JP2008007363A - 撥水撥油防汚性ガラス板及びその製造方法並びにそれを用いた輸送機器、建造物及び光学機器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】撥水性又は撥油性被膜3を有する透明微粒子1を調製し、これを金属アルコキシドを含む溶液中に分散後、得られた分散液を基材ガラス5の表面に塗布し乾燥後熱処理し、透明微粒子が結合固定された基材ガラス5の表面に撥水撥油防汚性被膜8を形成することにより、焼結固定された撥水撥油防汚性の透明微粒子9で表面が覆われている超撥水撥油防汚性ガラス板10を製造する。この超撥水撥油防汚性ガラス板10を、輸送機器、建造物、光学機器に使用する。
【選択図】図2
Description
このような溶液中での化学吸着単分子膜の製造原理は、基材表面のヒドロキシル基などの活性水素とクロロシラン系の吸着剤のクロロシリル基との脱塩酸反応を用いて単分子膜を形成することにある。
なお、本明細書において「金属アルコキシド」は、テトラアルコキシシランを含むものとする。
(A)化学吸着液の調製
フッ化炭素基(−CF3)を有するトリアルコキシシラン誘導体の一例であるCF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)399重量部、シラノール縮合触媒の一例であるジブチルスズジアセチルアセトナート1重量部をそれぞれ秤量し、有機溶媒の一例であるヘキサメチルジシロキサン溶媒に、トリアルコキシシラン誘導体の濃度が1重量%程度(好ましい濃度は、0.5〜3%程度)になるように溶解して、化学吸着液を調製した。
透明微粒子の一例である、直径100nm程度(透明度を損なわないためには、微粒子の直径は、可視光波長(360〜700nm)より小さいことが好ましい。具体的には、微粒子の直径は10〜300nmであることが好ましく、50〜100nmであることがより好ましかった)のシリカ微粒子1(図1(a))(透明であればアルミナやジルコニアの微粒子でもよい)をよく乾燥した後、化学吸着液に混合し、普通の空気中(相対湿度45%)で撹拌しながら1時間程度反応させた。シリカ微粒子1の表面にはヒドロキシル基2が多数含まれているので、トリアルコキシシラン誘導体の−Si(OCH3)3基とヒドロキシル基2が、シラノール縮合触媒の存在下で脱アルコール(この場合は、脱CH3OH)縮合し、シリカ微粒子1の表面全面に亘り、下式(I)に示したような膜厚約1nmのフッ化炭素基を含む単分子膜3が形成される。
熱処理によりシリカ系ガラスを生成する金属アルコキシドの一例であるテトラメトキシシラン(Si(OCH3)4)と、シラノール縮合触媒の一例であるジブチルスズジアセチルアセトナートを、それぞれモル比で99:1となるよう秤量し、有機溶媒の一例であるヘキサメチルジシロキサン溶媒に合計で1重量%程度の濃度(好ましい濃度は、0.5〜3%程度)で溶解することにより調製した溶液(ゾルゲル法により透明被膜を形成することができる市販の金属アルコキシド溶液をアルコールで希釈したものを用いてもよい)中に、撥油性の単分子膜3で被覆されたシリカ微粒子4を1重量%程度分散させて、分散液を調製した。
基材ガラス5(図2(a))の表面に、ディップコート法、スピンコート法、スプレー法等の任意の方法により分散液を塗布した後、溶媒を蒸発させると、テトラメトキシシランと空気中の水分との反応による加水分解の結果生じたシラノール基がアルコキシシリル基との間で脱アルコール反応し、最終的に膜厚50nm程度のシリカ系ガラス膜(金属酸化物膜の一例)6が形成される。なお、このとき、撥油性の単分子膜3で被覆されたシリカ微粒子4は、溶媒を「弾く」ため、図2(a)に示すように、シリカ系ガラス膜6中に埋没することなく表面付近に露出するので、シリカ系ガラス膜6の表面にアスペクト比の高い凹凸を形成することができた。
最後に、透明微粒子1を焼結した凹凸基材7表面に、(A)で調製した化学吸着液を膜形成溶液として塗布し、2時間程度反応させた後、クロロホルム等の塩素系溶媒で未反応のトリアルコキシシラン誘導体を洗浄除去すると、焼結固定された撥水撥油防汚性透明微粒子9を有する、水滴接触角が約150度の超撥水撥油防汚性ガラス板10が得られた。トリアルコシキシラン誘導体は、式(I)に示した化学結合を介してシリカ微粒子1及びシリカ系ガラス膜6表面のヒドロキシル基と結合することによりフッ化炭素基を含む単分子膜8(撥水撥油防汚性被膜の一例)を形成している(図2(c))。
(2) CF3(CH2)3Si(CH3)2(CH2)15Si(OCH3)3
(3) CF3(CF2)5(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OCH3)3
(4) CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OCH3)3
(5) CF3COO(CH2)15Si(OCH3)3
(6) CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3
(7) CF3CH2O(CH2)15Si(OC2H5)3
(8) CF3(CH2)3Si(CH3)2(CH2)15Si(OC2H5)3
(9) CF3(CF2)5(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OC2H5)3
(10) CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OC2H5)3
(11) CF3COO(CH2)15Si(OC2H5)3
(12) CF3(CF2)5(CH2)2Si(OC2H5)3
(22) CH3(CH2)3Si(CH3)2(CH2)15Si(OCH3)3
(23) CH3(CH2)5(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OCH3)3
(24) CH3(CH2)9Si(CH3)2(CH2)9Si(OCH3)3
(25) CH3COO(CH2)15Si(OCH3)3
(26) CH3(CH2)7Si(OCH3)3
(27) CH3CH2O(CH2)15Si(OC2H5)3
(28) CH3(CH2)3Si(CH3)2(CH2)15Si(OC2H5)3
(29) CH3(CH2)7Si(CH3)2(CH2)9Si(OC2H5)3
(30) CH3(CH2)9Si(CH3)2(CH2)9Si(OC2H5)3
(31) CH3COO(CH2)15Si(OC2H5)3
(32) CH3(CH2)7Si(OC2H5)3
(42) CF3(CH2)3Si(CH3)2(CH2)15SiCl3
(43) CF3(CF2)5(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9SiCl3
(44) CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9SiCl3
(45) CF3COO(CH2)15SiCl3
(46) CF3(CF2)5(CH2)2Si(NCO)3
(47) CF3CH2O(CH2)15Si(NCO)3
(48) CF3(CH2)3Si(CH3)2(CH2)15Si(NCO)3
(49) CF3(CF2)5(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(NCO)3
(50) CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(NCO)3
(51) CF3COO(CH2)15Si(NCO)3
(52) CF3(CF2)5(CH2)2Si(NCO)3
透明微粒子としてアルミナを用いた他は実施例1で作成したガラス板と同条件で作成した、水滴接触角が150度程度(実用上、水滴接触角が130度以上であればほぼ同様の効果が得られた)の超撥水撥油防汚性ガラス板を乗用車のフロント窓ガラス(ウインドシールドともいう、傾斜角略45度)、サイド窓ガラス(傾斜角略70度)、リア窓ガラス(傾斜角略30度)として装着し、雨天走行実験を行った。
45Km/時走行時における雨水滴の付着状況を確認したところ、直径2mm程度以上の水滴の付着は、サイド窓ガラス、リア窓ガラスともほとんど無かった。また、フロント窓ガラスでは、走行時、雨水滴が連続して多量に付着したが、直径2mm程度以上の水滴は上方にすばやく移動し、その後飛散して視界を妨げるほどには残らなかった。
更に速度を上げて60Km/時になると、直径2mm程度以上の水滴は瞬時に飛散してほぼ完全に除去された。
また、ワイパーに対する耐摩耗性を、アルミナ微粒子を焼結固定していないガラス表面に、実施例1の(E)と同様の方法により直接撥水撥油防汚性被膜を形成したフロント窓ガラスと比較したところ、本実施例において作製したフロント窓ガラスは、表面に硬度が高いアルミナ微粒子が焼結固定されているため、耐磨耗性は遥かに高かった。
実施例1で作成したガラス板と同条件で作成した、水滴接触角が150度程度の超撥水撥油防汚性ガラス板をビルの窓ガラスとして装着し、雨天時の雨滴付着性を確認したが、直径1mm以上の雨滴は全く付着することがなかった。また、晴天時付着していたゴミや埃も雨滴に流されて、乾燥後もガラス表面に残留物が付着することはなく、清浄に保たれていた。
実施例1で作成したガラス板と同条件で作成した、水滴接触角が150度程度の超撥水撥油防汚性ガラス板を監視カメラ等の光学機器のレンズ前面にフィルターとして装着し、雨天時の撮影映像を評価した。
このフィルターを装着していない場合には、フィルターガラスの表面に雨滴が付着して画像にぼやけが生じたが、本実施例で作製した超撥水撥油防汚性ガラス板を装着していた場合には、雨滴が流れ落ち付着しなかったので、ふき取りを行わなくても鮮明な画像が連続して得られた。
Claims (20)
- 焼結固定された撥水撥油防汚性の透明微粒子で表面が覆われていることを特徴とする撥水撥油防汚性ガラス板。
- 請求項1記載の撥水撥油防汚性ガラス板において、前記透明微粒子は、その表面の一部分が撥水撥油防汚性被膜で被覆されていることを特徴とする撥水撥油防汚性ガラス板。
- 請求項2記載の撥水撥油防汚性ガラス板において、前記透明微粒子は透明な金属酸化物膜を介して基材ガラスの表面に焼結固定されていることを特徴とする撥水撥油防汚性ガラス板。
- 請求項3記載の撥水撥油防汚性ガラス板において、前記金属酸化物膜はシリカ系ガラス膜であることを特徴とする撥水撥油防汚性ガラス板。
- 請求項4記載の撥水撥油防汚性ガラス板において、前記シリカ系ガラス膜の表面が前記撥水撥油防汚性被膜で被覆されていることを特徴とする撥水撥油防汚性ガラス板。
- 請求項5記載の撥水撥油防汚性ガラス板において、少なくとも前記撥水撥油防汚性被膜が前記透明微粒子及び前記シリカ系ガラス膜の表面に共有結合していることを特徴とする撥水撥油防汚性ガラス板。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚性ガラス板において、前記透明微粒子が透光性のシリカ、アルミナ、又はジルコニアであることを特徴とする撥水撥油防汚性ガラス板。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚性ガラス板において、前記透明微粒子の大きさが可視光の波長未満であることを特徴とする撥水撥油防汚性ガラス板。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚性ガラス板において、水に対する接触角が130度以上に制御されていることを特徴とする撥水撥油防汚性ガラス板。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚性ガラス板を窓ガラスとして装着したことを特徴とする輸送機器。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚性ガラス板を窓ガラスとして装着したことを特徴とする建造物。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚性ガラス板をフィルターとしてレンズ前面に装着したことを特徴とする光学機器。
- 表面が撥水性又は撥油性被膜で覆われた透明微粒子を調製する第1工程と、金属アルコキシドを含む溶液中に前記透明微粒子を分散した分散液を調製する第2工程と、前記分散液を基材ガラスの表面に塗布し乾燥する第3工程と、酸素を含む雰囲気中で前記分散液が塗布された基材ガラスを熱処理する第4工程と、前記第4工程で熱処理された基材ガラスの表面に撥水撥油防汚性被膜を形成する第5工程を有することを特徴とする撥水撥油防汚性ガラス板の製造方法。
- 請求項13記載の撥水撥油防汚性ガラス板の製造方法において、前記金属アルコキシドは、熱処理によりシリカ系ガラスを生成することを特徴とする撥水撥油防汚性ガラス板の製造方法。
- 請求項13及び14のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚性ガラス板の製造方法において、前記第4工程の熱処理温度が、250℃以上かつ、前記基材ガラス及び前記透明微粒子の融点以下であることを特徴とする撥水撥油防汚性ガラス板の製造方法。
- 請求項13〜15のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚性ガラス板の製造方法において、前記金属アルコキシドを溶かした溶媒が水系であり、前記第1工程の前記透明微粒子の表面を覆う被膜は撥水性であることを特徴とする撥水撥油防汚性ガラス板の製造方法。
- 請求項13〜15のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚性ガラス板の製造方法において、前記金属アルコキシドを溶かした溶媒が有機系であり、前記第1工程の前記透明微粒子の表面を覆う被膜は撥油性であることを特徴とする撥水撥油防汚性ガラス板の製造方法。
- 請求項13〜17のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚性ガラス板の製造方法において、前記第5工程における前記撥水撥油防汚性被膜の形成は、(1)フッ化炭素基を有するトリアルコキシシラン誘導体及びシラノール縮合触媒、(2)フッ化炭素基を有するトリクロロシラン誘導体、及び(3)フッ化炭素基を有するイソシアネート誘導体のいずれかと有機溶媒とを含む膜形成溶液と、表面に前記透明微粒子を焼結固定させた前記基材ガラスとを接触させて行うことを特徴とする撥水撥油防汚性ガラス板の製造方法。
- 請求項18記載の撥水撥油防汚性ガラス板の製造方法において、前記膜形成溶液と前記基材ガラスの接触後、余分な膜形成溶液を洗浄除去することを特徴とする撥水撥油防汚性ガラス板の製造方法。
- 請求項18及び19のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚性ガラス板の製造方法において、前記膜形成溶液は前記シラノール縮合触媒を含み、しかもケチミン化合物、有機酸、金属酸化物、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、及びアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1又は複数の化合物を、助触媒として前記シラノール縮合触媒と共に用いることを特徴とする撥水撥油防汚性ガラス板の製造方法。
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