JP2007535913A - ヘテロカリオン菌類又は菌類宿主細胞におけるモノクローナル抗体の生成 - Google Patents

ヘテロカリオン菌類又は菌類宿主細胞におけるモノクローナル抗体の生成 Download PDF

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Abstract

本発明は、ヘテロカリオン菌類又は菌類宿主細胞におけるモノクローナル抗体の生成方法に関する。さらに、それはまた、抗体のL鎖をコードする第1核酸配列及び前記第1核酸配列に対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成る核酸構造体、抗体のH鎖をコードする第1核酸配列及び前記第1核酸配列に対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成る核酸構造体、抗体のL鎖をコードする第1核酸配列及びセルロース結合ドメインをコードする第2核酸配列を含んで成る核酸構造体、及び抗体のH鎖をコードする第1核酸配列及びセルロース結合ドメインをコードする第2核酸配列を含んで成る核酸構造体にも関する。

Description

発明の分野:
本発明は、ヘテロカリオン菌類又は菌類宿主細胞におけるモノクローナル抗体の生成方法に関する。
発明の背景:
モノクローナル抗体は従来、哺乳類細胞、トランスジェニック動物又は植物において発現されて来た。しかしながら、それらのシステムは、産業的規模で異なったポリペプチドの生成のために集中的に使用されて来た、細菌又は菌類細胞よりも、産業的規模での生成のためにさほど適切ではない。
アメリカ特許第5,643,745号は、少なくとも2種のサブユニットを含んで成る異種ヘテロダイマーを生成できるヘテロカリオン糸状菌宿主を開示する。
アメリカ特許第6,331,415号は、1つの免疫グロブリン、又は前記免疫グロブリンH鎖の可変ドメインを少なくとも含む免疫学的に機能的な免疫グロブリンフラグメントの生成方法を開示する。
WO03/089614号は、糸状菌宿主細胞におけるモノクローナル抗体の生成方法を開示する。
発明の要約:
本発明は、
a)抗体のL鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第1核酸構造体を含んで成る第1核、及び抗体のH鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第2核酸構造体を含んで成る第2核を含んで成るヘテロカリオン菌類を供給し、ここで前記核酸構造体の少なくとも1つがさらに、菌類により通常分泌されるポリペプチド又はその機能的部分をコードする第2核酸配列を含んで成り;
b)前記抗体L及びH鎖の発現のために適切な条件下で前記へテロカリオン菌類を培養することを含んで成るモノクローナル抗体の生成方法を提供する。
本発明はまた、
a)抗体のL鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第1核酸構造体を含んで成る第1核、及び抗体のH鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第2核酸構造体を含んで成る第2核を含んで成るヘテロカリオン菌類を供給し、ここで前記核酸構造体の少なくとも1つがさらに、前記第1核酸配列に対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成り;
b)前記抗体L及びH鎖の発現のために適切な条件下で前記へテロカリオン菌類を培養することを含んで成るモノクローナル抗体の生成方法を提供する。
さらに、本発明はまた、抗体のL鎖又はH鎖をコードする第1核酸配列、及び前記第1核酸配列に対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成る核酸構造体にも関する。本発明はさらに、抗体のL鎖又はH鎖をコードする第1核酸配列、及びセルロース結合ドメインをコードする第2核酸配列を含んで成る核酸構造体にも関する。
さらに、本発明はまた、ヘテロカリオン菌類宿主細胞にも関する。
定義:
用語“異種”(heterologous)とは、異なった起源、すなわち遺伝学的に異なる細胞に由来するものとして、本発明においては理解されるべきである。従って、用語“異種発現”(heterologous expression)とは、自然において宿主細胞により発現されない、宿主細胞におけるポリペプチドの発現を意味する。用語“第1核酸配列に対して異種の第3核酸配列”とは、異なった起源に由来する第3及び第1核酸配列として理解されるべきであり、ここで“起源”(origin)とは、遺伝子又は細胞を言及することができる。従って、例えば第3及び第1核酸配列は、同じ細胞からの異なった遺伝子に由来することができるか、又はそれらは遺伝学的に異なった細胞/種からの類似する遺伝子に由来することができる。
用語“相同”(homologous)とは、同じ起源、すなわち遺伝子学的に同一である細胞由来のものとして、本発明においては理解されるべきである。従って、用語“相同発現”(homologous expression)とは、自然において宿主細胞により発現される、宿主細胞におけるポリペプチドの発現を意味する。
用語“ジスルフィド結合”又は“ジスルフィド橋”とは、ポリペプチドにおける2種のシステイン残基の硫黄原子間の共有結合として、本明細書において理解されるべきである。
用語“セルロース結合ドメイン”(CBD)とは、多糖(炭水化物)、時折、必ずしも独占的ではないが、その水不溶性形(結晶を包含する)に選択的に結合するポリペプチドとして、本発明において理解されるべきである。
CBDは、セルロース分解酵素、すなわちセルロースを加水分解できる酵素から典型的には誘導される。CBDは、それがセルロース分解酵素である場合、基質加水分解のための活性部位を含む触媒ドメインをさらに含んで成る、ポリペプチドの内在性部分として見出される。そのような酵素は、1つよりも多くの触媒ドメイン及び1,2又は3個のCBDを含んで成ることができ、そして任意にはさらに、CBDと触媒ドメインとを結合する、1又は複数のポリペプチドアミノ酸配列を含んで成り、後者の型の領域は通常、“リンカー”として示される。
CBDは、ポリペプチドのN又はC末端、又は内部位置に位置することができる。ポリペプチドのその部分は、それ自体CBDを構成し、典型的には約30〜約250個のアミノ酸残基から成る。特に、本発明のCBDは、配列番号50で示されるアミノ酸配列、又は配列番号50のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、例えば少なくとも70又は80%の相同性を有するアミノ酸配列を有するCBDであり得る。
本発明のためには、配列の一列整列及び相同性評点の計算は、タンパク質及びDNA一列整列のために有用な、十分なSmith-Waterman一列整列を用いて行われ得る。デフォルト評点マトリックスBLOSUM50及び同一性マトリックスは、それぞれタンパク質のDNA一列整列のために使用され得る。ギャップにおける最初の残基のためのペナルティーは、タンパク質に関して−12及びDNAに関して−16であり、そしてギャップにおける追加の残基のためのペナルティーは、タンパク質に関して−2、及びDNAに関して−4である。
一列整列は、FASTAパッケージバージョンV20u6(W. R. Pearson and D. J. Lipman (1988),"Improved Tools for Biological Sequence Analysis", PNAS 85: 2444- <BR> <BR> 2448, and W. R. Pearson (1990) "Rapid and Sensitive Sequence Comparison with FASTP and FASTA", Methods in Enzymology, 183: 63-98)により製造され得る。
タンパク質配列の複数一列整列は、“ClustaIW”(Thompson, J. D. , Higgins, D. G. and Gibson, T. J. (1994) CLUSTAL W: improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting, positions-specific gap penalties and weight matrix choice. Nucleic Acids Research, 22: 4673-4680)を用いて製造され得る。DNA配列の複数一列整列は、DNA配列からのその対応するコドンによりアミノ酸を置換する、鋳型としてタンパク質一列整列を用いて行われ得る。
用語“上流”とは、核酸配列又はアミノ酸配列に関して使用される場合、本発明においては、それぞれ核酸又はアミノ酸配列の5’→3’又はN末端→C末端に関して、いずれかの所定の点の近位部位に物理的に位置する、1又は複数のヌクレオチド又は1又は複数のアミノ酸として理解されるべきである。
用語“下流”とは、核酸配列又はアミノ酸配列に関して使用される場合、本発明においては、それぞれ核酸又はアミノ酸配列の5’→3’又はN末端→C末端に関して、いずれかの所定の点の遠位部位に物理的に位置する、1又は複数のヌクレオチド又は1又は複数のアミノ酸として理解されるべきである。
用語“タンパク質”又は“ポリペプチド”とは、本発明においては交換可能的に使用され得る。
発明の特定の記載:
モノクローナル抗体:
本発明は、ヘテロカリオン菌類又は菌類宿主細胞におけるモノクローナル抗体の生成方法に関する。
生理学的に、抗体は、抗原への暴露に基づいてB−細胞(形質細胞)により生成され、そしてそれらの生成を誘発する抗原決定因子又はエピトープと、又は相同抗原に密接に関係する抗原決定基と、インビトロ及びインビボで特異的に及び選択的に反応する能力を有するタンパク質である。
その基本的構造においては、抗体は、次の2種の異なったペプチド鎖から構成される:L鎖(約25kDa)及びH鎖(約50〜70kDa)。個々の抗体は次の合計4種のポリペプチド鎖から成る:2種のL鎖及び2種のH鎖。いずれか1つの抗体においては、前記2種のH鎖及び2種のL鎖は同一であり、そして2種のH鎖はジスルフィト結合によりお互いに連続され、そして個々のH鎖はジスルフィド結合によりL鎖に連結され、これが抗体にその特徴的な“Y”形状を付与する。一般的用語“免疫グロブリン”は、すべてのそのようなタンパク質のために使用される。
5種の異なった種類のH鎖、すなわちμ、δ、γ、α及びε鎖が認識されており、それらはまた、抗体の種類、すなわちそれぞれ免疫グロブリンM(IgM)、免疫グロブリンD(IgD)、免疫グロブリンG(IgG)、免疫グロブリンA(IgA)及び免疫グロブリンE(IgE)を定義する。さらに、それらの5種の主要種類内にまたサブクラスが存在し、例えばヒトにおいては、次の4種の異なったサブクラスのγ型が認識されている:IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を生成するγ1、γ2、γ3及びγ4。L鎖に関しては、次の2種の異なった型の鎖が認識されている:λ及びκ鎖。
H鎖及びL鎖の両者は、明白な構造ドメインに分割される。μ鎖は、N末端から可変領域(VH)、第1、第2、第3及び第4不変領域(CH1, 2, 3, 4)を含んで成り、δ鎖は、N−末端から可変領域(VH)、第1不変領域(CH1)ヒンジ領域、第2及び第3不変領域(CH2, 3)を含んで成り、γH鎖は、N−末端から可変領域(VH)、第1不変領域(CH1),ヒンジ領域、第2及び第3不変領域(CH2, 3)を含んで成り、α鎖はN−末端から可変領域(VH)、ヒンジ領域、第2及び3不変領域(CH2, 3)を含んで成り、そしてε鎖は、N−末端から可変領域(VH)、第1、第2、第3及び第4不変領域(CH1, 2, 3, 4)を含んで成る。
L鎖は、可変領域(VL)及び不変領域(CL)を含んで成る。異なった種類のH鎖は、主に不変領域の数、ヒンジ領域の存在、及び解糖の型及び/又は量において異なる。しかしながら、すべての異なった種類のH鎖は、抗原に結合し/抗原を認識できる領域である可変領域を含んで成る。
一般的に、抗体は次の2種のグループに分割される:ポリクローナル及びモノクローナル抗体。ポリクローナル抗体は、同じ抗原に結合する異なった(H及び/又はL鎖の種類及び/又はサブクラスに関して、及び/又は抗原決定基結合配列に関して)抗体である。モノクローナル抗体は、同一の(H及び/又はL鎖の種類及び/又はサブクラスに関して、及び/又は抗原決定基結合配列に関して)抗体である。生理学的に、モノクローナル抗体は、Bリンパ球又は形質細胞の単一クローンにより合成される。生成される抗体分子の同一のコピーは、わずか1種類のH鎖及び1つの型のL鎖を含む。
均質集団の抗体を得るために、モノクローナル抗体の生成方法が開発されている。例えば、Kohler and Millsteinは、抗体−生成Bリンパ球と、抗体を分泌しない変異体骨髄腫細胞とを融合することにより、Bリンパ球ハイブリドーマを、1970年代中期に開発した。他方では、抗体(Fabフラグメント又は単一鎖としての)は、表示システム、例えばファージ表示を用いることにより生成され、そして改良され得る(Rodi, D. など, 2002. Quantitative assessment of peptide sequence diversity in M13 combinatorial peptide phage display libraries. J Mol Biol 322,1039-1052)。
これまで主に、プロテアーゼ消化により生成されるが、しかし今日、組換えDNA技法により生成され得る異なった切断された形の抗体が存在する。例えば、プロテアーゼパパインは、ヒンジ領域におけるジスルフィド結合のN−末端側でIgG分子を切断し、次の3種のフラグメントを生成する:ジスルフィド結合によりL鎖に結合されるH鎖の可変及び第1不変領域からそれぞれ成る2種のFabフラグメント(抗体のアーム)、及びヒンジ領域でジスルフィド結合によりお互いに結合されるH鎖の第2及び第3不変領域から成るFcフラグメント。
もう1つのプロテアーゼペプシンは、ヒンジ領域におけるジスルフィド結合のC−末端側でIgG分子を切断し、F(ab’)2フラグメント及びFcフラグメントの多くの小断片を生成する。F(ab’)2フラグメントは、ヒンジ領域でジスルフィド結合により一緒に結合される1つの分子からの2種のFabフラグメントから成る。
もう1つの形の抗体は、1つのL鎖及び1つのH鎖を含んで成る抗体である、いわゆる一本鎖抗体である。
抗体分子の類似するフラグメント及び他のフラグメントは、組換えDNA技法により生成され得る。抗体についてのさらなる情報は、例えば"ImmunoBiology"by Janeway CA and Travers P, Current Biology Ltd./Garland Publishing Inc., 1994 or "Cellular and Molecular Immunology", Abbas AK, Lichtman AH, Pober JS, W. B. Saunders Publishing, 2003に見出され得る。
核酸構造体:
本発明の抗体は、ヘテロカリオン菌類により、又は抗体のそれぞれL鎖及びH鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第1及び第2核酸構造体を含んで成る菌類宿主細胞により組換え的に発現され、ここで前記核酸構造体の少なくとも1つはさらに、1つのポリペプチド、又は菌類により通常分泌されるその機能的部分をコードする第2核酸配列を含んで成り、そして/又は前記核酸構造体の少なくとも1つはさらに、前記第1核酸配列に対して異種であるシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成る。
本発明の特定の態様においては、第1核酸構造体は、L鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る。もう1つの特定の態様においては、第1核酸構造体は、L鎖をコードする第1核酸配列、及び1つのポリペプチド、又は菌類により通常分泌されるその機能的部分をコードする第2核酸配列を含んで成ることができる。もう1つの特定の態様においては、第1核酸構造体は、L鎖をコードする第1核酸配列、及び前記第1核酸配列に対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成ることができる。
もう1つの特定の態様においては、第1核酸構造体は、L鎖をコードする核酸配列、及び1つのポリペプチド又は菌類により通常分泌されるその機能的部分をコードする第2核酸配列、及び前記第1核酸配列に対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成ることができる。特に、第1核酸構造体はさらに、誘発性プロモーターを含んで成り、すなわち第1及び/又は第2核酸配列の発現は誘発性プロモーターの制御下にある。適切なプロモーターの例は、下記に示される。特に、プロモーターは、アスペルギラス・ニガー中性αアミラーゼ(I又はII)をコードする遺伝子から得られる。
本発明の特定の態様においては、第2核酸構造体は、H鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る。もう1つの特定の態様においては、第2核酸構造体は、H鎖をコードする第1核酸配列、及び1つのポリペプチド、又は菌類により通常分泌されるその機能的部分をコードする第2核酸配列を含んで成ることができる。もう1つの特定の態様においては、第2核酸構造体は、H鎖をコードする第1核酸配列、及び前記第1核酸配列に対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成ることができる。
もう1つの特定の態様においては、第2核酸構造体は、H鎖をコードする核酸配列、及び1つのポリペプチド又は菌類により通常分泌されるその機能的部分をコードする第2核酸配列、及び前記第1核酸配列に対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成ることができる。特に、第2核酸構造体はさらに、誘発性プロモーターを含んで成り、すなわち第1及び/又は第2核酸配列の発現は誘発性プロモーターの制御下にある。適切なプロモーターの例は、下記に示される。特に、プロモーターは、アスペルギラス・ニガー中性αアミラーゼ(I又はII)をコードする遺伝子から得られる。好ましい第1、第2及び第3核酸配列の例は、下記に記載されており、そしてそれらのいずれかの組み合わせが予測される。
本発明はまた、L鎖をコードする第1核酸配列、及び前記第1核酸配列に対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成る核酸構造体にも関する。特定の態様においては、前記シグナルペプチドは、アスペルギアラス・ニガーからのα−アミラーゼからのシグナルペプチド(TAKAシグナルペプチド)、すなわち配列番号26で示されるシグナルペプチドであり得るか、又はそれは、カンジダ・アンタルクチカのリパーゼB遺伝子のシグナルペプチド、すなわち配列番号27で示されるシグナルペプチド、又はサッカロミセス・セレビシアエからの接合因子α−1遺伝子からのシグナルペプチド、すなわち配列番号53で示されるシグナルペプチドであり得る。
特に、核酸構造体が配列番号27のシグナルペプチドを含む場合、それはさらに、C. アンタルクチカからのリバーゼB遺伝子(配列番号28)からのプロ配列を含んで成ることができる。特定の態様においては、核酸構造体はさらに、分泌されるポリペプチドをコードする第2核酸配列、又は菌類により通常発現されるその機能的部分、例えばセルロース結合ドメイン(CBD)を含んで成り、特にそれは、配列番号50で示されるCBD、又は配列番号50のCBD−配列に対して少なくとも60%、例えば70%又は80%の相同性を有するCBDであり得る。
本発明はまた、H鎖をコードする第1核酸配列、及び前記第1核酸配列に対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成る核酸構造体にも関する。特定の態様においては、前記シグナルペプチドは、アスペルギアラス・ニガーからのα−アミラーゼからのシグナルペプチド(TAKAシグナルペプチド)、すなわち配列番号26で示されるシグナルペプチドであり得るか、又はそれは、カンジダ・アンタルクチカのリパーゼB遺伝子のシグナルペプチド、すなわち配列番号27で示されるシグナルペプチド、又はサッカロミセス・セレビシアエからの接合因子α−1遺伝子からのシグナルペプチド、すなわち配列番号53で示されるシグナルペプチドであり得る。
特に、核酸構造体が配列番号27のシグナルペプチドを含む場合、それはさらに、C. アンタルクチカからのリバーゼB遺伝子(配列番号28)からのプロ配列を含んで成ることができる。特定の態様においては、核酸構造体はさらに、分泌されるポリペプチドをコードする第2核酸配列、又は菌類により通常発現されるその機能的部分、例えばセルロース結合ドメイン(CBD)を含んで成り、特にそれは、配列番号50で示されるCBD、又は配列番号50のCBD−配列に対して少なくとも60%、例えば70%又は80%の相同性を有するCBDであり得る。
本発明はまた、L鎖をコードする第1核酸配列、及びセルラーゼ結合ドメインをコードする第2核酸配列を含んで成る核酸構造体にも関し、特にそれは、配列番号50で示されるCBD、又は配列番号50のCBD−配列に対して少なくとも60%、例えば70%又は80%相同性を有するCBDであり得る。
本発明はまた、H鎖をコードする第1核酸配列、及びセルラーゼ結合ドメインをコードする第2核酸配列を含んで成る核酸構造体にも関し、特にそれは、配列番号50で示されるCBD、又は配列番号50のCBD−配列に対して少なくとも60%、例えば70%又は80%相同性を有するCBDであり得る。
次において、用語“核酸構造体”とは、第1及び第2核酸構造体の両者を包含することを意図する。
核酸配列に関して、用語“第1”、“第2”及び“第3”とは、前記配列の順序を制限するものではない。特に、核酸構造体が第1及び第3核酸配列を含む場合、5’末端からの配列の順序は、5’−第3核酸配列、第1核酸配列であり得る。核酸構造体が第1及び第2核酸配列を含む場合、5’末端からの配列の順序は5’−第2核酸配列、第1核酸配列であるか、又はそれは、5’−第1核酸配列、第2核酸配列であり得、すなわち第2核酸配列は第1核酸配列の上流に位置することができる。核酸構造体が第1、第2及び第3核酸配列を含む場合、5’末端からの配列の順序は特に、5’−第3核酸配列、第2核酸配列、第1核酸配列であり得るか、又はそれは5’−第3核酸配列、第1核酸配列、第2核酸配列であり得る。
核酸構造体はさらに、第1核酸配列によりコードされるL又はH鎖の発現、及び/又は第2核酸配列によりコードされる菌類により通常分泌されるポリペプチド又はその機能的部分の発現のために適切である他の核酸配列を含んで成ることができる。特に、核酸構造体はさらに、第1及び/又は第2核酸配列の転写、又は前記転写体の翻訳又は安定性、又は他の続く工程、例えば第1又は第2核酸配列によりコードされるポリペプチドの分泌又は活性化のために必要とされるか、又はそれらのために適切な核酸配列を含んで成ることができる。
そのようなさらなる核酸配列の例は、次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:プロモーター、リーダー、転写開始部位、転写終結部位、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、又は核酸構造体が第3核酸配列を含まない場合、シグナル配列、すなわち第1核酸配列に対して相同であるか又は異種であり得る、シグナルペプチドをコードする核酸配列。それらのさらなる核酸配列は特に、第1及び/又は第2核酸配列に“作用可能に連結される”べきであり、ここで用語“作用可能に連結される”とは、前記さらなる核酸配列が配置され、その結果、それらがそれらの意図される目的のために協力して機能し、例えば転写がプロモーターにおいて開始し、そしてポリペプチドをコードする第1及び/又は第2核酸配列を通して進行することを示す。一般的に、前記さらなる核酸配列は特に最少、プロモーター、転写及び翻訳停止シグナルを包含することができる。
プロモーター
プロモーターは、選択のヘテロカリオン菌類又は菌類宿主細胞において転写活性を示すいずれかのヌクレオチド配列であり、そして前記へテロカリオン又は宿主細胞に対して相同であるか、又は異種であるタンパク質をコードする遺伝子から誘導され得る。
特定の態様においては、プロモーターはいわゆる、誘発性プロモーター、すなわちその機能が刺激の存在又は不在、例えば外部化合物の存在又は不在により決定されるプロモーターであり得る。誘発性プロモーターの例は、当業者に良く知られている。
ヘテロカリオン糸状菌又は糸状菌宿主細胞への使用のための適切なプロモーターの例は、次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、リゾムコル・ミエヘイ アスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギラス・ニガー中性α−アミラーゼ(I又はII)、アスペルギラス・ニガー酸安定性α−アミラーゼ、アスペルギラス・ニガー又はアスペルギラス・アワモリグルコアミラーゼ(glaA)、リゾムコル・ミエヘイリパーゼ、アスペルギラス・オリザエ アルカリプロテアーゼ、アスペルギラス・オリザエトリオースリン酸イソメラーゼ、アスペルギラス・ニジュランスアセトアミダーゼ、フサリウム・オキシスポラムトリプシン−様プロテアーゼ(引用により本明細書に組み込まれるアメリカ特許第4,288,627号に記載されるような)、及びそれらのハイブリッドをコードする遺伝子から得られるプロモーター。
特に、有用なプロモーターは次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:TAKAアミラーゼ、NA2−tpi(アスペルギラス・ニガー中性α−アミラーゼ及びアスペルギラス・オリザエトリオースホスフェートイソメラーゼをコードする遺伝子からのプロモーターのハイブリッド)、及びglaAプロモーター。さらなる適切なプロモーターは次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:ADH3プロモーター(McKnight など., The EMBO J. 4 (1985), 2093-2099)又はtpiAプロモーター。
酵母へテロカリオン又は酵母宿主細胞への使用のための適切なプロモーターの例は次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:酵母解糖遺伝子(Hitzeman など., J. Biol. Chem. 255 (1980), 12073-12080; Alber and Kawasaki, J. Mol. Appl. Gen. 1 (1982), 419-434)又はアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(Youngなど., in Genetic Engineering of Microorganisms for Chemicals (Hollaender など, eds. ), Plenum Press, New York, 1982)からのプロモーター、又はTP11(アメリカ特許第4,599,311号)又はADH2−4c(Russell など., Nature 304 (1983), 652-654)プロモーター。
酵母への使用のためのさらなる有用なプロモーターは、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)エノラーゼ(ENO−1)、サッカロミセス・セレビシアエガラクトキナーゼ(GAL1)、サッカロミセス・セレビシアエアルコールデヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(ADH2/GAP)、及びサッカロミセス・セレビシアエ3−ホスホグリセレートキナーゼ遺伝子から得られる。
酵母への使用のための他の有用なプロモーターは、ピチア・バストリスアルコールオキシダーゼ(AOX1)遺伝子、ピチア・パストリス繰りセルアルデヒド3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAP)遺伝子、及びピチア・パストリスグルタチオネン−依存性ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(FLD1)遺伝子から得られる(Cereghinoなど., FEMS Microbiology Reviews 24 (2000), 45-46)。
転写終結部位
転写ターミネーター配列は、転写を終結するために細胞により認識される配列である。ターミネーター配列は、発現をされるべきポリペプチドをコードする核酸配列、本発明の場合は、第1及び/又は第2核酸配列の下流に作用可能に連結される。
糸状菌(ヘテロカリオン及び/又は宿主細胞)への使用のための適切な転写終結部位の例は、次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:アスペルギラス・ニガー中性α−アミラーゼ、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼ、アスペルギラス・ニジュランスアントラニル酸シンターゼ、アスペルギラス・ニガーα−グルコシダーゼ及びフサリウム・オキシスポラムトリプシン−様プロテアーゼをコードする遺伝子のそれら。
酵母(ヘテロカリオン及び/又は宿主細胞)への使用のための適切な転写終結部位の例は、次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:酵母解糖遺伝子(Hitzeman など., J. Biol. Chem. 255 (1980), 12073-12080; Alber and Kawasaki, J. Mol. Appl. Gen. 1 (1982), 419-434)又はアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(Young など., in Genetic En gineering of Microorganisms for Chemicals (Hollaender など, eds. ), Plenum Press, New York, 1982)、又はTP11(アメリカ特許第4,599,311号)又はADH2−4c(Russell など., Nature 304 (1983), 652-654)遺伝子から得られるそれら。
さらなる有用な転写終結部位は、サッカロミセス・セレビシアエエノラーゼ(ENO−1)、サッカロミセス・セレビシアエガラクトキナーゼ(GAL1)、サッカロミセス・セレビシアエアルコールデヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(ADH2/GAP)、及びサッカロミセス・セレビシアエ3−ホスホグリセレートキナーゼ遺伝子から得られるから得られたそれらを包含する。
さらなる有用な転写終結部位は、ピチア・バストリスアルコールオキシダーゼ(AOX1)遺伝子、ピチア・パストリス繰りセルアルデヒド3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAP)遺伝子、及びピチア・パストリスグルタチオネン−依存性ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(FLD1)遺伝子から得られる(Cereghinoなど., FEMS Microbiology Reviews 24 (2000), 45-46)から得られるそれらを包含するが、但しそれらだけには限定されない。
リーダー配列
リーダー配列は、細胞による翻訳のために重要である、mRNAの非翻訳領域である。リーダー配列は、発現をされるべきポリペプチドをコードする核酸配列、本発明の場合は、第1及び/又は第2核酸配列の下流に作用可能に連結される。
特に糸状菌(ヘテロカリオン及び/又は宿主細胞)への使用のための適切なリーダー配列の例は、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ及びアスペルギラス・オリザエトリオースホスフェートイソメラーゼ(TPI)及びそれらの組合せをコードする遺伝子のそれらを包含するが、但しそれらだけには限定されない。
酵母(ヘテロカリオン及び/又は宿主細胞)への使用のための適切なリーダー配列の例は、次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:酵母解糖遺伝子(Hitzeman など., J. Biol. Chem. 255 (1980), 12073-12080; Alber and Kawasaki, J. Mol. Appl. Gen. 1 (1982), 419-434)又はアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(Young など., in Genetic En gineering of Microorganisms for Chemicals (Hollaender など, eds. ), Plenum Press, New York, 1982)、又はTP11(アメリカ特許第4,599,311号)又はADH2−4c(Russell など., Nature 304 (1983), 652-654)遺伝子から得られるそれら。
さらなる有用なリーダー配列は、サッカロミセス・セレビシアエエノラーゼ(ENO−1)、サッカロミセス・セレビシアエガラクトキナーゼ(GAL1)、サッカロミセス・セレビシアエアルコールデヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(ADH2/GAP)、及びサッカロミセス・セレビシアエ3−ホスホグリセレートキナーゼ遺伝子から得られるから得られたそれらを包含する。
さらなる有用なリーダー配列は、ピチア・バストリスアルコールオキシダーゼ(AOX1)遺伝子、ピチア・パストリス繰りセルアルデヒド3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAP)遺伝子、及びピチア・パストリスグルタチオネン−依存性ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(FLD1)遺伝子から得られる(Cereghinoなど., FEMS Microbiology Reviews 24 (2000), 45-46)から得られるそれらを包含するが、但しそれらだけには限定されない。
ポリアデニル化配列
ポリアデニル化配列は、転写される場合、ポリアデノシン残基を転写されたmRNAに付加するためにシグナルとして細胞により認識される配列である。ポリアデニル化配列は、発現をされるべきポリペプチドをコードする核酸配列、本発明の場合は、第1及び/又は第2核酸配列の下流に作用可能に連結される。
特に糸状菌(ヘテロカリオン及び/又は宿主細胞)への使用のための適切なポリアデニル化配列の例は、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼ、アスペルギラス・ニジュランスアントラニル酸シンターゼ、及びアスペルギラス・ニガーα−グルコシダーゼをコードする遺伝子のそれらを包含するが、但しそれらだけには限定されない。
酵母(ヘテロカリオン及び/又は宿主細胞)への使用のための適切なポリアデニル化配列の例は、次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:酵母解糖遺伝子(Hitzeman など., J. Biol. Chem. 255 (1980), 12073-12080; Alber and Kawasaki, J. Mol. Appl. Gen. 1 (1982), 419-434)又はアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(Young など., in Genetic En gineering of Microorganisms for Chemicals (Hollaender など, eds. ), Plenum Press, New York, 1982)、又はTP11(アメリカ特許第4,599,311号)又はADH2−4c(Russell など., Nature 304 (1983), 652-654)遺伝子から得られるそれら。
さらなる有用なポリアデニル化配列は、サッカロミセス・セレビシアエエノラーゼ(ENO−1)、サッカロミセス・セレビシアエガラクトキナーゼ(GAL1)、サッカロミセス・セレビシアエアルコールデヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(ADH2/GAP)、及びサッカロミセス・セレビシアエ3−ホスホグリセレートキナーゼ遺伝子から得られるから得られたそれらを包含する。
さらなる有用なポリアデニル化配列は、ピチア・バストリスアルコールオキシダーゼ(AOX1)遺伝子、ピチア・パストリス繰りセルアルデヒド3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAP)遺伝子、及びピチア・パストリスグルタチオネン−依存性ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(FLD1)遺伝子から得られる(Cereghinoなど., FEMS Microbiology Reviews 24 (2000), 45-46)から得られるそれらを包含するが、但しそれらだけには限定されない。
プロペプチド配列
プロ−ペプチド配列(プロ−ペプチドコード配列)は、1つのポリペプチド、例えば本発明においては、第1及び/又は第2核酸配列によりコードされるポリペプチドのアミノ末端に位置するアミノ酸配列をコードする核酸配列である。得られるポリペプチドは、プロ−酵素又はプロ−ポリペプチド(又は多くの場合、チモーゲン)として知られている。プロ−ポリペプチドはしばしば不活性であり、そしてプロ−ポリペプチドからのプロ−ペプチドの触媒又は自触媒性分解により成熟活性ポリペプチドに転換され得る。
適切なプロ−ペプチド配列の例は、バチルス・サブチリスアルカリプロテアーゼ(aprE)、バチルス・サブチリス中性プロテアーゼ(nprT)、サッカロミセス・セレビシアエ対合因子α−1(配列番号54)、カンジダ・アンタルクチカリパーゼB(配列番号28)、サーモミセス・ラヌギノサスリパーゼ又はミセロプソラ・サーモフィラムラッカーセ(WO95/33836号)をコードする遺伝子のそれらを包含するが、但しそれらだけには限定されない。特に、核酸構造体がC. アンタルクチカからのリパーゼBからのシグナルペプチドをコードする第3核酸配列(配列番号27)を含む場合、前記構造体はさらに、同じ遺伝子からのプロ−配列(配列番号28)を含んで成る。
第1及び/又は第2核酸構造体はさらに、選択マーカー、例えばその生成物が宿主細胞における欠損を補充する遺伝子、又は例えば抗生物質アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、エリトロマイシン、テトラサイクリン、スペクチノマイシン、ネオマイシン、ヒグロマイシン、メトトレキセートに対する耐性、又は重金属、ウィルス又は除草剤に対する耐性をコードする遺伝子、又は原栄養性又は栄養要求性を提供する遺伝子を含んで成る。
糸状菌(ヘテロカリオン及び/又は宿主細胞)への使用のための適切な選択マーカーは、amdS (アセトアミダーゼ)、argB (オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar (ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hygB (ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD (硝酸レダクターゼ)、pyrG (オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ)、sC (硫酸アデニルトランスフェラーゼ) 及びtrpC (アントラニル酸シンターゼ)、及びグルフォシネート耐性マーカー並びに他の種からの同等物を包含する群から選択され得るが、但しそれらだけには限定されない。
特に、アスペルギラス細胞(ヘテロカリオン及び/又は宿主細胞)への使用のためには、アスペルギラス・ニジュランス又はアスペルギラス・オリザエのamd S及びpyrGマーカー、及びストレプトミセス・ヒグロスコピカスのbarマーカーである。さらに、選択はWO91/17243号に記載のようにして、同時形質転換により達成され得、ここで選択マーカーは別のベクター上に存在する。
酵母(ヘテロカリオン及び/又は宿主細胞)への使用のために適切な選択マーカーの例は、ADE2, HIS3, LEU2, LYS2, MET3, TRP1及びURA3を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
下記のように、ヘテロカリオン菌類は、特定の態様においては、少なくとも2種の異なった菌株の融合により得られ、ここで個々の株のゲノムは、存在するために他の株のゲノムの存在に株を依存性にする特徴を包含する。従って、ヘテロカリオン菌類の第1及び/又は第2核酸構造体は、上記のような選択マーカーを含んで成る。前記特徴はまた、上記のように、選択マーカーを含んで成るもう1つの核酸構造体による1つの前記株又は両株の同時形質転換により得られる。
シグナルペプチド(リーダー配列、プレプロ配列又はプレ配列としても知られているシグナル配列によりコードされる)の目的は、それが発現される細胞の分泌路中へのポリペプチドの発現を指図することである。シグナル配列は、第1及び/又は第2核酸配列に正しく読み取り枠を整合して結合されるべきである。シグナル配列は通常、ポリペプチドをコードする核酸配列の5’側に位置する。
核酸構造体の一部である異なった核酸配列の核酸構造体の生成のための技法、例えば連結、制限酵素による分解、増幅、等は、当業者に良く知られており、そして"Molecular cloning : A laboratory manual", Sambrook など. (1989), Cold Spring Harbor lab., Cold Spring Harbor, NY; Ausubel, F. M. など. (eds. );"Current protocols in Molecular Biology", John Wiley and Sons, (1995); Harwood, C. R. , and Cutting, S. M. (eds.) ;"Molecular Biological Methods for Bacillus", John Wiley and Sons, (1990);"DNA Cloning : A Practical Approach, Volumes I and 11", D. N. Glover ed. (1985) ;"Oligonucleotide Synthesis", M. J. Gait ed. (1984) ;"Nucleic Acid Hybridization", B. D. Hames & S. J. Higgins eds (1985);"Transcription And Translation", B. D. Hames & S. J. Higgins, eds. (1984) ;"Animal Cell Culture", R. I. Freshney, ed. (1986) ;"Immobilized Cells And Enzymes", IRL Press, (1986);"A Practical Guide To Molecular Cloning", B. Perbal, (1984)に見出され得る。
本発明のヘテロカリオン菌類及び/又は菌宿主細胞は、第1核酸配列及びいくつかの態様に関しては、第2核酸配列の発現を増幅するために、本発明の第1及び/又は第2核酸構造体の1以上のコピーを含んで成ることができる。特に、第1及び/又は第2核酸構造体は、ヘテロカリオン菌類又は菌類宿主細胞ゲノムに組込まれ得る。特に、第1及び/又は第2核酸構造体は、ヘテロカリオン菌類又は菌類宿主細胞ゲノムに組込まれ得る。当業界において良く知られている方法を用いてゲノム中への組込み方法は、当業者に良く知られている。
本発明の核酸構造体はまた、L及び/又はH鎖の発現、及び/又は菌類により通常発現される、分泌されたポリペプチド又はその機能的部分において好都合である1又は複数の因子、例えば活性化因子(例えば、トランス−作用因子)、カペロン又はプロセッシングプロテアーゼをコードする1又は複数の核酸配列を含んで成ることができる。ヘテロカリオン菌類又は選択の菌類宿主細胞において機能的であるいずれかの因子が本発明において使用され得る。1又は複数のそれらの因子をコードする核酸配列は、第1及び/又は第2核酸配列とタンデムに存在することができる。
第1核酸配列:
第1核酸配列は、抗体のL又はH鎖のいずれかをコードする。本発明の特定のヘテロカリオン菌類又は菌類宿主細胞内に包含される第1核酸配列は、L鎖、及び同じ抗原に結合し、そして/又は同じ抗原を認識することができるH鎖をコードすべきである。
L鎖は、κ又はλ鎖のいずれかであり得る。特に、L鎖はκ鎖であり得る。H鎖は、μ、δ、γ、α又はε鎖であり得、特にそれはγ鎖であり得る。特に、L鎖はκであり得、そしてH鎖はγ鎖であり得る。
第1核酸配列は、いずれかの脊椎動物に由来し、特にそれはヒト細胞由来であり得る。
L鎖をコードする第1核酸配列及びH鎖をコードする第1核酸配列は、異なった生物又は細胞に由来するか、又はそれらは同じ生物又は細胞に由来することができる。特に、L鎖をコードする第1核酸配列及びH鎖をコードする第1核酸配列はヒト細胞由来であり得る。
特定の態様においては、第1核酸配列は、病理学的疾患に関連するか、又はそれに包含される抗原に結合するL及びH鎖をコードすることができる。
第2核酸配列:
本発明の第2核酸配列は、1つのポリペプチド、又は菌類により通常分泌されるその機能的部分をコードする。多くのタンパク質の立体構造はしばしば、異なったドメイン、すなわちタンパク質の空間領域に分割され得る。異なったドメインは典型的には、異なった機能を有し、例えば酵素は、酵素反応自体に包含されるドメイン及び他のタンパク質と相互作用することができる他のドメインを有することができる。しばしば、ドメインを組換え体のアミノ酸配列を発現することが可能であり、その結果、ドメインの機能性は維持されるか又はわずかに変更される。
従って、本発明においては、用語“その機能的部分”とは、菌類により通常分泌されるポリペプチドの一部である場合と同じ機能を有する前記ポリペプチドのアミノ酸配列の一部として理解されるべきである。本明細書において、用語“同じ”とは、機能が維持され、例えばそれがポリペプチドの一部である場合と同じ化合物に結合するが、しかしその結合運動学は変更され得ることを意味する。例えば、機能的部分がセルロースに結合できるドメインである場合、ポリペプチドの残りを伴わないで単独でのドメインの発現は、セルロースに結合できるが、しかし前記結合に関連する運動学が、それがポリペプチドの一部である場合のドメインに比較して、変更されているドメインをもたらすことができる。
特に、本発明の第2核酸配列は、セルロース結合ドメインをコードすることができる。特に、それは、メリピラス・ギガンテウス(Meripilus giganteus)由来のエンドグルカナーゼIIからのドメイン、すなわち配列番号50で示される配列であり、又はそれは、配列番号50で示される配列に対して少なくとも60%、例えば70%又は80%の相同性を有するCBDであり得る。
第3核酸配列:
本発明の第3核酸配列は、本発明の第1核酸配列に対して異種であるシグナルペプチドをコードする。シグナルペプチドは、分泌及び膜タンパク質の新しく合成された形で、しばしばN−末端で存在し、そして真核細胞における小胞体(ER)中へのタンパク質の指図に関連するアミノ酸配列として、本明細書において理解されるべきである。シグナル配列は、シグナルペプチドをコードする核酸配列として理解されるべきである。タンパク質のER中へのトランスロケーションの後、シグナルペプチドは通常、タンパク質から切除される。従って、本発明においては、シグナルペプチドは、タンパク質又はポリペプチドのER中への指図の前記機能を有するアミノ酸配列として理解されるべきである。
特定の態様においては、第3核酸配列は、糸状菌、例えばアスペルギラス、例えばA. オリザエ、A. ニガー、A. アワモリ、A. ニジュランス、A. ジャポリカス、A. ホエニシス又はA. フォエチダス、フサリウム、例えばF. ウエネナタム、F. オキシスポリウム又はF. グラミネアラム、ヒューミコラ、例えばH. インスレンス又はH. ラヌギノサ、ペニシリウム、カンジダ、例えばC. アンタルクチカ、メリピラス、例えばM. ギガンテウス、又はトリコダーマ、例えばT. レセイ又はT. ハルズラナムから誘導され得る。
特に、第3核酸配列は、配列番号26で示される配列、すなわちアスペルギラス・オリザエからのα−アミラーゼに由来するTAKAシグナルペプチドであり得る。
もう1つの特定の態様においては、第3核酸配列は、配列番号27で示される配列、すなわちカンジダ・アンタルクチカからのリパーゼB由来のシグナルペプチドであり得る。
第3核酸配列のもう1つの例は、サッカロミセス・セレビシアエからの対合因子α−1のシグナルペプチド、すなわち配列番号53で示されるシグナルペプチドである。
ヘテロカリオン菌類:
本発明の1つの態様においては、モノクローナル抗体は、ヘテロカリオン菌類において発現される。本発明においては、“ヘテロカリオン”とは、少なくとも2種の遺伝学的に異なる核を有する細胞として理解されるべきである。ヘテロカリオンは、2又はそれ以上の遺伝学的に異なる細胞の融合に由来し、ここで前記細胞の核は融合せず、2又はそれ以上の遺伝学的に異なる核を包含する細胞をもたらす。
特に、ヘテロカリオン菌類は、ヘテロカリオン糸状菌であり得るか、又はそれは酵母へテロカリオンであり得る。ヘテロカリオン菌類は、2又はそれ以上の菌類間で自然において形成され得るか、又はそれは人工的に製造され得る。2又はそれ以上の遺伝学的に異なる菌類が融合する場合、個々の細胞の個々の核は通常の原形質に同時存在するようになる。ヘテロカリオンを選択する1つの方法は、生存のために他の細胞からの核の存在に個々の細胞を依存性にする特徴を有するゲノムを、それぞれ包含する2又はそれ以上の遺伝学的に異なる細胞を融合することである。例えば、個々の細胞型が生存のために特定の栄養に依存し、そして同時に前記栄養に無関係である、2種の遺伝学的に異なった細胞が融合する場合、他の細胞は、両栄養に依存し、次に両栄養の欠乏は、個々の細胞からの核がお互い補足できるように融合した細胞の選択をもたらすであろう。
本発明のヘテロカリオン糸状菌は、特に、すべてのヘテロカリオン適合性対立遺伝子(tol遺伝子が存在する場合、対合型対立遺伝子を除く)のためにホモ接合性である細胞からの核を含むことができる。次の少なくとも10個の染色体遺伝子座がヘテロカリオン不適合性のために同一であった。het-c, het-d, het-e, het-i, het-5, het-6, het-7, het-8, het-9 及び het- 10、及びたぶんより多くが存在する(例えば、Perkins など.,"Chromosomal Loci of Neurospora crassa", Microbiological Reviews (1982) 46: 462-570, at 478を参照のこと)。
ヘテロカリオン糸状菌の形成は特に、菌糸又はプロトプラスト融合により行われ得る。
特に、本発明のヘテロカリオン糸状菌は、糸状菌の2種の異なった株からの菌糸の融合により製造され、ここで前記1つの株の第1核は、ヘテロカリオンを形成するための融合のために提供される条件下で、生存のために他の菌類からの第2核の存在に第1の菌類を依存性にする(及び、逆もまた真である)特徴をもたらすゲノムを含む。従って、糸状菌の個々の株の核は、他の糸状菌からの核がまた存在しない場合、培養条件下で生存するために含まれる、菌類の障害をもたらす特徴を付与する。
糸状菌株をそれぞれ依存性にするために使用され得る特徴の例は、栄養必要性、毒性化合物に対する耐性及び極端な環境に対する耐性を包含するが、但しそれらだけには限定されない。例えば、特定の栄養の依存を必要とする第1株が、生存のために前記栄養を必要としない第2株と共に、前記栄養を欠失する培地上で培養される場合、第2株の核は、特定の栄養の不在下でさえ存在する2種の株の融合の能力を付与するであろう(この場合、第2株、及び第1及び第2株間の融合体が生存するであろう)。さらに、第2株が同様に、第1株により必要とされる栄養とは異なる特定の栄養の存在を必要とする場合、個々の株からの核を含んで成る融合体のみが、前記両栄養を欠いている培地において生存するであろう。
ヘテロカリオン糸状菌の形状方法は、アメリカ特許第5,643,745号、及び本発明の例に記載されている。
ヘテロカリオン糸状菌を形成するために融合され得る糸状菌の例は、糸状菌宿主細胞として下記に記載されるそれらを包含する。特に、異なった株のアスペルギラス、例えばA. オリザエ又はA. ニガー、フサリウム又はトリコダーマが、ヘテロカリオン糸状菌を形成するために使用され得る。原則として、2種以上の異なった糸状菌株、例えば3, 4, 5, 6, 7, 8, 9又は10の異なった株が、ヘテロカリオンを形成するために使用され得る。特に、本発明のヘテロカリオン糸状菌は、2種の異なった糸状菌株の融合により形成される。
融合のために提供される条件下で存在のために他の菌類からの核の存在に個々の菌株(ヘテロカリオン糸状菌を形成するために融合される)を、依存性にする特徴の例は、上記に記載される選択マーカーを包含する。特に、前記特徴は、菌類を独立栄養性にする特徴であり得る。ヘテロカリオン糸状菌を形成するために異なった菌類株の融合のために使用される培養培地は、菌類の特定の特徴を補充しないいずれかの培地であり得る。組換え菌類を選択するために一般的に使用されるそのような培地の例は、当業者に良く知られている。
しかしながら、異なった菌類の融合の場合、少なくとも2種の異なった特徴/マーカーが選択のために使用される。使用され得る特徴又はマーカーの例は、核酸構造体のために有用な選択マーカーとして上記に記載されるそれらを包含する。菌類を独立栄養性にすることができる遺伝子の例は、次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:pyrG, hemA, niaD, tpi, facC, gala, biA, lysB, sC, methG 及び phenA。従って、菌類が少なくとも1つのそれらの遺伝子に対して陰性である場合、前記遺伝子は選択マーカーとして使用され得る。
アスペルギラス・ニジュランスにおいては、cphA遺伝子によりコードされるシステイン−及びヒスチジン−Rich−Domain−Containg Protein(CHPA)と呼ばれるタンパク質は、A. ニジュランスにおいて複相の維持のための活性的役割を有することが示されている。本発明の1つの態様においては、cphA遺伝子又はその相同体は、機能的CHPAタンパク質が発現され得ないよう、第1又は第2核のいずれか、又は両核において修飾されて来た。前記修飾は、機能的突然変異の損失、例えばヌル突然変異、ナンセンス又はミスセンス突然変異であり得る。
もう1つの態様においては、ヘテロカリオン菌類は、酵母において、ヘテロカリオンの形成が、2種(又はそれ以上)の半数体細胞の接合の間、接合体(核融合)における欠損の結果として記載されている(Olson BL and Siliciano PG, 2003, Yeast, 20,893- 903)。融合されるべき1つの細胞におけるkar1遺伝子における突然変異が、接合の間、核融合を阻止するのに十分であるとして記載されている(Olson BL and Siliciano PG, 2003, Yeast, 20,893- 903)。従って、本発明の特定の態様においては、本発明の酵母へテロカリオンの形成に包含される細胞の少なくとも1つの細胞は、kar1遺伝子における突然変異、例えば機能的突然変異の損失、例えばヌル突然変異、ナンセンス又はミスセンス突然変異を包含し、それにより、前記細胞の核は、対合の間、もう1つの細胞からの核と融合することができない。酵母におけるkar1のクローニングは、Rose MD and Fink GR, Cell, 1987,48, 1047- 1060に記載されている。
本発明の核酸構造体は特に、ヘテロカリオン菌類への前記菌類の融合の前、個々の菌類中に導入され得る。従って、この方法によれば、ヘテロカリオン菌類は、第1核酸構造体を含んで成る第1核、及び第2核酸構造体を含んで成る第2核を少なくとも包含するであろう。さらに、上記のように、前記第1及び第2核は、両核に菌類を依存性にする特徴をそれぞれ含んで成る。例えば、第1及び/又は第2核は、次のものから成るが、但しそれらだけには限定されない群から選択された遺伝子の少なくとも1つに対して陰性であり得る:pyrG, hemA, niaD, tpi, facC, gala, biA, IysB, sC, methG 及び phenA。特に、第1核はpyrG陰性であるが、ところが第2核はhemA陰性であり、又は逆もまた真である。しかしながら、2種の核の特徴の他の組合せも予測される。
菌類の形質転換方法は良く知られており、そして下記のようにして、菌類宿主細胞に対して実施され得る。ヘテロカリオン菌類を培養するための条件は、それが発生する菌類を培養するための条件に類似する。しかしながら、上記のように、ヘテロカリオン菌類は、少なくとも2種の異なった特徴を選択する培地において培養される必要がある。菌類の培養方法は、当業者に良く知られており、そしてさらに下記に記載のようにして、特に行われ得る。
本発明はまた、本発明の核酸構造体を含んで成るヘテロカリオン菌類宿主細胞にも関する。
さらに、本発明はまた、抗体のL鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第1核酸構造体を含んで成る第1核、及び抗体のH鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第2核酸構造体を含んで成る第2核(ここで前記核酸構造体の少なくとも1つがさらに、菌類により通常分泌されるポリペプチド又はその機能的部分をコードする第2核酸配列を含んで成る)を含んで成るヘテロカリオン菌類宿主細胞にも関する。
さらに、本発明はまた、抗体のL鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第1核酸構造体を含んで成る第1核、及び抗体のH鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第2核酸構造体を含んで成る第2核(ここで前記核酸構造体の少なくとも1つがさらに、前記第1核酸配列に対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成る)を含んで成るヘテロカリオン菌類宿主細胞にも関する。第1核酸構造体、第2核酸構造体、第1核酸配列、第2核酸配列及び第3核酸配列は、上記の通りである。異なった組合せが予測され、それらのいくつかは下記に記載される。しかしながら、本発明はそれらの組合せに限定されない。
特に、第1核は、抗体のL鎖をコードする第1核酸配列及び1つのポリペプチド又は菌類により通常分泌されるその機能的部分をコードする第2核酸配列を含んで成る第1核酸構造体を含んで成り、そして第2核は、抗体のH鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第2核酸構造体を含んで成る。もう1つの態様においては、第1核は、抗体のL鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第1核酸構造体を含んで成り、そして第2核は、抗体のH鎖をコードする第1核酸配列及び1つのポリペプチド又は菌類により通用分泌されるその機能的部分をコードする第2核酸配列を含んで成る第2核酸構造体を含んで成る。
さらにもう1つの態様においては、第1核は、抗体のL鎖をコードする第1核酸配列及び1つのポリペプチド又は菌類により通常分泌されるその機能的部分をコードする第2核酸配列を含んで成る第1核酸構造体を含んで成り、そして第2核は、抗体のH鎖をコードする第1核酸配列及び1つのポリペプチド又は菌類により通常分泌されるその機能的部分をコードする第2核酸配列を含んで成る第2核酸構造体を含んで成る。特に、第2核酸配列は、セルロース結合ドメインをコードすることができる。特に、それは、メリピラス・ギガンテウス由来のエンドグルカナーゼIIからのCBD、すなわち配列番号50で示される配列であり得るか、又はそれは、配列番号50で示される配列に対して少なくとも60%、例えば70%又は80%の相同性を有するCBDであり得る。
もう1つの態様においては、第1核は、抗体のL鎖をコードする第1核酸配列及び前記第1核酸配列の対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成る第1核酸構造体を含んで成り、そして第2核は、抗体のH鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第2核酸構造体を含んで成る。もう1つの態様においては、第1核は、抗体のL鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第1核酸構造体を含んで成り、そして第2核は、抗体のH鎖をコードする第1核酸配列及び前記第1核酸配列の対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成る第2核酸構造体を含んで成る。
さらにもう1つの態様においては、第1核は、抗体のL鎖をコードする第1核酸配列及び前記第1核酸配列の対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成る第1核酸構造体を含んで成り、そして第2核は、抗体のH鎖をコードする第1核酸配列及び1つのポリペプチド又は菌類により通常分泌されるその機能的部分をコードする第2核酸配列を含んで成る第2核酸構造体を含んで成る。
さらにもう1つの態様においては、第1核は、抗体のL鎖をコードする第1核酸配列及び1つのポリペプチド又は菌類により通常分泌されるその機能的部分をコードする第2核酸配列を含んで成る第1核酸構造体を含んで成り、そして第2核は、抗体のH鎖をコードする第1核酸配列及び前記第1核酸配列の対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成る第2核酸構造体を含んで成る。
さらにもう1つの態様においては、第1核は、抗体のL鎖をコードする第1核酸配列及び前記第1核酸配列の対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成る第1核酸構造体を含んで成り、そして第2核は、抗体のH鎖をコードする第1核酸配列及び前記第1核酸配列の対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成る第2核酸構造体を含んで成る。特に、第3核酸配列は、配列番号26で示される配列、すなわちアスペルギラス・オリザエからのα−アミラーゼ由来のTAKAシグナルペプチド、又は配列番号27で示される配列、すなわちカンジダ・アンタルクチカからのリパーゼB由来のシグナルペプチド、又はサッカロミセス・セレビシアエからの対合因子α−1、すなわち配列番号53で示されるシグナルペプチドであり得る。
第2核酸配列は特に、セルロース結合ドメインをコードする。特に、それは、メリピラス・ギガンテウス由来のエンドグルカナーゼIIからのCBD、すなわち配列番号50で示される配列であり得るか、又はそれは、配列番号50で示される配列に対して少なくとも60%、例えば70%又は80%の相同性を有するCBDであり得る。
菌類:
本発明の第2核酸配列は、菌類に由来する。さらに、菌類は、宿主細胞として、及びヘテロカリオンを創造するために使用され、ここで後者はまた、本発明において宿主細胞としても使用される。
従って、次における“菌類”とは、第2核酸配列が誘導され得る菌類、本発明の菌類宿主細胞、及び本発明のヘテロカリオンを創造するために使用され得る菌類の例を包含する。“菌類”とは、本明細書において使用される場合、門アスコミコタ(Ascomycota)、バシジオミコタ(Basidiomycota)、キトリジオミコタ(Chytridiomycota)及びヅイゴミコタ(Zygomycota)(Hawksworth など., Ainsworth and Bisby’s Dictionary of the Fungi, 8th edition, 1995, CAB International, University Press, Cambridge, UKにより定義される)、及びオーミコタ(Oomycota)(Hawksworth など., Ainsworth and Bisby’s Dictionary of the Fungi, 8th edition, 1995, CAB International, University Press, Cambridge, UK 、171ページに引用される)、並びに栄養胞子菌(Hawksworh など., 1995, 前記)を包含する。
アスコミコタの代表的グループは、例えばニューロスポラ(Neurospora)、ユーペニシリウム(Eupenicillium)(=ペニシリウム)、エメチセラ(Emericella)(−アスペルギラス)、ユーロチウム(Eurotium)(=アスペルギラス)及び下記に列挙される真の酵母を包含する。バシジオミコタの例は、マッシュルーム、サビ菌及び黒穂菌を包含する。キトリジオミコタの代表的グループは、例えばアロミセス(Allomyces)、ブラストクラジエラ(Blastocladiella)、コエロモセトウス(Coelomocetous)、水性菌(水カビ)、例えばアキリア(Achlya)を包含する。栄養胞子菌類の例は、アスペルギラス、ペニシリウム、カンジダ及びアルテマリアを包含する。ズイゴミコタの代表的な例は、例えばリゾパス及びムコルを包含する。
さらなる態様においては、本発明の菌類は酵母細胞である。“酵母”とは、本明細書において使用される場合、子嚢胞子酵母(Endomycetals)、担子胞子酵母、及び不完全菌類(Blastomycetes)に属する酵母を包含する。子嚢胞子酵母は、科スペルモプソラセアエ(Spermophthoraceae)及びサッカロミセタセアエ(Saccharomycetaceae)に分けられる。後者は4種の亜科シゾサッカロミコイデアエ(Schizosaccharomycoideae)(例えば、属シゾサッカロミセス)、ナドソニオイデアエ(Nadsonioideae)、リオキコイデアエ(Lipomycoideae)及びサッカロミコイデアエ(Saccharomycoideae)(例えば、属ピチア、クルイベロミセス及びサッカロミセス)から成る。
担子胞子酵母は、属リューコスポリジム(Leucosporidim)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、スポリジオポラス(Sporidiobolus)、フィロバジジウム(Filobasidium)及びフィロバシジエラ(Filobasidiella)を包含する。不完全菌類に属する酵母は、2種の科スポロボロミセタセアエ(Sporobolomycetaceae)(例えば、属サロボロミセス及びブレラ)及びクリプトコカセアエ(Cryptococcaceae)(例えば、属カンジダ)に分けられる。酵母の分類は未来において変化し得るので、本発明のためには、酵母は、Biology and Activities of Yeast (Skinner, F.A., Passmore, S.M., and Davenport, R.R., eds. Soc. App. Bacteriol. Symposium Series No. 9, 1980) に記載のようにして定義されるであろう。
酵母の生物学及び酵母遺伝学の操作は当業界において良く知られている(例えば、Biochemistry and Genetics of Yeast, Bacil, M. , Horecker, B. J. , and Stopani, A. O. M. , editors, 2nd edition, 1987; The Yeasts, Rose, A. H. , and Harrison, J. S. , editors, 2nd edition, 1987;及びThe Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces, Strathern et al., editors, 1981を参照のこと)。
より特定の態様においては、酵母は、カンジダ(Candida)、クレベロミセス(Kluyveromyces)、サッカロミセス(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、ピチア(Pichia)又はヤロウィア(Yarrowia)の種の細胞であり得る。
最も特定の態様においては、酵母は、サッカロミセス・カルスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyses cerevisiae)、サッカロミセス・ジアスタチカス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロミセス・ドウグラシ(Saccharomyces douglasii)、サッカロミセス・クルイビリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロミセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensisi)、又はサッカロミセス・オビホルミス(Saccharomyces oviformis)細胞である。もう1つの態様においては、酵母は、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)細胞である。さらにもう1つの最も好ましい態様においては、酵母は、ヤロウィア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)細胞である。
もう1つの特定の態様においては、菌類は糸状菌である。糸状菌は一般的に、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン及び他の複合多糖類から構成される菌子体壁により特徴づけられる。成長増殖は、菌子拡張によってであり、そして炭素代謝は絶対好気性である。
糸状菌は、アスコミコタの次のグループの1つにより表される:ニューロスポラ(Neurospora)、ユーペニシリウム(Eupenicillium)(=ペニシリウム)、エメチセラ(Emericella)(−アスペルギラス)、ユーロチウム(Eurotium)(=アスペルギラス)。
特定の態様においては、糸状菌は、ユーミコタ及びオーミコタの糸状形の1つに属することができる(Hawksworth など., In, Ainsworth and Bisby's Dictionary of The Fungi, 8th edition, 1995, CAB International, University Press, Cambridge, UK.により定義されるような)。より特定の態様においては、糸状菌は、次の種の細胞であり得る:アクレモニウム(Acremonium)、例えばA. クリソゲナム(A. chrysogenum)、又はアスペルギラス(Aspergillus)、例えばA. アワモリ(A. awamori)、A. フェエチダス(A. foetidus)、A. ジャポニカス(A. japonicus)、A. アキュレアタス(A. aculeatus)、A. ニガー(A. niger)又はA. オリザエ(A. oryzae)、又はフサリウム(Fusarium)、例えばセクション変色(また、セクションフサリウムとしても知られている)のフサリウム、例えばF. バクトリジオイデス(F. bactridioides)、F. セレアリス(F. cereals)、F. クロークウェレンセ(F. crookwellense)、F. クイモラム(F. culmorum)、F. グラミネアルム(F. graminearum)(完全な状態において、ギベレラ・ゼアエと呼ばれ(これまで、スファエリアと呼ばれた)、別名ギベレラ・ロゼウム及びギベレラ・ロゼウムf. sp. セラリス)、F. グラミナム(F. graminum)、F. ヘテロスポラム(F. heterosporum)、F. ネグンジ(F. negundi)、F. レチキュラタム(F. reticulatum)、F. ロゼウム(F. roseum)、F. サムブシナム(F. sambucinum)、F. サクロクロウム(F. sarcochroum)、F. スルフレウム(F. sulphureum)、F. トリコテシオイデス(F. trichothecioides)又はF. ベネナタム(F. venenatum)、又はセクションエレガンスのフサリウム株、例えばF. オキシスポラム(F. oxysporum)、又はヒューミコラ(Humicola)、例えばH. インソレンス(H. insolens)又はH. ラヌギノサ(H. lanuginose)、又はムコル(Mucor)、例えばM. ミエヘイ(M. miehei)、又はマイセリオプソラ(Myceliophthora)、例えばM. サーモフィラム(M thermophilum)、又はネウロスポラ(Neurospora)、例えばN. クレサ(N. crassa)、又はペニシラム(Penicillium)、例えばP. プルプロゲナム(P. purpurogenum)、P. クリソゲナム(P. chrysogenum)又はP. フニキュロサム(P. funiculosum)(WO00/68401号)、又はチエラビア(Thielavia)、例えばT. テレストリス(T. terrestris)、又はトリポクラジウム(Tolypocladium)、及びトリコダーマ(Trichoderma)、例えばT. ハルジアナム(T. harzianum)、T. コニンギ(T. koningii)、T. ロンギブラキアタム(T.longibrachiatum)、T. レセイ(T. reesei)又はT. ビリデ(T. viride)、又はテレオモルフタ(teleomorph)又はその類似物。
本発明のもう1つの特定の態様においては、糸状菌は、プロテアーゼ欠失又はプロテアーゼのない株であり得る。これは、例えば欠失されている“alp”と呼ばれるアルカリプロテアーゼ遺伝子を有するプロテアーゼ欠失株アスペルギラス・オリザエJaL125であり得る。この株はWO97/35956号(Novozymes)、又はヨーロッパ特許第429,490号に記載されており、又はTPAPを有さない宿主細胞、特にA. ニガーの株がWO96/14404号に開示されている。さらに、また、WO01/68864号に記載されるような転写活性化因子(prtT)の低められた生成を有する糸状菌細胞、特にA. ニガー又はA. オリザエが特に、本発明に従って企画される。糸状菌はまた、毒素及び/又はマイコトキシンを有さず、例えばシクロピアゾン酸、コウジ酸、3−ニトロプロピオン酸及び/又はアフラトキシンを有さない。そのような株の例は、WO00/39322号(Novozyme A/Sからの)に開示される。
糸状菌におけるα−アミラーゼプロモーターの発現を調節することにおける活性を示す転写因子をコードするDNA配列を含んで成るDNA構造体を含む糸状菌(WO98/01470号に記載されるような)が本発明に従って企画される。適切な糸状菌のもう1つの例は、PA2003/00169号の例1に記載されるJaL355細胞である。
糸状菌は、菌類細胞は、プロトプラスト形質転換、プロトプラストの形質転換、及びそれ自体知られている態様での細胞壁の再生を包含する工程により形質転換され得る。アスペルギラス宿主細胞の形質転換のための適切な方法は、ヨーロッパ特許第238023号、ヨーロッパ特許第184438号及びYeltonなど., 1984, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 81; 1474-1874に記載される。フラリウム種を形質転換するための適切な方法は、Malardierなど., 1989, Gene78: 147-156, 及び同時継続出願08/269,449号により記載される。
菌類の培養:
前記菌類におけるタンパク質の発現のために適切である菌類を培養するための条件は、当業者に良く知られている;例えばSpohr, など. (1998), Journal of fermentation and bioengineering, 86, (1), pp. 49-56を参照のこと。
タンパク質の組換え発現に関しては、前記タンパク質をコードする核酸配列は特に、誘発プロモーターの制御下に存在することができる。特に、前記タンパク質の発現が誘発プロモーターの制御下にある場合、菌類の培養は、第1に、i)プロモーターが誘発されない条件(非誘発条件)下で、そして次に、ii)プロモーターが誘発される条件(誘発条件)下で菌類を培養する2段階で行われ得る。そのような2種の段階における菌類の培養の利点は、第1段階(i)の間、エネルギー源が主に、菌類の増殖に使用され、そして第2段階(ii)の間、エネルギー源は主に、組換えタンパク質の生成に使用されることである。
第1段階(非誘発条件)はまた、バッチ相としても知られており、そして第2段階(誘発条件)はまた、供給相としても知られている。供給相の間、供給物として知られている新鮮な培地が典型的には、培養物に連続して添加される。異なったパラメーターが、バッチ相の最後及び供給相の開始、例えばpHの変化を、撹拌の速度により、例に記載されるようにして、同定するために使用され得る。典型的には、菌類が増殖するにつれて、発酵培地の溶解される酸素が低下し、そしてこれを補足するためには、すなわちそれを再び高めるためには、撹拌の速度がしばしば高められる。従って、撹拌の速度が、菌類の増殖の間接的パラメーターとして、及び従って、バッチ相から供給相に交換する場合、使用され得る。
特に、プロモーターを誘発するために使用される化合物はまた、菌類が炭素源として使用することができる化合物、例えば例に記載されるマルトースであり得る。しかしながら、他のプロモーター誘発システムが良く知られており、そして本発明において使用され得る。例えば、インデューサーとして使用される化合物が菌類により代謝されない場合、インデューサーの量及び供給速度はお互い独立して、最適化され得る。
本発明者は、供給相の間、温度をゆっくりと且つ連続的に下げることにより、ヘテロカリオン糸状菌により発現される抗体の量が高められることを見出した。従って、本発明の好ましい態様においては、本発明のヘテロカリオン菌類及び/又は菌類宿主細胞の培養が、上記のように次の2段階において実施され得る:非誘発相(バッチ相)、続く誘発相(供給相)、ここで温度が、誘発相の間、低められる。
典型的には、温度は、バッチ相の間、28〜45℃、例えば28〜40℃、又は28〜38℃、又は28〜36℃、又は28〜34℃、又は28〜32℃、又は30〜40℃、又は30〜38℃、又は30〜36℃、又は30〜34℃、又は30〜32℃である。
供給相の間、温度は特に、16〜30℃、例えば16〜28℃、又は18〜28℃、又は20〜28℃、又は22〜28℃、又は24〜28℃、又は24〜26℃、例えば約24, 25, 26, 27又は28℃の温度に下げられ得る。好ましい態様においては、供給相の温度はゆっくり下げられ、例えば温度は、供給相の少なくとも1/10, 例えば供給相の1/5, 又は1/4, 又は1/3, 又は1/2, 又は3/4に対応する時間、低められ、又は温度は、全供給相の間、低められ得る。温度は、前記期間、連続して又は段階的に低められ得る。
特に、菌類が糸状菌である場合、バッチ相は典型的には、10〜30時間、例えば12〜24時間、又は12〜20時間、又は12〜18時間、又は12〜16時間、又は14〜24時間、又は14〜20時間、又は14〜18時間、又は14〜16時間を要する。供給相は典型的には、50時間以上、例えば100時間以上、例えば50〜500時間、又は50〜250時間、又は50〜200時間、又は50〜150時間、又は100〜250時間、又は100〜200時間を要する。
しかしながら、これは、培地の発酵の内容物及び/又は糸状菌の型に依存する。
さらに、培養物に添加されるインデューサーの量及び/又は供給速度はまた、供給相の間、変更され得る。
菌類宿主細胞におけるモノクローナル抗体の生成方法:
もう1つの態様においては、本発明は、
a)抗体のL鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第1核酸構造体、及び抗体のH鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第2核酸構造体を含んで成る菌類宿主細胞を供給し、ここで前記核酸構造体の1つがさらに、分泌されたポリペプチド、又は菌類により通常発現されるその機能的部分をコードする第2核酸配列を含んで成り;
b)前記抗体L及びH鎖の発現のために適切な条件下で前記菌類宿主細胞を培養することを含んで成る、モノクローナル抗体の生成方法に関する。
特に、菌類宿主細胞は、糸状菌宿主細胞又は酵母宿主細胞、例えば上記のそれらの1つであり得る。
さらに、前記核酸構造体の少なくとも1つがさらに、シグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成り、ここで前記シグナルペプチドが前記核酸構造体の第1核酸配列に対して異種である。特に、シグナルペプチドは、上記に記載されるそれらの1つであり得、例えば、それは、アスペルギラス・オリザエ(Aspergillus oryzae)からのα−アミラーゼ遺伝子(配列番号26)、又はカンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)からのリパーゼ遺伝子(配列番号27)、又はサッカロミセス、・セレビシアエからの対合α−1遺伝子、すなわち配列番号53で示されるシグナルペプチドから誘導され得る。
特に、核酸構造体が配列番号27のシグナルペプチドを含んで成る場合、それはさらに、カンジダ・アンタルクチカからのリパーゼB遺伝子(配列番号28)に由来するプロ配列を含んで成ることができる。さらに、本発明はまた、
a)抗体のL鎖をコードする核酸配列を含んで成る第1核酸構造体、及び抗体のH鎖をコードする核酸配列を含んで成る第2核酸構造体を含んで成る菌類宿主細胞を供給し、ここで前記核酸構造体の少なくとも1つがさらに、前記核酸配列に対して異種であるシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成り;
b)前記抗体L及びH鎖の発現のために適切な条件下で前記菌類宿主細胞を培養することを含んで成る、モノクローナル抗体の生成方法にも関する。
特に、菌類宿主細胞は、糸状菌宿主細胞又は酵母宿主細胞、例えば上記のそれらの1つであり得る。
第1核酸構造体、第2核酸構造体、第1核酸配列、第2核酸配列、及び第3核酸配列の好ましい態様は、上記の通りであり得る。
本発明はまた、本発明の核酸構造体を含んで成る菌類宿主細胞にも関する。
本発明はまた、抗体のL鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第1核酸構造体、及び抗体のH鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第2核酸構造体を含んで成る菌類宿主細胞にも関し、ここで前記核酸構造体の1つがさらに、分泌されたポリペプチド、又は菌類により通常発現されるその機能的部分をコードする第2核酸配列を含んで成る。さらに、本発明はまた、抗体のL鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第1核酸構造体、及び抗体のH鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第2核酸構造体を含んで成る菌類宿主細胞にも関し、ここで前記核酸構造体の少なくとも1つがさらに、前記第1核酸配列に対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成る。第1及び第2核酸構造体、第1、第2及び第3核酸配列の好ましい態様は、上記の通りであり得る。
材料及び方法:
材料:
菌株
アスペルギラス・オリザエIFO4177:Institute for fermentation, Osaka ; 17-25 Juso Ham- machi 2-Chome Yodogawa-Ku, Osaka, Japanから入手できる。
BECh2は、WO00/39322号、例1に記載されており、これはさらに、WO98/12300号、例1においてはJaL228として言及される。
JaL355は、例10に記載される。
JCA133は、例10に記載される。
ToC1512は、例11に記載される。
遺伝子
pyrG:この遺伝子は、ウリジンの生合成に関与する酵素であるオロチジン−5’−リン酸でカルボキシラーゼをコードする。
HemA:この遺伝子は、ヘムの生合成に関与する酵素であるδ−アミノレブリン酸シンターゼをコードする。
プラスミド
pUC19:この構成は、Vieira など, 1982, Gene 19: 259-268に記載される。
pIC19R : Alting-Mees MA and Short JM, 1989, Nucleic Acids Res, 17: 9494に記載される。
pTAKA-17はEP0238023号に記載される。
pMT1303はUppenberg など. 1994. Structure 2: 293-308に記載される。
pA2C315 :このプラスミドはDSM971としてDSMに寄託される。このプラスミドは、 cDNA エンドグルカナーゼIIをコードするメリピラス・ギガンテウスからのcDNAを含む。
pJaL676は、WO 03/008575号,例5に記載される。
pJaL721は、WO 03/008575号,例17に記載される。
pJaL790は、例1 に記載される。
pJaL173は、WO 98/12300号, 例1 に記載される。
pJaL335は、WO 98/12300号, 例1 に記載される。
pDV8は、WO 01/68864号, 例8に記載される。
pJaL554は、WO 01/68864号, 例8に記載される。
pToC381 は、例11に記載される。
pToC465 は、例11に記載される。
pToC466 は、例11に記載される。
plCA128 は、例10に記載される。
プライマー
プライマーH−N(配列番号3)
プライマー H-C (配列番号 4)
プライマー L-N (配列番号 5)
プライマー L-C (配列番号 6)
プライマー C315-N (配列番号 7)
プライマー C315-H-1 (配列番号 8)
プライマー C315-H-2 (配列番号 9)
プライマー C315-L-3 (配列番号 11)
プライマー C315-L-4 (配列番号 12)
プライマー CalipB-N (配列番号 14)
プライマー CalipB-H-1 (配列番号 15)
プライマー CalipB-L-1 (配列番号 17)
プライマー CalipB-L-2 (配列番号 18)
プライマー TAKA-17-N (配列番号 20)
プライマー TAKA-H (SEQ ID N0 21)
プライマー TAKA-L-1 (配列番号 23)
プライマー TAKA-L-2 (配列番号 24)
プライマー B6577F12 (配列番号29)
プライマー B6575F12 (配列番号30)
プライマー 104025 (配列番号31)
プライマー 104026 (配列番号32)
プライマー 104027 (配列番号33)
プライマー 104028 (配列番号34)
プライマー 108089 (配列番号35)
プライマー 108091 (配列番号36)
プライマー 135944 (配列番号38)
プライマー B2340E06 (配列番号39)
プライマー B2340E07 (配列番号40)
プライマー B2340E08 (配列番号41)
プライマー B2340E09 (配列番号42)
プライマー 101687 (配列番号44)
プライマー 101688 (配列番号45)
プライマー 101689 (配列番号46)
プライマー 101690 (配列番号47)
プライマー 101691 (配列番号48)
プライマー 101692 (配列番号49)
プライマー K1796F02 (配列番号 63)
プライマー K1796F03 (配列番号 64)
プライマー K1796F04 (配列番号 65)
プライマー K1796F05 (配列番号 66)
プライマー K1795F08 (配列番号 67)
プライマー K1796F06 (配列番号 68)
プライマー K1796F07 (配列番号 69)
プライマー K1796F08 (配列番号 70)
プライマー K1796F09 (配列番号 71)
プライマー K1795F09 (配列番号 72)
方法:
PCR、クローニング、ヌクレオチドの連結、等の一般的方法は、当業者に良く知られており、そして例えば"Molecular cloning : A laboratory manual", Sambrook など. (1989), Cold Spring Harbor lab., Cold Spring Harbor, NY; Ausubel, F. M. など. (eds. );"Current protocols in Molecular Biology", John Wiley and Sons, (1995); Harwood, C. R.,<BR> and Cutting, S. M. (eds. ) ;"DNA Cloning : A Practical Approach, Volumes I and lui", D. N. Glover ed. (1985) ;"Oligonucleotide Synthesis", M. J. Gait ed. (1984) ;"Nucleic Acid Hybridization", B. D. Hames & S. J. Higgins eds (1985);"A Practical Guide To Molecular Cloning", B. Perbal, (1984)に見出され得る。
DNAハイブリダイゼーション
簡単には、すべてのDNAハイブリダイゼーションは、10×Denhart溶液、5×SSC、0.02MのEDTA、1%SDS、0.15mg/mlのポリA RNA及び0.05mg/mlの酵母tRNAの標準ハイブリダイゼーション緩衝液において65℃で16時間、行われる。ハイブリダイゼーションの後、フィルターを、2×SSC、0.1%SDSにおいて65℃で2度、洗浄し、そしてX−線フィルム照射した。
PCR増幅
すべてのPCR増幅は、50mMのKCl、10mMのトリス−HCl、pH8.0、1.5mMのMgCl2の反応緩衝液中、2.5単位のTagポリメラーゼ、100ngのpSO2, 250nMの個々のdNTP及び10pモルの上記プライマーの2種のプライマーを含む溶液100μlの体積で行われた。増幅は、Perkin-Elmer Cetus DNA Termal 480において行われ、そして94℃で3分(1サイクル)、続いて94℃で1分、55℃で30秒及び72℃で1分(25サイクル)から成った。
損なわれていないヒトIgGの決定のためのELISA
損なわれていないIgGは、捕獲抗体としてヤギ抗−ヒトIgG(Fc特異的)を、及び検出抗体として、アルカリホスファターゼにより接合されるヤギ抗−ヒトκ鎖を用いるELISAを用いて決定された。標準として、ヒト骨髄腫IgG1、すなわちヒト血漿から精製されたκが使用された。
例1:アスペルギラス発現プラスミドpJaL790の構成
アスペルギラス発現プラスミドpJaL790を、次の手段で構成した:ベクターpUC19における単一の制限エンドヌクレアーゼ部位HindIII を、HindIII により切断することにより除去し、そして遊離オーバーハング末端を、クレノウポリメラーゼ及び4種のデオキシリボヌクレオチドによる処理により完全にし、そして連結し、プラスミドpLaL720をもたらした。pJaL720からの1140bpのEcoRI−BamHIフラグメントを、pJaL720におけるその対応する部位中にクローン化し、pJaL723をもたらした。537bpのフラグメントを、鋳型としてのpJaL676及びプライマーB6577F12(配列番号29)及びB6575F12(配列番号30)を用いて、PCRにより増幅した。
これを、EcoRIにより消化し、遊離オーバーハング末端を、クレノウポリメラーゼ及び4種のデオキシリボヌクレオチドによる処理により完全にし、そして得られる524bpのフラグメントを、pJaL723におけるブラント末端化されたHindIII 部位中にクローン化し、プラスミドpJaL728を得た。ベクターpUC19における単一の制限エンドヌクレアーゼ部位HindIII を、HindIII により切断することにより除去し、そして遊離オーバーハング末端を、クレノウポリメラーゼ及び4種のデオキシリボヌクレオチドによる処理により完全にし、そして連結し、プラスミドpJaL784をもたらした。pJaL784からの1671bpのEcoRI−BamHIフラグメントを、pJaL721からの5735bpのEcoRI−BamHIフラグメントに連結し、pJaL790をもたらした。
例2:活性LgG1 H−鎖アスペルギラス発現プラスミドの構成
ヒトIgG1 H鎖コード配列を、鋳型としての配列番号1、及び前方向プライマーH−N(配列番号3)及び逆方向プライマーH−C(配列番号4)を用いてのPCRにより増幅した。プライマーH−N及びHL−Cは、クローニング目的のために、それぞれ、翻訳の開始コドンの上流及び翻訳終結シグナルの後に、BamHI及びXhoI制限部位を導入する。1431bpのPCR生成物を精製し、そして制限エンドヌクレアーゼBamHI及びXhoIにより切断した。得られる1419bpのフラグメントを、pJaL790におけるその対応する部位中にクローン化し、pNZ−3を創造した。クローンpNZ−3からのDNAを配列決定し、それが正しい配列であることを調べた。
例3:活性κL鎖アスペルギラス発現プラスミドの構成
ヒトκL鎖コード配列を、鋳型としての配列番号2、及び前方向プライマーL−N(配列番号5)及び逆方向プライマーL−C(配列番号6)を用いてのPCRにより増幅した。プライマーL−N及びL−Cは、クローニング目的のために、それぞれ、翻訳の開始コドンの上流及び翻訳終結シグナルの後に、BamHI及びXhoI制限部位を導入する。732bpのPCR生成物を精製し、そして制限エンドヌクレアーゼBamHI及びXhoIにより切断した。得られる720bpのフラグメントを、pJaL790におけるその対応する部位中にクローン化し、pNZ−4を創造した。クローンpNZ−4からのDNAを配列決定し、それが正しい配列であることを調べた。
例4:IgG1 H鎖CBD融合アスペルギラス発現ベクターの構成
例2に使用されるヒトIgG1 H鎖と、M. ギガンテウスからのエンドグルカナーゼからのセルロース結合ドメインとの間の融合タンパク質を、それ自体のシグナル、及び配列オーバーラップ延長(SOE)により、アミノ酸KR(CBD)で終結するリンカーを有するM. ギガンテウスセルロース結合ドメインをコードするDNAにより、H鎖の活性シグナルペプチドをコードするDNA配列を交換することにより構成した。CBDを、鋳型としてpA2C315、及び次の対のプライマーを用いてPCRにより増幅した:前方向プライマーC315−N(配列番号7)及び逆方向プライマーC315−H−1(配列番号8)。260bpの得られるPCR生成物を精製した。プライマーC315−Nは、クローニング目的のために翻訳開始コドンの上流にBamHI制限部位を導入する。
H鎖を、鋳型としてのpNZ−3、及び次の対のプライマーを用いてPCRにより増幅した:前方向プライマーC315−H−2(配列番号9)及び逆方向プライマーH−N(配列番号3)。1379bpの得られるPCR生成物を精製した。
2種の上記PCR生成物を混合し、そして標準のSOE PCRを、次の対のプライマー、C315−N(配列番号7)及びH−N(配列番号3)により行い、1602bpの増幅されたフラグメントを得た。その1602bpのフラグメントを精製し、そしてBamHI及びXhoIにより切断した。得られる1590bpのフラグメントを、pJaL790のその対応する制限エンドヌクレアーゼ部位中にクローン化し、pNZ−5と称するアスペルギラス発現プラスミドを得た。H鎖に融合されるCBDの完全なアミノ酸配列が、配列番号10で与えられる。
例5:κL鎖CBC融合アスペルギラス発現ベクターの構成
例3に使用されるヒトκL鎖と、M. ギガンテウスからのエンドグルカナーゼからのセルロース結合ドメインとの間の融合タンパク質を、それ自体のシグナル、及び配列オーバーラップ延長(SOE)により、アミノ酸KR(CBD)で終結するリンカーを有するM. ギガンテウスセルロース結合ドメインをコードするDNAにより、L鎖の活性シグナルペプチドをコードするDNA配列を交換することにより構成した。
CBDを、鋳型としてpA2C315、及び次の対のプライマーを用いてPCRにより増幅した:前方向プライマーC315−N(配列番号7)及び逆方向プライマーC315−L−3(配列番号11)。258bpの得られるPCR生成物を精製した。プライマーC315−Nは、クローニング目的のために翻訳開始コドンの上流にBamHI制限部位を導入する。
L鎖を、鋳型としてのpNZ−4、及び次の対のプライマーを用いてPCRにより増幅した:前方向プライマーC315−L−4(配列番号12)及び逆方向プライマーL−N(配列番号5)。671bpの得られるPCR生成物を精製した。
2種の上記PCR生成物を混合し、そして標準のSOE PCRを、次の対のプライマー、C315−N及びL−Nにより行い、894bpの増幅されたフラグメントを得た。その894bpのフラグメントを精製し、そしてBamHI及びXhoIにより切断した。得られる797bpのフラグメントを、pJaL790のその対応する制限エンドヌクレアーゼ部位中にクローン化し、pNZ−6と称するアスペルギラス発現プラスミドを得た。L鎖に融合されるCBDの完全なアミノ酸配列が、配列番号13で与えられる。
例6:H鎖の活性シグナルペプチドがカンジダ・アンタルクチカからのリパーゼBからのプレプロ配列により交換されている、IgG1 H鎖アスペルギラス発現プラスミドの構成
例2に使用されるヒトIgG1 H鎖のシグナルペプチド配列を、配列オーバーラップ延長(SOE)により、カンジダ・アンタルクチカからのリパーゼBからのプレプロ配列により交換した。プレプロ領域を、鋳型としてのpMT1303及び次の対のプライマーを用いて、PCRにより増幅した:前方向プライマーCalipB(配列番号14)及び逆方向プライマーCalipB- H−1(配列番号15)。105bpの得られるPCR生成物を、BamHI及びPvuIIにより消化された制限エンドヌクレアーゼ消化し、そして92bpのフラグメントを精製した。プライマーCalipB-Nは、クローニング目的のために翻訳開始コドンの上流にBamHI制限部位を導入する。pNZ3を、制限酵素PvuII及びXhoIにより消化し、そしてH鎖をコードする1345bpのフラグメントを精製した。
92bp及び1435bpの上記2種のフラグメントを制限エンドヌクレアーゼBamHI及びXhoIにより消化されたpJaL790中にクローン化し、pNZ−7と称するアスペルギラス発現プラスミドをもたらした。H鎖に融合される異種シグナルの完全なアミノ酸配列は、配列番号16で与えられる。
例7:活性シグナルカンジダリパーゼBプレプロにより交換されている、κL鎖アスペルギラス発現プラスミドの構成
例3に使用されるヒトκL鎖のシグナルペプチド配列を、配列オーバーラップ延長(SOE)により、カンジダ・アンタルクチカからのリパーゼBからのプレプロ配列により交換した。プレプロ領域を、鋳型としてのpMT1303及び次の対のプライマーを用いて、PCRにより増幅した:前方向プライマーCalipB(配列番号14)及び逆方向プライマーCalipB- L−1(配列番号17)。105bpの得られるPCR生成物を精製した。L鎖を、鋳型としてのpNZ−4及び次の対のプライマーを用いて、PCRにより増幅した:前方向プライマーCalipB−L−2(配列番号18)及び逆方向プライマーL−N(配列番号5)。671bpの得られるPCR生成物を精製した。プライマーCalipB−Nは、クローニング目的のために翻訳開始コドンの上流にBamHI制限部位を導入する。
2種の上記PCR生成物を混合し、そして標準のSOE PCRを、次の対のプライマー、CalipB−N(配列番号14)及びL−N(配列番号5)により行ない、741bpの精製されたフラグメントをもたらした。741bpのフラグメントを精製し、そして制限エンドヌクレアーゼBamHI及びXhoIにより切断した。得られる929bpのフラグメントを、pJaL790のその対応する制限エンドヌクレアーゼ部位中クロー化し、pNZ−8と称するアスペルギラス発現プラスミドを得た。L鎖に融合される異種シグナルの完全なアミノ酸配列を、配列番号19で得る。
例8:活性シグナルがTAKAシグナルにより交換されている、IgG1 H鎖アスペルギラス発現プラスミドの構成
例2において使用されるヒトIgG1 H鎖のシグナルペプチド配列を、配列オーバーラップ延長(SOE)により、アスペルギラス・オリザエα−アミラーゼ(TAKA)からのシグナルペプチド配列により交換した。TAKAシグナルを、次の対のプライマーを用いて、pTAKA17に基づくPCRにより増幅した:前方向プライマーTAKA−17−N(配列番号20)及び逆方向プライマーTAKA−H(配列番号21)。プライマーTAKA−17−Nは、クローニング目的のために翻訳開始コドンの上流にBamHI制限部位を導入する。90bpの得られるPCR生成物を、BamHI及びPvuIIにより制限消化し、そして得られる80bpのフラグメントを精製した。pNZ3を、PvuII及びXhoIにより制限消化し、そしてH鎖をコードする1345bpのフラグメントを精製した。
80bp及び1435bpの上記2種のフラグメントを制限エンドヌクレアーゼBamHI及びXhoIにより消化されたpJaL790中にクローン化し、pNZ−9と称するアスペルギラス発現プラスミドをもたらした。H鎖に融合される異種シグナルの完全なアミノ酸配列は、配列番号22で与えられる。
例9:活性シグナルがTAKAシグナルにより交換されている、κL鎖アスペルギラス発現プラスミドの構成
例3において使用されるヒトκL鎖のシグナルペプチド配列を、配列オーバーラップ延長(SOE)により、アスペルギラス・オリザエα−アミラーゼ(TAKA)からのシグナルペプチド配列により交換した。TAKAシグナルを、次の対のプライマーを用いて、pTAKA17に基づくPCRにより増幅した:前方向プライマーTAKA−17−N(配列番号20)及び逆方向プライマーTAKA−L−1(配列番号23)。プライマーTAKA−17−Nは、クローニング目的のために翻訳開始コドンの上流にBamHI制限部位を導入する。93bpの得られるPCR生成物を精製した。L鎖を、鋳型としてのpNZ−4及び次の対のプライマーを用いて、PCRにより増幅した:前方向プライマーTAKA−L−2(配列番号24)及び逆方向プライマーL−C(配列番号6)。671bpの得られるPCR生成物を精製した。
2種の上記PCR生成物を混合し、そして標準のSOE PCRを、次の対のプライマー、TAKA−17−N(配列番号20)及びL−C(配列番号6)により行ない、729bpの精製されたフラグメントをもたらした。729bpのフラグメントを精製し、そして制限エンドヌクレアーゼBamHI及びXhoIにより切断した。得られる717bpのフラグメントを、pJaL790のその対応する制限エンドヌクレアーゼ部位中クロー化し、pNZ10と称するアスペルギラス発現プラスミドを得た。L鎖に融合される異種シグナルの完全なアミノ酸配列を、配列番号25で得る。
例10:ヘムA - A. オリザエ鎖、ICA133の構成
A. オリザエ鎖BECh2におけるアルカリプロテアーゼ遺伝子に存在する欠損pyrG遺伝子の除去のために、次のことを行った:
A. pyrG-A. オリザエ株ToC1418の単離:
A. オリザエ株BECh2を、5−フルオロ−オロト酸(FOA)に対する耐性についてスクリーンし、炭素源としての1.0Mのクスロース、窒素源としての10mMの硫酸ナトリウム及び0.5mg/mlのFOAにより補足された最少プレート(Cove D. J. 1966. Biochem. Biophys. Acta. 113: 51-56)上での自発的pyrG変異体を同定した。1つの株ToC1418を、pyrG-として同定した。ToC1418は、ウリジン依存性であり、従って、それを、野生型pyrG遺伝子により形質転換し、そして形質転換体を、ウリジンの不在下で増殖する能力により選択することができる。
B. pyrG+A. オリザエ株JaL352の構成:
アルカリプロテアーゼ遺伝子に存在する欠損pyrG遺伝子における突然変異を、配列決定により決定した。A. オリザエ株BECh2からの染色体DNAを調製し、そしてプライマー104025(配列番号31)及び104026(配列番号32)を用いてのPCRにより、前記欠損pyrG遺伝子コード領域を含む933bpのフラグメントを増幅した。その933bpのフラグメントを、次のプライマーを用いて、精製し、そして配列決定した:104025、104026、104027(配列番号33)、104028(配列番号34)、108089(配列番号35)及び108091(配列番号36)。配列決定は、特別な塩基Gが、pyrGコード領域における位置514(pyrG遺伝子の開始コドンにおけるAから計数する)で挿入され、それによりフレームシフト突然変異を創造することを示す。
アルカリプロテアーゼに依存する欠損pyrG遺伝子から野生型pyrG遺伝子を製造するために、A. オリザエpyrG-株ToC1418を、標準の方法を用いて、5’末端においてリン酸化された、150pモルのオリゴヌクレオチド(配列番号37)により形質転換した。オリゴヌクレオチドは、pyrG読取枠を回復したが、しかし同時に、サイレンス突然変異が導入され、それにより、StuI制限エンドヌクレアーゼ部位を創造した。
次に、形質転換体を、炭素源として1.0Mのスクロース、及び窒素源として10mMの硝酸ナトリウムにより補足された最少プレート(Cove D. J. 1966. Biochem. Biophys. Acta. 113: 51-56)上で、ウリジの不在下で増殖する、それらの能力により選択した。再単離の後、染色体DNAを、8個の形質転換体から調製した。その変化を確めるために、興味ある領域を包含する785bpのフラグメントを、プライマー135944(配列番号38)及び108089(配列番号35)を用いて、PCRにより増幅した。785bpのフラグメントを、プライマー108089(配列番号35)及び135944(配列番号38)により、精製し、そして配列決定した。予測される変化を有する1つの株を、JaL352と命名した。
C. pyrG-A. オリザエ株JaL355の単離:
アルカリプロテアーゼ遺伝子に存在するpyrG遺伝子を除去するために、JaL352を、A. オリザエアルカリプロテアーゼ遺伝子の5’及び3’フランキング配列を有するpJaL173の5.6kbのBamHIフラグメントにより、標準の方法を用いて形質転換した。プロトプラストを、非選択プレート上で再生し、そして胞子を集めた。約109個の胞子を、FOAに対する耐性についてスクリーンし、pyrG変異体を同定した。
再単離の後、染色体DNAを、14個のFOA耐性形質転換体から調製した。染色体DNAを、BalIにより消化し、そしてプローブとしてA. オリザエアルカリプロテアーゼ遺伝子の5’及び3’フランキングの一部を含むpJaL173からの、1kbの32P−レベルされたDNA BalIフラグメントを用いて、サザンブロットにより分析した。興味ある株を、4.8kbのBalIバンドの消出及び1kbのBalIバンドの出現により同定した。A. オリザエpyrG遺伝子を含むpJaL335からの3.5kbの32p−ラベルされたDNA Hind III フラグメントによる同じフィルターのプロービングは、4.8kbのBalIバンドが興味ある株において消出されることを示す。
D. ヘムA-A. オリザエ株ICA133の構成:
アメリカ特許第6,033,892号(Genbank: AF152374)に与えられるA. オリザエヘムA遺伝子配列からのプライマーを、5’フランギング及び3’フランキング配列を増幅するために企画した。5’フランキング部分のためのプライマーB2340E06 (配列番号39) 及び B2340E07 (配列番号40)を、それぞれBspLU111 及び Xho 1部位により末端化した。3’フランキング部分B2340E08 (配列番号41) 及びB2340E09 (配列番号42)のためのプライマーを、それぞれXhoI及びNotI部位により末端化した。
1068bp及び1135bpの増幅されたフラグメントを、BspLU111-Xho I及び Xho I-NotIにより消化し、それぞれ、1049bpのフラグメント及び1132bpのフラグメントをもたらした。次に、それらのフラグメントを、BspLU111-Not Iにより消化されたpDV8(陽性院生選択のためのベクター)中にクローン化した。最終的に、直接的反復体を端に有するA. オリザエのpyrG遺伝子を、pJaL554の2346bpのSalIフラグメントとして単離し、そして5’及び3’フランキングフラグメント間に形成されるXhoI部位中に挿入した。形成されるプラスミドを、pICA128と命名した。
pICA128を、NotIにより線状化し、そしてそれを用いて、A. オリザエJaL355を形質転換し、そして形質転換体を、WO01/68864号に記載のようにして、250mMの5’−アミノレブリン酸(5−ALA)及び0.6mMの5−フルオロ−2’−デオキシウリジン(FdU)により補足された最少培地プレート上で選択した。多くの形質転換体を再単離し、そして5−ALAを含まないCovoプレオート上にプレートした。5−ALAにより補足されたCovo上で良く増殖するが、しかし5−ALAを含まないCove上で増殖しない2種の形質転換体(#2及び#7)を、サザンブロット分析のために選択した。
染色体DNAを、BglIIにより消化し、そしてプローブとしてA. オリザエヘムA遺伝子の5’フランクの部分を含むpICA128からの1049bpの32P−ラベルされたDNA BspLU111-Xho Iフラグメントを用いて、サザンブロットにより分析した。興味ある株を、1.8kbのBgl IIバンドの消出及び7.5kbのBglIIバンドの出現により同定した。フィルターを剥ぎ取り、そしてA. オリザエヘムAコード部分の476bpの32P−ラベルされたDNA SalI−PstI内部フラグメントにより再プローブした。ハイブリダイゼーションシグナルは、pICA128が相同二重交差により組込む場合、予測されない。両形質転換体に関しては、ハイブリダイゼーションシグナルは見出されなかった。形質転換体の1つを、ICA133と命名した。
例11:pyrG - A. オリザエ株ToC1512の構成
A. glaA-A. オリザエ株ToC1510の構成:
A. オリザIFO4177グリコアミラーゼA(glaA)遺伝子配列(配列番号43)からのプライマーを、5’フランギング及び3’フランキング配列を増幅するために企画した。5’フランキング部分のためのプライマー101687 (配列番号44) 及び 101688(配列番号45)を、それぞれBglII及びHindIII部位により末端化した。3’フランキング部分101689 (配列番号46) 及び101690(配列番号47)のためのプライマーを、それぞれHindIII及びSalI部位により末端化した。
1073bp及び1049bpの増幅されたフラグメントを、BglII及びHindIII及びHindIII及びSalIにより消化し、それぞれ、1061bpのフラグメント及び1037bpのフラグメントをもたらした。次に、それらのフラグメントを、HindIII及びSalIにより消化されたpUC19R中にクローン化し、プラスミドpToC381をもたらした。pToC381からの2104bpのBamHI−BglIIフラグメントを、クレノウ及び4種のデオキシリボヌクレオチドによる処理によりブライン末端化し、そしてHindIII により消化されたpDV8中にクローン化し、そしてクレノウ及び4種のデオキシリボヌクレオチドによる処理によりブライント末端化し、プラスミドpToC465を得た。最終的に、直接的反復体を端に有するA. オリザエのpyrG遺伝子を、pJaL554の2545bpのHindIIIフラグメントとして単離し、そして5’及び3’フランキングフラグメント間に形成されるHindIII部位中に挿入した。形成されるプラスミドを、pToC466と命名した。
pToC466を、NotIにより線状化し、そしてそれを用いて、A. オリザエJaL355を形質転換し、そして形質転換体を、WO01/68864号に記載のようにして、0.6mMの5−フルオロ−2’−デオキシウリジン(FdU)により補足された最少培地プレート上で選択した。多くの形質転換体を2度、再単離し、そしてゲノムDNAを調製した。個々の形質転換体からの染色体DNAを、PvuIにより消化し、そしてプローブとしてA. オリザエglaA遺伝子の5’フランクの部分を含むpToC381からの1061bpの32P−ラベルされたDNA Hind111-BglIIフラグメントを用いて、サザンブロットにより分析した。
興味ある株を、1.6kbのPvuIバンドの消出及び7.3kbのPvuIバンドの出現により同定した。フィルターを剥ぎ取り、そしてプライマー101691(配列番号48)及び101692(配列番号49により)A. オリザエDNAから増幅された1020bpの32P−ラベルされたDNA PCRフラグメントにより再プローブした。このPCRフラグメントは、A. オリザエglaAタンパク質の一部をコードした。ハイブリダイゼーションシグナルは、pToC466が相同二重交差により組込む場合、予測されず、ここでJaL355においては1.6kbのバンドが存在する。上記特徴を有する形質転換体の1つを、ToC1510と命名した。
B. pyrG-A. オリザエ株ToC1512の単離:
A. オリザエ株ToC1510を、5−フルオロ−オロト酸(FOA)に対する耐性についてスクリーンし、炭素源としての1.0Mのクスロース、窒素源としての10mMの硫酸ナトリウム及び0.5mg/mlのFOAにより補足された最少プレート(Cove D. J. 1966. Biochem. Biophys. Acta. 113: 51-56)上での自発的pyrG変異体を同定した。1つの株ToC1512を、pyrG-として同定した。ToC1512は、ウリジン依存性であり、従って、それを、野生型pyrG遺伝子により形質転換し、そして形質転換体を、ウリジンの不在下で増殖する能力により選択することができる。
例12:アスペルギラス・オリザエにおけるIgG1 H鎖の発現
ICA133株を、Christensen など. ; Biotechnology 1988 6 1419-1422により記載のようにして、発現プラスミドpHZ−3、−5、−7及び−9のいずれかにより形質転換した。簡単に言えば、A. オリザエ菌糸体を、栄養に富んでいるブイヨンにおいて増殖した。菌糸体を、濾過によりブイヨンから分離した。酵素調製物Novozyme(商標)(Novo Nordisk)を、浸透圧的に安定化する緩衝液、例えばリン酸ナトリウムによりpH5.0に緩衝された1.2MのMgSO4溶液中、菌糸体に添加した。その懸濁液を、37℃で60分間、撹拌しながらインキュベートした。プロトプラストを、mira-clothを通して濾過し、菌糸体残骸を除去した。プロトプラストを収穫し、そしてSTC(1.2Mのソルビトール、10mMのCaCl2、10mMのトリス−HCl、pH7.5)により2度、洗浄した。最終的に、プロトプラストを、200〜1000μlのSTCに再懸濁した。
形質転換に関しては、5μgのDNAを、100μlのプロトプラスト懸濁液に添加し、そして次に、200μlのPEG溶液(60%のPEG4000、10mMのCaCl2、10mMのトリス−HCl、pH7.5)を添加し、そしてその混合物を室温で20分間インキュベートした。プロトプラストを収穫し、そして1.2Mのソルビトールにより2度、洗浄した。プロトプラストを最終的に、200μlの1.2Mソルビトールに再懸濁した。amdS遺伝子を含む形質転換体を、炭素源として1.0Mのスクロース、窒素源として10mMのアセトアミド、バックグラウンド増殖を阻害するための15mMのCsCl及び250mMの5−ALAを含む最少プレート(Cove D. J. 1966. Biochem. Biophys. Acta. 113: 51-56)上で選択した。37℃での4〜5日間の増殖の後、安定した形質転換体は、激しく増殖し、且つ胞子形成コロニーとして出現した。形質転換体を、分生子を通して2度、精製した。
10mlのYPM培地(2g/lの酵母抽出物、2g/lのペプトン、及び2%マルトース)を含む振盪フラスコを、形質転換体からの胞子により接種し、そして30℃、200rpmで4日間インキュベートした。上清液のサンプル(20μl)を、適切な体積の2×サンプル充填緩衝液と共に混合し、そしてドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に、その製造業者の説明書に従ってゆだねた(Novex NuPAGE 10% Bis-Tris Electrophoresis System from Invitrogen Corporation)。ゲルを、クーマシーブルー染色によりタンパク質について染色し、又はタンパク質を、ウェスターンブロットにより膜フィルターに移した(Towbin など., 1979, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76: 4350-4354)。
ゲルを標準のタンパク質マーカー及びA. オリザエ細胞と同じヒトH鎖を発現するハイブリドーマ細胞からの上清液により実験した。ヒトH鎖を、ヤギからのアルカリホスファターゼ(AP)により接合された抗−ヒトIgG(γ−鎖特異的)(Sigma A3187)による処理により、続いて、4−ニトロ−フェニルホスフェート(Sigma N7653)と共にインキュベートすることによるAP色彩進行により、それらの製造業者の説明書に従って、ウェスターンブロット上で検出した。H鎖のウェルターンブロットは、図1の第2ゲルに示される。
H鎖を生成した形質転換体を、形質転換体されていない親株からの上清液に比較して、55〜60kDの特別なバンドの出現により同定した。
例13:アスペルギラス・オリザエにおけるκL鎖の発現
ToC1512株を、例12におけるH鎖について記載されるようにして(但し、250mMの5−ALAを、20mMのウリジンにより置換した)、発現プラスミドpNZ-4, -6, -8及び-10のいずれかにより形質転換した。
10mlのYPM培地(2g/lの酵母抽出物、2g/lのペプトン、及び2%マルトース)を含む振盪フラスコを、形質転換体からの胞子により接種し、そして30℃、200rpmで4日間インキュベートした。上清液のサンプル(20μl)を、適切な体積の2×サンプル充填緩衝液と共に混合し、そしてドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に、その製造業者の説明書に従ってゆだねた(Novex NuPAGE 10% Bis-Tris Electrophoresis System from Invitrogen Corporation)。ゲルを、クーマシーブルー染色によりタンパク質について染色し、又はタンパク質を、ウェスターンブロットにより膜フィルターに移した(Towbin など., 1979, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76: 4350-4354)。
ゲルを標準のタンパク質マーカー及びA. オリザエ細胞と同じヒトκL鎖を発現するハイブリドーマ細胞からの上清液により実験した。ヒトκL鎖を、ヤギからのアルカリホスファターゼ(AP)により接合された抗−ヒトκL鎖抗体(Sigma A3813)による処理により、続いて、4−ニトロ−フェニルホスフェート(Sigma N7653)と共にインキュベートすることによるAP色彩進行により、それらの製造業者の説明書に従って、ウェスターンブロット上で検出した。L鎖のウェルターンブロットは、図1の第1ゲルに示される。
L鎖を生成した形質転換体を、形質転換体されていない親株からの上清液に比較して、25kDの特別なバンドの出現により同定した。L鎖バンドの同一性をさらに、エドマン分解によるN−末端の決定により確めた。それらのデータは、ヒト単離された抗体類似物に対応する、DIQMTQS(配列番号51)の単一の優性配列が、すべての4種の発現構造体に対して得られたことを示す。
例14:アスペルギラス・オリザエへテロカリオンにおける損なわれていないIgG1抗体の発現
κL鎖及びIgG1 H鎖をコードする混合された核を有するアスペルギラス・オリザエへテロカリオン細胞の形成を、次の通りに行った:ヘムA陰性である、例12からのH鎖を発現する形質転換体、及びpyrG因子である、例13からのL鎖を発現する形質転換体の約105個の胞子を、25mlのNUNCユニバーサル容器(NUNC364228)において、0.02mMのウリジン及び25mMの5’−AlAにより補足された15mlのCOVE培地(Cove D. J. 1966. Biochem. Biophys. Acta. 113: 51-56)において混合した。これを振盪しないで、30℃で2日間インキュベートした。表面菌糸体マットを、無菌水により2度、洗浄し、COVEプレートに移し、そして37℃で3日間インキュベートした。1.0cm×1.0cmの寒天プラグを、新しいCOVEプレートに移し、そして37℃で3間インキュベートした。ヘテロカリオンのすべての続く取扱は、ヘテロカリオンについて選択する培地上で行われた。
10mlのYPM培地(2g/lの酵母抽出物、2g/lのペプトン、及び2%マルトース)を含む振盪フラスコを、ヘテロカリオンからの胞子により接種し、そして30℃、200rpmで4日間インキュベートした。上清液を、SDS−PAGE及びウェスターン分析によりH及びL鎖サンプルの発現について分析した。ゲルを、標準のタンパク質マーカー、及びA. オリザエへテロカリオンと同じヒトκL鎖及びH鎖を発現するハイブリドーマ細胞からの上清液により実験した。
活性H鎖(例12からの)及びCBD L鎖融合体(例13からの)を有する1つのヘテロカリオンから、L鎖により結合されるH鎖を、H鎖に対して特異的であるプロテイAクロマトグラフィー(Goudswaard など., 1978, Scand J Immunol, 8: 21-28)により得た。図1の第3ゲルは、H及びL鎖に対して特異的である、例12及び13に記載される抗体を用いてのウェスターンブロットの結果を示す。形質転換体について観察されるバンドを、H鎖(50、53及び55kD、たぶん異なったグリコール形)及びL鎖(25kD)として同定した。L鎖のH鎖との同時精製は、抗体がアセンブリーされたことを示した。
バンドのN末端決定は、3種のH鎖バンドが同じ配列すなわちEGQLVQSG (配列番号52)を有し、そしてL鎖がDIQMTQS (配列番号51)の配列を有し、それらのH鎖及びL鎖の両者がハイブリドーマ細胞により生成される抗体の配列に対応することを確かにした。
さらに、A. オリザエへテロカリオンにより発現される機能的抗体の量を、3Lのタンクにおいて測定し、そして図2に示し、そしてヘテロカリオンを培養するのにいかに多くの時間を要するかの関数として下記表1に示す。その収率は、168時間後に生成される量に対して与えられ、そしてそれは、抗体の抗原への結合により決定された。
Figure 2007535913
例15:抗体発現の量に対する異なった培養条件の効果
例14からのA. オリザエを、ヘテロカリオンにより発現される抗体の量に対する異なった培養条件の効果を試験するために、この例に使用した。200mlのG2Gly培地(18g/lの酵母抽出物及び24g/lのグリセロール)を含む500mlの振盪フラスコを、10mlの胞子懸濁液により接種した。振盪インキュベーターにおける30℃での24〜48時間の増殖の後、それらを、3LのApplicon Bioreactorsに移した。J3培養に関する培地及び発酵パラメーターは、次の通りであった:
Bioreactorにおける発酵培地:60gのスクロース、12gの(NH4)2SO4, 8gのMgSO4・7H2O、8gのKH2PO4、1.0mlの微量金属溶液、3.4mlのプルロニック(消泡剤)(2.0L当たり)、これを、121℃で60分間オートクレーブし、そしてpH6.5に調節した。
約14〜18時間の培地(バッチ相)の後、培養物を、いわゆる供給培地を連続的に添加することにより、供給する。供給培地は、この場合、3.5gのクエン酸、20mlのプルロニック(消泡剤)及び2LのNutriose(マルトース)、BRIX40(これは、屈折率により測定される場合、供給培地において40%の濃度のマルロースシロップを付与する)から成り(合計2.0Lの体積)、そしてそれを、使用の前、30分間121℃でオートクレーブした。
制御パラメーターは次の通りであった:
Figure 2007535913
時間=0は、発酵の開始点、すなわち培養物が振盪インキュベーターから3LのApplicon Bioreactorsに移される点である。
時間=供給開始は、rpm(max)-rpm=100である場合、上記のようにして開始する(投与量開始)、供給培地の添加のための開始点である。
2種の整定値間のパラメーター値において時間に対する直線的変化が存在する。
1日2度、上清液のサンプルを採取し、そしてグルコースの重量、pH及び量を測定した。さらに、サンプルを、毎日、採取し、そして上清液を凍結し、抗体定量化を待った。
B2, C3, E2及びG1発酵実験を同様にして行ったが、但し表3に記載される例外/変化が存在した。
発現される損なわれていないヒトIgGの量を、“方法”セクションに記載のようにしてELISAにより測定し、そして結果を表3に示す。
Figure 2007535913
34℃の温度を、主にこの温度でのアスペルギラスの良好な増殖のために、全発酵の間、最初に使用した(B2)。わずかに高められた抗体濃度を、供給の開始の後4時間にわたって26℃への温度の変化により得た(C3)。発酵E2においては、供給を、発酵器における溶解される酸素状態により調節し、これは高いバイオマス濃度をもたらしたが、しかしそれは、最終抗体濃度を改良しなかった。
抗体濃度は、温度が供給期間の開始から150時間にわたって34℃から26℃に直線的に変更される場合、4倍以上、上昇した(J3)。供給速度は、発酵E2における供給速度を模倣するよう、但し調節するのに実際的に容易する設定値を伴って、調節された。
従って、表3における結果は、供給期間の間、温度の低下が、生成される抗体の量を高めることを示す。
例16:H及びL鎖構造体の異なった組合せからのA. オリザエへテロカリオンにおける損なわれていないヒトIgGの発現
例14は、野生型H鎖の構造体(例2からのpNZ−3に対応する)及びCBDL鎖融合タンパク質(例5からのpNZ−3に対応する)を含んで成るA. オリザエへテロカリオンによるヒト抗体の発現を示す。
H及びL鎖構造体の異なった組合せを含んで成るA. オリザエへテロカリオンを、例14に記載のようにして形成した。
A. オリザエへテロカリオンにより発現される損なわれていないヒトIgGの量を、“方法”セクションに記載されるようにして、ELISAにより測定し、そして結果は、表4に示される。その量は、野生型H鎖の構造体及び野生型L鎖の構造体(それぞれ、例2及び3からのpNZ−3及びpNZ−4に対応する)を含んで成るA. オリザエへテロカリオンにより発現される量に対して標準化された。
Figure 2007535913
その結果は、A. オリザエへテロカリオンが、H鎖及びL鎖の異なった構造体及びその異なった組合せを用いて、損なわれていないヒトIgGを発現することができることを示す。
例17:IgG2 H鎖CBD融合アスペルギラス発現ベクターの構成
ヒトIgG2 H鎖(配列番号55)と、M. ギガンテウスからのエンドグルカナーゼからのセルロース結合ドメインとの間の融合タンパク質を、それ自体のシグナル、及び配列オーバーラップ延長(SOE)により、アミノ酸KR(CBD)で終結するリンカーを有するM. ギガンテウスセルロース結合ドメインをコードするDNAにより、H鎖の活性シグナルペプチドをコードするDNA配列を交換することにより構成した。CBDを、鋳型としてpA2C315、及び次の対のプライマーを用いてPCRにより増幅した:前方向プライマーC315−N(配列番号7)及び逆方向プライマーK1796F02(配列番号63)。260bpの得られるPCR生成物を精製した。
H鎖を、鋳型としての配列番号55、及び次の対のプライマーを用いてPCRにより増幅した:前方向プライマーK1796F03(配列番号64)及び逆方向プライマーK1795F08(配列番号67)。1376bpの得られるPCR生成物を精製した。
2種の上記PCR生成物を混合し、そして標準のSOE PCRを、次の対のプライマー、C315−N(配列番号7)及びK1795F08(配列番号67)により行い、1596bpの増幅されたフラグメントを得た。その1596bpのフラグメントを精製し、そしてBamHI及びXhoIにより切断した。得られる1584bpのフラグメントを、pJaL790のその対応する制限エンドヌクレアーゼ部位中にクローン化し、pNZa-1と称するアスペルギラス発現プラスミドを得た。H鎖に融合されるCBDの完全なアミノ酸配列が、配列番号57で与えられる。
例18:κL鎖CBD融合アスペルギラス発現ベクターの構成
例3に使用されるヒトκL鎖(配列番号56)と、M. ギガンテウスからのエンドグルカナーゼからのセルロース結合ドメインとの間の融合タンパク質を、それ自体のシグナル、及び配列オーバーラップ延長(SOE)により、アミノ酸KR(CBD)で終結するリンカーを有するM. ギガンテウスセルロース結合ドメインをコードするDNAにより、L鎖の活性シグナルペプチドをコードするDNA配列を交換することにより構成した。
CBDを、鋳型としてpA2C315、及び次の対のプライマーを用いてPCRにより増幅した:前方向プライマーC315−N(配列番号7)及び逆方向プライマーK1796F06(配列番号68)。260bpの得られるPCR生成物を精製した。
L鎖を、配列番号56、及び次の対のプライマーを用いてPCRにより増幅した:前方向プライマーK1796F07(配列番号69)及び逆方向プライマーK1795F09(配列番号72)。677bpの得られるPCR生成物を精製した。
2種の上記PCR生成物を混合し、そして標準のSOE PCRを、次の対のプライマー、C315−N及びK1795F09により行い、897bpの増幅されたフラグメントを得た。その897bpのフラグメントを精製し、そしてBamHI及びXhoIにより切断した。得られる885bpのフラグメントを、pJaL790のその対応する制限エンドヌクレアーゼ部位中にクローン化し、pNZa-2と称するアスペルギラス発現プラスミドを得た。L鎖に融合されるCBDの完全なアミノ酸配列が、配列番号59で与えられる。
例19:TAKAシグナルペプチドを含むIgG2 H鎖アスペルギラス発現プラスミドの構成
アスペルギラス・オリザエα−アミラーゼ(TAKA)からのシグナルペプチド配列を、例17に使用されるヒトIgG2 H鎖の活性シグナルペプチドにより配列オーバーラップ延長(SOE)により交換した。TAKAシグナルを、次の対のプライマーを用いて、pTAKA17に基づくPCRにより増幅した:前方向プライマーTAKA−17−N(配列番号20)及び逆方向プライマーK1796F04(配列番号65)。95bpの得られるPCR生成物を精製した。
H鎖を、鋳型として配列番号55及び次の対のプライマーを用いてPCRにより増殖した:前方向プライマーK1796F05(配列番号66)及び逆方向プライマーK1795F08(配列番号67)。1375bpの得られるPCR生成物を精製した。
2種の上記PCR生成物を混合し、そして標準のSOE PCRを、次の対のプライマー、TAKA-17-N(配列番号20)及びK1795F08(配列番号67)により行ない、1431bpの精製されたフラグメントをもたらした。1431bpのフラグメントを精製し、そして制限エンドヌクレアーゼBamHI及びXhoIにより切断した。得られる1419bpのフラグメントを、pJaL790のその対応する制限エンドヌクレアーゼ部位中クロー化し、pNZa-3と称するアスペルギラス発現プラスミドを得た。H鎖に融合されるTAKAシグナルの完全な配列が配列番号61で与えられる。
例20:TAKAシグナルペプチドを含むκL鎖アスペルギラス発現プラスミドの構成
例18において使用されるヒトκL鎖のシグナルペプチド配列を、配列オーバーラップ延長(SOE)により、アスペルギラス・オリザエα−アミラーゼ(TAKA)からのシグナルペプチド配列により交換した。
TAKAシグナルを、次の対のプライマーを用いて、pTAKA17に基づくPCRにより増幅した:前方向プライマーTAKA−17−N(配列番号20)及び逆方向プライマーK1796F08(配列番号70)。95bpの得られるPCR生成物を精製した。
L鎖を、配列番号56及び次の対のプライマーを用いて、PCRにより増幅した:前方向プライマーK1796F09(配列番号71)及び逆方向プライマーK1795F09(配列番号72)。576bpの得られるPCR生成物を精製した。
2種の上記PCR生成物を混合し、そして標準のSOE PCRを、次の対のプライマー、TAKA−17−N(配列番号20)及びK1795F09(配列番号72)により行ない、732bpの精製されたフラグメントをもたらした。732bpのフラグメントを精製し、そして制限エンドヌクレアーゼBamHI及びXhoIにより切断した。得られる720bpのフラグメントを、pJaL790のその対応する制限エンドヌクレアーゼ部位中クロー化し、pNZa-4と称するアスペルギラス発現プラスミドを得た。L鎖に融合される異種シグナルの完全なアミノ酸配列を、配列番号62で得る。
例21:アスペルギラス・オリザエにおけるIgG2 H鎖の発現
ICA133株(例10)を、Christensen など. ; Biotechnology 1988 6 1419-1422により記載のようにして、発現プラスミドpNZa−1及び−3のいずれかにより形質転換した。簡単に言えば、A. オリザエ菌糸体を、栄養に富んでいるブイヨンにおいて増殖した。菌糸体を、濾過によりブイヨンから分離した。酵素調製物Novozyme(商標)(Novo Nordisk)を、浸透圧的に安定化する緩衝液、例えばリン酸ナトリウムによりpH5.0に緩衝された1.2MのMgSO4溶液中、菌糸体に添加した。その懸濁液を、37℃で60分間、撹拌しながらインキュベートした。プロトプラストを、mira-clothを通して濾過し、菌糸体残骸を除去した。プロトプラストを収穫し、そしてSTC(1.2Mのソルビトール、10mMのCaCl2、10mMのトリス−HCl、pH7.5)により2度、洗浄した。最終的に、プロトプラストを、200〜1000μlのSTCに再懸濁した。
形質転換に関しては、5μgのDNAを、100μlのプロトプラスト懸濁液に添加し、そして次に、200μlのPEG溶液(60%のPEG4000、10mMのCaCl2、10mMのトリス−HCl、pH7.5)を添加し、そしてその混合物を室温で20分間インキュベートした。プロトプラストを収穫し、そして1.2Mのソルビトールにより2度、洗浄した。プロトプラストを最終的に、200μlの1.2Mソルビトールに再懸濁した。amdS遺伝子を含む形質転換体を、炭素源として1.0Mのスクロース、窒素源として10mMのアセトアミド、バックグラウンド増殖を阻害するための15mMのCsCl及び250mMの5−ALAを含む最少プレート(Cove D. J. 1966. Biochem. Biophys. Acta. 113: 51-56)上で選択した。37℃での4〜5日間の増殖の後、安定した形質転換体は、激しく増殖し、且つ胞子形成コロニーとして出現した。形質転換体を、分生子を通して2度、精製した。
10mlのYPM培地(2g/lの酵母抽出物、2g/lのペプトン、及び2%マルトース)を含む振盪フラスコを、形質転換体からの胞子により接種し、そして30℃、200rpmで4日間インキュベートした。上清液のサンプル(20μl)を、適切な体積の2×サンプル充填緩衝液と共に混合し、そしてドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に、その製造業者の説明書に従ってゆだねた(Novex NuPAGE 10% Bis-Tris Electrophoresis System from Invitrogen Corporation)。ゲルを、クーマシーブルー染色によりタンパク質について染色し、又はタンパク質を、ウェスターンブロットにより膜フィルターに移した(Towbin など., 1979, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76: 4350-4354)。
ヒトH鎖を、ヤギからのアルカリホスファターゼ(AP)により接合された抗−ヒトIgG(γ−鎖特異的)(Sigma A3187)による処理により、続いて、4−ニトロ−フェニルホスフェート(Sigma N7653)と共にインキュベートすることによるAP色彩進行により、それらの製造業者の説明書に従って、ウェスターンブロット上で検出した。H鎖のウェルターンブロットは、図3の第1ゲルに示される。
H鎖を生成した形質転換体を、形質転換体されていない親株からの上清液に比較して、55〜60kDの特別なバンドの出現により同定した。
例22:アスペルギラス・オリザエにおけるκL鎖の発現
ToC1512株(例11)を、例21におけるH鎖について記載されるようにして(但し、240mMの5−ALAを、20mMのウリジンにより置換した)、発現プラスミドpNZa-2,及び-4のいずれかにより形質転換した。
10mlのYPM培地(2g/lの酵母抽出物、2g/lのペプトン、及び2%マルトース)を含む振盪フラスコを、形質転換体からの胞子により接種し、そして30℃、200rpmで4日間インキュベートした。上清液のサンプル(20μl)を、適切な体積の2×サンプル充填緩衝液と共に混合し、そしてドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に、その製造業者の説明書に従ってゆだねた(Novex NuPAGE 10% Bis-Tris Electrophoresis System from Invitrogen Corporation)。ゲルを、クーマシーブルー染色によりタンパク質について染色し、又はタンパク質を、ウェスターンブロットにより膜フィルターに移した(Towbin など., 1979, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76: 4350-4354)。
ヒトκL鎖を、ヤギからのアルカリホスファターゼ(AP)により接合された抗−ヒトκL鎖抗体(Sigma A3813)による処理により、続いて、4−ニトロ−フェニルホスフェート(Sigma N7653)と共にインキュベートすることによるAP色彩進行により、それらの製造業者の説明書に従って、ウェスターンブロット上で検出した。L鎖のウェルターンブロットは、図3の第3ゲルに示される。
L鎖を生成した形質転換体を、形質転換体されていない親株からの上清液に比較して、25kDの特別なバンドの出現により同定した。L鎖バンドの同一性をさらに、エドマン分解によるN−末端の決定により確めた。それらのデータは、ヒト単離された抗体類似物に対応する、EIVLTQS(配列番号73)の単一の優性配列が、すべての4種の発現構造体に対して得られたことを示す。
例23:アスペルギラス・オリザエへテロカリオンにおける損なわれていないIgG2抗体の発現
κL鎖及びIgG1 H鎖をコードする混合された核を有するアスペルギラス・オリザエへテロカリオン細胞の形成を、次の通りに行った:ヘムA陰性である、例21からのH鎖を発現する形質転換体、及びpyrG因子である、例22からのL鎖を発現する形質転換体の約105個の胞子を、25mlのNUNCユニバーサル容器(NUNC364228)において、0.02mMのウリジン及び25mMの5’−AlAにより補足された15mlのCOVE培地(Cove D. J. 1966. Biochem. Biophys. Acta. 113: 51-56)において混合した。これを振盪しないで、30℃で2日間インキュベートした。表面菌糸体マットを、無菌水により2度、洗浄し、COVEプレートに移し、そして37℃で3日間インキュベートした。1.0cm×1.0cmの寒天プラグを、新しいCOVEプレートに移し、そして37℃で3間インキュベートした。ヘテロカリオンのすべての続く取扱は、ヘテロカリオンについて選択する培地上で行われた。
10mlのYPM培地(2g/lの酵母抽出物、2g/lのペプトン、及び2%マルトース)を含む振盪フラスコを、ヘテロカリオンからの胞子により接種し、そして30℃、200rpmで4日間インキュベートした。上清液を、SDS−PAGE及びウェスターン分析によりH及びL鎖サンプルの発現について分析した。
活性H鎖(例21からの)及びCBD L鎖融合体(例22からの)を有する1つのヘテロカリオンから、L鎖により結合されるH鎖を、H鎖に対して特異的であるプロテイAクロマトグラフィー(Goudswaard など., 1978, Scand J Immunol, 8: 21-28)により得た。図3は、H及びL鎖に対して特異的である、例21及び22に記載される抗体を用いてのウェスターンブロットの結果を示す。形質転換体について観察されるバンドを、H鎖(50及び55kD、たぶん異なったグリコール形)及びL鎖(25kD)として同定した。L鎖のH鎖との同時精製は、抗体がアセンブリーされたことを示した。
バンドのN末端決定は、2種のH鎖バンドが同じ配列すなわちEVQLLQSG (配列番号74)を有し、そしてL鎖がEIVLTQS (配列番号73)の配列を有し、それらのH鎖及びL鎖の両者がCHO細胞により生成される抗体の配列に対応することを確かにした。
例24:H及びL鎖構造体の異なった組合せからのA. オリザエへテロカリオンにおける損なわれていないヒトIgGの発現
H及びL鎖CBD融合タンパク質の構造体(例17及び18)、又はH及びL鎖を有するTAKA−シグナルペプチドの構造体(例19及び20)を含んで成るA. オリザエへテロカリオンを、例23に記載のようにして形成した。
A. オリザエへテロカリオンにより発現される損なわれていないヒトIgG2の量を、上記“方法”セクションに記載のようにELISAにより測定し、そしてH及びL鎖に基づいてTAKA−シグナルペプチドを含んで成るヘテロカリオンが、CBD H及びL鎖融合体を含んで成るヘテロカリオンの約2.6倍、よりそこなわれていない抗体を発現したことを示した。
図1は、ハイブリドーマ細胞(Hy)及びアスペルギラス・オリザエへテロカリオン(As)におけるL鎖、H鎖、及びL+H鎖発現の3種のウェスターンブロットの結果を示す。第1ゲルは、ハイブリドーマ細胞及びA. オリザエへテロカリオンにおけるL鎖の発現を示し(例13)、第2ゲルは、ハイブリドーマ細胞及びA. オリザエへテロカリオンにおけるH鎖の発現を示し(例12)、そして第3ゲルは、ハイブリドーマ細胞A. オリザエへテロカリオンにおけるL及びH鎖の発現を示す(例14)。個々のゲルの第1レーンは、Hy及びAsレーンに存在するタンパク質のサイズを評価するために使用される標準のタンパク質のマーカーである。形質転換体(As)に関して観察されるバンドは、H鎖(50、53及び55kDのたぶん異なったグリコール形)及びL鎖(25kD)として同定された。
図2は、時間の関数としての、A. オリザエへテロカリオン(例14に記載される)により発現されるIgG1抗体の量を示す。抗体の量は、抗原に結合することにより測定され、そしてA. オリザエへテロカリオンの168時間の培養後に発現される量に関して示される。
図3は、A. オリザエへテロカリオン(As)による、L鎖、H鎖、及びL+H鎖発現の3種のウェスターンブロットの結果を示す。左側から右側に、第1ゲルは、A. オリザエへテロカリオンによるH鎖の発現を示し(例23)、第2ゲルは、A. オリザエへテロカリオンによるH鎖及びL鎖の両者の発現を示し(例23)、そして第3ゲルは、A. オリザエへテロカリオンによるL鎖の発現を示す(例23)。個々のゲルの第1レーンは、タンパク質のサイズを評価するために使用される標準のタンパク質マーカーであり、第2レーンは発酵ブイヨンであり、そして第3レーンは、MepHyperCelによる精製の後の発酵ブイヨンを示し、そして第4レーンは、プロテインAカラム上での精製の後の発酵ブイヨンを示す。

Claims (27)

  1. a)抗体のL鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第1核酸構造体を含んで成る第1核、及び抗体のH鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第2核酸構造体を含んで成る第2核を含んで成るヘテロカリオン菌類を供給し、ここで前記核酸構造体の少なくとも1つがさらに、菌類により通常分泌されるポリペプチド又はその機能的部分をコードする第2核酸配列を含んで成り;
    b)前記抗体L及びH鎖の発現のために適切な条件下で前記へテロカリオン菌類を培養する;
    ことを含んで成るモノクローナル抗体の生成方法。
  2. 前記へテロカリオンが、ヘテロカリオン糸状菌である請求項1記載の方法。
  3. 前記へテロカリオンが、酵母へテロカリオンである請求項1記載の方法。
  4. 前記第2核酸配列が、前記第1核酸配列の上流に位置する請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  5. 前記第2核酸配列が、セルロース結合ドメインをコードする請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
  6. 前記核酸構造体の少なくとも1つがさらに、シグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成り、そして前記シグナルペプチドが前記核酸構造体の第1核酸配列に対して異種である請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  7. 前記シグナルペプチドが、アスペルギラス・オリザエ(Aspergillus oryzae)からのα−アミラーゼ遺伝子(配列番号26)に由来する請求項6記載の方法。
  8. 前記シグナルペプチドが、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)からのリパーゼ遺伝子(配列番号27)に由来する請求項6記載の方法。
  9. 前記核酸構造体の少なくとも1つがさらに、カンジダ・アンタルクチカからのリパーゼB遺伝子(配列番号28)に由来するプロ配列をコードする核酸配列を含んで成る請求項8記載の方法。
  10. 前記第1核酸構造体からのL鎖の発現又は前記第2核酸構造体からのH鎖の発現のいずれか、あるいは両者が誘発性プロモーターの制御下にあり、そして段階b)における培養が、プロモーターが誘発されない条件下で、そして続いて、プロモーターが誘発される条件下でヘテロカリオン菌類を第1に培養することにより行われ、そして前記温度が、プロモーターが誘発される条件下で培養する間、低められる請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
  11. a)抗体のL鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第1核酸構造体を含んで成る第1核、及び抗体のH鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第2核酸構造体を含んで成る第2核を含んで成るヘテロカリオン菌類を供給し、ここで前記核酸構造体の少なくとも1つがさらに、前記第1核酸配列に対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成り;
    b)前記抗体L及びH鎖の発現のために適切な条件下で前記へテロカリオン菌類を培養する;
    ことを含んで成るモノクローナル抗体の生成方法。
  12. 前記へテロカリオンが、ヘテロカリオン糸状菌である請求項11記載の方法。
  13. 前記へテロカリオンが、酵母へテロカリオンである請求項11記載の方法。
  14. 前記シグナルペプチドが、アスペルギラス・オリザエからのα−アミラーゼ遺伝子(配列番号26)に由来する請求項11〜13のいずれか1項記載の方法。
  15. 前記シグナルペプチドが、カンジダ・アンタルクチカからのリパーゼ遺伝子(配列番号27)に由来する請求項11〜13のいずれか1項記載の方法。
  16. 前記核酸構造体の少なくとも1つがさらに、カンジダ・アンタルクチカからのリパーゼB遺伝子(配列番号28)に由来するプロ配列をコードする核酸配列を含んで成る請求項15記載の方法。
  17. 前記第1核酸構造体からのL鎖の発現又は前記第2核酸構造体からのH鎖の発現のいずれか、あるいは両者が誘発性プロモーターの制御下にあり、そして段階b)における培養が、プロモーターが誘発されない条件下で、そして続いて、プロモーターが誘発される条件下でヘテロカリオン菌類を第1に培養することにより行われ、そして前記温度が、プロモーターが誘発される条件下で培養する間、低められる請求項11〜16のいずれか1項記載の方法。
  18. 抗体のL鎖をコードする第1核酸配列、及び前記第1核酸配列に対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成る核酸構造体。
  19. 抗体のH鎖をコードする第1核酸配列、及び前記第1核酸配列に対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成る核酸構造体。
  20. 前記シグナルペプチドが、アスペルギラス・オリザエからのα−アミラーゼ遺伝子(配列番号26)、又はカンジダ・アンタルクチカからのリパーゼ遺伝子(配列番号27)に由来する請求項18〜19のいずれか1項記載の核酸構造体。
  21. 前記構造体がさらに、カンジダ・アンタルクチカからのリパーゼB遺伝子(配列番号28)に由来するプロ配列をコードする核酸配列を含んで成る請求項20記載の核酸構造体。
  22. 前記構造体がさらに、菌類により通常発現される、分泌されるポリペプチド又はその機能的部分をコードする第2核酸配列を含んで成る請求項18〜21のいずれか1項記載の核酸構造体。
  23. 前記第2核酸配列が、セルロース結合ドメインをコードする請求項22記載の核酸構造体。
  24. 抗体のL鎖をコードする第1核酸配列、及びセルロース結合ドメインをコードする第2核酸配列を含んで成る核酸構造体。
  25. 抗体のH鎖をコードする第1核酸配列、及びセルロース結合ドメインをコードする第2核酸配列を含んで成る核酸構造体。
  26. 抗体のL鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第1核酸構造体を含んで成る第1核、及び抗体のH鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第2核酸構造体を含んで成る第2核(ここで前記核酸構造体の少なくとも1つがさらに、菌類により通常分泌されるポリペプチド又はその機能的部分をコードする第2核酸配列を含んで成る)を含んで成るヘテロカリオン菌類宿主細胞。
  27. 抗体のL鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第1核酸構造体を含んで成る第1核、及び抗体のH鎖をコードする第1核酸配列を含んで成る第2核酸構造体を含んで成る第2核(ここで前記核酸構造体の少なくとも1つがさらに、前記第1核酸配列に対して異種のシグナルペプチドをコードする第3核酸配列を含んで成る)を含んで成るヘテロカリオン菌類宿主細胞。
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