参考のため特許文献1の従来技術を図1図2で紹介する。図1は空港用エスカレータカートで、荷物を上階に運ぶもので下階に下ろすことはないカートである。上階に上がったカートは荷物が載らない状態で下階に下ろされる。図1のエスカレータカートは階段内で同一ステップ上に乗る車体の前半分QR(以下平行部1)と2段にまたがった後ろ半分RS(以下段差部2)が車体中央Rで連結され、荷台3の前部Qは平行部に接続され、後部Pは方杖11を介して段差部2に取り付けられる。車体は階段内で後部Pがわずかに下がると、中央Rで大きく折れ曲がるリンク機構の構造である。図1の車体は上に凸の変形を当たり14で止め、エスカレータ内では常に取手12を下階側にハネテコ7を上階側にして使用する。エスカレータ内では前輪4が蹴込みに密着して停止し、最終的に前輪4と連結部10が同一ステップ上にあるようになる。
図1(a)に示す一点鎖線L1は、上り入り口においてカートがエスカレータに侵入した位置が乗り切れずに落段する位置にある場合のカート下の階段状の地形を表すのもで、L2はハネテコの摩擦面9にステップ角部が上昇してきてカートが後退する場合である。エスカレ−タの階段勾配が緩い場合、ハネテコ先端部にステップ角部が上昇するとき、カートは一直線のままエスカレータの傾斜とともにそのままの形で傾き、ハネテコは地面から遠ざかり、下から上昇してくるステップ角部に接触しない。L3はハネテコの車輪8がステップ面に乗り上げカートが移動しない場合を示す。図1(b)はカートがエスカレータに固定された状態を示し、ハネテコは上段のステップ面上に収容される。ハネテコのアームが長いとハネテコの摩擦面9が蹴込みに当たってせっかく定着したカートを後退させてしまう。
図2(a)に示す前の前進装置はアーム15が荷台先端T1を中心に回転できるように接続され、アーム末端t1はアーム15の接地側で接続軸T1を中心に円運動r1をする。ステップ上昇に従い下位の接地側t1が接地するとアーム15は地面に立てた棒が倒れるように、上位の接続軸T1が下位接地点t1を中心に円運動r2をして車体は前進する。アーム15が棒状で接地側t1が接地した位置から動かない場合は接続軸T1はt1を中心とする単なる円運動であるが、アームが棒状ではなく接地側先端部形状を渦巻き曲線の弧の一部にして曲がった形状にすると、アーム15が前に倒れるに従い接地点t1はアーム15の先端から内部に移動し接地点はステップ上を前進するので、接続軸T1がt1を中心とする単なる円運動をする場合よりも接続軸T1は前方に送られることになる。
回転の中心T1とステップの接点t1とを結ぶ直線Y1−Y1が鉛直であるときはアーム15が倒れないので車体は先頭が持ち上げられるが、鉛直から僅かに前方に傾くとアーム15が倒れ始めるので車体の先頭が持ち上がらずに前進する。接地点t1の円運動において直線Y1−Y1の傾きが鉛直に近いほど接地点t1は同じ鉛直方向の変位に対して水平方向の変位は大きくなるので、直線Y1−Y1の傾きが鉛直に近い状態にすると、接地点t1が接地して僅かに回転する間に接続軸T1を大きく前方に送る。直線Y1−Y1の傾きがさらに大きくなると接地側t1が滑ってカートは前進しない。すなわち前の前進装置は接地して始まりの段階で僅かに回転して車体を前進させるが、以後は無効である。アームが長く回転半径が大きい程水平方向の変位は大きいので、設計段階において回転中心の位置T1を高くしてアーム15の長さをできるだけ長くする。またアーム下端の接地時に車体の先頭が浮き上がらないようにアーム15は鉛直位置から少し傾けておく。
図2(b)に示すように後ろの前進装置は回転の中心が下位T2にあり接地側が上位t2にあってステップに引っ掛かる。ぶら下がった振り子が鉛直の位置まで降りていくように、上段のステップに引き上げられながら車体は前進する。後ろの前進装置の回転中心T2は、回転半径をできるだけ長くするため車体のできるだけ低い位置で、しかも最後にアームが鉛直状態になるのが好ましいのでできるだけ前の位置にする。
そもそも前の前進装置にしても後ろの前進装置にしても、前進装置はカートにカートを持ち上げる力が働いたときに有効に機能するもので、持ち上げられたカートは円運動をして降りて行く際前進する。すなわち重心の下降していく際の仕事がカートの前進にかわる。前の前進装置にしても後ろの前進装置にしても車体重量を支持している間は有効に働き、接地点で滑りが生じて車体重量を支持しなくなれば無効となり、カートは持ち上がることなく前進もしない。前の前進装置にしても後ろの前進装置にしてもアームが鉛直に近い状態のとき、接地点で滑りが生じることなくカートは持ち上がって前進する。前の前進装置は鉛直状態から始まり後ろの前進装置は鉛直状態で終わるので、前の前進装置は最初に機能し、後ろの前進装置は最後に機能する。
図2(c)に示すように、前輪が蹴込みにあたって前進しない時、前の前進装置はアーム15の回転が阻止されカートの先頭が持ち上げられて前輪4が浮いたままになる。このような事態を避けるため、前の前進装置が接地する前に、後ろの前進装置のアーム16の前面t3がステップ角部に接触しアームが回転するようにして、後ろの前進装置のアームの回転r3によって前の前進装置のアーム15の回転r1を誘導して前の前進装置の機能を無効にする。
図1図2は使用が上り方向に限られるカートについて上り入り口でのカートの定着に関するものであるが、次に上り方向だけでなく下り方向でも使用できるカートについて上りと下り入り口でのカートの定着について詳述する。図1のカートは車体に平行部が段差部に先行するものであるが、平行部を先頭にして下りのエスカレータに進入させると平行部前輪が前方に大きく成長した段差を降りることになり、平行部の上の荷台が傾くだけでなく、その際の車体の折れ変形が上に凸の折れ変形で荷台後部を持ち上げて更に荷台の水平を悪くする。
取手の位置を片方に固定してカートを常に後ろから押して上り方向にも下り方向にも使用できるカートは、車体中央が上に凸の方向にも下に凸の方向にも折れ曲がる必要があり、図1のような上り方向専用のカートのように片方の折れ曲がりを止める当たりを取り付けるわけにはいかない。上り下り両用のカートは連結部を車輪で支持して平地走行する。平行部が先行した場合、上り下りの入り口において定着にいたる移動の際、荷台を水平にする方向とは逆方向の折れ変形を呈する理由から、前方の大きく成長した部分に段差部を先に進入させ平行部を後ろから入れて段差の少ないステップ上に置く形態を採用する。すなわち段差部を先行させ平行部を後続させるようにする。
エスカレータは前方に行くほど段差が成長し出入り口に近いほど平坦である。段差2輪が先行し荷台をのせた平行部が後続するカートでは先頭の段差2輪の上位と下位の車輪のいずれが先に前方の大きな段差を落下しても後続する荷台は平坦なステップ間を移動し段差の影響は少ない。このような理由から上りと下りの両方向に使用するカートは、決して同一のステップ上に同時に乗ることはなく必ず2段にまたがるように車間距離を設計した2輪(以下、段差2輪)を先頭にする。図3は段差2輪の車間距離を説明するもので図4図5はこの段差2輪に前進装置を組み合わせるもので、カートがエスカレータの上り入り口に進入したときの定着にいたる移動について説明するものである。
階段上にある車輪は水平面上にあって勾配のついたスロープ上にあるのではないので転がり落ちることはなく、むしろ動かすことが困難である。階段上にある車輪はステップ角部上に位置し、車輪の回転軸がステップ角部に立てた鉛直線より下段側になるとき動きはじめる。上昇するステップ角部に車輪の上位側半分が接触するとき車輪は移動し、離れると動きは止まる。車輪半径がステップの踏面長さより長ければステップ上にとどまることはないが、短ければ必ずとどまる。段差2輪や平行2輪のように2輪が1つの車体に固定される場合、自ら落段して相手の車輪を落段させる場合もあれば、自ら落段しなくても相手の車輪に落段される場合もある。
決して同一のステップ上に同時に乗ることはなく必ず2段にまたがるような段差2輪の車間距離について説明する。決して同一のステップ上に同時に乗ることはない段差2輪の車間距離とは、図3(a)に示すように、上位の車輪を蹴込みに密着させ下位の車輪の車軸をステップ角部上に置いたときの車間距離以上の車間距離である。また必ず2段にまたがるような段差2輪の車間距離とは図3(e)に示すように上位の車輪の車軸が更に一段上のステップ角部上にあって下位の車輪が蹴込みに密着させたときの車間距離以下の車間距離で、決して3段にまたがらない車間距離である。図3(k)に示すようにこの車間距離の最大値と最小値の中間にステップの踏面長さの車間距離があって、図3(b)のようにステップの踏面長さの車間距離より短い場合、進入時に落段しない位置にあっても相手の車輪を落段されることがあり、図3(d)のようにステップの踏面長さの車間距離より長い場合、進入時に落段しない位置にあれば相手の車輪に落段させられることがない。
段差は前方に行くほど成長するので先頭の車輪が先に落段するのは望ましく、先頭の車輪下の段差が大きく成長してもなかなか成長しない段差を後続の車輪が先に落段するのは望ましくない。後続の車輪には荷台が乗っており、車間距離が短い場合は進入した時点で何も起こらず暫くしてから突然動き出すことが起こりうるので、はじめから2段にまたがっている車間距離が長い場合のほうが荷台は成長した段差を落下することはない。特に下りの場合、落段の際の荷零れはカートを押す人の手前ではなく先で起こるので防ぎようはなく、車間距離の短いカートは好ましくない。このような観点から特に下りの場合、段差2輪の車間距離は長いほうがよく、段差2輪の車間距離はステップ踏面の長さ以上にする。
先頭の段差2輪の役割は早めに2段にまたがり最終的に定着までカートを移動し、後続の平行部の2輪(以下、平行2輪)を2段にまたがったままの状態から同一ステップ上に持ち込むことである。つまり早めに移動して平行2輪を同一ステップ上にすることである。上りにおいても下りにおいても車間距離が短い場合、進入時に定着した位置にあるか、なくてもすぐに落段して定着直後に落下した位置にとどまるので、荷台を支持するもう一方の車輪すなわち最後尾の車輪が同一ステップ上に載っていて、後続輪が落下した時点で定着は終了している。車間距離が長い場合、進入時に段差2輪はすでに2段にまたがっていて進入時に定着した位置にない場合、荷台を支持するもう一方の車輪すなわち最後尾の車輪が同一ステップ上に載っていない場合があるので、後続輪が落下してからとどまらず移動しつづけなければ最後尾の車輪が同一ステップ上に載ってこない。
このように車間距離が短い場合、動きが止まった位置から動くとすぐに落段するので下位の車輪が蹴込みに密着し上位の車輪がステップ角部上にあって上りにおいても下りにおいても動きが止まった位置が定着位置である。これに対して車間距離が長い場合、動きが止まった位置から移動しても落段しないのでステップ上にとどまる範囲が広く、動きが止まった位置から定着位置まで移動する必要がある。
上りにおいても下りにおいても車間距離が短い場合、後続輪の落下は落下して定着の終了であるが、車間距離が長い場合、後続輪の落下は定着にいたる移動の始まりである。上りにおいては車間距離が短い場合、後続輪が落下した時定着は終了するので移動の必要はないが、車間距離が長い場合、カートを大きく前進させるか後退させる装置が必要である。下りにおいても車間距離が短い場合、後続輪が落下した時定着は終了するので移動の必要はないが、車間距離が長い場合、後続輪が落下した時点で定着にいたる移動がはじまるので先行輪の車輪径を大きくしてあるいは車輪径を大きくしたときと同じ効果のある装置を取り付けて、大きく移動するようにしなければならない。段差2輪の車間距離はステップの踏面長さの車間距離より長くして落段後に移動する装置を補うことにする。
先行する段差2輪を設計する際、決して同一のステップ上に同時に乗ることはなくて3段にまたがらない範囲内でステップの踏面長さより長い車間距離を採用して、これに段差の成長と共に移動する送り装置を補えば、決して段差が大きく成長してから突如として動き始めて急激な動きで定着するのではなく、進入と同時に移動が始まり段差の成長が終わったときに定着に至り、決して落段することはなくなる。この段差2輪に図4図5の前進装置を組み合わせれば、カートはエスカレータの入り口に進入して定着にいたるまで下段に落下することもなくまた後退することもなく段差の成長の動きに合わせて前進して定着するようになる。
図4は上述の段差2輪に図2(b)に示した後ろの前進装置だけを組み合わせるもので、カートがエスカレータの上り入り口に進入したとき、段差部に設けた切り欠き部分がステップ角部に引っかかる以外はすべて下段に落下するようになっている。先頭の段差2輪の車間距離を小さくし、定着時の状態で下位の車輪が蹴込みから少し離れると上位の車輪が落下するので、更に下段に落下して定着するようになっている。先頭輪の車輪径を大きくするとカートを大きく後退させて落段し、次の定着位置で必ず下位の車輪を蹴込みに密着させることになる。先頭輪の車輪径を大きくすることで車間距離を小さくし、カートを後退させる範囲を大きくし、また定着後に下位の車輪が蹴込みから離れる範囲を小さくしている。
図4(a)は先頭の車輪の回転軸P1がステップ角部に立てた鉛直線Y1−Y1より下段側にあって下段に落下しはじめ、段差部に設けた切り欠き部分がステップ角部に引っかかるまでの経過を説明するものである。1点鎖線L1、L2、L3は車輪下の地面が階段状に成長する経過を説明している。図4(b)は先頭の車輪の回転軸P1がステップ角部に立てた鉛直線Y1−Y1より上段側にあって車輪が持ち上げられ、切り欠き部分がステップ角部に引っかからない状態になるまで経過を説明するものである。
図4(b)に示すように先頭輪の進入直後の位置がステップ角部ではなくステップ面上にあっても、車軸から僅かに後ろでステップ角部が上昇してくるとき、後続輪が静止しているときは先頭輪が高く持ち上げられてから先頭輪の車軸がステップ角部に立てた鉛直線を超えて下段に落下することになる。この場合カートはエスカレータ内部に深く侵入してから大きな段差を落下し、すでにエスカレータの階段の形状が出来上がった状態で次の定着にいたる移動が始まる。先頭の段差部にステップ角部が引っかかる切り欠きを設けただけのカートではこのような事態を避けることはできない。
図4(c)に示すように大きな先頭輪の変わりに切り欠きの前に大きな車輪の一部である扇形車輪28を取り付けると、切り欠き部分がステップ角部に引っかからない場合はすべて、先頭輪が高く持ち上げられることなくカートを後退させることになる。図4(a) 図4(b)に示した先頭の車輪は全円であり、全円の一部の部分でも切り欠きの内側に入ってはいけない理由から切り欠きの先端P2を通る鉛直線Y2−Y2より上段側に持っていく必要があって先頭輪が高く持ち上げられてから下段に落下する現象を避けることができなかったが、全円ではなく大きな車輪の一部である扇形車輪にすると、すべての部分が切り欠きの内側に入ることはなく、扇形車輪の回転軸を切り欠きの先端P2を通る鉛直線Y2−Y2より下段側に持っていくことができるので、扇形車輪の円弧の部分にステップ角部が上昇してくると扇形車輪はステップ角部を前方に送るように回転し先頭輪が高く持ち上げられて落下する現象を避けることができる。
図5は段差2輪に図2(a)に示した前の前進装置(以下、L形車輪)だけを組み合わせるもので、図5(a)はカートがエスカレータの上り入り口に進入したとき、下位の車輪が蹴込みから離れた位置にあって前進する場合で、図5(b)は下位の車輪が蹴込みに密着する位置にあって前進せず段差部全体が公転する場合である。図5(c)はカートが上り入り口に進入したときL形車輪がステップ面上に乗らない場合で、先頭輪が高く持ち上げられることなくカートが後退する場合を示す。L形車輪がステップ面上に乗らない場合以外はすべて前進するようになっていて、先頭の段差2輪の車間距離を大きくし、カートを前進させる範囲を大きくしてカートが後退する範囲を小さくしている。
図5は図1と同様にL型車輪A1によって吊り上げられて宙に浮いた車体2がL形車輪の回転軸P1を中心に振り子のように円運動r1をしてカートを前進させるもので、自立したL型車輪で段差2輪が吊り上げられると、段差2輪の後続輪は車体の前半分の重量を支持しているので、L型車輪の上端の接続軸P1を中心に円運動r2をして高度を下げる。同時にL型車輪の回転軸T1がL型車輪の接地点t1を中心に直立した棒が倒れるように円運動r3をしてカートを前進させる。図1においてはL型車輪の接地面を渦巻き曲線の一部か折れ線にして円運動r3を大きくして前進距離を大きくするものであったが、前進距離を大きくするだけならばL型車輪の回転半径を大きくすれば良くL型車輪の回転軸P1の高さを高くすれば良いのでL型車輪の接地面を渦巻き曲線の一部か折れ線にする必要はなく、一直線のままでよい。L型車輪の接地面を早く接地させるとそれだけステップの上昇分を無駄にすることがないので、L型車輪の接地面はできるだけ地面に近く長くする必要があり、おのずとL型車輪の接地面の形状は一直線のままでよくなる。
L型車輪の回転半径は段差2輪の後続輪が蹴込みに密着して宙に浮いた状態を保つ範囲で長いほうが良いが、L型車輪は前に回転するようにするには、L型車輪A1の上端の接続軸P1はL型車輪の先端P2に立てた鉛直線Y1−Y1より前方でなければならない。L型車輪の回転半径L1をあまり長くすると、ステップの上昇とともにL型車輪は後ろに回転し接続軸P1は鉛直線Y1−Y1より後方になってカートを下段に落としてしまう。そのためL形車輪の回転半径は段差部が後ろに回転しても接続軸T1が鉛直線Y1−Y1より後方にならない範囲内で且つ段差2輪の後続輪が蹴込みに密着して宙に浮いた状態を保つ範囲内で出来るだけ長くする。すなわちL型車輪の回転中心T1の位置は出来るだけ前方の高い位置にする。
図1の場合カートの前進を専ら棒が倒れるような円運動r1に頼るものでこの回転が止まるとカートの前進もとまる。図1の場合前輪が着地すると前の前進装置に荷重がかからなくなりカートの前進はとまるが、図5の場合は段差部に車体重量がかかり続けるので段差2輪の後続輪が着地したままでもカートは前進する。ステップの上昇に従い段差2輪の後続輪は高度を下げる。また反対の先頭輪は高度を上げる。段差2輪の後続輪は接続軸P1を中心に振り子運動をして高度を下げてステップ面に近づき、前方の蹴込みに密着する方向に前進するが、先頭輪は浮き上がってステップ面から離れるので、先頭輪が宙に浮きL型車輪の前にL型車輪が前転する空間が広がり、先頭輪が宙に浮き上がった時点でカートは前進する。また棒が倒れるような円運動r3が終了してもステップの上昇が続く限り自立したL型車輪で段差2輪は再び宙に浮き、L型車輪の上端の接続軸P1を中心に円運動r2が再開して高度を下げる。また円運動r2が止まってもステップの上昇が続く限り、自立したL形車輪の接地部の前が宙に浮いて、棒が倒れる方向とは逆の棒が起き上がる方向の回転が起こり、棒がまえに倒れる力が蓄えられる。
図1の場合、接地点t1を中心に棒が倒れるような円運動r3をする棒の先端T1に車体を取り付けるもので、図5は棒すなわちL型車輪の先端P1と車体の間に段差部を介在させ、リンクとして機能させるものである。リンクを1枚介在させることにより段差2輪の後続輪の動きが単なる円運動から空間を自由に動き回れる運動となる。すなわち図1の場合は1枚のリンク、図5の場合は2枚のリンクで構成され、図5の場合は2枚のリンクが自由に円運動することで車体の動きは空間を自由に動き回れる運動となる。持ち上げられた車体重量が高度を下げるとき、各リンクの回転方向をカートが前進する方向に制限すれば、ステップの上昇が続く限り最終的に下位の車輪を蹴込みに密着する位置に持っていくことができる。
2枚のリンクの円運動について述べる。まず段差部について述べる。L型車輪の接地部の全面がステップ面に密着するとL型車輪の回転軸P1の接地点P2を中心にする回転が止まり、宙に浮いた段差部がL型車輪の回転軸P1を中心に円運動をする。L型車輪の先端P1と段差2輪の後続輪との間に車体が接続されるので車体もL型車輪の回転軸P1を中心に円運動をする。次にもう1つのリンクL型車輪について述べる。段差2輪の後続輪が前方の蹴込み部分に密着するとカートは定着位置にあってそれ以上前進する必要はないが、それ以後ステップが上昇し続けても車体が持ち上がるのを防がなければならない。L型車輪の接地部にすべりが生じると、段差2輪の後続輪が蹴込みに当たって宙に浮いた状態から着地する。従ってL型車輪の接地部は滑りやすいように摩擦面ではなく金属面のままが好ましい。
段差2輪の後続輪が前方の蹴込み部分に密着するとカートの前進は止まり、L型車輪は後ろに倒れる回転が当たりで止められているので、段差部とL型車輪は一体となって形を変えずに全体が回転する。段差2輪の後続輪は蹴込み部分に密着して停止状態にあり、図5(b)に示すように段差部全体が後続輪の車軸を中心にして後ろ向きに公転する。L型車輪の回転軸P1も接地点P2を中心に後ろ向きに回転する。このように2枚のリンクの円運動で段差2輪の後続輪は持ち上がらない。段差2輪の後続輪が宙に浮いても蹴込み部分に密着したまま着地する。
次に段差2輪の後続輪が前方の蹴込みから離れた位置でカートが停止しているときを考える。後続輪の車軸を中心にして段差部全体も後ろ向きに公転するとき段差部に取り付いた車体はわずかに持ち上げられる。回転軸P1がL型車輪の着地点を通る鉛直線より後ろになく、後ろに倒れることはないならば、持ち上げられた車体の重心が下がろうとする動きが起こり、段差2輪の後続輪が前方の蹴込みに密着する方向に動こうとする力が動く。段差2輪の後続輪が最後まで着地せず宙に浮いた状態であれば段差部のL型車輪の回転軸P1を中心に円運動でカートは前進するが、段差2輪の後続輪が宙に浮いた状態ではなく接地した状態でも、後続輪の車軸を中心とする段差部全体の公転で前進する。図5(a) 図5(b)はカートの進入時の位置がどこであっても、すなわちL型車輪の接地位置がいかなる場合について、接続軸P1がいろいろの場所にある場合に、接続軸P1を中心とした円に上段のステップ面が接して、蹴込みに後続輪があたる状態を示すもので、どの状態においてもカートが前進する力が働いている。蹴込みにあたる後続輪が僅かに宙に浮いた状態であればL型車輪の回転軸P1を中心とする円運動で、後続輪が接地した状態であれば後続輪の車軸を中心とする円運動であるので、カートが前進する力は後続輪が僅かに宙に浮いた状態のほうが大きいので回転軸P1の位置を決めた段階で出来るだけL型車輪の回転半径を大きく設計する。
図4のように先頭輪が持ち上げられるのではなく、図5の場合は先頭輪に変わってL型車輪が車体を持ち上げるので、図4のように先頭輪が高く持ち上げられて落段するようなことはない。しかし図5(c)に示すように、L型車輪がステップ面上に乗らない場合に先頭輪が高く持ち上げられ落段する。L型車輪A1に重なる位置でL型車輪A1と逆向きのL型車輪A2を取り付けると、先頭輪が着地するまえに逆向きのL型車輪A2が着地してカートを後退させる。この逆向きのL型車輪A2はL型車輪A1と反対方向の回転を許しカートを後退させるものでカートの前進を阻止するものである。したがってL型車輪A1が回転して前進するとき逆向きのL型車輪A2が着地しないようにする。それぞれのL型車輪の回転軸において1枚バネの歯車がかみ合うようにして後退装置の逆向きのL型車輪A2を排除する。この逆向きのL型車輪A2はL型車輪A1と先頭輪の間を埋めるもので図4の扇形ではなく短冊状の車輪でよく、ステップ角部の上昇を先頭輪の前ではなく後ろで捉えるものである。
図6は図5のL型車輪の実施例であり、傾斜角度の緩いエスカレータに適応する空港用エスカレータカートで、上り専用のカートである。荷台3は取手側が下がったスロープで荷物は取手側から順に載せられ後からの荷物が先の荷物を押さえて固定する。先頭に段差部2を有し荷台を支持する車体が後続する。先頭の段差部は先頭車輪の前に扇形車輪28を取り付けて車体を後退させる範囲を大きくし前進させる距離を短くするもので、回転する段差部に取り付いて段差部と一緒に回転するので、図1のハネテコの後退装置のように定着後上段に乗ることなく上段から離れた位置で宙に浮くので、定着したカートを後退させる心配はない。
荷台を支持する車体は図1のエスカレータカートのように車体が車体平行部と車体段差部との2つ部分で構成され車体中央で連結され、階段内で車体が中央で大きく折れ曲がるリンク機構の構造ではなく、単に荷台の両端に車輪を取り付けた車体で、エスカレータ内で車体が中央で折れ曲がることなく2段にまたがる。エスカレータ内では荷台の両端の車輪は前輪が上段の蹴込みに当たった状態で、後輪が下段のステップ角部上にある状態なので荷台の傾斜はエスカレータの傾斜角度より緩くなる。
傾斜角度の緩いエスカレータでは荷台の水平より車体の定着時に荷台に衝撃を与えないようにすることが重要である。先頭の段差部は先頭の車輪が平地走行状態で着地しないように上に凸の折れ変形を当たりで止められ、図4図5に示した先頭の段差部のように車体の前半分の重量を支持するものではなく、段差部の上方向の回転で荷台後部持ち上げるものである。
先頭の段差部と長穴内を移動する車輪とは連結棒13によって繋がれ、段差部の上方向の回転を、長穴内を移動する車輪の往復運動に変えている。連結棒13の末端に取り付けられる長穴内を移動する車輪8は車軸を共通する2つの車輪で、1つの車輪は車体後部に取り付く上り勾配の長穴内を移動し、もう1つの車輪は荷台後部に取り付く水平の長穴内を移動する。平地走行時は先頭の段差部が上方向の回転をしても、連結棒13によって繋がれた車輪は車体後部に取り付く上り勾配の長穴内を荷台後部を持ち上げながら登坂することになるので上りきれず、先頭の段差部は上方向に回転しない。カートがエスカレータ内に進入して荷台を支持する車体が徐々に傾くと車体後部に取り付く長穴の上り勾配は水平に近づき、長穴内を移動する車輪は勾配のない長穴内を移動するようになるので、移動可能になって先頭の段差部は上方向に回転できるようになる。荷台後部は持ち上がるのではなく、支点をより遠くに移すので下がらないようにすることになる。
図6(c)は先頭の段差部と荷台後部を支持する前傾した方杖A1とを連結棒13で繋ぎ、段差部の上方向の回転を前傾した方杖A1を立ち上がらす回転に変えている。平地走行時は先頭の段差部の上方向の回転で前傾した方杖を立ち上げるので上りきれず、カートがエスカレータ内に進入して車体が徐々に傾くと前傾した方杖が徐々に立ち上がって鉛直状態に近づき動きやすくなる。このように先頭の段差部は上方向に回転できるようになる。
荷台後部は前傾した方杖に直接接続されているのではなく前傾した方杖にさらに前傾した方杖A2を吊り下げて荷台後部を吊り下げている。これは荷台前部が車体に接続され前後に動かないようにしているためである。荷台前部を回転する段差部に取り付けて荷台を前後に動くようにすれば2段の方杖で荷台後部を接続する必要はなく前傾した方杖に直接接続すればよい。また図6(a)図6(c)においても長穴内を移動する2つの車輪で荷台後部を支持する必要はなく、車体後部に取り付く上り勾配の長穴内を移動する1つの車輪で荷台後部を支持すればよい。
エスカレータ内で荷台の水平を保つことは荷台の上の荷物が傾くことによって荷物の重心が後ろに下がり、重心が後輪より外に出て車体が転倒することを防ぐもので、いくら荷台の水平が保てても荷物の重心が後ろに下がるのでは意味がない。図6のように荷台後部を支持する構造が複雑になるのは仕方がない。
図6のカートは図5のカートのように先頭の段差部に荷台が直接取り付けられ先頭の段差部の急激な回転が直接荷台に伝わるのではなく、カートがエスカレータ内に進入してから暫くは車体が一直線のままで徐々に傾き段差部の回転が荷台後部を持ち上げる仕事に変換され、段差部の後続輪の急激な回転を抑えて荷台に伝わる衝撃を緩和している。カートがエスカレータ内に進入してから暫くは車体が一直線のままでL形車輪が車体を持ち上げられカートは前進するが、持ち上げられた段差部が徐々に降りていくので段差部が徐々に前転方向に回転してカートはエスカレータ内に進入してからゆっくりと前進して定着にいたる。
図7は段差部に図5(c)に示したL型車輪A1と逆向きL型車輪A2が取り付き、L型車輪A1は上り時に先頭輪が蹴込みに当たるまでカートを前進させ、下り時にはカートの先頭輪をステップ角部付近まで前進させる。図7(a)はカートの平地走行状態で図7(b)は上りのエスカレータ内の状態図7(c)は下りのエスカレータ内の状態をしめす。
L型車輪は上り入り口だけではなく下りの入り口でも有効に働く。車間距離が長い場合、必ず下位の先頭車輪が先に落段して後から上位の後続車輪が落段する。下りのエスカレータでは先頭の車輪は進入した時点で始めに乗ったステップ上を移動するだけで始め乗ったステップ上から下段に落下することはない。また後続の車輪が下段に落下しても先頭車輪を落としてしまうことがない。これに対して車間距離が短い場合は必ず上位の後続車輪が先に落段して後から下位の先頭車輪が落段する。先頭の車輪が先に落ちようが後から落ちようが、先頭の車輪は荷台には直接関係しないので問題ではないが、後続の上位の車輪が先に落段する場合、先頭の車輪が先に落ちる場合よりも始動が遅れて最後尾の車輪も後続の上位の車輪が落段した段差を落ちなければならないので、下りのエスカレータでは下位の先頭車輪が後から落段する車間距離が短い方は採用できない。
車間距離が長い方を採用して先頭の車輪が乗ったステップ上をステップ角部までL形車輪によって移動するようにするだけで、後続の2つの車輪は段差のないステップ間を移動するようになり、全く車輪が落ちるようなことは起こらなくなる。上りの場合でもはじめに上段に移ることが出来ないとき以外はすべてL形車輪によって前進させるので全く車輪が落ちるようなことは起こらなくなる。L形車輪は上りでも下りでも兼用できる前進装置で、先頭の段差2輪にL形車輪を取り付けたエスカレータカートは先頭の車輪がエスカレータに進入した時にステップの上昇で段差が発生して下段に移ることがあっても、全く車輪がステップから落ちるようなことは起こらないエスカレータカートである。図7のエスカレータカートの段差2輪の車間距離をステップの踏面長さ以上にする。
連結点の位置Rは図1のカートが前輪と連結部ゲタとの間にあるように、図7の上下両用のカートでも連結輪5と後尾輪6の間にあり、エスカレータ内では上りでは連結輪が浮きにくく、下りでは後尾輪が浮きにくいようにしている。つまりエスカレータ内で一直線のままにならないようにしており、折れ変形しやすいようにしている。また上りで取手を引いて連結輪が浮いたり、下りで取手を押して後尾輪が浮いたりすることに対してある程度抵抗している。更に連結点の高さを高い位置にすると、エスカレータ内では平地状態より段差2輪の車間距離が短くなり、下りの定着後下位の車輪とステップ角部までの距離が長くなる。車間距離が短いときは上位の車輪のステップ角部までの距離は下位に比べて長く、上位の車輪が先に落段する。また長いときは短く下位の車輪が先に落ちる。下りの定着位置を通り過ぎてしまったとき、車間距離の長いときのように下位の車輪に落ちている状態で、上位の車輪が落ちずに頑張っているほうが良いのか、あるいは短いときのように上位の車輪が落ちている状態で下位の車輪が落ちずに頑張っている場合が良いかであるが、2輪とも落ちてしまうことは考えない場合、荷台そのものを支えている上位の車輪が落ちない車間距離の長い場合のほうが良く、連結点の位置を高くして下位の車輪がステップ角部から離れるようにするのは更に理想的である。
定着時のブレーキについて、上りでは図7(b)に示すように車体前部を車輪に代わって回転しないL型車輪で支持するので、カートは動かない状態になる。下りでは図7(c)に示すように連結点が連結部車輪の回転軸にないので、車体の折れ変形で直接ブレーキを連結輪に押さえつけるように出来る。
段差部先頭には中央に接地状態の自在輪26、その両側に宙に浮いた固定輪25が取り付けられる。平地走行時には車体の下に凸の折れ変形を止めて車体中央の連結輪を宙に浮かして、後尾の固定輪と先頭の自在輪の3輪で走行する。上りでは車体が下に凸の折れ変形をするので、上り入り口で両端に車輪をつけた回転体A3が当たりを突き上げ、当たりを解除して下に凸の折れ変形が出来るようにする。
下に凸の折れ変形を止める構造について説明する。車体が上に凸の折れ変形をすると、連結輪車軸P5を中心に車体の前半分と後ろ半分が互いに反対方向に回転し、間に割れ目が出来る。この割れ目にクサビが入ると車体の中央の連結部は宙に浮き車体は両端で支持されるようになる。この割れ目は連結輪車軸P5から離れるほど大きくなるので、連結輪車軸から離れた位置で平行部に取り付けた当たりAと、段差部の接続軸P4を中心にして上下に回転するアームA4の中間に取り付けた当たりBとを突き合わす。当たりAは連結輪車軸P5を中心に回転し、その円運動の接線方向の動きを止めるためには図7(a)において角度P5、AP4は直角に近いほうが良い。
上り出口の直前では連結輪が接地した状態で、当たりBは当たりAの上に乗っており自由に折れ変形が出来る状態で、カートを押した時カートが下に凸の折れ変形をして後尾輪が浮き上がり、カートを後ろから押す力を半減させてしまう。このようなことがないように当たりBの後ろに当たりCを設けて、当たりAの上に当たりBが乗っている状態でも当たりCに当たるようにしてそれ以上の下に凸の折れ変形を止める。カートがエスカレータから脱出すると、脱出後に段差2輪が水平な床面上にあって後尾輪がエンドプレートのスロープ面にある瞬間があり、このとき車体は僅かに上に凸の折れ変形をするので、上に乗っていた当たりBが下に落ちてAと突き合わさった状態になる。Bの断面が円形にするのは、はまった当たりが上り入り口で外れやすいようにするためである。
車体の下に凸の折れ変形を止める当たりは、下りでは入り口で勝手に外れて出口で勝手に入りエスカレータを出る前に連結輪が宙に浮いた状態に復帰する。上りでは入り口でカートが下に凸の折れ変形をしなければならないので、図7(b)に示すように接続軸P3を中心に回転する回転体A3で下からアームA4を突き上げて外す。回転体は上下両端に車輪が取り付けられ、下の車輪はステップ面の上昇を捉えて回転体を回転させるものである。上り入り口では進入して暫らくは車体が折れ変形せずに一直線のままのほうが前進しやすいので、回転体の下の車輪は暫らくは接地しないように宙に浮かしている。回転体の上の車輪は車体の下に凸の折れ変形を止める当たりをはずしてから、アームA4が更に上に跳ね上げられて荷台の底に当たらないように、回転体A3が回転してもアームA4を上に持ち上げないようにしている
荷台の水平について詳述する。図1のカートは車体が中央で折れ、下に凸の折れ変形を当たりで止めた使用を昇り方向に限るカートである。方杖を後方に倒して荷台後部を支持しているので、荷台の先頭を水平方向に引っ張ることになり、荷台の先頭が浮き上がり車体を下に凸の方向に折り曲げる力が働く。この下に凸の折れ変形をとめる当たりがなければ、両端支持の平地走行状態では車体中央の連結部が下に落ちて車体が下に凸の方向に折れる。
階段内では中央の連結点が下から上昇してくるステップ角部で突き上げられ、両端支持から中央1点支持状態になり、しかも連結点Rと平行部の接地部10はずらした位置にあって同じ位置にしていないので、車体を上に凸の折れ変形を起こすように設計している。エスカレータ内では車体を下に凸に折り曲げる力より上に凸に折り曲げる力が上回り、車体が上に凸の折れ変形をすると方杖は鉛直に立ち上がり、荷台を水平方向に引っ張る力が弱くなる。方杖が立ち上がる方向に回転することは、折れ変形の進行に従い荷台を水平方向に引く力を徐々に弱めていくことで、荷台を下から直角に支えて荷台の上下方向の動きを止め荷台は安定した状態になる。荷台を支える支点間距離QSは図1(a)の場合より図1(b)の場合のほうが広くなり平地走行状態では支点間より外に荷台が延長されていたがエスカレータ内では荷台の両端の真下に支点が移動している。
エスカレータ内で出口に近づくにつれて車体が3点支持から徐々に両端支持状態になると、方杖は後ろに倒れ荷台を水平に引く力が増加し、車体を下に凸に折れ曲げようとする力は増加する。すなわち車体が一直線に戻ろうとする力が増加する。この増加傾向は方杖が倒れれば倒れるほど加速し、方杖は一旦倒れだすと当たりに当たるまで途中で止まることなく倒れてしまう。図1の昇り方向専用車はこの動きを当たりで止めるもので、一直線に戻ろうとする力が大きいほどカートは堅固になり変形しなくなる。
図1の上り専用のカートは平地走行時に車体中央が着地しないように下に凸の方向の回転を止める当たりを取り付けるもので、図7の上り下り両用のカートは上にも下にも折れ変形するので車体中央の連結点を車輪で受け下に凸の方向の回転を止める当たりを外すものである。しかし平地走行時に当たりを外すと車体は自由に変形できる状態になり荷台がぐらつく。図7の上り下り両用のカートにおいても平地走行時に下に凸の折れ変形を当たりで止めれば一直線に戻ろうとする力でカートは堅固になり、同時に連結部の車輪を宙に浮かすことにより平地走行で自由に方向を変えられるようになる。図7の上り下り両用のカートは平地走行では当たりをいれエスカレータ内では当たりを外すようにしている。したがって平地走行で荷台は堅固でもエスカレータ内では荷台はグラグラである。
図1(b)においてエスカレータに固定されたカートの取手を引いた場合、平行部先端が持ち上げられ方杖が後ろに倒れ車体は平地走行状態の一直線になろうとするが、平地走行状態で方杖が後ろに傾くより階段内では階段勾配が加算されるので方杖が後ろにさらに傾き、方杖が一気に倒れてしまい荷台の荷物を下階にこぼしてしまうことになる。この上り専用カートを下りに使用した場合、図1(b)において取手を上階側に取り付け上から下に押した場合、少し前へ押すだけで一気に荷台が前に倒れてしまうことになる。連結点と平行部接地部を前後にずらすことで、この傾向を緩和しているが、方杖が倒れだすと止まらない性質がなくなる訳ではない。出口において平地走行状態に復帰する復元力があるが故の欠点である。逆にこの欠点のないカートは復元力を持たないカートである。
図7のカートは荷台と平行部を直接接続し、荷台と段差部を後ろに倒れた方杖を介して接続するもので、図8のカートは荷台と段差部を直接接続し、荷台と平行部を前傾した方杖を介して接続するものである。方杖の傾く方向で荷台方向に水平方向の力が働き、図7のカートは後ろに倒れた方杖が車体先頭部を引く方向に働き、図8のカートは前傾した方杖が車体先頭部を押す方向に働く。図7のカートは下に凸の折れ変形方向に動き連結部が沈む方向に動き、図8のカートは上に凸の折れ変形方向に動き連結部が浮き上がる方向に動く。図7のカートは連結部が沈む方向に動くので車体は下りの上に凸の折れ変形から平地状態の一直線になるが、上りの下に凸の折れ変形からは平地状態の一直線にならない。図8のカートは連結部が浮き上がる方向に動くので車体は上りの下に凸の折れ変形から平地状態の一直線になるが、下りの上に凸の折れ変形からは平地状態の一直線にならない。しかし荷台が平地状態の一直線に復帰するのは方杖の傾きによって発生する水平方向の力によるところは少なく、上りの下に凸の折れ変形からの復帰は、折れ変形したままで着地する場合図8(b)に1点鎖線の地面が示すように先頭輪が浮いたままの状態あるいは後尾輪が浮いたままの状態から平地状態の一直線になるとき荷物の重心が下がるかどうかによるもので、下りの上に凸の折れ変形からの復帰は、折れ変形したままで着地する場合図8(c)に1点鎖線の地面が示すように連結輪が浮いたままの状態から平地状態の一直線になるとき荷物の重心が下がるかどうかによるものである。車体の折れ変形に関して方杖が倒れる方向に動くとき、図7のカートでは上りの下に凸の折れ変形が、図8のカートでは下りの上に凸の折れ変形が何らかの終点に至るまで止まることなく進行するが、平地状態への復帰は方杖が倒れる動きに関係なく、折れ変形で持ち上げられた重心が下がるかどうかによるものである。
図7のカートは下りのエスカレータ内において方杖は起き上がる方向に回転し、上りのエスカレータ内では倒れる方向に回転する。ただしこの回転方向は段差部に対するもので実際は段差部も回転する。図7のように方杖が長くなると、見かけ上図7(b)に示すように上りでは起き上がる方向に図7(c)に示すように下りでは倒れる方向に回転する。方杖を長くすると方杖の回転角が少なく、それだけ荷台を水平にしない。平地復帰するときの方杖の回転方向はこの逆で、方杖の回転をこの逆方向に動くように取手を動かすと、すなわち下りで取手を押したり上りで取手を引くと方杖の回転は平地復帰の方向に一致し動きやすくなる。エスカレータ内で車体が一直線になると車体自体が傾き方杖も倒れるので、荷台は急激に荷物を下階にこぼす方向に回転する。
図8のカートは上りのエスカレータ内において方杖は起き上がる方向に回転し、下りのエスカレータ内では倒れる方向に回転する。上りで取手を押したり下りで取手を引くと方杖の回転は平地復帰の方向に一致し動きやすくなる。この要因も方杖の荷台に働く水平方向の力によるものではなく。平地復帰の方向に回転する時、持ち上げられた重心が下がることによるものである。エスカレータ内において下りで取手を押すと後尾輪が浮き上がり、上りで取手を引くと先頭輪が浮き上がり荷物を下階に向かってこぼす方向に荷台を回転させる。これは折れ変形しない通常のカートでも言えることではあるが、折れ変形するカートでは図7のカートを下りで押すとき、図8のカートを上りで引くとき、荷台の下階側が沈み回転は折れ変形しない通常のカートの場合よりも大きくなる。エスカレータ内でカートを手前に引くことはないとして、カートを前に押す場合だけを考えると、上りでカートを押す場合、当たりでカートの変形を止めることもでき、荷物を下階にこぼすこともない。下りでカートを押す場合図7のカートは方杖の回転で荷台の先頭が沈むが、図8のカートでは沈むことはない。図8のカートは図7のカートより回転が少ないだけ動きにくい。しかし下りでカートを押す場合、通常のカートでは先頭輪を中心にカート全体を回転させるが、図7のカートでも図8のカートでも連結輪を中心に後尾輪が浮く回転をするので、テコで荷台後部を押し上げるようなもので通常のカートより動きやすい。本発明のカートの問題点は下りでの荷台のグラツキである。図8のカートについて説明する。
図8のカートは荷台3前部を段差部2に接続し、荷台後部を前傾した方杖11で平行部1に接続するもので、図7のカートのように下りのエスカレータ内において取手を押すと、先頭の方杖が回転して荷台の先頭が沈むようなことはない。図8のカートの場合、図8(c)に示すように下りのエスカレータ内で取手を押すと、荷台先頭の高さは維持され荷台後部が沈むので、荷台の水平が保たれる。図7のカートは押すと後輪が浮き上がり、カートは平地走行状態の一直線に戻ろうとするが、図8のカートはそもそも平地走行状態が上に凸の折れ変形状態であるので、下りのエスカレータ内では方杖が起き上がって車体が一直線になるより、どんどん前傾して上に凸の折れ変形が進行するようになる。
図8のカートの欠点は方杖が倒れれば倒れるほど起き上がって元に戻りにくいので、図8(c)の一点鎖線の地面が示すように、平地走行でも連結輪が浮き上がり上に凸の折れ変形の状態であり、荷台前部が沈んで方杖を起き上がらせて一直線に戻るより方杖が前に倒れて荷台の後部が沈み、連結輪が浮き上がるようになりやすい。そのため方杖の前傾を少なくするための方杖の長さを長くして、回転角を小さくし荷台後部に荷物を置かないようにする。
先頭の送り装置は同じ向きのL型車輪A1,A2を2重に重ねるもので、前後のL型車輪は共に回転するが当たりによって前には回転しない。一点鎖線r1は回転軸p1を中心にする円弧で、r2は回転軸p2を中心とする円弧である。下りの入り口において下から上昇してくるステップ角部が初めに前のL型車輪A1に当たると、円弧r1に沿って後ろに送られ、次に後ろのL型車輪A2に乗り移り、円弧r2に沿って後ろに送られる。円弧r1だけでカートを前進させる場合は、カートは途中から沈むだけで前進しなくなるが、円弧r2に乗り移ることでカートは急降下せずに沈むことなく高度を維持して前進する。
上り入り口ではカートの後退は先頭の両側の固定輪がステップ角部に乗り上げたときだけで、すべての場合に前進するようにしている。それ故先頭の自在輪は前進装置A1,A2より先に接地しないように、自在輪両側の固定輪より前方に取り付ける。
中央の連結輪を宙に浮かすアーム15の回転軸p3は、平行部車体に取り付き段差部の当たりAと付き合わされる。図7のように別の部品の回転体の動作により当たりを解除するのではなく、アームの先端に取り付けた車輪8が接地することで自ら回転し当たりを外す。このようにすれば、上に跳ね上げられたアームが荷台の底に当たることはない。またカートが上り入り口に進入したとき、アーム先端の車輪が下から上がってくるステップ面上になくても、ステップの上昇よりカートの前進が先に起こるので、必ずステップ面上に乗り上げる。
図9は段差部2に連結部Rを設けるもので、エスカレータ内で平行2輪の車間距離が変化する。連結輪は上りのエスカレータ内において全円がステップ上にあって、連結輪の車輪径が大きくなると平行2輪の車間距離を縮めなければ後尾輪が同一ステップ上に乗らなくなり、下りのエスカレータ内では連結輪はステップ角部上に乗るので、車輪径はいくら大きくても平行2輪の車間距離に関係しない。連結部Rは連結輪の回転軸P1の周りを回転し、平行2輪の車間距離は図9(b)に示すように上りにおいては短くなり、図9(c)に示すように下りにおいては長くなる。
荷台は図8のカートと同様、前は段差部に接続され後ろは平行部に施された長穴内を移動する車輪8に取り付けられる。図9(a)に示すように平行部に施された長穴は2つの勾配のスロープからなり、中央に段差がある。平地走行時は長穴内の車輪8は中央の段差を落ちた所でとどまっており、連結輪を宙に浮かした状態を保つ。荷台に荷重がかかるほど車輪がスロープを降りようとするが、荷台が空の状態でも段差を上りきって連結輪が着地しないように設計している。
連結点Rは連結輪車軸P1の周りを公転し、下りの下向きの回転では連結点の移動において水平変位が大きく、長穴内の車輪が長く動くようにしている。図8の前倒した方杖では、方杖が倒れれば倒れるほど水平変位は少なく垂直変位が大きくなり、方杖を水平方向に押しても起き上がらないようになるが、直線の長穴の場合勾配が一定なのでこのようなことは起こらない。
図8のカートは上りのエスカレータ内では方杖が起き上がる方向に回転する。下りのエスカレータ内ではその逆で倒れる方向に回転し、上りでは復元力はあっても下りでは復元力を持たない。上りにおいても鉛直状態を通り過ぎてさらに後ろに倒れだすと、平地状態の一直線に戻ることはない。方杖は倒れる方向に回転すると方杖と荷台との接続軸の円運動の接続方向が水平からより鉛直に近づくので折れ変形の進行は加速する。
図9のカートは図8のカートの方杖の代わりにスロープ上を移動するローラーを用いるもので、スロープを円ではなく直線にして勾配を一定にすれば、上記のように方杖が倒れだすと止まらない傾向は解消される。また方杖においても方杖の長さを長くすると方杖と荷台の接続軸の円の奇跡はより直線に近づき、ローラーと同じ効果をもたらす。また下り出口で車体が折れたままの形で平地に置かれたとき、方杖は鉛直に近づきスロープにおいては水平に近づくので、方杖のある程度の前傾とスロープのある程度の下り坂は許容できる。折れ変形において方杖を倒す方向に回転させ、この回転を止める当たりをつければ、階段内において押しても動かないカートになる。復元力に問題があるが、段差部に方杖を持つカートのように階段内で押すと倒れきってしまう傾向はない。
図10は車椅子運搬車で、荷台は2本のレールA1A2で構成され2本のレールは中央で折れて前の部分は車体の上に固定され、後ろの部分は図10(a)のように展開してスロープとなり、スロープA2に車椅子が乗るとき連結部P1の高さが下がり、車椅子は自在輪26が浮く方向に傾く。スロープA2に車椅子を載せると逆止弁27で下がることはなく、テコA3を持ち上げて荷台A2を水平にする。テコA3の反対側には接続軸P2を中心に車間距離が増大する2つの車輪B1B2が取り付き、P1が初めから終わりまで同じ力で荷台を持ち上げることが出来る。車椅子を車体に載せたあとレールA2は図10(b)に示すように立ち上げられる。図10の車体は2つに折れる車体ではなく、1つの車体で前は段差2輪で後ろは大径車輪で支えられる。
車椅子を出来るだけ低く荷台に載せる場合は荷台を後ろにずらす必要があり、図10のように荷台は前を段差部に接続し後ろを車体の延長部分に方杖を介して接続する。車椅子を出来るだけ荷台の前に載せる場合は荷台を高くする必要があり、荷台の前を方杖を介して段差部に接続し後ろを車体に方杖を介さず接続する。
段差2輪は内側を固定輪にして外側を自在輪にする。エスカレータ内では段差2輪の車間距離が大きいほど段差部の回転が少なく荷台の接続軸の上昇が少ないので自在輪の方向をエスカレータに侵入する前に図10(b)に示す方向に固定する。図10(a)に示すように段差部に取り付いたレバーが立ち上がった状態は自在輪の方向を自由にして固定輪を宙に浮かすクサビが投入され段差部が回転しない状態になる。また図10(b)に示すように段差部に取り付いたレバーが倒れた状態は自在輪の車輪枠に設けたスリットにクサビが挿入され自在輪の方向を固定し、固定輪を宙に浮かすクサビが外されて段差部が回転する状態にする。エスカレータ内では段差2輪は2段にまたがって定着し、内側の固定輪は大径車輪と同一のステップ上にある。
一般に大径車輪の半径がステップの踏面寸法より大きいとき、階段内では留まることはなく落下し続ける。大径車輪の半径がステップの踏面寸法より小さく踏面寸法に近似するとき、大径車輪は始めに乗ったステップ上から落下することはなく移動するだけで、常に大径車輪の車軸の位置が角部近傍の位置になる。大径車輪は階段内では1つ上の段のステップ角部の上昇によりステップ上で下段方向に押し出され、大径車輪の車軸の位置が始めに乗ったステップ角部近傍に移動する。また1つ上の段のステップ角部が上昇するときで大径車輪に当たらないとき大径車輪は動かないので、そのままの位置でステップ上に留まることになる。
エスカレータ内では大径車輪の位置がステップ角部近傍であるので、内側の固定輪が大径車輪と同一のステップ上にあるためには固定輪が常に蹴込みに密着する側でなければならない。上りにおいても下りにおいても段差2輪は大径車輪の上位側でなければならない。したがって上りにおいても下りにおいても車椅子を乗せる方向は常に上階に足を向ける方向になる。車体が折れ変形すると、段差部の延長部分であるブレーキ18が大径車輪を押えてカートを停止させる。
図11は平行部の前後に段差部が取り付きエスカレータ内で3段に亘って定着する車椅子運搬車で、上りにおいても下りにおいても車椅子の乗せる方向は常に上階に足を向ける方向になるので、図11のエスカレータカートの前方の段差2輪は上りにおいても下りにおいても上位にあり、先に進入して上りにだけ対応すればよい段差2輪である。後方の段差2輪は上りにおいても下りにおいても下位にあり、下りでは先に進入して下りにだけ対応する段差2輪である。
平行部の両側に大径車輪を取り付けると、上下の大径車輪の車輪軸がステップ角部上に移動するので、中央の平行2輪は常に同一ステップ上にある。図11 のカートは中径の車輪にL型車輪を付加して、最も上位にある車輪と最も下位にある車輪を大径車輪に近づけるものである。大径車輪はステップ角部と接触する上位側の半分だけが機能し、最も上位にある車輪の上り時の後退に関与する上半分の車輪の大きさの不足を、L型車輪の前進機能で補う。また最終のL型車輪が下り時には先に定着した下位側を下階に落とすことはなく、むしろ上階に引き上げる。最も下位にある車輪の下り時の前進に関与する上半分の車輪の大きさの不足は、L型車輪の送り機能で補う。
平行2輪の下位側の車輪軸P1に取り付く回転体A1は、荷台3と連結棒13を介して連結され、荷台3の小さな動きで回転体A1は接続軸P1を中心にお大きく回転する。従って回転体A1の先端は空中にある時間が長く、下りの折れ変形の完了時にようやく図11(b)の接地寸前の状態まで回転する。図 (c)に示すように、先頭車輪が落段すると回転体A1が接地して回転し、回転軸P2が回転体A1の接地点P3に当てた鉛直線Y−Yより前方に移り、元に戻ることがなくなる。
連結棒13の接続軸P2は図11(d)に黒く塗りつぶして示す回転体A1に施された長穴を移動し、先頭輪が落段する非常時以外は引きバネによって片方に寄せられていて、荷台の動きに従い回転体は往復運行するが、先頭輪が落段したとき回転体A1はバネの力が弱いので荷台の動きとは全く関係なく回転し自立する。先頭輪が更に落下しカートが前進すると、回転体A1は自立したまま上位の段差2輪が落段し、荷台は下位側をあげたまま上位側が降りることになり、荷台は荷物を下階側に落とさないようになる。
図12,図13の装置は図7のカートに取り付き、下りで取手を押しても平行部車体が前転しないように投入される当たりで、段差部の下りの回転で起動する。下り時に段差部2は連結点Rを中心に下に回転し、出口で上に回転する。出口で段差部が上に回転する動きは、下りの途中で取手を前に押して連結点Rを中心に平行部が下に回転する動きと同じで、この動きを止める当たりは、出口で車体が一直線に戻ることを止めることになる。
しかし段差部の回転によって段差部と地面との距離は変化するが、取手を前に押して平行部を下に回転させても、段差部と地面との距離は変わらない。段差部と地面との距離の変化で当たりを出し入れして、取手を押しても荷台が動かないようにする。段差部と地面との距離の変化は先頭の自在輪の場所と連結輪の場所に生じるが、先頭は自在輪の方向によって距離が変化し、連結輪の位置ではステップ角部までの距離が大きいので、図12,図13では連結部に当たりを設ける。
図12は接続軸P1を中心に回転する回転体A1が、図12(b)に示すように段差部2の回転により自立し、平行部1の下方向の回転を止める。平行部1の回転時に段差部と回転体に変化はないので、当たり14は有効に働き、段差部2の回転時には平行部に変化がないので当たりは外れる。
図13において段差部の回転で接続軸P1を中心に回転する回転体Aが起き上がり、回転体先端が平行部先端を迎えに行く状態になり、平行部が下に回転するとき先端同士が当たって回転を止める。
図14、図15は図1、図2、図6のように段差部が後続する登り専用カートに取り付く脱出装置で、図6(c)のように折れ変形がないカートが勾配の緩いエスカレータ内で作動するように開発されたものである。図14、図15は共に先頭に車輪8が取り付き車輪8の後ろに摩擦面9を持つ回転体A2を地面に落下させるもので、回転中心P2と摩擦面の接地点との距離は回転体の逆転につれて増大し、出口でカートの後退を防ぐ。出口で回転体カバーの先端部がエンドプレートに当たると、後ろに回転して平地状態に戻る。
図14、図15において(a)は平地走行状態で、回転体A2はバネ22によって落下しないよう吊り上げられる。カートがエスカレータ上り入り口から進入し車体が傾斜すると、車体後尾の脚が着地し脚前方の空間が大きくなり、回転体が接地することなく回転しうる空間が出来る。(b)は回転体A1の回転でバネが緩んで回転体A2が地面に落下した状態で、回転軸P2を通る鉛直線より車輪8の回転軸は前方にあり、(c)に示すように出口で車体が水平に戻るとき、押しても回転体が後転することはない。
図14のカートにおいて上り出口では車体の傾斜が元に戻る前に方杖が先に元に戻るので、バネの取り付け部は元の位置に戻る。この際引きバネは緩んだ状態から緊張するが、バネは回転体の回転中心P2より前方にあるので回転体が後方に回転することはない。更に出口に近づくと、車体は水平に戻って回転体は地面に着地し、前方の自在輪を宙に浮かし、自在輪に代わって車体を支持する。もし出口で押し出されないとき車体は停止し、ステップだけが前進するので回転体は後ろに回転する。図14では回転体A1は方杖の回転で回転し、図15では回転体A1の車輪がステップ面上に乗り上げて回転する。図14の場合回転体はステップ角部前方のステップ面上に乗るが、図15の場合回転体はステップ角部後方の空間で宙吊り状態になる。この状態でカートを押しても回転体A2の車輪8の回転軸は前方のステップ面より上にあるので、前方のステップ面に前転しながら乗りあがり(c)図の状態になる。図15のようにさらに下段の空間で回転体A2を回転させることは、出口において前輪がエンドプレートに乗り上げても、脱出装置A2が下から上昇してくるステップに乗り上げず、脱出装置が効かない結果になる。この脱出装置は出口において平坦部を長く設けたエスカレータにしか適用できない。
図16は図7のカートのように、平行部が後続するカートに取り付く脱出装置で、外周が渦巻き曲線の渦巻き車輪19が後尾輪6に接触するだけで、逆転防止ブレーキとして働く。エスカレータ出口で先頭車輪がエンドプレートに乗り上げると、図16(b)に示すように先行する段差部2が連結点Rを中心に僅かにr1方向に回転し、先端に渦巻き車輪19を取り付けたアームA1を突き上げる。
渦巻き車輪19が車輪6に接触するとき、渦巻き車輪の回転軸P2と車輪6との接触点P3との距離は、図16(b)に示すようにカートを押して車輪6が前進方向に回転すると減少して、渦巻き車輪が車輪から離れる方向に回転する。図16(c)に示すようにカートが出口で停止し、ステップの流れで車輪6が後退方向に回転すると、渦巻き車輪の回転軸P2と車輪との接触点P3間の距離は増大し、渦巻き車輪の回転軸P2の位置が動かない限り、車軸P4を強力に押さえることになる。後尾輪6の回転が止まると、後尾輪6はステップの流れに乗って前進し、カートを押さなくてもエスカレータから脱出させることが出来る。
図16(c)は上りで大きく段差部が回転するとき、回転体A1を押し上げる。車輪8が回転体A1に固定した当たりB2から離れるようにし、引きバネ22で回転体B2を引いているのは、段差部が一直線に戻るとき図16(a)に示すような元の状態に戻れるようにするためである。
図17は取手12から手を離すと効くブレーキの構造図で、図17(a)は押しても引いても倒すとワイヤー20を引っ張る取手の構造図で、手を離すとワイヤーが引き込まれて取手12は直立する。車体の接続軸P1を中心に振り子運動するアームA1の先端には、地面と接触しカートが前後に動くと、回転して車体を持ち上げる車輪A2が取り付く。車輪A2は回転に伴い回転中心P5と接地点P6の距離が増大し車輪を持ち上げるので、カートは前後に動いても元の位置に戻ろうとする。車輪A2の回転で車体が持ち上がる条件は、車輪の回転軸P5が動かないことで、アームA1は2枚のリンクB1,B2が一直線になることで固定される。
図18は図7図8のように後尾輪が固定輪のカートに取り付く手を離すと効くブレーキである。このブレーキは途中の接続軸P1,P2,P3で折れ曲がるアームA1,A2、A3からなり、アームA1の端部は回転可能な接続軸P1で車体1に取り付く。またアームA2の先端P3に取り付くA3は、二又に分けた板が取り付き、この部分が車輪6に接触する。図18(a)は取手を押してワイヤー20がアームA1を引き込み、アーム先端A3がタイヤから離れた状態で、図18(b)に示すように取手から手を離すと、押しバネでアームA1、A2が一直線になり先端A3が車輪に接触する。
アームA2はスリットP3内を貫通し、P1,P2,P3を一直線に保つ。水平に引っ張られたロープの中央に集中荷重が加わるとき、僅かな荷重でロープの中央が大きく沈みロープ両端には無限大の張力が働く。同様に図18(a)に示すアームが2つに折れた状態から図18(b)に示すアームが一直線になるとき、僅かな押しバネ23の力でアーム先端A3は車輪6を押え込むことになる。またA1,A2に大きな軸力が発生しても僅かな押しバネ23の力で途中のP2で折れ曲がるのを防ぐことが出来る。
仮に途中のP2で折れ曲がる力が作用しても、たとえば先端のA3が車輪6を押えた状態から車輪6が図18(b)に示す方向r1に回転した時アームA3が接続軸P3を中心にr2方向に回転し、且つアームA2が接続軸P2を中心にr2方向に回転したとしても、アームA1はr3方向に回転するが、アームA1の回転r3は当たり14で止められているので、接触点P5は接続軸P2,P3と車軸の回転軸P6を通る直線状に並ぶことになり、アームA2の回転に伴い接続軸P2と接触点P3の長さが増大するので、アームA2が回転すればするほど先端A3は車輪のタイヤに食い込むことになる。
図18(c)に示すr4方向に車輪6が回転すると、アームA1はr6方向に回転し、図18(a)のように先端部A3が車輪から離れるようになるが、押しバネ23の力で回転r6を阻止する。またアームA3の先端はアームA3の円運動の接線方向に曲げられていて、車輪のタイヤの上でアームA3は直立するので当たりに頼らずアームA3の回転は止まり、アームA3の回転の中心P3の位置も動くことはない。
図19は図18と同じく車輪のタイヤに接触するだけで車輪の回転時に車輪に巻き込まれて効くブレーキA3を自在輪に取り付けた物で、図1、図8などの後尾輪が自在輪のカートに取り付けられる。図18と同様に2つの折れ曲がるアームA1,A2で構成され、車体にではなく自在輪の車輪枠の接続軸P1に取り付けられ自在輪の車輪と一緒に旋回する。図19(a)は取手から手を放してワイヤー20が引き戻されて、ブレーキ部分A3がタイヤに接触した状態で、図19(b)は取手を押したり引いたりしてワイヤー20を引き、ブレーキ部分A3がタイヤから離れた状態を示す。
図19(a)(b)において黒く塗りつぶした部分は、図19(c)の平面図に示すように自在輪の旋回中心Y−Yを中心に円形の穴を開けたプレートB1で、車体の接続軸P5を中心に上下する蝶番である。図19(a)に示すように下に下ろすと、アームA1に接触してアームA1に回転を与え、自在輪の車輪枠に付した当たり14に当ててアームA1を固定する。ブレーキ部分A3が車輪に巻き込まれてタイヤに食い込んでも、アームA2の回転中心P2は動かない。また図19(b)に示すように上に上げると、自在輪が旋回してアームA1がどの位置にあってもプレートB1とは接触しない状態になる。
図20は図7のカートの荷台を取り除いた車体の構造詳細図で、Qは荷台後部との接続軸、Rは連結点、Sは方杖との接続軸である。車体平行部1と車体段差部2は左右の車輪が取り付く1本のパイプをU型に曲げ加工したもので、左右の車体を一体にしている。複数のカートを順々にカートの後から差し込んで収納しやすいように平面的に後ろに行くほど幅を広くしており、立面的にも前後に勾配がついている。
図7のカートの先頭部は自在輪の両側に固定輪が取り付くが、図20のカートは図7のカートの両側の固定輪を省略している。両側のL型車輪が当たりB1によって前進方向のみの回転に制限されているが、出口でエンドプレートに乗り上げたとき、両側に大径車輪が取り付いたときと同じ効果をもたらす。また後輪6は自在輪にすることで接地する車輪のすべてが自在輪で、収納時複数のカートをひとまとめにして移動するとき、自由に方向転換が出来る。
連結輪5の車輪枠B1と接続軸Rで接続するコ型に曲げたプレートB2には段差部車体2が取り付き、連結点Rで車体の前後が折れ曲がるようになっており、図20(a)に黒く塗りつぶした丸印18はプレートB2を貫通するボルトで、下りの折れ変形時に車輪5を抑えてカートを停止させる。
図20(a)は図20(c)の平面図に示すX−X部分の断面図で、図20(b)は平地走行で連結輪5を宙に浮かす装置で、図7、図8で紹介した装置と異なり、片方の当たりが車体に固定されるものではなく、両方の当たりはどちらも回転体A1,A2に取り付き、図20(a)に示すように回転体同芯が突き合って連結輪5を地面から宙に浮かす。P1、P2はそれぞれ回転体A1、A2の接続軸で、回転の中心である。回転体A2の先端に取り付けた車輪8が接地すると、図20(c)に示すように突き合った当たりC1,C2が外れ、連結輪が接地した状態になる。このように両方の当たりC1,C2を回転体に取り付けることにより、上に跳ね上がった回転体A1が荷台の底に当たることはない。
図21は図20の車体のカゴとカゴの下にカート収納時に回転する棚A1を取り付けたショッピングカートで、棚A1はカゴに付した接続軸P1を中心に回転し、アームA2で吊り下げられる。棚A1上に荷物を置いたときアームA2は接続軸P1を中心にr1方向に回転しようとするが、当たり14で回転r1は止められ、棚A1は図21(a)に示すように水平を保つ。当たり14は両側のアームA2をつなぐ水平材でカゴの支柱B1に当たって回転r1を止める。カートの収納時図21(b)に示すように後のカートで押し出され、棚A1はr2方向に回転して上に跳ね上げられるが、アームA2がカゴの支柱B1より外側にあるのでカゴの底に当たることなく回転する。
図22は図10に示す大径車輪と段差2輪で車体を支える構造のカートの段差部の詳細図で、通常の手漕ぎ車椅子の自在輪と足載せ台を取り外してこの段差部と取り替えれば、エスカレータに出入りできる車椅子の変身できる。P1は通常の車椅子に取り付ける取り付け用ボトル穴で、A1は取り付けプレートである。A2は段差部で接続軸P2を中心に回転する。段差部A2には両端に固定輪と自在輪が取り付き、自在輪の延長部分に足載せ台が取り付く。また中央にあるトグルバネによって2つの静止状態を保つ。
手漕ぎ車椅子をエスカレータに入れる前に車椅子を後退させ自在輪の向きを後退方向にしてから取手を倒すと、図22(a)のように自在輪の車輪枠に取り付けたスリット付プレートB1に、割り込みプレートB2が嵌りこみ自在輪の方向を固定し、取手B3に取り付けた車輪B4がプレートA1に付した当たりB5から外れ、段差部A2は接続軸P2を中心に回転可能となる。
また図22(b)に示すように取手B3を起こすと、割り込みプレートB2はスリットB1から離れ、自在輪が自由に向きを変えることができるようにする。同時に取手B3に付した車輪B4がプレートA1を押し上げて、固定輪を地面から離す。