JP2007534357A - 脳の神経活動を脱同期化するための方法及び装置 - Google Patents

脳の神経活動を脱同期化するための方法及び装置 Download PDF

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Abstract

この発明は、病気に同期した脳の神経活動を脱同期化するための装置に関し、この発明では、少なくとも二本の電極を用いて、脳領域の少なくとも二つの部分領域又は少なくとも二つの機能的に関連する脳領域における活動を刺激して、それにより、驚くべきことに、病気を罹っている人に対して、関連するニューロン個体群において脱同期化を起こして、症状を抑制するものである。フィードバック刺激信号、即ち、測定、処理した神経活動を、時間遅延させた形で個々の刺激として使用する。その結果、この発明による刺激信号の振幅の自律デマンド制御が実現され、それにより脱同期化が成功した後に刺激作用の強度を自動的に最小化している。処置が成功するためには、この装置は、複雑な較正も、刺激パラメータの制御も必要としないが、有利には、追加のコントローラによって、それらを調整、最適化することができる。この装置は、少なくとも二本の刺激電極(2)と少なくとも一つのセンサー(3)を有し、これらは、コントローラによって駆動されて、局所的な周辺環境において脱同期化を生じさせる。

Description

この発明は、請求項1の上位概念にもとづく脳の神経活動を脱同期化するための装置に関する。
神経性又は精神性の病気、例えば、パーキンソン病、本態性振せん、ジストニア又は強迫性障害を持つ患者の場合、脳の所定の領域、例えば、視床や脳底神経節内の神経細胞群が、病気のために活性となる、例えば、過剰に同期する。この場合、多くのニューロンが、同期して行動する能力を形成して、関係するニューロンが、過剰に同期して発火する。それに対して、健康な人では、ニューロンは、これらの脳領域では、質的に異なる形、例えば、関連しない形で発火する。
パーキンソン病の場合、例えば、視床や脳底神経節の病的に同期した活動は、別の脳領域、例えば、一次運動野などの大脳皮質の領域における神経活動を変化させる。この場合、視床及び脳底神経節の領域における病的に同期した活動は、それ自体、例えば、大脳皮質の律動を引き起こして、最終的に、これらの領域によって制御される筋肉が、病的な活動、例えば、律動性の震えを起こすこととなる。
薬剤で(もはや)治療することができない患者の場合、臨床的兆候に依存して、かつ病気が片側と両側のどちらで起こっているのかに依存して、片側又は両側に深部電極を埋め込んでいる。この場合、ケーブルは、皮膚の下を頭から所謂発生器まで通されており、この発生器は、バッテリーを備えたコントローラを有し、例えば、皮膚の下の鎖骨の領域に埋め込まれる。深部電極は、高周波の周期的な系列(100Hz以上の周波数のパルス列)の個別パルス、例えば、方形波パルスにより連続的な刺激を与えるために使用される。この方法の目的は、目標領域内におけるニューロンの発火を抑制することである。標準的な深部刺激がベースとする効果的なメカニズムは、未だ適切には説明されていない。多くの研究結果は、標準的な深部刺激が、可逆的な病巣の形成と同じ形態、即ち、組織の可逆的な脱同期化と同じ形態で作用することを示しており、標準的な深部刺激は、目標領域とそれに繋がった脳領域の両方又は一方内におけるニューロンの発火を抑制する。
このタイプの刺激は、発生器の消費電力が非常に大きくて、その結果バッテリーを含む発生器を、動作上僅か約1年から3年後に頻繁に交換しなければならないという欠点を有する。例えば、視床や脳底神経節の脳領域の非生理学的な(不自然な)入力としての高周波の連続的な刺激に対して、数年が経過する間に、関連する神経細胞群が順応してしまう可能性が有ることが、更に一層不利である。この場合、この順応の結果、同じ刺激による成功を達成するためには、刺激に関して、より大きな刺激振幅を使用しなければならなくなる。刺激の振幅を大きくする程、隣接する領域の刺激が、構音障害(言語障害)、感覚異常(場合によっては、大きな痛みを伴う偽の感覚)、小脳性運動失調(外部の補助が無いと安全に立っていることができない)、精神分裂症に似た症状などの副作用を起こす確率が、より大きくなる。これらの副作用は、患者が耐えることができない。従って、これらの状況では、治療は、その効果を数年後に失うこととなる。
特許文献1や特許文献2に記載されたような別の刺激方法の場合、各目標領域にデマンド制御にもとづき刺激を加えることを提案している。これらの方法/装置の目的は、標準的な深部刺激の場合のように、病的に同期した発火を抑制するだけでなく、生理学的に関連しない発火パターンにより近いものに変更することである。この目的は、一方では電力消費量を低減することと、他方ではデマンド制御による刺激を使用して、標準的な深部刺激と比べて組織に導入されるエネルギーの量を低減することにある。しかし、これらのデマンド制御による脱同期化方法には、それに関連した欠点も有る。
特許文献1によるデマンド制御による脱同期化刺激方法の欠点は、以下の事実から得られる。同期した神経細胞群を電気刺激により脱同期化するためには、目標領域において、特定の時間長の電気刺激が、精確に病気に関連した律動的活動の特定のフェーズに対して為されるように管理しなければならない。そのような正確さは、現在のところ、未だ確実には実験的に実現することができないので、組み合わせた刺激が使用されている。このような組み合わせた刺激の第一の刺激自体が、リセット、即ちリスタートによって脱同期化する個体群の動きを制御する一方、組み合わせた刺激の第二の刺激が、攻撃を受け易い状態の神経細胞群を攻撃して、それを脱同期化するものである。しかし、そのためには、監視の品質、即ちリセットの品質が適切であることが必須であり、そのことは、場合によっては、リセットのために大きな刺激を使用しなければならないことを意味する。しかし、副作用を低減する意味においては、このことを回避すべきである。しかしながら、刺激パラメータ、即ち個々の刺激の時間長と特に第一と第二の刺激間の休止期間を最適に選定した場合にのみ、所望の脱同期化効果が生じるということが、一層決定的である。それには、以下の難しい手順が有る。
1.時間のかかる較正手順が必要であり、典型的には30分以上かかる。
2.この時間のかかる較正手順により、深部電極に最も適した目標ポイントを手術中に選定するためには、特許文献1による脱同期化刺激の作用を使用することができない。
この目的のためには、特許文献1による脱同期化刺激の作用を、異なる目標ポイント に関して別々に試験しなければならず、各目標ポイント毎に別々の較正が必要となる。このことは、患者にとって許容できないほどに、電極の埋め込み時間を長くするものである。
3.比較的大きな変動、即ち、シナプス強度や発火率などの神経細胞個体群の活動を規定するパラメータでの変動が網様構造に起こった場合、再較正を実施しなければならない。このことは、較正の間に治療効果を達成することができないという欠点を有する。
4.特許文献1による脱同期化刺激方法は、脱同期化するニューロン個体群の発生頻度が、比較的大きく変動し難い場合しか行われないので、病気のために過剰となった同期 した活動が、大きく変化する発生頻度で短時間に起こる状況の病気、即ち、例えば癲癇の場合には使用することができない。
特許文献2にもとづくデマンド制御による脱同期化刺激方法の欠点は、以下の事実から得られる。同期した神経細胞群を電気刺激により脱同期化するために、複数の電極による刺激を実施している。個々の電極に短時間の高周波パルス列又は低周波パルス列を印加している。この結果、刺激されたニューロン個体群のフェーズがリセットされることとなる。様々な電極を通して刺激を加える回数は、刺激電極と関連したニューロン部分個体群間に等間隔のフェーズのずれが存在するように選定される。複数の電極を介して管理される、このような刺激が完了した後、ニューロン間の相互作用が病的に増大する結果、自動的に脱同期化が完了することとなる。
この方法は、速い較正とパラメータの変動に対する強さという利点を有し、その結果この刺激方法は、同期した活動が、大きく変化する発生頻度で短時間にしか起こらない状況にも使用することができる。しかし、特許文献2の方法も、以下の重大な欠点を有する。
1.関連するニューロン個体群での完全で一様なフェーズリセットを行うためには、各電極に、非常に強い刺激を加えなければならない。病的な相互作用が、等間隔のフェーズ設定でのみ、完全な脱同期化を生じさせることができるので、一様なフェーズシフトが必要である。しかし、副作用を低減するためには、非常に強い刺激の使用を回避すべきである。
2.特許文献2に記載された方法の一つの大きな特徴は、刺激全体を反復的に、場合によってはデマンド制御により加えることである。刺激された組織は、刺激全体の間に再同期する。このことは、脱同期化する神経個体群が、N個のクラスター状態(Nは、刺激に使用する電極の数を表す)と再同期の過渡的な状態の二つの非生理学的な状態の間において振動することを意味する。しかし、そのために、脱同期化する個体群は、病気に依存する症状と刺激に依存する副作用を低減するために目標とすべき、長い時間に渡っての望ましい脱同期化状態とはならない。
3.特許文献2に記載されたデマンドコントローラは、複雑な電子制御回路を持ち、負担のかかるコントローラを必要としており、大きな電力消費量が不可避である。
前述した刺激方法は、刺激信号として、個別パルス、高周波パルス列及び低周波パルス列を使用しており、これらの信号は、刺激されたニューロン特有の動きを抑制するか、フェーズリセットにより脱同期化するニューロン個体群をN個のクラスター状態に変化させるものである。刺激パルス列は、脱同期化するニューロン個体群特有の動きを利用することなく構成されており、その意味で脱同期化するニューロン個体群にとっては外部の非生理学的な信号である。病気の症状を抑制するためには、大きな強度で刺激パルス列を加えなければならず、それは、脱同期化するニューロン個体群自身を非生理学的な刺激と場合によっては副作用に順応させてしまうと予測することができる。
ドイツ特許出願明細書第10211766.7号 ドイツ特許出願明細書第10318071.0−33号 Elble R.J. and Koller W.C. (1990): Tremor, John Hopkins University Press, Baltimore
以上のことから、この発明の課題は、脳活動が病的に同期した患者を優しくかつ効果的に治療することを可能とする、脳の神経活動を脱同期化するための装置を提供することである。この場合の一つの目標は、非生理学的な連続した刺激に順応するのを抑制することである。長ったらしい較正プロセスを避けるべきであるとともに、病的に律動する活動の主要な発生頻度の成分が、大きく変動し易い場合でも、刺激を成功させるべきである。更に、この装置は、過渡的で、刺激に依存した非生理学的な状態を非常に大幅に防止する一方、長期間の脱同期化を達成することを目指している。この発明による装置は、デマンドコントローラを追加する必要はないが、第6.3節に記載する通り、任意選択的に追加してもよく、その結果簡単に実装することができるとともに、付加される電子制御回路の複雑性とそのため電力消費必要量が僅かである。この発明による刺激装置は、省電力モードで動作して、患者に埋め込む刺激器のバッテリーを運用上頻繁に交換する必要がないようにすることを目指している。
この課題は、請求項1の上位概念に関して、この発明にもとづき、請求項1の特徴部分に記載した特徴によって達成される。この課題は、フィードバック刺激信号として、脱同期化するニューロン個体群の測定、処理した活動を使用する形で(第3節参照)、脳領域の少なくとも二つの部分領域又は少なくとも二つの機能的に関連した脳領域内のニューロンに対して、各領域の活動が、少なくとも二本の電極を使用して、個々の刺激を異なる時間遅延を持たせて作用させることによって影響を与えることで達成され、その結果驚くべきことに、刺激されたニューロン個体群が完全に脱同期化され、そのため病気を持つ人の症状が抑制されることとなる。そのために、この発明による装置は、一つのセンサー3又は複数のセンサー3からの測定信号を記録し、その信号から、少なくとも二つの刺激信号を生成して、これらの刺激信号を電極2に送るコントローラ4を有する。
この発明による装置は、省電力モードで動作し、その結果患者に埋め込まれたバッテリーを頻繁に交換しなくてもよくなっている。
この発明による装置は、深部電極に最も適した目標ポイントを選定するために、手術中に脱同期化用刺激によって達成される効果を使用することが可能である。そのために、この発明による装置を用いて、深度電極を埋め込む間に、事前に自動的に計算した目標ポイントの領域において、事前にミリメートル間隔で試験的な刺激を実施する。最善の治療効果を得ることができる目標ポイントは、長期間埋め込むための目標ポイントとして選定される。更に、前述した病気と比較的一定の発生頻度で長く続く病的に同期した活動をしばしば持つ病気に加えて、病的に同期した活動が(短時間に起こり)断続的にしか起こらない病気も治療することができる。この場合の一つの重要な治療法は、薬剤で(もはや)治療することができない癲癇の治療である。例えば、この発明による装置は、パーキンソン病、本態性振せん、ジストニア、癲癇及び強迫性障害の疾患における脱同期化を実現するために使用することができる。
この発明の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
図面は、この発明の実施例を図示している。
図2a,b及びcでは、横座標は、秒単位での時間軸を表す一方、同期化の測定(図2a)、測定した神経活動(図2b)及び単一刺激の例(図2c)をプロットしており、各場合において、縦座標は任意の単位である。センサー3を用いて測定した神経活動(図2a)は、個々の刺激を生成するためのベースとして使用される。センサー3を用いて測定した神経活動(図2b)は、刺激を加えるための制御信号として使用される。
図3では、横座標は、秒単位での時間軸である一方、測定した神経活動と個々の刺激を、例えば、印加する電流に関して図示しており、各場合において、縦座標は任意の単位である。四本の電極2を介して、同じ極性の同じ刺激パターンを、しかし、例えば、等間隔で四つの異なる時間遅延を持つ形で加えている。
図4では、横座標は、秒単位での時間軸である一方、測定した神経活動と個々の刺激を、例えば、印加する電流に関して図示しており、各場合において、縦座標は任意の単位である。時間遅延の変化に代わって、個々の刺激の極性を変化させることもできる。例えば、時間遅延が同じであるが、極性が異なる刺激を、二本の第一の電極2を介して加えることができる。同様の手法で、時間遅延が異なり、極性も異なる刺激を、第三と第四の電極2を介して加えている。個々の刺激の各極性は、「+」と「−」記号で表示している。
図1に図示した装置は、生理学的な測定信号を検出するために、少なくとも二本の電極2と少なくとも一つのセンサー3とに接続された緩衝増幅器1を有する。この緩衝増幅器は、刺激用の光送信器5と繋がった信号処理・制御用ユニット4とも接続されている。光送信器5は、光導波路6を介して、信号生成用の刺激器ユニット8と繋がった光受信器7と接続されている。信号生成用の刺激器ユニット8は、少なくとも二本の電極2と接続されている。リレー9又はトランジスターが、電極2の緩衝増幅器1との入力領域に配置されている。このユニット4は、線10を介して、遠隔測定受信器12と繋がった遠隔測定送信器11と接続されており、この遠隔測定受信器は、埋め込まれている器具の外に配置されるとともに、データ13の可視化、処理及び保存用手段と接続されている。一つの例として、上皮質電極、深部電極、脳電極又は周辺電極をセンサー3として使用してもよい。
各電極2は、少なくとも二本の線を有し、その端部には、刺激のために電位差が印加される。これらは、大きな電極又は小さな電極としてもよい。これに代わって、各電極2を個別の線としてもよい。ここで、刺激のための電位差は、それぞれの場合において、個別の線と発生器の筐体の金属部分との間に印加される。更に、必須ではないが、病的な活動を検出するために、電極2間の電位差を測定することができる。別の実施形態では、電極2が、二本以上の個別の線で構成されてもよく、脳内の測定信号の測定と刺激の両方のために使用することができる。一つの例として、一本の導線ケーブル内に四本の線を収容してもよく、その場合様々な端部間において、電位差を印加又は測定することができる。このことにより、誘導又は刺激される目標領域の規模を変更することが可能となる。電極を構成する線の数は、上限方向に関して、損傷を与える脳物質を出来る限り小さくするとの目的を持って、脳に挿入するケーブルの線と関連した厚さによってのみ制限される。電極は、五本、六本又はそれ以上の線か、それとも僅かに三本の線を持ってもよいが、商業的に入手可能な電極は、四本の線を有する。
電極2が二本以上の線を有する場合、これらの線の中の少なくとも一本は、センサー3としても機能し、その結果電極2とセンサー3を単一の部品に統合した実施形態が得られる。電極2の線は、異なる長さを持ってもよく、その結果脳の異なる深さに差し込むことができる。電極2が、n本の線を有する(nは整数である)場合、少なくとも一対の線を介して、刺激を実施することができ、その場合対を構成するために如何なる線の組み合わせも可能である。この部品に加えて、電極2と物理的に統合されていないセンサー3を規定することも可能である。
一つの例として、かつ平易に言うと、この発明による装置は、第一ステップにおいて、センサーを用いて神経活動を測定するために使用される。第二ステップにおいて、時間遅延を持たせた形で、必要な場合神経活動を更に処理する形で刺激信号を生成する。そして、第三ステップにおいて、刺激用の少なくとも二本の埋め込んだ電極を介して、好ましくは異なる時間遅延を持たせた形で、これらの刺激信号を使用する。この刺激の結果、刺激された組織が脱同期化されることとなる。この発明による装置の操作方法の詳細は、第1節で説明する。
第6節に記載する通り、この発明による装置は、刺激印加に関して、様々な時間制御による実施形態で実現することができる。刺激印加に関する時間制御の変化形態は、恒常的な、反復的な、並びにデマンド制御による刺激印加である。
この発明による恒常的な刺激印加は、この発明による装置の一つの簡単な実施形態であり、第6.1節に記載する通り、追加的なデマンド制御を持たない形で動作し、刺激を恒常的に加えるものである。そのため、恒常的な刺激印加は、この発明による装置の一つの実施形態を表し、簡単に実現することができる。同時に、第5節に記載する、この発明による自律デマンド制御は、目標個体群に少ないエネルギーを導入する形で、恒常的な刺激の良好な脱同期化効果を提供する。
この発明による反復的な刺激印加の場合、この発明による装置は、特定の時間間隔の間だけ電極2に刺激信号を印加するようにプログラミングされたコントローラを有する。これらの時間間隔以外には、刺激は行われない。従って、制御ユニット4は、第6.2節に記載する反復的な刺激の実施形態では、刺激信号が、制御ユニット4により計算された時間長で、制御ユニット4により決定され、好ましくは周期的に交番するタイミングで生成されて、電極2に送出されるようにプログラミングされている。恒常的な刺激印加の場合と同様に、刺激信号の振幅の自律デマンド制御は、反復的な刺激印加でも行われる。
この発明によるデマンド制御での刺激印加の場合、この発明による装置は、追加のデマンドコントローラを有する。そのために、この発明による装置は、好ましくは電極2とセンサー3の両方又は一方の信号が病的であるかを識別する手段を備えており、病的なパターンが存在した場合、電極2を介して刺激を送出して、個々の電極2により刺激された部分個体群の病的な神経活動が、脱同期化されて、それにより生理学的に自然な活動に近づくようにしている。この病的な活動は、パターン、振幅、及び周波数成分の中の一つ以上における特徴的な変化により、健康な活動とは区別される。この場合、病的なパターンの識別手段は、電極2とセンサー3の両方又は一方からの測定信号を処理して、それらをコンピュータに保存したデータと比較するコンピュータである。このコンピュータは、データを保存するとともに、第6と7節にもとづき、較正と制御の両方又は一方の目的で使用することができるデータ保存手段を有する。例えば、制御ユニット4は、比較計算能力を持つチップ又はその他の電子機器で構成してもよい。
処理した神経活動における病的な特徴の出現と程度に依存して、第6.3節に記載する通り、デマンド制御による刺激印加の実施形態では、刺激信号を電極2に送り、その結果脳組織の刺激が行われる。この発明による装置は、センサー3を用いて測定した神経活動における病的な特徴の出現と程度の両方又は一方の識別手段を有する。制御ユニット4は、第6.3節に記載する通り、デマンド制御による刺激印加の実施形態において、刺激信号が、制御ユニット4によって規定されるタイミングで生成されて、電極2に送られるようにプログラミングされる。全体として、その目的は、この発明による装置の各手順に関連する、刺激の特性と強度に関するパラメータのすべてを、電極毎の印加に関する時間遅延と情報、並びにデマンド制御による操作法に関連する、センサー3を用いて測定された測定値又はそれらから導き出されたパラメータと一緒に保存することである。
制御ユニット4は、好ましくは以下の形態で電極2を駆動する。制御ユニット4から刺激5用の光送信器に制御データを送り、光送信器は、光ファイバー6を介して光受信器7を駆動する。光受信器7に対して制御信号を光で注入することは、刺激コントローラと電極2間の直流に関する絶縁を提供する。このことは、信号処理用ユニットとコントローラ4からの干渉信号が、電極2に混入するのを防止することを意味する。一つの例として、光受信器7として、光電セルを使用してもよい。光受信器7は、光送信器を介して刺激5のために入力された信号を、刺激器ユニット8に送る。次に、所定の刺激が、刺激器ユニット8と電極2を介して、脳内の目標領域に送られる。電極2が、測定目的にも使用される場合、刺激5用の光送信器からは、光受信器7を介して、リレー9も駆動され、それによって干渉信号の混入を防止している。リレー9又はトランジスターは、緩衝増幅器を酷使することなく、各刺激後直ぐに神経活動を再び測定することが可能であることを保証している。この直流に関する絶縁は、必ずしも制御信号の光による注入で実現する必要はなく、実際には、その他の代替となる制御プロセスを使用することもできる。一つの例として、それらは、例えば、超音波帯での音響による入力としてもよい。例えば、好適なアナログ又はデジタルフィルターを用いて、干渉の無い制御を実現することもできる。
更に、この発明による装置は、好ましくは信号を可視化及び処理するため、並びに遠隔測定受信器12を介してデータをバックアップするための手段13と接続される。この場合、このユニット13は、以降の記述で述べるデータ分析用の手法を有してもよい。
更に、この発明による装置は、例えば、器具の正常な動作を監視するとともに、場合によっては、パラメータを修正することにより、より効率的に第7.2節に記載する制御メカニズムを構成するために、遠隔測定受信器13を介して、追加の参照データベースと接続してもよい。
第1節では、刺激メカニズムを詳細に説明する。第2節の内容は、最も重要な用語の定義である。第3節では、神経活動の測定とその処理から刺激全体の生成までのプロセスステップを説明する。電極とセンサーの物理的な構成は、第4節の主題である。第5節は、刺激の振幅の自律デマンド制御を扱う。刺激印加の制御と刺激パラメータの較正及び調整は、第6節と第7節で記述する。この発明による装置の利点は、第8節で記載する。
第1節 刺激メカニズム
刺激の目的は、脱同期化によって、神経細胞個体群内における病気に依存した同期化に対抗することである。このことは、少なくとも二つのポイントに刺激を加えることによって行われ、その刺激は、神経活動を測定して、配備したプロセスステップにもとづき、それを刺激信号に変換し、好ましくは、時間遅延を持たせた形で印加することによって生成され、その結果驚くべきことに、脱同期化を生じさせることとなる。刺激の脱同期化効果は、ニューロン間の病気に依存した相互作用によって支援されるともに、その刺激効果は、刺激される組織と電極間の距離に応じて低下する。分かり易く言うと、影響を受ける系のエネルギーを活用して、最低限の関与により治療効果を達成するものである。この発明による装置は、脱同期化する神経細胞個体群を直接的に脱同期化状態に変化させる。所望の状態、即ち、完全な脱同期化は、典型的には数周期の神経活動以内、多くの場合一つの周期以内に起こる。
経験から、一旦刺激を停止すると、脱同期化する神経細胞個体群が、再び同期化するようになるので、典型的には、恒常的又は反復的な刺激に対する需要が存在する。刺激は、目標領域又は関連領域の神経活動に直接関連しているので、刺激の振幅は、脱同期化の成功後に自動的に最小化される。このことは、刺激作用として、フィードバック刺激信号、即ち、処理した神経活動を使用することによって可能である、つまり同期化の程度が、刺激の強さを恒常的に制御している。このプロセスは、修正可能であり、複雑な較正を必要とせず、誤り及び誤差に対して大きな許容度を持つ、刺激周期T、時間遅延、強度などの広い範囲の刺激パラメータに対して実施される。更に、神経活動と刺激パターン間の直接的な関係のために、脱同期化する組織に導入されるエネルギーの量は、最小限に抑えられて、それにより副作用が低減されるものと見込まれる。
以下の記述においては、この発明による装置とその動作を、例を用いて説明する。
この発明による装置及びコントローラは、この発明による治療プロセスのステップのすべてを実施することができる手段を備えている。従って、ここに開示する方法のステップは、その方法のステップを実施するための手段を暗に開示することも目指している。そのため、この発明による方法のステップは、同時に機能的な装置の特徴をも表す。
この発明にもとづき、臨床的兆候が生じる原因となっている脳領域に電極を差し込む。この発明にもとづき、当該の領域か、その領域と繋がった一つ以上の神経細胞個体群又は神経線維群に直接、少なくとも二本、好ましくは四本又は三本、或いはそれ以上の電極を差し込む。電極の数は、組織が、不必要に損傷されず、特に、電極の挿入時に出血する虞を低減するために、一つの脳領域内に無制限な電極の密集が生じないことを保証することが必要であることによってのみ制限される。如何なる場合でも、領域に差し込まれる電極の数をNとし、N≧2である。
この場合、各電極は、その周辺領域に対して、その周辺領域に直接的か、或いは神経線維群を介して伝えられるとともに、異なる領域での脱同期化を生じさせる信号を送出する。脱同期化を達成するために、刺激作用として、それぞれ時間遅延を持たせた形で、測定、処理した神経活動を使用する(第3節参照)。そのために、この発明による装置は、少なくとも二本の電極2を駆動するコントローラを有し、これらの電極は、それらの比較的近い周辺領域に刺激を送るか、線維群を介して別の脳領域に刺激を送るか、或いはその両方により、脱同期化を起こすものである。
この発明では、刺激電極2が、脱同期化する領域内に有ると仮定して、N本の電極(N≧2)は、好ましくは個々の電極信号間にT/Nの時間遅延を持つ形で駆動される。この場合、以下に記載する通り、Tは、脱同期化する律動的な神経活動の周期である。刺激電極2の中の少なくとも一本が、脱同期化する領域内に配置されていない場合、刺激位置とそのようにして影響を加えるニューロン個体群の位置との間の遅延時間は、このような電極2を駆動する際に考慮されなければならない。このことは、第7.3節に記載されている。従って、この発明による装置は、N本の電極の場合に、好ましくは脱同期化する活動の周期のほぼN分の1だけ時間をシフトさせた刺激信号を生成するコントローラを有する。この場合、時間シフトは、好ましくはほぼ等間隔である。
驚くべきことに、このように、それぞれN本の電極2によって影響を加えるニューロン個体群に対して等間隔に時間をシフトさせた場合、このことは、単に、ニューロン個体群を、それぞれが同期化しているN個の部分個体群に分割する結果とはならない。実際には、この刺激は、驚くべきことに、脱同期化するニューロン個体群全体を脱同期化させることとなり、それにより病的な症状を抑制することとなる。少なくとも一本の電極2が、脱同期化する領域の外に配置されている場合、第7.3節に記載した通り、間接的な刺激の効果を考慮しなければならない。
この新しい方法及び新しい装置は、前に従来技術で引用したものとは質的に異なる形で脱同期化を達成する結果となる。律動の攻撃を受け易いフェーズにおいて、病気により同期した神経細胞群に特化して作用させる代わりに、複数の位置で時間を調整した形で、関連する神経細胞群を単純に刺激して(第3.3節参照)、脱同期化が起こるようにしている。そのために、第3.2節に記載する通り、個々の刺激位置における神経活動プロセスを使用する。少なくとも二つ、好ましくは二つ以上の刺激位置に対して、刺激を加えなければならない。驚くほどに起こる脱同期化は、病気によって増大した、ニューロン間の相互作用と、刺激位置と刺激されるニューロン間の距離に応じて低下する刺激の効果とによって支援される。この場合、病気と関連した同期化の原因である効果のメカニズムを利用している。分かり易く言うと、最小限の関与により、治療効果を達成するために、影響を加えられる系のエネルギーを活用している。時間遅延がほぼ等間隔である形で刺激全体を使用する場合に、最善の結果が達成される。しかし、電極2を介して送出される刺激間の時間遅延が等間隔でない場合にも、治療の成功が達成される。このような場合、少なくとも部分的な脱同期化が達成される。選定する時間遅延が、より等間隔の時間遅延に近くなるほど、治療結果が、より良くなる。
第2節 用語の定義
目標個体群:
以下の記述において、目標個体群との表現は、埋め込んだ刺激電極によって直接刺激される神経細胞の個体群を意味する。
目標個体群は、その中又はその近くに埋め込まれた電極を用いて直接刺激される。
病気の結果同期して活動的となっている神経細胞個体群は、脱同期化する領域、脱同期化する神経細胞個体群、又は脱同期化するニューロン個体群と称される。脱同期化する領域は、解剖学的な境界とは関連しない。実際には、それは、少なくとも一つの構成部分を意味するものと解釈することもでき、以下のグループで構成される。
・少なくとも一つの解剖学的な領域の少なくとも一部
・少なくとも一つの解剖学的に完全な領域
脱同期化する領域を、直接的又は間接的に刺激してもよい。
直接刺激:
この場合、刺激電極2は、脱同期化する領域内に直接配置される。
この場合、この電極2は、脱同期化する領域内に配置された目標個体群に影響を加える。
間接刺激:
この場合、脱同期化する領域は、刺激電極2を用いて直接的には刺激されない。実際には、脱同期化する領域に対して、機能的に近くに繋がった目標位置又は線維群が、電極2を介して刺激される。この場合、刺激の効果は、好ましくは解剖学的な繋がりを介して、脱同期化する領域に伝えられる。目標領域という表現は、間接刺激に関しては、目標個体群と線維群に対する本来の用語として用いられる。以下の記述において、目標領域との表現は、脱同期化する領域に対して、機能的に近くに繋がったニューロン個体群及び埋め込まれた電極2によって直接刺激される連結線維群であると解釈する。
神経活動:
この発明による装置のメカニズムの記載は、基本的に神経活動という用語をベースとしている。脱同期化するニューロン個体群とその近くに繋がっているニューロン個体群の両方又は一方の神経活動は、第3.2節にもとづき、測定、保存及び処理されるとともに、刺激信号として使用され、そのようにして、この発明による自律デマンド制御を提供する。以下の記述において、脱同期化するニューロン個体群の測定した神経活動という表現は、脱同期化するニューロン個体群の活動の時間的な展開を示す信号を意味する。一つの例として、局所的な電場電位は、脱同期化するニューロン個体群の活動の時間的な展開を示すことができる。脱同期化する領域、例えば、異なる脳領域、この場合、一つの例として、運動野の神経活動と関連した活動や脱同期化する領域によって制御される筋肉群の活動を測定することも可能であるが、神経活動は、好ましくは脱同期化する領域において直接測定することができる。この発明による装置の別の実施形態では、脱同期化するニューロン個体群の神経活動を正しく示すものを得るために、神経活動を異なる位置で測定して、組み合わせる。これらの脱同期化する領域の神経活動と関連した変数は、以下の記述において、神経活動とも称される。
フィードバック刺激信号:
フィードバック刺激信号という表現は、第3.2節にもとづき、測定、処理した神経活動を表し、個々の刺激に関するベースとして使用される信号を意味する。
律動:
律動という表現は、病気のために、過剰に同期した神経細胞の活動から生じる律動的な、即ち、ほぼ周期的な神経活動を意味するために使用される。律動は、短時間に、或いは長く継続した形で起こることができる。
周期:
この発明による装置に関する中心的な一つの用語は、律動的な神経活動の周期であり、これは、個々の刺激を加えるための時間基準として使用される。第7.2.1節に記載する刺激周期Tの調整の結果、好ましくは律動的な神経活動の周期が、刺激周期Tに適合することとなる。
時間遅延:
この発明による装置は、第3.1節にもとづき測定し、場合によっては処理した神経活動に対して、遅れた時点に対応する信号を刺激電極2に送っている。この時間シフトは、以下の記述において、時間遅延と称され、律動的な神経活動の周期と関連した一つの重要な刺激パラメータを示す。
個々の刺激:
個々の刺激(第3.3節参照)という表現は、以下の記述において、単一の電極を介して印加され、時間間隔に渡って続く刺激作用を意味する。第3.2節にもとづき処理された神経活動は、これらの刺激作用に使用される。
刺激全体:
刺激全体は、電極を介して加えられる個々の刺激の全体である(第3.4節参照)。
第3節 刺激作用の特性
第3.1節 神経活動の測定
脱同期化する領域の神経活動の時間分布は、センサー3を用いて、直接的又は間接的に測定することができる。
センサー3(図1参照)は、脳内と脳外の両方又は一方に配置される。脳内では、センサーは、脱同期化する領域とそれと機能的に繋がった少なくとも一つの他の領域の両方又は一方に配置される。脳外では、センサー3は、例えば、震える筋肉上の電極として、病気のために同期化した神経活動と繋がった身体部分に配置される。神経性の活動と非神経性、例えば、筋肉活動の測定信号は、信号処理ユニット4で処理されて、保存される。この場合、これらの測定信号は、恒常的か、離散的な時間間隔か、或いはその両方で処理、保存することができる。後者の場合には、離散的な測定間隔の継続時間と時間的な隔たりは、決定論的なアルゴリズムと確率論的なアルゴリズムの両方又は一方を用いて決定される。
第3.2節 神経測定信号の処理
信号処理ユニット4内に保存された測定信号は、次に刺激信号として利用可能とするために処理される。以下の処理ステップが、実行される。
1.測定した神経活動をフィルターに通す、例えば、神経活動に対して、バンドパスフィルター処理を実行する。例えば、別のニューロン個体群から病気特有でない活動が、病気特有の活動に加えて、センサー3により測定される場合、このフィルター処理が必要である。病気特有の活動は、典型的には、病気特有でない活動の周波数範囲と異なる周波数範囲で起こるので、この場合、好ましくは病気特有の周波数範囲における活動が決定される。これは、例えば、周波数分析により行われる。同様に、ウェーブレット分析、ヒルベルト変換、時間領域におけるフィルター処理の中の一つ以上を実行することが必要な場合も有る。
2.脱同期化するニューロン個体群の神経活動を、複数のセンサー3を用いて測定する場合、測定した神経活動の線形的/非線形的な組み合わせ/変換、例えば、関数の乗算、加算又は演算を行うことができる。
3.測定した神経活動を時間的に遅延させる。この目的で使用される時間遅延は、第3.3と3.4節に定義されるとともに、第7.3節にもとづき、脱同期化するニューロン個体群に関する刺激電極の位置をも考慮する。更に、時間遅延は、好ましくは刺激の間に、第7.2.1と7.2.2節にもとづき調整することができる。
4.測定した神経活動を増幅する。測定した神経活動の絶対値は、経験的に刺激効果をもたらすとされる刺激振幅よりも数桁小さい。そのため、増幅を実施する必要があるとともに、刺激の間に、第7.2.3節にもとづき増幅を調整することができる。
5.大きな勾配の信号は、神経の動特性に対して大きな効果を持つので、測定した神経活動を、例えば、短い方形波パルスで構成されるパルス列又は高周波パルス列の形で符号化する。刺激効果を増大させるために、その他の符号化法を使用することもできる。
6.神経活動の極性を変更する。一つの例として、このことは、図4に図示した刺激全体に対して用いられる。
7.刺激信号の最大振幅を制限する。
8.それに対して、正味の導入される電荷がほぼ零となる刺激信号を生成するために、測定した神経活動を変換する。
上記の3項以外の1,2,4〜6項は、任意選択により用いることができる。
処理した神経活動は、前記の処理ステップの所望の組み合わせにより決定される。
第3.3節 個々の刺激の形式
以下の記述では、個々の刺激という表現は、単一の電極を介して加えられ、時間間隔を開けて行われる刺激作用を意味する。フィードバック刺激信号、即ち、第3.2節にもとづき処理した神経活動を、これらの刺激作用のために使用する。
この場合、時間的に調整した刺激という表現は、一つの例として、刺激する部分個体群間及び脱同期化するニューロン個体群の部分個体群内の脱同期化を起こすために、第3.4節に記載した通り、各電極2を介して、それぞれ好適な時間遅延、好ましくは異なる時間遅延で、かつまた異なる継続時間で個々の刺激を加えることを意味する。時間遅延は、例えば、発振している脱同期化する神経活動の周期の分数として表され、好ましくはその周期のほぼN分の一の倍数である(Nは、小さい整数で、例えば、4である)。この場合、Nは、整数で、好ましくは1000以内、特に好ましくは100以内、特には10以内である。
個々の刺激の時間遅延は、例えば、刺激周期Tよりも大きく選定することができる。そのために、この発明による装置は、前記の手法で前記の電気刺激作用を加える手段を有する。これらの手段は、電極2と、それらの刺激を送るために電極2に制御信号を送出するコントローラ4である。更に、センサー3と、神経活動を記録して、刺激作用として別途使用するために準備する信号処理ユニット4である。電極2を介して加えられる個々の刺激は、刺激全体とも称され、この発明による装置の作用メカニズムにもとづき、脱同期化するニューロン個体群の脱同期化を実行する。
刺激全体の例は、図3と4に図示されている。個々の刺激の一つは、好ましくは一つの刺激全体の過程の中で、各電極を介して送出される。
刺激全体を反復的に加える場合、刺激全体の過程の中で駆動される電極2を変更してもよい。特に、各刺激全体に対して駆動される電極2の部分集合は、確率論的なアルゴリズムと決定論的なアルゴリズムの両方又は一方を用いて選定することができる。
第3.4節 刺激全体のパターン
刺激全体を加える過程の中で、少なくとも二本の刺激電極2を介して、好ましくは各個々の刺激電極2を介して、一つの個々の刺激を加える。刺激全体は、好ましくはその正味の導入される電荷がほぼ零となるような形で生成される。個々の刺激は、第3.3節に記載された形をとってもよい。
様々な電極2を介して加えられる個々の刺激は、例えば、増幅率によって決まる、その特性と強度の両方又は一方に関して異なってもよいが、異なる必要もない。そのために、この発明による装置は、個々の刺激の特性と強度の両方又は一方を変化させることができるようにプログラミングされたコントローラを有する。個々の刺激の特性と強度は、第3.2節に記載された処理ステップに関して使用されるパラメータによって決まる。
一つの例として、N本の電極2を介した直接刺激の場合、第3.2節にもとづく、同じ処理された神経活動の形での同じ個々の刺激を、それぞれ時間遅延の差をT/N(Tは刺激周期である)として加えることができる。一つの例として、図3に図示した通り、N=4に対して、第一、第二、第三及び第四の電極2を介して、それぞれT/4だけシフトさせた時間遅延を持たせる形で、同じ連続した刺激作用を管理することができる。
そのために、この発明による装置は、個々の刺激をN本の電極2で駆動し、その時間遅延が、ほぼT/Nの倍数であるようにプログラミングされたコントローラを有する。
別の例として、刺激印加に関する時間遅延を、個々の刺激の極性変化に置き換えることができる。そのために、この発明による装置は、それぞれ電極2の中の少なくとも一本を交番する極性で駆動することができるようにプログラミングされたコントローラを有する。例えば、図4に図示された通り、N=4に対して、第一と第二の電極2を介して逆の極性を持つ形で、そして第三と第四の電極2を介してT/4の時間遅延を持つ形で、それぞれ一対の個々の刺激を加えることができる。
これに対する代替形態としては、例えば、特に第6.3節に記載されるデマンド制御による刺激印加の場合、刺激全体の中で、個々の刺激の時間遅延、極性、印加継続時間及び強度の中の一つ以上を体系的に、或いはランダム制御の形で、即ち、決定論的又は確率論的な法則にもとづき変化させてもよい。そのために、この発明による装置は、刺激全体の中で、個々の刺激の時間遅延、極性、印加継続時間及び強度の中の一つ以上を決定論的又は確率論的に変化させて駆動するようにプログラミングされたコントローラを有する。
刺激全体の中で、個々の刺激の時間遅延、極性、印加継続時間及び強度の中の一つ以上を変化させることによって、同じ治療効果を達成するために刺激の強度を増大させることとなる神経個体群内における順応プロセスを回避することが可能である。
第4節 電極とセンサーの数と空間的な構成
第4.1節 刺激電極の数
電極2の数は、二つの対抗する目的を折衷したものである。
一方において、脱同期化するニューロン個体群は、刺激の際に出来る限り多くの機能的な部分個体群に分割すべきである。刺激のために使用する電極の数が多くなる程、このことは、より良く達成される。他方において、埋め込む電極の数は、不必要な組織の損傷、特に埋め込み時の脳の出血を防止するためには、出来る限り少なくすべきである。少なくとも二本の電極を使用してもよい。一つの例として、三本の電極を使用することも可能である。四本の電極を使用した場合、脱同期化が、より顕著にかつより長く持続するので、特に四本の電極を使用することが可能である。電極の数を五本又は100本以上にまで増大した場合、脱同期化効果が、程度と継続時間に関して改善される。例えば、微小電極と最新のニューロチップ技術の両方又は一方を使用する場合、より多くの数の電極を使用することが可能である。
第4.1.1節 すべての電極2を脱同期化する神経細胞個体群に配置する状況での実施形態
好ましくは、N本の電極(Nは、1より大きい整数)は、個々の電極が、それぞれ脱同期化する細胞個体群の約N分の一を刺激することができるように配置すべきである。このことは、それぞれ異なる数の電極と電極の異なる幾何学的な配置により実現することができる。一つの例として、所望の非対称的な配置を選定することが可能である。しかし、特に、少ない数の電極を使用する場合には、ほぼ対称的な配置が好ましく、この場合、電極間の間隔を同じにすることが可能であり、それにより導入する電力を最小限にして、刺激に依存した同等の部分個体群への機能的な分割が可能となる。一つの例として、電極に沿って突き出た電極の端点がほぼ四角形を構成してもよい。一つの例として、六本の電極を使用することも可能である。この場合、好ましくは、四本を、一つの平面上にほぼ四角形に配置する一方、その他の二本を、この平面に対して直角で、ほぼ等間隔に配置し、これらの接続線が、ほぼ四角形に配置された四本の電極の回転対称軸を構成するようにする。電極の中の少なくとも数本の長さが、異なって、異なる幾何学的な配置を形成してもよい。従来技術にもとづき、例えば、電極の端部から異なる距離に刺激接点を配置することによって、複数の刺激電極を一本の刺激電極に統合して埋め込むことが可能である。このことにより、少ない数の電極を埋め込んで、同じ刺激効果を達成し、それにより脳における損傷の発生を低減することが可能となる。
第4.1.2節 少なくとも一本の電極2を脱同期化する神経細胞個体群に配置しない状況での実施形態
この刺激構成では、脱同期化する領域とは異なる、少なくとも一つの目標領域において刺激が実施される。この場合、脱同期化する神経細胞個体群と同一ではないニューロン個体群の刺激と脱同期化する神経細胞個体群と繋がった線維群の刺激の両方又は一方によって、間接刺激を行うことができる。この場合、目標領域、例えば、脱同期化する領域には、少なくとも一本の電極2か、第4.1.1節に記載した複数本の電極構成を使用することができる。
第4.2節 センサーの数
この発明による装置のメカニズムは、第1と3節に記載した通り、脱同期化するニューロン個体群の測定、処理した神経活動を更に刺激として加えることでほぼ構成される。センサー3は、この発明による装置の最も重要な構成要素の中の一つであり、第3.1節に記載した通り、脱同期化するニューロン個体群の外か、好ましくは脱同期化するニューロン個体群に直接配置してもよい。脱同期化するニューロン個体群の活動を検出するために、好ましくは一つのセンサー3だけを使用する。このことは、埋め込むセンサーの数を出来る限り少なく保って、不必要な組織の損傷、特に埋め込む際の脳出血を防止するものである。しかし、脱同期化するニューロン個体群の神経活動を、測定した活動の組み合わせとしてより一層完璧に再構成するために、例えば、二つ以上のセンサーを使用することも可能である。
更に、センサー3と刺激電極2を一本の埋め込み電極に統合することによって、埋め込みにより生じる可能性の有る脳の損傷が一層低減又は防止されるとともに、刺激効果が改善される。
第4.2.1節 すべてのセンサー3を脱同期化する神経細胞個体群に配置する状況での実施形態
センサー3は、好ましくは、脱同期化する神経細胞個体群の大部分をセンサーを用いて検出することができるように配置される。このことは、脱同期化する組織に対して、センサーの異なる幾何学的な配置により達成することができる。一つのセンサー3だけを配置する場合、例えば、それを組織の中心に配置してもよい。第4.1.1節に記載した通り、複数のセンサーを配置する場合、刺激電極に関して述べたのと同様の手法でセンサーを配置してもよい。
第4.2.2節 センサー3の中の少なくとも一つを脱同期化する神経細胞個体群に配置しない状況での実施形態
この構成による活動の測定では、脱同期化する領域と同一ではない少なくとも一つの領域において、脱同期化するニューロン個体群の神経活動と関連した活動を測定する。この場合、第3.1節に記載した通り、脱同期化する神経細胞個体群と同一ではないニューロン個体群、脱同期化する神経細胞個体群と繋がった線維群及び身体部分の中の一つ以上の活動を測定することによって、間接測定を行うことができる。
第5節 刺激振幅の自律デマンド制御
この発明による装置のメカニズムの最も重要な特徴の一つは、脱同期化する領域に加える刺激信号の振幅の自律デマンド制御である。ここに述べる自律制御は、処理した神経活動で構成される個々の刺激を加えることによって実施される。脱同期化する領域に比較的強い同期した活動が存在する場合、当業者に周知の通り、測定した神経活動が大きく変化することを想定することができる。このことは、刺激の振幅を増大させた形の、この発明による時間遅延させた刺激に直接繋がる。脱同期化を達成した後は、変化の小さい神経活動だけが想定され、その結果刺激の振幅は、直接影響を受けて、自動的に低下される。再同期化が再び起こった場合、この発明による装置は、神経活動におけるより大きな変化を、より強い個々の刺激の形成に結び付けることによって、脱同期化する刺激に対する要求が増大したことを自動的に考慮することができる。このことは、この発明による装置の自律デマンド制御を示すものである(図2c参照)。
この自律デマンド制御がベースとするメカニズムは、この発明による装置のすべての実施形態において使用され、以下の記述の中でより詳しく記載する。
第6節 刺激印加の制御
刺激印加の時間制御という表現は、好ましくは刺激器ユニット8を用いて、刺激全体を特定の形態で印加するように、予めプログラミングされた、この発明による装置の一つの実施形態を意味している。刺激印加の時間制御の変化形態は、恒常的な、反復的な及びデマンド制御による刺激印加である。更に、例えば、患者又は医者が、刺激の印加を行うことにより、手動デマンド制御を実施することができる。
第6.1節 恒常的な刺激印加
恒常的な刺激印加の場合、この発明による装置は、刺激信号を電極2に連続して加えるようにプログラミングされたコントローラを有する。恒常的な刺激印加は、最も容易に実現される、この発明による装置の最も単純な実施形態を示す。同時に、この発明による自律デマンド制御は、第5節に記載した通りの恒常的な刺激による良好な脱同期化効果をもたらす一方、目標個体群に僅かなエネルギーしか導入しない。
恒常的な刺激印加の間、第7.2.3節にもとづき、強度パラメータを調整することができる。同様に、恒常的な刺激の間に、刺激強度の調整と共に、又はそれと独立して、第7.2.1及び7.2.2節にもとづき、時間パラメータ(刺激周期Tと時間遅延の両方又は一方)を調整することができる。
第6.2節 反復的な刺激印加
反復的な刺激印加の場合、この発明による装置は、特定の時間間隔の間にのみ電極2に刺激信号を加えるようにプログラミングされたコントローラを有する。これらの時間間隔以外には刺激は行われない。
反復的な刺激印加の場合、厳密に周期的な時間ベース又は非周期的な時間ベースにより、刺激全体を管理することができる。この実施形態では、この発明による装置は、刺激間隔間の時間的な隔たりと間隔の継続時間の両方又は一方を周期的か、非周期的か、或いはその両方により監視するようにプログラミングされたコントローラを有する。脱同期化する個体群の所望の脱同期化された状態を達成するために、時間的に周期的でない刺激全体のシーケンスは、確率論的なアルゴリズムと決定論的なアルゴリズムの両方又は一方を用いて生成することができる。刺激と測定の間隔は、それらが、重なり合う、同時に起こる、或いは別々の時間に起こるように構成してもよい。
反復的な刺激印加の間、第7.2.3節にもとづき、強度パラメータを調整することができる。同様に、反復的な刺激の間に、刺激強度の調整と共に、又はそれと独立して、第7.2.1及び7.2.2節にもとづき、時間パラメータ(刺激周期Tと時間遅延の両方又は一方)を調整することができる。
第6.3節 デマンド制御による刺激印加
デマンド制御による刺激印加の場合、この発明による装置は、脱同期化するニューロン個体群の特定の状態に対応する形態で、刺激信号のオンとオフを切り換えるようにプログラミングされたコントローラを有する。一つの例として、以下に記載した通り、刺激を切り換える。
脱同期化するニューロン個体群の活動をセンサー3を用いて測定する。この神経活動を、特に病的な特性を識別する手段として動作する、信号処理と閉ループ制御の両方又は一方のためのユニット4に送る。信号処理・閉ループ制御ユニット4が、神経活動における病的な特徴を識別すると直ぐに、刺激全体の印加が開始される。加えた刺激の効果の結果として、病的な特徴が消滅すると直ぐに、好ましくは刺激が停止される。信号処理・開ループ/閉ループ制御ユニット4の一つの可能な実施形態では、この発明による装置は、臨床的兆候に関するデータを保存して、測定データと比較するためのデータ保存媒体を備えたコンピュータを有する。臨床的な兆候に関するデータという表現は、例えば、センサー3を用いて測定した神経活動の瞬間的な周波数、デマンド制御による刺激印加用の手順に必要な閾値、刺激強度を規定する刺激パラメータなどの刺激に関連するパラメータ及び測定変数を意味するものとする。病的な特徴という表現は、例えば、脱同期化するニューロン個体群の病気に依存した同期化を意味し、神経活動の以下の特徴によって識別することができる。
a)例えば、第3.1節及び第4.2.1節に記載された直接測定において、センサー3を用いて、専ら又は主に脱同期化するニューロン個体群、このニューロン個体群の近くに繋がるニューロン個体群、神経系又は筋肉組織の近くに繋がる部分の中の一つ以上の病的な活動を測定する場合、神経活動の振幅が、閾値を超えているか否かを決定するために、この神経活動を直接使用する。そのため、この発明による装置は、一つの好ましい実施形態において、閾値に対応した神経活動の振幅値を識別するための手段を備えている。この場合、神経活動自身、その絶対値、その振幅の中の一つ以上は、好ましくは閾値と比較される。この実施形態では、閾値を識別するための手段は、例えば、神経活動自身、その絶対値、その振幅の中の一つ以上を閾値と比較するようにプログラミングされる。振幅は、簡単な形態では、信号の絶対値の決定と、バンドパスフィルター処理とそれに続くヒルベルト変換又はウェーブレット分析の両方又は一方によって求められる。この場合、信号処理・閉ループ制御ユニット4は、信号の絶対値を決定するか、ヒルベルト変換とウェーブレット分析の両方又は一方を伴うバンドパスフィルター処理を行うか、その両方を実施することができるようにプログラミングされる。振幅の計算は、当業者に周知の通り、著しく多くの計算処理を伴い、振幅の決定は、神経活動の単一の測定値では行うことができず、十分に長い時間間隔で実行しなければならず、そのため病的な特徴の識別を幾分遅らせる可能性があるので、特に好ましくは、神経活動又はその絶対値を使用する。
b)例えば、第3.1節及び第4.2.2節に記載された間接測定の場合の通り、この脱同期化するニューロン個体群の病的な活動と共に、例えば、別のニューロン個体群による、病気特有でない活動が、センサー3を用いて追加的に測定される場合、神経活動の分析の間にアルゴリズムによる更なるステップを導入しなければならない。そのためには、病気特有の活動は、典型的には病気特有でない活動の周波範囲とは異なる周波数範囲で起こるので、好ましくは、病気特有の周波数範囲における活動を評価するのが好適である。病気特有の活動の周波数は、例えば、連続するトリガー点間の差分を決定することによって求めることができる。トリガー点とは、最大値、最小値、変曲点、零交叉点などの点である。この分析は、好ましくは、スライドする時間窓を使用して、複数の時間差分の平均値を取り、それにより安定性を改善する形で行われる。それに代わって、当業者に周知のスペクトル評価法又はその他の周波数推定器により、周波数の評価を決定することができる。そのために、この発明による装置の一つの特別な実施形態は、スペクトル評価法、ウェーブレット分析などの、病気特有の周波数範囲における活動を評価するための手段を有する。一つの例として、このことは、周波数分析を実行するための手段によって実現される。例えば、病気特有の周波数範囲のスペクトルエネルギーを、スライドする時間窓を用いて求めることができる。これに代わって、バンドパスフィルター処理後に、バンドパスフィルターを通した信号の最大値の決定又はバンドパスフィルターを通した信号の絶対値の平均値の決定と、或いはそれに続くヒルベルト変換又はウェーブレット分析によって、病気特有の周波数範囲の振幅を求めることができる。そのために、この発明による装置は、例えば、振幅をバンドパスフィルター処理するための手段、並びにバンドパスフィルターを通した信号の最大値を決定するための手段と、バンドパスフィルターを通した信号の絶対値の平均値を決定するための手段と、ヒルベルト変換とウェーブレット分析の両方又は一方を実行するための手段の中の一つ以上を有する。
一つの例として、デマンド制御による刺激印加のために、同じ刺激全体を常に使用する。刺激周期Tは、好ましくは、第7.2.1節に記載する通り、脱同期化するニューロン個体群の瞬間的な周波数に適合したものである。病的な特徴が存在する場合、瞬間的な周波数に適合した刺激周期Tで刺激を加える。同様に、第7.2.2節にもとづき、時間遅延を調整することができ、この場合、刺激の強度は、好ましくは一定に保たれる。しかし、第7.2.3節の通り、刺激の効果に応じて、強度パラメータを修正することができる。
第6.3.1節 要求条件の規定
少なくとも二つの理由により、病的な特徴の程度と病気特有の症状の間には一義的な関係は存在しない。一方では、センサー3と測定する神経活動が起こっている脱同期化する領域との間の距離は、病気特有の周波数範囲内の振幅を変化させることとなる。他方では、病気特有の特徴の特定の程度、即ち、病気特有の周波数範囲における律動的な活動の程度は、病気特有の症状と明らかに関連しているわけではない。病気特有の律動は、脳内の複雑な神経網に影響を与えるとともに、この神経網は、その上典型的には、単純に線形的な動特性法則を満たすわけではないので、病気特有の律動と症状の程度との間には、明らかな関係は存在しない。例えば、病気特有の律動が、生体力学的に予め決まった四肢の固有周波数に十分に良く適合していない場合、病気特有な律動によって生じる震えは、病気特有の律動が、生体力学的に予め決まった四肢の固有周波数に適合して共振する場合よりも大幅に小さくなる。
優位周波数や振幅などの、測定した神経活動の特徴的な特性は、当業者に周知の経験的な範囲内に有る。センサー3を用いて測定した神経活動の病気特有の特徴の程度の値は、閾値と称され、それを上回った場合、典型的には、例えば、震えなどの症状が発現することとなる。この閾値は、第6.3節に記載した通り、デマンド制御による刺激印加の実施形態に対して選定しなければならないパラメータである。そのため、この発明による装置は、制御ユニット4の形式の、閾値を識別するための手段を有する。この発明のデマンド制御による刺激印加方法は、この発明による装置の有効性が、閾値の選定に決定的には依存せず、例えば、病気特有の特徴の最大限の程度の50%までの範囲内における、閾値の選定に関して広い誤差許容範囲を有するという利点を生じさせるものである。閾値の選定は、手術中に、或いは好ましくはセンサー3を用いた神経活動の測定操作後の初めの数日内に、病気特有の特徴の程度を決定して、症状の程度、例えば、震えの強度と比較する形で行われる。
デマンド制御による刺激印加の余り好ましくはない実施形態では、閾値として、患者で測定した閾値の範囲の代表値、例えば、平均値を採用する。
好ましい実施形態では、閾値の選定は、ほぼ定期的な間隔、例えば、六ヶ月検査の過程の中で点検される。
第6.2節に記載したデマンド制御による刺激強度による反復的な刺激の実施形態では、閾値の検出は不要である。
前述した三つの刺激方法は、好ましくは、第7.2節に記載する刺激パラメータの調整方法と様々に組み合わせで使用することができる。
この発明による独自の自律デマンド制御は、三つの刺激方法すべてに共通の特徴である。刺激信号と測定した神経活動間の直接的な関係の結果、第5節に記載した自律デマンド制御が行われて、それにより目標個体群に導入されるエネルギー量が最小限となる。この自律デマンド制御は、第6.3節に記載した追加的なデマンド制御と第7節に記載するパラメータの較正及び閉ループ制御の実施とは独立して行われる。
第7節 パラメータの較正と調整
以下の記述は、すべての電極3が、脱同期化するニューロン個体群に配置されているとの仮定にもとづいている。少なくとも一本の電極が、脱同期化するニューロン個体群の外に配置されている状況は、この節の最後で別途考察する。一つの例として、この発明による装置のパラメータである、刺激信号の周波数(この逆数は、刺激周期に対応する)、個々の刺激の時間遅延及び個々の刺激の強度に対して、較正及び調整を実行することができる。
第7.1節 刺激開始時の刺激パラメータ
第7.1.1節 周波数、刺激周期
装置を事前に操作していない場合の周波数の選定において、各臨床的兆候に対する病的な神経活動の周波数範囲は、当業者に周知である(非特許文献1)。好ましくは、この周波数範囲から、平均値を取ることができる。これに代わって、平均値の代わりに、データベースから、年齢と性別にもとづく周波数期待値を使用することができる。
この発明による装置の成功した操作のためには、予め決める初期周波数を脱同期化するニューロン個体群の活動の実際に起こっている周波数に適合させる必要はない。第7.2.1節に記載する刺激周期Tの制御は、正しい周波数値とは大きく異なる初期値を使用する場合でも機能する。この場合、大きく異なるとは、値が、少なくとも10桁大きすぎる、或いは小さすぎることを意味する。そのため、これに代わって、好ましくは、当業者に周知である、病気に関して典型的な周波数範囲内に有る周波数値から開始することも可能である。刺激開始時の周波数値は、好ましくは各患者に個別に適合させることによって取得することもできる。このことは、例えば、刺激の前の神経活動の測定と、第6.3節のb)に記載した脱同期化するニューロン個体群の活動の優位周波数の評価とにより行ってもよい。
装置を事前に操作している場合の周波数の選定において、装置を事前に操作していた間の周波数の平均値を、周波数の開始値として選定する。
両方の場合、即ち、装置を事前に操作していない場合と操作している場合において、刺激周期Tは、周波数の開始値の逆数として計算される。
第7.1.2節 時間遅延
個々の刺激の時間遅延は、好ましくは刺激周波数と刺激周期Tの初期設定後に決められる。時間遅延は、好ましくは刺激周期Tの分数として選定され、好ましくは各個々の刺激に対して、異なる時間遅延が指定される。時間遅延は、好ましくは、時間遅延間の差が、刺激周期Tの分数に対応するように決定され、その結果時間遅延が等間隔の状況では、時間遅延間の差は、T/Nの倍数となる。しかし、等間隔の時間遅延は、脱同期化するニューロン個体群の脱同期化の成功に必要なことではない。刺激周期Tの分数の倍数に対応し、刺激周期Tを超える場合もある時間遅延を選定することも好ましい。第7.2.2節に記載する時間遅延の調整は、時間遅延の少なくとも幾つかが、刺激周期Tを超える前述した状況においても機能する。
第7.1.3節 強度
個々の刺激の強度を決定する刺激パラメータ(例えば、フィードバック刺激信号の増幅率)の初期値は、当業者に周知の経験値(例えば、5Vの最大振幅)にもとづき規定される。第7.2.3節に記載する強度制御は、最善の強度値から大きく異なる初期値を使用する場合でも機能する。この場合、大きく異なるとは、値が、少なくとも10桁大きすぎる(最大振幅5V)、或いは小さすぎることを意味する。そのため、これに代わって、当業者に周知の範囲内に有る強度値から開始することも好ましい。特に、刺激信号に対して、低い強度値、例えば、0.5Vの最大振幅で刺激を開始し、このようにして、刺激の副作用を出来る限り低減するようにすることが好ましい。より強い刺激信号を使用する必要が有る場合、第7.2.3節に記載する通り、小さいステップで強度を増大させることができる。
このようにして、周波数と強度の初期値を予め決定することができるが、特に、時間のかかる較正の過程において、予め決定する必要はない。
第7.2節 刺激パラメータの調整
第7.2.1節 刺激周期Tの調整
脱同期化する領域又はその近くに繋がる領域において、神経活動を測定して、処理後に、刺激信号として使用する。一つの例として、パーキンソン病の場合、センサー3を用いて測定する代わりに、上皮質センサーを用いて、それに続く領域、例えば、運動前野における活動の測定を、脱同期化する領域で直接行うこともできる。優位な平均周期は、以下の記述に記載する長さの時間窓で決定される。この目的のために、様々なアルゴリズムを使用することができる。例えば、瞬間的な周期は、測定した神経活動の二つの連続した最大値間の時間差として求めることができる。例えば、先ずは神経活動の平均周波数を評価して、平均周波数の逆数として刺激周期Tを規定することも可能である。センサー3を用いて、病気特有の活動だけが測定されるわけではない場合、この形式の周波数評価のためには、その病気に特有の周波数範囲をバンドパスフィルター処理することによって、先ずは病気特有の活動を抽出しなければならない。これに代わって、一つの例として、第6.3節に述べた周波数推定器を用いて、周波数を決定することができる。この周波数評価に使用する時間窓は、上限値に対して制限が無く、例えば、病気に関連した活動の10000周期、好ましくは1000周期、特に好ましくは100周期、或いはその他の所望の値に対応する長さを有する。
第7.2.2節 時間遅延の調整
第3.3、3.4及び7.1.2節に記載した通り、個々の刺激に対する時間遅延は、典型的には刺激周期Tの分数として選定される。一つの例として、時間遅延は、刺激の間固定してもよいし、或いは好ましくは第7.2.1節にもとづき調整した刺激周期に適合させてもよい。弱い刺激強度で最適な脱同期化を達成することを可能とするために、個々の刺激の時間遅延は、好ましくは決定論的又は確率論的なアルゴリズムを用いて、刺激の間に変更される。この目的のために、この発明による装置は、刺激の間に個々の刺激の時間遅延を変更することが可能な、制御ユニット4の形式の手段を有する。更に、例えば、一つの刺激周期内だけでなく、複数の周期に渡って、時間遅延を変化させることができる。この場合、個々の刺激は、その前の幾つかの時間周期に測定された処理された神経活動に対応する。
第7.2.3節 強度の調整
センサー3は、脱同期化するニューロン個体群の活動を示す神経活動を測定するために使用される。この神経活動は、信号処理と制御の両方又は一方の目的のためのユニット4に送られる。信号処理・制御ユニット4は、各回に加えられる刺激全体の強度が、神経活動の病的な特徴の程度に依存する形で、第6節にもとづき、恒常的な、反復的な、又はデマンド制御による刺激を実行する。好ましくは、この目的のために、強度を調整することができる。刺激強度と病的な特徴の程度との間の関係は、刺激成功の関数として手動により、或いは自動的に制御することができる。病的な特徴の程度は、以下の形態により、自由に変更可能であり、好ましくは一定で、各刺激の一定の時間間隔前に終了する長さの時間窓において決定される。
a)センサー3を用いて、専ら又は主に脱同期化する病的な活動とその近くに繋がる神経又は筋肉活動の両方又は一方を測定する状況において、同期化程度の振幅は、脱同期化するニューロン個体群に対応する。そのため、振幅が、病的な特徴を示す。この場合、信号の最大値を決定するか、信号の絶対値の平均値を用いるか、バンドパスフィルター処理とそれに続くヒルベルト変換又はウェーブレット分析によって、振幅を評価することができる。特に好ましくは、ヒルベルト変換又はウェーブレット分析を用いた振幅の計算は、非常に大きな計算の複雑さを伴い、その精度が、アルゴリズムのパラメータの正しい選択に依存するので、最初の二つの変化形態(信号の最大値の決定又は信号の絶対値の平均値の決定)を使用する。
b)病気特有の活動だけでなく、更に、例えば、その他のニューロン個体群の、病気特有でない活動を測定するために、センサー3を使用する場合、病的な特徴の程度を評価するために、神経活動を直接使用することはできない。病気特有の活動は、典型的には病気特有でない活動の周波数範囲と同一でない周波数範囲内で起こるので、この状況では、好ましくは病気特有の周波数範囲における活動を評価する。このことは、例えば、周波数分析により行う。例えば、病気特有の周波数範囲のスペクトルエネルギーを決定することができる。これに代わって、バンドパスフィルター処理後に、バンドパスフィルターを通った信号の最大値を決定するか、信号の絶対値の平均値を決定するか、それに続くヒルベルト変換又はウェーブレット分析によって、振幅を求めることができる。
所望の効果が達成されない、即ち、目標個体群が、相応の程度にまで脱同期化されず、そのため神経活動の病的な特徴が、閾値以下に低下しない場合、刺激の最大強度を、安全性の理由から厳しく予め決められている最大値、例えば、5Vにまで徐々に(例えば、50周期毎に0.5Vきざみで)増大させる。このために、この発明による装置は、神経活動の変化を識別して、神経活動に変化が無い場合により大きな値の方向に刺激信号を調整するコントローラを有する。約20の周期に渡り刺激が成功した後、この装置は、刺激が依然として成功しているという条件の下に、刺激の最大強度を徐々に(例えば、50周期毎に0.5Vきざみで)低下させ始めることができる。上記のプロセスの間に、刺激が成功したことが決定される。この場合、コントローラは、神経活動の変化とそれによる刺激の成功を識別するようにプログラミングされている。最大刺激強度は、脱同期化するニューロン個体群を相応に脱同期化するために、好ましくは神経活動の10〜1000周期の時間スケールで制御される。
上で規定した刺激強度値と独立して、刺激信号の振幅は、第5節に記載した、この発明による装置の刺激メカニズムの特徴の結果として、脱同期化の成功後において、自動的に最小化される。
第7.3節 少なくとも一本の電極2を脱同期化するニューロン個体群に配置しない状況の刺激パラメータ
第3.3節に記載した、電極2を脱同期化するニューロン個体群に配置しない状況の通り、脱同期化するニューロン個体群は、第4.1.2節に記載された通り、間接刺激を介して影響を受ける。間接刺激の場合、一方の刺激されるニューロン個体群と他方の脱同期化されるニューロン個体群との間の伝導時間の絶対値が、それぞれ異なる場合があるため、先ずは、脱同期化刺激を行う前に、各伝導時間を測定する。そのために、それぞれ一本の刺激電極2を介して、刺激を行い、脱同期化するニューロン個体群に配置されたセンサー3を用いて、刺激の応答を測定する。このことは、間接刺激用に使用される刺激電極2すべてに対して、個別にn回行う(nは、典型的には、例えば、200までの小さい整数である)。それにより、好ましくは以下の形態により、平均的な伝導時間を評価する。
個々の刺激の印加それぞれに対して、j番目の電極2を介した刺激印加の開始と刺激応答又は刺激応答の絶対値における最初の最大値との間の時間間隔τj (k) を決定する。τj (k) において、添字jは、j番目の電極2を示す一方、添字kは、k番目に加えられる刺激を表す。
次に、これとは別に、間接刺激用に使用される各刺激電極2に関して、以下の式1を使用して、刺激の開始と刺激の応答との間の平均時間間隔を求める。
Figure 2007534357
この場合、Lj は、j番目の刺激電極2を介して加えられる刺激の番号である。しかし、Lj は、間接刺激用に使用される刺激電極2すべてに関して同じである必要はない。
このようにして刺激に関して求めた伝導時間
Figure 2007534357
は、以下の形態で考慮される。
間接刺激において、刺激が、j番目の刺激電極2を介して、時間遅延tで、脱同期化するニューロン個体群の直接刺激によって加えられる場合、刺激は、間接刺激用のj番目の刺激電極2を介して、時間遅延
Figure 2007534357
で管理され、この場合、tは、第7.2.2節にもとづき行うことができる通り、
Figure 2007534357
より大きくなければならない。
刺激開始時の刺激パラメータと刺激の間の制御メカニズムの決定は、伝導時間
Figure 2007534357
を上記の通り考慮した上で、第7.1と7.2節に記載した通りと完全に同様である。
第8節 利点
この発明による装置は、既存の装置、例えば、特許文献2の装置に対して、以下の多くの利点を有する。
1.この発明による装置の主要な利点は、生理学的な刺激、詳しくはフィードバック刺激信号、即ち、脱同期化するニューロン個体群の測定、処理した神経活動を刺激のために使用することである。それにより、第5節に記載した刺激振幅の自律デマンド制御が実行され、そのため脱同期化するニューロン個体群に導入されるエネルギー量が最小化され、従って副作用が最小化されることとなる。
2.第5節にもとづく刺激振幅の自律制御のために、デマンド制御による刺激振幅にもとづき、刺激用に省電力の信号が使用されるだけでなく、この発明による刺激制御用に必要な制御装置において、エネルギーの節約も期待することができるので、この発明による装置の操作は、電力を節約することとなる。これにより、患者にとって負担となるバッテリー交換に必要な間隔をより長くすることが可能となる。
3.刺激強度をデマンド制御して反復的又は恒常的に印加する実施形態は、この方法では閾値を検出する必要がないので、特に有利である。そのため、この実施形態は、著しく簡単なアルゴリズムで実施することができる。従って、そのソフトウェアとハードウェアの両方又は一方の実現は、非常に単純なものとなる。
4.デマンド制御による刺激強度及び直接刺激によって、脱同期化するニューロン個体群を恒常的又は反復的に刺激する場合、較正が不要となる、即ち、刺激パラメータを体系的に変更させた一連の試験的な刺激を行う必要がなく、そのため較正時間がより短くなる。
5.この発明にもとづき実行する較正は、直接刺激の場合、第7.2節に記載した通り、刺激操作の過程でパラメータを最適化して、試験的な刺激無しに刺激操作を開始することが可能なので、より速く、誤差により強く、より簡単である。較正を速く行うことができるので、そのため深部電極2の配置を最適化して、手術中においてさえ、この発明による装置を使用することができる。このことにより、配置の良し悪しに関するパラメータとして、症状、例えば、震えの程度に対する脱同期化用刺激の効果を直接活用することが可能となる。
6.この発明による較正は、この発明による較正の過程において使用する周波数及び伝導時間推定器が、バンドパスフィルターの制限及び特性などのパラメータに敏感に依存しないので、誤差に対して強い。そのため、この実施形態は、著しく簡単なアルゴリズムで実現することができる。従って、そのソフトウェアとハードウェアの両方又は一方の実現は、非常に単純なものとなる。
7.全体として、一つの主要な利点は、強度、刺激周期及び時間遅延のパラメータの評価に対する、この発明による装置の汎用的な許容度と堅牢性である。
8.この発明による装置は、電極と刺激する領域間の距離の関数として相違する可能性の有る刺激効果を使用していることと、脱同期化するニューロン個体群のニューロン間の病的に増大する連鎖を使用しているために、脱同期化する領域を脱同期化された所望の状態に安定化させることとなる。この状態は、恒常的に実現され、そのため脱同期化する領域を生理学的な状態に非常に近い状態である。一つの例として、再同期化とクラスター状態との間を行き来する変動無しに、長く続く脱同期化が達成される。
例:
一つの例として、例えば、四ヶ所で刺激を行う場合、四本の電極を介して、以下の刺激を送ることができる。
1.図3に図示された通り、各電極を介して、刺激信号をそれぞれT/4だけ時間をずらせた形で(Tは、脱同期化するニューロン個体群の律動の平均周期である)、フィードバック刺激信号、即ち、処理された神経活動を加える。
2.図4に図示された通り、電極1と2を介して、時間遅延は同じであるが、極性が異なる刺激信号を加える。同様に、電極3と4を介して、極性が異なる形の同じ刺激信号を加える。
一つの例として、第6節に記載した三つの異なる制御メカニズムにより刺激を行い、従って、第7節に記載した通り、刺激の印加は、好ましくはデマンド制御による、そのため省電力で優しい(副作用を防止した)刺激を可能とするものである。
1.恒常的な刺激印加:恒常的(図2参照)に、好ましくは刺激周期を調整した形で刺激を行う。一つの例として、図2から分かる通り、脱同期化するニューロン個体群の脱同期化は、刺激の印加後直ぐに起こる。このことは、測定した神経活動の振幅を最小化する(図2b参照)。同時に、一つの例として、図2cから分かる通り、第5節に記載した自律デマンド制御メカニズムのために、刺激振幅が最小化される。刺激が停止されると、個体群内のニューロン間の病的な相互作用のために、暫くして再同期化が起こる。
2.刺激全体のデマンド制御による刺激印加(即ち、刺激の開始及び停止時間のデマンド制御による選定):神経細胞個体群の同期化が閾値を超えた場合、第6.3節に記載された通り、次の刺激全体が、電極を介して送られる。
3.反復的な刺激印加:すべての電極を介して、反復的な刺激を調和した刺激の下で実行する。この場合、刺激の強度は、ニューロン個体群の同期化の強度に適合される。同期化が大きい程、調和した刺激をより強くする。この変化形態では、好ましくは、個々の刺激間の時間遅延として、T/4ではなく、τ/4を選択することができる(Tは、刺激の無い場合の律動の周期であり、τは、刺激により引き起こされる律動の周期である)。言い換えると、1/τは、個々の刺激を加えるための刺激信号の周波数である。この結果、系が従うべき重要な刺激パラメータだけとなる。これを複雑な較正の過程において好適な形で決定する代わりに、刺激によって指示されるようにしている。更に、この形式のデマンド制御による刺激は、関連する領域のニューロンが、(病気のために)周期的な発火又は爆発(活動電位グループの律動的な生成)となる傾向を持つという事実を利用している。このため、印加する周波数に関して、脱同期化するニューロン個体群の神経活動の同調化を達成することが可能である。
上で例として記載した三つの制御方法すべてにおいて、第5節に記載した通り、自律デマンド制御は、目標個体群に導入するエネルギー量を最小化させる結果となる。この場合、好ましくは、目標領域の神経細胞個体群又はその近くに繋がる別の神経細胞個体群の周波数を測定することによって、重要な刺激パラメータである、個々の刺激間の刺激周期Tとそのため時間遅延だけを調整することが可能である。
特に方法1(恒常的な刺激)の場合、比較的大きな周波数変動の場合においてさえ、時間のかかる較正が不要なことと効果を安定化させることとは、以下の重要な結果をもたらす。
1.刺激の成功は、手術中に深部電極を挿入している間、直ぐに確認することができる。このことにより、好適な目標ポイントの発見を著しく改善することが可能となる。従来のデマンド制御方法では、電極当り30分以上続く較正プロセスが必要であった。それは、手術中に実行することができず、(麻酔されていない)患者には受け入れ可能なことではない。
2.この新しい刺激方法は、病的な律動の発生頻度が大きく変動する神経性及び精神性の病気に対しても使用することができる。特に、この新しい方法は、間欠的に起こる(即ち、短い時間で起こる)律動を脱同期化するためにも使用することができる。このことは、この新しい方法が、より多くの病気に、特に癲癇の場合にも使用することができることを意味する。
この発明による装置を用いて、この新しい方法により、好適な脳領域を脱同期化することによって、以下の病気及び症状を治療することができる。
病的な神経の同期化が、病気特有の症状の程度と関連した役割を果たす、すべての神経性及び精神性の病気の場合、例えば、パーキンソン病、本態性振せん、ジストニア、強迫性障害、多発性硬化症の場合の震え、強打又はその他の組織の損傷、例えば、視床と脳幹神経節の両方又は一方の領域における腫瘍による組織損傷の結果としての震え、舞踏病アテトーゼ、癲癇である(但し、この一覧は、制限することを意図したものではない)。
一つの例として、現在使用されている高周波連続刺激の標準的な方法では、以下の目標領域が使用されている。パーキンソン病の場合には視床下核を、或いは震えが支配的なパーキンソン病の場合には視床、例えば、視床腹側部中間視床を使用している。本態性振せんの場合、視床、例えば、視床腹側部中間視床を使用している。ジストニア及び舞踏病アテトーゼの場合、内淡蒼球を、癲癇の場合、視床下核、小脳の視床核領域、例えば、視床腹側部中間視床、或いは尾状核を使用している。強迫性障害の場合、内包又は中隔側坐核を使用している。
一つの例として、各病気に対して上に挙げた目標領域は、この発明による装置に対して選定してもよい。この発明による装置では、較正が不要か、較正を非常に速く行うことができるので、そのため、電極を埋め込むプロセスの過程において、この発明による装置の脱同期化効果がより一層良く現れる代替の目標領域を試験することが可能である。
同様に、この発明は、この発明による装置の前述した操作方法を制御するコントローラと、パーキンソン病、本態性振せん、ジストニア、強迫性障害、多発性硬化症の場合の震え、強打又はその他の組織の損傷、例えば、視床と脳幹神経節の両方又は一方の領域における腫瘍による組織損傷の結果としての震え、癲癇などの病気を治療するために、この発明による装置及びコントローラを使用することを含む。
この発明による装置は、上記の神経性及び精神性の病気に対する恒常的な治療のために埋め込むことと、手術中の目標ポイントの診断、即ち、電極を埋め込むための最適な目標ポイントを手術中に発見することの両方のために使用することができる。
この発明による装置の図 一つの刺激間隔の間の同期化測定の波形図であり、低い(高い)値は、低い(高い)同期に対応する。刺激は、2秒の時点で開始し、25秒の時点で終了する。 図2aの刺激の間に、センサー3を用いて測定した神経細胞の神経活動の波形図 図2aの刺激の間に、電極2を介して加えられる個々の刺激の波形図 四つの電極を介して四つの異なる時間遅延で刺激パターンを一回加えた例 四つの電極を用いて二つの異なる時間遅延と異なる極性で刺激を一回加えた例

Claims (75)

  1. 脳の神経活動を脱同期化するための装置において、
    脱同期化するニューロン個体群の活動の時間的な推移を表す信号を測定するための少なくとも一つのセンサー(3)と、
    少なくとも二本の電極(2)と、
    センサー(3)からの測定信号を記録するとともに、その信号を用いて、少なくとも二つの刺激信号を生成して、電極(2)に送るコントローラ(4)と、
    を備えていることを特徴とする装置。
  2. コントローラ(4)は、当該の測定信号に対して時間的に遅れた刺激信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の装置。
  3. コントローラ(4)は、N本の電極(2)に、少なくとも幾つかの時間遅延が異なる刺激信号を送ることを特徴とする請求項2に記載の装置。
  4. コントローラ(4)は、時間遅延がほぼ等間隔である刺激信号を生成することを特徴とする請求項2又は3に記載の装置。
  5. コントローラ(4)は、時間遅延が当該の測定信号の周期Tの分数又は分数の倍数に等しい刺激信号を生成することを特徴とする請求項2から4までのいずれか一つに記載の装置。
  6. コントローラ(4)は、センサー(3)を使用して、脱同期化するニューロン個体群の活動の時間的な推移を直接的に測定することを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の装置。
  7. コントローラ(4)は、センサー(3)の中の少なくとも一つを使用して、当該の神経活動の時間的な推移を間接的に測定することを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の装置。
  8. コントローラ(4)は、センサー(3)の中の少なくとも一つを使用して、脱同期化する領域によって影響を受ける筋肉群の活動の時間的な推移を測定するか、脱同期化する領域と関連したニューロン個体群の活動の時間的な推移を測定するか、或いはその両方を測定することを特徴とする請求項7に記載の装置。
  9. コントローラ(4)は、当該の活動の時間的な推移を恒常的に測定することを特徴とする請求項6から8までのいずれか一つに記載の装置。
  10. コントローラ(4)は、当該の活動の時間的な推移を離散的な測定時間間隔で測定することを特徴とする請求項6から8までのいずれか一つに記載の装置。
  11. コントローラ(4)は、決定論的アルゴリズムと確率論的なアルゴリズムの両方又は一方を用いて、離散的な測定間隔の継続時間と時間的な隔たりの両方又は一方を制御することを特徴とする請求項10に記載の装置。
  12. コントローラ(4)は、当該の測定信号を保存することを特徴とする請求項1から11までのいずれか一つに記載の装置。
  13. コントローラ(4)は、当該の測定信号を処理することを特徴とする請求項1から12までのいずれか一つに記載の装置。
  14. コントローラ(4)は、当該の測定信号をフィルター処理することを特徴とする請求項13に記載の装置。
  15. コントローラ(4)は、当該の測定信号に対して、時間領域において、周波数分析、ウェーブレット分析、バンドパスフィルター処理、フィルター処理、ヒルベルト変換の中の一つ以上を行うことを特徴とする請求項13又は14に記載の装置。
  16. コントローラ(4)は、当該の測定信号を線形的な形と非線形的な形の両方又は一方で、変換するか、組み合わせるか、その両方を行うことを特徴とする請求項13から15までのいずれか一つに記載の装置。
  17. コントローラ(4)は、当該の測定信号を増幅することを特徴とする請求項13から16までのいずれか一つに記載の装置。
  18. コントローラ(4)は、当該の刺激信号の最大振幅を制限することを特徴とする請求項1から17までのいずれか一つに記載の装置。
  19. コントローラ(4)は、当該の測定信号の極性を変化させることを特徴とする請求項13から18までのいずれか一つに記載の装置。
  20. コントローラ(4)は、当該の測定信号を時間的に符号化することを特徴とする請求項13から19までのいずれか一つに記載の装置。
  21. コントローラ(4)は、当該の測定信号をパルス列として符号化することを特徴とする請求項20に記載の装置。
  22. コントローラ(4)は、当該の測定信号を無線周波数のパルス列として符号化することを特徴とする請求項21に記載の装置。
  23. コントローラ(4)は、導入される正味の電荷が、ほぼ零となる刺激信号を生成することを特徴とする請求項13から22までのいずれか一つに記載の装置。
  24. コントローラ(4)は、当該の測定信号から個々の刺激を生成することを特徴とする請求項1から23までのいずれか一つに記載の装置。
  25. コントローラ(4)は、個々の刺激に関して、少なくとも二本の電極(2)を駆動することを特徴とする請求項1から24までのいずれか一つに記載の装置。
  26. コントローラ(4)は、異なる個々の刺激に関して、少なくとも二本の電極(2)を駆動することを特徴とする請求項1から25までのいずれか一つに記載の装置。
  27. コントローラ(4)は、異なるプロセスステップで生成される個々の刺激を生成することを特徴とする請求項26に記載の装置。
  28. コントローラ(4)は、個々の電極(2)の刺激位置とその電極によって刺激されるニューロン個体群の位置との間の伝導時間における差分を検出することを特徴とする請求項1から27までのいずれか一つに記載の装置。
  29. コントローラ(4)は、個々の電極(2)の個々の刺激の時間遅延を計算する際と測定信号を処理する際の両方又は一方において、関連する伝導時間を含めることを特徴とする請求項28に記載の装置。
  30. コントローラ(4)は、刺激全体に関する信号を電極(2)に送り、それらの信号が、個々の刺激に関する信号から構成されることを特徴とする請求項1から29までのいずれか一つに記載の装置。
  31. コントローラ(4)は、刺激全体の過程において、N本の電極(2)の中の少なくとも二本の電極(2)に、それぞれ一つの個々の刺激を送ることを特徴とする請求項30に記載の装置。
  32. コントローラ(4)は、導入される正味の電荷がほぼ零となる刺激全体を生成することを特徴とする請求項30又は31に記載の装置。
  33. コントローラ(4)は、刺激全体を加える過程において、N本の電極(2)すべてに対して、時間遅延がほぼ等間隔である信号を送ることを特徴とする請求項30から32までのいずれか一つに記載の装置。
  34. コントローラ(4)は、刺激全体における個々の刺激の順番、特性、強度及び導入するエネルギーの中の一つ以上を、決定論的なアルゴリズムと確率論的なアルゴリズムの両方又は一方を用いて決定、変化させることを特徴とする請求項30から33までのいずれか一つに記載の装置。
  35. コントローラ(4)は、刺激全体の過程において駆動する電極(2)を変化させることを特徴とする請求項30から34までのいずれか一つに記載の装置。
  36. コントローラ(4)は、決定論的なアルゴリズムと確率論的なアルゴリズムの両方又は一方を用いて、刺激全体の過程において駆動する電極(2)を変化させることを特徴とする請求項35に記載の装置。
  37. 電極(2)の中の少なくとも数本が、異なる長さを持つことを特徴とする請求項1から36までのいずれか一つに記載の装置。
  38. コントローラ(4)は、刺激信号を恒常的に加えることを特徴とする請求項1から37までのいずれか一つに記載の装置。
  39. コントローラ(4)は、刺激信号を反復的に加えることを特徴とする請求項1から38までのいずれか一つに記載の装置。
  40. コントローラ(4)は、離散的な刺激時間間隔で、刺激全体を加えることを特徴とする請求項39に記載の装置。
  41. コントローラ(4)は、決定論的なアルゴリズムと確率論的なアルゴリズムの両方又は一方を用いて、離散的な刺激時間間隔の継続時間と時間的な隔たりの両方又は一方を制御することを特徴とする請求項39又は40に記載の装置。
  42. コントローラ(4)は、追加のデマンドコントローラを有することを特徴とする請求項1から37までのいずれか一つに記載の装置。
  43. コントローラ(4)は、デマンド制御のために、センサー(3)を用いて測定した測定信号を使用することを特徴とする請求項42に記載の装置。
  44. コントローラ(4)は、センサー(3)を用いて測定した測定信号の振幅を使用することを特徴とする請求項42又は43に記載の装置。
  45. コントローラ(4)は、センサー(3)を用いて測定した測定信号の振幅を、測定信号自身、測定信号の絶対値、病気特有の周波数範囲をバンドパスフィルター処理した測定信号、病気特有の周波数範囲をバンドパスフィルター処理した測定信号の絶対値及びバンドパスフィルター処理後にヒルベルト変換とウェーブレット分析の両方又は一方により求めた瞬間的な振幅の中の一つ以上を使用して評価することを特徴とする請求項42から44までのいずれか一つに記載の装置。
  46. コントローラ(4)は、センサー(3)を用いて測定した測定信号における病的な特徴を検出している間に、刺激全体を加えることを特徴とする請求項42から45までのいずれか一つに記載の装置。
  47. コントローラ(4)は、センサー(3)を用いて測定した測定信号の振幅が閾値を超えたことを検出することによって、病的な特徴を検出することを特徴とする請求項42から46までのいずれか一つに記載の装置。
  48. コントローラ(4)は、センサー(3)を用いて測定し、病気特有の周波数範囲をバンドパスフィルター処理した測定信号の振幅が閾値を超えたことを検出することによって、病的な特徴を検出することを特徴とする請求項42から47までのいずれか一つに記載の装置。
  49. コントローラ(4)は、スライドする時間窓内において、センサー(3)を用いて測定した測定信号の振幅を閾値と比較して、病的な特徴を検出することを特徴とする請求項42から48までのいずれか一つに記載の装置。
  50. コントローラ(4)は、追加の手動式デマンドコントローラを有することを特徴とする請求項1から49までのいずれか一つに記載の装置。
  51. コントローラ(4)は、脱同期化するニューロン個体群の瞬間的な周期に刺激周期Tを適合させることを特徴とする請求項1から50までのいずれか一つに記載の装置。
  52. コントローラ(4)は、トリガー点間の時間差を評価するか、周波数評価器を用いるかのどちらかによって、脱同期化するニューロン個体群の瞬間的な周期を決定することを特徴とする請求項51に記載の装置。
  53. コントローラ(4)は、脱同期化するニューロン個体群の平均的な周期に刺激周期Tを適合させることを特徴とする請求項1から50までのいずれか一つに記載の装置。
  54. コントローラ(4)は、刺激信号の時間遅延を刺激周期Tに適合させることを特徴とする請求項2から53までのいずれか一つに記載の装置。
  55. コントローラ(4)は、刺激の強度を調整することを特徴とする請求項1から54までのいずれか一つに記載の装置。
  56. コントローラ(4)は、脱同期化するニューロン個体群が相応に脱同期化されるように、神経活動の10〜1000周期の時間スケールで刺激の強度を制御することを特徴とする請求項55に記載の装置。
  57. コントローラ(4)は、刺激の強度を制御するために、刺激信号の増幅率を変化させることを特徴とする請求項55又は56に記載の装置。
  58. コントローラ(4)は、刺激の強度と病的な特徴の程度との間の関係を手動により設定するか、刺激成功の関数として自動的に制御するか、或いはその両方を行うようにプログラミングされていることを特徴とする請求項55から57までのいずれか一つに記載の装置。
  59. コントローラ(4)は、N本の電極(2)の中の少なくとも数本の電極をそれぞれ駆動して、脱同期化するニューロン個体群を直接刺激することと、神経線維束を介して脱同期化するニューロン個体群と繋がっているニューロン個体群を刺激することと、脱同期化するニューロン個体群と繋がっている神経線維束を刺激することの一つ以上を行うことを特徴とする請求項1から58までのいずれか一つに記載の装置。
  60. 少なくとも一本の電極(2)が、少なくとも一つのセンサー(3)と構造的に一体化されていることを特徴とする請求項1から59までのいずれか一つに記載の装置。
  61. コントローラ(4)は、測定・刺激間隔を、それらが、重なり合うか、同時に起こるか、或いは時間的に分離された形に構成されていることを特徴とする請求項1から60までのいずれか一つに記載の装置。
  62. 請求項1から61までのいずれか一つに記載の装置に関する手順を実行するためのステップを制御するようにプログラミングされていることを特徴とするコントローラ。
  63. ニューロン個体群の病気と関連した発火と関係する病気及びその発火に伴う病気の両方又は一方を治療するために、請求項1から61までのいずれか一つに記載の装置を使用すること。
  64. パーキンソン病、本態性振せん、ジストニア、強迫性障害及び癲癇を含む病気を治療するために、請求項63に記載の通り装置を使用すること。
  65. ニューロン個体群の病気と関連した発火と関係する病気及びその発火に伴う病気の両方又は一方を治療するために、請求項62に記載のコントローラを使用すること。
  66. パーキンソン病、本態性振せん、ジストニア、強迫性障害及び癲癇を含む病気を治療するために、請求項65に記載の通りコントローラを使用すること。
  67. ニューロン個体群の病気と関連した発火と関係する病気及びその発火に伴う病気の両方又は一方を治療するための方法において、
    臨床的兆候の程度と関連する神経活動又は生理学的な特徴の信号を測定して、これらの信号を、臨床的兆候を発生させている脳領域とそれらの近くに繋がっている脳領域の両方又は一方に加える電気的な刺激信号を生成するために使用することを特徴とする方法。
  68. パーキンソン病、本態性振せん、ジストニア、強迫性障害及び癲癇を含む病気を治療するために、臨床的兆候の程度と関連する神経活動又は生理学的な特徴の信号を測定して、これらの信号を、臨床的兆候を発生させている脳領域とそれらの近くに繋がっている脳領域の両方又は一方に加える電気的な刺激信号を生成するために使用することを特徴とする請求項67に記載の方法。
  69. 当該の刺激信号を、時間遅延を持たせた形で加えることを特徴とする請求項67又は68に記載の方法。
  70. 当該の刺激信号を、当該の測定信号の刺激周期Tの分数又は分数の倍数である時間遅延を持たせた形で加えることを特徴とする請求項67から69までのいずれか一つに記載の方法。
  71. 脱同期化するニューロン個体群の活動の推移を直接的に測定することを特徴とする請求項67から70までのいずれか一つに記載の方法。
  72. 当該の神経活動の時間的な推移を間接的に測定することを特徴とする請求項67から71までのいずれか一つに記載の方法。
  73. 当該の刺激信号を恒常的に、周期的に、或いはデマンド制御にもとづき加えることを特徴とする請求項67から72までのいずれか一つに記載の方法。
  74. 当該の刺激信号を、請求項51から58までのいずれか一つに記載の特徴にもとづき適合させることを特徴とする請求項67から73までのいずれか一つに記載の方法。
  75. 刺激の目標ポイントを見出すために、請求項1から61までのいずれか一つに記載の装置又は請求項62に記載のコントローラを使用すること。
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