JP2008017618A - モータおよび当該モータを用いた電動式燃料ポンプ - Google Patents

モータおよび当該モータを用いた電動式燃料ポンプ Download PDF

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Abstract

【課題】モータのコミュテータに回転軸を圧入する際に、スリットの端面と軸孔の内周面との交差部に生ずる応力を低減する。
【解決手段】モータのコミュテータは、軸孔55が形成されたボディ51と、複数のセグメントを有する。ボディ51は、コミュテータボディ52と、スリット61によって互いに分離された複数のセグメント支持部53を有し、この複数のセグメントに複数のセグメント支持部53が配置されている。軸孔55は、回転軸が挿入固定する第1の軸孔55aと、第1の軸孔55aよりセグメント支持部53側に形成され、第1の軸孔55aの内径よりも大きい内径を有する第2の軸孔55bと、第1の軸孔55a側から第2の軸孔55b側に向かって内径が漸次大きくなるように形成されている第3の軸孔55cを有し、スリット61の端面61aは、第3の軸孔55cの、内径が漸次大きくなっている領域内の内周面と交差している。
【選択図】図5

Description

本発明は、モータのコミュテータに回転軸を挿入する際の応力低減技術に関する。
モータの構成部材であるコンミュテータは、例えばリング状の金属円板を樹脂成形される樹脂基盤に一体化したのち、金属円板および樹脂基盤の円板支持領域に、複数のスリットを放射状に切削することにより金属円板を周方向において複数のセグメントに分割する方法で製造される。
上記のような工程でコミュテータを製造する方法は、例えば特開平3ー112341号公報(特許文献1)に開示されている。上記公報に示されるように、樹脂基盤に形成される円板支持領域は、金属円板(セグメント)の内周面を被覆するような態様で形成される。樹脂基盤の中心部には、円板支持領域を含む全体にわたって回転子の軸、すなわち回転軸が圧入される軸孔が形成されており、この軸孔に対する回転軸の圧入は、上述したスリットの切削加工後において行われる。すなわち、スリットは、セグメント側の軸方向の側面と、樹脂基盤側の径方向の端面によって形成されている。
特開平3ー112341号公報
公報に記載の技術によれば、樹脂基盤の円板支持領域に切削されるスリットの端面は、軸孔の内周面に対して、端面から軸方向の一定深さ位置で概ね直交した形状で交差する。このため、金属円板側から樹脂基盤の軸孔に回転軸を圧入する際、スリットの端面と軸孔の内周面との交差部に応力が集中し、亀裂が発生する可能性がある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、モータのコミュテータに回転軸を圧入する際に、スリットの端面と軸孔の内周面との交差部に生ずる応力を低減する上で有効な技術を提供することを目的とする。
上記課題を達成するため、特許請求の範囲の請求項に記載の発明が構成される。
請求項1に記載の発明によれば、回転軸とコミュテータを備えたモータが構成される。コミュテータは、軸方向に沿って軸孔が形成された樹脂製のボディと、複数のセグメントを有する。ボディは、コミュテータボディと、コミュテータボディの軸方向の一端側から軸方向に沿って延び、軸方向に形成されているスリットによって互いに分離された複数のセグメント支持部を有する。そして複数のセグメントは、複数のセグメント支持部に配置されている。またスリットは、コミュテータボディ側に形成される径方向に延びる端面と、当該端面から軸方向に沿って延びる側面によって形成されている。
本発明においては、特徴的構成として、軸孔は、回転軸が挿入固定される第1の軸孔と、第1の軸孔よりセグメント支持部側に形成され、第1の軸孔の内径よりも大きい内径を有する第2の軸孔と、第1の軸孔側から第2の軸孔側に向かって内径が漸次大きくなるように形成されている第3の軸孔を有する。またスリットの端面は、第3の軸孔の、内径が漸次大きくなっている領域内の内周面と交差している。なお本発明における「挿入固定」とは、典型的には、圧入がこれに該当する。また本発明における「漸次大きくなる」は、内径が一定の比率で大きくなる態様、あるいは内径が異なる比率で大きくなる態様のいずれも好適に包含する。
本発明によれば、樹脂製のボディに形成される軸孔は、第1の軸孔側から第2の軸孔側に向かって内径が漸次大きくなる第3の軸孔を有し、そしてスリットの端面が、当該第3の軸孔の、内径が漸次大きくなっている領域内の内周面と交差する構成としている。このことにより、スリットの端面と第3の軸孔の内周面との交差部の、第1の軸孔側から見た交差角度を鈍角に形成することが可能になる。その結果、第1の軸孔に回転軸を挿入固定する際に、交差部に生ずる応力を低減することが可能になり、亀裂の発生を防止あるいは低減できる。なおスリットの端面と第3の軸孔の内周面との交差位置、あるいは交差角度については、発生する応力に応じて適宜調整することが可能である。
(請求項2に記載の発明)
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載のモータにおける第3の軸孔は、その内周面が傾斜面によって形成されている。本発明によれば、第3の軸孔を傾斜面とすることにより、スリットの端面と第3の軸孔の内周面との交差部の交差角度を鈍角に形成し、第1の軸孔に回転軸を挿入固定する際の当該交差部の応力を低減して亀裂の発生を防止あるいは低減できる。
(請求項3に記載の発明)
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の電動式燃料ポンプにおける第3の軸孔は、その内周面が曲面によって形成されている。なお本発明における「曲面」は、円弧状の曲面、あるいは異なる曲率で連続状に形成される曲面のいずれも好適に包含し、また軸孔の内側に膨らむ凸状曲面、あるいは軸孔の外側に凹む凹状曲面のいずれも好適に包含する。本発明によれば、第3の軸孔の内周面を曲面とすることにより、スリットの端面と第3の軸孔の内周面との交差部の交差角度を鈍角に形成し、第1の軸孔に回転軸を挿入固定する際の当該交差部の応力を低減して亀裂の発生を防止あるいは低減できる。
(請求項4に記載の発明)
請求項1〜3のいずれかに記載のモータにおいて、スリットの端面は、少なくとも第3の軸孔の内周面と交差する位置を含む部分において、当該交差する位置に向けて、第3の軸孔の軸中心からの距離が漸次減少するように形成されている。本発明によれば、スリットの端面と第3の軸孔の内周面との交差部の、第1の軸孔側から見た交差角度をより大きな鈍角に形成することが可能となり、このため、第1の軸孔に回転軸を挿入固定する際の当該交差部の応力をより一層低減することができる。なお交差する位置を含む部分の範囲は、発生する応力に応じて適宜調整できる。
(請求項5に記載の発明)
請求項5に記載の発明によれば、回転軸とコミュテータを備えたモータが構成される。コミュテータは、軸方向に沿って軸孔が形成された樹脂製のボディと、複数のセグメントを有する。ボディは、コミュテータボディと、コミュテータボディの軸方向の一端側から軸方向に沿って延び、軸方向に形成されているスリットによって互いに分離された複数のセグメント支持部を有する。そして複数のセグメントは、複数のセグメント支持部に配置されている。またスリットは、コミュテータボディ側に形成される径方向に延びる端面と、当該端面から軸方向に沿って延びる側面によって形成されている。
本発明においては、特徴的構成として、軸孔は、回転軸が挿入固定される第1の軸孔と、第1の軸孔よりセグメント支持部側に形成され、第1の軸孔の内径よりも大きい内径を有する第2の軸孔を有する。またスリットの端面は、第2の軸孔の領域内の内周面と交差し、少なくとも当該交差する位置を含む部分において、当該交差する位置に向けて、第2の軸孔の軸中心からの距離が漸次減少するように形成されている。なお本発明における「漸次減少する」とは、一定の比率で減少する態様、あるいは異なる比率で減少する態様のいずれも好適に包含する。またスリットの端面全体にわたって、第2の軸孔の軸中心からの距離が漸次減少する態様を包含する。
本発明によれば、スリットの端面が、少なくとも第2の軸孔と交差する位置を含む部分において、当該交差する位置に向けて第2の軸孔の軸中心からの距離が漸次減少する構成としたものであり、このことにより、スリットの端面と第3の軸孔の内周面との交差部の、第1の軸孔側から見た交差角度を鈍角に形成することが可能になる。その結果、第1の軸孔に回転軸を挿入固定する際に、交差部に生ずる応力を低減することが可能になり、亀裂の発生を防止あるいは低減できる。なおスリットの端面と第3の軸孔の内周面との交差位置、あるいは交差角度については、発生する応力に応じて適宜調整することが可能である。
(請求項6に記載の発明)
請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載のモータにおけるスリットの端面は、交差する位置に向けて傾斜状に形成されている。本発明によれば、スリットの端面を傾斜状とすることにより、スリットの端面と第2の軸孔の内周面との交差部の交差角度を鈍角に形成し、第1の軸孔に回転軸を挿入固定する際の当該交差部の応力を低減して亀裂の発生を防止あるいは低減できる。
(請求項7に記載の発明)
請求項7に記載の発明によれば、請求項5に記載のモータにおけるスリットの端面は、交差する位置に向けて曲線状に形成されている。なお本発明における「曲線状」とは、円弧状、あるいは異なる曲率で連続して形成される曲線状のいずれも好適に包含し、また第2の軸孔の内側に膨らむ凸状曲線、あるいは第2の軸孔の外側に凹む凹状曲線のいずれも好適に包含する。本発明によれば、スリットの端面を曲線状とすることにより、スリットの端面と第2の軸孔の内周面との交差部の交差角度を鈍角に形成し、第1の軸孔に回転軸を挿入固定する際の当該交差部の応力を低減して亀裂の発生を防止あるいは低減できる。
(請求項8に記載の発明)
請求項8に記載の発明によれば、モータと、モータにより駆動されポンプとを有する電動式燃料ポンプが構成され、当該電動式燃料ポンプは、モータとして、請求項1〜7のいずれか1つに記載のモータを備えている。本発明によれば、コミュテータの軸孔に回転軸を挿入固定する際に、スリットの端面と軸孔の内周面との交差部に発生する応力を低減し、当該交差部に亀裂が発生することを防止あるいは低減することが可能なモータを備えた電動式燃料ポンプを提供できる。
請求項1〜7の発明によれば、モータにおいて、コミュテータに回転軸を圧入する際に、スリットの端面と軸孔の内周面との交差部に生ずる応力を低減する上で有効な技術が提供されることとなった。
請求項8の発明によれば、電動式燃料ポンプにおいて、モータのコミュテータに回転軸を圧入する際に、スリットの端面と軸孔の内周面との交差部に生ずる応力を低減する上で有効な技術が提供されることとなった。
以下、本発明の第1の実施形態につき、図面を参照しつつ説明する。本実施の形態に係るモータは、燃料タンク内に配置される電動式燃料ポンプのポンプ駆動用として適用するため、先ず電動式燃料ポンプの概略につき図1を参照して説明する。図1には電動式燃料ポンプの全体構成が示される。電動式燃料ポンプは、円筒状に形成されたハウジング3に組み込まれたモータ1と、当該モータ1の下部に組み込まれたポンプ2とを主体にして構成されている。
ハウジング3の上下端部にはモータカバー4およびポンプカバー5が取り付けられている。アーマチュア7の軸8の上下端部をモータカバー4およびポンプカバー5にそれぞれ軸受9、10を介して支持することによってアーマチュア7がモータ室6内に回転可能に配置されている。ハウジング3の内壁面には、マグネット11が配設されている。アーマチュア7の軸8上には、コイルと接続されるコミュテータ12が設けられ、アーマチュア7とともに回転される。
モータカバー4には、アーマチュア7のコミュテータ12と摺接するブラシ13およびブラシ13を付勢するスプリング14が組み込まれている。ブラシ13は、チョークコイル15を介して外部接続端子と接続されている。モータカバー4に設けた吐出口16には、チェックバルブ17が組み込まれており、燃料供給パイプが接続される。また、ポンプカバー5の下側には、ポンプボディ18がハウジング3の下端部にかしめ付けによって取り付けられている。ポンプボディ18には、燃料の入口穴19が設けられ、ポンプカバー5には燃料の出口穴20が設けられている。ポンプボディ18とポンプカバー5により形成されるポンプ室には、多数の羽根溝22が円周方向に形成されている円板状のインペラ21が配設されている。このインペラ21は、アーマチュア7の軸8に嵌合によって連結されている。
上記のような電動式燃料ポンプでは、モータ1に通電してアーマチュア7の軸8を回転させると、インペラ21が回転駆動される。これにより、燃料タンク内の燃料が入口穴19より汲み上げられ、出口穴20からモータ室6に入り、吐出口16から燃料供給パイプに吐出される。
図2には本実施の形態に係るモータ1のコミュテータ12が平面図で示され、図3および図4にはコミュテータ12がそれぞれ断面図で示される。図5にはコミュテータ12の軸孔およびその周辺部が拡大断面図として示され、更に図6にはコミュテータ12のスリットによって分割される1つのカーボン部材31と、1つの導電性部材41と、樹脂基盤51の断面構造が示される。
図2〜4に示すように、コミュテータ12は、軸方向に形成されたスリット61によって互いに絶縁された状態で周方向に環状に配置される複数のカーボン部材31と、同じくスリット61によって互いに絶縁された状態で周方向に環状に配置される複数の導電性部材41と、それら複数のカーボン部材31および導電性部材41を支持する樹脂基盤51とを主体として構成される。カーボン部材31、導電性部材41および樹脂基盤51は、導電性部材41が中間に位置するように層状に配置される(図3、図4および図6参照)。各カーボン部材31は、軸方向側の端面(図2の上面)が前述したブラシ13と摺接する。また各導電性部材41は、その外周部分(外径部分)に前述したコイルが接続されるフック43を有する(図3参照)。カーボン部材31と導電性部材41によって、本発明における「セグメント」が構成される。
樹脂基盤51は、本体部52と、当該本体部52の軸方向の一端側から軸方向に沿って延出するセグメント支持部53を有する。樹脂基盤51は、本発明における「樹脂製のボディ」に対応し、本体部52は、本発明における「コミュテータボディ」に対応し、セグメント支持部53は、本発明における「セグメント支持部」に対応する。
なおコミュテータ12は、便宜上図示はしないが、カーボン粉末を圧粉成形および加熱処理して形成したカーボンディスクと、プレス成形した導電性の金属ディスクとを重ね合わせてロー付け等で接合し、当該接合された両ディスクを金型内に挿入配置後、当該金型内に樹脂を充填し、固化することによって一体化し、その後、両ディスクおよび当該ディスクを包んでいる樹脂部材の被覆領域にスリット61を軸方向に所定深さで切削することによって製造される。カーボンディスクをスリット61によって絶縁状態に分割したものがカーボン部材31であり、金属ディスクをスリット61によって絶縁状態に分割したものが導電性部材41であり、それらを一体化する樹脂部材が樹脂基盤51である。本実施の形態では、図2に示すように、周方向に8個のスリット61が切削されており、カーボン部材31および導電性部材41は、周方向に8等分されている。
樹脂基盤51は、図4および図6に示すように、カーボン部材31および導電性部材41の内周および外周を被覆している。ただし、導電性部材41の外周については、スリット61を形成する部分は被覆しているが、フック43の部分は被覆していない。そしてカーボン部材31および導電性部材41の内周を被覆するスリーブ状部53aと、カーボン部材31および導電性部材41の外周を被覆するリング状部53bと、導電性部材の41の側面に接触する平面領域53cとによって前述したセグメント支持部53が構成されている。セグメント支持部53には、カーボン部材31側から本体部52に向って延びる軸方向のスリット61が形成されている。
また樹脂基盤51は、前述したアーマチュア7の軸8が圧入される軸孔55を有する。軸8は、本発明における「回転軸」に対応する。軸8は、軸孔53にカーボン部材31側を挿入口として、図3および図4における左側から右側へと挿入される。軸孔55およびその周辺部が、図5に拡大断面図として示される。軸孔55は、軸挿入方向の奥側(図中の右側)から挿入口側にかけて、所定の圧入代が設定された圧入孔55aと、当該圧入孔55aよりも内径の大きい中間孔55bと、当該中間孔55bよりも内径の大きいテーパー孔55cと、当該テーパー孔55cよりも内径の大きい大径孔55dとを同軸上に順次有する段付孔によって構成されている。圧入孔55aは、本発明における「第1の軸孔」に対応し、大径孔55dは、本発明における「第2の軸孔」に対応し、テーパー孔55cは、本発明における「第3の軸孔」に対応する。上記の各孔は、その全てが樹脂基盤51を金型で成形する際に同時に形成される。
なお圧入代とは、圧入孔55aの内径と軸8の外径の差をいう。圧入孔55aについては、適正な接合力が得られるように圧入代を設定するべくその断面形状が、例えば多角形状に形成される。軸8は、少なくとも軸孔55に挿入される軸方向領域において、その外径が一定である。
カーボン部材31、導電性部材41およびセグメント支持部53を分割するために切削加工される軸方向のスリット61は、軸挿入方向の奥側(図3および図5の右側)、すなわち本体部52側において閉じられている。そしてスリット閉じ端部、すなわち、スリット61の本体部52側端部を閉じた端部とする径方向に延びる端面61aは、軸孔55の軸中心線に対して概ね直角に形成されている。端面61aは、本発明における「コミュテータ側に形成される径方向の端面」に対応する。スリット61は、上記の端面61aと、当該端面61aから軸方向に沿って延びるカーボン部材31側の側面61bとによって形成される。なお図3には、破線の斜線領域によってカーボン部材31側の1つの側面61bが示されている。スリット61は、セグメント支持部53の軸方向の端面から軸孔55中の大径孔55dおよびテーパー孔55cまでの範囲にわたって形成され、本実施の形態では、テーパー孔55cの、内径が漸次大きくなっている領域内のほぼ中間位置まで形成している。
上述したように、本実施の形態では、樹脂基盤51のセグメント支持部53を分離するスリット61の端面61aと軸孔55との交差をテーパー孔55cの領域内で行う構成としたものである。これにより、スリット61の端面61aとテーパー孔55cの内周面との交差角度θ(図5および図6参照)、すなわち、スリット61のコミュテータボディ側を閉じた端部とする径方向に延びる端面61aと、テーパー孔55cの内周面との交差角度θが圧入孔55a側から見て鈍角になる。その結果、圧入孔55aに軸8を圧入する際に、樹脂基盤51において、スリット61の端面61aと軸孔55(テーパー孔55c)の内周面との交差部に生ずる応力を低減することが可能になり、亀裂の発生を防止あるいは低減できる。本実施の形態においては、テーパー孔55cの内周面の軸孔中心線に対する傾斜角度を軸の挿入口側から見て概ね60度に設定した。これにより上記の交差角度θは、概ね120度となる。この場合において、作り易さの観点から上記のテーパー孔55cの傾斜角度については、45度±30度、したがって交差角度θは、135度±30度に設定することが好ましい。
図7には、圧入孔55a側から見たスリット61の端面61aと軸孔55との交差角度が90度に設定された従来のコミュテータ12が示される。この従来のコミュテータ12の構成要素のうち、本実施の形態に係るコミュテータ12と同一の構成要素については、同一符号を付すことでその説明を省略する。
本発明者らは、上述した従来のコミュテータ12と、本実施形態のコミュテータ12とにつき、同一条件下において、軸8の圧入試験を実施した。その結果、図8のグラフに示すように、本実施形態のコミュテータ12は、従来のコミュテータ12に比べて、軸8を圧入孔55aに挿入する際、セグメント支持部53に関してスリット61の端面61aと軸孔55との交差部に発生する応力が、約20パーセント減少することを確認できた。
なお第1の実施形態については、以下のように変更することが可能である。第1の実施形態に関する各変更例が、図9および図10に示される。変更例1は、中間孔55bに連なる孔をテーパー孔55cに変えて内径側に膨らむ円弧状の凸状曲面孔55eによって形成したものである。また変更例2は、テーパー孔55cに変えて外径側に凹む円弧状の凹状曲面孔55fによって形成したものである。これらいずれの変更例においても樹脂基盤51の成形時に同時に形成することができる。
また便宜上図示はしないが、凸状曲面孔55eおよび凹状曲面孔55fについては、一定の曲率によって形成される円弧状に限られるものではなく、異なる曲率で連続する曲面で形成することが可能である。
また第1の実施の形態において説明したテーパー孔55cの傾斜角度、すなわち、スリット61の端面61aとテーパー孔55cの内周面との交差角度θについては、上述した角度に限らず適宜に変更することが可能である。またテーパー孔55c、凸状曲面孔55eあるいは凹状曲面孔55fに対するスリット61の端面61aの形成位置の設定については、適宜調整が可能であり、テーパー孔55c、凸状曲面孔55eあるいは凹状曲面孔55fの、内径が漸次大きくなっている領域内であれば、どこでも構わない。
次に本発明の第2実施形態のコミュテータ12につき、図11〜図14を参照して説明する。この第2の実施形態は、軸孔55については、従来と同様に形成し、セグメント支持部53に形成される軸方向のスリット61の形状、特に軸挿入方向奥側である、本体部52側の端部形状を変えることにより、スリット61の端面61aと軸孔55の内周面との交差部に関し、圧入孔55aから見た交差角度θを鈍角に形成し、これにより交差部の応力低減を図ったものである。
本実施の形態においては、軸孔55は、軸8を圧入するための圧入代が設定された圧入孔55aと、当該圧入孔55aよりも内径の大きい大径孔55dからなる段付孔によって構成されている。スリット61は、大径孔55dの領域内の位置まで形成されている。すなわち、スリット61の本体部52側は、大径孔55dの領域内において径方向に略垂直に延びる端面61aによって閉じた端部とされている。そしてこの端面61aの大径孔55aの内周面と交差する位置を含む部分では、大径孔55dの内周面と交差する位置に向って大径孔55dの軸中心からの距離が漸次減少する傾斜面61cによって形成されている。この傾斜面61cについては、スリット61を切削する際に、同一の工具を用いて同時に切削加工、あるいはスリット61の切削後において、異なる切削工具を用いて切削加工することによって形成される。なお端面61a中の傾斜面61cの領域については、適宜設定可能である。
なおコミュテータ12は、上記の構成以外については、前述した第1の実施形態と同様に構成されるため、第1の実施形態と同一符号を付して、その説明を省略する。
上記のように、本実施の形態によれば、本体部52側に形成される径方向の端面61aの大径孔55d側に、当該大径孔55dの軸中心からの距離が漸次減少する傾斜面61cを形成することにより、スリット61傾斜面61cと軸孔55の内周面との圧入孔55a側から見たときの交差角度θ(図13および図14参照)につき、これを鈍角に形成することができる。このため、前述した第1の実施形態と同様、圧入孔55aに軸8を圧入する際に、セグメント支持部53におけるスリット61の傾斜面61cと軸孔55(大径孔55d)の内周面との交差部に生ずる応力を低減することが可能になり、亀裂の発生を防止あるいは低減できる。この場合において、軸挿入口側から見たときの大径孔55dの軸中心線に対する傾斜面61cの傾斜角度については、当該傾斜面61cの作り易さの観点から45度±30度、したがって上記の交差角度θは、135度±30度に設定することが好ましい。
なお第2の実施形態については、以下のように変更することが可能である。第2の実施形態に関する各変更例が、図15〜図17に示される。変更例1は、図15および図16に示すように、スリット61の本体部52側に形成される径方向の端面61aにつき、大径孔55dの内周面と交差する位置を含む部分を、大径孔55dの軸中心からの距離が漸次減少する円弧状の凹状曲面61dによって形成したものである。
また変更例2は、図17に示すように、上記の端面61aにつき、大径孔55dの内周面と交差する位置を含む部分を、大径孔55dの軸中心からの距離が漸次減少する円弧状の凸状曲面61eによって形成したものである。
上記の各変更例のいずれにおいても第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。なお曲面加工については、適宜切削工具を用いて実施することができるが、例えば、変更例1においては、コミュテータ12の半径よりも大きい半径を有するカッターC(図15に斜線領域で示される)を用いて、スリット61を加工する際に、同時に行うことが可能である。
また便宜上図示はしないが、凹状曲面61dおよび凸状曲面61eについては、一定の曲率によって形成される円弧状に限られるものではなく、異なる曲率で連続する曲面で形成することが可能である。
また第2の実施の形態における傾斜面61cの軸中心に対する傾斜角度については、適宜変更することが可能であるし、また傾斜面61c、凹状曲面61dあるいは凸状曲面61eの、大径孔55dに対する軸方向の終端位置(交差位置)の設定については、大径孔55dの領域内であれば、どこでも構わない。また傾斜面61c、凹状曲面61dあるいは凸状曲面61eが形成される領域(軸方向長さ)についても適宜調整可能である。また実施の形態で説明した各構成のいずれか一つあるいは複数を組み合わせることもできる。
なお、第1の実施形態の各変更例で説明した凸状曲面孔55e、凹状曲面孔55fについては、スリット61の端面61aとの交差部において、曲線の接線と端面61aとのなす交差角度θが鈍角となるように交差点が定められ、また第2の実施形態の変更例で説明した凹状曲面61d、凸状曲面61eについては、大径孔55dの内周面との交差部において、曲線の接線と大径孔55dの内周面とのなす交差角度θが鈍角となるように交差点が定められる。
電動式燃料ポンプの全体構成を示す断面図である。 第1の実施形態に係るコミュテータの構成を示す平面図である。 図2のA−A線断面図である。 図2のB−B線断面図である。 軸孔およびその周辺を示す拡大断面図である。 1つのカーボン部材、導電性部材、および樹脂基盤の断面構造を示す斜視図である。 従来のコミュテータに係る1つのカーボン部材、導電性部材、および樹脂基盤の断面構造を示す斜視図である。 第1の実施形態に係るコミュテータと、従来のコミュテータについて行った、軸の圧入試験結果を示す比較グラフである。 第1の実施形態に係る変更例1の軸孔およびその周辺構造を示す断面図である。 第1の実施形態に係る変更例2の軸孔およびその周辺構造を示す断面図である。 第2の実施形態に係るコミュテータの構成を示す平面図である。 図11のC−C線断面図である。 軸孔およびその周辺を示す拡大断面図である。 1つのカーボン部材、導電性部材、および樹脂基盤の断面構造を示す斜視図である。 第2の実施形態に係る変更例1の軸孔およびその周辺構造を示す断面図である。 変更例1の1つのカーボン部材、導電性部材、および樹脂基盤の断面構造を示す斜視図である。 第2の実施形態に係る変更例2の軸孔およびその周辺構造を示す断面図である。
符号の説明
1 モータ
2 ポンプ
3 ハウジング
4 モータカバー
5 ポンプカバー
6 モータ室
7 アーマチュア
8 軸(回転軸)
9 軸受
10 軸受
11 マグネット
12 コミュテータ
13 ブラシ
14 スプリング
15 チョークコイル
16 吐出口
17 チェックバルブ
18 ポンプボディ
19 入口穴
20 出口穴
21 インペラ
22 羽根溝
31 カーボン部材
41 導電性部材
43 フック
51 樹脂基盤(樹脂製のボディ)
52 本体部(コミュテータボディ)
53 セグメント支持部
53a スリーブ状部
53b リング状部
53c 平面領域
55 軸孔
55a 圧入孔(第1の軸孔)
55b 中間孔(第2の軸孔)
55c テーパー孔(第3の軸孔)
55d 大径孔
55e 凸状曲面
55f 凹状曲面
61 スリット
61a 端面
61b 側面
61c 傾斜面
61d 凹状曲面
61e 凸状曲面

Claims (8)

  1. 回転軸とコミュテータを備え、前記コミュテータは、軸方向に沿って軸孔が形成された樹脂製のボディと、複数のセグメントを有し、前記ボディは、コミュテータボディと、前記コミュテータボディの軸方向の一端側から軸方向に沿って延び、軸方向に形成されているスリットによって互いに分離された複数のセグメント支持部を有し、前記複数のセグメントは、前記複数のセグメント支持部に配置され、前記スリットは、前記コミュテータボディ側に形成される径方向に延びる端面と、当該端面から軸方向に沿って延びる側面によって形成されているモータであって、
    前記軸孔は、前記回転軸が挿入固定される第1の軸孔と、前記第1の軸孔より前記セグメント支持部側に形成され、前記第1の軸孔の内径よりも大きい内径を有する第2の軸孔と、前記第1の軸孔側から第2の軸孔側に向かって内径が漸次大きくなるように形成されている第3の軸孔を有し、
    前記スリットの端面は、前記第3の軸孔の、内径が漸次大きくなっている領域内の内周面と交差している、
    ことを特徴とするモータ。
  2. 請求項1に記載のモータであって、前記第3の軸孔は、その内周面が傾斜面によって形成されていることを特徴とするモータ。
  3. 請求項1に記載のモータであって、前記第3の軸孔は、その内周面が曲面によって形成されていることを特徴とするモータ。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のモータであって、前記スリットの端面は、少なくとも前記第3の軸孔の内周面と交差する位置を含む部分において、前記交差する位置に向けて、前記第3の軸孔の軸中心からの距離が漸次減少するように形成されていることを特徴とするモータ。
  5. 回転軸とコミュテータを備え、前記コミュテータは、軸方向に沿って軸孔が形成された樹脂製のボディと、複数のセグメントを有し、前記ボディは、コミュテータボディと、前記コミュテータボディの軸方向の一端側から軸方向に沿って延び、軸方向に形成されているスリットによって互いに分離された複数のセグメント支持部を有し、前記複数のセグメントは、前記複数のセグメント支持部に配置され、前記スリットは、前記コミュテータボディ側に形成される径方向に延びる端面と、当該端面から軸方向に沿って延びる側面によって形成されているモータであって、
    前記軸孔は、前記回転軸が挿入固定される第1の軸孔と、前記第1の軸孔より前記セグメント支持部側に形成され、前記第1の軸孔の内径よりも大きい内径を有する第2の軸孔を有し、
    前記スリットの端面は、前記第2の軸孔の領域内の内周面と交差し、少なくとも当該交差する位置を含む部分において、当該交差する位置に向けて、前記第2の軸孔の軸中心からの距離が漸次減少するように形成されている、
    ことを特徴とするモータ。
  6. 請求項6に記載のモータであって、前記スリットの端面は、前記交差する位置に向けて傾斜状に形成されていることを特徴とするモータ。
  7. 請求項6に記載のモータであって、前記スリットの端面は、前記交差する位置に向けて曲線状に形成されていることを特徴とするモータ。
  8. モータと、前記モータにより駆動されるポンプとを有する電動式燃料ポンプであって、
    前記モータとして、請求項1〜7のいずれか1つに記載のモータを備えていることを特徴とする電動式燃料ポンプ。
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