される解析ソフトを使用して、測定領域内の結晶粒サイズ(5μm間隔にて区間化)毎のヒストグラムを求め、5〜35μmの結晶粒サイズの総面積を計算し、測定視野面積に対する面積割合を求めた。また結晶方位については、±15°以内の方位差を許容した圧延面{001}、圧延方向<100>の結晶方位に該当する結晶の領域と、それ以外の結晶の領域を2値化させ、画像解析により、総面積に対する前者の割合をキューブ方位の面積率として求めた。
冷間圧延板の板表面結晶粒径:
前述の熱間圧延板の結晶粒径と同様にして調べた。
前述の熱間圧延板の結晶粒径と同様にして調べた。
冷間圧延板の耳率:
直径57mmの円形ブランクから絞り率48%の円筒容器を作成し、円筒容器の側壁高さを、円周方向にピッチ45°で合計8点測定し、次式により耳率を求めた。
耳率=(45°の平均高さ−0、90°の平均高さ)/(全測定点の平均高さ)
円形ブランクのサンプリングは、アルミニウム合金板の幅方向から3点を測定し、3点の耳率絶対値の最大が6%以下の場合を良好(○)、6%超の場合を不良(×)とした。
直径57mmの円形ブランクから絞り率48%の円筒容器を作成し、円筒容器の側壁高さを、円周方向にピッチ45°で合計8点測定し、次式により耳率を求めた。
耳率=(45°の平均高さ−0、90°の平均高さ)/(全測定点の平均高さ)
円形ブランクのサンプリングは、アルミニウム合金板の幅方向から3点を測定し、3点の耳率絶対値の最大が6%以下の場合を良好(○)、6%超の場合を不良(×)とした。
表面外観品質(表面スジ模様):
塗装板の表面に垂直な方向より水銀灯を照射させ、斜め方向(板面に対して5〜45°程度)から目視して、塗装板表面のスジ模様の有無を判定した。目視によりスジ模様が確認されない場合を良好(○)、確認される場合を不良(×)とした。
塗装板の表面に垂直な方向より水銀灯を照射させ、斜め方向(板面に対して5〜45°程度)から目視して、塗装板表面のスジ模様の有無を判定した。目視によりスジ模様が確認されない場合を良好(○)、確認される場合を不良(×)とした。
これらの結果を表1中に示す。
表1に実施例1の結果を示す。表1に示すようにこの発明で規定する成分組成範囲内の合金を用い、熱間圧延上がり板表面層の5〜35μmサイズの結晶粒合計面積率、同じく熱間圧延上がり板の表面のキューブ方位結晶粒面積占有率、および冷間圧延板表面の5〜35μmサイズの結晶粒合計面積率が、この発明の規定する範囲を満たしたNo.1〜No.5の本発明例では、いずれも耳率が良好でかつ塗装板にスジ模様の発生がなく、表面品質が優れていることが確認された。
一方、この発明で規定する範囲を外れた比較例のNo.6〜No.15の例では、充分な特性が得られなかった。すなわち比較例のNo.6は、Mg量がこの発明で規定する下限未満であるため、熱間圧延上がり板表面の5〜35μmサイズの結晶粒合計面積率が小さくなり、冷間圧延板でも5〜35μmサイズの結晶粒合計面積率が小さくなって、塗装板の表面にスジ模様が認められた。また比較例のNo.7では、Mg量がこの発明で規定する上限を越えているため、熱間圧延上がり板における表面のキューブ方位結晶粒の占有率が小さくて、塗装板表面にスジ模様が認められ、かつ冷間圧延板の耳が、圧延方向に対して45°方向に高くなり、耳率が悪くなった。その他の比較例No.8〜No.15の例についても、同様にいずれかの成分が本発明規定より逸脱し、またその多くは組織条件がこの発明で規定する範囲を外れたため、冷間圧延板の耳率が悪くなるか、塗装板の表面にスジ模様が残存することが確認された。
実施例2:
表1のNo.1に示す成分組成の合金(本発明成分組成範囲内の合金)について、半連続鋳造法により厚み500mmのスラブ状鋳塊を製造し、鋳塊の上下面及び側面の計6面を15mm程度面削した。次いで均質化処理から熱間圧延(熱間粗圧延および熱間仕上圧延)を、表2のA〜Nに示す条件で施して、板厚2.6mmの熱間圧延上がり板を製造し、次いで、中間焼鈍を行うことなく冷間圧延を施して、0.26mmの缶蓋用アルミニウム合金板を製造した。
表1のNo.1に示す成分組成の合金(本発明成分組成範囲内の合金)について、半連続鋳造法により厚み500mmのスラブ状鋳塊を製造し、鋳塊の上下面及び側面の計6面を15mm程度面削した。次いで均質化処理から熱間圧延(熱間粗圧延および熱間仕上圧延)を、表2のA〜Nに示す条件で施して、板厚2.6mmの熱間圧延上がり板を製造し、次いで、中間焼鈍を行うことなく冷間圧延を施して、0.26mmの缶蓋用アルミニウム合金板を製造した。
各条件A〜Nの製造例において、実施例1の場合と同様に、熱間圧延上がり板の段階での表面層の5〜35μmサイズの結晶粒の合計面積率、同じく熱間圧延上がり板表面のキューブ方位結晶粒面積率を調べるとともに、冷間圧延後の板について表面の5〜35μmサイズの結晶粒合計面積率、耳率を調べ、さらに塗装板についてその表面外観品質(スジ模様の発生状況)を調べた。その結果を表2に示す。
表2に示すように、この発明のプロセス条件範囲内で製造したA〜Gのアルミニウム合金板は、いずれも熱間圧延上がり板表面の5〜35μmサイズの結晶粒合計面積率、表面キューブ方位結晶粒面積占有率、冷間圧延後表面の5〜35μmサイズ結晶粒合計面積率がこの発明で規定する範囲を満たしており、そのため耳率および塗装板の表面性状が優れていることが確認された。
一方比較例のH、Iは、それぞれ均質化処理の温度、時間がこの発明で規定する下限より少ないため、熱間圧延上がり板表面の5〜35μmサイズの結晶粒合計面積率、キューブ方位結晶粒占有率が不足しており、そのため塗装板表面にスジ模様が残存していた。比較例のJは、熱間粗圧延における前段平均圧延率(第1パスから第(N−3)パス)が高いため、途中パスでの再結晶化が生じてしまい、結果的に粗大な結晶粒の成長が生じ、その後の圧延により粗大粒が引伸ばされて、スジ模様が形成されてしまった。また比較例のK、Lは、熱間粗圧延の後段平均圧延率(第(N−2)パス〜第Nパス)が、それぞれこの発明で規定する下限、上限を外れているため、前者は部分的な非再結晶部の残存が、また後者は圧延荷重の部分的な過多による局所的な結晶の異常成長が認められた。比較例M、Nは熱間仕上圧延の圧下率がそれぞれこの発明で規定する下限、上限を外れているため、前者はキューブ方位結晶粒の面積占有率の不足により塗装板に表面スジ模様が発生し、後者は圧延途中に板切れを生じてしまった。
Claims (4)
- 表面にクロメート処理を施して使用される缶蓋用アルミニウム合金板において、
Mg2.0〜5.0(mass%、以下同じ)、Mn0.1〜0.3%、Si0.01〜0.2%、Fe0.1〜0.5%、Ti0.005〜0.02%、B0.001〜0.01%、残部Alおよび不可避的不純物よりなり、板表面における圧延方向に対して直角な方向の結晶粒サイズが5〜35μmの範囲にある結晶粒の総面積が、板面の面積の60%以上を占めることを特徴とする、クロメート処理後の表面品質が優れた缶蓋用アルミニウム合金板。 - 表面にクロメート処理を施して使用される缶蓋用アルミニウム合金板向けの熱間圧延板において、
Mg2.0〜5.0、Mn0.1〜0.3%、Si0.01〜0.2%、Fe0.1〜0.5%、Ti0.005〜0.02%、B0.001〜0.01%、残部Alおよび不可避的不純物よりなり、板表面層における圧延方向に対して直角な方向の結晶粒サイズが5〜35μmの範囲内にある結晶粒の総面積が、板面の面積の60%以上を占め、かつ板表面におけるキューブ方位結晶粒が、板面の面積の30%以上を占めることを特徴とする、缶蓋用アルミニウム合金板向け熱間圧延板。 - 表面にクロメート処理を施して使用される缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法において、
Mg2.0〜5.0、Mn0.1〜0.3%、Si0.01〜0.2%、Fe0.1〜0.5%、Ti0.005〜0.02%、B0.001〜0.01%、残部Alおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金の鋳塊に対して均質化処理後、熱間圧延を行なうにあたり、熱間圧延上がり板の状態で、板表面層における圧延方向に対し直角な方向の結晶粒サイズが5〜35μmの範囲内にある結晶粒の総面積が、板面の面積の60%以上を占め、かつ板表面におけるキューブ方位結晶粒が、板面の面積の30%以上を占めるように熱間圧延を行ない、その後、再結晶のための焼鈍を施すことなく所定の製品板厚まで冷間圧延することを特徴とする、クロメート処理後の表面品質が優れた缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法。 - 請求項3に記載の缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法において、
前記成分組成の鋳塊に対して均質化処理を行なうにあたり、460〜530℃の範囲内の温度で0.5〜15時間保持の条件で均質化処理を施し、その後に熱間粗圧延と熱間仕上圧延とからなる熱間圧延を施すにあたって、
熱間粗圧延では、粗圧延最終パスから遡って2パス目のパスから粗圧延最終パスまでの合計3パスにおける平均圧延率が25〜50%の範囲内となり、かつ粗圧延の最初のパスから、粗圧延最終パスから遡って3パス目のパスまでの複数のパスにおける平均圧延率が5〜13%の範囲内となり、しかも粗圧延終了直後の材料温度が280〜350℃の範囲内となるように粗圧延を行ない、引続く熱間仕上圧延では、総圧下率が87〜93%の範囲内、圧延終了後の材料温度が310〜340℃の範囲内となるように仕上圧延を行なうことを特徴とする、クロメート処理後の表面品質が優れた缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法。
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JP2010236075A (ja) * | 2009-03-31 | 2010-10-21 | Kobe Steel Ltd | 缶胴用アルミニウム合金板およびその製造方法 |
JP2011052290A (ja) * | 2009-09-03 | 2011-03-17 | Sumitomo Light Metal Ind Ltd | 缶エンド用アルミニウム合金板及びその製造方法。 |
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