JP2008017723A - ペニシリン耐性B群連鎖球菌(GroupBstreptococcus)を識別する方法及び識別用キット - Google Patents

ペニシリン耐性B群連鎖球菌(GroupBstreptococcus)を識別する方法及び識別用キット Download PDF

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Abstract

【課題】ペニシリン耐性B群連鎖球菌(Group B streptococcus)を簡便に識別できる方法及びキットを提供する。
【解決手段】検出対象である菌が塗布された固体培地の表面に、オキサシリン、セフチゾキシム、またはセフチブテン(薬剤)を点在させ、上記固体培地を培養し、培養後、上記薬剤の周囲に形成される阻止円の大きさの基準値との違いにより、検出対象である菌がペニシリン耐性B群連鎖球菌であるか否かを識別する方法。ストリップ状の基体にオキサシリン、セフチゾキシム、およびセフチブテンを、距離を置いて配置したペニシリン耐性B群連鎖球菌識別用キット。オキサシリン、セフチゾキシム、またはセフチブテンを段階的に希釈して含有する複数の液体培地を用意し、各液体培地に、検出対象である菌を接種し、培養を行い、培養後、最小阻止濃度(MIC)の低下の有無および/または程度から、検出対象である菌がペニシリン耐性B群連鎖球菌であるか否かを識別する方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ペニシリン耐性B群連鎖球菌(Group B streptococcus)を識別する方法に関する。特に本発明は、ペニシリン耐性B群連鎖球菌(Group B streptococcus)を迅速簡便に識別方法及び識別用キットに関する。
B群連鎖球菌(Group B streptococcus, Streptococcus agalactiae)は、グラム陽性の球菌で、直腸及び膣の常在細菌の一部として存在する。新生児期及び産褥期の児の感染が問題になる。感染経路としては上行性の子宮内感染、産道感染などの垂直感染が多いが、院内感染も無視できない。新生児には、敗血症、肺炎、髄膜炎をおこす。出産後、12−20時間で発症する場合が多く、未熟児の場合、重症化する傾向が強い。髄膜炎合併例では高度の中枢神経障害を残すことが多い。妊娠30週で膣粘液にB群連鎖球菌が検出された場合には、抗生剤の予防投与を行う。
B群連鎖球菌は、また母親にとっても、分娩後の子宮内膜炎や敗血症などの起因菌として重要な位置を占めている。また、糖尿病などの基礎疾患を持つ成人、高齢者の日和見感染菌としても重要である。
治療としては、ペニシリンG単独、あるいはアミノ配糖体系抗生剤を併用する。
標準微生物学、第八版、p251、医学書院
これまでペニシリン耐性を有するB群連鎖球菌についての報告はなく、ペニシリン耐性B群連鎖球菌を分離、同定、解析した報告もない。B群連鎖球菌感染症の第一選択薬はペニシリンであり、ペニシリン耐性B群連鎖球菌の出現は臨床的に大きな問題である。ペニシリン耐性B群連鎖球菌が存在するにもかかわらず、治療目的でペニシリンを使用しても、所期の効果が得られない場合が予想される。
このような状況下、本発明者らは、独自に、14例のB群連鎖球菌臨床分離株についてペニシリン耐性の有無等について調査した。その結果、ペニシリン耐性を有するB群連鎖球菌の存在が確認された。
ペニシリン耐性B群連鎖球菌の存在は、臨床的に大きな問題であり、ペニシリン耐性B群連鎖球菌についての迅速簡便識別法の開発は臨床検査において重要である。しかし、当然ながら、これまで、ペニシリン耐性B群連鎖球菌の迅速簡便識別法は報告されていない。
そこで、本発明の目的は、ペニシリン耐性B群連鎖球菌を簡便に識別できる方法及びキットを提供することにある。
本発明は以下の通りである。
[1]検出対象である菌が塗布された固体培地の表面に、オキサシリン、セフチゾキシム、およびセフチブテンから成る群から選ばれる少なくとも1種の薬剤を点在させ、上記固体培地を培養し、培養後、上記薬剤の周囲に形成される阻止円の大きさの基準値との違いにより、検出対象である菌がペニシリン耐性B群連鎖球菌(Group B streptococcus)であるか否かを識別する方法。
[2]前記薬剤の少なくとも2種をそれぞれ点在させる[1]に記載の方法。
[3]前記薬剤の3種をそれぞれ点在させる[1]に記載の方法。
[4]前記薬剤は、前記薬剤を含有するディスクを用いて、固体培地の表面に点在させる[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]オキサシリン、セフチゾキシム、またはセフチブテンを含有するディスクであって、検出対象である菌が塗布された固体培地の表面に配置されて、ペニシリン耐性グループB群連鎖球菌(Group B streptococcus)識別に用いられるディスク。
[6]ストリップ状の基体にオキサシリン、セフチゾキシム、およびセフチブテンを、距離を置いて配置したことを特徴とするペニシリン耐性B群連鎖球菌(Group B streptococcus)識別用キット。
[7]前記薬剤がそれぞれディスクに含有されており、各薬剤を含有するディスクをストリップ状の基体に距離を置いて配置した、[6]または[7]に記載のキット。
[8]前記薬剤がストリップ状の基体に距離を置いて含浸されている、[6]または[7]に記載のキット。
[9]ストリップ状の基体の表面には、前記薬剤を配置した位置から所定の距離に、阻止円識別用のマークを有する[6]〜[8]のいずれかに記載のキット。
[10]阻止円識別用のマークを設ける位置は、阻止円の大きさの基準値に基づいて決定される[9]に記載のキット。
[11][5]〜[10]のいずれかに記載のキットを検出対象である菌が塗布された固体培地の表面に置き、培養を行い、培養後、前記薬剤の周囲に形成される阻止円の大きさの基準値との違いにより、検出対象である菌がペニシリン耐性B群連鎖球菌(Group B streptococcus)であるか否かを識別する方法。
[12]オキサシリン、セフチゾキシム、およびセフチブテンから成る群から選ばれる少なくとも1種の薬剤を段階的に希釈して含有する複数の液体培地を用意し、各液体培地に、検出対象である菌を接種し、培養を行い、培養後、最小阻止濃度(MIC)の低下の有無および/または程度から、検出対象である菌がペニシリン耐性B群連鎖球菌(Group B streptococcus)であるか否かを識別する方法。
[13]最小阻止濃度(MIC)の低下が8倍以上である場合、検出対象である菌がペニシリン耐性B群連鎖球菌(Group B streptococcus)であると判定する、[12]に記載の方法。
本発明の方法及びキットによれば、ペニシリン耐性B群連鎖球菌を迅速かつ簡便に識別できる。
さらに本発明の方法及びキットを用いることで、病院検査室でのペニシリン耐性B群連鎖球菌の識別も可能である。
ペニシリンを含有したディスクでは、ペニシリン耐性B群連鎖球菌を識別することは難しく、本発明により、ペニシリン耐性B群連鎖球菌の識別が、迅速かつ簡便になり、試験検査の精度の向上に資する。
[識別方法]
本発明は、検出対象である菌がペニシリン耐性B群連鎖球菌(Group B streptococcus)であるか否かを識別する方法である。この方法は、検出対象である菌が塗布された固体培地の表面に、オキサシリン、セフチゾキシム、およびセフチブテンから成る群から選ばれる少なくとも1種の薬剤を点在させ、上記固体培地を培養し、培養後、上記薬剤の周囲に形成される阻止円の大きさの基準値との違いにより、検出対象である菌がペニシリン耐性B群連鎖球菌であるか否かを識別する。
固体培地は、例えば、炭素源、窒素源等の栄養分を含む寒天培地であることができる。そのような固体培地としては、例えばミュラーヒントン寒天培地(Difco社)等を挙げることができる。
上記固体培地の表面に検出対象である菌を塗布する。固体培地表面への菌の塗布方法や条件等は、薬剤耐性試験等で採用されているものをそのまま使用できる。例えば、日本化学療法学会標準法またはNCCLSで定められた寒天平板希釈法で指定されている方法を用い、ミュラーヒントン寒天培地に菌を塗布することができる。
次いで、検出対象である菌が塗布された固体培地の表面に、オキサシリン、セフチゾキシム、およびセフチブテンから成る群から選ばれる少なくとも1種の薬剤を点在させる。各薬剤の点在には、具体的には、オキサシリン、セフチゾキシム、およびセフチブテンから成る群から選ばれる少なくとも1種の薬剤を含有するディスクを用いることが適当である。オキサシリン、セフチゾキシム、およびセフチブテンのいずれか1種を含有するディスクは、市販品があり、これを用いることができる。尚、ディスクとして市販品がない場合でも、適当な寸法及び形状の濾紙に上記薬剤を、必要により、溶媒を用いて含浸させることで作成することができる。ディスクの素材は特に制限はないが、ディスクに含まれる薬剤が固体培地に含まれる液体を介してディスクの外に拡散し得る物であればよい。そのような素材としては、例えば、濾紙を挙げることができる。
上記薬剤の点在量は、各薬剤の固体培地表面での拡散性や培養時間(拡散時間)等を考慮して適宜決定できる。例えば、オキサシリンでは点在量を0.1〜10μgの範囲とすることが適当であり、セフチゾキシムでは点在量を10〜100μgの範囲とすることが適当であり、セフチブテンでは点在量を10〜100μgの範囲とすることが適当である。但し、これらはあくまでも目安であり、検査対象とする菌の種類に応じて、上記薬剤の周囲に形成される阻止円の形状や大きさ等を考慮して適宜変化させることができる。
本発明は、オキサシリン、セフチゾキシム、またはセフチブテンを含有するディスクであって、検出対象である菌が塗布された固体培地の表面に配置されて、ペニシリン耐性グループB群連鎖球菌(Group B streptococcus)識別に用いられるディスクを包含する。ディスクの上記薬剤の含有量は、上記点在量と同等にすることができる。
本発明者らの検討の結果、上記3つの薬剤では、ペニシリン耐性B群連鎖球菌の場合とペニシリン感受性のB群連鎖球菌とで、点在させた薬剤の周囲に形成される阻止円の大きさに、特異的に、有意に違いがあることを見いだした。本発明者らは、上記3つの薬剤以外にもペニシリンを含む種々の薬剤について、ペニシリン耐性B群連鎖球菌とペニシリン感受性のB群連鎖球菌とで、阻止円の形成に違いがないかを検討した。その結果、以下に示す40種の薬剤については、ペニシリン耐性B群連鎖球菌とペニシリン感受性のB群連鎖球菌との識別はできなかった。
ベンジルペニシリン、アンピシリン、アスポキシシリン、ピペラシリン、セファロチン、セファゾリン、セファマンドール、セフォチアム、セフォペラゾン、セフロキシム、セフォタキシム、セフメノキシム、セフピラミド、セフタジジム、セフトリアキソン、セフォジジム、セフピロム、セフェピム、セフォゾプラン、セフスロジン、セフォキシチン、セフメタゾール、セフォテタン、セフブペラゾン、セフミノクス、セファレキシン、セファクロル、セフィキシム、セフジニル、セフポドキシム、セフテラム、セフカペン、セフジトレン、ラタモキセフ、フロモキセフ、イミペネム、パニペネム、メロペネム、アズトレオナム、カルモナム
上記3つの薬剤は、それぞれ、ペニシリン耐性B群連鎖球菌の場合とペニシリン感受性のB群連鎖球菌とで、点在させた薬剤の周囲に形成される阻止円の大きさに、有意に違いがある。従って、上記3つの薬剤のいずれか1つを用いて、本発明の方法は実施できる。但し、薬剤の周囲に形成される阻止円の大きさに違いが生じる理由は必ずしも明らかではなく、検査の信頼性を高めるという観点からは、上記3つの薬剤のいずれか2つまたは3つを同時に用いて検査することが好ましい。
上記3つの薬剤のいずれか2つまたは3つを同時に用いる場合、各薬剤の点在位置は、各薬剤の拡散範囲を考慮して、各薬剤の周囲に形成される阻止円が重複しない位置に、各薬剤を点在させることが、阻止円の大きさを判別しやすいという観点から好ましい。
薬剤の拡散範囲は、各薬剤の種類と点在量、及び培養条件(主に時間)により変化するので、使用する薬剤の種類と点在量及び培養条件から予め求めておくことができる。例えば、各薬剤の間の距離は、使用するシャーレー(固体培地を載せた)の大きさにもよるが、開口径が9cmのシャーレーの場合、例えば、3〜6cm程度とすることができる。
上記薬剤を表面に置いた固体培地は、培養される。培養条件は、例えば、35〜37℃、12〜36時間の範囲とすることができる。但し、培養条件、特に時間は、上記薬剤の拡散範囲との兼ね合いを考慮して適宜決定する。
上記培養により、固体培地表面に置かれた上記薬剤は、固体培地表面及び内部を拡散する。対象とする菌がペニシリン耐性B群連鎖球菌である場合、同一培養条件としたペニシリン感受性B群連鎖球菌の場合に比べて、阻止円の大きさが小さくなる。上記薬剤に対するペニシリン耐性B群連鎖球菌及びペニシリン感受性B群連鎖球菌の感受性は異なる。従って、使用する薬剤の種類に応じて、所定量の薬剤及び所定の培養条件(培地の種類や培養温度、時間)における阻止円の大きさを予め求めておき、ペニシリン耐性B群連鎖球菌とペニシリン感受性B群連鎖球菌とを識別する阻止円の基準値を定めておくことが適当である。薬剤の点在量及び培養条件は、ペニシリン耐性B群連鎖球菌とペニシリン感受性B群連鎖球菌の阻止円の大きさの違いが3mm以上になるように設定することが、識別を容易にかつ確実に行うという観点から好ましい。
培養条件を、以下の条件とした場合について説明する。
培地の種類:トリプチックソイ羊血液寒天培地プレート
培養温度:37℃
培養時間:16〜20時間
オキサシリンでは、点在量を1μgとした場合、ペニシリン感受性B群連鎖球菌では、阻止円の大きさは、約13〜14mm、ペニシリン耐性B群連鎖球菌では約6〜10 mmであった。従って、阻止円の基準値は11〜12 mmとすることができる。形成された阻止円が基準値を超える場合には、ペニシリン感受性B群連鎖球菌であると識別でき、形成された阻止円が基準値未満である場合には、ペニシリン耐性B群連鎖球菌であると識別できる。
セフチゾキシムでは、点在量を30μgとした場合、ペニシリン感受性B群連鎖球菌では、阻止円の大きさは、約26〜28 mm、ペニシリン耐性B群連鎖球菌では約6〜20 mmであった。従って、阻止円の基準値は21〜25 mmとすることができる。形成された阻止円が基準値を超える場合には、ペニシリン感受性B群連鎖球菌であると識別でき、形成された阻止円が基準値未満である場合には、ペニシリン耐性B群連鎖球菌であると識別できる。
セフチブテンでは、点在量を30μgとした場合、ペニシリン感受性B群連鎖球菌では、阻止円の大きさは、約16〜17 mm、ペニシリン耐性B群連鎖球菌では約6〜13 mmであった。従って、阻止円の基準値は14〜15 mmとすることができる。形成された阻止円が基準値を超える場合には、ペニシリン感受性B群連鎖球菌であると識別でき、形成された阻止円が基準値未満である場合には、ペニシリン耐性B群連鎖球菌であると識別できる。
[識別用キット]
本発明は、ペニシリン耐性グループB群連鎖球菌(Group B streptococcus)識別用キットも包含する。
本発明のキットは、ストリップ状の基体にオキサシリンク、セフチゾキシム、およびセフチブテンから成る群から選ばれる少なくとも2種の薬剤を、距離を置いて配置したものであることができる。
本発明のキットは、好ましくは、ストリップ状の基体にオキサシリン、セフチゾキシム、およびセフチブテンを、距離を置いて配置したものであることができる。
上記キットは、前記薬剤がそれぞれディスクに含有されており、各薬剤を含有するディスクをストリップ状の基体に距離を置いて配置したものであることができる。薬剤を含有したディスクは、前述と同様のものであることができる。ストリップ状の基体は、ディスクと同様の薬剤の拡散を可能にする材料から形成されていても、あるいは、薬剤を拡散しない材料からなるものであることもできる。ストリップ状の基体が、薬剤を拡散しない材料からなる場合、ディスクを設置した面を固体培地側にすることで、ディスク中の薬剤の拡散は可能になる。
あるいは、上記キットは、前記薬剤がストリップ状の基体に距離を置いて含浸されているものであることができる。この場合は、ストリップ状の基体は、ディスクと同様の薬剤の拡散を可能にする材料から形成される。例えば、濾紙であることができる。ディスク間の距離及び含浸された薬剤間の距離は、各薬剤が形成する阻止円の大きさを考慮して適宜選択できる。
また、上記いずれの態様においても、ストリップ状の基体の長さは、本発明のキットを使用する固体培地の大きさや形状(固体培地の容器であるシャーレー等の大きさや形状)を考慮して適宜選択できる。
ストリップ状の基体の表面には、前記薬剤を配置した位置から所定の距離に、阻止円識別用のマークを有することができる。阻止円識別用のマークを設ける位置は、阻止円の大きさの基準値に基づいて決定される。このような阻止円識別用のマークを有することで、検査の精度を向上することができる。また、ストリップ状の基体の表面には、本発明のキットが用いられる条件、主に培養条件等についての情報を表示されていてもよい。本発明のキットが用いられる条件を表示することで、基準値が適合する培養条件を検査者が確認でき、その上で、阻止円識別用のマークを利用した識別ができ、より正確な検査が可能になるという利点がある。
本発明のキットは、検出対象である菌が塗布された固体培地の表面に置かれ、培養を行い、培養後、前記薬剤の周囲に形成される阻止円の大きさの基準値との違いにより、検出対象である菌がペニシリン耐性B群連鎖球菌であるか否かを識別することに用いられる。この方法自体は、上記本発明の方法と同様に実施できる。
[微量液体希釈法]
本発明は、微量液体希釈法を用いた、検出対象である菌がペニシリン耐性B群連鎖球菌(Group B streptococcus)であるか否かを識別する方法も包含する。微量液体希釈法を用いた識別方法では、オキサシリン、セフチゾキシム、およびセフチブテンから成る群から選ばれる1種の薬剤を段階的に希釈して含有する複数の液体培地を用意し、各液体培地に、検出対象である菌を接種し、培養を行い、培養後、最小阻止濃度(MIC)の低下の有無および/または程度から、検出対象である菌がペニシリン耐性B群連鎖球菌であるか否かを識別する。
この方法では、まず、上記薬剤を段階的に希釈して含有する複数の液体培地を用意する。液体培地としては、例えば、ミュラーヒントン液体培地(Ditco社)等を用いることができる。液体培地中での薬剤の段階的な希釈の程度は、例えば、0.5〜256μg/mlの範囲とすることができる。
このように準備された各液体培地に、検出対象である菌を接種し、培養を行う。培養条件は、固体培地を用いる場合と同様にすることができる。
培養後、MICの低下から、検出対象である菌がペニシリン耐性B群連鎖球菌か否かを判別することができる。具体的には、最小阻止濃度(MIC)の低下が8倍以上である場合、検出対象である菌がペニシリン耐性B群連鎖球菌(Group B streptococcus)であると判定することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
参考例
ペニシリン耐性B群連鎖球菌の発生
背景:
B群連鎖球菌(GBS)であるストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)は、新生児髄膜炎及び敗血症の主要原因であり、また高齢患者に対する重要な病原体である。GBSは一様にペニシリン感受性であるので、ペニシリンはGBS感染の第一選択薬である。肺炎連鎖球菌とは異なり、ペニシリン耐性GBS(PRGBS)の発生はこれまで立証されていない。ここで本発明者らは、PRGBSの臨床的分離及び特性を検討した。さらに本発明者らは、ペニシリン抵抗性がPBP2X遺伝子の変化に起因することを解明した。
方法:
本発明者らは、14例のPRGBS臨床分離株を採取した(1995年から1998年まで9例、及び2005年に5例である(B1, B6, B7, B8, B10, B12, B40, B60, B68, B502, B503, B513, B514, B516)。ベータ・ラクタムの最小阻止濃度(MIC)を、CSLIが推奨する寒天希釈法によって定量した。抵抗性のメカニズムの明白な根拠を示すため、分子分析及び生化学的分析を実施した。
結果:
MIC測定により、GBS臨床分離株がある種のペニシリン系及びセファロスポリン系に非感受性であることが明らかになった。これらの菌株は、PBP2X遺伝子の保存された活性部位配列に隣接して、いくつかの点突然変異を有する。これらの変化したPBP2Xのペニシリン結合量が減少したことが、蛍光基を結合したペニシリンによって示された。さらに本発明者らは、PBP2Xに対して上昇する抗血清を用いたウエスタンブロットにより、PBP2Xタンパク質の量が減少したことを示す。ペニシリン感受性株へのPRGBS由来のPBP2X遺伝子の導入により、ペニシリン耐性レベルが上昇したが、このことにより、これらの変化したPBP2Xが、PRGBSにおけるペニシリン非感受性(の発生)に十分であることが示される。
結論:
本発明者らは、PRGBSの臨床的菌株を分離し、変化したPBP2X遺伝子がペニシリン耐性レベルの上昇の主な原因であることを最初に示した。これらの菌株の発生は、GBS感染の臨床的療法に強い衝撃を与えるものである。
実施例1
トリプチックソイ羊血液寒天培地プレートから得たコロニーを、2mlのトッド・ヒューウィット培地に接種し、37℃で一晩インキュベーションした。被験生物を一晩培養したトッド・ヒューウィット培地から綿球で取り、トリプチックソイ羊血液寒天培地プレート上に接種した。オキサシリン(1μg力価)、セフチゾキシム(30μg力価)及びセフチブテン(30μg力価)のディスクを、それぞれ各プレート上に置いた。空気中、37℃で20時間インキュベーションした後、阻止円を測定した。結果を図2〜4に示す。これらの結果から、オキサシリン、セフチゾキシム及びセフチブテンを用いることで、ペニシリン耐性B群連鎖球菌とペニシリン感受性B群連鎖球菌とを識別することができることが分かる。ペニシリン耐性B群連鎖球菌は、上記参考例に記載した14株である。ペニシリン感受性B群連鎖球菌は、ATCC BAA-611及びATCC 12403である。
ドキュメントM100-S14におけるCLSI(前・臨床研究所規格委員会)の推奨に従って、5%羊血液を含むミュラー=ヒントン寒天培地を用いた寒天希釈法によって、ペニシリンG(PCG)の最小阻止濃度(MIC)を定量した。プレートは5%のCO2中で20〜24時間、35度でインキュベーションした。品質管理のため、肺炎連鎖球菌(Stpreptococcus pneumoniae)49619もMIC測定に使用した。
本発明は、病院検査薬や方法の分野に有用である。
感受性株二株とペニシリン耐性株を寒天培地に接種し、ペニシリン(PCG)を含有したディスクを置き、阻止円の直径を測定した。縦軸には、阻止円の直径をプロットし、横軸には、寒天平板法で測定したペニシリン(PCG)の最小阻止濃度(MIC)をプロットし、相関関係を調べた。耐性菌株(MIC >0.1μg/ml)を阻止円の直径から類推する事は困難である。 図1と同様に菌株を接種し、オキサシリン(MPI)のディスクをおき、阻止円の直径を測定した。縦軸には、阻止円の直径をプロットし、横軸には、寒天平板法で測定したオキサシリン(MPI)の最小阻止濃度(MIC)をプロットし、相関関係を調べた。耐性菌株を阻止円の直径からペニシリン耐性B群連鎖球菌であるか否かを識別することが可能である。 図1の実験をセフチゾキシム(CZX)のディスクで行った。縦軸には、阻止円の直径をプロットし、横軸には、寒天平板法で測定したセフチゾキシム(CZX)の最小阻止濃度(MIC)をプロットし、相関関係を調べた。耐性菌株を阻止円の直径からペニシリン耐性B群連鎖球菌であるか否かを識別することが可能である。 図1の実験をセフチブテン(CTB)のディスクで行った。縦軸には、阻止円の直径をプロットし、横軸には、寒天平板法で測定したセフチブテン(CTB)の最小阻止濃度(MIC)をプロットし、相関関係を調べた。耐性菌株を阻止円の直径からペニシリン耐性B群連鎖球菌であるか否かを識別することが可能である。

Claims (13)

  1. 検出対象である菌が塗布された固体培地の表面に、オキサシリン、セフチゾキシム、およびセフチブテンから成る群から選ばれる少なくとも1種の薬剤を点在させ、上記固体培地を培養し、培養後、上記薬剤の周囲に形成される阻止円の大きさの基準値との違いにより、検出対象である菌がペニシリン耐性B群連鎖球菌(Group B streptococcus)であるか否かを識別する方法。
  2. 前記薬剤の少なくとも2種をそれぞれ点在させる請求項1に記載の方法。
  3. 前記薬剤の3種をそれぞれ点在させる請求項1に記載の方法。
  4. 前記薬剤は、前記薬剤を含有するディスクを用いて、固体培地の表面に点在させる請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. オキサシリン、セフチゾキシム、またはセフチブテンを含有するディスクであって、検出対象である菌が塗布された固体培地の表面に配置されて、ペニシリン耐性グループB群連鎖球菌(Group B streptococcus)識別に用いられるディスク。
  6. ストリップ状の基体にオキサシリン、セフチゾキシム、およびセフチブテンを、距離を置いて配置したことを特徴とするペニシリン耐性B群連鎖球菌(Group B streptococcus)識別用キット。
  7. 前記薬剤がそれぞれディスクに含有されており、各薬剤を含有するディスクをストリップ状の基体に距離を置いて配置した、請求項6または7に記載のキット。
  8. 前記薬剤がストリップ状の基体に距離を置いて含浸されている、請求項6または7に記載のキット。
  9. ストリップ状の基体の表面には、前記薬剤を配置した位置から所定の距離に、阻止円識別用のマークを有する請求項6〜8のいずれか1項に記載のキット。
  10. 阻止円識別用のマークを設ける位置は、阻止円の大きさの基準値に基づいて決定される請求項9に記載のキット。
  11. 請求項5〜10のいずれか1項に記載のキットを検出対象である菌が塗布された固体培地の表面に置き、培養を行い、培養後、前記薬剤の周囲に形成される阻止円の大きさの基準値との違いにより、検出対象である菌がペニシリン耐性B群連鎖球菌(Group B streptococcus)であるか否かを識別する方法。
  12. オキサシリン、セフチゾキシム、およびセフチブテンから成る群から選ばれる少なくとも1種の薬剤を段階的に希釈して含有する複数の液体培地を用意し、各液体培地に、検出対象である菌を接種し、培養を行い、培養後、最小阻止濃度(MIC)の低下の有無および/または程度から、検出対象である菌がペニシリン耐性B群連鎖球菌(Group B streptococcus)であるか否かを識別する方法。
  13. 最小阻止濃度(MIC)の低下が8倍以上である場合、検出対象である菌がペニシリン耐性B群連鎖球菌(Group B streptococcus)であると判定する、請求項12に記載の方法。
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