JP2008011826A - 新規微生物およびそれを用いたリコペンの製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
カロテノイド生産性ブレバンジモナス属細菌の育種により獲られ、リコペンを選択的に且つ大量に生産することができる微生物およびそれを用いたリコペンの製造法を提供する。
【解決の手段】
カロテノイド生産性ブレバンジモナス属細菌SD212株の育種により得られ、リコペンがカロテノイド類の合計量の80重量%以上しめるリコペン生産性微生物および当該微生物を培養し、培養後の菌体又は培養液からリコペンを回収するリコペンの製造法を用いる。
【選択図】なし
カロテノイド生産性ブレバンジモナス属細菌の育種により獲られ、リコペンを選択的に且つ大量に生産することができる微生物およびそれを用いたリコペンの製造法を提供する。
【解決の手段】
カロテノイド生産性ブレバンジモナス属細菌SD212株の育種により得られ、リコペンがカロテノイド類の合計量の80重量%以上しめるリコペン生産性微生物および当該微生物を培養し、培養後の菌体又は培養液からリコペンを回収するリコペンの製造法を用いる。
【選択図】なし
Description
本発明は飼料・食品用色素、抗酸化剤として有用なリコペンの製造に用いられる新規微生物およびそれを用いたリコペンの製造法に関する。
リコペンはトマトやスイカに含まれる赤色色素であり、天然の食用色素として有用な化合物である。近年では、その優れた抗酸化活性による発癌抑制効果が着目され、サプリメントなど健康食品への応用もなされている。リコペンの主な供給はトマト等農作物からの抽出であるが、これらの天然物はリコペンの含量が少ないため大量の原料が必要となり、また、生産コストがかかる。そこで、より効率的で安定供給可能な生産方法の確立が望まれている。生産性の改良として藻類による生産(例えば特許文献1参照)やケカビによる生産(例えば特許文献2参照)が示されている。しかしながらこれらの微生物は通常の細菌と比べて発酵に時間がかかり、発酵法が複雑である。また細胞壁が硬いため抽出に複雑な工程を経る必要があるという問題がある。培養が容易で目的物の抽出がしやすい微生物での合成が望まれている。
また、今回産生細菌として用いたブレバンジモナス属細菌SD212株はβ−カロテンやアスタキサンチンなどのカロテノイドを産生することが知られているが、代謝中間体であるリコペンは蓄積しない。またカロテノイド類の総生産量も培地1リットル当たり約1mg程度であり、生産性も低い。よって、本細菌を用いてカロテノイド類の発酵生産を行うには更なる生産性の向上が望まれている。
本発明は、リコペンを選択的に且つ大量に生産することができる微生物およびそれを用いたリコペンの製造法を提供することを目的とする。
本発明らは上記課題に関し鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、カロテノイド生産性海洋性ブレバンジモナス属細菌SD212株の育種により得られることを特徴とする、リコペン生産性が向上したブレバンジモナス属細菌である。また、本発明は、そのような細菌を培養し、菌体又は培養液からリコペンを回収することを特徴とする、リコペンの製造法である。以下本発明を詳細に説明する。
本発明の微生物は海洋性ブレバンジモナス属細菌SD212株の育種により誘導された新規な微生物である。SD212株は株式会社海洋バイオテクノロジー研究所により発見された微生物であり、海洋バイオテクノロジー研究所のカルチャーコレクション(MBIC)に公開されている。SD212株は細胞中にアスタキサンチンやアドニキサンチン、またはその水酸化修飾体をカロテノイドとして蓄積することが知られているが、リコペンは中間代謝物として速やかに次の代謝物に変換されるため、HPLCなどでは検出できない。本発明の微生物はSD212株の育種により誘導されるが、育種の方法としては自然突然変異により派生した優良菌株を選別していく方法などの他に、変異原物質や紫外線で細胞を処理することによって変異を加速させたのちに生産性が向上した菌株を選別していく方法や、以上の様な方法で得られた性質の異なる菌株同士を細胞融合させる方法など様々な方法を行なうことができる。特に変異原物質を用いる方法は短期間に有用な菌株を得る方法として好ましい。変異原物質としてはN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、メタンスルホンサンエチル等の化合物が使用できる。
一例をあげると、予め培養して得たSD212株の菌体をこれらの化合物の水溶液に懸濁して一定時間放置した後に遠心分離などの方法で菌体を回収して変異原物質を除去した後に平板培地上で培養し、優良菌株のコロニーを選択する。コロニーの選択は任意に多数のコロニーを選択、分離・液体培養を行ない、回収した菌体からカロテノイドを溶媒抽出し、抽出液の470nm付近の吸光度を測定することで行われる。この様にして一次選抜を行ない、次いで抽出液の組成をHPLCなどで分析してカロテノイド生産性の向上した菌株を絞り込むことにより優良な菌株を得ることができる。また、種々の色調のコロニーを多数選択することにより、中には代謝中間体を蓄積する株をスクリーニングすることができる。これはカロテノイドの代謝を担う酵素の活性低下または活性欠損によるものであり、本発明におけるリコペンを蓄積するTSTT004株はリコペンシクラーゼ(リコペンからβ−カロテンを合成する酵素)の活性が顕著に低下しているものと考えられる。なお、TSTT004株は受託番号:FERM P−20674として、特許生物寄託センターに寄託されている。
本発明に用いる培地としては、細菌が増殖しカロテノイドを生産し得るものであればいずれを使用してもよく、炭素源には廃糖蜜、グルコース、フルクトース、マルトース、ショ糖、デンプン、乳糖、グリセロール、酢酸などが、窒素源にはコーンスティープリカー、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、大豆粕等の天然成分や、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩等やグルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン等のアミノ酸類が、無機塩にはリン酸1ナトリウム、リン酸2ナトリウム、リン酸1カリウム、リン酸2カリウム等のリン酸塩や塩化ナトリウムなどが、金属イオンには塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、塩化第1鉄、塩化第2鉄、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄、塩化カルシウム・2水和物、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸銅、塩化銅、硫酸マンガン、塩化マンガンなどが、ビタミン類として酵母エキスやビオチン、ニコチン酸、チアミン、リボフラビン、イノシトール、ピリドキシン等が使用できる。
本発明における培養の条件については、細菌が増殖しカロテノイドを生産し得るものであれば特に限定はないが、培養温度は15〜35℃が好ましく、pHは6〜9が好ましく、培養時間は24〜200時間が好ましい。
本発明におけるカロテノイドの分析方法は、菌体または培養液から安定に効率良く回収されれば特に限定はなく、例えば抽出溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジクロロメタン、クロロフォルム、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド等がよい。抽出されたカロテノイド類の定量は、定量性に優れる高速液体クロマトグラフィーにより行なうことが好ましい。
本発明によれば、天然の食用色素として有用なリコペンを効率よく製造することが可能になる。
以下、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)菌株の取得
表1に示す培地5mlにSD212株を植菌し、試験管中、25℃、180rpmで1日間振とう培養を行なった。この培養液のうち1mlを1.5mlのエッペンドルフチューブに移し、15,000回転、10分間の遠心分離により菌体を回収した。この菌体をpH7.0の0.1Mリン酸カリウム緩衝液(緩衝液A)1mlに懸濁し、次いで3mg/mlのN‐メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアジニジン(以下NTGと略記する)水溶液10μlを加え、30〜60分間静置した。その後、遠心分離して上清を除去し、緩衝液Aに再懸濁する操作を2回繰返してNTGを除去した。さらに、0.5ml緩衝液Aに菌体を懸濁し、表1に示す培地3mlに植菌して4〜5時間培養した。得られた培養液を適度に希釈し、表2に示す組成の平板培地上に塗布して25℃で7日間保温した。生育したコロニーのうち赤色の強いものを選別し、表1に示す組成の培地5mlに植菌し、試験管中、25℃、180rpmで5日間振とう培養を行った。この培養液を分析し、カロテノイド生産性が向上した菌株の選定を行なった。
(実施例1)菌株の取得
表1に示す培地5mlにSD212株を植菌し、試験管中、25℃、180rpmで1日間振とう培養を行なった。この培養液のうち1mlを1.5mlのエッペンドルフチューブに移し、15,000回転、10分間の遠心分離により菌体を回収した。この菌体をpH7.0の0.1Mリン酸カリウム緩衝液(緩衝液A)1mlに懸濁し、次いで3mg/mlのN‐メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアジニジン(以下NTGと略記する)水溶液10μlを加え、30〜60分間静置した。その後、遠心分離して上清を除去し、緩衝液Aに再懸濁する操作を2回繰返してNTGを除去した。さらに、0.5ml緩衝液Aに菌体を懸濁し、表1に示す培地3mlに植菌して4〜5時間培養した。得られた培養液を適度に希釈し、表2に示す組成の平板培地上に塗布して25℃で7日間保温した。生育したコロニーのうち赤色の強いものを選別し、表1に示す組成の培地5mlに植菌し、試験管中、25℃、180rpmで5日間振とう培養を行った。この培養液を分析し、カロテノイド生産性が向上した菌株の選定を行なった。
カロテノイドの定量は以下の様に行なった。まず培養液1mlを1.5ml容エッペンドルフチューブに入れ、15,000回転、5分間遠心分離して菌体ペレットを得た。この菌体に20μlの純水に懸濁し、次いで200μlのジメチルフォルムアミドおよび500μlのアセトンを加え振とうしてカロテノイドを抽出した。この抽出液を15,000回転、5分間遠心分離により残渣を除去後、TSKgel‐ODS80TMカラム(東ソー社製)を用いた高速液体クロマトグラフィー(以下HPLCと略記する)で各種カロテノイドを定量した。なおカロテノイドの分離はA液として純水とメチルアルコールの5体95の混合溶媒、B液としてメチルアルコールとテトラヒドロフランの7体3の混合溶媒を用い、1ml/minの流速でA液を5分間カラムに通過させた後、同じ流速A液からB液へ5分間の直線濃度勾配を行ない、さらにB液を5分間通過させることにより行なった。また、カロテノイド類の成分帰属は市販の試薬とのHPLCリテンションタイムの比較により行なった。カロテノイド濃度は470nmの吸光度をモニターし、既知濃度のリコペン試薬(和光純薬製)で作成した検量線より濃度を算出した。
以上の操作を経て、リコペンを選択的に高生産する細菌TSTT004株を得た。TSTT004株のカロテノイド生産パターンと市販のリコペンとの比較を図1に示す。
(実施例2)フラスコでの新規微生物の培養およびカロテノイドの定量
表1に示した組成の滅菌した培地5mlにTSTT004のグリセロール保存液50μlを植菌して25℃で1日間、毎分150回転の振とう速度にて培養を行なった。次いで、表3に示した組成の滅菌した培地250mlを500ml容のバッフル付き三角フラスコに入れ121℃、20分間で滅菌後、上記の培養液2.5mlを植菌して25℃で7日間、毎分120回転の振とう速度にて培養を行なった。培養終了時の培養液の濁度(OD)は4.4であった。培養終了後の菌体からカロテノイドを抽出してHPLCにてカロテノイド量を定量すると、培地1Lあたりリコペンは21.6mg、総カロテノイドは26.7mgを生産した。よって、リコペンの総カロテノイドに対する割合は80%以上であった。このときのカロテノイド生産パターンを図2に示す。
(実施例2)フラスコでの新規微生物の培養およびカロテノイドの定量
表1に示した組成の滅菌した培地5mlにTSTT004のグリセロール保存液50μlを植菌して25℃で1日間、毎分150回転の振とう速度にて培養を行なった。次いで、表3に示した組成の滅菌した培地250mlを500ml容のバッフル付き三角フラスコに入れ121℃、20分間で滅菌後、上記の培養液2.5mlを植菌して25℃で7日間、毎分120回転の振とう速度にて培養を行なった。培養終了時の培養液の濁度(OD)は4.4であった。培養終了後の菌体からカロテノイドを抽出してHPLCにてカロテノイド量を定量すると、培地1Lあたりリコペンは21.6mg、総カロテノイドは26.7mgを生産した。よって、リコペンの総カロテノイドに対する割合は80%以上であった。このときのカロテノイド生産パターンを図2に示す。
1:リコペン市販サンプルのピーク
2:培養・抽出物中のリコペンのピーク
3:培養・抽出物にリコペン市販サンプルを加えたもののリコペンのピーク
2:培養・抽出物中のリコペンのピーク
3:培養・抽出物にリコペン市販サンプルを加えたもののリコペンのピーク
Claims (5)
- カロテノイド生産性ブレバンジモナス属細菌SD212株の育種により得られたリコペン生産性微生物。
- 微生物が、カロテノイド生産性ブレバンジモナス属細菌TSTT004株(受託番号:FERM P−20674)である請求項1に記載のリコペン生産性微生物。
- 培地1Lあたり21.6mg以上のリコペンを生産することを特徴とする請求項1または2記載の微生物。
- 生産されるリコペン、β−カロテン、β−クリプトキサンチン、エキネノン、カンタキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、3’−ヒドロキシエキネノン、ゼアキサンチン、フェニコキサンチン、アドニキサンチンおよびアスタキサンチンを含むカロテノイド類において、リコペンが前記カロテノイド類の合計量の80重量%以上しめることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微生物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の微生物を培養し、培養後の菌体又は培養液からリコペンを回収することを特徴とする、リコペンの製造法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2006188824A JP2008011826A (ja) | 2006-07-10 | 2006-07-10 | 新規微生物およびそれを用いたリコペンの製造法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN110819563A (zh) * | 2019-11-18 | 2020-02-21 | 曲阜师范大学 | 一株短波单孢杆菌3c及其在促进杏鲍菇生长中的应用 |
CN111254103A (zh) * | 2019-11-19 | 2020-06-09 | 河南省生物工程技术研究中心 | 一种非洲猪瘟基因工程疫苗高密度发酵补料培养基及发酵工艺 |
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---|---|---|---|---|
JP2003304895A (ja) * | 2002-04-12 | 2003-10-28 | Kanegafuchi Chem Ind Co Ltd | リコペンの醗酵生産法 |
WO2005049643A1 (ja) * | 2003-11-18 | 2005-06-02 | Marine Biotechnology Institute Co., Ltd. | 新規なカロテノイドヒドロキシラーゼ遺伝子及び水酸化されたカロテノイドの製造法及び新規なゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼ遺伝子 |
-
2006
- 2006-07-10 JP JP2006188824A patent/JP2008011826A/ja active Pending
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CN111254103B (zh) * | 2019-11-19 | 2023-06-02 | 河南省生物工程技术研究中心 | 一种非洲猪瘟基因工程疫苗高密度发酵补料培养基及发酵工艺 |
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