JP2007530573A - ドライアイの治療にロテプレドノールエタボネートを使用すること - Google Patents

ドライアイの治療にロテプレドノールエタボネートを使用すること Download PDF

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Abstract

治療を必要としている患者の中位から重篤までのドライアイの治療方法、すなわち眼科で許容できる担体中のロテプレドノールエタボネートを、患者に局所投与することを含んでなる方法を本願の実施態様で開示する。

Description

ドライアイは、乾性角結膜炎(KCS)としても広く知られており、毎年、何百万人ものアメリカ人が冒されるよく知られた眼科の疾患である。その症状は、特に、受胎能の停止に続いて起こるホルモンの変化が原因で閉経後の女性に広がっている。ドライアイは、個体ごとに、重症度が異なっている。軽度の症状の患者は、灼熱感、乾燥感、及び例えば眼瞼と眼の表面との間に入りこんだ小物体によって起こることが多い持続性の刺激を経験することがある。重篤な症状の場合は、視力がかなり低下することがある。シェーグレン病などの他の疾患は、ドライアイが合併症として現れる。
ヒトの眼の表面は、通常、涙液膜で被覆され、その涙液膜は、表面の薄い脂質層(主としてマイボーム腺の分泌物から誘導される)、中間のかさ高の水性層(涙腺から分泌されるタンパク質、電解質及び水からなっている)及び最も中側の粘液層(眼の表面の上皮細胞が分泌するムチンから誘導される)で構成されている。
安定な涙液膜は、快適さを確保しかつ眼の光屈折面として働く。さらに、涙液膜は、機械的外傷による微生物の感染及び炎症が起こらないようにする眼表面のバリヤーとして働く。涙液膜不全症は、ドライアイと呼称されるが、涙腺による涙の分泌の減少及び/又は脂質層の欠乏又は瞬目の異常による蒸発損失の増大が原因でおこることがある通常の臨床問題である。軽度のドライアイの患者は、いらいらさせる眼の刺激があることを訴える。シェーグレン症候群などの重篤なドライアイの患者は、持続する障害性の眼の刺激を経験しそして眼表面の上皮の疾患及び視覚を脅かす無菌又は微生物による角膜潰瘍を発生することがある。
コルチコステロイド類は、毛細血管の透過性、大血管が無い平滑筋(nonvascular smooth muscle)の収縮及び血管拡張を仲介する各種の走化性の物質又は因子を阻害する強力な非特異的抗炎症剤である。さらに、コルチコステロイド類は、浮腫、フィブリンの沈着、白血球の遊走及び食細胞の活性を阻止することによって炎症を抑制する。
局所用コルチコステロイド類は、各種の眼科症状に対して有用であり、眼瞼結膜と眼球結膜、角膜及び眼の前部のステロイド反応性炎症の治療に使用するように指示されている。コルチコステロイド類は、眼の炎症に対する局所用剤として広く使われているが、大部分のものが、安全性と危険性の両面を有しているので、より広範囲に利用しにくくなっている。コルチコステロイドによる治療に付随する通常の危険性は、眼圧(IOP)の上昇である。さらに、局所用コルチコステロイド類を常用すると、白内障が発生することがある。ロテプレドノールエタボネート(Loteprednol etabonate)は、不活性代謝産物へ予測可能な変換をする部位活性コルチコステロイドとして設計された化合物である。ロテプレドノールエタボネートは不活性な代謝産物に比較的速く代謝されるので、このコルチコステロイドの安全性は改善されている。この特長によって、Lotemax(登録商標)( ロテプレドノールエタボネートの眼科用懸濁剤、0.5%)は、炎症性の眼の症状に使用する優れた候補になっている。
数年間で、ドライアイの患者は、扁平上皮化生と呼称される眼表面の上皮細胞の病的変化を発生すること分かってきている。未報告の研究が、このプロセスが、眼表面の上皮細胞の増殖、異常分化及び炎症の増大が原因であることを示唆している。正常な細胞とは対照的に、これらの化生細胞は、通常、眼表面をコートして感染及び機械的外傷を防ぐバリヤーを形成する粘液を産生しない。このことから、眼表面は、乾燥瞬目、摩擦及び異物(例えばコンタクトレンズ)による軽度の外傷が原因の損傷を受けやすくなる。
Lotemax(登録商標)( ロテプレドノールエタボネートの眼科用懸濁剤、0.5%)は、ステロイド反応性症状を治療するのに使用することは、1998年3月付けで、FDAによって認可された。研究者らは、ドライアイの症例の大部分ではないにしてもいくつかは炎症が原因であると結論している。臨床試験の報告は、乾性角結膜炎の患者を治療する際に、局所用コルチコステロイド水剤を使用することを支持している。Stephen Pflugfelder,MDは、ドライアイの患者を、炎症要素でさらに区別して選択するためのフルオレセイン涙液クリアランス(fluorecein tear clearance)の診断試験法を紹介した。涙液膜を通じて盲嚢から鼻涙管中への涙の流量が減少すると、うっ滞が起こり、そのため涙液膜中の炎症の化学伝達物質が、結膜の粘膜及び角膜上皮と接触したままになると考えられている。したがって、うっ滞が、KCSに付随する炎症を増大する。このプロセスは、かような患者の涙の生成量がさらに減少する原因にもなるであろう。
過去10年間に行われた基本的な臨床試験は、涙の生成量及び涙液クリアランス(tear clearance)が低下すると、炎症が眼表面に発生することを示している1,2.ドライアイの患者の結膜に、上皮と間質への炎症細胞の浸潤のみならず、免疫活性化及び細胞粘着分子(例えばHLA-DR抗原およびICAM-1)の発現の増大を含む免疫病理学的変化が観察されている3,4。ドライアイの患者の涙液及び結膜上皮においてIL-1、IL-6及びTNF-αなどの炎症誘発サイトカインのレベルが増大していることが、検出されている2,5,7,8。IL-1aの涙液中の濃度は、涙液クリアランスが低下すると増大することが、発見された2。涙液クリアランスが遅れているドライアイ患者の涙液中に、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9(MMP-9)の濃度と活性が有意に増大していることが検出された2。角膜上皮細胞と白血球によるMMP-9の産生は、炎症誘発性サイトカインのIL-1とTNF-αによって刺激される8.実験証拠は、MMP-9が、ムチンを含有する分化した先端角膜上皮細胞を固定する密着結合タンパク質を溶解することによって、乾性角結膜炎の発生機序に関与していることを示唆している9。グルココルチコステロイド類は、炎症誘発性サイトカイン類10及びマトリックスメタアロプロテイナーゼ酵類11の産生量を低下させる性質を有することが分かっている。いくつもの最近の臨床試験の結果が、乾性角結膜炎の患者を治療するのに局所用コルチコステロイドの水剤を使用することを支持している12,13,14
以下に最近の特許と公開特許願を示す。
米国特許第6,153,607号は、水性担体中に、ドライアイの症状を治療するため有効な量のコルチコステロイドを含有する、保存剤なしの製剤を開示している。この製剤は、各種のドライアイ症状、及び前もって容易には治療できない遅延した涙液クリアランスを示す眼表面の障害を治療する治療方式の要素として提供できる。この製剤は、ドライアイと遅延した涙液クリアランスに付随する症状の刺激症候と眼表面疾患の急性悪化のパルス治療(pulsed therapy)を行うのに十分なコルチコステロイド水性製剤の一回投与量の容器として包装できる。
米国特許願公開第20030008853号は、眼を湿潤させる必要があるドライアイ障害などの障害を治療するのに有用な薬剤として、22,29-エポキシ-3,4,6,7,29-ペンタヒドロキシ-(3α,4β,5α,6α,7β,14β,22S)-スチグマスタン-15-オンを開示している。この特許願公開には、さらに、プレドニゾロン、デキサメタゾン、フルオロメタロン、ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、トリアムシノロンなどのコルチコステロイド類は、ドライアイの患者を副作用なしで長期間治療するのに使用できないと記載されている。この特許願公開は、さらに、眼圧の上昇及び白内障の生成を含むステロイドに関連する合併症が、コルチコステロイドで治療されたドライアイ患者に、何ヶ月も治療された後、観察されたと記載されている。したがって、ロテプレドノールエタボネートを含有する局所用眼科製剤は、4週間使用したところ、炎症を伴うKCSの患者を治療するのに有効でかつ十分許容できたことは、驚くべき発見であった。さらに、場合によっては有意な格差がある治療効果が、より重篤なKCSに対応する中位から重篤までの炎症要素を示す下位集団の患者に見られた。
したがって、本願の実施態様に、中位から重篤までの炎症要素を示す患者の中位から重篤までのドライアイの治療方法を開示する。重篤のドライアイの症候としては、とりわけ、結膜充血(うっ血)例えば眼球結膜のうっ血、眼瞼結膜のうっ血、鼻側眼球結膜のうっ血;眼瞼縁のうっ血;中央角膜の染色及び眼の発赤がある。この方法は、眼科用に許容できる担体中のロテプレドノールエタボネートを、中位から重篤までのドライアイの患者に局所投与するステップを含んでいる。
眼の炎症を治療するのに使用する局所用ステロイドは、予想通りに代謝される薬剤に基づいていればよい。予想通りに代謝される薬剤は、当該技術分野で知られているように、最大の治療効果をあげかつ副作用が最小になるように設計さている。「予想通りに代謝される薬剤」の合成は、一方法により、親の不活性代謝産物に、生体内で予想通りの一ステップで変換される活性代謝産物を産生するように、既知の活性薬剤の既知の不活性代謝産物の構造を修正することによって達成できる(予想通りに代謝されるステロイドに関する米国特許第6,610,675号、同第4,996,335号及び同第4,710,495号参照)。したがって、「予想通りに代謝される薬剤」は、その治療効果を提供した後、予想通りに、生体内で非毒性誘導体に代謝されることを特徴とする生物学的に活性の化学成分である。眼科用に適切なステロイドの製剤は知られている。例えば、米国特許第4,710,495号、同第4,996,335号、同第5,540,930号、同第5,747,061号、同第5,910,550号、同第6,368,616号及び同第6,610,675号には、予想通りに代謝されるステロイド及び/又は予想通りに代謝されるステロイドを含有する製剤が記載されている。なお、これらの特許文献は、本明細書に援用するものである。
(11β,17α)-17-[(エトキシカルボニル)オキシ]-11-ヒドロキシ-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17-カルボン酸クロロメチルエステル(ロテプレドノールエタボネート)は既知の化合物であり、米国特許第4,996,335号に記載の方法で合成できる。なおこの特許文献の全内容は、本明細書に援用するものである。
本発明の方法によって、(11β,17α)-17-[(エトキシカルボニル)オキシ]-11-ヒドロキシ-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17-カルボン酸クロロメチルエステルおよび医薬として許容できる担体を含有し、眼の結膜嚢又は前眼房中に局所投与又は局所挿入される製剤が、それを必要とする哺乳類に投与される。これらの製剤は、所望の特定投与経路用に、当該技術分野で公知の方法によって配合される。
本発明によって投与される製剤は、医薬として有効な量の(11β,17α)-17-[(エトキシカルボニル)オキシ]-11-ヒドロキシ-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17-カルボン酸クロロメチルエステルを含有している。用語「医薬として有効な量」は、本明細書で使う場合、ドライアイの徴候又は症候を減少させるか又は除くのに十分な量を意味する。一般に、点眼薬又は眼軟膏の形状で眼に局所投与するための製剤の場合、(11β,17α)-17-[(エトキシカルボニル)オキシ]-11-ヒドロキシ-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17-カルボン酸クロロメチルエステルの量は、約0.001-5.0%(w/w)である。局所投与できる好ましい眼科用製剤の場合、(11β,17α)-17-[(エトキシカルボニル)オキシ]-11-ヒドロキシ-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17-カルボン酸クロロメチルエステルの量は、約0.001-1.0%(w/w)である。
本発明によって投与できる製剤は、他の各種成分を含有していてもよく、他の成分としては、限定されないが、界面活性剤、張度調節剤(tonicity agent)、緩衝剤、保存剤、共溶媒、増粘剤がある。
使用できる界面活性剤は、眼科又は耳鼻咽喉科で使用できる界面活性剤である。有用な界面活性剤としては、限定されないが、ポリソルベート80、チロキサポール(tyloxapol)、TWEEN 80(米国デラウェア州ウイルミントン所在のICI America Inc,)、PLURONIC F−68(ドイツ国ルードビッヒシャフェン所在のBASFから入手)があり、そしてポロキサマー(poloxamer)の界面活性剤も使える。これらの界面活性剤は、ヒドロキシル基を含有する有機化合物の非イオンアルカリ性オキシド縮合物である。その界面活性剤の利用できる濃度は、随伴する保存剤(存在する場合)の殺生物作用の中和又は刺激を起こしうる濃度によってのみ制限される。
各種の張度調節剤を利用して製剤の張度を調節できる。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、非イオンのジオール類好ましくはグリセリン、デキストロース及び/又はマンニトールを、製剤に添加して生理的張度に近づけることができる。このような張度調節剤の量は、添加される特定の張度調節剤によって変化する。しかし一般に、これら製剤は、最終の製剤が眼科で許容できる浸透圧重量モル濃度(一般に約150-450mOsm)になるように十分な量の張度調節剤を含有している。
適切な緩衝剤系(例えば、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム又はホウ酸)を、製剤に添加して、貯蔵条件下でのpHドリフトを防止できる。その特定の濃度は使用される緩衝剤によって変わる。
眼科局所用製品は、一般に、複数回投与の形態で包装される。したがって、使用中の微生物汚染を防止するため保存剤が必要である。適切な保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、臭化ベンゾドデシニウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、ポリクオータニウム-1(polyquaternium-1)などの当業者に知られている薬剤がある。このような保存剤は、一般に、0.001-1.0%w/wのレベルで利用される。本発明の単位投与製剤は、滅菌されているが、一般に保存剤は使用されない。したがって、かような製剤は一般に、保存剤を含有していない。
共溶媒と増粘剤を製剤に添加して、製剤の特性を改善できる。かような物質としては、非イオンの水溶性ポリマーがある。眼に投与して、眼を、潤滑にし、「濡らし」、内因性涙のコンシステンシーに近づけ、天然の涙の増大を助け又はドライアイの徴候や症状を一時的に軽減するように設計された他の化合物が当該技術分野で知られている。このような化合物は、製剤の粘度を高めることができ、かような化合物としては、限定されないが、モノマーのポリオール類、例えばグリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール;ポリマーのポリオール類、例えばポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(「HPC」)、デキストラン70などのデキストラン類;水溶性タンパク質、例えば、ゼラチン;並びにビニルポリマー類、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン及びカルボマー類、例えばカルボマー934P、カルボマー941、カルボマー940、カルボマー974Pがある。担体の粘度を上昇させるその外の化合物も、本発明の眼科用製剤に添加できる。増粘剤の例としては、限定されないが、多糖類、例えばヒアルロン酸とその塩、硫酸コンドロイチンとその塩、デキストラン類、セルロース系統の各種ポリマー;ビニルポリマー類;及びアクリル酸のポリマー類がある。
ドライアイ型の疾患と障害を治療するために配合される製剤は、ドライアイ型の症状を即座に短時間軽減するように設計された水性担体を含有していてもよい。かような担体は、リン脂質担体又は人口涙液担体又は両者の混合物として配合できる。用語「リン脂質担体」及び「人口涙液担体」は、本明細書で使用する場合、(i) 眼に投与して、眼を、潤滑にし、「濡らし」、内因性涙のコンシステンシーに近づけ、天然の涙の増大を助け又はドライアイの徴候や症状を一時的に軽減する一種以上のリン脂質(リン脂質担体の場合)又は他の化合物を含有し;(ii)安全であり、そして(iii )有効量の(11β,17α)-17-[(エトキシカルボニル)オキシ]-11-ヒドロキシ-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17-カルボン酸クロロメチルエステルを局所投与するための適切な送達担体を提供する水性製剤を意味する。人口涙液担体として有用な人工涙液製剤の例としては、限定されないが以下のような商業製品がある。例えば、Moisture EyesTM Lubricant Eye Drops/Artificial Tears、Moisture EyesTM Liquid Gel Lubricant eye drops、Moisture EyesTM Preservative Free Lubricant Eye Drops/Artificial Tears及びMoisture EyesTM Liquid Gel Preservative Free Lubricant Eye Drops/Artificial Tears(米国ニューヨーク州ロチェスター所在のBausch & Lomb Incorporated)がある。リン脂質担体の製剤の例としては、米国特許第4,804,539号(Guo et al.)、同第4,883,658号(Holly)、同第4,914,088号(Glonek)、同第5,075,104号(Gressel et al.)、同第5,278,151号(Korb et al.)、同第5,294,607号(Glonek et al.)、同第5,371,108号(Korb et al.)、同第5,578,586号(Glonek et al.)に記載されている製剤がある。なお、これら各特許文献の内容は本願に援用するものである。
ドライアイ型の疾患及び障害の治療用に配合される製剤は、眼科用軟膏として製造できる。軟膏は、公知の眼科製剤であり、本来、オイルベースの送達製剤である。典型的な軟膏は、ワセリン及び/又はラノリンのベースを使用しこれに有効成分(通常0.1-2%)と添加剤が添加されている。通常のオイルベースとしては、限定されないが、鉱油、ワセリン及びその混合物がある。
本発明の好ましい製剤は、ドライアイ又はドライアイの徴候に冒されているヒトの患者に投与することを目的とする製剤である。この製剤は、好ましくは局所に投与される。一般に、上記目的のために使用される投与量は、変化するが、ドライアイの症状を除くか又は改善するのに有効な量である。一般に、かような製剤の1−2滴を1日当たり一回乃至複数回投与する。この製剤は、ドライアイ治療用のパッケージとして提供され、そのパッケージは、製薬上許容できる容器に入れたロテプレドノールエタボネート含有医薬製剤;ドライアイを治療するための製剤使用方法を指示する添付文書;及び中に入っている医薬製剤を識別する外側包装材料で構成されている。製剤が保存剤を含有していない特定の実施態様では、そのパッケージには、パッケージされた製剤を、使用者が一回使用するのに適切な製薬上許容される容器が入っている。かような実施態様では、その外側包装材料には、ロテプレドノールエタボネート製剤の入った少なくとも一つの製薬上許容される容器が入っていると予想される。その外側包装材料には、例えば製剤の一ヶ月分を提供するのに十分な複数個の一回使用容器が入っている。
臨床試験によって、遅延涙液クリアランスの患者の乾性角結膜炎(KCS)を治療する際の、部位特異的ステロイドのロテプレドノールエタボネートとその担体の効力を比較した。この試験で、いくつか主観的及び客観的パラメータを評価した。治療を意図している集団(the intent-to-treat population)では、ロテプレドノールとその担体はともに眼を刺激する症候を同程度に改善した。治療を開始してから2週間後と4週間後、ロテプレドノールで治療した群は、客観的な徴候が、担体群より大きく改善したことを示し、下眼瞼と鼻側眼球結膜のうっ血は2週間後に及び鼻側眼球のうっ血は4週間後に統計的に有意な差に到達した。
臨床検査といくつかの疫学的試験は、ドライアイが女性の方に多いことを示している17,18。予想どうりに、この試験に登録された患者の大部分(76%)は女性であった。担体群中の女性の比率はLotemax(登録商標)群中のそれより大きかった。患者は、性別で層別せずに治療群にランダムに割り当てた。男性と女性の間に治療効果の差は全く観察されず、KCSのコルチコステロイド類に対する応答に、性別に関連する臨床上の差があることを示唆する証拠はない。
中央角膜のフルオロセイン染色、鼻側眼球結膜のうっ血及び眼の発赤の症候を含むいくつかの客観的変数のより大きな改善が、試験開始時により重篤な炎症の臨床徴候を有し次いでロテプレドノールで治療して、担体で治療した患者と比較した患者のサブセットで観察された。中央角膜のフルオロセイン染色は、このサブセットの患者では、2週間で約30%改善しそして4週間で約20%改善した。この臨床所見に付随して、この試験で評価された患者のビデオケラトスコープの表面均斉度指数(videokeratoscopic surface regularity index(SRI))も有意に改善された。特定の理論にとらわれたくないが、中央角膜の染色が、ポテンシャル視力のみならずSRIと明確に関連していることが分かっている16ので、出願人はこれらの知見が臨床面で関連があると信じるものである。実際に、重篤な中央角膜フルオレセイン染色の患者は、かすみ眼や視力の変動を訴えることが多い。
結膜の発赤は、遅延涙液クリアランスの患者のこのコホートのステロイド応答パラメータであることが分かった。発赤は、ドライアイの症候としては従来認識されていなかったが、遅延涙液クリアランスの患者の一般的な疾患であり、朝目覚めた時に最も重症であるときが多い19。涙液膜不全の患者は、下瞼を引き下げて鏡で見なければ分からないので、露出していない下眼瞼結膜の発赤は報告しないことが多いことは驚くにあたらない。
この比較的小さい群のドライアイ患者のステロイドによる局所治療で臨床上の改善が見られることは、乾性角結膜炎の発生機序における炎症の役割を裏付けている。コルチコステロイドがドライアイの眼表面疾患を改善できる可能性のある機構は、この臨床試験では評価しなかったが、すでに報告された試験で、ステロイド類が、角膜によるマトリックス メタロプロテイナーゼ-9(MMP-9)の産生のみならず結膜及び角膜上皮による催炎性サイトカイン類の産生を低下させることが分かっている6,10,11。これら因子のレベルを、今後の試験で直接評価して、それらの減少が、乾性角結膜炎の改善に対応するかどうかを決定できるであろう。
保存剤の入っていない製剤(nonpreserved formulation)中のより強力なステロイドのメチルプレドニゾロンが以前の臨床試験に使われ、コルチコステロイドによる治療の後、乾性角結膜炎が改善されたことが報告された13,14,19。これらの試験では、本願の試験と比べて、より大きな臨床効果が観察されたが、メチルプレドニソロンには、長期間の使用で高眼圧症および白内障の生成を含む眼に対する毒性の有意な危険性がある。本発明の発明者らのロテプレドノールの試験で得た印象的な発見は、一ヶ月の治療で毒性が全く無かったことである。詳しく述べると、平均IOPの上昇も、臨床上重大なIOP上昇を起こしている個体もなかった。このことは、このステロイド剤による1ヶ月までの短期間のドライアイの治療は、優れた利益/危険比を有していることを示唆している。ロテプレドノールの安全性は、さらに、アレルギー性結膜炎を治療するため3年間まで0.2%のロテプレドノールエタボネートを投与された265名の患者を長期間追跡することによって立証された20。平均眼圧は、治療する前の値と比べて、3年間の治療の後、ベースラインと変わらなかった。さらに、白内障の生成はまったく観察されなかった。
本発明をここでいくつかの実施例でさらに説明するがこれら実施例は説明を目的とし本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は本願の特許請求の範囲で定義される。
代表的な点眼薬製剤を下記例1-4で提供する。
例1
Figure 2007530573
例2
Figure 2007530573
第II相の5量部を第I相の20量部と15分間以上混合し、次いで1N NaOHを使ってpHを6.2−6.4に調節する。
例3
Figure 2007530573
第II相の5量部を第I相の20量部と15分間以上混合し、次いで1N NaOHを使ってpHを6.2−6.4に調節する。
例4
Figure 2007530573
第II相の5量部を第I相の20量部と15分間以上混合し、次いで1N NaOHを使ってpHを6.2−6.4に調節する。
患者と方法
無作為化ダブルマスクプロセボ対照多施設共同パイロット試験を、ICHの臨床試験の実施に関する基準及びヘルシンキの宣言に従って実施した。試験を開始する前に、各研究サイトのinstitutional Review Boardから認可を得た。書面によるインフォームドコンセントを、研究の特異的な試験を実施する前に、すべての患者から得た。
患者の選択
適格の患者は、18歳以上で、少なくとも6ヶ月間、乾性角結膜炎(KCS)と診断されているヒトであった。さらに、これらの患者は、少なくとも一方の眼が以下の基準を満たすことが必要であった。
1. 標準化視覚スケールの得点≧3で定義された遅延涙液クリアランス15
2. 少なくとも一つの症候が視覚アナログスケール(VAS)で>30mm
3. 複合角膜染色の得点>3
女性は、閉経後の又は公認の確実な避妊法を利用している女性であり、妊婦又は授乳婦は失格とした。コルチコステロイドの局所用点眼薬又はその成分の使用を禁忌する患者は除外した。この試験を妨害する可能性のある病気、すなわち眼の感染症、又は単純ヘルペス感染の前歴のある患者も除外した。さらに、コンタクトレンズの使用、3ヶ月以内のパンクタルオクルージョン(punctal occlusion)、過去6ヶ月以内のステロイドの全身的使用もしくは過去2ヶ月以内のステロイドの局所使用、及びKCS以外の症状に対する眼科投薬の同時利用も除外した。過去6ヶ月以内の眼科の手術、又は過去30日以内の他の臨床試験への参加/実験的投薬の利用を行った患者も試験から除外した。
薬剤の投与
患者は、Lotemax(登録商標)(米国ニューヨーク州ロチェスター所在のBausch & Lomb Inc.)又はプラセボを一日4回投与されるように無作為に割り当てた。Lotemax(登録商標)( ロテプレドノールエタボネートの眼科用懸濁剤、0.5%)は、遮蔽を目的とする白色キャップを備えた7.5mL容量の白色の低密度ポリエチレン製点眼びんに5.0mL充填して供給した。プラセボ(Lotemax(登録商標)の担体)を同一のびんに入れて供給した。Preservative Free Moisture EyesTMLubricant Eye Drops(Bausch & Lomb)を単位量容器に入れた。
患者は、症状を軽減する必要がある場合、その試験薬剤を両眼に一日4回投与しかつPreservative Free Moisture EyesTMLubricant Eye Dropsだけを使用するように指示された。このLubricant dropsは、唯一のレスキュー薬剤(rescue medication)であるから、試験薬剤が洗い流されないように、試験薬剤を点眼してから10分後まで点眼してはならないと患者に通知した。患者が使用した単一投与単位の数は、各受診時に報告された。
試験の手順
試験の手順を下記表1に示す。患者は5回受診した。第一受診時に、患者は、インフォームドコンセントに署名し、次いでスクリーニング検査(VAS症候採点法;フルオロセイン涙液クリアランス13角膜染色法;生体顕微鏡法;水晶体検査法及び眼底検査法と該当する場合の妊娠試験法)を受けた。フルオロセイン涙液クリアランス試験は、フルオロセインの2%溶液5μlを点眼してから15分後に涙液膜に存続する蛍光を観察しグレード分けして実施した。その蛍光は、標準のカラー比較スケールを使って0−6の間のグレード分けを行った。得点が>3の眼を有する患者だけを受験資格ありとした。角膜の染色は、2%フルオロセイン溶液を点眼してから5分後に青色光と11号ラッテンフィルターを使用しスリットランプ顕微鏡によって角膜を観察して評価した(下記表2参照)。
Figure 2007530573
Figure 2007530573
選択基準を満たした患者は、Preservative Free Moisture EyesTMLubricant Eye Dropsの単位投与量容器を与えられ、そして7日間の投与期間(run-in)が終了して次の受診を受けるまで要求どおりにこの点眼薬だけを使用するように指示された。ベースラインの受診とみなした第2受診時に、患者は、再度、評価され(フルオロセインクリアランス試験、角膜染色試験、シルマー1試験及び生体顕微鏡試験)、その症候を記録した。受験資格のある患者は、試験番号を与えられ、そして予め定められた無作為割付け計画に従ってダブルマスク試験投与(Lotemax(登録商標)又はプラセボ)された。その患者は、さらにPreservative Free Moisture EyesTMLubricant Eye Dropsも投与された。
第3受診と第4受診は治療期間の2週目と4週目に行った。この受診時に角膜染色試験と生体顕微鏡検査を行い、VAS症候の重篤度を採点しそしてMoisture EyesTMの使用を記録した(シルマー1試験は第4受診時に記録した)。試験投与は、第4受診の後に停止したが、追加供給のレスキュー投与(Moisture EyesTM)は第4受診時に実施した。第5受診は、治療期間を終了してから2週間後に実施した。第5受診時に、角膜染色試験、生体顕微鏡検査及びシルマー試験1を実施し、VAS症候の重篤度を採点しそしてMoisture EyesTMの使用を記録した(上記表1)。
臨床評価
この種の試験で従来行われているように、患者の主観的評価及び臨床検査の知見に基づいた客観的評価を示す二つの主要変数を定義した。主要客観的変数として選択された角膜染色試験の総合得点は、角膜の5領域(中央、下側、鼻側、上側及び横側)の得点の合計であった。各領域は、角膜染色グレーディングスケールに従って採点した(上記表.2)。第2受診における最悪症候の視覚アナログスケール(VAS)の得点を、主観的変数として選択した。患者は、以下の症候:眼の灼熱感/刺痛、痒み、ころころ感(grittiness)/擦過感/異物感、乾燥感、粘着感、発赤、及び疲れ眼感の重篤度のグレード付けをするように要求された。症候は、各眼ごとに別個に、その日の目覚めている状態のときにグレード付けを行った。視覚アナログスケール-100mmの直線(左端に「無し(Absent)」及び右端に「耐えられない(unbearable)」と記入されている)がこのグレード付けのために提供された。患者は、症候の重篤度を表す直線の両端の間の点に印をつけるように要求されたが、その直線の左端から前記印までの距離がVASの得点である(mm)。
一次分析は、最悪状態の眼の最悪症候(ベースラインの第2受診における)の視力アナログスケールの得点及び最悪の眼(ベースラインの第2受診における)の複合フルオロセイン染色得点の、第2受診から第4受診までの変化に基づいた分析であった。二次分析には、以下のもの、すなわち全症候のVASの得点、Preservative Free Moisture EyesTMLubricant Eye Dropsの使用量、シルマー1試験の得点、及び角膜の前記5領域のフルオロセイン染色の得点が含まれ、第2受診から第4受診と第5受診それぞれまでの変化として計算した。生体顕微鏡法による知見(眼瞼縁と結膜の充血、糸状角膜炎)も評価した。
安全性は、眼底検査、水晶体検査及び生体顕微鏡法;視力と眼圧の試験;並びに症候の有害な事象と変化を監視することによって評価した。有害事象は、研究者らが、重篤度(軽度、中位、重篤)及び事象と試験薬剤との関連(起こるかもしれない、可能性あり、可能性無し又は不明)によって評価した。
ビデオ角膜鏡法
すでに報告されている方法16を利用し、一つの試験センターで、TMS-2 Corneal Topography Systemを使って、ビデオ角膜鏡検査を実施した。被験者は、閃光赤固定光を見るように指示された。画像は、適切なアラインメントと焦点合わせを行った後にとらえた。SRI(表面規則性指数(surface regularity index))、SAI(表面非対称性指数)、不正乱視指数(IAI)及びPVA(ポテンシャル視力指数)は、測定器のソフトウェアで計算してデータベースに記録した(米国ワシントン州シアトル所在MicrosoftのExcel)。
人口構成とベースラインの特徴は、無作為化されたすべての患者について記述統計学によって要約した。治療グループを、分散分析法(ANOVA)を使って比較した。仮説の統計的検定のすべてに、α=0.05の有意性レベルを使用した。
この試験はパイロット試験であるから、試料の大きさの計算は、最良の入手可能な関連刊行物に基づいて計算した。この試験では、Sainz de la Maza Serra et al.が先に報告した試験14で使用したKCS治療用ステロイドの効力を評価する類似の客観的及び主観的な終点又は変数を使ったが、症候の重篤度を0−3でグレード付けする代わりに視覚アナログスケール(VAS)を使用した。この連続変数(VAS)を利用すると、前記二つの治療グループを識別する際に、以前の試験で使われていたような二分アウトカムパラメーターで提供できる感度より大きい感度を提供できると予想される。したがって、一グループ当たり30という計画された試料の大きさは、主観的及び客観的なアウトカムパラメータの両方について、Lotemax(登録商標)とプラセボのグループを識別するのに適切な感度を提供すると考えられる。
試験結果
この試験に参加した患者の人口構成を下記の表3に示す。合計66名の患者が登録されそのうち32名がLotemaxを投与されそして34名がLotemaxの担体を投与された。患者の大部分は女性であり(75.7%)、担体で治療されたグループ中の女性の比率(88.2%)は、Lotomaxで治療されたグループ中の女性の比率(62.5%)よりわずかに大きい。パンクタルオクリュージョンの履歴がある患者が4名いたが、それらはすべて、無作為に割り当ててLotemaxを投与した。
Figure 2007530573
効力
効力は、徴候及び症候の、第二受診で提供されたベースラインからの変化として分析した。グループ内とグループ間の差を、2期間すなわち第2受診から第3受診までの期間(試験薬剤について最初の2週間中の変化)及び第2受診から第4受診までの期間(試験薬剤について全4週間中の変化)について分析した。
さらに、第4受診から第5受診までの期間は、この期間が試験薬剤の投与を停止した直後の期間なので、試験薬剤の投与を停止した後、その治療効果の後退又は喪失を示すであろうから第4受診から第5受診までの変化を分析した。一次主観的変数(最悪の症候)と一次客観的変数(最悪の眼の複合角膜染色の得点)のこれらの試験結果、下眼瞼結膜の充血の得点及び鼻側眼球結膜の充血の得点を、下記表4に示す。
Figure 2007530573
治療された全患者の分析結果(Lotemax n=32、担体 n=34)に、明確な治療効果が、両グループ内に見られたことを、表4は示している。治療の最初の2週間及び全体の4週間に、両グループ内で、最悪症候(一次主観的変数)に、有意な治療の改善があった。治療後の後退は、担体グループでは有意であったが、Lotemaxで治療されたグループでは有意でなかった(図1)。類似の傾向が、組み合わせた角膜染色の得点(一次客観的変数)で見られたがごくわずかであった。
鼻側眼球結膜の充血(うっ血)の得点には、Lotemaxで治療された患者に、全体として、最初の2週間及び4週間の治療期間に、統計的に有意な改善があったが、担体で治療された患者にはなかった。これら治療グル−プ間の差は統計的に有意であった(p=0.0431)。第4受診と第5受診の間の効果の後退は、Lotemaxで治療されたグループの方が担体で治療されたグループより大きかったが、これは、主として、担体で治療されたグループには治療効果がないことが原因で起こる。
下眼瞼結膜のうっ血の得点では、最初の2週間、Lotemaxで治療されたグループにやはり有意な改善があったが、この改善は、担体で治療されたグループと有意差があった(p=0.0473)。類似のパターンが4週間の治療期間に見られたが、これは有意でなかった。第4受診の後、担体で治療したグループとLotemaxで治療したグループの両方に、類似の後退があった。
図2と3は、ITT集団について、一次の主観的(SUB)変数及び客観的(OBJ)変数、並びにVASで患者が採点する、中央角膜の染色(CCS)、眼瞼縁の充血(LMI)、下眼瞼結膜のうっ血(ITH)、下眼球結膜のうっ血(IBH)、鼻側眼球結膜のうっ血(NBH)及び眼の発赤(RED)の、ベースラインから第2週まで及びベースラインから第4週までそれぞれの変化率を示す。
試験全体を通じてMoisture Eyes人工涙液点眼剤を使用することに関する分析結果は、どの受診においても、治療グループ間に有意差を示さなかった。
第2受診における、シルマー1試験の平均得点は、Lotemax(登録商標)の場合、9.16+7.65mmであり、そしてプラセボの場合、11.18+9.70mmであった。第4受診における、これらの得点は、10.03+7.91mmと10.91+5.73mmであった。このシルマー1試験の平均得点に変化がなかったのは、治療又は治療グループに関連しているようである。
登録された患者の大部分は女性であったが、治療の効果(治療グループ間の差)は、男性と女性の間に有意差はなかった。
これは、この症状を治療するのに使うLotemaxを評価するため実施した最初の臨床試験であったので、将来の研究に対するパイロット試験として設計した。患者の集団は、ドライアイ病にステロイドを使う以前の臨床試験ではなくて臨床経験に基づいて選択された未試験の基準(un-tested criteria)によって選択した。したがって、この試験に含まれている患者は、そのプロトコルが要求する徴候と症候の重篤度の要件を満たしているが、患者のKCSに付随するドライアイ病の重篤度と炎症の大きさは、やはり広範囲にわたって変化した。炎症の臨床上の徴候と症候が中位から重篤までである患者の実質的なサブグループがあったが、これらの患者は、ステロイドを使うことによって利益を得る可能性が明らかに高い。これらサブグループは、Lotemaxの治療効果が高く、下記の効力分析は、この中位から重篤までのサブグループを評価する分析である。全患者から得たデータを、この安全性の分析結果に含めた。
効力サブセットの分析
KCSに冒されて少なくとも一つの中位の臨床炎症要素を有する患者のサブ集団を定義するため、a)組み合わせた角膜染色の得点≧10、b)少なくとも一つの領域の結膜充血≧2、c)VASによる最悪症候の得点(一次主観的変数)≧70、d)VASによる発赤症候の得点≧70と定義した基準を選択した。これらのサブセットにはそれぞれa)Cst、b)Conj、c)Subj及びd)Redと標識をつけた。これらサブセットは単独及び組み合わせて分析した。下記表5には、この効力分析に含まれているサブセットが列挙されている。別の分析で、一つの部分が少なくとも10名の患者を含む組み合わせサブセットだけを検討した。
Figure 2007530573
中位から重篤までの炎症KCSの少なくとも二つの基準を満たした患者のグループを、治療の効果について分析した(下記表6)。治療の効果は、平均得点又は2時点間の変化の平均値に基づいた活性体とプラセボ(Lotemaxと担体)の間の差と定義した。洗い流し期間を終了した第2受診を、変化を計算するためのベースラインとして利用した。
Figure 2007530573
2週間と4週間の治療を行った後のベースラインからの変化比率を、ベースラインにおける組み合わせた角膜染色得点>10の患者 (図4と5)、ベースラインにおいて一領域の結膜うっ血の得点>2の患者(図6と7)及び組み合わせたサブセットCstとConjの患者(図8と9)について、グラフで示した。抗炎症効果を証明するのに最も適当な変数を含めた。ベースラインにおける最悪の症候(一次客観的変数)は、症候の改善を示すのに確かに重要であった。その日の発赤は患者の眼の外観に関する患者のVASによる得点であった。提供された他の変数は、中央角膜のフルオロセイン染色、下眼瞼のうっ血、鼻側眼球結膜のうっ血及び眼瞼縁の充血である。
より悪い症候の得点の変化の差は、「SubjとConj」及び「CstとConj」のグループでより大きかった。発赤のVAS得点の改善は、一貫して、Lotemaxで治療した患者の方が、担体で治療した患者に比べて約20%良好であった。第2週の受診で、すべてのサブセットは、中央角膜染色の得点で、Lotemaxによって、担体を超えて、約1単位(すなわち0-3グレーディングスケールで約33%)の利益を得た。これは、最初の2週間の治療(第2受診-第3受診)中のSubjとRedのサブセット及びSubjとConjのサブセットで有意であった。これら治療グループ間の差は、第4週(第4受診)の後は小さくなった。眼瞼縁充血の改善は、第2受診−第4受診の期間中、SubjとRedのサブセットでのみ統計的に有意であり、改善は、第2受診−第3受診の期間にもあったが小さかった。
担体による治療と比べた鼻側眼球結膜の充血の改善は、3サブセットのすべてにおいて、2週間後(第3受診後)、1単位の変化より小さく(-0.69から-0.85まですなわち約26%)、そしてSubjとRedのサブセットにおいて、4週間後(第4受診後)、統計的に有意になった。下眼瞼結膜の充血と下眼球結膜の充血にも改善があった(記載せず)。
ビデオ角膜検影法
一つの試験サイトにおいて、8名の患者の最悪の眼を治療した前後の、Tomey TMS-2Nの表面規則性指数(SRI)を評価した。Lotemax(登録商標)で治療してから1ヶ月後に、SRIが有意に低下することが観察されたが、担体で治療された患者は、治療の前後の値に差はなかった(下記表7)。
Figure 2007530573
安全性の分析
Lotemax(登録商標)で治療されたグループの15名の患者(46.9%)に30件の有害事象及びプラセボで治療されたグループの17名の患者(50.0%)に25件の有害事象が報告された。眼の有害事象が、Lotemax(登録商標)で治療された患者が報告した全有害事象の56.7%であり、担体で治療されたグループの場合、全体の56%であった。すべての有害事象の内、Lotemaxの16.7%とプラセボの23,5%が治療に関連しているとみなした。4件の重大な有害事象が報告されたが、そのどれも治療に関連するものではなく、これら患者の内2名は、試験から除外した。下記の表8に、治療に関連する眼の有害事象を列挙した。
Figure 2007530573
どちらの治療グループのどの患者にも、視力に、臨床的に有意な変化は認められなかった。治療期間が終了した時点で実施したスリットランプ試験、水晶体検査及び眼底検査は、治療に関連する異常を全く示さなかった。具体的に述べると、白内障形成の徴候は全くなく、そしてどの被検患者にもIOPに、臨床的に有意な変化は全くなかった。IOPデータの平均値を下記表9に示す。
Figure 2007530573
特定の好ましい実施態様によって、本発明について述べてきたが、その特別の又は必須の特徴から逸脱することなく、他の特別な形態又は変形で具現できると解すべきである。したがって、上記実施態様は、あらゆる点で、例示されていて限定していないとみなされ、本発明の範囲は、上記記述ではなく本願の特許請求の範囲によって示されている。
当初提示されていて修正することができる特許請求の範囲は、現時点では予想されていないか又は認められていない、例えば出願人/特許権者などから要求されることがあることを含む、本明細書に開示されている実施態様及び教示の変化、別法、変形、改良、均等物および実質的に均等なものを含んでいる。
参考文献
Figure 2007530573
Figure 2007530573
Figure 2007530573
Figure 2007530573
治療意図(ITT)分析による、より悪い症候の平均得点の変化のグラフである(VAS=視力のアナログ得点)。 治療意図(ITT)分析による、ベースラインから2週目までの平均変化率のグラフである。 治療意図(ITT)分析による、ベースラインから4週目までの平均変化率のグラフである。 ベースラインにおいて角膜染色の得点>10である患者のサブセットの、ベースラインから2週目までの平均変化率のグラフである。 ベースラインにおいて角膜染色の得点>10である患者のサブセットの、ベースラインから4週目までの平均変化率のグラフである。 ベースラインのどの領域でも、結膜うっ血の得点>2の患者のサブセットの、ベースラインから2週目までの平均変化率のグラフである。 ベースラインのどの領域でも、結膜うっ血の得点>2の患者の、ベースラインから4週目までの平均変化率のグラフである。 ベースラインのどの領域でも、角膜染色得点>10でかつ結膜うっ血の得点>2の患者のサブセットの、ベースラインから2週目までの平均変化率のグラフである。 ベースラインのどの領域でも、角膜染色得点>10でかつ結膜うっ血の得点>2の患者のサブセットの、ベースラインから4週目までの平均変化率のグラフである。

Claims (27)

  1. 医薬として許容できる担体、及び中位から重篤までのドライアイを治療するのに有効な量の(11β,17α)-17-[(エトキシカルボニル)オキシ]-11-ヒドロキシ-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17-カルボン酸クロロメチルエステルを含有する製剤を哺乳類に投与することを含んでなる、中位から重篤までのドライアイの治療方法。
  2. (11β,17α)-17-[(エトキシカルボニル)オキシ]-11-ヒドロキシ-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17-カルボン酸クロロメチルエステルの医薬として有効な量が0.001-5.0%(W/W)である請求項1に記載の方法。
  3. (11β,17α)-17-[(エトキシカルボニル)オキシ]-11-ヒドロキシ-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17-カルボン酸クロロメチルエステルの医薬として有効な量が0.001-1.0%(W/W)である請求項2に記載の方法。
  4. 製剤を眼に局所投与する請求項1に記載の方法。
  5. 中位から重篤までのドライアイが、屈折矯正手術に関連している請求項1に記載の方法。
  6. 製剤が眼科用懸濁剤である請求項1に記載の方法。
  7. 眼科用懸濁剤が、ポビドン、塩化ベンザルコニウム、二ナトリウムEDTA、グリセリン、チロキサポール及び水を含む医薬担体中に、0.5重量%のロテプレドノールエタボネートを含有している請求項6に記載の方法。
  8. 製剤がゲルである請求項1に記載の方法。
  9. ゲルが、アクリル酸ベースのポリマー、水、プロピレングリコール、EDTA及びロテプレドノールエタボネートを含有している請求項8に記載の方法。
  10. ゲルがさらにトリアセチンを含有する請求項9に記載の方法。
  11. 製剤が、アクリル酸ベースのポリマー、水、プロピレングリコール、グリセリン、EDTA、塩化ベンザルコニウム及びロテプレドノールエタボネートを含有している請求項8に記載の方法。
  12. ロテプレドノールエタボネートを含有している中位から重篤までのドライアイを治療するのに適切な眼科用ゲル製剤。
  13. 水、アクリル酸ベースのポリマー、プロピレングリコール、EDTA、トリアセチン及び塩化ベンザルコニウムからなる群から選択される少なくとも一つの成分をさらに含有する請求項12に記載の製剤。
  14. 製薬上許容できる容器中に入れたロテプレドノールエタボネートを含む医薬製剤、
    中位から重篤までのドライアイを治療するための薬剤使用方法を指示する添付書類、及び
    中に入っている医薬製剤を識別する外側包装材料
    を含んでなる中位から重篤までのドライアイの治療用キット。
  15. 製薬上許容できる容器が、包装物中に入っている製剤を使用者が一回使用するのに適している請求項14に記載のキット。
  16. 外側包装材料内に、ロテプレドノールエタボネートの医薬製剤が入っている少なくとも一つの製薬上許容できる容器が入っている請求項14に記載のキット。
  17. 治療を必要とする患者に、治療量のロテプレドノールエタボネートを医薬として許容できる担体中に含有する治療用製剤を投与し。次いで
    その治療用製剤を、1ヶ月を超える期間、投与し続ける
    ことを含んでなる慢性ドライアイの治療方法。
  18. 治療用製剤を、3ヶ年を超える期間投与する請求項17に記載の方法。
  19. 治療用製剤が、保存剤を含有していない請求項17に記載の方法。
  20. 治療用製剤が、保存剤を含有していない請求項18に記載の方法。
  21. 治療を必要とする患者に、治療量のロテプレドノールエタボネートを医薬として許容できる担体中に含有する治療用製剤を投与することを含んでなる、ドライアイに関連する結膜発赤を軽減する方法。
  22. 治療用製剤を、1ヶ月を超える期間、投与し続けるステップをさらに含む請求項21に記載の方法。
  23. 治療用製剤を、3年を超える期間、投与する請求項22に記載の方法。
  24. 治療を必要とする患者に、治療量のロテプレドノールエタボネートを医薬として許容できる担体中に含有している治療用製剤を投与することを含んでなる、上皮細胞の催炎性サイトカイン産生量を減少させる方法。
  25. 治療用製剤を、1ヶ月を超える期間、投与し続けるステップをさらに含む請求項24に記載の方法。
  26. 治療用製剤を、1ヶ月を超える期間、投与し続けるステップをさらに含む請求項25に記載の方法。
  27. 治療用製剤を、3年を超える期間、投与するステップをさらに含む請求項26に記載の方法。
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