JP2008012159A - 還元性表面処理剤、透析膜及び人工腎臓 - Google Patents
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Abstract
【課題】生体温度よりも低温の所定温度(T)よりも低い温度では親水性であり、該所定温度よりも高い温度では疎水性となる温度応答性を有した還元性表面処理剤を提供する。
【解決手段】
生体温度よりも低温の所定温度(T)よりも低い温度では親水性であり、該所定温度(T)よりも高い温度では疎水性であるポリマー材料に脂溶性還元性物質を結合させた還元性表面処理剤。ポリマー材料は、イニファターにエチルアクリレートなどのビニル系モノマーを光照射リビング重合させたスター型重合体よりなるホモポリマーに対し、N−イソプロピルアクリルアミドをブロック重合させたものである。このポリマー材料の低温の水溶液にビタミンE等の脂溶性還元性物質の有機溶媒溶液を添加し、混合する。
【選択図】なし
【解決手段】
生体温度よりも低温の所定温度(T)よりも低い温度では親水性であり、該所定温度(T)よりも高い温度では疎水性であるポリマー材料に脂溶性還元性物質を結合させた還元性表面処理剤。ポリマー材料は、イニファターにエチルアクリレートなどのビニル系モノマーを光照射リビング重合させたスター型重合体よりなるホモポリマーに対し、N−イソプロピルアクリルアミドをブロック重合させたものである。このポリマー材料の低温の水溶液にビタミンE等の脂溶性還元性物質の有機溶媒溶液を添加し、混合する。
【選択図】なし
Description
本発明は、ビタミンEなどの脂溶性還元性物質を担持するのに好適な還元性表面処理剤と、この還元性表面処理剤を用いた透析膜及び人工腎臓に関する。
血液透析器、血液同時濾過透析器及び血液濾過器等の人工腎臓においては、体外血液循環の際、血液中の白血球及び/又は血小板の活性化等が生じることによると思われる合併症等が併発し、人工透析患者の深刻な問題となっている。また、腎不全患者では腎臓に多く局在している酵素アルデヒドレダクダーゼが欠落しており、長期的に血液透析等を行っている患者の中には、血中抗酸化作用の低下や過酸化脂質の高値などが確認されており(所謂、酸化ストレス)、これに起因すると思われる長期人工透析患者の動脈硬化性疾患等が増加している。
そこで、これらの問題を解決するため、生体内抗酸化作用、生体膜安定化作用、血小板凝集抑制作用などの種々の生理作用を有するビタミンEの被膜を透析膜の表面に被覆する人工臓器が提案されている(特公昭62−41738号)。
同号公報では、ビタミンEをエタノール等の有機溶媒に溶解させてなる溶液中に中空糸膜を浸漬した後、引き上げて乾燥させることにより、ビタミンE皮膜を中空糸膜表面に形成している。
特公昭62−41738号
上記のように高分子製中空糸膜を有機溶媒と接触させた場合、中空糸膜が有機溶媒によって劣化するおそれがある。
本発明は、かかる問題点を解決するために、生体温度よりも低温の所定温度(T)よりも低い温度では親水性であり、該所定温度よりも高い温度では疎水性となる温度応答性を有しており、従って疎水性の脂溶性還元性物質を水溶性として扱うことができ、且つ塗布した後は疎水性となり、透析膜表面に固定することが可能である還元性表面処理剤と、この還元性表面処理剤を用いた透析膜及び人工腎臓とを提供することを目的とする。
本発明の還元性表面処理剤は、ポリマー材料と、該ポリマー材料に結合した脂溶性還元性物質とからなる還元性表面処理剤において、該ポリマー材料は、生体温度よりも低温の所定温度(T)よりも低い温度では親水性であり、該所定温度(T)よりも高い温度では疎水性であることを特徴とするものである。
前記ポリマー材料は、疎水性ホモポリマーと、N−イソプロピルアクリルアミド等のN−アルキルアクリルアミドとのブロック共重合体であることが好ましい。
この疎水性ホモポリマーの分子量は、500〜300,000が好ましい。
このブロック共重合体の分子量は、3,000〜500,000であることが好ましい。
前記所定温度(T)は、10〜30℃特に22〜28℃とりわけ24〜26℃の間の温度であることが好ましい。
前記疎水性ホモポリマーは、N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に3個以上有する化合物をイニファターとし、これにビニル系モノマーを光照射リビング重合させたスター型重合体であることが好ましい。
このN,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に3個以上有する化合物としては、ベンゼン環を核とし、この核に分岐鎖として3個以上の該N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団が結合しているものが好ましい。
このビニル系モノマーは、アルキル(メタ)アクリレート特にエチルアクリレートが好ましい。
脂溶性還元性物質は、ビタミンE、多価フェノール、炭素数10個以上の不飽和高級脂肪酸、及び炭素数10個以上のポリエンの少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の還元性表面処理剤は、上記所定温度よりも低い温度では親水性であり、水溶性である。これは、本発明の還元性表面処理剤のポリマー材料の一部を構成するN−イソプロピルアクリルアミドなどのN−アルキルアクリルアミドのポリマー鎖は、低温度では親水性になり高温度では疎水性になるという温度依存性を有していることに起因する。このため、本発明の還元性表面処理剤を前記所定温度よりも低い温度で水に溶解させ、水中において脂溶性還元性物質を還元性表面処理剤に結合させ、この溶液を透析膜と接触させる。その後、所定温度よりも高い温度とすることにより、脂溶性還元性物質が結合した還元性表面処理剤が疎水性(水不溶性)となり、透析膜に付着残留する。
この還元性表面処理剤は、有機溶媒を用いることなく、水溶液として透析膜表面に接触させることができるので、透析膜の劣化が防止される。
本発明の還元性表面処理剤は、生体温度よりも低温の所定温度(T)よりも低い温度では親水性であり、該所定温度(T)よりも高い温度では疎水性であるポリマー材料に脂溶性還元性物質を結合させたものである。
この脂溶性還元性物質としては、ビタミンE、多価フェノール、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサンエン酸、βカロテンなどが例示される。
ビタミンEは、脂溶性であり、一例を挙げると、例えばα−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール等のトコフェロール類、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等のトコトリエノール類等がある。
多価フェノールとしては、カテコール、レゾルシノール、没食子酸、カテキンなどが例示される。
このポリマー材料としては、疎水性ホモポリマーと、N−イソプロピルアクリルアミド等のN−アルキルアクリルアミドとのブロック共重合体が好ましい。
この疎水性ホモポリマーは、N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に3個以上有する化合物をイニファターとし、これにビニル系モノマーを光照射リビング重合させたスター型重合体が好適である。
なお、本明細書において、イニファターとは、光照射によりラジカルを発生させる重合開始剤、連鎖移動剤としての機能と共に、成長末端と結合して成長を停止する機能、さらに光照射が停止すると重合を停止させる重合開始・重合停止剤として機能する分子のことである。
N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に3個以上有する化合物としては、ベンゼン環に該N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団が3個以上分岐鎖として結合しているものが好適であり、具体的には次が例示される。即ち、3分岐鎖としては、1,3,5−トリス(ブロモメチル)ベンゼンとN,N−ジチオカルバミル酸ナトリウム(ナトリウムN,N−ジチオカルバメート)とをエタノール中で付加反応させて得られる1,3,5−トリス(N,N−ジチオカルバミルメチル)ベンゼンであり、4分岐鎖としては、1,2,4,5−テトラキス(ブロモメチル)ベンゼンとN,N−ジチオカルバミル酸ナトリウムとをエタノール中で付加反応させて得られる1,2,4,5−テトラキス(N,N−ジチオカルバミルメチル)ベンゼンであり、6分岐鎖としては、ヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼンとナトリウムN,N−ジチオカルバメートとをエタノール中で付加反応させて得られるヘキサキス(N,N−ジチオカルバミルメチル)ベンゼンである。
上記のイニファターは、アルコール等の極性溶媒に対しては殆ど不溶であるが、非極性溶媒には易溶である。この非極性溶媒としては炭化水素、ハロゲン化アルキル又はハロゲン化アルキレンが好適であり、特にベンゼン、トルエン、クロロホルム又は塩化メチレン特にトルエンが好適である。
このイニファターに重合させるモノマーとしては、ビニル系モノマーが好適であり、特に炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートすなわちアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートが好適であり、とりわけエチルアクリレート(アクリル酸エチル)が好ましい。
イニファターと上記モノマーとを反応させるには、イニファター及びモノマーを含んでなる原料溶液を調製し、これに光照射することによって、イニファターに対しモノマーが結合した反応生成物(分岐型スター型重合体)を生成させる。
このモノマーの該原料溶液中の濃度は1重量%以上、例えば3〜10重量%が好適である。
イニファターの濃度は0.5〜100mM/L程度が好適である。
照射する光の波長は240〜400nmが好適であり、とりわけ300〜400nmが好適である。光の照射時間は照射強度にも依存するが、1〜60分程度が好適であり、1μW/cm2〜1mW/cm2程度の低い照射強度で1分〜30分程度が特に好適である。
この光照射により、反応液中に目的とする分岐型スター型重合体が生成するので、必要に応じ精製してスター型重合体よりなる疎水性ホモポリマーを得る。
このスター型重合体の分子量は分岐鎖の鎖数によるが、1,000〜500,000、特に2,000〜100,000、とりわけ3,000〜60,000程度が好ましい。
このようにして生成したスター型重合体よりなる疎水性ホモポリマーに対し、N−アルキルアクリルアミドをブロック共重合させて目的とするポリマー材料とする。なお、このポリマー材料の合成の際には、N−アルキルアクリルアミドを先にイニファターに重合させ、その後で、アルキルアクリレートやアルキルメタクリレートなどのアクリル酸やメタクリル酸などのビニル系モノマーを重合させてもブロック重合体を得ることも可能である。
ポリマー材料の分岐鎖の一部を構成しているこのN−アルキルアクリルアミドのポリマー鎖は、低温度では親水性、高温では疎水性となる温度依存性を有し、これにより上記ポリマー材料が上記温度応答性を具備するようになる。
N−アルキルアクリルアミドのアルキル基の炭素数は1〜10が好ましく、N−アルキルアクリルアミドとしては特にN−イソプロピルアクリルアミドが好適である。
N−イソプロピルアクリルアミドなどのN−アルキルアクリルアミドをブロック共重合させるには、上記のようにして合成したスター型重合体ホモポリマーをクロロホルム等の溶媒に溶解させ、これにN−アルキルアクリルアミドを混合し、光を照射して重合させればよい。この重合反応を開始する際の溶液中におけるスター型ホモポリマーの濃度は0.01〜10重量%程度程度が好適であり、N−アルキルアクリルアミドの濃度は0.3〜30重量%程度が好適である。光の照射条件は、光波長300〜400nm、照射時間1〜60分、照射強度1μW〜10mW/cm2程度が好適である。
このブロック共重合体(ポリマー材料)の分子量は3,000〜500,000、特に10,000〜100,000であることが好ましい。
なお、このポリマー材料を構成するスター型ポリマーの分岐鎖が多いほど、還元性表面処理剤の透析膜への付着が安定する。
この理由としては、分岐鎖中におけるN−アルキルアクリルアミドのポリマー鎖が透析膜への親和性を有していること;還元性表面処理剤は、このN−アルキルアクリルアミドのポリマー鎖を介して透析膜に付着すること;従って、分岐鎖が多いほど、還元性表面処理剤の透析膜への付着性が向上すること;仮に1本の分岐鎖が透析膜から剥離しても、他の分岐鎖によって還元性表面処理剤の透析膜への付着が保たれ、この間に、剥離した分岐鎖が再び透析膜に付着すること;が考えられる。
また、スター型ポリマー材料のベンゼン核から上記分岐鎖が放射方向に延出している。このベンゼン核は透析膜への付着性が乏しく、放射方向に延出した分岐鎖の数が多いほど、ベンゼン核付近の透析膜からの離反方向の動きが抑制される。従って、この理由によっても、分岐鎖の数が多いほど、還元性表面処理剤の透析膜への付着性が向上すると考えられる。
このポリマー材料と結合する脂溶性還元性物質としては、ビタミンE、多価フェノール、炭素数10個以上の不飽和高級脂肪酸、炭素数10個以上のポリエンなどが好適である。なお、脂溶性還元性物質と共に抗血栓剤をポリマー材料に結合させてもよい。抗血栓剤としてはアルガトロバンが好適である。
このポリマー材料に脂溶性還元性物質を結合させるには、ポリマー材料の低温の水溶液(濃度は好ましくは、0.01g/dL〜50g/dL程度)に脂溶性還元性物質の有機溶媒溶液を添加し、混合すればよい。この有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール、ジエチルエーテル等があるが、好ましくは低級アルコールであり、特にエタノールである。有機溶媒に対する脂溶性還元性物質の溶解濃度は0.1〜50重量%程度が好ましい。
脂溶性還元性物質はポリマー材料の分岐鎖部分に静電的ないしは配位結合的に結合する。脂溶性還元性物質は、好ましくはポリマー材料1分子当り0.1〜1000分子結合する。
1,2,4,5−テトラキス(N−Nジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼンをイニファターとし、これに(メタ)クリル酸メチル、(メタ)クリル酸エチル又は(メタ)クリル酸ブチルを重合させて分子量500〜100,000程度の疎水性ホモポリマーとし、さらにこれにN−イソプロピルアクリルアミドをブロック重合させて分子量3,000〜500,000としたポリマーは、22〜28℃例えば約25℃よりも高い温度で水不溶性であり、それよりも低い温度で水溶性である。
従って、脂溶性還元性物質を担持した25℃よりも低い温度例えば4〜20℃程度の還元性表面処理剤の水溶液(濃度は好ましくは、0.01g/dL〜50g/dL程度)を透析膜表面に浸漬、塗布などにより付着させ、25℃よりも高い例えば30〜37℃の温度に昇温させ、必要に応じ乾燥させることにより、水不溶性の脂溶性還元性物質含有皮膜を透析膜表面に形成することができる。透析膜表面への還元性表面処理剤の付着量は、脂溶性還元性物質が透析膜表面に0.01〜100mg/cm2程度の割合にて存在する量とするのが好ましい。
実施例1
i)イニファターの合成
下記反応式に従って、1,2,4,5−テトラキス(N−Nジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼンを次のようにして合成した。
i)イニファターの合成
下記反応式に従って、1,2,4,5−テトラキス(N−Nジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼンを次のようにして合成した。
1,2,4,5−テトラキス(ブロモメチルベンゼン)2.0gとN,N−ジエチルジチオカルバミル酸ナトリウム12.0gをエタノール10mL中へ加え、遮光下で室温で4日間攪拌した。沈殿物を濾過し、減圧乾燥後、クロロホルム40mLへ溶解し、50mLの水を加えて抽出分離し、臭化ナトリウムを除去した。この操作を3回繰り返した後、クロロホルム層を約10gの硫酸マグネシウムで24時間乾燥させて、濾過後、n−ヘキサンを加え、再結晶を行って精製し、微かに淡青色を帯びた1,2,4,5−テトラサキス(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼンの白色結晶を得た(収率90%)。
1H NMR(in CDCl3)の測定結果はσ7.48(s,2H,Ar−H),σ4.57(s,2H×4,Ar−CH2S−),σ4.03(q,2H×4,N−CH2−,J=10.7Hz),σ3.72(q,2H×4,N−CH2−,J=10.7Hz),σ1.26−1.31(t,3H×8,−CH2−CH3,J=6.6Hz)となった。
ii)光重合による4分岐型スター型重合体よりなる疎水性ホモポリマーの合成
下記反応式に従い、次のようにして、1,2,4,5−テトラキス(N,N−ジエチルジチオカルバミル(ポリエチルアクリレート)(以下、pEAと記載することがある。)よりなる疎水性ホモポリマーの合成を行った。
下記反応式に従い、次のようにして、1,2,4,5−テトラキス(N,N−ジエチルジチオカルバミル(ポリエチルアクリレート)(以下、pEAと記載することがある。)よりなる疎水性ホモポリマーの合成を行った。
即ち、上記i)により合成した1,2,4,5−テトラサキス(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼン0.43gを10mLのクロロホルムへ溶解し、エチルアクリレート5gを加えて混合し、全量をクロロホルムで20mLに調整した。石英セル中で激しく攪拌しながら高純度窒素ガスで5分間パージした後に、200W高圧水銀灯で紫外光を30分間照射した。照射強度は照度計(UVR−1,TOPCON,Tokyo,Japan)を使用して1mW/cm2(250nm)に調整した。
重合溶液をエバポレーターで濃縮し、ジエチルエーテルで重合物を再沈殿させて精製し、少量の水へ溶解し、0.2μmフィルターで濾過してから凍結乾燥させて4分岐型スター型ホモポリマー1,2,4,5−テトラキス(N,N−ジエチルジチオカルバミル(ポリエチルアクリレート)(pEA)よりなるカチオン性ポリマーを得た(重合率40%)。分子量はGPCにより5000と測定された。
iii)疎水性ホモポリマーへのN−イソプロピルアクリルアミドのブロック共重合によるポリマー材料(4分岐型pEA−b−pNIPAM)の合成
下記反応式に従い、次のようにして、テトラキス(N,N−ジエチルジチオカルバミル(ポリエチルアクリレート)−ブロック−ポリ−(N−イソプロピルアクリルアミド)(以下、pEA−b−pNIPAMと記すことがある。)の合成を行った。
下記反応式に従い、次のようにして、テトラキス(N,N−ジエチルジチオカルバミル(ポリエチルアクリレート)−ブロック−ポリ−(N−イソプロピルアクリルアミド)(以下、pEA−b−pNIPAMと記すことがある。)の合成を行った。
即ち、上記ii)で合成した4分岐型pDEAホモポリマー645mgを10mLのクロロホルムへ溶解し,N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)2.2gを混合して全量をクロロホルムで20mLに調整した。ii)と同様の条件で光照射重合を行って、クロロホルム/ジエチルエーテル系で精製を行って4分岐型pEAとポリN−イソプロピルアクリルアミド(pNIPAM)とのブロックポリマーよりなるポリマー材料を得た(重合率80%)。分子量はGPCにより12,000と測定された。
iv)ビタミンEの担持
上記iii)で合成したポリマー材料(4分岐型pEA−b−pNIPAM)を20℃に温調した水に溶解させ、1.0%溶液を調製した。この溶液100mLとビタミンEの1%エタノール溶液30mLとを混合して激しく撹拌することで乳化させた。静置後、水相を回収し、痕跡の沈殿物(フリーのビタミンE)を濾別した。
37℃へ温調したプレート上へ乗せたナイロン6−10製フィルム(厚さ50μm)の上へこの回収した水相を滴下し、37℃の生理食塩水で10時間洗浄し、風乾した。乾燥後、フィルムの熱分析を行うと、130℃付近にビタミンEの融解によるピークが確認され、フィルム上にビタミンEが固定されたことが分かった。
上記iii)で合成したポリマー材料(4分岐型pEA−b−pNIPAM)を20℃に温調した水に溶解させ、1.0%溶液を調製した。この溶液100mLとビタミンEの1%エタノール溶液30mLとを混合して激しく撹拌することで乳化させた。静置後、水相を回収し、痕跡の沈殿物(フリーのビタミンE)を濾別した。
37℃へ温調したプレート上へ乗せたナイロン6−10製フィルム(厚さ50μm)の上へこの回収した水相を滴下し、37℃の生理食塩水で10時間洗浄し、風乾した。乾燥後、フィルムの熱分析を行うと、130℃付近にビタミンEの融解によるピークが確認され、フィルム上にビタミンEが固定されたことが分かった。
Claims (15)
- ポリマー材料と、該ポリマー材料に結合した脂溶性還元性物質とからなる還元性表面処理剤において、
該ポリマー材料は、生体温度よりも低温の所定温度(T)よりも低い温度では親水性であり、該所定温度(T)よりも高い温度では疎水性であることを特徴とする還元性表面処理剤。 - 請求項1において、前記ポリマー材料は、疎水性ホモポリマーとN−アルキルアクリルアミドとのブロック共重合体であることを特徴とする還元性表面処理剤。
- 請求項2において、N−アルキルアクリルアミドのアルキル基の炭素数は1〜10であることを特徴とする還元性表面処理剤。
- 請求項3において、N−アルキルアクリルアミドはN−イソプロピルアクリルアミドであることを特徴とする還元性表面処理剤。
- 請求項2ないし4のいずれか1項において、疎水性ホモポリマーの分子量が500〜300,000であることを特徴とする還元性表面処理剤。
- 請求項5において、該ブロック共重合体の分子量が3,000〜500,000であることを特徴とする還元性表面処理剤。
- 請求項2ないし6のいずれか1項において、前記疎水性ホモポリマーは、N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に3個以上有する化合物をイニファターとし、これにビニル系モノマーを光照射リビング重合させたスター型重合体であることを特徴とする還元性表面処理剤。
- 請求項7において、N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に3個以上有する化合物は、ベンゼン環を核とし、この核に分岐鎖として3個以上の該N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団が結合していることを特徴とする還元性表面処理剤。
- 請求項7又は8において、ビニル系モノマーがアルキル(メタ)アクリレートであることを特徴とする還元性表面処理剤。
- 請求項9において、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数が1〜20であることを特徴とする還元性表面処理剤。
- 請求項10において、アルキル(メタ)アクリレートがエチルアクリレートであることを特徴とする還元性表面処理剤。
- 請求項1ないし11のいずれか1項において、前記所定温度(T)は、10〜30℃の間の温度であることを特徴とする還元性表面処理剤。
- 請求項1ないし12のいずれか1項において、脂溶性還元性物質は、ビタミンE、多価フェノール、炭素数10個以上の不飽和高級脂肪酸、及び炭素数10個以上のポリエンの少なくとも1種であることを特徴とする還元性表面処理剤。
- 請求項1ないし13のいずれか1項に記載の還元性表面処理剤が膜表面に付着していることを特徴とする透析膜。
- 請求項14に記載の透析膜を有することを特徴とする人工腎臓。
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