JP2007536281A - 瘢痕組織治療用の官能性シロキサン - Google Patents
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Abstract
(式中、m=0〜6であり、n=6〜100であり、Q、RおよびR’は、独立して、C1−5アルキル、OU、UOCH2CH3、CH2CH3、UOCH3、OH、O(CH2)y(OU)yCH3、(OCH2CH2)yOU、(OCH2CH2)yOH、UOH、UOU’、UCO2U’、CO2U、UCO2COU’、CO2H、UCO2H、COX、UCOX、UCO2R’、CO2COU、アリール、アリールU、アリールUU’、アリールUU’U’’、NH2、UNH2、NHU、NUU’、NO2、UNO2、UCONH2、CONH2、UCONHU’、CONHU、UCONU’U’’、CONU’U’’、ハロゲン、PO4H3、PO4H3−Z、PO4H3−ZU(z=0、1、2または3)、PU3、PU’U’’U’’’SH、SO2およびSO3Hから選択され得
(式中、U、U’、U’’およびU’’’は、独立して、任意のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基(ここで、炭素原子の数は1〜31である)から選択され得;式中、X=ハロゲンであり;式中、y=1〜100である);
(但し、Q、RおよびR’は、全てがC1アルキルであることはあり得ない;))
の化合物を含み、ここで式(I)の化合物は、当該組成物の少なくとも1%の量で存在する。
【選択図】なし
Description
従って、本発明の目的は、創傷、熱傷、瘢痕組織および/または他の皮膚状態を治療するための効果的で便利な組成物および/または方法を提供することであり、それらは、従来技術における1以上の課題を克服もしくは緩和し、または有用な商業的代替物を与える。
本発明は、シロキサン化合物を含む組成物に関し、それは好ましくは、表皮角質層を通じて、表皮下および真皮層へと拡散し得、それによって、創傷、熱傷、肥厚性およびケロイド状瘢痕組織減少、および/または他の皮膚状態(これらに限定されない)の効果的な治療として機能する。
m=0〜6
n=6〜100
Q、RおよびR’は、独立して、C1−5アルキル、OU、UOCH2CH3、CH2CH3、UOCH3、OH、O(CH2)y(OU)yCH3、(OCH2CH2)yOU、(OCH2CH2)yOH、UOH、UOU’、UCO2U’CO2U、UCO2COU’、CO2H、UCO2H、COX、UCOX、UCO2R’、CO2COU、アリール、アリールU、アリールUU’、アリールUU’U’’、NH2、UNH2、NHU、NUU’、NO2、UNO2、UCONH2、CONH2、UCONHU’、CONHU、UCONU’U’’、CONU’U’’、ハロゲン、PO4H3、PO4H3−Z、PO4H3−ZU(z=0、1、2または3)、PU3、PU’U’’U’’’SH、SO2およびSO3Hから選択され得;
(式中、U、U’、U’’およびU’’’は、独立して、任意のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基(ここで、炭素原子の数は1〜31である)から選択され得;
式中、X=ハロゲンであり;
式中、y=1〜100である;)
(但し、Q、RおよびR’は、全てがC1アルキルであることはあり得ない;))
の化合物を含む、創傷、熱傷または他の皮膚状態の治療において用いるための組成物が提供され、ここで式(I)の化合物は、当該組成物の少なくとも1%の量で存在する。
m=0〜6
n=6〜100
Q、RおよびR’は、独立して、C1−5アルキル、OU、UOCH2CH3、CH2CH3、UOCH3、OH、O(CH2)y(OU)yCH3、(OCH2CH2)yOU、(OCH2CH2)yOH、UOH、UOU’、UCO2U’CO2U、UCO2COU’、CO2H、UCO2H、COX、UCOX、UCO2R’、CO2COU、アリール、アリールU、アリールUU’、アリールUU’U’’、NH2、UNH2、NHU、NUU’、NO2、UNO2、UCONH2、CONH2、UCONHU’、CONHU、UCONU’U’’、CONU’U’’、ハロゲン、PO4H3、PO4H3、PO4H3−Z、PO4H3−ZU(z=0、1、2または3)、PU3、PU’U’’U’’’SH、SO2およびSO3Hから選択され得;
(式中、U、U’、U’’およびU’’’は、独立して、任意のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基(ここで、炭素原子の数は1〜31である)から選択され得;
式中、X=ハロゲンであり;
式中、y=1〜100である;)
(但し、Q、RおよびR’は、全てがC1アルキルであることはあり得ない;))
の化合物を含む組成物の、創傷、熱傷または他の皮膚状態の治療用の薬剤の製造における使用が提供され、ここで式(I)の化合物は、該薬剤中に少なくとも1%の量で存在する。
m=0〜6
n=6〜100
Q、RおよびR’は、独立して、C1−5アルキル、OU、UOCH2CH3、CH2CH3、UOCH3、OH、O(CH2)y(OU)yCH3、(OCH2CH2)yOU、(OCH2CH2)yOH、UOH、UOU’、UCO2U’CO2U、UCO2COU’、CO2H、UCO2H、COX、UCOX、UCO2R’、CO2COU、アリール、アリールU、アリールUU’、アリールUU’U’’、NH2、UNH2、NHU、NUU’、NO2、UNO2、UCONH2、CONH2、UCONHU’、CONHU、UCONU’U’’、CONU’U’’、ハロゲン、PO4H3、PO4H3−Z、PO4H3−ZU(z=0、1、2または3)、PU3、PU’U’’U’’’SH、SO2およびSO3Hから選択され得;
(式中、U、U’、U’’およびU’’’は、独立して、任意のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基(ここで、炭素原子の数は1〜31である)から選択され得;
式中、X=ハロゲンであり;
式中、y=1〜100である;)
(但し、Q、RおよびR’は、全てがC1アルキルであることはあり得ない;))
の化合物の有効量を含む組成物を患者に投与する工程を含む、創傷、熱傷または他の皮膚状態を治療する方法が提供され、ここで、式(I)の化合物は、該組成物の少なくとも1%の量で存在し、上記化合物は、角質層を通じて、表皮下皮膚層へと移動する。
表1:Cica−Care(登録商標)医療用ゲルから抽出した分子種、
表2:異なる温度における角質層全域のシリコーン拡散、
表3:PDMS’sに置換した官能基の一覧、
表4:PDMS’sに置換した官能基の一覧、
表5:PDMS’sに置換した官能基の一覧、
表6:シロキサン処理された細胞の吸光分析、
表7:シロキサン処理された細胞のシリウスレッド80を用いた540nmにおける吸光分析、
表8:シロキサン処理された細胞のシリウスレッド80を用いた540nmにおける吸光分析、
表9:シロキサン処理された細胞のシリウスレッド80を用いた540nmにおける吸光分析、
表10:シロキサン処理された細胞のシリウスレッド80を用いた540nmにおける吸光分析、
表11:シロキサン処理された細胞のシリウスレッド80を用いた540nmにおける吸光分析、
表12:シロキサン処理された細胞のシリウスレッド80を用いた540nmにおける吸光分析、
表13:シロキサンで処理された包皮繊維芽細胞および肥厚性繊維芽細胞の、NaOH−メタノール2.5M中、シリウスレッドを用いた発光波長540nmにおけるマイクロプレートリーダーによる平均結果、である。
図1a:クロロホルム抽出後のシリコーン医療用ゲルからの低分子量シリコーンオリ
ゴマーのMALDI−MS分析。環状
図1b:クロロホルム抽出後のシリコーン医療用ゲルからの、(A)NaSi17C
34H102O17、(B)NaSi17C34H102O17SiC2H6CH3OCH3および(C)NaSi17C34H102O17SiC2H6CH3OH(最大でn=17)に関する低分子量シリコーンオリゴマーのMALDI−MS分析の同位体予測。
図2:水抽出後のシリコーン医療用ゲルからの低分子量シリコーンオリゴマーのMA
LDI−MS分析。スペクトルは、低分子量におけるポリエチレングリコールによる汚染を示す。環状(▼)、メチル/メチロール、メチル/メトキシ末端
図3:金属MALDI標的に対する加圧により、新しいシリコーン医療用ゲルから移
動した成分のMALDI−MS。スペクトルは、低分子量におけるポリエチレングリコールによる汚染を示す。環状オリゴマー(▼)に起因した経過が示される。
図4:金属MALDI標的に対する加圧により、水洗シリコーン医療用ゲルから移動
した成分のMALDI−MS。メチル/メチロール−(メチル/メトキシ)−末端オリゴマー(▼)に起因した経過が示される。
図5a:Cica−Care(登録商標)シリコーンゲルと接触してから16週後の
ゼラチン断面のEDX元素分析:(a):ゲルと接触した表面。
図5b:Cica−Care(登録商標)シリコーンゲルと接触してから16週後の
ゼラチン断面のEDX元素分析:(b):バルク(中心)。
図5c:Cica−Care(登録商標)シリコーンゲルと接触してから16週後の
ゼラチン断面のEDX元素分析:(c):背面。
図5d:Cica−Care(登録商標)シリコーンゲルと接触してから16週後の
ゼラチン断面のEDX元素分析:(d)ゼラチン対照。
図6a:Cica−Care(登録商標)シリコーンゲルと接触してから16週後の
ゼラチン断面のシリコンのEDX元素マップ。(a)および(b)での異なる限界感度で、シリコンは、暗い背景に対して白い領域として現われている。
図6b:Cica−Care(登録商標)シリコーンゲルと接触してから16週後の
ゼラチン断面のシリコンのEDX元素マップ。(a)および(b)での異なる限界感度で、シリコンは、暗い背景に対して白い領域として現われている。
図7a:(a)表皮の範囲(70μm)を示す瘢痕組織断面のSTEM画像。
図7b:(b)表皮/真皮界面における最高強度を示すシリコンのEDXマップ。
図8:環状
Cica−Care(登録商標)シリコーンゲルの(クロロホルム)抽出物と接触させた後の瘢痕組織表面からのMALDI質量スペクトル。
図9:低分子量官能性シリコーンの存在下でインキュベートされたインビトロ繊維芽
細胞。
図10:低分子量官能性シリコーンの存在下でインキュベートされたインビトロ初代
包皮および肥厚誘発繊維芽細胞(継代数は括弧内で示されている)。
図11:表7のグラフ表示、官能性シリコーンと共に接種された包皮繊維芽細胞およ
び肥厚誘発繊維芽細胞。
本発明は、表皮を通じて真皮層へと拡散する、式(I)で示されたような1種以上の官能性シロキサンを含む組成物、および、肥厚性およびケロイド瘢痕を含む創傷、熱傷または他の皮膚状態の効果的な治療における当該組成物の使用を提供する。
m=0〜6
n=6〜100
Q、RおよびR’は、独立して、C1−5アルキル、OU、UOCH2CH3、CH2CH3、UOCH3、OH、O(CH2)y(OU)yCH3、(OCH2CH2)yOU、(OCH2CH2)yOH、UOH、CO2U、CO2H、UCO2H、UCO2R’、CO2COU、アリールおよびアリールUから選択され得
(式中、Uは、任意のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基(ここで、炭素原子の数は1〜31である)から選択され;
式中、y=1〜100である)
(但し、Q、RおよびR’は、全てがC1アルキルであることはあり得ない;))
の化合物を含む、創傷、熱傷または他の皮膚状態の治療に用いるための組成物を提供し、ここで式(I)の化合物は当該組成物の少なくとも1%の量で存在する。
m=0〜6
n=6〜100
Q、RおよびR’は、独立して、C1−5アルキル、OH、O(CH2)y(OU)yCH3、(OCH2CH2)yOUおよびUOHから選択され得
(式中、Uは、任意のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基(ここで、炭素原子の数は1〜31である)から選択され;
式中、y=1〜100である;)
(但し、Q、RおよびR’は、全てがC1アルキルであることはあり得ない;))
の化合物を含む、創傷、熱傷または他の皮膚状態の治療に用いるための組成物を提供し、ここで式(I)の化合物は当該組成物の少なくとも1%の量で存在する。
実施例1:Cica−Care(登録商標)シリコーンゲルからの移動性低分子量種の同定
シリコーンゲルCica−Care(登録商標)(Smith and Nephew)は、ロイヤルブリスベン病院の熱傷ユニットから得た。MALDI−TOF−MSを用いて、バルクおよびシリコーンゲルの表面から移動し得るものの両方に存在する種の化学組成、モル質量ならびに、オリゴマー分布を測定した。
図1は、クロロホルムによりゲルから抽出することで得られる低分子量シリコーン種のMALDI質量スペクトルを示す。スペクトルは、該種は、質量1080Da〜2640Daで存在することを示している。1080Daのカットオフを設定して、マトリクスの付加イオンからの干渉(n×192Da)が検体スペクトル中で排除されていることを確実にする。
医療用ゲルからのシリコーン種の移動を測定するために、ゼラチン、または加水分解ウシコラーゲンをモデル系として用いた。ゼラチンは、試験中の微生物からの攻撃を防ぐために、抗生物質を含む溶液からキャスティングした。シリコーンゲルを、16週間、ゼラチン表面と接触させて置き、次いで、凍結乾燥後に切断し、走査型電子顕微鏡でのエネルギー分散型X線(EDX)分析によるシリコンの元素マッピングのための断面を得た。走査型透過電子顕微鏡(STEM)もまた、切断した瘢痕組織について行った。あらかじめ液体窒素下に保存していたサンプルを、ガラスナイフを用いて、液体窒素温度で、RMCTVIIウルトラミクロトームにより、1mm2単位で1〜2μmに冷凍切断した。冷凍断片は、次いでダブルグリッド上に集め、すぐに、真空下(10−4mmHg)で一晩凍結乾燥した。X線マイクロ分析は、120kvにおけるPhilips CM2000走査型透過電子顕微鏡により行い、シリコンマップを構築した。
ゲルが水性環境下におかれた場合に(皮膚に長期間接触した場合に起こり得る)、同一種が得られるかどうかを測定するために、ゲルを水で抽出し、上記のとおりに、MALDI分析を繰り返した。スペクトルを図2に示す。スペクトルは、図1に示したものとは大きく異なり、そこには他の化学種が存在する。これは少量のポリ(エチレングリコール)(PEG)の存在に起因して見られたものであり、これらはゲル中に存在し得るが、サンプルをクロロホルムで抽出する場合には、比較的微量な成分である。PEGを、シリコーン種の定量の前に除去した。スペクトル2の分析において、データフィットは、先と同様にメチル/ヒドロキシル末端オリゴマーおよびメチル/メトキシまたはメチル/メチロールのいずれかの末端オリゴマーである線状シロキサンと比較して、環状種が微量成分である場合にのみ可能である。これらの種の相対濃度は、MALDIデータから評価することができ、表1に示す。この表は、2つの抽出媒体により除去された環状および線状種の相対量を対比している。環状種は、クロロホルム抽出により抽出され得るオリゴマーの60%である一方で、抽出に水を用いる場合、これは40%まで落ちることが分かり得る。
ゲルから皮膚へのPDMS種の移動が創傷治癒において重要である場合、抽出され得るものだけでなく、ゲル表面に存在する種および移動し得る種の両方を同定することが重要である。MALDIの感度は、マトリクス物質の層を堆積し、上記のように質量スペクトルを稼動することにより、ゲルを標的に接触させることにより移動する少量の物質を分析することを可能にする。
親水性基により修飾された線状シリコーンが、界面においてタンパク質と結合し、変性に対してそれらを安定化することが近年報告されている(Zelisko,et al.,Proceedings−28th International Symposium on Controlled Release of Bioactive Materials and 4th Consumer & Diversified Products Conference,2001,2,997)。単純なヒドロキシ基末端がこの安定化を達成するのに十分であるかどうか、あるいはシリコーンが疎水性相互作用による構造反転を通じた変性を促進するかどうかは、これらの移動性および結合性種による肥厚性瘢痕の修復に関して起こり得るメカニズムについての基本的な関心である。加水分解コラーゲンマトリクスから真皮層につくられ得る外挿は限定された量しか存在しないので、シリコーンゲルシートから皮膚および瘢痕組織へ実際に移動し得る種についての研究は開始された。
本発明者らによって行われた、クロロホルム抽出物(図3で示されたように、主に環状種からなる)が適用された瘢痕組織についての研究は、低分子量シリコーンのイオン化および分析は達成され得ることを示した(ただし、低いS/Nである)。これは図8に示しており、シリコーンが適用された熱傷瘢痕の表面からのサンプルのMALDI質量スペクトルである。分析に先立って、部分的に乾燥した皮膚にマトリクスの微細噴霧を適用した。
先行技術(Kligmann,et al.,Arch.Dermatol.,1964,88,702)に記載された方法のとおりに、全層皮膚抽出物を剥離し、表皮から真皮を分離した。剥離した表皮角質層をトリプシン消化リン酸緩衝溶液中で処理し、角化角質層を残して生活組織を除去した。分離した角質層をろ紙で乾燥し、必要な時まで冷凍保存した。
ヒト単球はシリコーンの存在下で活性化されることが報告されており、これは、免疫細胞の浸潤物がマクロファージ活性を増加させることを示唆している。シリコーン医療用ゲル治療の後、肥厚性瘢痕組織からの免疫細胞の浸潤物は、マクロファージ活性の明らかな増加を示し(Borgognoni,et al.,2000,/www.medbc.com/annals/review/,13,164)このことは、シリコーン医療用ゲルは、単球の活性化機序として作用することを示唆している。血漿タンパクは、シリコーンに吸収された場合、変性し、単球を活性化することが知られている(Naim et al.,Colloids and Surfaces,1998,11,(1/2)79)。それゆえ、前述の種は、繊維芽細胞の抑制を誘発するために用いることができると考えられる。
シリコーンポリマーがヒト繊維芽細胞の増殖を不活性化および阻害することは提案されている(McCauley,et al.,J.Surg.Res.,1990,49,103)。McCauleyらは、主に胸部インプラント応用のために製造されたシリコーンゲル人工ポリマー存在下における、ヒト真皮繊維芽細胞の挙動について記載している。問題のポリマーは、肥厚性瘢痕修復に対してロイヤルブリスベン病院の熱傷ユニットで用いられているCica−Care(登録商標)シリコーン医療用ゲルと同じ構造を有している。これらのグループの研究による発見は、生存繊維芽細胞の細胞成分の低減した生存性ならびに形態学的変化を伴うヒト真皮繊維芽細胞の不活性化効果が見受けられることを示唆している。作用機序は不明であるが、瘢痕修復におけるその役割の重要性は評価される。それゆえ、本発明者らは、前述の種は繊維芽細胞増殖を抑制するのに用いることができると考える。
単球および繊維芽細胞の両方は、コラゲナーゼの制御および合成に関与している。過剰のコラーゲン沈着の存在下で、両方の主要なコラゲナーゼ制御経路は活性シロキサンから影響を受ける可能性があり、それゆえ平衡が回復することは知られている。それゆえ、前述の種は、コラゲナーゼ増強を誘発するために用いることができると考えられる。
表3−5に示したPDMS’sの計画的な合成は、環状ポリシロキサンの三量体または四量体の開環重合によるシリコーンポリマー合成を用いて行うことができる。縮合重合は、シリコーンポリマーのさらなる合成経路であり(Maravigna et al.,Comprehensive Polymer Science,1998,5)、それにより反応性ヒドロキシル基は、鎖の末端において置換され、続いて置換反応を行うことによって、シリコーンポリマーを「官能化」する(Mark,Silicon−based Polymer Science:A Comprehensive Resource,1990)。ヒドロキシル基は、ジメチルおよびビニル末端基で置換され得る。これらのシリコーンシートのゲル特性を得るために、PDMSは公知の方法に従って架橋され得る(Ravve,Principles of Polymer Chemistry 1995)。架橋は、添加された過酸化物の分解により生じるフリーラジカルによる引き抜きを介してビニル末端基側で達成される(Hirshowitz,et al.,Eur.J.Plast.Surg.,1993,16,5;Ravve,Principles of Polymer Chemistry 1995)。過酸化2,4−ジクロロベンゾイルは、シリコーンエラストマーを硬化するために用いられ得る。加えて、これらのポリマーは、ポリ(エチレンテレフタレート)またはポリ(テトラフルオロエチレン(poly(tetrafluorethylene)のように、内部のポリマーメッシュにより強化され得る(Ahn et al.,Surgery,1989,106,781 および Suare,et al.,Dermatol.Surg.,1998,24,567)。
結果:細胞活性
インビトロにおける、シリコーン流動体およびシリコーン医療用ゲルへの暴露は、結果的に単球および繊維芽細胞を活性化および不活性化させることが知られている(Kuhn et al.Int.J.Sur.Investig.,2001,2(6),443;McCauley,et al.,J.Surg.Res.,1990,49,103;Naim et al.,Colloids and Surfaces,1998,11,(1/2)79)。従来、これに関して、シリコーン流動体は遮断物質として機能する皮膚表面上に置かれ、もしくはおそらく治療中にその部位の水和に影響を与え、そして生活組織まで浸透しなかったという前提があった。しかしながら、上記で本発明者らが明らかにしたように、本発明のシリコーンは角質層を透過する。皮膚透過に加えて、本発明者らはまた、官能性シリコーン種と繊維芽細胞との間の相互作用についても研究を行った。
a)4つのシリコーン化合物は、末端官能化されており、水性環境中で部分的に混和性である(エトキシ、メトキシ、GP582、およびGP426)
b)水性環境中で完全に混和性/分散性の唯一のシリコーンは、ポリエチレングリコール(PEG)官能基を有したエステル分岐の低分子量シリコーンである(サンプルGP226)。
結果:コラーゲン産生
本発明のシロキサンのタンパク産生への影響をさらに研究するために、同一の条件下でインキュベートされた、同一の継代およびバッチからの初代細胞(上記実施例10で詳述)を上記7つの官能性シリコーンに接種した。前腕の肥厚性瘢痕に苦しむドナーから得た肥厚誘発初代繊維芽細胞株についても分析した。
本発明の官能性シリコーンは、局所投与用の組成物中に含有させるのに適している。GP218、GP226およびGP507は、クリーム製剤中に含まれている。該製剤は、官能性シリコーンが有効成分であり、組成物の全重量の最低30%(質量パーセント)の含有量で分散した水性エマルジョンに基いている。
医療グレードのバージンオリーブ油 12.0000%
グリセリン 8.0000%
上記式(I)のシリコーン 30.0000%
精製ラノリン 6.0000%
クエン酸 0.8000%
尿素 0.8000%
ビタミンA 0.0005%
シスロールGMS(ステアリン酸グリセリル) 12.0000%
ポラワックスGP2000(セテアリルアルコール、PEG20ステアレート)
8.0000%
溶媒(例えば、超純水(Millipore)) 22.3995%
を含む。
本発明者らは、本発明の官能性シリコーン、特に、上記で示したコラーゲン産生に影響を及ぼすGP218、GP226およびGP507を、臨床研究における試験に適用した。臨床研究のプロトコールは、以下に概略する。
この実験では、真皮深層部分厚熱傷後の瘢痕化の低減における、低分子量(LMW)シリコーンの効果を試験する。
これらの熱傷(3体の動物)を、瘢痕管理のために病院の熱傷ユニットで用いられている包帯であるCica−Care(登録商標)で覆う。包帯は週に1度交換する。この治療グループは、熱傷瘢痕に対して熱傷ユニットで今日用いられている本治療の効果を示す。
これらの熱傷(3体の動物)は、毎日、LMWシリコーンクリームで治療する。LMWシリコーンクリームは、上記実施例12に記載されたとおりのクリームであり得る。創傷は、週に一度検査する。この治療グループは、本発明者らの新規なLMWシリコーンクリームの熱傷瘢痕に対する効果を示す。
これらの熱傷(3体の動物)は、LMWシリコーンクリーム/Cica−Care(登録商標)ゲルの組み合わせ療法により治療する。上部に置かれたCica−Care(登録商標)ゲルと共に、LMWシリコーンは毎日創傷に適用される。創傷は、週に一度検査する。この治療群は、組み合わせ治療に何らかの利益があるか否かを示す。
熱傷は、いくらかの苦痛を引き起こす。この痛みを取り除く為に、上記の、組み合わせ麻酔技法を用いる。ケタミンは解離性麻酔を与えるだけでなく、同時に、非常に有用な鎮痛薬であり、軍事領域において頻繁に用いられている。長期作用型鎮痛薬であるブプレノルフィンは、術後の即時鎮痛に用いられ、このタイプの損傷に有効であることが立証されている。動物は毎日(通常は、少なくとも1日2〜3回)観察され、動物が不快感を感じている場合には、ブプレノルフィンを投与することができる(定期的に必要であるとは想定されない)。動物の継続的な評価が行われる。
ハーストンメディカルリサーチセンターで用いられているもの等の、慣用の給餌プロトコールが用いられ、飼料は、現在得ているのと同じ供給元から得る。該環境は、そこでブタが遊ぶことができる環境の質を、大きなゴムボール、空のミルク容器、タイヤ、犬のおもちゃ等のアイテムを用いて向上させることができるよう変えられる。彼らが従順な場合には、創傷がつくられる前と創傷が治癒した後に、ブタは、屋外の犬の囲いの中で走ることを許される。
実験の最後に、ブタをレソバルブ(ペンタバルビトンナトリウム)の過剰摂取(1/2ml/Kg IV)により安楽死させる。全ての動物を、集められ焼却処分されるまで冷凍する。
熱傷の治療を改善する潜在的に有益な化合物に関する、多くのインビトロデータが存在する。しかしながら、動物モデルは、要求される技術を発展させ、インビトロデータを裏付ける必要がある。現在のモデルは、優れた大型動物熱傷モデルであり、応急処置について試験するのに最も適している。動物熱傷モデルは再現性、一貫性のある損傷を有しているため、治療薬は、互いに効果的に比較され得る。我々の動物モデルで試験がなされた後、瘢痕の低減に有効であると証明された場合には、この製品をヒト臨床試験に進めることができる。
この実施例のプロトコールは、現在のクイーンズランド州の動物保護法および現在の科学的目的のための動物のケアおよび使用に関するNHMRCオーストラリア倫理綱領を順守している。
一旦合成した後、官能性PDMS組織間移動性物質は、本明細書中で記載した実施例1〜13の手順を用いて特徴付けし、試験することができる。
Claims (30)
- 創傷、熱傷または他の皮膚状態の治療において用いるための組成物であって、式(I)
m=0〜6
n=6〜100
Q、RおよびR’は、独立して、C1−5アルキル、OU、UOCH2CH3、CH2CH3、UOCH3、OH、O(CH2)y(OU)yCH3、(OCH2CH2)yOU、(OCH2CH2)yOH、UOH、UOU’、UCO2U’、CO2U、UCO2COU’、CO2H、UCO2H、COX、UCOX、UCO2R’、CO2COU、アリール、アリールU、アリールUU’、アリールUU’U’’、NH2、UNH2、NHU、NUU’、NO2、UNO2、UCONH2、CONH2、UCONHU’、CONHU、UCONU’U’’、CONU’U’’、ハロゲン、PO4H3、PO4H3−Z、PO4H3−ZU(z=0、1、2または3)、PU3、PU’U’’U’’’SH、SO2およびSO3Hから選択され得
(式中、U、U’、U’’およびU’’’は、独立して、任意のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基(ここで、炭素原子の数は1〜31である)から選択され得;
式中、X=ハロゲンであり;
式中、y=1〜100である;)
(但し、Q、RおよびR’は、全てがC1アルキルであることはあり得ない;))
の化合物を含み、ここで式(I)の化合物は、当該組成物の少なくとも1%の量で存在する、前記組成物。 - 式(I)の化合物が組成物の少なくとも10%の量で存在する、請求項1記載の組成物。
- 式(I)の化合物が組成物の少なくとも30%の量で存在する、請求項1記載の組成物。
- 式(I)の化合物のnが17である、請求項1記載の組成物。
- 式(I)の化合物のmが1である、請求項1記載の組成物。
- 式(I)の化合物のRおよびR’がC1−C5アルキルである、請求項1記載の組成物。
- 式(I)の化合物のRおよびR’がC1アルキルである、請求項6記載の組成物。
- Qが(OCH2CH2)yOUである、請求項7記載の組成物。
- QがUOHである、請求項8記載の組成物。
- QがO(CH2)y(OU)yCH3である、請求項7記載の組成物。
- 薬理学的に許容される担体、薬理学的に許容される希釈剤および薬理学的に許容される賦形剤からなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の組成物。
- 担体、希釈剤または賦形剤が、水中油型乳剤、油中水型乳剤、粒子担体、粘土、ケイ酸塩、クラスレートおよび他の無機物からなる群から選択される、請求項11記載の組成物。
- 粒子担体が滑石粉である、請求項12記載の組成物。
- 顔料および2番目の医薬的に活性な物質(ここで、2番目の医薬的に活性な物質は式(I)の化合物ではない)からなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項1〜13のいずれか1項記載の組成物。
- ゲル形態である、請求項1〜14のいずれか1項記載の組成物。
- ゲルシート形態である、請求項1〜15のいずれか1項記載の組成物。
- 乾燥すると人工皮膚として作用する低分子量ポリアルコールの形態である、請求項1〜16のいずれか1項記載の組成物。
- 創傷が瘢痕である、請求項1〜17のいずれか1項記載の組成物。
- 創傷、熱傷または他の皮膚状態の治療用の薬剤の製造における、式(I)
m=0〜6
n=6〜100
Q、RおよびR’は、独立して、C1−5アルキル、OU、UOCH2CH3、CH2CH3、UOCH3、OH、O(CH2)y(OU)yCH3、(OCH2CH2)yOU、(OCH2CH2)yOH、UOH、UOU’、UCO2U’、CO2U、UCO2COU’、CO2H、UCO2H、COX、UCOX、UCO2R’、CO2COU、アリール、アリールU、アリールUU’、アリールUU’U’’、NH2、UNH2、NHU、NUU’、NO2、UNO2、UCONH2、CONH2、UCONHU’、CONHU、UCONU’U’’、CONU’U’’、ハロゲン、PO4H3、PO4H3−Z、PO4H3−ZU(z=0、1、2または3)、PU3、PU’U’’U’’’SH、SO2およびSO3Hから選択され得
(式中、RおよびR’は、環系が形成されるように連結して結合または架橋アルキル基を形成する末端基であり得;U、U’、U’’およびU’’’は、独立して、任意のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基(ここで、炭素原子の数は1〜31である)から選択され得;
式中、X=ハロゲンであり;
式中、y=1〜100である;)
(但し、Q、RおよびR’は、全てがC1アルキルであることはあり得ない;))
の化合物の使用であって、式(I)の化合物は、該薬剤中に少なくとも1%の量で存在する、前記使用。 - 組成物を患者に投与する工程を含む、創傷、熱傷または他の皮膚状態を治療する方法であって、該組成物が、式(I)
m=0〜6
n=6〜100
Q、RおよびR’は、独立して、C1−5アルキル、OU、UOCH2CH3、CH2CH3、UOCH3、OH、O(CH2)y(OU)CH3、(OCH2CH2)yOU、(OCH2CH2)yOH、UOH、UOU’、UCO2U’、CO2U、UCO2COU’、CO2H、UCO2H、COX、UCOX、UCO2R’、CO2COU、アリール、アリールU、アリールUU’、アリールUU’U’’、NH2、UNH2、NHU、NUU’、NO2、UNO2、UCONH2、CONH2、UCONHU’、CONHU、UCONU’U’’、CONU’U’’、ハロゲン、PO4H3、PO4H3−Z、PO4H3−ZU(z=0、1、2または3)、PU3、PU’U’’U’’’SH、SO2およびSO3Hから選択され得
(式中、U、U’、U’’およびU’’’は、独立して、任意のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基(ここで、炭素原子の数は1〜31である)から選択され得;
式中、X=ハロゲンであり;
式中、y=1〜100である;)
(但し、Q、RおよびR’は、全てがC1アルキルであることはあり得ない;))
の化合物を含み、ここで、式(I)の化合物は、該組成物の少なくとも1%の量で存在し、かつ該化合物は、角質層を通じて、より表皮下皮膚層へと移動する、前記方法。 - 組成物を局所的に投与する工程を含む、請求項20記載の創傷、熱傷または他の皮膚状態を治療する方法。
- 創傷、熱傷または他の皮膚状態の修復に有効な量で組成物を投与する工程を含む、請求項21記載の創傷、熱傷または他の皮膚状態を治療する方法。
- ケロイド瘢痕、肥厚性瘢痕、座瘡瘢痕、紅斑性皮膚および皮膚線条瘢痕からなる群から選択される1種以上の皮膚状態を治療するのに有効な量で組成物を投与する工程を含む、請求項20記載の創傷、熱傷または他の皮膚状態を治療する方法。
- 瘢痕の色、瘢痕プロフィール、毛の量、創傷の大きさおよび感染量からなる群から選択される1種以上の臨床マーカーを修正するのに有効な量で組成物を投与する工程を含む、請求項20記載の創傷、熱傷または他の皮膚状態を治療する方法。
- 繊維芽細胞の数、間質組織の変性、表皮厚さ、毛嚢の数ならびに真皮乳頭層および真皮網状層中の変性からなる群から選択される1種以上のさらなるマーカーを修正するのに有効な量で組成物を投与することを含む、請求項20記載の創傷、熱傷または他の皮膚状態を治療する方法。
- 単球活性化を引き起こすのに有効な量で組成物を投与する工程を含む、請求項20記載の創傷、熱傷または他の皮膚状態を治療する方法。
- 繊維芽細胞増殖を抑制するのに有効な量で組成物を投与する工程を含む、請求項21記載の創傷、熱傷または他の皮膚状態を治療する方法。
- コラーゲン産生を下方制御するのに有効な量で組成物を投与する工程を含む、請求項20記載の創傷、熱傷または他の皮膚状態を治療する方法。
- 細胞増殖を阻害しない有効な量で組成物を投与する工程を含む、請求項20記載の創傷、熱傷または他の皮膚状態を治療する方法。
- コラゲナーゼ活性を増強するのに有効な量で組成物を投与する工程を含む、請求項20記載の創傷、熱傷または他の皮膚状態を治療する方法。
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